印
度
學
佛
教
學
研
究
第
四
十
四
巻
第
一
号
平
成
七
年
十
二
月
﹁大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
に
関
す
る
一
考
察
︱
特
に
道
元
門
下
の
立
場
を
め
ぐ
っ
て︱
石
島
尚
雄
は
じ
め
に
道
元
禅
師
の
﹁
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
の
典
故
に
つ
い
て
は
、
い
ま
だ
に
詳
ら
か
で
は
な
い
。
夙
に
私
は
、
﹃
宗
学
研
究
﹄
37
号
で
、
﹃
﹁
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
に
関
す
る
一
考
察
﹄
と
題
し
て
発
表
し
た
の
で
あ
る
が
、
そ
こ
で
、
道
元
禅
師
(
以
下
道
元
と
省
略
)
の
﹁
明
星
出
現
時
、
我
与
三
大
地
有
情
一
同
時
成
道
﹂
と
い
う
フ
レ
ー
ズ
は
、
真
浄
克
文
(
一
〇
二
五︱
二
〇
二
)
の
﹁
明
星
現
時
。
豁
然
悟
道
。
大
地
有
情
。
一
時
成
仏 ﹂(1) の 表 詮 と 、 宏 智 正 覚 ( 二 〇 九 二︱ 一 一 五 七 ) の ﹁ 山 河 大 地草
木
叢
林
。
与
覚
上
座
同
時
成
道
﹂(2)
の
表
詮
を
踏
ま
え
た
上
で
の
道
元
の
造
語
で
は
な
い
か
と
推
量
し
た
。
そ
こ
で
、
今
回
は
、
作
業
仮
定
と
し
て
、
道
元
の
真
意
を
よ
り
深
く
理
解
す
る
為
に
、
道
元
門
下
の
﹁
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
を
吟
味
し
た
い
。
そ
し
て
次
の
機
会
に
、
道
元
に
先
立
つ
世
代
と
道
元
以
後
の
世
代
と
そ
の
間
の
道
元
と
を
二
連
の
コ
ソ
テ
ク
ス
ト
の
上
で
考
察
す
る
基
礎
と
し
た
い
。
二
、
詮
慧
・
経
豪
に
お
け
る
﹁
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
道
元
以
前
で
は
﹁
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
の
フ
レ
ー
ズ
は
、
そ
う
頻
繁 に は 出 て こ な い 。(3) 道 元 に し て は じ め て 一 連 の 意 味 を も っ て 表 詮 さ れ る よ う に な る 。 し か る に 、 道 元 門 下 、 特 に 詮 慧 ・ 経 豪 ・ 瑩 山 な ど に お い て は 頻 繁 に 出 て く る 。 特 に 、 詮 慧 ・ 経 豪 の ﹃ 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 ﹄ に お い て は 、 枚 挙 に い と ま が な い 程 で あ る 。 そ こ で そ れ ら の 代 表 的 な も の を 検 討 し よ う 。 ﹃ 聞 書 抄 ﹄ 有 時 に 、 ⋮ 、 コ ノ ユ ヘ ニ 同 時 発 心 ア リ 、 同 心 発 時 也 、 ヲ ヨ ヒ 修 行 成 道 モ 如 レ 此 、 / ⋮ 、 此 道 理 ナ ル ユ ヘ ニ 、 同 時 発 心 モ ア ル ヘ シ 、 同 心 発 時 モ ア リ ト ハ 、 成 道 ト 云 道 理 タ ニ モ 、 イ テ ク レ ハ 、 大 地 有 情 同 時 成 道 ノ 理 ヲ 離 テ 、 成 道 ト 云 事 不 レ 可 レ 有 、 始 ソ 終 ソ 、 昔 ソ 今 ソ ナ ム ト 云 沙 汰 二 不 レ 及 ナ リ 、 ユ ヘ ニ 同 時 成 道 ト 許 必 不 レ 可 レ 談 、 同 時 発 心 モ ア ル ヘ シ 、 同 心 発 時 モ ア ル ヘ キ ナ リ 、 同 時 成 道 ノ 詞 許 ニ カ カ ハ ラサ ル ヘ キ 道 理 ヲ 、 如 レ 此 被 レ 釈 ナ リ ( ﹃ 曹 洞 宗 全 書 ﹄ ︿ 以 下 曹 全 ﹀ 注 解 一 、 ) と あ る 。 こ こ で は 、 ﹁ 同 時 成 道 ﹂ の ﹁ 同 時 ﹂ に 引 き 寄 せ ら れ 、 ﹃ 有 時 ﹄ の 巻 の ﹁ 時 ﹂ に 関 連 せ る 内 容 に 注 を 振 っ た も の と 思 わ れ る 。 中 で も 、 ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ノ 理 ヲ 離 テ 、 成 道 ト 云 事 不 レ 可 レ 有 ﹂ と あ る と こ ろ に 注 目 し て み る と 、 こ こ で は 、 既 に ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ が 熟 し た 成 語 で あ る と 見 做 さ れ て い る こ と が 看 取 さ れ る 。 な ぜ な ら ば 、 ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ノ 理 ﹂ と い っ て 、 ﹃ 聞 書 抄 ﹄ を 編 纂 し て い る 門 下 の 間 で は 、 説 明 す る 必 要 も な い 自 明 の 理 と 見 倣 さ れ て い る 感 が あ る か ら で あ る 。 次 に ﹃ 聞 書 抄 ﹄ 諸 悪 莫 作 を 見 る と 、 釈 尊 一 仏 ノ 始 終 ニ ツ キ テ 、 説 法 ノ ヤ ウ 機 二 随 ヒ 物 ニ ヨ リ テ コ ト コ ト ナ リ 、 イ カ ニ イ ハ ム ヤ 、 前 仏 後 仏 、 此 仏 他 仏 、 浄 土 穢 土 、 皆 以 異 ナ ル ヘ シ 、 シ カ ア レ ト モ 、 是 等 ノ 異 ハ 、 釈 尊 二 代 二 一三 界 ヲ 唯 心 ト 説 キ 、 諸 法 ヲ 実 相 ト 示 シ 、 凡 悩 ヲ 菩 提 ト イ ヒ 、 生 死 ヲ 浬 槃 ト 云 程 ノ カ ハ リ ナ リ 、 イ ハ ム ヤ 此 仏 モ 、 大 地 有 情 同 時 成 道 ト 宣 へ 、 他 仏 モ 大 地 有 情 同 時 成 道 ト 説 ノ ミ ナ リ 、 此 等 ノ 義 、 同 ト モ 不 同 ト モ イ ハ ム ニ 、 違 ス ヘ カ ラ サ ル 道 理 ナ リ ( ﹃ 曹 全 ﹄ 注 解 一 、 ) と あ る 。 こ こ で は 、 仏 は 、 方 便 で 対 機 説 法 を 様 々 に す る け れ ど も 、 そ れ ら の 違 い は 、 わ ず か な 違 い で あ っ て 、 言 わ ん と す る と こ ろ は 、 此 土 の 仏 も 、 他 土 の 仏 も ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ に 関 す る 一 考 察 (石 島 )
と
説
く
の
み
だ
と
い
っ
て
い
る
。
こ
こ
を
見
る
に
、
﹃
聞
書
抄
﹄
で
は
、
釈
尊
は
﹁
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
だ
け
を
説
い
た
の
だ
と
、
あ
た
か
も
断
定
し
て
い
る
か
の
よ
う
で
あ
る
。
こ
こ
の
箇
所
だ
け
を
と
っ
て
見
て
も
、
﹁
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
の
フ
レ
ー
ズ
が
﹃
聞
書
抄
﹄
で
は
か
な
り
ウ
ェ
イ
ト
を
持
っ
た
フ
レ
ー
ズ
で
あ
る
こ
と
が
看
取
さ
れ
る
。
次
に
、
﹃
聞
書
抄
﹄
行
持
を
見
る
と
、
つ こ 慈 父 大 師 釈 迦 尼 牟 仏 段 、 大 地 有 情 同 時 成 道 ノ 行 持 ア リ ト 云 ハ 、 行 持 ハ 成 道 以 前 時 刻 ト コ ソ 聞 ユ レ 、 十 九 歳 巳 後 三 十 成 道 巳 前 ナ ル ヘ キ 行 持 ヲ 、 成 道 行 持 ト 云 事 ハ 、 教 行 証 ヲ 、 三 ニ タ テ サ ル イ ハ レ ナ リ (﹃ 曹 全 ﹄ 注 解 一 、 ) と あ る 。 ﹃ 正 法 眼 蔵 ﹄ の 本 文 で は 、 ﹁ 慈 父 大 師 、 釈 迦 牟 尼 仏 、 十 九 歳 の 仏 寿 よ り 、 深 山 に 行 持 し て 、 三 十 歳 の 仏 寿 に い た り て 、 大 地 有 情 同 時 成 道 の 行 持 あ り ﹂ (行 持 上 ) と な っ て い て 、 こ の 箇 所 の 注 と 思 わ れ る 。 し か し 、 ﹃ 抄 ﹄ の ほ う は 、 ﹁ 如 レ 文 ﹂ と あ る の み で ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ の 注 は な い 。 し た が っ て 、 ﹃ 抄 ﹄ を 編 纂 す る 段 階 で は 、 注 を 振 る 必 要 が な い ほ ど 自 明 の 理 で あ っ た こ と が 推 測 さ れ る 。(4) 次 に ﹃ 聞 書 抄 ﹄ 授 記 を 見 る と 、 未 発 菩 提 心 ト 云 モ 授 記 ノ 上 ノ 未 発 菩 提 心 ナ リ 、 今 ノ 授 記 ハ 山 河 大 地 、 須 弥 巨 海 、 張 三 李 四 、 聞 得 一 句 ナ ム ト 云 、 不 審 ナ ル 様 ナ レ ト モ 、 仏 成 道 ノ 時 、 大 地 有 情 同 時 成 道 ト 被 レ 仰 ヌ ル ト キ ニ 非 可 疑 (﹃ 曹 全 ﹄ 注 解 一 、 )﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ に 関 す る 一 考 察 (石 島 ) お こ と あ る 。 こ こ で は 、 未 だ 菩 提 心 を 発 さ な い と き に も 授 記 が あ る と す る の は よ く わ か ら な い こ と の 様 に 思 え る が 、 ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ と い う 以 上 こ れ は 疑 う 余 地 の な い こ と で あ る と 主 張 し て い る 。 し て み る と 、 ﹃ 聞 書 抄 ﹄ を 編 纂 し て い る 門 下 の 間 で は 、 既 に 定 着 し て い た フ レ ー ズ で あ る こ と が 推 測 さ れ る 。 次 に 、 ﹃ 聞 書 抄 ﹄ 十 方 を 見 る と 、 タ タ 十 方 ハ 一 方 ト 心 得 ナ リ 、 毎 物 ノ 上 二 、 十 方 ハ 取 ヘ シ 、 一 塵 ノ 上 ニ モ 仏 土 ア ル ヘ シ 、 或 身 土 不 ニ ト モ ト キ 、 或 大 地 有 情 同 時 成 道 ト モ イ フ 、 コ ノ ト キ 国 土 モ 、 十 方 モ ア ル ヘ カ ラ サ ル カ ( ﹃曹 全 ﹄ 注 解 二 、 ) と あ る 。 こ の 中 で ﹁ 或 身 土 不 ニ ト モ ト キ 、 或 大 地 有 情 同 時 成 道 ト モ イ フ ﹂ と い う と こ ろ に 注 目 し て み る と 、 い わ ゆ る 禅 家 の ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ と い う 語 が 、 天 台 教 理 で い う 不 二 門 す な わ ち 、 荊 渓 湛 然 が と な え た 十 不 二 門 な ど と 関 連 性 を も た せ て 述 べ ら れ い る こ と が 分 か る 。(5) 少 な く と も 、 ﹃ 聞 書 抄 ﹄ を 編 纂 し て い る 門 下 達 に と っ て そ れ は 違 和 感 の な い 自 然 な 表 詮 で あ っ た こ と が 看 取 さ れ る 。 次 に 、 ﹃ 聞 書 抄 ﹄ 如 来 全 身 を 見 る と 、 龍 女 ノ 成 仏 ハ 止 息 ノ 道 理 ト 可 三 心 得 仏 ノ 成 仏 ト コ ソ イ フ ヘ ケ レ 、 草 木 国 土 悉 皆 成 仏 ト 云 モ 大 地 有 情 同 時 成 道 ト 云 モ 皆 同 心 ナ リ ( ﹃曹 全 ﹄ 注 解 二 、 )
と
あ
る
。
こ
の
中
で
、
﹁
草
木
国
土
悉
皆
成
仏
ト
云
モ
大
地
有
情
同
時
成
道
ト
云
モ
皆
同
心
ナ
リ
﹂
と
い
う
表
詮
に
注
目
す
る
と
、
道
元
で
は
日
本
天
台
と
の
接
点
が
な
か
な
か
見
出
せ
な
い
の
に
対
し
て
、
か
え
っ
て
門
下
の
詮
慧
等
の
方
に
、
日
本
天
台
と
の
接
点
が
見
え
て
く
る
の
が
興 味 深 い 。(6) 以 上 調 べ て 来 た の で あ る が 、 い ず れ に し て も 、 詮 慧 を は じ め と す る 道 元 の 直 弟 子 の 間 に お い て 、 ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ と い う フ レ ー ズ が 完 全 に 定 着 し て い た こ と を 推 測 さ せ る の で あ る が 如 何 が で あ ろ う か 。 ま た 、 門 下 の 間 で は 、 禅 家 の ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ と い う 表 詮 が 、 中 国 天 台 に も 、 日 本 天 台 に も 関 連 さ せ て 叙 述 さ れ て い る 事 実 は 、 決 し て 看 過 で き ぬ も の と い え よ う 。 二 、 瑩 山 に お け る ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ 詮 慧 ・ 経 豪 と く ら べ て 、 瑩 山 禅 師 (以 下 瑩 山 と 省 略 ) に な る と 、 ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ は よ り 一 層 重 要 性 を 増 し て く る 。 ﹃ 伝 光 録 ﹄ を 見 る と 、 ⋮ 、 釈 迦 牟 尼 仏 、 見 明 星 悟 道 曰 、 我 与 大 地 有 情 同 時 成 道 、 ⋮ イ ハ ユ ル 我 ト イ フ ハ 、 釈 迦 牟 尼 仏 ニ ア ラ ズ 、 釈 迦 牟 尼 仏 モ コ ノ 我 ヨ リ 出 生 シ キ タ ル 、 タ ダ 釈 迦 牟 尼 仏 出 生 ス ル ノ 、ミ ニ ア ラ ズ 、 大 地 有 情 モ 、 ミ ナ コ レ ヨ リ 出 生 ス 、 大 綱 ヲ ア グ ル ト キ 、 衆 目 悉 ク ア ガ ル ガ ゴ ト ク 、 釈 迦 牟 尼 仏 成 道 ス ル ト キ 、 大 地 有 情 モ 成 道 ス 、 タ ダ 大地 有 情 成 道 ス ル ノ ミ ニ ア ラ ズ 、 三 世 諸 仏 モ ミ ナ 成 道 ス 、 恁 歴 ナ リ ト イ ヘ ド モ 、 釈 迦 牟 尼 仏 ニ オ イ テ 、 成 道 ノ オ モ イ ヲ ナ ス コ ト ナ シ 、 大 地 有 情 ノ 外 二 、 釈 迦 牟 尼 仏 ヲ ミ ル コ ト ナ カ レ ( ﹃ 曹 全 ﹄ 宗 源 下 、 ) と あ る 。 こ の 則 は 明 ら か に 、 ﹃ 正 法 眼 蔵 発 無 上 心 ﹄ を 踏 ま え
て
い
る
。(7)
瑩
山
に
お
い
て
は
、
﹁
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
と
い
う
フ
レ
ー
ズ
は
、
単
な
る
造
語
で
は
な
く
し
て
、
完
全
に
定
着
し
た
熟
語
と
見
做
さ
れ
て
い
る
こ
と
が
看
取
さ
れ
る
。
な
ぜ
な
ら
、
門
下
に
説
き
示
す
問
話
の
初
端
か
ら
い
き
な
り
﹁
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
が
出
て
く
る
か
ら
で
あ
る
。
更
に
、
拈
提
で
は
、
﹁
イ
ハ
ユ
ル
我
ト
イ
フ
ハ
、
釈
迦
牟
尼
仏
ニ
ア
ラ
ズ
、
釈
迦
牟
尼
仏
モ
コ
ノ
我
ヨ
リ
出
生
シ
キ
タ
ル
﹂
と
述
べ
て
い
る
が
、
こ
の
箇
所
を
克
文
の
﹁
明
星
現
時
。
豁
然
悟
道
。
大
地
有
情
。
一
時
成
仏
﹂
を
引
き
合
い
に
出
し
て
比
較
し
た
の
な
ら
ば
、
も
は
や
こ
の
瑩
山
の
拈
提
は
成
立
し
な
く
な
る
。
し
た
が
っ
て
、
瑩
山
に
お
い
て
は
、
﹁
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
で
な
け
れ
ば
な
ら
ぬ
理
由
が
厳
然
と
し
て
あ
る
の
で
あ
る(8)
。
お
わ
り
に
私
は
夙
に
、
道
元
の
﹁
明
星
出
現
時
、
我
与
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
に
つ
い
て
考
察
を
加
え
て
き
た
の
で
あ
る
が
、
い
ま
だ
に
直
接
の
出
典
を
見
出
す
こ
と
が
で
き
な
い
。
し
か
し
、
道
元
が
そ
れ
を
踏
え
た
表
現
と
し
て
、
真
浄
克
文
の
﹁
明
星
現
時
。
豁
然
悟
道
。
大
地
有
情
。
﹁大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
に
関
す
る
二
考
察
(石
島
)
一
時
成
仏
﹂
と
、
宏
智
正
覚
の
﹁
山
河
大
地
草
木
叢
林
。
与
覚
上
座
同
時
成
道
﹂
を
見
出
し
た
。
更
に
、
道
元
は
こ
れ
を
踏
え
て
、
﹁
明
星
出
現
時
、
我
与
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
を
造
語
し
た
の
で
は
な
い
か
と
推
測
し
た
。
し
か
し
、
そ
の
門
下
と
な
る
と
い
さ
さ
か
様
相
を
異
に
す
る
。
少
く
と
も
、
直
弟
子
た
る
詮
慧
・
経
豪
や
次
の
世
代
に
あ
た
る
瑩
山
で
は
あ
る
種
の
既
成
事
実
化
し
て
い
る
。
た
と
え
ば
、
﹁
大
地
有
情
同
時
成
道
ノ
理
ヲ
離
テ
、
成
道
ト
云
事
不
可
有
﹂
と
か
、
﹁
此
仏
モ
、
大
地
有
情
同
時
成
道
ト
宣
へ
、
他
仏
モ
大
地
有
情
同
時
成
道
ト
説
ノ
ミ
ナ
リ
﹂
と
か
、
﹁
仏
成
道
ノ
時
、
大
地
有
情
同
時
成
道
ト
被
仰
ヌ
ル
ト
キ
ニ
非
可
疑
﹂
と
か
、
﹁
或
身
土
不
ニ
ト
モ
ト
キ
、
或
大
地
有
情
同
時
成
道
ト
モ
イ
フ
﹂
と
か
、
﹁
草
木
国
土
悉
皆
成
仏
ト
云
モ
大
地
有
情
同
時
成
道
ト
云
モ
皆
同
心
ナ
リ
﹂
⋮
等
が
そ
う
で
あ
り
、
更
に
、
瑩
山
の
﹁
イ
ハ
ユ
ル
我
ト
イ
フ
ハ
、
釈
迦
牟
尼
仏
ニ
ア
ラ
ズ
、
釈
迦
牟
尼
仏
モ
コ
ノ
我
ヨ
リ
出
生
シ
キ
タ
ル
、
タ
ダ
釈
迦
牟
尼
仏
出
生
ス
ル
ノ
、ミ
ニ
ア
ラ
ズ
、
大
地
有
情
モ
、
ミ
ナ
コ
レ
ヨ
リ
出
生
ス
﹂
等
が
そ
う
で
あ
る
。
特
に
瑩
山
の
拈
提
な
ど
は
、
皆
が
知
っ
て
い
る
既
成
事
実
と
し
て
と
ら
え
て
い
る
の
で
な
け
れ
ば
、
と
う
て
い
説
明
で
き
な
い
。
以
上
の
こ
と
か
ら
、
﹁
我
与
大
地
有
情
同
時
成
道
﹂
と
い
う
フ
レ
ー
ズ
は
、
道
元
門
下
に
お
い
て
既
に
定
着
し
た
熟
語
に
な
っ
て
い
た
こ
と
が
知
ら
れ
る
。
こ
の
こ
と
は
い
っ
た
い
何
を
意
味
し
て
い
る
の
だ
ろ
う
か
。
す
く
な
く
と
も
、
道
元
以
前
の
人
々
よ
り
も
、
道
元
以
後
の
門
下
﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ に 関 す る 一 考 察 (石 島 ) の 人 々 に と っ て ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ が よ り 一 層 重 要 な も の に な っ て い た こ と が わ か る 。 私 が 推 測 す る に 、 そ れ は 、 ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ と い う 語 が 、 他 流 と は 違 っ た 道 元 の 宗 風 の 特 徴 を 表 わ す の に 丁 度 良 い 語 で あ る と 位 置 付 け ら れ て い た ふ し が あ る の で あ る 。 と も あ れ 、 こ こ ま で 来 る と 道 元 そ の 人 の ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ の 意 義 を 検 討 す べ き 時 が い よ い よ 来 た と い え よ う 。 こ こ に 、 道 元 の ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ の 考 察 を 今 後 に 期 し て 、 今 回 の 論 考 を お わ り た い と 思 う 。 1 大 慧 ﹃ 正 法 眼 蔵 ﹄ 六 、 ( ) 。 ﹃ 普 灯 録 ﹄ 四 、 ( ) 。 ﹃ 聯 灯 会 要 ﹄ 一 四 、 ( ) 等 を 参 照 。 2 ﹃ 宏 智 禅 師 広 録 ﹄ 二 、 ( T ・ 48 、 1 c ) を 参 照 。 3 例 え ば 、 栄 西 の ﹃ 興 禅 護 国 論 ﹄ を 参 照 す る に 、 ﹁ 大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ の 語 を 見 出 す こ と は 一 度 も な い の で あ る 。 4 山 内 舜 雄 、 ﹃ 続 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 の 研 究 ﹄ 二 五 三 頁 に 、 ﹁ ⋮ 、 こ の ﹃ 聞 書 ﹄ の 注 な ど も 、 発 想 法 そ の も の が 教 学 的 で あ る こ と は 言 う ま で も な い 。 そ れ だ け に 解 り が よ い 、 と い う も の の ﹁ 教 行 証 を 三 ニ タ テ サ ル ﹂ す な わ ち 教 行 証 を 一 如 と 道 取 す る と こ ろ に 宗 意 が あ り 、 そ れ が 行 持 と 表 詮 さ れ る か ら に は 、 大 地 有 情 と 同 時 成 道 の 行 持 が 成 り 立 つ 、 と い う 論 法 で あ る 。 し か し 、 ﹁ 教 行 証 ヲ 三 ニ タ テ サ ル イ ハ レ ナ リ ﹂ と 、 教 を 突 き 放 っ て し ま え ば 、 あ と は 同 時 成 道 の 行 持 と い う 宗 意 し か の こ ら ず 、 教 と の 異 和 感 は 否 定 す べ く も な い 。 そ し て 、 注 者 詮 慧 が 、 最 も 痛 切 に 感 じ た で あ ろ う こ の 異 和 感 こ そ 、 実 は 道 元 禅 の 特 質 の 裏 が え し と も 思 わ れ る の で あ る か ら 、 重 要 で あ る 。 ﹂ と あ る 。 5 ﹃ 十 不 二 門 ﹄ に 、 二 者 色 心 不 二 門 。 二 者 内 外 不 二 門 。 三 者 修 性 不 二 門 。 四 者 因 果 不 二 門 。 五 者 染 浄 不 二 門 。 六 者 依 正 不 二 門 。 七 者 自 他 不 二 門 。 八 者 三 業 不 二 門 。 九 者 権 実 不 二 門 。 十 者 受 潤 不 二 門 ﹂ ( ) と あ る 。 6 日 本 天 台 は 道 邃 ( 一 〇 六︱ 一 五 七 ? ) の ﹃ 摩 訶 止 観 論 弘 決 纂 義 ﹄ 一 に 、 ﹁ 正 報 転 時 。 依 報 随 転 。 二 仏 成 道 観 三 見 法 界 草 木 国 土 皆 悉 成 仏 ﹂ (大 日 本 仏 教 全 書 15 、 ) と あ る 。 7 田 島 柏 堂 、 ﹃ 日 本 の 禅 語 録 ﹄ 五 、 瑩 山 頁 に 、 ﹁ 明 星 を 見 て / 本 則 は 、 直 接 に は ﹃ 正 法 眼 蔵 発 無 上 心 ﹄ に 依 っ て い る と 思 わ れ る ﹂ と あ る 。 8 石 井 修 道 、 ﹃ 道 元 禅 の 成 立 史 的 研 究 ﹄ の 四 五 二 頁 に ﹁道 元 伝 の 性 格 を 検 討 す る こ と を 最 大 の 目 的 と す る 本 論 に と っ て 、 ⋮ 、 問 題 を 絞 っ て 四 つ の 点 に 言 及 し た い 。 第 一 点 は 、 本 則 に ﹁ 大 悟 ﹂ 等 の 語 が 加 え ら れ た こ と が 指 摘 で き ょ う ﹂ と あ る 。 氏 は 、 道 元 の 本 文 に 更 に 加 う る に 、 ﹁ 見 ⋮ 悟 道 ﹂ が あ る と し て 、 ﹃ 伝 光 録 ﹄ が ﹁悟 則 ﹂ と し て の 性 格 を 打 ち 出 す 上 で 、 ﹁大 地 有 情 同 時 成 道 ﹂ が 必 要 で あ っ た こ と を 指 摘 す る 。 ︿ キ ー ワ ー ド ﹀ 大 地 有 情 同 時 成 道 、 正 法 眼 蔵 聞 書 抄 、 伝 光 録 (曹 洞 宗 宗 学 研 究 所 研 究 員 )