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〜日本の教育課程の変遷に焦点を当てて〜

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(1)

高等学校数学科教育課程 における日中韓比較研究 I

〜日本の教育課程の変遷に焦点を当てて〜

菅原久美子 *

秋田県立大曲高等学校

杜 威

秋田大学教育文化学部 本研究 は日本 ・中国 ・韓国の高校数学の教育課程及 び教科書を基 に目標や内容の取扱い についての比較を行 い,それぞれの特徴を明確 にす るための調査研究である.その結果, 中国や韓国は教育の目的を人材養成 におき,国力を高めようとす る意図が明確 にみ られ, また,教科書の比較か ら中国や韓国は日本 より必修の内容が多 く,数学内容の系統性 によ り配慮 していることなどが明 らかになった. さらに関数や集合の扱 い方 に違 いがあること がわか り, これに焦点を当てて現代化以降の日本の高校数学科教育課程の変遷を考察 した.

キーワー ド:教育課程,現代化,学習指導要領,集合,関数

1.

始めに

高等学校の新学習指導要領 は平成

10

年 に告示 され, 平成

15

年度か ら施行 されている.近年 「 学力低下」,

「 理数離れ」 などの声が,教育現場やメデ ィア等で あが って い る. 一 方 で文部科 学 省 は過去数 回 の

IEA

の調査結果や

2000

年 の

OECD

の調査結果を受 け,「 我が国の成績 は依然 と して優秀で学力低下 は お こっていない」 とす る見解を出 している. ところ が

2003

年 の

OECD

調査では数学的 リテラシーの成 績が 1位か ら

6

位 に,読解力の成績が

8

位か ら

14

位 へ と順位 を下 げ, また,

2003

年 の

IEA

調査では順

位が下が らないものの,点数の大幅な下落があった.

これ らを受 けて,文部科学省 は 「日本 は世界の トッ プ レベルにあるとは言えない」 というコメ ン トを発 表 した.

この

20‑30

年 ほどの日本の教育 における変化を見 てみると

,1980

年頃のゆとり教育の提唱以来,算数 ・ 数学の授業時間数や学習内容 は削減 され続けてきた.

例えば時間数では現在 は

1970

年代 に比べて,小学校

20051月24日受理

†High SchoolMathematicsCurriculum ofJapan, China,andKorea‑AComparativeResearch

辛KumikoSUGAWARA,OhmagariHighSchoolAkita

**DuW E,FacultyofEducationandHumanStudies,

AkitaUniversity,Akita

178

時間,中学校で

105

時間減少 してお り,それぞ れ 1年間分の授業時間に相当 している.それに伴い, 学習内容の削減や上級学年‑の移行が行われてきた.

このような状況の中,他の国ではどのような状況 になっているのかを調べ,比較 してみたい.時間的 な制約 と資料収集の しやすさなどの理由か ら,比較 対象 として中国 と韓国を選んだ.両国 とも日本 に近 く,近年飛躍的な経済成長を遂 げている.韓国はこ の頃

IEA

の調査や

OECD

の調査で も上位 グループ に属す る成績をあげている.中国はこの

2

つの調査 に参加 していないが

,2003

年か ら実施 されている内 閣府プロジェク ト 「 科学技術の将来を支える人材 に 関す る国際比較調査」での数学の成績が良 く,生徒 たちは将来 に対 して大 きな希望を抱いてお り意欲的 であるという結果が出されている.

そこで,本研究 は日本 ・中国 ・韓国の高校数学の 教育課程および教科書の内容の直接比較を通 して, 日本の教育課程の良 さや問題点を明 らかに してい く ことを目的 としている.

研究 にあた り,最初 に日中韓の教育課程及 び教科

書の内容の整理 ・分析,比較を行 った.教科書の比

較か ら関数 と集合の扱 い方 に違 いがあることに焦点

を当て, 日本 における現代化以降の高校数学科教育

課程の変遷 について調べた. この一連の作業 におい

(2)

て,主 に日本の 「 高等学校学習指導要領」,中国の

「全 日制普通高級 中学数学教学大綱」 及 び韓 国 の

「 第

7

次教育課程数学」 を使用 し, その他関連 ある 調査報告書や文献 を参考 に した.「 全 日制普通高級 中学数学教学大綱」及 び 「 第

7

次教育課程数学」 は 日本の高等学校学習指導要領数学 にあたるもので, それぞれ教育部,教育人的資源部 (どち らも日本の 文部科学省 にあたる) によって作 られている. また 教科書 は日本の場合,数研出版,実教出版,東京書 籍,啓林館の

4

社の現行の ものを使用 した.中国の 場合,人民教育出版社作成の現行の もの,韓国の場 合

Kyohakusa(小),Saerom

(州音五号 )

, Chunjae

( 尋補正卑)の

3

社作成の現行の ものを使 用 した.

2.

日本 ・中国 ・韓国の教育課程

ここでは日本 ・中国 ・韓国の高等学校の教育課程 についてみてい く.

(1)

日本の教育課程

日本では 「自ら学 び, 自ら考える力の育成」

,

「 基 礎基本の確実な定着 と,個性を生かす教育の充実」

等の方針 に基づ き,平成

10

年 に学習指導要領が改訂 された. この方針 に基づき,高校数学科では次 に示 す 目標を掲げている.

数学 における基本的な概念や原理 .法則 の理解 を深め,事象を数学的に考察 し処理する能力を高 め,数学的活動を通 して創造性の基礎を培 うとと もに,数学的な見方や考え方のよさを認識 し,そ

これは従前の学習指導要領の目標 に 「 数学的活動 を通 して創造性 の基礎を培 うとともに」 という部分 が新 しく付加 された ものにな って いる. ここでの

「 創造性 の基礎」 とは多面的に ものを見 る力や論理 的に考える力などを指す.人間の知的創造力が最大 の資源である日本 にとって,科学技術の発展が必要 であるという観点か ら知的創造力 に結びっ く創造性 の基礎 となる力の育成が重要であるとい う,中教審 第一次答申を受 けた ものである.

科 目編成 も見直され,数学学習の系統性 と選択の 多様性の双方が配慮 された ものとなっている.従前 の科 目編成 と比較す ると次の通 りである.

今回新 しく 「 数学基礎」が設 けられた. これは目 標にある 「 数学的な見方や考え方のよさを認識する」

現 行 従 前

数学基礎

(2)

数学

Ⅰ (3)

数学

Ⅰ(4)

数学

(4)

数学

Ⅱ(3)

数学 Ⅲ

(3)

数学

Ⅲ(3)

数学

A (2)

数学

A(2)

数学

B (2)

数学

B(2)

数学

C (2)

数学

C(2)

ために,実生活 における様 々な事象 と数学の関連性 や数学学習の必要性の認識などをね らいとした科 目 である.なお,( )の中は標準単位数である.

「 数学基礎」 と 「 数学

」は選択必修科 目である.

また,今回の改訂 で 「数学

A」

の位置づ けが少 し 変 わ った. 旧課程 で は 「数学

A」

の内容 は教科書 内選択であ り,「 数学 Ⅰと並行か直後 に履修す る」

となっていたが,現行課程ではすべての内容を履修 し,「 数学基礎」

,

「 数学

Ⅰ」

と並行かその後 に履修 す るとな っている.数学

A

は選択科 目とはいえ, その内容 は中学校か らの移行内容やその後の数学の 履修 に必要な内容が含 まれてお り,数学 Ⅱ,数学

を履修 しようとす る生徒 にとっては,必修のような 位置づけになると考え られる.

「 数学基礎」, 「数学

」, 「 数学

A」

は数学的な 見方や考え方のよさの認識を重視す る科 目,他 は事 象を数学的に考察 し処理す る能力を重視す る科 目と 位置づ けられている.

(2)

中国の教育課程

中国は経済を支える人材を育成す るための教育改 革を行 ってきた.

1986

年 に義務教育法が施行 され,

2004

年の統計 によると初等教育の就学率 は

98.65%

, 小学校卒業生の中学への進学率 は

97.9%

になってい

る.義務教育の現行学制 は

6‑3

制」

,「5‑4

制」,

9

年一貫教育」 が共存す るが, ほとん どの学区で

6‑3

制」が主体である.義務教育 は教科書代 など 一部が有償である.小学校,初級中学 (日本の中学 校 にあたる)では飛 び級や留年 などのシステムがあ

るが,留年制度 はな くす傾向にある.

中国では教育部が教育行政を管轄 している.教育

部 は国定教育課程を作成す る. 日本の高等学校 に相

当す るのは高級中学であり,数学 は 「 全 日制普通高

級 中学数学教学大綱」 ( 以下教学大綱) によって内

容が規定 されている.教学大綱の全体 目標 は,社会

主義現代化建設のため,または更なる学習のために

(3)

必要 とされる代数 ・幾何の基礎的な知識,確率統計 や微積分の初歩的な知識を学習 させ,それ らに関す る基本的な技能を身 につけると同時に,思考能力 ・ 計算能力 ・空間イメージ想像能力 ・実際問題の解決 能力及 び創造意識を育て,よき個性的品性を育成 し 唯物弁証法的観点を身 につけさせ ることである.

現在 は教学大綱の代わ りにカ リキュラムとなる国 家 レベルでの課程標準が作成 され

,2001

年度か ら実 験を行 っている.当初 は

2010

年の本格実施 の予定で いたが,小 中学校 で は

2005

年 か ら,高等学校 で は

2007

年か ら原則 として

1

年次全員が課程標準を実施 するという方向である.

中国では履修する内容を必修 と選択に分けている.

必修の場合

,

「 数学

」 と 「 数学基礎」の

2

つか ら

1

つを選ぶ という日本の履修方式 と違 って,必修科 目 を選ぶ ことはで きない. また選択 には 「 選択

」 と

「 選択

Ⅱ」

があ り,「 選択

Ⅰ」

が文系 ( 文科),実業 系 ( 実科) の生徒用,「 選択

Ⅱ」

が理系 ( 理科) の 生徒用である.ただ し,選択 といって も文 ・実系 と 理系 という選択肢 しかな く,生徒 はどちらかを必ず 履修 しなければな らない.また科 目名 は 「 数学」の 1つであ り,それで教科書が編纂 されている.現行 の ものは 「第一冊 ( 上)/( 下) 」, 「 第二冊 ( 上)/

( 下) の

A

, ( 下) の

B

」,「 第三冊 ( 選択 文科 ・ 実科)/ ( 選択 理科)」 の

7

冊である.第一冊 と第 二冊が必修でそれぞれ 1

,2

年次用であ り,第三冊 は選択で

3

年次用である. なお必修時間数 は 1

・2

年生が

280

時間

(4

時間

×35

×2

年)で,日本の

105

時間

(3

時間

×35

×

1年) と比べ ると非常 に多い.

(3)

韓国の教育課程

韓国では

1990

年半ば以降,教育制度改革が急展開 をみせている. これまでの人づ くり政策ではグロー バル社会 に対応できないという危機感があ り,初等 教育の普及 に重点をおいた教育政策か ら,技術開発 力の強化を目指 した高等教育の質の向上へ と教育政 策の転換を図 っている.

韓国の教育制度 は日本 と同様 に

6‑3‑3‑4

制が 基本である.

1984

年 に教育法が一部改正 され,義務 教育期間が初等学校 と中学校の合計

9

年間になった.

しか し,財政上の理由か ら全国一律の実施ができず, 段階的に無償義務教育を進め

,2004

年 にすべての地 域の初等 ・中等学校のすべての学年を対象 に した義 務教育が完成 した. とはいえ義務教育が完成す る前 の

2000

年の小学校か ら中学校への進学率は

99.9%

で,

ほぼすべての国民が中学校までの教育を受 けていた.

韓国で教育課程の作成 に責任を負 っているのは, 教育人的資源部 と教育課程評価院である.教育課程 評価院は,学校教育課程の開発や教科書の開発,大 学入試などの出題 と管理のために

1998

年に政府によっ て設立 された.教育課程 は

1954

年の第一次教育課程 を編成 してか らこれまでに

6

回改訂 され,現在 は第

7

次教育課程である.第

7

次教育課程の方針 は

21

世紀の世界化,情報化時代を主導す る自律的で創意 的な韓国人育成」 と定め られた.特徴的なのは生徒 の個人差を十分 に考慮 した教育がで きるように した い 「 水準別教育課程」の採用である.水準別教育課 程 には

3

つの型がある.それぞれの特徴 は次の通 り である.

1

. 段階型

・学習内容を難易度 によって段階に区別

・数学 と中等英語 に適用

・上級段階への進級のための資格基準 は学校別 に設 定

2.

深化 ・補充型

・生徒の能力によって学習の量や程度が異なる

2

つ の教育課程を編成

・成就基準への到達者 は深化学習,未到達者 は補充 学習を実施

・国語 ・社会 ・初等英語 に適用

3.

科 目選択型

・生徒の能力 ・関心を反映.多様な科 目開設

・進路 ・能力に合 う科 目を選択 し, 自分の教育課程 を構成

・1

1 学年

,12

学年の全科 目に適用

数学 には基本的に 「 段階型水準別教育課程」が採 用 されている. これは

10

年間の基本教育期間を国民 共通基本教育課程 とし,

1‑10

年 までの

10

段階 に分 けて,段階間の内容体系や内容連結性 における重複 や断絶がないように組織 されている.国民共通基本 教育期間

(1‑10

学年) の数学科 の教育 は,生徒 た ちが属す る学年 に関係 な く, 自分の能力水準 に合 う 段階で学習できる.内容 は 「 数 と演算

「 文字 と式」

「図形

「 測定

「 確率 と統計

「 規則性 と関数」 の

6

領域 に分 けられる.また深化 ・補充型の教育課程 も

組み合わせ られてお り,各段階では領域別 に基本課

程,補充課程,深化課程が設 けられている.「 基本

課程」 はすべての生徒が学習すべ き核心的な内容 と

して定 め,「 深化課程」 は基本課程 を成功 した生徒

(4)

たちが発展的に学習で きる内容で,問題解決力を培 うために必要 な学習内容で構成 され,教育課程の中 にその内容が明示 されている.「 補充課程」 は基本 課程の内容の中で最低限必要 な内容要素を抽出 した もので構成 される.その内容 に含 まれる基本要素, 要素間の連結性,次 に学ぶ内容 との関係などに重点 をおきなが ら,生徒,学習内容,時間などによって 柔軟 に対応で きるので教育課程上では一律 に明示 し ていない.例えば中学校では

2

,

3

クラスを上 ( 潔 化),中 ( 基本),下 ( 補充)の

3

クラスに編成 し直

して授業を行 っているところもある.

高校

1

年生の数学 は国民共通基本教育課程の

10

段 階で,週

4

時間が当て られ,年間

136

時間 とな って いる.

10

段階の水準 には必ず到達 しなければな らな いため,到達で きなか った場合 は高校

2

,

3

年生で 履修 しなければな らない.そのため

10

段階に到達で

きない生徒が履修で きる科 目も設 けている.

高校

2

,

3

年生 は選択中心 の教育課程で単位制で ある.選択科 目には 「 一般選択科 目」 と 「 深化選択 科 目」があり

,

「 一般選択科 目」 は教養を高めた り, 実生活 との関連 を図 る科 目,「 深化選択科 目」 は生 徒の進路 に関わる科 目や,適性 と素質を啓発す るう えで役 に立つ科 目である.数学では一般選択科 目と して 「 実用数学」,深化選択科 目として 「 数学

」,

「 数学

」,「 微分 と積分」

,

「 確率 と統計」,「 離散数 学」の

5

科 目が設定 されている.「 数学

IJ

「 数学

Ⅱ」

10

段階の数学を履修 した後 にもっと高い水準の数 学を学習するために選択で きる大学進学者向 きの科 目である.特 に 「 数学

Ⅱ」

は理系の大学 に進学す る 生徒向 きで,それに引 き続 く科 目として 「 微分 と積 分」 がある.「 実用数学」

,

「 確率 と統計」,「 離散数 学」 は

10

段階の数学 に達 しているかどうかに関わ ら ず選択で きる科 目となっている.

(4)

教育課程 に関する考察

3

国 とも国家 レベルでの教育課程を編成 している.

その中で 日本 は個性を尊重す ることに重点 を置いた 目標,中国 と韓国は国際社会 に通用す る人材の育成 を重点 に置いた目標を掲げている.韓国 と日本 は選 択科 目を多 く取 り入れ,選択の幅を広 げているが, 中国ではほとんどの内容が必修 となっている.また, 高校 の必修の授業時間数 は日本が

105

時間または

70

時間なのに対 して,韓国では

136

時間,中国では

280

時間 とな ってお り, 日本の授業時間数の少なさが 目 立 っている.

特 に韓国の水準別教育課程 は興味深 い.韓国で も

「 数学 の成績 はよいが数学 はあまり好 きではない」

という生徒の割合が多いことか ら,数学の学習 に達 成感を持たせ ることが重要であるとして段階型の水 準別教育課程を導入 していると考え られる.個人の 力に合 った段階で学習 していけるというシステムは, 特 に学業不振の生徒が自分が希望す る水準で学習で

きることか ら学業成就度が高 くなることが期待 され ている. しか し一方,韓国国内では人材の選別 につ なが る恐れがあるという指摘や上位の水準 に進 もう として一層塾 に頼 るようになるのではないか とい う 指摘がある.

日本ではこれか らますます生徒の進路,興味 ・関 心 は多様化 して くるであろう.それを見据えた学習 形態や選択科 目の在 り方を検討 してい くうえで も, 韓国の水準別教育課程の今後 に注 目したい.

3.

教科書および科 目の内容

日本 は民間の教科書発行者 による教科書の著作 ・ 編集が基本 となる.教科書 は,文部科学大臣の検定 を経ては じめて,学校で教科書 として使用 され る資 格 を与え られる.採択の権限は,公立学校 について は所管の教育委員会 に,国 ・私立学校 については校 長 にあり,採択 された教科書の需要数 は文部科学大 臣に報告 され る.

中国は教科書の発行 について人民教育出版社が独 占す るという状況が続 いてきたが,検定制度の導入 に伴 い,民間で多数出版す る動 きも出て きている.

韓国の教科書 は,国定教科書,検定教科書,認定 教科書の三種類か ら成 っている.国定教科書 は韓国 教育課程評価院,教育大学,教員大学 などが教育人 的資源部 の委託を受 けて編纂す るもの,検定教科書 は教科書研究の専門家,学識経験者が民間の出版社 と共同で編集 ・制作す るもの,認定教科書 は学術団 体 または市や道の教育研究所 などが編纂す るもので ある.

現行の教科書 を基 に日本 ・中国 ・韓国のそれぞれ の科 目の内容 を整理 した. ( ) の中は日本 と韓国 が標準単位数,中国が標準時間数をそれぞれ示 して いる.太字の部分 は必修の内容である.

第二冊 の ( 下) はさ らに

A

B

に分かれ, どち

らかを選んで履修す るように教学大綱 に書かれてい

.B

の方では空間ベク トルを用いて空間図形を扱 っ

ているところが異なる点である.

(5)

【日本の数学の内容】

数学基礎 数学 と人間の活動,社会生活 におけ

(2)

る数理的な考察,身近な統計 数学 Ⅰ 方程式 と不等式,二次関数,

(3)

図形 と計量

数学

式 と証明 .高次方程式,

(4)

図形 と方程式,いろいろな関数, 微分 .積分の考え

数学

(3)

Ⅲ 極限,微分法,積分法 数学

A

平面図形,集合 と論理,

(2)

場合の数 と確率

数学 B 数列,ベク トル,統計 とコンビユー

(2)

夕,数値計算 とコンピュータ 数学 C 行列 とその応用,式 と曲線, 数学基礎 と数学 Ⅰは選択必修 となっている.

【中国の数学の内容】

第一冊 集合 と論理初歩

(14)

,関数

(30)

, ( 上) 数列

(12)

第一冊 ( 下) 三角関数

(46)

,平面ベ ク トル(

12)

第二冊 不等式

(22)

,直線 と円の方程式

(22)

,

( 上) 円錐曲線の方程式

(18)

第二冊 直線 .平面 .簡単な立体

(36)

, ( 下) 順列 .組合せ(

18)

,確率

(12)

第三冊 確率 と統計

(14)

,極限(

12)

,導関数

( 哩) と微分

(14)

,積分

(16)

,複素数

(16)

【 韓国の数学の内容】

数 学 数 と演算,文字 と式,統計,図形,

(4

時間) 測定,関数

実用数学 電卓 とコンピュータ,経済生活,

(4).

生活統計,生活問題解決

数学 Ⅰ 指数 と対数,行列 ( 行列 とその演算,

(8)

逆行列, 連立一次方程式), 数列, 数列 の極限,指数関数 と対数関数,

数学

方程式 と不等式,関数の極限 と連続

(8)

性,微分法,積分法,二次曲線,

空間図形 と空間座標,ベク トル 微分 と積分 三角関数,関数の極限,微分法,

(4)

積分法

確率 と統計 資料の整理 とまとめ,確率,確率変

(4)

数 と確率分布,. 統計的推定

離散数学 選択 と配列,グラフ,アルゴリズム,

さらに韓国の高校

1

年生の数学 ( 必修)の具体的 な内容を次 に示す.分冊 にな ってお り,一方で数 と 演算,文字 と式,統計,他方で図形,測定,関数を 扱 っている.

【 韓国の高校 1年生の数学の内容】

数 と演算 集合 と命題,実数,複素数

文字 と式 多項式,有理式 .無理式,二次方程 式,様 々な方程式,不等式

統計 散布図 と標準偏差, 度数分布 と標準偏差

図形 平面座標,直線 と円の方程式, 図形の移動

測定 不等式の表す領域

関数 関数,有理関数 と無理関数,

実際に教科書を直接比べてみると, 日本の必修内 容 は中国や韓国より非常 に少ないことがわかる.逮 に中国は必修 としている数学の内容が非常に多 く, 日本の数学 Ⅲ以外の内容 はすべて全員必修 という状 態に近 い.韓国の必修内容 は各領域で基本的な内容 がバ ランスよ く含 まれている.

このように学習内容の分量の差が大 きい理由の一 つに進学率 と進学 に対す る意識の違 いがあると考え られる.中学校か ら高校への進学率 は日本が約97%, 韓国が約9

9%,中国が約44%,高校か ら大学への進

学率 は日本が約4

9%,韓国が約68%,中国が約17%

である.特 に韓国では普通高校か ら大学への進学率

は約8

4%

と非常 に高 い.中国は日本や韓国 と比べ る

と高校への進学率 は低 いが高校 は大学進学のための

ものという性格が強 く,中国や韓国はともに学歴重

視の傾向が強いと見 られる.それに対 し日本 は学歴

社会 による受験戦争を反省す る立場 に立 ってお り,

(6)

この点 も高校 の必修内容の違 いにつなが る理 由の一 つ と考え られ る.

以上 の比較か ら次の こともわか る.数学 には他教 科 との関連が深 い内容が含 まれている.例えば社会 などの資料の中には ヒス トグラムが使 われ,化学 で 酸や塩基 について学習す るときには対数の知識が必 要である. ところが 日本 の場合, これ らの内容 は選 択であ り,学習 しない生徒がいる.特 に統計が数学

C

の内容 となるため,学習す る生徒 は少ないのが現 状である. このよ うに必修内容がかな り限 られてい る状態では,必修数学だけで終 わる生徒 にとっては 他教科 の学習や社会生活 に も少 なか らず影響がある のではないか と考え られ る.社会で生活 してい くた めに必要 な力を身 につ けるとい う公教育の責任 を果 たすためには, 日本 の必修数学の内容 について検討 の余地があるのではないだろうか.

4.

集合 ・関数の扱 いについての比較

日本,中国,韓国の教科書 をみ ると,それぞれの 内容が必修か選択かの違 いはあるものの,用語 ・定 理 ・公式等 に大 きな違 いはみ られない. ところが関 数 については定義 の仕方や,内容 の扱 い方が異 な っ ている. これには集合の扱 い方や位置づけが関係 し ていると考え られ る. ここではこれ らの違 いについ て考察 していきたい.

( 1 ) 集合 の扱 いについて

最初 にそれぞれの国で扱 っている集合の内容 を次 の表 に示す.

日本 で は集合 と論理 は 「 数学

A」

で扱 ってお り, 現行の課程か ら選択 とな った.集合 の扱 いについて

は学習指導要領解説 に 「 用語や記号 に深入 りしない.

集合 の問の関係 については複雑 な ものは扱わない」

【日中韓の集合の内容】

逮 .必 内 容

日本 選択 集合,要素,属する .属 さない∈, 集合の表 し方 ( 要素を並べる方法, 条件 を書 く方法),有限集合,無 限集合,空集合,集合の相等,包 含関係,⊆,共通部分,和集合, 全体集合,補集合,集合 の要素の 個数,和集合 の要素 の個数

(A∩

Bが空集合の時とそうでないとき) ,

中国 必修 集合,要素,属す る .属 さない∈, 集合 の表 し方 ( 列挙活,描述法), 有限集合,無限集合,空集合,集 合 の相等,包含関係, ⊆,真部分 集合,全体集合,補集合,共通部 分,和集合,交換法則

韓国 必修 集合 の包含関係,真部分集合,共 通部分,和集合,互 いに素の集合, 集合 の演算法則 ( 交換法則,結合 法則

;

分配法則),補集合 に関す る演算法則, ド.モルガ ンの法則 とあ り, これを踏 まえて集合 に関す る用語 ・記号 は

AnB,A⊂B,a∈A

,

A (A

の補集合)な どにとど ま り,教科書では例えば⊆ と⊂の使 い分 けや真部分 集合,

A⊂B

,

B⊂C

な らば

A⊂C」

であ ることな

どは扱 っていない.

中国で は基本的には日本 と同 じよ うな内容 を扱 っ ているが,部分集合,共通部分,和集合 などの概念 については日本 よ り比較的厳密 に扱 っている.例題 として 「直角三角形 の集合 と二等辺三角形 の集合 の 共通部分 を求 める」

,「A‑((

,y)lyニー4Ⅹ+6)

B‑((

,y)】y‑5Ⅹ‑3)

の とき,

AnB

を求 め る」 など,数 を要素 とす る集合だけでな く,団形 の 包含関係や連立方程式 の解 などを意識す る問題 も多

く見 られ る.

日本や中国で扱 っている集合 の内容 は,韓国で は 中学校 1年生 の段階で扱 ってお り,高校 1年生 の段 陛では,交換法

・結合法則 ・分配法則,差集合 な どを扱 っている.ベ ン図を活用 して様 々な集合 の様 子 を確認 した り, ⊂ と∈の違 いを確認 させ る問題が 用意 され,記号や定義 について 日本 よ り比較的厳密 に扱 っている.補集合 に関す る性質 も丁寧 に扱 って いる.

大 きく異 なる点 は,集合の要素の個数 に関す る扱

いである. 日本 は集合の中で個数 まで扱 っているが,

中国では トピックスとして扱 い,韓国では数学 Ⅰの

確率の前で扱 っている.要素の個数 を場合 の数 と確

率 につなげてい くとい う観点では

3

つの国 とも同 じ

であるが,中国や韓国では集合が必修であることや,

要素 の個数を トピックス的扱 いに した り場合の数 に

含 めて扱 った りしていることか ら, 日本 と中国 ・韓

国で は集合の位置づ けに意識の違 いがあることがわ

か る.つ まり, 日本で は学習指導要領解説 の 「 数学

(7)

A

集合 と論理」で 「図表示などを用 いて集合 につ いての基本的な事項 を理解 し,統合的に見 ることの 有用性を認識 し,論理的な思考力を伸ばすとともに, それ らを命題などの考察 に生かす ことができるよう にす る.

とあ り,集合 を学ぶ意義 を 「 統合的に見 ること,有用性を認識す ること」 においている.そ れに対 して中国では教学大綱の中で 「 集合 は,数学 の中の数理論理,確率統計, トポロジーなどに現れ るものとして近代数学の

1

つの重要な基礎 となる.

と明確 に記 している. 日本では 「 集合 は学ばな くて もあまり影響 はない ものの学習すれば数学をより深 く厳密に扱 うことができ,有用性のあるものである」

という立場,一方中国は集合を 「 高校数学の基礎 と して重要 な位置にあるもの」 と認識 していると考え られる.

(2)

関数の扱いについて

現代数学では関数 は集合 との関わ りが深い内容で ある. まず 日中韓それぞれの高校数学 における関数 の定義を次の表 に示す.

【関数の定義】

日本

2

つの変数 Ⅹ,yがあ って,Ⅹの値 を定 めると, それ に対応 して

yの値 が ただ

一つ決 まるとき

,yは Ⅹの関数であると

いう.

中国

A

B

を空集合でない数の集合 とす る.

この とき,

A

か ら

B

への写像

f:A‑→B

A

か ら

B

への関数 という.

韓国 集合 Ⅹ のそれぞれの要素 に集合

Y

の要 素がただ一つ対応す るとき,対応

f

このように, 日本では従属変数の値を関数 とす る 古典的な解釈を しているのに対 し,中国 と韓国では 写像 ・対応を関数 とす る現代的な解釈を している.

これは現代数学を意識 しているものと考え られる.

次 に関数の履修の仕方 について比較 してみる. 日 本では次のような履修内容 になっている.

【日本の関数の履修内容】

数学 Ⅰ 関数, 日常生埠 に見 られる関数, 二次関数

数 学 分数関数,無理関数,逆関数,

数学 Ⅰでは二次関数 を通 して関数概念の理解を深 め,グラフを活用す ることの有用性を強調 している.

数学 Ⅱでは三角関数,指数関数 と対数関数を独立 し た単元で扱 っている.関数の性質 ( 奇偶性,単調性, グラフの移動) についてまとめて扱 っていることは ない.例えば,二次関数の単元で 「 二次関数の移動」

を扱 い,一般的な関数の移動 については,教科書 に よって記述の程度 に差が見 られる.二次関数 は頂点 を移動す ることによって移動後の式 は導 き出せ るか ら,一般的な平行移動

y‑q‑f(Ⅹ‑p)

や,対称 移動 「y‑f(‑Ⅹ) な ど」 について学習す る機会が ないこともある.一般化 した ものを学習 しない生徒 は,三角関数や指数関数などのグラフの移動 と二次 関数のグラフの移動 は方法が異なるものと考えて し まう可能性がある.奇偶性や単調性 について も同様 で,その性質を持つ関数が出て きたときに補足す る ように説明されている.逆関数 は数学Ⅲで扱 うため, 指数関数 と対数関数の場面で互 いに逆関数であるこ

とに触れることが難 しい. このように関数 について の性質がバ ラバ ラに現れるため,様々な観点か ら関 数を総合的にみることができず,関数全般の系統立 っ

た概念形成 は難 しいと考え られる.

これに対 し,中国 と韓国の関数の履修内容 は次の ようにな っている.

【中国の関数の履修内容】

第一冊 写像,関数,関数の単調性,奇偶性, ( 上) 逆関数,逆関数のグラフ,指数関数,

対数関数

第一冊 ( 下) 三角関数 ( 正弦定理,余弦定理を含む) 中国では写像 についての概念を深め,関数を写像 の観点で定義 している.中学校で分数式,無理式, 一次関数,二次関数を学習 しているため,定義域や 値域 を求める例 として様 々な関数が使われている.

関数 の表示方法 として解析的に表す方法,表で表す 方法, グラフで表す方法を取 り上 げている.

さらにここで単調性や奇偶性,逆関数などを扱 っ

ているのでその後の関数の学習 において関数の性質

やグラフの移動を様々な観点でみることがで き,効

(8)

率 よ く学習で きると考え られる. また, 日本のよう にグラフを描かせ る問題 はあまり多 く見 られず,指 数関数 と対数関数では,数の大小比較や定義域を求 める問題が多 い.

三角関数だけは独立 させて扱 っている. この中で 三角関数の図形への応用 として正弦定理や余弦定理 を扱 っている. 日本では正弦定理や余弦定理 は図形 分野その ものに含めている. また,無理関数や分数 関数 においては,式 は様々な場面で出て くるが グラ

フの扱 いはみ られない.

【 韓国の関数の履修内容】

数学 対応,関数,合成関数,逆関数, ( 必修) 有理関数,無理関数,

三角関数 ( 正弦定理,余弦定理を含む)

韓国 も対応の概念を深め,関数 を対応の観点で定 義 している.合成関数や逆関数 は扱 っているが,早 調性や奇偶性の扱 いはここには見 られない.移動 に ついては

10

段階の図形の単元で扱 っているため, グ ラフの移動 について学習 しやす くなっている.関数 という単元の中で有理関数,無理関数,三角関数を 扱 っている.三角関数 には正弦定理 ・余弦定理 も含 まれ, この点 は中国 と同 じである.中国 とは逆 に指 数数 と対数関数を独立 させて扱 っている.

5.

現代化を通 して見る日本の数学教育の変遷 中国で扱 っている集合 と関数の内容 は日本では現 代化で扱われた ものに相当す る. ここでは集合 と関 数の扱 いを中心 に,現代化以降の日本の数学教育の 変遷 について述べてい く.

現代数学 は数学のための数学 と呼ばれている. こ の現代数学 は論理学,集合論, トポロジー,群論, ベク トルと行列,確率論,統計学などであ り,近現 代社会 において様々な分野で応用で きるので

,1960

年代 にアメ リカや ヨーロッパで数学教育 に現代数学 を取 り入れようとす る動 きが起 こった. 日本 もその 波 に乗 り,昭和

44

年 に教育課程審議会で出された答 申 ( 高等学校教育の改善 について) の

「 現代 にお ける数学の発展」 と 「 社会で果たす数学の役割」を 意識 して教育課程を展開す る」 というね らいの もと に,現代数学を取 り入れた数学教育を行 うこととなっ た.例えば,昭和

45

年 に告示 された学習指導要領の

数学 Ⅰでは集合 と関数の構成 は次のようになってい る.

まず,

「B

解析」分野では

( 1 ) 写像 [ 写像の意味,合成写像,逆写像]

(2)

簡単な関数 [ 二次関数,有理関数,指数関数, 対数関数]

(3)

三角関数

となってお り,現在の中国の高校数学の構成 とよ く 似ている. また,

D

集合 ・論理」分野で は 「 集 合および命題 とその合成,相互関係 についての理解 を深める内容」で構成 されている.集合の基礎 につ いては中学校で学習 しているため,高等学校ではさ

らに進んだ内容 について学習 していた.

ところが,教師 自身が現代化の内容を教えるにあ たって知識や経験不足などの不安を抱えていたこと や 「 現代化によって数学の学習内容が増え,質が高 まったために数学嫌 いや落ちこぼれが増えた」 とい うマスコ ミなどか らの相次 ぐ批判 もあり,文部省 は 告示 してか ら

2,3

年後 に学習指導要領の改訂作業

を早々行 った.

昭和

54

年 には 「国民 として必要 とされる基礎的 ・ 基本的な内容を重視 しつつ,事象を数学的に考察 し 処理する能力を育成 しそれを活用する態度を育てる」

というね らいの基 に学習指導要領が告示 された.隻 合や関数 における変化をみると,教育課程審議会の 段階では現代化の意向を引 き継 ぎなが ら少 し手直 し をす るという方針であったが,結果 として小中学校 か ら集合の姿が消え,世間では現代化 は失敗だ った という意識のみで受 け入れ られた.一方高校では中 学校か ら集合 と論理の内容が移行 され,関数の定義 には写像 とい う言葉 は出さない ものの,写像の観点 か ら関数を定義 してお り,現代化の考えはまだ残 っ ている.一方全体を見 ると,学習指導要領のね らい が 「国 として必要 とされる基礎的 ・基本的な内容の 重視」であるように,子 どもたちが理解 しに くい抽 象的な内容が少 しずっ削減 されていった ものと考え

られる.

平成元年 には 「 数学的な見方や考え方のよさを認

識 し,それを積極的に活用す る態度を育てる」 こと

がね らいとされた. ここか ら必修内容 は大幅に減少

し,関数 について も写像 と関連 させた扱 いはされな

くなった. これは学習指導要領解説 にあるように,

高校で数学の学習を終える生徒への一層の配慮や生

涯学習体系への移行を考えた結果である.そ して知

(9)

識や技能をいかに多 く教え込むかではな く, どうい う考えの下 にどのような取 り組みをすればよいのか を教えることが重要 とされた.知識や技能の習得 に 重点をおいた学習指導か ら,興味関心を重視す る学 習指導へ と変わ って きたといえる.

ここで, 日本 ・中国 ・韓国がどのよ うな数学教育 を目指 しているのかを現在の高校の関数の目標の違 いを通 してみてみよう. 日本 は現在の学習指導要領 解説 において関数の目標 は 「 二次関数 について理解 し,関数を用いて数量の変化を表現す ることの有用 性を認識す るとともに,それを具体的な事象の考察 や二次不等式を解 くことなどに活用で きるようにす る」 としている.関数を数量の変化 ととらえ,具体 的な二次関数の理解 に重点をおいている.その他の 関数 についてのね らいも 「 具体的な事象の考察 に関 数を活用できること」 となってお り,その例 として, 指数関数ではバ クテ リアの増殖,放射性物質の崩壊

など,対数関数ではデ シベル,マグニチュー ドなど をあげてお り,興味 ・関心を持たせ ることが大切で ある, としている.

一方,中国では 「 教育の現代化 に向けて,未来 に 向けて,世界に向けて」 というスローガ ンを掲 げて いる.教学大綱 にも 「関数 は数学の重要な基礎概念 の一つである.‑関数の教学内容 は弁証法的な思想 を豊かにす る.‑関数の考えはすべての数学 と他の 学科科 目に通用す る」

,

「 写像 は集合の基本的な概念 を学んだ後 に学習す るもので,現代数学の一つの基 本概念である.・ ‑近代の定義,写像 によって関数を 定義す る」 と書かれてお り,現在 も教育の現代化を 念頭に置いた数学教育を行 っているとみ られる.

また,韓国では第

7

次教育課程 において,「国家 発展のための人材資源の開発 という目的のためには, 数学 は科学技術の発展のための手段 となる大切な教 科である」 とし,数学を学習す ることで論理的,抽 象的,創意的批判的思考力などを育成できるとして いる.その上で関数 については 「 数学の本質 は規則 性 にある」 という考えであり,必修の

10

段階で扱わ れている関数の内容 は自然科学や社会現象で応用力 が大 きく,数学的な力の伸長 に役立っ とし,税代数 学の観点か ら関数を定義 している.

以上でわかるように, 日本 は関数 について数量の 変化 とい う観点で考え,その有用性の認識 と具体的 な事象の考察への活用,興味 ・関心を持たせ ること に重点をおいてお り,中国 と韓国では関数を写像 ・

対応の観点か ら考え,すべての数学 の基礎 という現 代数学の立場を取 っている. これが集合の扱 いを簡 単 にす るか厳密 に定義す るか という違いにつなが っ ているのだろうと考え られる.

日本では現代化で取 り入れ られたベク トルや行列 が残 っているが,それ も少 しずっ内容が削減 された ものとな っている.現在の日本の数学教育 は生徒が 理解 しに くい抽象的な数学 はなるべ く避 け,実生活 との関連や,有用性を強調 し,興味 ・関心を持 って もらうことを第一 に考えた数学教育であ り,中国 と 韓国では現代数学を取 り入れ,教育の現代化や数学 の力の伸長を第一 に考えた数学教育を行 っていると 考え られ る.

6.

最後 に

これまでの日本の学校教育の変容 は生徒 にどのよ うな変化 を もた らしてい るのだろ うか.OECD が 行 った

2003

年調査の結果か ら考えると,読解力の不 足 は,数学の文章題を解 こうとしない,問題文が理 解できないなど,数学 にも少なか らず影響を与えて

いることとなる.

また,同調査 において,数学が得意だと感 じてい る生徒の割合が少な く,数学の問題や宿題を解 くと きや数学の成績 に対 して不安を感 じている生徒の割 合が多いことがわか った. さらに,数学を勉強す る 際に 「 学んだ数学を日常生活 にどう応用で きるかを 考える」,「 数学 と他の科 目で習 った事柄を関連づ け ようとす る」

,

「ここで学ぶのは何なのかをはっきり させ ることか らは じめる」 という生徒の割合 も少な い結果が出された.

今の生徒 に不足 していることは,地道に努力を重 ねること,自分の力で問題を解決 しようとする意欲, 最後 までや り遂 げる持続力などである.なるべ く苦 労 した くないということだろうか.授業で も他の人 が問題を解決す るのを待 っている生徒や,解法がわ か ったが立式がで きない,立式 は したが計算がで き ない,面倒な計算を途中であきらめる, という生徒 が増えて きた.た くさんの問題を解 いたり,時間を かけて考えたりす る経験が少な く, 自分の力で積み 重ねたものがないことが 「 数学の問題や宿題を解 く ときや数学の成績 に対 して不安を感 じている」生徒 が多いことにつなが り, 自分か ら学習 しようとして いるので はな く, や らされて いるとい う意識が,

「ここで学ぶのは何なのかをはっきりさせ ることか

(10)

らは じめる」生徒 の割合が少 ない」, とい う結果 に つなが っていると考え られる.

現在の数学教育 は楽 しさや実用性を強調 し,子 ど もたちに楽をさせてはいないだろうか.そのため数 学の系統性 は配慮 されず,知識が断片化 されて しま うため,数学の面 白みを味わ うことがで きな くなっ ている.今後 はこれまでに削減 されてきた時間数 と 内容を増や し,数学嫌 いの生徒を減 らすために内容 を削減す るのではな く,時間をかけて学習 させ るこ とがで きる環境 を整えるべ きだ と考える.

一方,日本 ・中国 ・韓国の教育課程や教科書 を比 較 して きて,「中国や韓国 は多 くの内容を必修 とし て履修 させてお り,数学の系統性をより重ん じてい る」 ことが分か った. 日本 は資源が乏 しく,知拍財 産や技術力を もって生 きていこうとしているが,そ のために必要 な知識 と創造力や発想力,持続力など を身 につけることが現在のカ リキュラムでで きるの だろうか,世界で通用す る人材が育成 され るのだろ うか という疑問を持 ちっっ、教育課程 に関す る議論 やその改訂または改善の動向などを注 目していきた い.

今後 は,中国 と韓国の教育課程をさらに詳 しく調 べ ることや,小中学校 との関連 について考察 してい

くことを課題 としたい.

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2‑

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2004.

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59

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,p.1,1977.9 15)

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,1973.6

20)

人民教育出版社,全 日制普通高級中学教科書数 学

,1997.12‑2000.3

2

1

)Kyohakusa

( 正卑小),

Saerom

( 邦書正号),

Chunjae(蚕瑚五号),2001.7‑2004.7

以上3

社の教科書, 自習書,問題集を使用 した.

22)

数研出版,実教出版,東京書籍,啓林館

2003.

1‑2004.1

以上4

社の現行の教科書を使用 した.

帝国書院,数学 Ⅰ

,1978.1

数研出版,新編数学 Ⅰ

,1984.1

Summary

Thisresearchistoclarifythecharacterofthe curriculum ofhighschoolmathematicsinJapan,

ChinaandKorea,throughcomparingtheobjec ivesandthecontentsoftheircurriculum.The followingfourfindingswereobtainedthrough thisresearch.

(11)

First,Weclarifiedthattheschooleducationis linkedwithincreasingnationalpowerandthe purposeofschooleducationissettotraintal ented peoplein Chinaand Korea.Second,We clarifiedthatinChinaandKorea,therearemany requiredcontentsandtheymakesystematicar rangementofthecontentsoftheirschoolmathe maticscurriculum.Third,itwasfoundoutthat therearesomedifferencesonhow theytreator teachfunctionandsetamongJapan,Chinaand Korea.And finally,thechangesofthehigh schoolmathematicscurriculum in Japan from theNew Mathtothepresentcurriculum were alsostudied.

KeyWords:Curriculum,Modernization Move ment(New Math),TheCourseof Study,Set,Function

(ReceivedJanuary24,2005)

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