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台湾高齢化と震災復興 [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)台湾の高齢化と震災復興. −921 震災地における社区総体営造運動. キーワード:高齢化、震災、社区総体営造、高齢者の支援 発達・社会システム専攻 李 宜庸. 1. はじめに. 機能が脆弱化し、家族から面倒をみてもらえない高齢者の. 本論文の構成には、先ず、①台湾の高齢化の現状、人口. 数が増えると考えられる。一般の状況においては、深刻な. の動向、そして高齢者に関する社会保障を整理して、今後. 病気に罹らなければ、高齢者は何らかのかたちで地域生活. 台湾における高齢者の生活形態及び支援形態の変化を把握. を続けることができる。しかし、大きな災害に襲われた場. する。次に②災害発生という緊急事態から、高齢者の状況. 合、特に単身世帯、夫婦世帯の高齢者にとっては、自立避. 及び支援方法を捉えて、今後高齢者の生活支援の方式を探. 難、そして災害からの生活再建に困難があるだろう。ここ. っていく。主な課題には地震災害で浮かび上がった高齢者. では、災害という状況から高齢者のことを考えるのは、極. 生活支援の取り組みについて考察することである。そして、. 端的な例であるかもしれないが、この時からこそ、高齢化. このような支援活動が展開された要因を探究することは本. の課題が顕在化し、その課題に対し、人々が直面しなけれ. 研究の目的である。. ばならない立場になるのである。. 調査方法として、①台湾の南投県の中寮郷龍安村と埔里. 他方、高齢者の支援については、親族関係による支え、. 鎮長青村は調査対象地として選定した。②2004 年 8 月に現. 地域社会による支え合う形態、福祉制度という三つの形態. 地で聞き取り調査を行い、研究に関連資料を収集した。. がある。現在台湾では、高齢者の所得保障制度の未整備と. 2.台湾人口の高齢化及び変化. 家族形態の変化によって、今後高齢者への支えには、人々. 台湾は 1993 年に高齢化率が7%を超え、高齢化社会に入. からの助け合い、地域の資源の利用というようなコミュニ. り、現在の高齢化率は 9.74%(2005 年の時点)を占めてい. ティの再建は必要になっていくと考える。. る。近年、出生率の低下とベビーブーム世代の高齢化によ. 3.災害と高齢者に関する先行研究. って、人口高齢化の進行速度はますます速まっており、2020. 天国によれば、高齢人口の比率は地域の自然災害に対す. 年に高齢化率は 14%を超えると予測された。高齢人口がます. る脆弱性に関連性がある、 と指摘している (天国 2001:94) 。. ます増えていくことに対し、現在高齢者に関する社会保障. 日本の阪神・淡路大震災の状況を挙げてみると、地震発生. には完全に整備されているとはいえない。例えば、老後生. 当時(1995 年)の神戸市の高齢化率は 15%で、いわゆる高. 活保障の公的年金制度は社会の一部集団(公務員、教職員、. 齢社会であったため、災害に際して、震災犠牲者の半数以. 軍人)のみが享受できる状況にある。すなわち、多くの国. 上が高齢者であり、仮設住宅に入居した被災者の中に 7 割. 民は自助努力により、老後の生活保障を解決しなければな. を 60 歳以上の人が占め、そして孤独死と自殺といった震災. らないのである。したがって、子どもに頼って、老後の生. 関連死と認定された死者の内、9 割は 60 歳以上の人であっ. 活を送るのは台湾の多くの高齢者の生活現状である。. た。災害の被害自体が高齢者層に集中的に現われたのは、. 一方、社会の様々な変動に伴い、近年台湾の家族形態は. 被災地の高齢化率が高いということ他に、高齢者は災害弱. 変わりつつである。家族規模の縮小によって、核家族は家. 者であることが認識されたのである。それは、災害に際し. 族形態の主流になった。そして、離婚率の急増、結婚して. て高齢者が健常者より被災を受けやすく、自立避難が困難. も子どもを産まないという新しい家族観念によって、 「単身. で、また、避難期と復興期においても、高齢者が身体的、. 者」 、 「夫婦のみ」 、 「片親家族」というような家族形態が増. 精神的に被害を受けやすく、災害弱者になる可能性が高い. えた。このような背景のもとに、従来高齢者を支える家族. と思われているのである。こうして、災害発生の場合に、.

(2) 被害の状況を食い止めるために、高齢者への配慮、また 災害後の生活支援の重要性が提起された。 3.1 高齢者の支援需要と支援主体 ここでは、災害の状況に応じて、三つの時期に分け、各 時期における高齢者の支援需要と支援主体をみてみる。. 物的支援と協力も欠かせないのである。 5.住民参加型高齢者福祉活動 ― 中寮郷龍安村を事例に (1)調査地の概要 中寮郷は台湾の南投県の西側に位置し総面積の 97%を山. 先ず、発災直後の緊急救命時期において、高齢者の状況. 地が占め、農業が産業の中心である。中寮郷は 18 の村から. 把握、すなわち安否確認をしたうえで救出活動を行うこと. 成り、人口は約1万7千人で、高齢化率は 16.35%である。. が必要となる。救助活動は即時の対応が求められているの. 農村地域であるため、生活費を稼ぐことが困難で、若年が. で、家族や近隣等身近な人々、または地域組織による救援. 都会に流出する傾向がある。したがって、ここには一人暮. 活動が行われる場合が多い。特に、家族がそばにいない一. らしと夫婦のみで生活している高齢者が多い。1999 年地震. 人暮らし、高齢夫婦世帯の安否確認を可能にするのは、近. の時、中寮郷の震災の死亡率は全被災地で最も高い地域だ. 隣や身近な人などによって行われる場合が求められる。次. った。そして建物の崩壊率は 73%を超えた。. に、避難期においては、基本的な生活を維持するための救. 龍安村は北部に位置した、 中寮郷の18 村中の一つである。. 援物質が必要とされる以外、高齢者には健康状態の確認、. そしてここは震災復興の町づくりが展開された拠点である。. こころのケアという支援が必要とされている。特に、単身. 龍安村の面積は 0.874km2、人口は 896 人、268 世帯であ. 高齢者には避難や移動に困難があるため、介助者を必要と. る。閉鎖的な農村型の地域に属し、伝統的な農村の人情が. する場合もあると指摘されている。このような支援ニーズ. 保有しており、町で結婚や葬式が行われた時、お互い手助. に対応ができるのは、被災地で行われたボランティア活動. けすることが多い、という。. が可能になる。生活活再建期においては、高齢者を孤立し. (2)災害後の地域復興. た状態に放置しないこと、引き籠もりがちな高齢者を訪問. 震災から復興のために、龍安村では住民組織を設立した。. して安否を確認すること、そして健康状態を把握すること. その後、この住民組織はそのまま、行政の援助を受け、政. が重要である。この時期の支援活動は長期、継続的な福祉. 府が定めた規定に基づく、 「中寮郷龍安村社区重建委員会」. 活動が必要とされるので、地域でこのような福祉体制を作. となった。そして、東海大学の建築学チームは行政が定め. 成することが求められている。それに関しては、政府、民. る企画団体に指定され、中寮郷の復興計画の作成支援を担. 間団体、ボランティア、地域等各主体の協同で、生活支援. 当した。復興計画の作成は、住民会議への住民の参加を得. の仕組みづくりを試みられている。. ながら、専門家の支援の下で行われた。復興計画の内容は、. 4.台湾の地震災害と災害後の復興. 住宅に関しては、家の再建、改築、新築に関する基準を設. 近年に台湾で発生した最も大きな自然災害は1999 年に起. け、そして、産業の復興、道路及び排水の再建、公共施設・. きた地震であった。 この地震は 1999 年 9 月 21 日に発生し、. 自然生態環境等の公共的なものに関する計画が作成された。. 台湾中部を震源とするマグニチュ−ド 7.7 の大地震であっ. その他、地域福祉と地元の産業復興を積極的に推進する. た。この地震衝撃で 2000 人を超えた死者が出て、約 5 万棟. ために、 「龍眼林福利協会」が設立された。福利協会は住民. の建物が崩壊した。台湾の中部は農村地域であるため、地. を主体とし、政府と民間団体からの財源の支えで、高齢者. 震災害に伴った地域の高齢化問題が顕在した。災害後、震. を含めた地域の福祉活動を行っている。. 災地の復興方法としては、政府が「社区総体営造再建」. (3)福利協会による高齢者の生活支援. (Integrated Community Reconstruction)という方式が. 福利協会が行った高齢者生活支援活動には、高齢者に対. 取り上げられた。 「社区総体営造」は日本の「町づくり」に. する食事配送、一時的な預かりサービス、高齢者達の交流. 相当する活動であり、主な概念とは、民間の人々が自主的. 活動、定期健康診断などがある。食事配送サービスには、. に地域に対して関心を持ち、自ら町づくりをする行動を行. 現在約 200 人の 65 歳以上の高齢者が利用している。低収入. うことである。これも最近世界的に見られる「ビューロク. 者や障害者などの場合は、郷公所(日本の区役所に当る). ラシー・モデル」から「エンパワメント・モデル」とか、 「外. からの援助があって、無料で配食サービスがもらえる。ま. 資導入型開発」から「内発的発展型開発」といった地域開. た、福利協会は愚人基金会と連携し、毎週の火・木曜日に. 発思想の変化を反映している。このような活動が遂行する. 公民館で高齢者の預かりサービスを行っている。現在、約. 際には、欠かせないのは、①住民や社区営造活動者が町づ. 80 人の高齢者がこのサービスを受けており、毎週この時間. くりをする意欲が誘発するために、補助や奨励方案の設け. に、書道や折り紙、健康舞踊、老人体操等をしている。さ. ということである。また②専門家と民間団体からの人的、. らに、高齢者たちに対する健康診断も行っている。これら.

(3) のサービスにより、一人暮らし、もくしは、家に引き籠り. 鶏の世話をする、掃除をする等。高齢者はできる限り自立. がちな高齢者は、食事の心配が要らず、しかも、家から外. し、自分の存在を尊重する。②村の人びとは皆一つまとま. 出して町の人と交流することもできる。また、毎日の食事. った大家族のようである。スタッフが勤務するときに、高. 配送サービスを通し、高齢者の状況の把握、安否確認もで. 齢者が彼らの子どもの面倒をみる。そして、村長夫婦とス. きる。. タッフは高齢者に対して自分の祖父母のように世話する。. (4)支援活動の生成経緯. 新たな家族関係が村で築かれている。③地域の民間団体の. 龍安村の事例をともにして、高齢者の支援活動の生成経 緯を考えると、次のように言うことができる。 龍安村では、もともと人間関係が密な地域である。お互. 人々が常に長青村に訪れ、踊りの指導や様々な活動を行っ ている。地元の学生もよくボランティアとして訪れている。 地域の人々との結びつきを通し、長青村は地域の一員とし. いに繋がりがあったうえ、災害に際して、助け合い行動が. てのネットワークを作り上げた。. 行われた。それによって、住民間に信頼関係が形成され、. (2)長青村形成の要因. その後の復興町づくりと福祉活動の取り組みに対して、住. 長青村の形成には、ボランティアが重要な役割を担って. 民の団結と行動力が引き出した。また、 「社区総体営造型再. いる。支援物資の配分と義援金の寄付のほかに、長期にわ. 建」という復興政策には、住民が自分の地域で災害後の問. たる生活支援、仮設住宅のコミュニティづくりまで、ボラ. 題に対して共同で考え、地域の力で解決していくチャンス. ンティアの関わりがあったからこそ、被災した高齢者に対. を与えてくれた。そしてボランティアたち、民間の団体が. する支援が実行し続けることができた。また、地域の大学. 地域に対する長期的な関心が、災害後の地域問題に対して. や研究機関などの協力関係が築かれ、情報と意見の交換が. 住民が積極的に取り組んでいく状況をもたらしたのである. できたことは、村の福祉体制の構築には大きな力となる。. と考えられる。. 7.調査の考察. 6.ボランティア型福祉コミュニティ − 南投県埔里鎮長青村の事例 (1)対象地の概要. 龍安村と長青村の事例によって、この二つの地域は復興 町づくりを通して、高齢者の生活支援の仕組みに取り組み 始めたのである。こうして、復興町づくりには高齢者の支. 埔里鎮は台湾の南投県の北側に位置している盆地で、農. 援活動が生成された契機だと考えられる。では、復興町づ. 業や観光業を主としている。人口は 87,069 人、そのうち、. くりがいかに展開されたのか。以下のようにまとめること. 高齢人口は 9,725 人、高齢化率は 11%である。1999 年の地. ができる。先ず①地域の共同意識の形成ということ。地震. 震の災害で埔里鎮は震源域上に位置する町であるため、深. の衝撃によって、住民たちが同じ土地に住み、自然環境、. 刻な被災を受けた。全地域では 204 名の犠牲者が出て、建. 地域産業を共有するという「生活の共同体」のことを認識. 物の全・半壊率は 53%を占めた。. させられた。共同意識が形成されたうえに、お互いの繋が. 埔里鎮に位置している長青村では、当時の震災以後、被. りができ、そして地域の環境、人、ものに対する関心と愛. 災者に適切な措置をするために、建てられた仮設住宅群に. 着を喚起させた。こうして、地域共同体の再組織化の成功. 付けされた名称である。地震から 6 年が経過した現在の長. に繋がっている。②リーダーの存在ということ。リーダー. 青村はまだ存続しており、以前の災害の避難場所から変わ. は地域の事情が最も分かり、住民の要望をまとめる力を持. って、今は震災を受けた身寄りのない、または中・低所得. つリーダーが、町づくりの計画を順調に進める上で、重要. の高齢者が居住しており、互助の養護コミュニティに変容. な役割を果たす。③専門家の協力。町づくりの方法に関し. した。長青村の例は非常に特別であり、台湾でもただ一つ. ては、住民の経験が少ないため、町づくり活動を行う民間. の事例である。しかし、このようなコミュニティが存在し. 専門家団体の指導と協力が必要である。④民間資源との結. ているからこそ、被災した高齢者を、民間と地域の力で彼. びつき。町づくりを推進するためには、行政の補助金、民. らを支え、平穏な老後の生活をおくることができる。. 間の基金、宗教団体の寄付金の活用、各方面からの人的資. (2)長青村の特徴. 源を集めて、共に助け合っていくことは大切である。. 長青村は本来、被災した高齢者を保護するために建設さ. 以上. れたものであるが、村長のコミュニティづくりの理念によ. <主要参考文献>. って、ここでは相互互助のコミュニティの形象を創造した。. 帯谷博明,2002, 「地域づくりの生成過程における地域環境. 村の特徴は次の通りである。①長青村にいる高齢者は世話. の構築−内発的発展論の検討を踏まえて」 『社会学研究』71. の受け手であるだけでなく、コミュニティの一員としての. 東北社会学研究会. 役割をこなしている。例えば、花に水をやる、畑を耕す、. 石田路子,2004, 「地域社会における自立支援システムに.

(4) ついて」 『社会学論集』第 11 号奈良女子大学社会学研究会 上野谷 加代子, 2004・4, 「高齢者の地域生活を支える 新しい福祉システム−自治体・民間の協働の視点から」 『社 会福祉研究』 服部くみえ, 2004.11, 「台湾・震災復興社区総体営造の 「総体性」に関する研究」 『地域安全学会論文集』6 山崎正洋・伊藤史子・渡辺俊一, 2001,「台湾震災復興町 づくりの特徴」第 36 回日本都市計画学会学術研究論文集 菅磨志保, 2001.5「阪神・淡路大震災以降の概念の広が りと対応の変化を中心に」 『日本都市学会年報』第 34 巻 高橋儀平, 1995, 「高齢者・障害者の社会参加と災害対 策」 『総合都市研究』第 57 号 長野基, 2002, 「台湾における「社区総体営造」 」 『早稲田 政治公法研究第 71 号』 孫得雄, 2005 春「台湾の少子高齢化」 『Aging』 菅摩志保,2005, 「地域コミュニティによる災害対応と地 域福祉」 『月刊福祉』1 高橋幸三郎, 2004, 『地域づくりの福祉援助』ミネルヴァ 書房 本間和也,2005, 「被災地の地域生活支援」 『社会福祉研究』 第 94 号 小川全夫, 1996, 『地域の高齢化と福祉−高齢者のコミ ュニティ状況』 恒星社厚生閣 子田兼三・野上文夫・渡辺武男,1998, 『地域福祉論』相 川書房 陳亮全, 2004, 『台湾社区総体営造の展開 』阪神・淡路 大震災記念協会 江鴻儒訳 『台湾社区総体営造の軌跡』 台湾行政院文化 建設委員会 『都市の少子高齢化研究』, 2000 エイジング総合研究セ ンター 加藤寛, 「大災害後早期の精神医療活動のあり方−阪神・淡 路大震災と台湾大地震の比較を通して」 『研究年報』第 7 巻 鶴理恵子, 2003,「福祉コミュニティ形成の社会的条件」 『保健福祉研究所記要』第 4 号.

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