金 剛 頂 経 の 別 序 に っ い て ( 堀 内 )
金
剛
頂
経
の
別
序
に
つ
い
て
堀
内
寛
仁
( 1) こ こ に 金 剛 頂 経 の 別 序 と は 初 會 金 剛 頂 経 の 序 分 の 中、 五 成 就 等 を 説 い た 通 序 に 封 し、 そ の 次 に 読 か れ て い る 文 段 を 指 す。 ( 2) (一) さ て 慈 畳 大 師 の 疏 に 依 れ ば、 通 序 の 衆 成 就 は ﹁ 如 是 等 菩 薩 而 爲 上 首 ﹂ で 終 り、 ﹁ 與 恒 河 沙 等 数 如 來 ﹂ 以 下 を 別 序 と し、 ﹁ 説 此 法 理 趣 ﹂ ま で を 別 序 の 中 の 第 一、 化 佛 現 瑞 相 の 節 段 と し て い る け れ ど も、 文 勢 よ り 見 る 時 は ﹁ 説 此 法 理 趣 ﹂ ま ( 3) で を 衆 成 就 と み る の が 穏 當 で あ る。 少 く と も 梵 本 で は、 慈 豊 の 疏 の 衆 成 就 と す る 菩 薩 衆 と 別 序 の 化 佛 現 瑞 相 と す る 如 來 衆 な る 語 句 は 一 文 中 の 封 句 で あ つ て 切 り 離 さ る べ き で な く、 共 ( 4) に 衆 成 就 の 中 に 含 ま れ ね ば な ら ぬ 語 句 で あ る 。 西 藏 謬 の 疏 繹 に よ る も 亦 同 様 で あ る。 さ て ﹁ 時 薄 伽 梵 大 毘 盧 遮 那 如 來 ﹂ 以 下 は 慈 畳 の 疏 に よ れ ば、 別 序 の 中 の 第 二、 大 日 如 來 の 瑞 相 を 現 ず る 節 段 で あ つ て、 そ れ は 偶 末 に 至 る ま で と さ れ て い る が、 西 藏 課 の 疏 繹 に 依 れ ば、 こ れ 以 下 が 正 し く 別 序 で あ り、 ま た そ れ は ﹁ 佳 一 切 如 來 心 ﹂ ま で で あ る と さ れ て い る。 と い う の は 西 藏 課 の 疏 繹 に 依 れ ば、 通 序 に 説 く 如 く、 毘 盧 遮 那 佛 の 色 身 は 色 究 寛 天 に 佳 す る と す る も、 智 身 た る 大 毘 盧 遮 那 如 來 は 何 腱 に 佳 す る か、 明 か で な い、 故 に 経 に 二 切 如 來 心 に 佳 す ﹂ と 読 い た の で あ る と す る の で あ る。 ﹂即 ち 西 藏 課 の 注 繹 に 依 れ ば、 通 序 の 毘 盧 遮 那 如 來 と 別 序 の 大 毘 盧 遮 那 如 來 と の 間 に は 旺 別 が あ る の で あ つ て 帥 ち 毘 盧 遮 那 如 來 と は 色 身 で あ り、 色 究 寛 天 に 於 け る 天 衆 で あ る 菩 薩 衆 の た め に、 法 門 の 受 用 を 與 え る た め 異 熟 身 に 佳 し て 説 法 す る、 い わ ゆ る 他 受 用 身 で あ る。 之 に 反 し て 大 毘 盧 遮 那 如 來 と は 智 の 自 性 を 有 す る 身 で あ つ て、 煩 悩 ・ 所 知 の 二 障 を 解 脱 し、 一 切 の 事 法 の 明 了 な る 自 性 を 實 の 如 く 示 現 す る 事 を な す も の で あ る。 換 言 す れ ば 一 切 の 浄 法 を 生 起 す る 本 質 が 大 毘 盧 遮 那 如 來 な の で あ る。 し た が つ て 経 に ﹁ 時 薄 伽 梵 大 毘 盧 遮 那 如 來、 常 佳 一 切 虚 室 ・ 一 切 如 來 身 口 心 金 剛 ﹂ と は、 別 序 の 中 の 第 一、 < 智 法 身 と し て の 自 性 > を 説 い た も の で、 大 毘 盧 遮 那 如 來 が 虚 室 の 如 く 常 恒 に し て 金 剛 の 如 き 三 密を 示 現 す る 事 を 読 い た も の で あ る。 な お ﹁ 常 佳 一 切 虚 室 ﹂ 等 は す べ て 梵 文 で は 輩 敷 圭 格 の 形 で あ り、 薄 伽 梵 大 毘 盧 遮 那 如 來 と 同 格 の 説 明 句 で あ る。 (二) 次 に 二 切 如 來 互 相 渉 入 ﹂ 以 下 ﹁ 無 上 巧 智 ﹂ に ,至 る ま で は < 四 波 羅 蜜 と し て の 自 性 > を 説 い た も の で、 智 身 大 日 が、 (1) 如 來 部 ( 金 剛 部 ) と 働 寳 部 と 個 法 部 と、 働 謁 磨 部 と の 能 生 の 根 原 で あ る こ と を 説 い た 節 段 で あ る。 詳 し く 言 え ば (1) は ﹁ 所 生 智 藏 ﹂、(2) は ﹁ 灌 頂 寳 ﹂ 圖 は ﹁ 有 情 界 行 最 勝 ﹂ 幽 は ﹁ 無 上 巧 智 ﹂ ま で で あ つ て、 國 課 に ﹁ 灌 頂 寳 の 一 切 虚 室 に 斜 遍 す る ﹂ 等 と す る の は 不 穏 當 で あ る。 (三) 次 に 二 切 如 來 大 菩 提 堅 固 薩 唾 ﹂ 以 下、 二 切 如 來 身 口 心 金 剛 印 智 ﹂ に 至 る ま で は < 法 曼 茶 羅 に 於 け る 十 六 奪 と し て の 自 性 > を 説 い た も の で、 換 言 す れ ば、 金 剛 薩 埴 等 の 心 眞 言 の 上 か ら 大 日 如 來 の 徳 を 説 い た も の で あ る。 (四) 経 文 は 以 下 偶 文 と な つ て い る が、 そ の 中 ﹁ 普 賢 妙 不 室 ﹂ 等 の 最 初 の 八 句 は ︹ 宋 課 は 一 句 一 菩 薩 で 最 初 の 十 六 句 ︺ は、 <大 曼 茶 羅 に 於 け る 十 六 尊 之 し て の 自 性 > を 説 い た も の で あ る が、 必 ず し も 一 句 二 奪 に は な つ て い な い の で 念 の た め、 匠 切 つ て 示 せ ば 次 の 如 く で あ る。 普 賢 ・妙 不 室 摩 羅 ・極 喜 圭 室 藏 ・大 妙 光 寳 憧 ・ 大 微 笑 能 観 大 自 在 曼 殊 ・ 一 切 壇 無 言 ・種 々 業 精 進 ・怒 ・堅 持 (五) 次 に ﹁ 金 剛 ・ 鉤 ﹂ 等 の 四 句 は、 < 三 昧 耶 曼 茶 羅 に 於 け る 十 六 奪 と し て の 自 性 > を 説 い た も の で、 大 日 如 來 が 心 眞 言 ( 第 三 段 ) 井 び に 薩 唾 ( 第 四 段 ) の 本 質 な る の み で な く、 ま た 印 ( 三 摩 耶 形 ) の 本 質 で あ る 事 を 示 し た も の で あ る。 い ま 語 を 遜 切 つ て 示 せ ば 次 の 如 く で あ る。 金 剛 ・鉤 ・箭 ・喜 寳 ・日 ・憧 幡 ・笑 蓮 ・創 ・妙 輪 ・語 掲 磨 ・甲 ・怖 ・持 (六) 次 に ﹁ 無 始 無 終 寂 ﹂ 以 下、 ﹁ 諸 勝 ・ 宮 自 在 ﹂ に 至 る ま で の 三 十 二 句 は、 慈 魔 の 疏 に よ れ ば(一) 五 佛 乃 至(二) 諸 世 天 衆 に 配 し て 繹 さ れ て い る が、 そ の 始 め に ﹁ 此 等 偶 頗 文 略 意 幽、 聖 旨 多 含、 不 合 用 一 階 解 繹。 今 將 一 端 且 解 繹 文、 庶 以 後 賢 照 ( 5) 之 ﹂ と あ り、 最 後 に 再 び ﹁然 此 偶 類 隠 密 難 解、 非 師 指 授、 實 不 可 知。 更 復 慮 有 逆 順 配 封 諸 尊 名 目、 縦 横 分 配 諸 聖 密 印、 分 字 結 句、 種 々 異 解。 今 随 一 門、 且 解 繹 之。 不 可 守 隅 妨 擬 諸 ( 6) 方 ﹂ と い つ て い る 様 に、 随 意 一 慮 の 解 繹 で あ つ て、 そ の 繹 は 原 文 と 關 係 な く、 た 冥 漢 課 に つ い て 慈 畳 大 師 が 一 鷹 配 當 注 繹 し た も の に す き ず、 原 文 よ り 見 る 時 は 不 適 當 な 解 繹 が 多 い。 一 例 を 最 後 の 偶 句 に と れ ば、 梵 本 に はbhavane= s varah と あ り、 西 藏 課 に はKun-gyi-mchog dan p o と 課 さ れ、 西 藏 課 の 疏 繹 に は ﹁ 聲 聞 等 に 比 し て 最 勝 な る 故 に 一 切 勝 で あ り、 一 切 の 地 に 自 在 を 得 た る 故 に 佳 塵 自 在 で あ る ﹂ と 繹 さ れ て 居 り、 明 か に ﹁ 諸 勝 と 宮 自 在 ﹂ と 解 す べ き で あ る に 拘 ら ず、 慈 畳 の 疏 に は ﹁ 諸 勝 宮 自 在 の 句 は 第 十 二 に 金 剛 頂 経 の 別 序 に つ い て ( 堀 内 )
金 剛 頂 経 の 別 序 に つ い で ( 堀 内 ) 諸 世 天 を 明 か す、 二 十 天 等 を 以 て 勝 宮 と な す⋮⋮地 水 火 風 諸 輪 王 等 を 名 け て 自 在 と な す⋮⋮云 々 ﹂ と あ り、 諸 勝 宮 と 自 在 の 二 語 に 分 け て 解 し て い る の で あ る。 こ れ に 封 し 西 藏 課 の 疏 繹 に 依 れ ば こ の 一 段 は、 < 法 界 の 自 性 と し て の 大 日 世 尊 > を 説 い た も の で、 以 上 の 如 く 智 身 大 日 が 大 印 ( 第 四 段 ) 三 昧 耶 印 ( 第 五 段 ) 法 印 ( 第 三 段 ) 等 に 於 け る 十 六 大 菩 薩 と し て 示 現 す る 事 を 説 明 す る と、 凡 夫 は 直 ち に 分 別 し て、 大 日 世 尊 は こ の 様 な 示 現 ・ 攣 現 を な し て 何 時 終 蓋 す る の か、 ま た 大 日 如 來 は 始 あ り 終 あ る か、 な ど と 疑 を 起 こ す た め、 そ の 大 日 は 常 佳 不 攣 に し て 常 に 寂 静 で あ る 等 と 説 明 し た の が こ の 一 段 で あ る と す る の で あ る。 例 え ば 大 日 如 來 は 生 死 に 等 流 し て 衆 生 を 撮 化 す る が 故 に 終 り は な い が、 か く 等 流 と い う と 極 め て 散 動 し て 寂 静 で な い か と い う と、 煩 悩 を 断 じ 鑑 せ る が 故 に 寂 静 で あ る。 然 ら ば 寂 静 の 髄 で あ る か ら 常 に 寂 相 の 身 を 示 現 す る か と い う に 然 ら ず、 難 調 者 を 調 伏 す る 時 は 暴 悪 相 を 以 て 敢 化 す る、 然 ら ば 念 怒 相 で 残 虐 で 安 忍 の 相 は な い か と い う に 然 ら ず、 矢 張 り 大 安 忍 で あ る 等 と 注 繹 し て 無 理 の な い 解 繹 が 行 わ れ て い る。 い ま、 そ れ ら の 注 繹 を 参 照 し 且 つ 梵 藏 二 本 を 封 比 し て 語 を 分 つ て 示 せ ば 次 の 如 く で あ る。 な お 梵 本 は 爲 本 で あ り、 爲 誤 が 多 く、 ま た ( ) 内 は 私 に 補 つ た も の で あ る。 ( 7 ) ( 8 ) ( 9 ) 不 室 課 施 護 課 西 藏 課 (1) 無 始 無 終 寂 無 姶 無 終 ・ 常 寂 静 無 始 無 終 に し て 寂 静 (2) 暴 ・ 怒 ・ 大 安 忍 暴 悪 ・ 念 怒 ・ 大 安 忍 暴 悪 葱 怒 に し て 大 安 忍 (3) 藥 叉 ・ 羅 刹 ・ 勇 夜 叉 ・ 羅 刹 ・ 善 無 畏 夜 叉 と 最 上 羅 刹 と 堅 實 (4) 威 ・ 猛 ・ 大 富 貴 威 勢 ・ 猛 悪 ・ 大 富 盛 大 威 と 勇 猛 と 大 主 宰 (5) 郁 摩 天 ・ 世 圭 烏 摩 天 圭 ( 井 ) 世 圭 ウ マ の 圭 と 九 生 の 圭 と (6) 毘 紐 ・ 勝 ・ 大 寂 堅 固 ・ 勝 根 ・ 大 寂 職 毘 紐 と 勝 欲 と 大 牟 尼 (7) 世 護 ・ 盧 室 ・ 地 世 護 ・ 虚 室 ( 與 ) 地 居 護 世 と 室 之 地 と (8) 三 世 (及 ) 三 界 三 世 ( 及 ) 彼 三 界 等 三 世 間 と 三 界 と (9) 大 種 ・ 善 人 釜 大 種 ・ 善 作 衆 生 釜 大 種 と 衆 生 の 利 を よ く 爲 す と (10) 諸 ・ 設 囎。 租 父 一 切 ・ 設 縛 ・ 宗 組 等 一 切 とsisva (gu-lan)と 梵 と (11) 流 轄 ・ 浬 繋 ・ 常 生 死 ・ 浬 繋 ・ 常 ( 如 是 ) 生 死 と 浬 繋 と 常 ( 10 ) 梵 本
(12) 正 流 蒋 ・ 大 大 正 所 流 韓 ・ 大 復 大 正 命 と 大 供 養 と (13) 畳 ・ 清 浄 ・ 大 乗 畳 性 ・ 清 浄 ・ 大 乗 法 畳 者 と 清 浄 と 大 乗 (14) 三 有 ・ 常 恒 者 於 三 有 中 常 利 釜 三 有 と 常 恒 者 と で も 彼 は あ る (15) 降 三 世 ・ 食 樂 ( 彼 ) 降 三 世 ・ 寂 静 生 降 三 世 とsambhu と (16) 圭 宰 ・ 諸 能 調 寂 静 生 圭 ・ 能 調 伏 sambhu の 圭 と 能 調 伏 (17) 堅 圭 ・ 妙 地 勝 堅 固 主 宰 ・ 妙 勝 地 金 剛 圭 と 妙 勝 地 と (18) 智 ・ 彼 岸 理 趣 大 智 ・ 波 羅 蜜 多 法 智 ・ 波 羅 蜜 の 理 趣 (19) 解 脱 畳 有 情 一 切 菩 薩 解 脱 門 菩 薩 の 解 脱 と (20) 行 ・ 一 切 如 來 一 切 如 來 ・ 諸 勝 行 一 切 如 來 の 行 と (21) 豊 利 釜 ・ 佛 心 正 覧 善 利 ・ 諸 佛 心 佛 陀 の 利 と 佛 心 と (22) 諸 菩 提 ・ 無 上 一 切 菩 提 ・ 無 有 上 諸 菩 提 と 無 上 と (23) 遍 照 ・ 最 勝 王 毘 盧 遮 那 ・ 最 勝 尊 毘 盧 遮 那 と 勝 者 の 圭 と (24) 自 然 ・ 総 持 ・ 念 自 然 ・ 総 持 ・ 諸 正 念 自 然 生 と 陀 羅 尼 と 念 と (25) 大 薩 唾 ・ 大 印 摩 詞 薩 唾 ・ 大 智 印 大 薩 唾 と 大 印 (26) 等 持 佛 作 業 三 摩 地 生 佛 事 業 三 摩 地 よ り 佛 作 業 を な す (27) 一 切 佛 爲 身 成 就 一 切 諸 佛 身 諸 正 畳 者 は 自 身 な る 事 (28) 薩 垣 ・ 常 盆 豊 畳 悟 衆 生 常 利 釜 薩 唾 と 常 恒 の 義 を 悟 る と (29) 大 根 本 ・ 大 黒 ( 彼 ) 大 根 本 即 大 黒 大 根 本 と 大 黒 と (30) 大 染 欲 ・ 大 樂 (而 ) 大 食 染 爲 大 樂 大 染 欲 と 大 樂 と (31) 大 方 便 ・ 大 勝 諸 大 方 便 ・ 大 勝 上 大 方 便 と 大 勝 の 勝 と (32) 諸 勝 ・ 宮 自 在 一 切 勝 ・ 宮 大 自 在 諸 勝 と 佳 庭 自 在 こ の 中 慈 畳 の 疏 に 依 れ ば、(3) の ﹁ 藥 叉 ﹂ ま で を 五 佛 と し、 課 の み に よ る 随 意 の 配 當 で あ る 事 は 明 白 で あ る。 な お、 不 次 の ﹁ 羅 刹 ﹂ と ﹁ 勇 ﹂、 ﹁ 威 ﹂ と ﹁ 猛 ﹂、 ﹁ 部 摩 天 ﹂ と ﹁ 世 圭 ﹂ を そ れ 室 課 の ﹁ 郎 摩 天 ﹂ の ﹁ 天 ﹂ は 恐 ら く ﹁ 夫 ﹂ の 誤 ま り で あ ろ う ぐ 一 と し て ﹁ 大 富 貴 ﹂ と 共 に 四 波 と し て い る が、 そ れ が 漢 と 思 わ れ る。 金 剛 頂 経 の 別 序 に つ い て ( 堀 内 )
金 剛 頂 経 の 別 序 に つ い て ( 堀 内 ) 次 に(6) ﹁ 毘 紐 ﹂ よ り 働 の ﹁ 大 種 ﹂ に 至 る 九 語 は こ れ ま た ﹁ 勝 ﹂ と ﹁ 大 寂 ﹂ を 合 し て 八 供 に 配 當 し て い る が、 ﹁ 勝 ﹂ は 輩 な る 形 容 詞 で な く、 そ の 原 語 はjisnu ﹁ 打 チ 勝 テ ル ﹂ で 大 陽 の 意 も あ り、 慶 喜 藏 の 繹 で は 之 を 日 輪 と 読 明 し て い る。 次 に ﹁ 善 人 畳 ﹂ よ り(11) の ﹁ 流 轄 ﹂ を 四 撮 に 配 し て い る が、 こ れ ま た 梵 藏 は 五 語 で あ る。 こ の 中 ﹁ 諸 ﹂ は 西 藏 課 の 疏 繹 に よ れ ば、 ﹁ 一 切 を 示 現 す る が 故 に 一 切 と い う ﹂ と 繹 さ れ て い る 様 に 原 語 はsarva で あ り、 ﹁ 設 騨 ﹂ は 西 藏 課 にgu-lan と あ り、 僻 書 に は、 母 に よ つ て 子 の 健 康 幸 福 を 所 ら れ る 神 の 名 と あ る が 疏 繹 で は、 ﹁ 子 を 求 め る 母 の た め に は 子 供 と な り て 示 現 す る が 故 に 子 供 の 母 と い う ﹂ と 繹 さ れ て い る の で 訟 詮 ﹁ 子 供 ﹂ の 派 生 語sisvi な る 原 語 が 推 定 さ れ る が、 恐 ら く 唐 宋 二 課 の 音 課 語 ﹁ 設 縛 ﹂ よ り 考 え て、 梵 本 爲 本 の s a r v a は saru ﹁ 矢 ﹂ の 派 生 語sarva の 誤 爲 で あ る と 思 わ れ る。 も し sa r v a と す れ ば 弓 で 殺 す も の の 意 で あ りsiva, ind の 名 と し て 用 い ら れ て い る 言 葉 で あ る。 な お 漢 課 の ﹁ 租 父 ﹂ ﹁ 宗 租 ﹂ に 封 し、 西 藏 課 は ﹁ 梵 ﹂ と な つ て い る が、pita は 梵 天 の 一 名 で あ る か ら 差 支 な い。 次 に(11) の ﹁ 浬 繋 ﹂ 以 下、(21) の ﹁ 佛 心 ﹂ に 至 る ま で は 賢 劫 十 六 奪 に 配 さ れ て い る が、 表 に 示 し た よ う に 廿 二 語 で あ る。 こ の 中 働 の ﹁ 大 大 ﹂ は 大 正 藏 に は ﹁ 大 覧 ﹂ と あ つ た が、 脚 注 に よ つ て 大 大 と 改 め た の で あ つ て 脚 性 に 依 れ ば 麗 本 は ﹁ 大 畳 ﹂ 宋 元 明 三 本 ・ 縮 刷 藏 経 ・ 浮 嚴 加 筆 本 は ﹁ 大 火 ﹂、 天 卒 爲 本 ・ 三 十 帖 策 子 は ﹁ 大 大 ﹂ で あ り、 梵 藏 二 本 よ り み て も、 施 護 繹 の ﹁ 大 復 大 ﹂ よ り み る も、 古 爲 本 の 大 大 が 正 し い と 思 わ れ る か ら で あ る。 西 藏 課 に は 大 供 養 と な つ て い る が、mah に 尊 敬 = 供 養 の 意 が あ る の で 差 支 な い。 ま た(15) の ﹁食 樂 ﹂ は 西 藏 課 にbde-spyod と あ り、 疏 繹 に は ﹁sam は 逸 樂 の 義、 そ れ を 行 ず る が 故 にhde-spyod で あ り、bde-spyod は 大 天 で あ つ て 云 々 ﹂ と あ り、 宋 課 に ﹁ 寂 静 生 ﹂ と あ る の で、 恐 ら く そ の 原 語 はsambhu な る べ く、 梵 本 爲 本 に はsastra と あ る が、 次 の 語 は 宋 課 に ﹁ 寂 静 生 主 ﹂ と あ り、 梵 本 ま たsambhu と あ る の で、sambhu は s ambhu の 誤 爲 と 思 わ れ る。 次 に(22) よ り 飼 ま で は 諸 佛 頂 に 配 さ れ、 諸 菩 提 と 無 上、 遍 照 と 最 勝 王 は 合 し て 繹 さ れ て い る が、 そ れ ぐ 二 語 で あ り、(24) の 梵 本sambhu は 明 か にsambhu の 爲 誤 で あ る。 ま た(25) 大 印 は 大 曼 茶 羅 身 を い う、 世 奪 が 衆 生 の 欲 樂 に 鷹 同 し て 無 蓋 の 身 を 示 現 す る を 大 印 と い う ﹂ と 繹 さ れ て い る。 次 に(27) は 執 金 剛 神 に 配 し、(28) は 聲 聞 縁 豊 に 配 さ れ て い る が、 不 室 課 ﹁常 釜 畳 ﹂ の 盆 はartha の 課 で あ り、 西 藏 課 並 ぴ に 疏 繹 は 常 恒 の 義 に 解 し 眞 如 の 義 と し て い る。 次 に(29) 乃 至(31) は、 始 め の 五 を 不 動 等 の 五 明 王 に 配 し、 ﹁ 大 勝 し を 爾 蝕 の 明 王 に 齪 し て い る が、 そ の 中、 不 室 課 は 軍 に 大
勝 と 課 さ れ て い る が、 原 語 はsambhu で あ つ て、 大 は 天 衆 を 指 し、 天 衆 の 中、 特 に 勝 れ た る が 天 圭 で あ り、 大 日 世 尊 は 天 圭 よ り 更 に 勝 れ て い る か ら 大 勝 勝 と い つ た の で あ る と し て い る。 最 後 の 諸 勝 宮 自 在 は 前 述 の 通 り で あ る。 (七) 以 上 偶 文 に つ い て、 慈 毘 の 疏 の 配 當 を 手 掛 り に 少 し く 關 説 し た に す ぎ ず、 偶 文 各 語 の 疏 繹 は 何 れ 改 め て 述 べ る と し 梵 本 に 依 れ ば 以 上 の 偶 文 は す べ て 輩 敷 圭 格 の 形 で あ り、 直 ち に つ づ い てmaha-bodhi-cittahmaha-bodhi-cittah maha-bodhi-cittah d r o maha-bodhi-cittah と あ り、 始 め て こ こ で 文 章 が 終 つ て い る。 つ ま り 梵 本 に 依 れ ば、 別 序 の 始 め、 ﹁ 時 に 薄 伽 梵 ﹂ 以 下 が 一 文 で あ つ て、 ﹁ 時 に 薄 伽 梵 大 毘 盧 遮 那 如 來 ﹂ の 如 來 と、 こ の ﹁ 薄 伽 梵 ・ 大 菩 提 心 ・ 普 賢 大 菩 薩 ﹂ と は 同 格 な の で あ る。 こ の 事 は 西 藏 課 ま た 然 り、 不 室 課 ま た 直 ち に ﹁ 薄 伽 梵 大 菩 提 心 ﹂ と あ つ て、 ﹁ 時 ﹂ と か ﹁ 爾 時 ﹂ と か の 語 は な い。 施 護 課 の み 濁 り ﹁ 爾 時 ﹂ の 語 が あ る が、 恐 ら く 同 課 の 誤 入 で あ ろ う。 し た が つ て 慈 豊 の 疏 は 偶 文 の 終 ま で を 別 序 と し、 ﹁ 薄 伽 梵 大 菩 提 心 ﹂ 以 下 を 正 宗 分 と し て い る け れ ど も、 西 藏 課 疏 繹 の よ う に こ の 段 即 ち ﹁ 一 切 如 來 心 に 住 す ﹂ ま で を 別 序 と し、 次 の ﹁ 時 に 一 切 如 來 ﹂ ︹ 宋 課 同 文。 梵 本atha 藏 課de-nas の 語 あ り ︺ 以 下 を 正 宗 分 す る の が 要 當 な 科 文 と 思 わ れ る。 印 ち 偶 文 の 次 ﹁ 薄 伽 梵 大 菩 提 心 ・ 普 賢 大 菩 薩、 佳 一 切 如 來 心 ﹂ は、 別 序 の 第 七、 <智 身 大 日 の 住 腱 を 示 す 文 段 > で あ つ て、 ﹁ 大 菩 提 心 と は 初 地 に 獲 起 す る 心 に 比 し、 こ の 佛 地 た る 普 賢 地 に 獲 起 す る 心 は 全 く 清 浮 で あ る か ら 大 菩 提 心 と い う の で あ る。 こ れ が 印 ち 普 賢 大 菩 薩 ﹂ で あ り、 ま た 二 切 如 來 の 心 に 佳 す ﹂ と い う の は、 一 切 如 來 は 所 度 の 衆 生 に 慮 同 し て 種 々 の 身 を 示 現 す る、 そ の 種 々 の 身 を 示 現 す る 一 切 如 來 の、 心 の 中 に 大 日 如 來 ( 智 身 ) が 佳 す る の で あ る と い う 意 で あ る 印 ち 月 輪 の 上 に 薩 唾 の 形 に 於 て 住 す る の で あ る と 繹 さ れ て い る。 1 大 正 ・ 八 六 五、 一 切 如 來 眞 實 撮 大 乗 現 誰 大 教 王 経 ( 不 室 繹 ) 並 び に 大 正 ・ 八 八 二、 佛 読 一 切 如 來 眞 實 撮 大 乗 現 誰 三 昧 大 敏 王 経 ( 施 護 課 ) 2 大 正 ・ 二 二 二 三、 金 剛 頂 大 教 王 経 疏 ( 大 勇 金 剛 撰 ) 3 伊 太 利Tucci 博 士 獲 見 所 藏 の デ ー ヴ ナ ガ リ 爲 本 ( 同、 高 野 山 大 學 所 藏 マ イ ク ロ 爲 眞 引 伸 版 ) に 依 る 4 1) 繹 友 疏、 東 北 目 録、 二 五 〇 三 番 ︹ 北 京 影 印 版、 三 三 二 六 番 ︺ 2) 畳 密 疏、 東 北 目 録、 二 五 〇 一、 二 五 〇 二 番 ︹北 京 影 印 版、 三 三 二 四、 三 三 二 五 番 ︺ 3) 慶 喜 藏 繹、 東 北 目 録、 二 五 一 六、 二 五 一 〇 番 ︹北 京 影 印 ﹁ 版、 三 三 三 九、 三 三 三 三 番 ︺ 5 大 正 六 一 ・ 三 〇 C 6 大 正 六 一 ・ 三 三 B 7 大 正 一 八 ・ 二 〇 七 B 8 大 正 一 八 ・ 三 四 一 C 9 東 北 目 録、 四 七 九 番 ( ゆ o 峡 第 三 葉、 四 行 以 下 ) 10 高 野 山 大 學 藏 爲 眞 版、 一 一 二 下 段 八 行 以 下、 一 一 一 上 段 六 行 迄 性 澄 鮮 量 み 郁 丈 金 剛 頂 経 の 別 序 に つ い て ( 堀 内 )