< 委 員 会 報 告 ・ 「炉 物 理 研 究 委 員 会 」活 動 報 告 >
「軽 水 炉 次 世 代 燃 料 の 炉 物 理 」ワ ー キ ン グ パ ー テ ィ ー 活 動 報 告
原 子 力 安 全 委 員 会 事 務 局 佐 治 悦 郎 1 . は じ め に 炉 物 理 研 究 委 員 会 の 下 部 組 織 で あ る 原 子 炉 シ ス テ ム 専 門 部 会 に お い て 平 成 11 年 度 よ り 始 ま っ た ワ ー キ ン グ パ ー テ ィ ー ( WP) 形 式 の 活 動 は 、 原 則 、 継 続 と せ ず 2 年 毎 に 成 果 報 告 を 行 っ て 解 散 し 、 そ の 後 は 、 新 し い テ ー マ を 選 定 し グ ル ー プ も そ れ に 応 じ て 新 た に 組 織 す る と い う 方 式 を 採 る こ と と さ れ て い る 。 そ の ひ と つ と し て 組 織 さ れ た「 軽 水 炉 次 世 代 燃 料 の 炉 物 理 」WP は 、平 成 12 年 度 ま で の 活 動 報 告 を JAERI-Research 2001-0461 )に ま と め た が 、 そ の 活 動 内 容 に 鑑 み 継 続 が 必 要 と 考 え る 意 見 が WP メ ン バ ー の 大 勢 を 占 め 、平 成 13 年 度 か ら 始 ま る 第 2 期 の WP の ひ と つ と し て 活 動 の 継 続 を 提 案 し た 。 炉 物 理 研 究 委 員 会 は そ れ を 受 け 、 他 の WP の 新 設 と 平 行 し て 、 当 W P の 活 動 継 続 を 決 定 し た 。 第 2 期 WP の メ ン バ ー は 以 下 の 通 り (五 十 音 順 、 所 属 は 平 成 14 年 度 末 当 時 )。 相 沢 乙 彦(武 蔵 工 大 )、青 山 肇 男 (日 立 )、秋 保 秀 一 (開 発 計 算 セ ン タ ー 、平 成 13 年 11 月 ま で )、池 原 正 (GNF-J)、井 田 俊 一 (三 菱 重 工 )、伊 藤 卓 也 (原 燃 工 )、猪 原 敏 照 (電 源 開 発 )、今 村 康 博 (四 電 )、宇 根 崎 博 信 (京 大 炉 、幹 事 )、大 木 繁 夫 (サ イ ク ル 機 構) 、 奥 村 啓 介 ( 原 研 、 幹 事 ) 、 亀 山 高 範 ( 電 中 研 ) 、 北 田 孝 典 ( 阪 大 ) 、 小 坂 進 矢 (TEPSYS)、 阪 元 重 康 (東 海 大 )、 櫻 木 廣 隆 (四 電 エ ン ジ ニ ア リ ン グ )、 桜 田 光 一 (東 芝)、 佐 治 悦 郎 (原 安 委 、 リ ー ダ ー )、 茂 野 一 雄 (開 発 計 算 セ ン タ ー 、 平 成 13 年 11 月 か ら)、杉 暉 夫 (原 研 OB)、中 島 健 (原 研 、幹 事 )、中 島 鐵 雄 (NUPEC)、長 谷 川 明 (原 研 )、別 所 泰 典 (NUPEC)、山 本 章 夫 (原 燃 工 、幹 事 )、山 本 徹 (NUPEC)、 吉 岡 研 一(東 芝 ) 本 稿 は 、 こ う し て 始 ま っ た 「 軽 水 炉 次 世 代 燃 料 の 炉 物 理 」 W P の 第 2 期 ( 平 成 13~ 14 年 度 ) 活 動 内 容 に つ い て そ の 概 要 を 報 告 す る も の で あ る 。 第 1 期 で 得 ら れ た 成 果 に つ い て は 、 上 記 報 告 書 を 参 照 さ れ た い が 、 概 ね 以 下 の 通 り で あ る 。 ・ 軽 水 炉 の 次 世 代 燃 料 仕 様 を 想 定 し た 核 解 析 ベ ン チ マ ー ク 問 題 の 設 定 ・ W P メ ン バ ー 所 属 の 各 機 関 に よ る ベ ン チ マ ー ク 問 題 解 析 ・ 得 ら れ た 解 析 結 果 の 比 較 検 討 第 2 期 の 活 動 を 開 始 す る に 当 た っ て は 、 以 下 の よ う な 活 動 内 容 や 目 標 を 念 頭 に 置 い た 。 ① 既 に 提 出 さ れ て い る 解 析 結 果 の 見 直 し や 新 た な 解 析 の 実 施② 本 W P 活 動 成 果 の 対 外 発 表 の 促 進 と 外 部 か ら の 参 加 勧 誘 ③ 解 析 結 果 の ば ら つ き が 大 き い も の に つ い て の 原 因 分 析 ④ 臨 界 実 験 デ ー タ や 照 射 後 試 験 デ ー タ を 利 用 し た 最 良 解 の 探 索 ⑤ 各 解 析 項 目 に 対 す る 要 求 精 度 の 検 討 ⑥ 現 行 炉 心 の 解 析 精 度 と の 比 較 ⑦ 望 ま れ る 実 験 や 今 後 の 研 究 課 題 の 抽 出 、 提 案 以 下 、 こ れ ら の 項 目 に 沿 っ て 成 果 概 要 を 報 告 す る 。 2 . 既 に 提 出 さ れ て い る 解 析 結 果 の 見 直 し や 新 た な 解 析 の 実 施
MVP-BURN と MCNP-BURN2 の 結 果 の 見 直 し に よ っ て 、 JENDL-3.2 を 用 い た 2 つ の 連 続 エ ネ ル ギ ー モ ン テ カ ル ロ 計 算 結 果 の 一 致 の 度 合 い が 向 上 し た 。ま だ 、 一 部 検 討 の 余 地 は 残 る も の の 、 連 続 エ ネ ル ギ ー モ ン テ カ ル ロ 計 算 に お い て 同 じ 核 デ ー タ ラ イ ブ ラ リ を 用 い る 限 り 、 異 な る コ ー ド 間 で も 結 果 の 一 致 を 見 る と い う こ と は 、あ る 核 デ ー タ ラ イ ブ ラ リ を 用 い た 場 合 の 参 照 解 を 与 え る と い う 点 で 、 非 常 に 有 意 義 な 成 果 で あ る 。 一 般 に 連 続 エ ネ ル ギ ー モ ン テ カ ル ロ 計 算 は 、 理 論 的 に は そ の よ う な 理 解 が さ れ て は い る も の の 、 実 際 に は 個 々 の 計 算 コ ー ド が 取 り 得 る 自 由 度 や バ グ の 存 在 が 否 定 で き な い こ と 等 か ら 、 現 実 の 参 照 解 の 存 在 は な か な か 確 認 で き な い 。 今 回 は 、 異 な る コ ー ド 間 の 比 較 を か な り 詳 細 に 行 っ た 結 果 と し て 、 現 実 に 一 致 を 見 た 解 を 得 て い る の で あ り 、 当 WP が 提 案 し た ベ ン チ マ ー ク 問 題 に 対 す る JENDL-3.2 を 用 い た 場 合 の 参 照 解 を 、部 分 的 に せ よ 与 え る こ と が で き た と 考 え ら れ る 。 ま た 、 こ の こ と は 個 々 の 連 続 エ ネ ル ギ ー モ ン テ カ ル ロ コ ー ド の 信 頼 性 を 相 互 に 高 め る 結 果 と な っ て い る 。 新 た な 解 析 結 果 と し て は 、ま ず JENDL-3.3 を 用 い た SRAC 解 析 が 注 目 さ れ る 。 SRAC を 用 い た 解 析 で は 、 今 ま で も 異 種 の 核 デ ー タ ラ イ ブ ラ リ 間 の 比 較 検 討 が 実 施 さ れ て い た が 、 今 回 の 結 果 が 加 わ る こ と に よ っ て 、 核 デ ー タ の 違 い に よ る 核 特 性 へ の 影 響 の 定 量 的 検 討 が 一 層 進 め ら れ た 。 PHOENIX-P に よ る 解 析 結 果 が 加 わ っ た こ と も 意 義 深 い 。こ の こ と に よ り 、我 が 国 の 発 電 用 軽 水 炉 の 炉 心 設 計 を 行 っ て い る 主 要 機 関 か ら の 解 析 結 果 が ほ ぼ す べ て 出 揃 っ た こ と に な る 。 従 来 、 実 用 炉 設 計 コ ー ド の 計 算 結 果 を 専 門 家 同 士 が 相 互 に 議 論 す る 機 会 は 、 許 認 可 や 商 業 機 密 と の 関 係 か ら 難 し い と 考 え ら れ て い た が 、今 回 の 試 み に お い て は 、次 世 代 燃 料 と い う 仕 掛 け を 用 意 す る こ と に よ り 、 そ の ハ ー ド ル を 越 え る こ と に 成 功 し た 。 こ の こ と は 、 今 般 、 原 子 力 産 業 界 に 要 求 さ れ て い る 透 明 性 の 確 保 の 観 点 か ら 大 変 意 味 の あ る こ と で あ る 。 本 WP 活 動 が 、 我 が 国 の 軽 水 炉 炉 心 核 解 析 技 術 の 向 上 へ の 貢 献 は も と よ り 、 原 子 力 利 用 に お い て 専 門 家 が 社 会 へ の 説 明 責 任 を 果 た し て い く に 当 た っ て 、 こ の 分 野 で の 専 門 家 同 士 の 意 見 交 換 の 場 の 素 地 を 形 成 で き た と 評 価 し た い 。 表 1 に 、 現 時 点 で の ベ ン チ マ ー ク 参 加 機 関 と コ ー ド 一 覧 を 示 す 。
Pin Cell PWR Assembly BWR Assembly Data Index Organization Code Base Library
UO2 MOX UO2 MOX UO2 MOX
MVP-BURN(J32) JAERI MVP-BURN JENDL-3.2 12/03/2002 12/03/2002 - - - - SRAC(J32) JAERI SRAC JENDL-3.2 11/03/2002 11/03/2002 - 12/03/2002 - -
SRAC(J33) JAERI SRAC JENDL-3.3 04/02/2003 04/02/2003 - - - -
SRAC(F22) JAERI SRAC JEF-2.2 11/03/2002 11/03/2002 - - - -
SRAC(B65) JAERI SRAC ENDF/B-VI(R5) 11/03/2002 11/03/2002 - - - - MVP-BURN(J32/KU) KURRI MVP-BURN JENDL-3.2 - - 23/05/2001 23/05/2001 - - MVP-BURN(J32/OS) Osaka Univ. MVP-BURN JENDL-3.2 - - - - 23/05/2001 23/05/2001 CASMO(F22/TE) TEPSYS CASMO-4 JEF-2.2 05/11/2002 05/11/2002 - - 23/05/2001 23/05/2001 CASMO(B4/NF) NFI CASMO-4 ENDF/B-IV,V 23/05/2001 23/05/2001 23/05/2001 23/05/2001 - 23/05/2001
NULIF(B5) NFI NULIF ENDF/B-V 23/05/2001 - - - - -
CASMO(B4/NU) NUPEC CASMO-4 ENDF/B-IV,V - - - - 23/05/2001 23/05/2001 SHETRAN(B63) SEPCO/YONE SHETRAN ENDF/B-VI(R3) 28/05/2002 28/05/2002 28/05/2002 28/05/2002 - TGBLA(B5) GNF-J TGBLA ENDF/B-V 23/05/2001 23/05/2001 - - 23/05/2001 - VMONT(J32) GNF-J VMONT JENDL-3.2 23/05/2001 23/05/2001 - - 23/05/2001 - MCNP-BURN2(J32) Toshiba MCNP-BURN2 JENDL-3.2 20/10/2002 07/02/2003 - - 07/02/2003 - FLEXBURN(J32) CRIEPI FLEXBURN JENDL-3.2 23/05/2001 23/05/2001 23/05/2001 23/05/2001 - - LWRWIMS(F22) EPDC/KCC LWRWIMS JEF-2.2 23/05/2001 23/05/2001 - - - - PHOENIX-P(B63) MHI PHOENIX-P ENDF/B-VI(R3) 31/01/2003 31/01/2003 31/01/2003 31/01/2003 - - HELIOS(B6/KA) KAERI HELIOS ENDF/B-VI 19/12/2001 19/12/2001 19/12/2001 19/12/2001 - 19/12/2001 日付(日/月/年)はデータの最終更新日を示す。” - “は該当データ無し。
JAERI:日本原子力研究所、KURRI:京都大学原子炉実験所、Osaka Univ.:大阪大学工学部、TEPSYS:テプコシステムズ、NFI:原子燃料工業、 NUPEC:原子力発電技術機構、SEPCO:四国電力、YONE:四電エンジニアリング、GNF-J:グローバル・ニュークリア・フュエル・ジャパン、 Toshiba:東芝、CRIEPI:電力中央研究所、EPDC:電源開発、KCC:開発計算センター、MHI:三菱重工業、KAERI:韓国原子力研究所
3.本WP活動成果の対外発表の促進と外部からの参加勧誘 WP の各メンバーにより、精力的に外部発表が行われた。ベンチマーク問題の詳細な仕様 は、英文化して日本原子力学会の英文誌に掲載され7)、これにより海外での紹介を容易にし た。活動成果については、日米原子力学会の定例大会や炉物理国際会議において論文発表 を継続して実施した2) ~ 6), 8), 9)。今後も、炉物理国際会議(PHYSOR2004)において論文の発表 を予定している 10)。また、ベンチマーク問題の詳細仕様やすべての計算結果がインターネ ットを通して取得できるよう、ホームページを開設した。アドレスは以下の通り。 http://hachi.tokai.jaeri.go.jp/Committee/LWR-benchmark/ 以上の努力により、韓国及びフィンランドから各 1 件、ベンチマーク解析に参加申し出 があった。 ホームページの開設は、ベンチマーク問題やその計算結果の利用の容易さを飛躍的に向 上させた。潜在的な需要は国内外を問わずあるはずであり、今後も各メンバーによる自主 的な広報活動が期待される。 4.解析結果のばらつきが大きいものについての原因分析 計算結果の見直し等により、ばらつきは前回報告のときよりは小さくなってきている。 ピンセル問題の計算結果の差異については、同一コードで異なったライブラリを用いた結 果やその逆の組み合わせ、燃焼チェーンの違い、1 群断面積の比較、主要核種の核データの 感度解析等を通して、原因分析がかなり進んだ。UO2 ピンセルの無限増倍率は核データラ イブラリへの依存性、特に主要核種であるU-235 の差異が大きく効いていること、MOX ピ ンセルでは同様の依存性は比較的小さいものの、それは各核種の寄与の相殺によるもので あること等が判明した。MOX ピンセルの無限増倍率においては、ENDF/B-IV, V 他の核デー タライブラリ(以下、単に B4 という)を用いた CASMO-4 の結果が他のコードとは異なった 傾向を示している(図1参照)が、この原因は、プルトニウム同位体の断面積にあるようであ る。しかし、CASMO-4/B4 の MOX 燃料に対する精度検証は他コードに比較しても充実して おり、現段階ではどちらが正しいかを結論することはできない。さらにMOX ピンセルの燃 焼度反応度損失やドップラー反応度についてみると、CASMO-4 と並んで検証結果が充実し ているPHOENIX-P の結果が、CASMO-4 と非常に近い値を与え、しかもそれらは他コード の結果とは異なった傾向を示している。燃焼反応度損失については、分析の結果、同様の 原因に基づくものではないことが判明しているが、次に述べるTGBLA のケースも含め、実 績や検証結果の豊富な設計コードが他のコードとは異なった傾向を示すという事実は興味 深い。
k-infinity (Operating condition) 0.950 1.000 1.050 1.100 1.150 1.200 1.250 0 10 20 30 40 50 60 70 Burn-up (GWd/t) k-in fi nity SRAC(J32) MVP-BURN(J32) MCNP-BURN2(J32) VMONT(J32) FLEXBURN(J32) SRAC(F22) CASMO(F22/TE) LWRWIMS(F22) SRAC(B65) SHETRAN(B63) HELIOS(B6/KA) TGBLA(B5) CASMO(B4/NF) PHOENIX-P(B63) SRAC(J33) 図1 MOX 燃料ピンセル問題における無限増倍率 集合体計算において注目すべき結果の差異は、集合体無限増倍率のGd 燃焼に伴う増加傾 向の差異である。特にBWR-UO2集合体において、世界的に見て最も実績が豊富と考えられ る BWR 核設計コード、TGBLA が他のコードと異なった傾向を与えていること(図2参照) は特記に値する。今回はその差異を分析するまでには至っていないが、高燃焼度化が進め ば進むほど、Gd の燃焼解析の重要性は増すことになるので、今後の検討課題として認識し ておくべきであろう。 -30.0 -25.0 -20.0 -15.0 -10.0 -5.0 0.0 5.0 10.0 15.0 0 10 20 30 40 50 60 70 Burnup(GWd/t) B ur nup r eact iv ity ( % dk/ kk' ) TGBLA(B5) VMONT(J32) CASMO4(F22/TE) CASMO4(B4/NU) MVP-BURN(J32/OS) MCNP-BURN2(J32) 図2 燃焼反応度の比較(BWR-UO2集合体) 5.臨界実験データや照射後試験データを利用した最良解の探索
実験)結果に基づく実効増倍率の検討が行われた。これらのうち、まず計算手法上の参照解 を与えると考えられる連続エネルギーモンテカルロ計算コード、MVP による実効増倍率の
結果に着目する。JENDL-3.2 を用いた結果が最も多く得られているが、概ね過大評価が多い
(VIP-BWR 結果は良好)。一方、JENDL-3.3 の結果は、VENUS-2 では良好な結果を与えるも のの、VIP-BWR では過小評価となっている(MISTRAL の結果はない)。VIP-BWR は、Gd 入
り燃料を有しているので、仮にGd 価値の過大評価があるとすれば、JENDL-3.2 は過大評価 側にシフトし、JENDL-3.3 は一致度がよくなって、他の結果と整合することになるが、ベン チマーク問題におけるピンセル結果と集合体結果を比較してもそのような傾向はみられな い(MVP/JENDL-3.2 が増倍率を大きめに評価する傾向は、ピンセルから Gd 入り燃料を含む 集合体になっても変わらない)。結果として、これらの実験解析からは、UO2, MOX 燃料と もMVP と組み合わせて最良といえる核データライブラリの組み合わせは見出せない。 他のコードに対する検討結果としては、CASMO-4 の検討結果がある。前述の通り、 CASMO-4/B4 は、MOX ベンチマーク結果の無限増倍率において他のコードと異なった傾向 を示していたが、臨界実験解析結果では、VIP-BWR,-PWR ともほぼ良好、MISTRAL で過大 評価(但し、MVP/JENDL-3.2 ほどではない)という結果になっている。因みに VIP-BWR では、 JEF-2.2 の結果も報告されているが、B4 の結果とほとんど同じである。このようにベンチマ ーク結果で見られた差異が臨界実験解析結果において見られないのは、プルトニウム富化 度の違いにあることが判っている。高富化度MOX 燃料による臨界実験が待たれるところで ある。 実効増倍率以外の結果としては出力分布があるが、一部の問題を除いて概ね実験と解析 の一致は良好であり、これはベンチマーク結果のばらつきが少ないこととあいまって、解 析結果の信頼性が高いことを示している。上述の一部の問題とは、UO2領域とMOX 領域の 出力ミスマッチの再現性の問題であるが、これは実験データ側に検討の余地があるようで、 現状では解析結果を吟味する材料には使わないほうが良さそうである。 燃焼後の各核種存在量の検討として、照射後試験で得られた UO2燃料棒中の核種存在量 の測定結果と SRAC 解析結果の比較に基づく検討が行われた。そして、UO2ピンセルベン チマーク解析結果において比較的ばらつきが大きく、また信頼性の高い C/E 結果が得られ ていると考えられるNp-237, Pu-238, Am-242m, Cm-244, Cm-245, Sm-152 について最良解の推 定を試みた。 6.各解析項目に対する要求精度の検討 本検討の意図は、ベンチマーク結果のばらつきの大きさと核設計上の要求とを比較する ことであったが、本件についての議論をはじめてみて、これは各メンバーにとって正面か ら取り組むには大変に難しい課題であることが判明した。結果的に、ピンセルや集合体計 算のみの要求精度を明示することは現状、困難であり、検討の中心は要求精度を議論する 上での前提として、各種核特性と炉心挙動等との定性的な関係の整理、臨界実験測定誤差 及び到達限界精度という観点からの内容に移っていった。
7.現行炉心の解析精度との比較 今までに提唱されたBWR ベンチマーク問題との比較の観点からの検討が行われた。従来 のベンチマーク結果と今回の結果では、特にばらつきの増大等は見られないことが報告さ れたが、これは参加機関やコードの水準のばらつきも反映されるものであるので、必ずし も精度の比較にはならないとのことである。結果的に、本件も前節と同様、大変に扱いに くい課題であった。 8.望まれる実験や今後の研究課題の抽出、提案 連続エネルギーモンテカルロ計算を参照解とするために残された課題、望まれる実験・ 測定データとして、軽水炉取り出し燃料組成のプルトニウムからなる高富化度MOX 燃料を 用いた臨界実験、ウラン燃料領域と MOX 燃料領域の出力ミスマッチの精度良い測定、 Rh-103、Gd-155 等の照射後生成量データの必要性等があげられた。 9.おわりに 以上、本 WP の活動を開始する時点で、目標に掲げた項目ごとに、成果の概要について 述べてきた。詳細については、近々、第1 期と同様に JAERI-Research として刊行の予定で ある。もとより高い目標を掲げたため、困難な課題も多く、目標に対して100%の成果を得 たとまでは言えない。しかしながら、軽水炉の核解析手法や同精度について、実用の最前 線に従事する技術者を含めた専門家の間で、具体的な解析結果に基づいてでき得る限りの 分析が行われ、それらを背景に真摯な議論が繰り返されたことは大変に価値があることと 考える。限られた時間と資源の中でここまでの成果を出せたことは十分に満足のいく結果 であると総括したい。 今後、これだけの資産をどう生かしていくかは、大変に重要な課題である。もとより本 WP の各メンバーは、率先して広報活動に努め、貴重なデータ集が国内外で広く利用される よう努力を払っていくべきであるが、炉物理部会員各位におかれても、この貴重な資産の 活用についての検討・提案等をお願いしたい。また、日本原子力研究所においては、ホー ムページの運営管理に対して組織的な対応がなされることを期待したい。 平成14 年 8 月末に明らかになった原子力発電施設における自主点検記録の不正等の問題 では、原子力事業者の品質管理の徹底、透明性の確保、また規制側の判断根拠の明確化、 等様々な対応が必要となった。炉物理や核データの分野では、そうした問題に直面するこ とが少なく、正面からの取り組みは従来、少なかったように思われる。今回の WP の成果 としては、炉物理・核データへの研究課題を提供するという本来の目的と同時に、上記の 問題への取り組みの端緒を生み出すことができたのではないかと考えている。折しも、先 般の日本原子力学会・2003 年秋の大会(静岡大学)においては、「核データ・炉物理研究は、 社会にいかに係わるべきか」というテーマで企画セッションが開催され、核設計コードの 精度評価の客観的な基準作りが今後共同で取り組むべき課題のひとつとして議論された。
近々、核データ・炉物理部会合同で、具体的な活動への準備が開始されようとしている。
こうした活動へも、今回のWP 活動の成果と実績が生かされていくことを願うものである。
参考文献
1) 炉物理研究委員会, “軽水炉次世代燃料の炉物理に関するベンチマーク問題の提案及び 解析結果”, JAERI-Research 2001-046 (2001).
2) LWR Working Party, Research Committee on Reactor Physics, Etsuro Saji (Secretariat of the Nuclear Safety Commission), “Proposal and Preliminary Analysis of the Benchmark Problem Suite for Reactor Physics Study of LWR Next Generation Fuels”, 日本原子力学会 2001 年秋 の大会(北海道大学), 日韓ジョイントセッション(炉物理部会, 核データ部会合同), (2001). 3) 奥村啓介(原研), 宇根崎博信(京大炉), 北田孝典(阪大・工), 佐治悦郎(原子力安全委員会 事務局), “軽水炉次世代燃料の炉物理ベンチマーク(1) -ピンセル問題の結果-”, 日本 原子力学会2002 年春の年会 F19 (2001). 4) 宇根崎博信(京大炉), 奥村啓介(原研), 北田孝典(阪大・工), 佐治悦郎(原子力安全委員会 事務局), “軽水炉次世代燃料の炉物理ベンチマーク(2) -PWR 集合体問題の結果-”, 日 本原子力学会2002 年春の年会 F20 (2001). 5) 北田孝典(阪大・工), 宇根崎博信(京大炉), 奥村啓介(原研), 佐治悦郎(原子力安全委員会 事務局), “軽水炉次世代燃料の炉物理ベンチマーク(3) -BWR 集合体問題の結果-”, 日 本原子力学会2002 年春の年会 F21 (2001).
6) Etsuro Saji (Nucl. Safety Commission-Japan), “Proposal and Analysis of the Benchmark Problem Suite for Reactor Physics Study of LWR Next Generation Fuels”, 2002 ANS Annual Meeting, Hollywood, Florida, June 9-13, Trans. Am. Nucl. Soc., 86, pp330-331 (2002).
7) A. Yamamoto, T. Ikehara, T. Ito, E. Saji, “Benchmark Problem Suite for Reactor Physics Study of LWR Next Generation Fuels,” J. Nucl. Sci. Technol. 39, No.8, pp900-912 (2002).
8) K. Okumura, H. Unesaki, T. Kitada and E. Saji, “Benchmark Results of Burn-up
Calculation for LWR Next Generation Fuels,” Proc. of Int. Conf. on the New Frontiers of Nuclear Technology : Reactor Physics, Safety and High-Performance Computing (PHYSOR 2002), 9A-03(paper index number in CD), Seoul, Korea, 7-10 October, (2002).
9) H. Unesaki, K. Okumura, T. Kitada and E. Saji, “Update Status of Benchmark Activity for Reactor Physics Study of LWR Next Generation Fuels (invited)”, 2003 ANS Annual Meeting, San Diego, California, June 1-5, Trans. Am. Nucl. Soc., 88, pp.436-438 (2003). 10) T. Kitada, K. Okumura, H. Unesaki and E. Saji, “Analysis of Benchmark Results for
Reactor Physics of LWR Next Generation Fuels”, Proc. of Int. Conf. on The Physics of Fuel Cycles and Advanced Nuclear Systems: Global Developments (PHYSOR 2004), Chicago, IL USA, 25-29 April, (2004), to be published.