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Vol.18 , No.1(1969)043田中 良昭「敦煌本「圓明論」について」

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Academic year: 2021

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敦 燈 本 ﹁ 圓 明 論 ﹂ に つ い て ( 田 中 )

﹁圓

敦 焼 出 土 文 献 の 中 に、 ﹃ 圓 明 論 ﹄ と 題 す る 一 巻 の あ る こ と を、 最 初 に 明 ら か に し た の は、 昭 和 六 年 ( 一 九 三 一 ) に 出 版 さ れ た 陳 垣 の ﹃ 敦 燵 籾 蝕 録 ﹄ で あ る。 そ の 服 字 6 に つ い て の 記 載 を 見 る と、 八 紙、 二 三 九 行 か ら な り、 ﹁ 全 巻 砕 損 八 十 四 行。 巻 首 題 日 圓 明 論 馬 鳴 菩 薩 造。 而 文 與 起 信 論 大 同。 云 々 ﹂ と 記 さ れ て い る。 今 こ れ を 北 京 本 と よ ぶ。 次 に パ リ ー の 国 民 図 書 館 所 蔵 の ペ リ オ 将 来 敦 燵 文 献 の 内 に も、 二 種 の ﹃ 圓 明 論 ﹄ の 存 在 が 知 ら れ て い る。 す な わ ち 戦 前 パ リ ー で、 未 整 理 の 敦 煙 文 献 の 中 か ら、 ﹃ 傳 法 寳 紀 ﹄ の 完 本 を 含 む 長 巻 P 三 五 五 九 号 を 発 見 さ れ た 神 田 喜 一 郎 博 士 が、 昭 和 一 七 年 ( 二 九 四 二 )、 ﹁ 傳 法 寳 紀 の 完 秩 に つ い て ﹂ と 題 す る 論 文 を 発 表 さ れ た 際、 そ の 解 説 で ﹃ 圓 明 論 ﹄ に 触 れ て、 ﹁ 最 初 に 書 写 さ れ て ゐ る の は、 巻 首 が 闘 け て ゐ る た め に、、 何 書 で あ る か 詳 ら か で な い が、 然 し そ の 文 中 に、 辮 明 修 繹 因 果 品 第 三、 辮 明 三 乗 逆 順 観 品 第 四、 簡 異 外 道 縁 生 根 本 品 第 五、 入 道 邪 正 五 門 辮 因 果 品 第 六、 自 心 現 量 品 第 七、 辮 明 聲 量 品 第 九 と そ の 品 名 が 見 え て ゐ る か ら、 専 門 学 者 な ら ば 或 は 証 定 出 来 よ う か と 思 ふ。 但 だ 第 八 品 は 何 故 か 閾 け て 存 せ な い。 そ の 次 に は、 圓 明 論 一 巻 と 題 し て そ の 全 文 が 書 写 さ れ て ゐ る。 こ れ は 同 じ 内 容 の も の が ま た 第 三 六 六 四 号 文 書 に も 存 在 す る が、 陳 垣 氏 の 敦 煙 籾 鯨 録 ( 第 五 冊 ) に 拠 る と、 北 京 圖 書 館 の 敦 燈 遺 書 中 に も 断 簡 が 存 在 す る ら し い。 馬 鳴 菩 薩 造 と 伝 へ ら れ る 侠 籍 で あ る。 ﹂ と 述 べ ら れ、 ペ リ オ 本 二 種 と 北 京 本 の 存 在 を 示 さ れ た の で あ る。 更 に こ の 三 本 の 他 に、 石 井 光 雄 氏 が 所 蔵 さ れ て い た 敦 燵 文 献 の 中 に ﹃ 絶 観 論 ﹄ が あ り、 こ れ が 昭 和 二 〇年(一九 四 五 ) に 鈴 木 大 拙 博 士 編、 古 田 紹 欽 博 士 校 で 出 版 さ れ た 際、 そ の 解 題 に、 ﹁ 巻 首 に は,﹁□□ 妄 想 品 第 八 ﹂ ﹁ 辮 明 聲 髄 品 第 九 ﹂ と の み 知 ら れ て ゐ る 失 題 の も の、 及 び そ れ に 続 い て ﹁ 圓 明 論 ﹂ 一 巻 と 称 す る も

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-204-の が あ り、 最 後 に ﹁ 絶 観 論 ﹂ が あ る。 云 々 ﹂ と し て、 ﹁ 絶 観 論 ﹂ の 前 に ﹁ 圓 明 論 ﹂ 一 巻 の あ つ た こ と が 述 べ ら れ て い る。 こ れ を 積 翠 軒 本 と 呼 ぶ。 か く し て、 今 か ら 二 十 数 年 も 前 に、 ﹃ 圓 明 論 ﹄ に 四 種 の 異 本 の あ る こ と が 知 ら れ て い た が、 い つ れ も 簡 単 な 紹 介 に と ど ま つ て、 そ の 内 容 は 省 み ら れ な い ま ま に 長 年 月 を 経 過 し た の で あ る。 そ れ が 再 び 問 題 に さ れ る に 至 つ た の は、 昭 和 三 八 年 ( 一 九 六 三 ) に 発 表 さ れ た 柳 田 聖 山 教 授 の 論 文 ﹁ 傳 法 寳 紀 と そ の 作 者 ﹂ に お い て で あ る。 こ の 論 文 は、 P 三 五 五 九 号 文 書 全 般 に わ た つ て の 詳 細 な 検 討 を な さ れ た も の で、 ﹃ 圓 明 論 ﹄ に つ い て も 従 来 の 諸 説 を 総 合 さ れ た 上 に、 独 創 的 見 解 を 述 べ ら れ た も の で あ る。 す な わ ち 教 授 に よ れ ば、 ﹁ 先 づP3559 号 文 書 は、 す で に 紳 田 博 士 が 紹 介 さ れ て い る 様 に、 首 部 断 欠 の た め に 最 初 の 文 書 の 総 題 を 明 か に し 得 ぬ が、 第 二 品 の 途 中 か ら 始 ま つ て、 辮 明 修 繹 因 果 品 第 三、 辮 明 三 乗 逆 順 品 第 四、 簡 異 外 道 縁 生 根 本 品 第 五、 入 道 邪 正 五 門 辮 因 果 品 第 六、 自 心 現 量 品 第 七、 辮 明 聲 * 量 品 第 九 ( 量 は 髄 の 誤 り ) の 章 名 を も つ 長 篇 文 書 で あ る。 内 容 は 如 来 蔵 思 想 に 関 す る も の で あ る が、⋮⋮(中略)⋮⋮禅 宗、 特 に 北 宗 系 の 人 の 作 品 の よ う で あ る。 こ の 文 書 は、 第 九 品 で 完 結 し て い る が、 初 品 と 第 二 品 の 前 半 及 び 第 八 品 が 欠 け て 居 り、 特 に 総 題 が 判 ら ぬ こ と は 残 念 で あ る。 処 が、、 別 に 曾 て 我 が 石 井 積 翠 氏 の 所 有 で あ つ た 敦 煙 文 書 の ・一 つ に、 ﹁ 入 理 縁 門 絶 観 論 ﹂ が あ り、 そ の 首 部 に 同 一 文 書 の □□妄 想 品 第 八、 辮 明 聲 燈 品 第 九 の 二 品 が 写 さ れ て 居 り、 続 い て 今 のP3559 号 と 同 じ く ﹁ 圓 明 論 ﹂ 一 巻 が あ つ た と 云 わ れ る ( 昭 和 二 十 年、 鈴 木 ・ 古 田 校 訂 ・絶 観 論 ・ 弘 文 堂 ) か ら、P3559 号 に 欠 け る 第 八 品 が 補 わ れ る 筈 で あ る が、 こ の 本 は 残 念 乍 ら 今 日 参 照 で き ず、 そ の フ イ ル ム す ら 大 戦 で 焼 失 し 去 つ た。 次 に ﹁ 圓 明 論 ﹂ 一 巻 は、 紳 田 博 士 に よ る と、 弓 G。 ① 象 号 に も 存 す る ら し く、 又 別 に、 陳 垣 氏 の ﹁ 敦 燵 籾 蝕 録 ﹂ 第 十 秩 に は、 北 京 図 書 館 本 の 服 六 號 に つ い て、 ﹁ 全 雀 埣 損 八 十 四 行、 巻 首 題 日、 圓 明 論 馬 鳴 菩 薩 造、 而 文 與 起 信 論 大 同 ﹂ と 言 つ て い る か ら、 同 本 ら し い が、 北 京 本 砕 損 八 十 四 行 に 比 し て、P3559 号 は 首 尾 完 全 で あ り 乍 ら 多 少 短 い 様 に 思 わ れ、 こ の 場 合 も 積 翠 軒 蓉 藏 本 を 参 照 で き ぬ こ と は 残 念 で あ る。 内 容 は 第 九 識、 即 ち 阿 摩 羅 識 に 関 す る も の で、、 如 来 蔵 縁 起 説 の 論 書 で あ る が、 起 信 論 と は 必 ず し も 全 同 で は な い。 馬 鳴 菩 薩 に こ の 論 が あ つ た こ と は 他 に 知 ら れ ず 岱 勿 論 仮 托 の 書 で あ る。 云 々 ﹂ と い う こ と で あ る。 以 上 に よ つ て、 P 三 五 五 九 号、 積 翠 軒 本 共 に、 先 ず 首 部 を 欠 い た 九 品 か ら な る 失 題 の も の が あ り、 そ れ に 続 い て ﹃ 圓 明 論 ﹄ 一 巻 が あ る こ と、 ﹃ 圓 明 論 ﹄ は、 こ の 外 に P 三 六 六 四 号 と 北 京 本 服 字 6 号 に も あ る こ と が 明 ら か に さ れ、 ご れ が 今 日 ま 敦 煙 本 ﹁ 圓 明 論 ﹂ に つ い て ( 田 中 (

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-205-敦 燵 本 ﹁ 圓 明 論 ﹂ に つ い て ( 田 中 ) で 定 説 と な つ て い る。 さ て、 ﹃ 圓 明 論 ﹄ 四 本 の 内、 従 来 我 々 の み る こ と の で ぎ る 唯 一 の 資 料 は、 P 三 五 五 九 号 で あ つ た が、 ロ ン ド ン 大 英 博 物 館 所 蔵 の ス タ イ ン 本 に も、 そ の 六 一 八 四 号 に ﹃ 圓 明 論 ﹄ 開 端 三 行 の 断 片 の 存 在 が 知 ら れ、 ま た 近 年 東 洋 文 庫 に 収 蔵 さ れ た 北 京 本 の フ ィ ル ム の 申 に、 服 字 6 号 の ﹃ 圓 明 論 ﹄ が 含 ま れ て い て、 こ れ も 参 照 可 能 に な つ た 現 在、 改 め て, ﹃ 圓 明 論 ﹄ 一 巻 の 再 検 討 の 必 要 性 が 生 じ て き た の で あ る。 ま ず、 S 六 二 八 四 号 ( 以 下 ス タ イ ン 本 ) は、 文 字 通 り の 端 切 れ で あ る が、 一 行 目 に ﹁ 圓 明 論 一 巻 ﹂ と い う 標 題 が あ り、 二 行 目 に は ﹁ 明 心 色 因 果 品 第 一 ( ・ 印 は 不 鮮 明、 以 下 同 じ )、 要 門 方 便 品 第 二、 辮 明 脩 道 ( 以 下 欠 )、 ﹂ 三 行 目 に ﹁ 辮 明 三 乗 逆 順 観 品 第 四、 簡 異 外 道 縁 ( 以 下 欠 ) ﹂ と い う よ う に、 従 来 ﹃ 圓 明 論 ﹄ の 前 に あ る と さ れ て い た 九 品 か ら な る 失 題 の も の の 品 名 が、 ﹃ 圓 明 論 ﹄ と い う 標 題 の 次 に 目 次 の よ う に 列 記 さ れ て い る こ と が 注 目 さ れ る。 ま た 北 京 本 の 首 部 も、 第 一 行 は 上 方 に ﹁圓 明 論 一、 巻 ﹂ 下 方 に ﹁ 馬 鳴 菩 薩 造 ﹂ と あ り、 続 く 三 行 に ス タ イ ン 本 と 全 く 同 様 に 九 品 失 題 と さ れ て い た も の の 品 名 が、 各 行 三 品 つ つ 掲 げ ら れ、 以 下 ﹁ 明 心 色 因 果 品 第 一 ﹂ に 始 ま る 本 文 が 記 さ れ て い て、 北 京 本 の ﹁ 馬 鳴 菩 薩 造 ﹂ 以 外 は、 両 者 は 一 致 す る の で あ る。 か く し て ﹁ 圓 明 論 一 巻 ﹂ と い う 標 題 を め ぐ つ て、 九 品 失 題 と さ れ る も の が、 P 三 五 五 九 号 と 積 翠 軒 本 で は そ の 前 に あ り、 ス タ イ ン 本 と 北 京 本 で は そ の 後 に あ る と い う 矛 盾 が 生 じ た の で あ る が、 こ の 矛 盾 解 決 の 鍵 は、 P 三 六 六 四 号 に あ る と 考 え ら れ る。 こ の P 三 六 六 四 号 は 今 日 み る こ と は で き な い が、 ﹃ 敦 煙 遺 書 総 目 索 引 ﹄ に、 ﹁ 圓 明 論、 存 開 端 爾 品。 與3559 號 爲 同 巻 ﹂ と い う よ う に、 元 来 一 巻 で あ つ た も の が 二 分 さ れ た 首 部 に 相 当 し、 そ れ に 接 続 す る の が P 三 五 五 九 号 で あ る こ と は、 紙 背 の 経 済 文 書 の 接 続 関 係 か ら も 指 摘 さ れ て い る。 紳 田 博 士 が、 ﹁ ( 圓 明 論 一 巻 は ) 同 じ 内 容 の も の が、 ま た 第 三 六 六 四 號 文 書 に も 存 在 す る ﹂ と 述 べ ら れ た の は、 実 は 九 品 か ら な る 圓 明 論 が、 第 二 品 の 中 途 で 二 分 さ れ、 開 端 両 品 の P 三 六 六 四 号 と、 尾 題 を 含 む P 三 五 五 九 号 に 分 け ら れ た た め に い わ れ た こ と で あ ろ う し、 従 来 ﹁ 圓 明 論 一 巻 ﹂ と い う 標 題 を、 そ れ に 続 く ﹁ 阿 摩 羅 識、 此 云 元 垢 清 浮 識 也。 ﹂ 以 下 四 五 行 の 文 の 首 題 と し て い た の は、 実 は 九 品 か ら な る 圓 明 論 の 尾 題 で あ り、 九 品 失 題 と さ れ た 長 文 こ そ、 ま さ し く ﹃ 圓 明 論 ﹄ そ の も の で あ る こ と が 明 ら か に な つ た の で あ る。 柳 田 敢 授 が 北 京 本 砕 損 八 十 四 行 に 比 し て、 首 尾 完 全 で あ り な が ら、 僅 か に 四 十 五 行 し か な い P 三 五 五 九 号 の ﹃ 圓 明 論 ﹄ に 疑 問 を 抱 い て お ら れ る こ と も、 こ の 間 の 事 情 を 物 語 る も の で あ ろ う。 と こ ろ で、 北 京 本 の ﹃ 圓 明 論 ﹄ は、 ﹃ 籾 蝕 録 ﹄ に 八 紙、 二 三 九 行 と あ る よ う に、 極 め て 長 篇 で あ る が、 そ の 内 容 を 見 る と、

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-206-前 半 の 四 紙 一 二 〇 行 に ﹃ 圓 明 論 ﹄ の 第 一 品 か ら 第 七 品 の 首 部 二 行 ま で が あ り、 第 四 紙 最 後 の 一 行 下 半 と、 第 五 紙 か ら 第 八 紙 に 至 る 後 半 の 四 紙 一 一 九 行 に ﹃ 大 乗 起 信 論 ﹄ の 抄 録 が あ る。 ﹃ 籾 蝕 録 ﹄ が、 ﹁ 文 與 起 信 論 大 同 ﹂ と い う の は、 恐 ら く こ の 後 半 の ﹃ 起 信 論 ﹄ の 抄 録 部 分 を 指 し て い つ た も の と 思 わ れ る。 こ の ﹃ 起 信 論 ﹄ の 抄 録 は、 第 二 正 宗 分 の 第 一 段 因 縁 分 の 問 答 か ら 始 ま り、 第 二 段 立 義 分、 第 三 段 解 繹 分 の 第 一 章 顯 示 正 義 を 抄 録 し た 後、 第 二 章 封 治 邪 執、 第 三 章 分 別 護 趣 道 相 の す べ て と、 第 四 段 修 行 信 心 分 の 中 途 豪 で を ま つ た く 欠 き、 第 四 段 中 途 の ﹁ 復 次、 依 如 是 三 昧 故 則 知 法 界 一 相。 ﹂ か ら ﹁ 封 治 凡 夫 佳 著 世 間、 ﹂ の ﹁ 封 治 凡 ﹂ ( ﹃ 籾 蝕 録 ﹄ が 最 終 二 字 を ﹁ 治 丸 ﹂ と す ゐ の は ﹁ 治 凡 ﹂ の 誤 り ) ま で が あ つ て、 以 下 断 欠 し て い る。 こ の ﹃ 起 信 論 ﹄ 抄 録 に 先 立 つ 前 半 部 分 の ﹃ 圓 明 論 ﹄ の 方 は、 第 一 品 か ら 第 七 品 首 部 二 行 ま で の 内、 第 五 品 を 欠 い て お り、 ま た P 三 五 五 九 号 で は 第 七 品 に あ る、 愚 か な 夫 婦 が 蔵 の 申 の 酒 が め に 写 つ た 自 分 の 影 を 他 人 の も の と 誤 解 し て 痴 話 喧 嘩 す る 凡 夫 の 例 話 が、 第 六 品 の 中 に 入 れ ら れ て い る 相 異 以 外 は、 全 般 的 に ペ リ オ 本 を 随 処 に 省 略 し、 簡 略 化 し て い る こ と が、 両 者 の 比 較 に よ つ て 知 ら れ る。 た だ 北 京 本 は 第 七 品 の 首 部 二 行 で 以 下 ﹃ 起 信 論 ﹄ 抄 録 に な る た め に、 ペ リ オ 本 に 欠 く 第 八 品 を 補 う こ と が で き ず、 巻 首 の 品 名 列 記 に よ つ て、 積 翠 軒 本 で ロ □妄 想 品 と さ れ て い た 第 七 品 の 品 名 が、 簡 妄 想 品 で あ つ た こ と を 知 る の み で、 北 京 本 が 出 現 し た 現 在 も 尚 ﹃ 圓 明 論 ﹄ の 完 全 な 復 元 は 不 可 能 で あ る。 こ の 意 味 か ら も 第 八 品 が 存 在 し た と い う 積 翠 軒 本 を 失 つ た こ と は、 大 き な 損 失 と い わ ね ば な ら な い。 ま た こ の ﹃圓 明 論 ﹄ を 馬 鳴 菩 薩 造 と す る の は、 恐 ら く 北 京 本 の み の よ う で、 北 京 本 が 巻 首 に 九 品 全 部 の 品 名 を 目 次 と し て 列 記 し な が ら、 第 七 品 の 首 部 二 行 以 下 に 馬 鳴 菩 薩 造 と さ れ る ﹃ 起 信 論 ﹄ の 抄 録 を 持 ち 来 り、 全 体 を ﹁ 圓 明 論 一 巻 馬 鳴 菩 薩 造 ﹂ と い う タ イ ト ル で 包 括 し て い る と こ ろ に、 ﹃ 圓 明 論 ﹄ を 馬 鳴 菩 薩 造 と し な け れ ば な ら な か つ た 要 請 を 読 み と る こ と が で き る。 す な わ ち P 三 五 五 九 号 は、 紙 背 の 関 係 か ら P 三 〇 一 八 号 ( ﹃ 菩 提 達 摩 論 ﹄ と 題 す る 四 行 論 長 巻 子 雑 録 部 分 を 含 む ) と も 直 接 つ な が る と い う こ と で あ る が、 こ の P 三 〇 一 八 号 は、 紙 背 が 天 宝 十 載 ( 七 五 一 ) 頃 の 敦 燈 県 差 科 簿 で あ る と い う か ら、 ﹃ 圓 明 論 ﹄ も そ れ 以 前 に ペ リ オ 本 の 形 の も の が 成 立 し て い た も の で あ ろ う。 そ し て そ の 後 に 馬 鳴 菩 薩 に 仮 托 し た 北 京 本 ﹃ 圓 明 論 ﹄ の 形 の も の が 生 み 出 さ れ た も の と 考 え ら れ る。 以 上、 ペ リ オ 本、 積 翠 軒 本 に 基 く 従 来 の 定 説 に 対 し、 ス タ イ ン 本、 北 京 本 を 加 え た 諸 本 の 比 較 検 討 に よ つ て、 ﹃ 圓 明 論 ﹄ に つ い て の 若 干 の 訂 正 の 必 要 を 提 起 し た の で あ る が、 こ れ ら 諸 本 の 詳 細 な 比 較 検 討 や 内 容 の 紹 介 考 察 は、 別 の 機 会 に 譲 り た い と 思 う。 敦 焼 本 ﹁ 圓 明 論 ﹂ に つ い て ( 田 中 )

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