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日本公衆衛生看護学会誌 JJPHN Vol.5 No.2 (2016) 研 究 日本の中学生のいじめの加害経験に関連する要因 クラスレベルと個人レベルでの検討 Factors Influencing the Experience of Bullying among Japanese Junior H

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Academic year: 2021

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日本の中学生のいじめの加害経験に関連する要因

―クラスレベルと個人レベルでの検討―

Factors Influencing the Experience of Bullying

among Japanese Junior High School Students:

Analyses at Class and Individual Levels

水田明子

1)

,岡田栄作

2)

,尾島俊之

2)

Akiko Mizuta

1)

, Eisaku Okada

2)

, Toshiyuki Ojima

2)

抄  録 目的:中学生のいじめの加害経験と,クラスの結束,いじめの被害経験,時間的展望,家族構成,経済状況との関連 を明らかにする. 方法:2012 年 12 月から 2013 年 1 月に,公立中学校 8 校の生徒(N=2,968 人)に調査を行った.いじめの加害と被 害経験の有無は 2 値変数にした.生徒同士の繋がりを 4 項目 4 段階評価で尋ね,クラスの平均値を算出し「クラスの 結束」と定義した.いじめの加害経験を目的変数,クラスの結束,いじめの被害経験,時間的展望,家族構成,経済 的余裕を説明変数とした単変量ロジスティック回帰分析を行った. 結果:クラスの結束が高いといじめの加害経験のオッズ比が低かった(男:OR=0.44,95%CI=0.29–0.67;女: OR=0.59,95%CI=0.37–0.95).いじめの加害経験は被害経験と正の関連,現在の充実感と過去受容は負の関連があっ た. 考察:クラスの結束はいじめの加害経験と関連した.いじめ防止対策にはクラスレベルでの信頼の構築が重要であり, 現在の充実感,過去受容への働きかけも有用である. Abstract

Objective: The aim of this study was to examine associations among the experiences of bullying and being bullied, cohesion of classmates, time perspectives, family structures, and economic situations.

Methods: Between December 2012 and January 2013, a survey was conducted involving students in all grades of eight public junior high schools (N=2,968). The experiences of bullying and being bullied were classified into binary variables. There were four questions based on a four-grade assessment exploring the students’ ties with other classmates. The mean of each class was calculated and defined as the value representing the “cohesion of the class.” A univariate logistic regression analysis was conducted with the experience of bullying as the objective variable, and the experience of being bullied, cohesion of the class, time perspectives, family structures, and economic situations as explanatory variables.

Results: The higher the cohesion of the class, the lower the odds ratio of the experience of bullying (Males: OR=0.44, 95% CI=0.29–0.67; Females: OR=0.59, 95% CI=0.37–0.95). For both male and female students, there was a positive association between the experience of bulling and being bullied, and a negative association between self-fullness and acceptance of past. Discussion: These results suggest that the cohesion of classmates is associated with a decrease in the experience of bullying. To develop measures for the prevention of bullying, it is important to nurture trusting relationships at the class level. It is also necessary to promote self-fullness and acceptance of past as personal factors.

1) 浜松医科大学医学部看護学科地域看護学講座(Department of Community Health Nursing, Hamamatsu University School of Medicine) 2) 浜松医科大学医学部医学科健康社会学医学講座(Department of Community Health and Preventive Medicine, Hamamatsu University

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キーワード:中学生,いじめ,結束,時間的展望,クラス,学校

Keywords: junior high school student, bulling, cohesion, time perspective, class, school 受付日:2015 年 10 月 7 日 受理日:2016 年 3 月 30 日

I.緒言

児童生徒の自殺の原因・動機は,学校問題(40.8%) が最も多く,次いで健康問題(19.5%),家庭問題 (18.4%)の順であり,学校問題の中でいじめが原因の 自殺は 1.8%と少ない(文部科学省,2014a).しかし, これらの統計は遺書等の資料により明らかに推定でき る原因・動機であるため過小評価の可能性がある.児 童生徒の自殺は周囲に与える影響が非常に大きく連鎖 による自殺が起こる可能性もあるため,自殺対策とし ていじめの防止は重要な課題である. 文部科学省は 1996 年に「児童生徒の問題行動等に 関する調査研究協力者会議」を設置し,いじめ問題へ の取り組みを始めた.しかし,いじめによる自殺の実 態が正確に把握できていないことから,平成 18 年に 「児童生徒の自殺予防に向けた取組に関する検討会」が 立ち上げられた.このような対策にも関わらず,いじ めの認知件数は減少したものの深刻ないじめやいじめ が原因の自殺は増加したため,平成 25 年にいじめ防 止対策推進法が制定された.総則では,いじめを「児 童等に対して,当該児童等が在籍する学校に在籍して いる等当該児童等と一定の人的関係にある他の児童等 が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インター ネットを通じて行われるものを含む.)であって,当該 行為の対象となった児童等が心身の苦痛を感じている もの」と定義している.全学校におけるいじめに関す るアンケート調査の実施率は 95.5%と高いが,いじめ を認知した学校数は 51.8%と約半数である.また,い じめ問題について教職員間での共通理解を図った学校 は 94.3%と高い(文部科学省,2014b).しかし,いじ めの認知だけではなく生徒全員に対していじめを未然 に防止するためには,クラスや学校レベルでの具体的 な対策が必要である. いじめに関連する要因を明らかにした先行研究では, いじめの被害者,加害者の個人性質に焦点を当てたも のが多い.被害者は自尊感情が低く,孤独感が高い, 加害者は保護者,他の生徒や先生との関係に問題があ る傾向がみられ,いじめ行為に対して肯定的である(笹 澤,2000).また,被害者は抑うつや不安のストレス 症状が高く,加害者は無気力で不機嫌や怒りのレベル が高い(岡安ら,2000).加害者は学校生活での友人 関係は良好で自尊心が高いが,規則の遵守の欠落や攻 撃性が強く,共感的な認知や感情が低い(本間, 2003).欧米では加害者に対する暴力防止を目的とし た教育的プログラムが多く,社会的問題解決のトレー ニングや怒りのマネジメントプログラム(Frey et al., 2000;Hollenhorst, 1998),第 3 者の生徒が葛藤を抱え る生徒の問題を明らかにして平和的解決に導くピア・ メディテーション(Meyer et al., 2000)が行われてい る.一方,日本では系統的ないじめ防止プログラムは ない(松尾,2002).潜在化するいじめに被害者自身 が対処できるようにするため,不利な状況下に置かれ た時に知識や適切な反応を通じて自己信頼や社会能力 の増強を可能にする方法であるレジリエンス(Rutter, 1985),支援の希求に必要なソーシャル・サポート (Schaefer et al., 1981)や,日常生活で生じるさまざ まな問題や要求に建設的かつ効果的に対処するために 必要な能力であるライフスキル(WHO, 1997)が必要 であると考えられ,これらが高いといじめの被害経験 が少ないことが報告されている(菱田ら,2012).し かし,個人要因の家族構成や経済状況,現在の状況を 過去や未来の事象と関連付ける意識的な働きである時 間的展望(南ら,2011)が,どのようにいじめに影響 するかを明らかにした研究はない.時間的展望とは, Lewin(1951)により,ある一定の時点における個人 の心理学的過去,及び未来についての見解の総体であ ると定義され,日本でも心理学研究の分野で多く用い られている(杉山,1994;佐藤ら,2012).この時間 的展望はレジリエンスと関連する(大石ら,2009). さらに,いじめに関連するクラスレベルの影響を明ら かにした研究は少なく,学級規範といじめの相関を明 らかにした研究(大西,2007)は対象数が小さい.学 校におけるいじめの発生と勉強,友人,教師のストレッ サーとの相関(滝,2004)や,無視やうわさ等の間接 的ないじめはクラスの中で最も生じやすい(Rivers et al., 1994)ことから,いじめには学校で長時間行動を 共にするクラスの仲間やグループの影響が予測できる. 本研究の目的は,いじめの加害経験と,クラスレベ

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ルの要因としてクラスの結束,個人レベルの要因とし ていじめの被害経験,時間的展望,家族構成,経済状 況との関連を明らかにすることである.

II.研究方法

1.調査対象と調査期間 平成 24 年 12 月から平成 25 年 1 月に静岡県の菊川 市と湖西市にある全ての公立中学校 8 校で調査を行っ た.調査対象の生徒は特別支援クラスの生徒を除く全 学年の 2,968 人であった.校長,教員,保護者と生徒 に文書で説明を行い,同意が得られた生徒に自記式質 問紙調査票を用いて回答を求めた.調査はクラス担任 の指導の下,授業中に実施した. 2.調査項目 個人レベルの要因として,いじめの加害経験といじ めの被害経験,時間的展望,属性の性と学年,同居し ている全ての家族と経済状況を把握した.過去 1 年間 のいじめの加害経験といじめの被害経験は,「ない」 「1~2 回」「3 回以上」で尋ねた(Saluja et al., 2004). 時間的展望体験尺度(白井,1994)を用いて下位尺度 の目標指向性,希望,現在の充実感,過去受容を把握 した.回答は 5 段階評価で,「当てはまらない」「どち らかといえば当てはまらない」「どちらともいえない」 「どちらかといえば当てはまる」「当てはまる」と設定 した.目標指向性と現在の充実感は各 5 項目で,得点 範囲は 5~25 点,希望と過去受容は各 4 項目で,得点 範囲は 4~20 点である.得点が高いほど時間的展望が 高い.経済状況は家庭の経済的な暮らしの余裕につい て,「ない」「余りない」「普通」「ややある」「ある」の 5 段階評価で尋ねた. クラスレベルの要因として,Grootaert et al.(2004) のソーシャル・キャピタルを 6 つの側面①グループと ネットワーク,②信頼と連帯,③協調行動と協力,④ 情報とコミュニケーション,⑤社会の結束と一体性, ⑥エンパワーメントと政治的行動に分けた質問紙調査 から,生徒同士の繋がりに関する質問項目を作成した. 社 会 の 結 束 と 一 体 性 の “ In your opinion, is this neighborhood generally peaceful or marked by violence?”を参考に,『あなたはクラスの決まりごと を守っていますか』について「全く守らない」「余り守 らない」「大体守る」「いつも守る」の 4 段階評価で尋 ねた.信頼と連帯の“In general, do you agree or disagree with the following statements? Most people

who live in this village/neighborhood can be trusted” を参考に,『あなたは周りの人は信頼できると思う』, 協調行動と協力の“If there was a water supply in this community, how likely is it that people will cooperate to try to solve the problem?”を参考に,『あなたのク ラスは何か問題が起きた場合に力を合わせて解決する』 を作成した.また,国立教育政策研究所 OECD 国際教 員指導環境調査(2013)の『お互いに助け合う協力的 な学校文化がある』を参考に『あなたのクラスは普段 生徒がお互いに助け合っている』を作成した.これら の 3 項目は,「そう思わない」「どちらかといえばそう 思わない」「どちらかといえばそう思う」「そう思う」 の 4 段階評価で尋ねた.辻(2014)は,「まわりの人々 はお互いに挨拶をしている」「まわりの人々は信頼でき る」「いま何か問題が生じた場合,人々は力を合わせて 解決しようとする」「まわりの人々はお互いに助け合っ ている」を 5 段階評価し,東日本大震災後の住民の地 域の繋がりを測定するための尺度として使用している. 4 項目の合計点を用いていることから,本研究でも同 様の項目数とした. 3.分析方法 生徒同士の繋がりを測定した 4 項目の個人の合計得 点から,各クラスの平均値を算出し『クラスの結束』 と定義して各クラスの生徒のデータに結合した.クラ スの特性に合った介入方法を検討するため,クラスの 結束を四分位数で区分した.いじめの加害経験とのク ロス集計の分布から,第 1 四分位数未満を低値,第 1 四分位数以上第 3 四分位数未満を中値,第 3 四分位数 以上を高値とした.目標指向性,希望,現在の充実感, 過去受容は各項目の満点で個人の得点を除した.いじ めの加害経験はいじめの被害経験とのクロス集計の分 布の傾向から,「ない」,1~2 回と 3 回以上を「ある」, 家族構成は,「実の両親 と「一人親又は再婚」(Bond et al., 2001),経済的余裕はいじめの加害経験とのクロ ス集計の分布からいじめの加害経験が増加する,余裕 が「無」「無以外」の 2 値に分けた. いじめの加害経験とクラスの結束,いじめの被害経 験,性,学年との関連についてクロス集計,χ2乗検定 を行った.いじめの加害経験の有無別に,目標指向性, 希望,現在の充実感,過去受容の平均値を比較し t 検 定を行った.いじめの加害経験を目的変数,クラスの 結束,いじめられた経験,目標指向性,希望,現在の 充実感,過去受容,学年,家族構成,経済的余裕を説

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明変数とした単変量ロジスティック回帰分析を行った. 本研究の分析ソフトは,SPSS ver. 22.0J(IBM Corp., Armonk, NY, USA)を使用した.

4.倫理的配慮 調査票は無記名とし,一人ずつ封筒に入れ封をし, クラス単位で大袋にまとめて回収した.回答拒否があっ た生徒の調査票は,白紙のまま封筒に封をして回収し た.本研究は浜松医科大学医の倫理委員会の承認(2012 年 11 月 28 日 24-147)を得て行われ,ヘルシンキ宣言 の基準に準ずる.

III.研究結果

使用した全ての変数に欠損値が無い 2,613 人(男: 1,292,女:1,321)を分析対象とした.有効回答率は 88.0%であった.いじめの加害経験のある生徒は男 19.3%,女 9.6%,いじめの被害経験のある生徒は男 18.7%,女 20.1%であった.一人親又は再婚の家族構 成は,男 17.5%,女 18.0%であった.経済的余裕がな いと回答した生徒は男 4.4%,女 3.5%であった(表 1). χ2乗検定の結果,男女共,いじめの被害経験はいじ めの加害経験と有意な関連(p<0.001)があった.男 で , ク ラ ス の 結 束 ( p<0.001 ), 経 済 的 余 裕 (p=0.024),学年(p<0.001)はいじめの加害経験と 有意な関連があった.男女共,家族構成はいじめの加 害経験と有意な関連は無かった(表 2). t 検定の結果,いじめた経験と現在の充実感(男: p<0.001,女:p=0.014),過去受容(男:p<0.001, 女:p=0.040)の平均値は,いじめた経験の有無別で 有意な差があった.男女共,目標指向性と希望は平均 値に差が無かった(表 3). 単変量ロジスティック回帰分析の結果,クラスの結 束の高値はいじめの加害経験のオッズ比が有意に低 か っ た ( 男 : OR=0.44 , 95%CI=0.29 – 0.67 ; 女 : OR=0.59,95%CI=0.37–0.95).いじめの被害経験が 有と回答した生徒は無と回答した生徒と比較して, いじめの加害経験のオッズ比は有意に高かった (男:OR=5.37,95%CI=3.94–7.30;女:OR=6.79, 95%CI=4.63–9.96).現在の充実感(男:OR=0.22, 95%CI=0.10–0.48;OR=0.26,95%CI=0.10–0.68), 過去受容(男:OR=0.18,95%CI=0.08–0.39;女: OR=0.37,95%CI=0.14–0.96)は,いじめの加害経験 と有意な負の関連があった.男で,いじめの加害経験 のオッズ比は,2 年生(OR=0.51, 95%CI=0.37–0.71) と 3 年生(OR=0.44, 95%CI=0.31–0.61)で有意に低 かった.また,経済的余裕が無と回答した生徒は無以 外の生徒と比較して,いじめの加害経験のオッズ比は 有意に高かった(OR=2.01, 95%CI=1.13–3.57)(表 4). 表 1 対象者の特性 男(N=1,292) 女(N=1,321)

mean(SD)/n range/% mean(SD)/n range/%

クラスの結束 12.37(0.91) 10.36–14.65 12.36(0.91) 10.36–14.65 いじめの加害経験 無 1043 80.73 1194 90.39 有 249 19.27 127 9.61 いじめの被害経験 無 1051 81.35 1056 79.94 有 241 18.65 265 20.06 時間的展望体験 目標指向性 0.68(0.20) 0.20–1.00 0.70(0.18) 0.20–1.00 希望 0.64(0.16) 0.20–1.00 0.64(0.16) 0.20–1.00 現在の充実感 0.70(0.18) 0.20–1.00 0.68(0.19) 0.20–1.00 過去受容 0.72(0.17) 0.20–1.00 0.68(0.19) 0.20–1.00 家族構成 実の両親 1066 82.51 1083 81.98 一人親又は再婚 226 17.49 238 18.02 経済的余裕 無以外 1235 95.59 1275 96.52 無 57 4.41 46 3.48 学年 1 年生 425 32.89 442 33.46 2 年生 437 33.82 441 33.38 3 年生 430 33.28 438 33.16

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IV.考察

1.いじめの加害経験に関連するクラスレベルの要因 本研究は,いじめの加害経験とクラスの結束の関連 を初めて明らかにした.既に,いじめに関するクラス レベルの要因として,いじめに関与している生徒は教 員を不公平で問題解決能力が低いと評価していること が明らかになっている(Rigby et al., 2003).本研究で はクラスの結束という生徒主体の取り組みにいじめ防 止の可能性があることが示唆された.いじめの発生に は,積極的加害者,追従的加害者,いじめを見て笑う 観衆,いじめを止めに入り被害者を慰める擁護者,被 害者の 5 つの役割が存在する(Salmivalli et al., 1996). クラスの結束の高値はいじめの加害経験と負の関連が あったことから,全ての生徒を対象としてクラスの結 束の強化を図ることはいじめ防止につながる可能性が ある.具体的には,結束を構成する信頼や助け合いの 関係を構築し,規律を守るクラスづくりが重要である. 本研究の結果は単変量解析によるものである.今後, 交絡因子を調整した分析と,環境要因への介入可能性 を拡大するためにはクラス担任のサポートも含めた機 序の検討が必要である. 2.いじめの加害経験に関連する個人レベルの要因 男女共,いじめの被害経験はいじめの加害経験の高 いリスク要因であり,いじめの被害者と加害者の関係 は相互に流動的であることが考えられる.いじめの関 与者は比較的短期間で入れ替わり,常習的ないじめの 被害者,加害者は其々約 3 分の 1 程度(文部科学省, 2013)で,いじめの関与は,どの生徒にも関わる問題 である.本研究では,いじめの被害と加害経験の有無 に焦点を当てた.今後は,被害と加害の両方の経験者, 加害か被害のどちらか一方,又はどちらにも無関係な 者について,クラスの結束の程度による差異を明らか 表 2 対象者のクラスの結束,いじめの被害経験,家庭要因,学年といじめの加害経験との関連 男(N=1,292) 女(N=1,321) 加害無 加害有 加害無 加害有 n % n % p n % n % p クラスの結束 低値 235 (75.08) 78 (24.92) <0.001 298 (91.13) 29 (8.87) 0.077 中値 531 (79.25) 139 (20.75) 568 (88.61) 73 (11.39) 高値 277 (89.64) 32 (10.36) 328 (92.92) 25 (7.08) いじめの被害経験 無 911 (86.68) 140 (13.32) <0.001 1001 (94.79) 55 (5.21)<0.001 有 132 (54.80) 109 (45.20) 193 (72.80) 72 (27.20) 家族構成 実の両親 861 (80.77) 205 (19.23) 0.926 978 (90.30) 105 (9.70) 0.904 一人親又は再婚 182 (80.53) 44 (19.47) 216 (90.76) 22 (9.24) 経済的余裕 無以外 1004 (81.30) 231 (18.70) 0.024 1154 (90.51) 121 (9.49) 0.440 無 39 (68.42) 18 (31.58) 40 (86.96) 6 (13.04) 学年 1 年生 308 (72.47) 117 (27.53) <0.001 391 (88.46) 51 (11.54) 0.235 2 年生 366 (83.75) 71 (16.25) 404 (91.61) 37 (8.39) 3 年生 369 (85.81) 61 (14.19) 399 (91.10) 39 (8.90) χ2検定 表 3 時間的展望体験といじめの加害経験との関連 男(N=1,292) 女(N=1,321) 加害無 加害有 加害無 加害有

mean SD mean SD p mean SD mean SD p

目標指向性 0.68 (0.19) 0.69 (0.20) 0.489 0.70 (0.18) 0.68 (0.17) 0.158

希望 0.65 (0.15) 0.63 (0.17) 0.052 0.64 (0.16) 0.62 (0.16) 0.136

現在の充実感 0.71 (0.18) 0.66 (0.18) <0.001 0.69 (0.19) 0.64 (0.21) 0.014

過去受容 0.73 (0.17) 0.67 (0.17) <0.001 0.69 (0.19) 0.65 (0.18) 0.040

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にすることで,いじめへの関与の傾向を考慮した集団 への働きかけが可能になると考える.更に,個人要因 といじめとの関連にクラスの結束が与える影響を明ら かにすることで,個人要因とクラスレベルの要因の介 入による相乗効果が期待できる. 都築(1982)は,時間的展望の概念は,人が自己の 過去や未来にどのような出来事を想起あるいは予測す るかという認知的側面と,個人の過去,現在,未来に 対する positive ないし negative な態度的側面を含むと している.白井(1994)の時間的展望体験尺度は,過 去は受容,現在は充実で捉えることができ,過去・現 在・未来に対する個人の肯定的あるいは否定的態度を 測定している.過去受容は学校適応感や自己効力(南 ら,2011),現在の充実感は Rotter(1966)の Locus of control の概念である内的統制と関連がある(杉山 ら,1996).本研究では,現在の充実感と過去受容は いじめの加害経験と負の関連があった.よって,いじ め防止のための生徒への個別的な働きかけとして,過 去や現在の体験を肯定的に受け止められる支援が必要 である.そのためには,自己効力や内的統制を高める 働きかけも有用な可能性がある. 一般的にメンタルヘルスのリスク要因である家族構 成(Tousignant et al., 1999;Gould et al., 2003)は, いじめとの関連も考えられる.しかし,本研究では家 族構成といじめの加害経験に関連は無く,男で経済的 余裕の無さはいじめの加害経験と正の関連があった. この 2 つの結果は韓国(Kim et al., 2004)の先行研究 と同様である.経済状況といじめの関連はトルコの調 査(Sahin et al., 2011)でも明らかになっている.い じめの背景に経済的要因があることを考慮した対応も 必要であろう. 3.性別にみたいじめの加害経験と被害経験 男はいじめの加害経験,女はいじめの被害経験を多 く報告した.男は殴る蹴る等の身体的暴力や冷やかし やからかい等の言語的暴力による直接的ないじめが多 く,女は仲間外れや無視,嘘や噂を風潮する等の間接 的ないじめが多い(Wang et al., 2009).男は直接的な いじめが多いため,いじめの加害経験を自覚しやすい ことがいじめの加害経験を多く報告した理由と考えら 表 4 いじめの加害経験と関連する要因 男(N=1,292) 女(N=1,321) OR 95%CI p OR 95%CI p クラスの結束 低 1.27 (0.92–1.74) 0.142 0.76 (0.48–1.19) 0.228 中 ref ref 高 0.44*** (0.29–0.67) <0.001 0.59* (0.37–0.95) 0.031 いじめの被害経験 有(ref:無) 5.37*** (3.94–7.30) <0.001 6.79*** (4.63–9.96) <0.001 時間的展望体験 目標指向性 1.29 (0.63–2.61) 0.489 0.49 (0.18–1.32) 0.158 希望 0.42 (0.17–1.01) 0.052 0.41 (0.13–1.32) 0.136 現在の充実感 0.22*** (0.10–0.48) <0.001 0.26** (0.10–0.68) 0.006 過去受容 0.18*** (0.08–0.39) <0.001 0.37* (0.14–0.96) 0.040 家族構成 一人親又は再婚(ref:実の両親) 1.02 (0.71–1.46) 0.934 0.95 (0.59–1.54) 0.831 経済的余裕 無(ref:無以外) 2.01* (1.13–3.57) 0.018 1.43 (0.59–3.44) 0.424 学年 1 年生 ref ref 2 年生 0.51*** (0.37–0.71) <0.001 0.70 (0.45–1.10) 0.120 3 年生 0.44*** (0.31–0.61) <0.001 0.75 (0.48–1.16) 0.198 単変量ロジスティック回帰分析 OR:オッズ比;95%CI:95%信頼区間 * p<0.05, ** p<0.01, *** p<0.001

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れる.本研究では男のみ学年が上がるほどいじめの加 害経験が少なかったが,先行研究では年齢といじめの 関連の方向性は国や性により異なり一定していない (Craig et al., 2009). 4.研究の限界と強み 本研究の限界の 1 つ目は,横断研究であり因果関係 については言及できないことである.2 つ目は,いじ めの被害と加害の経験は自己申告であるためいじめに 対する問題意識によりいじめの実態とは異なる可能性 がある.WHO による調査でも,一週間に数回程度の いじめの加害は男 6.3%–41.4%,女 5.1%–33.8%と範囲 が広い(Due et al., 2005).いじめの認知件数は減少 しているものの暴力行為の発生件数は小学生と中学生 で増加しているため,いじめが潜在化している可能性 も考えられる(文部科学省,2014b).教員が把握する いじめの実態調査等,関連する他の指標を用いた妥当 性の検証が必要である.本研究の強みは,8 校の中学 で全ての生徒に対して調査し有効回答率も高いことか ら,一般的な日本の中学生の代表性はある程度確保で きている.しかしながら,地域差や学校種別を考慮し たさらなる調査が必要である.

V.結論

男女共にクラスの結束,いじめの被害経験,現在の 充実感と過去受容は,いじめの加害経験と有意に関連 することが明らかになった.いじめ防止対策として, 個人要因への対応と共にクラスレベルでの信頼の構築 が重要である.本研究は,クラスレベルの要因を明ら かにしたことにより,いじめ防止のポピュレーション アプローチに貢献できる.

謝 辞

本研究にご協力を頂いた 2 市の公立中学校の生徒と 教員の皆様,学校長,教育委員会の皆様に感謝申し上 げます. 尚,本研究は,日本学術振興会科学研究費補助金基 盤研究(C)(No. 24593437, 15K11880)(研究代表者: 水田明子)の補助を受けて実施した. 文 献

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