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道路斜線制限と天空率緩和がもたらす容積率と建築物高さへの影響

Effects of Height Restriction and Relaxation by Sky Factor Focusing on Digestion Floor Area Ratio and Building Height

渡部宇子∗·本間裕大∗∗·本間健太郎∗∗·今井公太郎∗∗ Hiroko Watanabe, Yudai Honma, Kentaro Honma and Kotaro Imai    In this paper, we evaluate the impacts of height restriction and relaxation by sky factor focusing on digestion floor area ratio and building height. By considering the various site shape and building shape, we clarify how these regulation affects the digestion floor area ratio and building height. The analyses enable us to grasp the situations which a relaxation by sky factor have large advantages. Main results of this paper are as follows: (i) a relaxation by sky factor is advantageous when the site has large frontage; (ii) by utilizing the setback regulation, it is possible to acquire enough floor are ratio when the site of depth becomes large.

Keywords: height restriction, relaxation by sky factor, setback regulation, digestion floor area ratio,

building height, site shape

斜線制限,天空率緩和,セットバック規制,容積率,建築物高さ,敷地形状 1 はじめに 敷地面積に対する延べ床面積の割合のことを“容積率” といい,敷地ごとに定められている容積率の法的限度のこ とを“許容容積率”という.実務上は,後者のことも単に “容積率”という場合が多いが,本稿ではこれを“許容容 積率”といって明確に区別する.特に建築コストに比べて 土地代が高価な都市部において,経済合理的な建築主およ び設計者は,許容容積率を可能な限り消化して容積率つま り床面積を最大化しようとするのが一般的である.2003 年1月の建築基準法改正により天空率の規定が追加され た 8).本規定により斜線制限の緩和が可能となり,これ まで斜線制限によって許容容積率を十分に消化できなかっ た敷地でも許容容積率の有効利用が図れるようになった. 天空率緩和には上記のような利点が挙げられるが,一方 で,天空率の算定には,複雑なコンピュータ計算が必要で あり,斜線制限で建築物を計画するよりも検討に手間がか かる.天空率は緩和規定であるので,天空率ではなく従来 の斜線制限で建築物を計画しても問題ない.したがって, 両者に基づく容積率や建築物形状にどの程度の差異が認め られるのかを分析することには意味がある. そこで本研究では,敷地形状や建築物形状などの条件の 違いにより,容積率や建築物高さがどう変わるかを,道路 斜線制限下にあるケースと天空率緩和を用いたケースのそ れぞれで分析する.具体的には,通常一般的に存在する, 一方向のみが道路に面している矩形敷地を想定し,その敷 地において建築可能な建築物の容積率を導出する.次に, 敷地形状やセットバック距離を変化させた場合の容積率や 建築物高さについての分析を行い,道路斜線制限と天空率 緩和との差異を比較する. なお,本研究は単体の建築物に焦点を当てたものであ 学生会員 ∗∗正 会 員

東京大学大学院工学系研究科(The University of Tokyo) 東京大学生産技術研究所(The University of Tokyo)

る.実際の都市計画は,複数の建築物群によって構成され るものであり,そこで発生する課題は,総合的に解決しな ければならない.例えば,本研究が対象とする天空率緩和 でも,いわゆるペンシル型の細長いビルが恩恵を受けやす い6)ゆえに,それらが乱立する局面も現実では見受けら れる.このように単体としての建築物と,複数建築物群と しての都市計画の望ましさには,しばしば乖離が見られ, 包括的な取り組みが求められる. 一方で,上述のような潜在的課題は,個々の建築物が利 己的に建てられた結果であり,事実,現在の建築基準法は 全て単体としての規制に終始している.その意味におい ても,いまの法規制の下ではどのような建築物が単体とし て建てられやすいかを分析することには意味がある.本 研究は,そのような動機に基づき,斜線制限の影響を分析 した理論研究と言える. 先 行 研 究 と し て ,斜 線 制 限 の 影 響 を 解 析 し た 中 川 ら 9) 10) 11)や川上ら 4) 5) が挙げられる.中川らは, 道路斜線制限と隣地斜線制限,さらには斜線制限の緩和規 定としてのセットバックの影響を,その建築可能空間内に 収まる最大体積の直方体を用いて評価している.川上ら は,斜線制限等の形態規制によって囲まれた空間を建築利 用可能空間と定義し,斜線制限緩和や高さ規制導入が,建 築物形態に与える影響を明らかにしている. 一方,天空率に関しても,解析的および実地的な分析が 試みられている.解析的研究の一例としては,蓮香ら2) の天空率と天空比の理論的関係に着目したもの,また,青 木ら 1)の,天空率の特性について考察したものなどがあ る.青木らは,天空率を適用することで建てられる建築物 の最大ボリュームやその際に誘導される建築物形態につい ての基本的因果関係について示している.これに対し,立

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唐ら13)は実際に天空率を適用して建てられた建築物につ いて,東京都千代田区を事例として調査をしている.天空 率の適用は,従来は許容容積率を消化できなかった小規模 な敷地で,許容容積率の消化が可能な建築物が建てられる ため,周囲よりも高い建築物となっていることを明らかに している. 本研究は,道路斜線制限と天空率緩和を,容積率と建築 物高さの両面から比較する点において新規性を有してい る.道路斜線制限の定式化では,建築物形状を直方体だけ ではなく,斜線に沿って一部を切り取った形状についても 取り扱っている.一般的には,斜線制限のほうが容易に検 討しやすい.そのため,斜線制限による上層階の切り取ら れ方にもよるが,天空率緩和を使わなくても許容容積率が すべて消化できるならば,斜線制限だけで検討をしたいと 多くの人は考える.天空率緩和を利用するにあたっては, 天空率算定と図化のために専用のソフトウェアが必要であ り,天空率緩和を利用するためのコンサルティングが存在 するほど天空率の算定は複雑である12).このような現状 から,どのような条件ならば,天空率緩和を利用したほう が圧倒的に有利なのか明らかにすることによって,初期段 階での作業効率向上が期待できる. 本論文の構成は以下の通りである.まず第2章では,本 研究で取り扱う斜線制限,特に道路斜線制限と天空率緩和 について概説する.続く,第3章では,道路斜線制限およ び天空率緩和それぞれの場合における容積率と建築物高さ をモデル化する.第4章では,前章での数理モデルを受 け,種々の条件の下で,道路斜線制限および天空率緩和の 場合における容積率の限度や,そのときの建築物高さを計 算し,その性質について議論する.   2 斜線制限と天空率緩和 2.1 斜線制限 斜線制限とは,敷地・建築物の断面図に,定められた起 点から一定勾配の斜線を引き,その斜線により建築物の高 さの制限が示されるものである.斜線の起点をどこにする かで,道路斜線制限,隣地斜線制限,北側斜線制限と呼ば れる3種類の斜線制限が設けられている.起点が道路の 反対側境界線ならば道路斜線制限,隣地境界線ならば隣地 斜線制限,北側の隣地境界線ならば北側斜線制限である. 斜線制限は,日照,採光,通風などを確保するための 法規制であり,各起点から一定の勾配に沿って延びる“斜 線”よりも下側にしか,建築できないという制限である. 図1は本稿で主に用いる道路斜線制限の概念図である(た だし後述するセットバック規定を考慮している).図1の 灰色部分で示している,ある起点から延びる斜線よりも下 側が,建築できる範囲である.なお,道路斜線制限は,道 路の反対側境界線を起点とし,許容容積率から決まる“適 用距離”と,道路幅員に乗じる“勾配”によって規定され る.この適用距離と勾配は,敷地の属する用途地域と許容 容積率により,建築基準法別表第3 7)に具体的な数値が 図 1 道路斜線制限 示されている. 2.2 道路斜線制限におけるセットバック規定 建築基準法は,道路斜線制限を緩和する規定を定めてい る.以下,本稿で主として考慮するセットバック規定につ いて整理する.建築物を道路境界線よりも後退させる場 合,通常は道路の反対側境界線で与えられている”斜線の 起点”を,建築物を後退した距離分だけ外側に移動させる ことができる.これを通称,セットバックと呼ぶ.この セットバックにより,道路斜線制限の適用距離の起点も同 様に後退距離分外側に移動するので,道路斜線制限が適用 される範囲が少なくなる.そのため,一般には,より容積 率を得やすくなる.図1の概念図のように,セットバック 規定により起点と建築物の前面道路に面している部分が, それぞれ後退することになる. 2.3 天空率緩和の概要 斜線制限の適用を除外する規定として,天空率が導入さ れた.斜線制限は日照,採光,通風などを確保するための 仕様規定であるのに対し,天空率は仕様規定を守った場合 と同等の性能を有すればよいという性能規定である.斜 線制限の天空率緩和では,確保される日照,採光,通風な ど斜線制限の性能を評価する指標として天空率を用いる. 天空率とは,建築物を天空に投影し、平面上に正射影した 場合の円の面積に対する空の面積の割合であり,法令にお ける定義は次の通りである: 建築基準法施行令第135条の5 「天空率」とは,次の式によって計算した数値をいう.

Rs = (As− Ab) /As (1)

Rs: 天空率 As: 想定半球(地上のある位置を中心とした水平面上 に想定する半球)の水平投影面積 Ab: 建築物とその敷地の地盤をAsと同一の想定半球 に投影した投影面の水平投影面積 斜線制限を緩和するためには,計画する建築物(以降, “計画建築物”と記す)の天空率と従来の斜線制限の下で 建て得る最大容積の建築物(以降,“適合建築物”と記す) の天空率を比較し,以下の関係が成り立たなければならな

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い.ただし,天空率を算定するにあたっては,斜線制限が 適用される範囲内の部分に限られる: 適合建築物の天空率計画建築物の天空率 (2) 天空率算定の位置は法令で規定されおり,そのすべての算 定位置でこの関係が成り立ってはじめて天空率緩和が可能 となる. 2.4 道路斜線制限における天空率緩和 最後に,道路斜線制限における天空率緩和の計算法につ いて整理する.まず,計画建築物の比較対象となる適合建 築物とは,道路斜線制限の下で建て得る最大容積の建築物 である.ただし,天空率の算定では道路斜線制限の適用範 囲内のみが対象となる.この計画建築物と適合建築物の 天空率を比較するのだが,天空率の算定は,道路斜線制限 が適用される範囲,つまり適用距離内の建築物部分に限定 される.算定範囲は敷地の前面道路に面する部分の両端 から最も近い当該前面道路の反対側境界線上で,算定位置 は道路幅員の1/2以下の等間隔に設置する.   3 数理モデル 3.1 敷地・斜線制限の定式化 幅員W [m]の道路に面した面積S[m2]の,一方向のみ が道路に面している矩形敷地を考える.敷地の左前方を原 点とし,間口方向がx,奥行き方向がy,高さ方向がzxyz座標系を設定する.以後,特に断りのない限り単位は [m]とする.敷地は矩形領域と仮定し,その間口と奥行き の比率は1 : rとする.すなわち,間口の長さをX,奥行 きの長さをY とすると, X =  S r (3) Y =√rS (4) である.また,当該地域の建ぺい率はA× 100%,許容 容積率はV × 100%で与えられているものとする.一方, 斜線制限については,その適用距離をT,斜線勾配をk, セットバック距離をsで与える. 以上のような敷地において,斜線制限・天空率緩和それ ぞれの場合における容積率の限度を計算したい.加えて, 一般的には垂直方向よりも水平方向のほうが建築コストを 抑えられるため,許容容積率が満たされる場合は,可能な 限り建築物高さを低くしたい. 本稿では,議論の見通しの良さを考慮し,隣地斜線制 限・北側斜線制限・日影規制などの,その他の建築規制は 以後,無視する.その理由は,道路斜線制限はすべての用 途地域で適用されるが,北側斜線制限は適用される用途地 域が限られる.加えて,例えば商業地域における隣地斜線 制限は,隣地境界線における起点高さが31[m]と規定さ れているなど,道路斜線制限に対し,比較的緩やかな規制 になっているからである.このような斜線制限における 差異を考慮し,まずは道路斜線制限の特性を把握すること 図 2 斜線制限下で想定する直方体 を第一とした.一方,それぞれの斜線制限の組み合わせを 考慮することは,もちろん必要であるのだが,本稿では, そのために議論の定量的帰結がいたずらに煩雑となること を避けた. 3.2 斜線制限下で直方体を想定した場合 まず,建築物形状として直方体を想定したときにおけ る,斜線制限下での容積率の限度とそのときの建築物高さ を算出したい.ただし,本稿では,建築物は敷地と平行に 建てるものと仮定する. 容積率を最大化するためには,道路斜線制限の影響を受 ける範囲を少なくし,適用範囲を超える部分を積極的に活 用することが望ましい.これは,図1から分かるように, 適用距離・敷地の後方部分である.すなわち,その建築物 の間口を最大限に活用し,かつ,敷地の奥から建てること が望ましい建て方と考える. いま,建築物前面部のy座標をvと設定し,さらに,建 築物の高さはh,階高をdとする.階高dは建築物の高 さと容積率を結ぶ重要な値であるが,階によって階高を変 化させる建築物は少ないため,本稿ではdを定数とする. また,パラペット等の高さをゼロと単純化すると,建築物 の階数はh/dで表される.h/dは本来,整数でなければ いけないが,本稿では数理解析の明解さを重視し,h/dが 実数でも問題ないものとする.このとき,考えるべき建築 物(直方体)P の端点は以下で与えられる(図2参照): p0 ld= (0, v, 0) p0rd= (X, v, 0) (5) p0 lu= (0, Y, 0) p0ru= (X, Y, 0) (6) ph lu= (0, Y, h) phru= (X, Y, h) (7) ph ld= (0, v, h) phrd= (X, v, h) (8) 道路斜線制限の,yz座標における斜線は, z = ky + k (W + s) (9) で与えられる.ただし,適用距離ならびに建ぺい率を考慮 し,建築物の前面位置vが取りうる範囲を vmin≤ v ≤ vmax (10)

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ただし

vmindef.= max{(1 − A) Y, s} (11)

vmaxdef.= min{Y, T − W − s} (12)

に制限する.本稿では,セットバック距離sT− Wよ り十分に小さい状況を想定する.また,v > vmaxならば, 道路斜線制限を受けず,常に許容容積率の上限まで建てら れるが,これも本質的な議論から外れるため,考慮しない. (i) 容積率の限度がV 未満のとき まず(9)より,前面位置vと高さhの関係は h = kv + k (W + s) (13) なので,当該建築物の容積率f (v)f (v) = 1 XY × X × (Y − v) × h d = k dY × {(Y − v) v + (W + s) (Y − v)} (14) である.なお,本稿では隣地境界線からの壁面後退は考え ないものと仮定している(ゼロロット).一階の微分条件 を満たすvを ˆ v = Y − W − s 2 (15) と置くと,容積率を最大化するv∗v∗= ⎧ ⎪ ⎨ ⎪ ⎩ vminv < vmin) ˆ v (vmax≤ ˆv ≤ vmin) vmax (vmax< ˆv) (16) 容積率がV 未満を想定しているため,そのときの建築物 高さh∗h∗= kv∗+ k (W + s) (17) であり,また,容積率の最大値f (v∗)は f (v∗) = ⎧ ⎪ ⎨ ⎪ ⎩ k(Y + W + s)2 4dY (v = ˆvのとき) h∗(Y − v∗) dY (それ以外) (18) で与えられる. (ii) 容積率の限度が許容容積率V に一致するとき この場合,少なくとも V = f (v) (19) が実根を持つ必要があり,その条件は s≥ 2  dY V k − Y − W (20) である.(19)を満たす解を ¯ v = Y − W − s 2 ±  (Y + W + s)2 4 dY V k (21) 図 3 斜線制限下で想定する七面体 とし,順に{¯v−, ¯v+}と置く.このとき,建築物高さを最 小化するv∗∗は,{vmin, vmax}{¯v−, ¯v+}の大小関係で 場合分けされる.容積率の限度がV となるためには,さ らに ¯ v−≤ vmax かつ vmin≤ ¯v+ (22) を満たす必要があることに注意すると, v∗∗= ⎧ ⎪ ⎨ ⎪ ⎩ ¯ v+ (¯v−≤ vmin≤ ¯v+≤ vmax) vminv−≤ vmin≤ vmax≤ ¯v+)

¯ v− (vmin≤ ¯v− ≤ vmax) (23) であり,その場合の建築物高さh∗∗h∗∗= dY V Y − v∗∗ (24) となる(容積率の限度はV )3.3 斜線制限下で多面体を想定した場合 次に,建築物形状として“多面体”を想定したときにお ける,斜線制限下での分析をする.具体的には,実際の建 築物形状としてもよく観察される,斜線に沿って直方体の 一部を切り取り,斜面が存在する七面体を想定する. 前節と同様,建築物の間口を最大限に活用し,かつ,敷 地の奥から建てることを考える.いま,グランドレベルに おける建築物前面部のy座標をv1,屋上レベルにおける 建築物前面部のy座標をv2と設定し,さらに,建築物前 面部の高さをh1,建築物そのものの高さをh2とする.こ のとき,建築物(七面体)Qのそれぞれの端点は, q0 ld= (0, v1, 0) q0rd= (X, v1, h1) (25) q0 lu= (0, Y, 0) q0ru= (X, Y, 0) (26) qh2 lu = (0, Y, h2) qh2ru = (X, Y, h2) (27) qh2 ld = (0, v2, h2) qh2rd = (X, v2, h2) (28) qh1 ld = (0, v1, h1) qh1ld = (X, v1, h1) (29) で表される(図3参照). 以上のような想定で,容積率を最大化しつつも,その高 さをできる限り低くするためには,グランドレベルにおけ

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る建築物前面部ができる限り道路へ近いことが望ましい. そこで, v1= vmin (30) h1= kvmin+ k (W + s) (31) とし,またv2h2の関係としても(9)より h2= kv2+ k (W + s) (32) に設定する.v2の取りうる範囲は, vmin≤ v2≤ Y (33) である. (i) 容積率の限度がV 未満のとき 本節における容積率g (v2)は g (v2) = 1 XY × X d ×  1 2(v2− v1) (h1+ h2) + (Y − v2) h2 = k dY × 1 2(v2− vmin){(vmin+ v2) + 2 (W + s)} + (Y − v2){v2+ (W + s)} (34) である.これが許容容積率V を満たせない場合に,建築 物Qの容積率を最大化するv∗2は,明らかに v2∗= Y (35) である.このときQは屋上面が退化した六面体となる (図4参照).建築物高さh∗2h∗2= k (Y + W + s) (36) であり,また,容積率の最大値g(v∗2)は g (v2) = k

2dY (Y − vmin){vmin+ Y + 2 (W + s)} (37) で与えられる. (ii) 容積率の限度が許容容積率V に一致するとき この場合,少なくとも V = g (v2) (38) が実根を持つ必要があり,その条件は s≥ dY V k (Y − vmin) Y + vmin 2 − W (39) である.(19)を満たす解を ¯ v2= Y± 

(Y−vmin){Y +vmin+2 (W +s)}−2dY V k (40) 図 4 屋上面が退化した六面体 とし,順に v¯2−, ¯v+2 と置く.このとき,建築物高さを 最小化するv2∗∗は,{vmin, Y}v¯2−, ¯v2+ の大小関係で 場合分けされる.容積率の限度がV となるためには,さ らに ¯ v−2 ≤ Y かつ vmin≤ ¯v+2 (41) を満たす必要があることに注意すると, v∗∗2 = ⎧ ⎪ ⎨ ⎪ ⎩ ¯ v+2v2−≤ vmin≤ ¯v+2 ≤ Y vminv2−≤ vmin≤ Y ≤ ¯v+2 ¯ v−2 vmin≤ ¯v−2 ≤ Y (42) であり,その場合の建築物高さh∗∗2h∗∗2 =2dY V − k (v ∗∗ 2 − vmin) (vmin+ W + s) 2Y − v∗∗2 − vmin (43) となる(容積率の限度はV )3.4 天空率緩和における建築物形状 最後に,道路斜線制限における天空率緩和を想定した場 合における,建築物形状の分析について述べる.前述のよ うに,天空率緩和は斜線制限を建築物に置き換えた場合の 適合建築物と,その天空率を比較する必要がある.本章の 場合,その適合建築物Zz0 ld= (0, 0, 0) z0rd= (X, 0, 0) (44) z0 lu= (0, T−W −s, 0) z0ru= (X, T−W −s, 0) (45) zh lu= (0, T−W −s, kT ) zhru= (X, T−W −s, kT ) (46) zh ld= (0, 0, k(W + s)) zhrd= (X, 0, k(W + s)) (47) で端点が与えられる. これに対する天空率緩和の建築物Rは前節までとの対 応を考慮し,以下のように与える.まず,建築物形状は直 方体を想定し,敷地と平行に建てるものと仮定する.天空 率緩和においても,可能な限り敷地の奥かつ間口の中心に 建築することが望ましいので,本稿では,敷地の奥から, 間口の中心と建築物の中心が一致するように建築物を配置 するものとする.建築物左前面部のx座標をu3y座標

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v3と設定し,さらに,建築物の高さはh3,階高をdと すると,Rの端点は以下の通り: r0 ld= (u3, v3, 0) r0rd= (X− u3, v3, 0) (48) r0 lu= (u3, Y, 0) r0ru= (X− u3, Y, 0) (49) rh lu= (u3, Y, h3) rhru= (X− u3, Y, h3) (50) rh ld= (u3, v3, h3) rrdh = (X− u3, v3, h3) (51) 上述の建築物(直方体)Rのうち“斜線制限が適用される 範囲内の部分”と適合建築物Zを,算定位置 ci=  X X W  × i, −W, 0  , i = 0, 1, . . . ,  X W  (52) から比較し,全ての地点でその天空率がZ のそれを下回 れば良い. Rは針のように細長くすれば,必ず天空率緩和・許容容 積率をともに満たす建築物が設計可能である.したがっ て,容積率が上限V であるという制約の下,その建築物 高さh3を最小化する建築物形状を数値計算した.なお, 天空率計算には文献3)のアルゴリズムを用いた.   4 数値例 以上の数理モデルの仮定の下,種々の条件で斜線制限と 天空率緩和のそれぞれの場合における容積率の限度,なら びにそのときの建築物高さを数値計算した. 敷地面積が500[m2]以上の場合,総合設計制度を利用 できる可能がある.特に経済性を求められる用途の建築 物の場は,実務上はこの制度を積極的に利用して許容容積 率の緩和を図っている.また,道路幅員が12[m]未満の 場合は,許容容積率の算定が変わってくる.これらを勘案 し,本稿では標準的な商業敷地としてよく観察されるパラ メータ設定を意識し,敷地面積S = 200[m2],前面道路 幅員をW = 12[m]としたときの計算例を示す. 4.1 想定した地域 今回想定したのは,東京都の中央区日本橋,いわゆる江 戸の名残を残す地域である.当該地域は,概して,間口が 狭く奥行きの深い敷地が多数見られる.また,その地域の 多くは,商業地域に分類されるため,北側斜線制限は適用 されない.隣地斜線制限についても前述の通り道路斜線 制限よりは緩やかな規制である.以上を踏まえ,建築物の 用途は事務所を想定し,斜線制限に関する規定距離等は表 1のように設定する. 4.2 敷地の縦横比の変化による容積率の違い 敷地の縦横比r < 1の場合は間口が広い敷地であり, r>1の場合は奥行の深い敷地である.斜線制限の場合に おける様々な敷地の縦横比における容積率と建築物高さh の変化を表2に示す. 敷地の縦横比が増加するほど,すなわち奥行きが相対的 に深くなるほど,より許容容積率を消化できていることが 確認できる.しかし,直方体では許容容積率V = 600[%] 表1 本稿で想定したパラメータ 用途地域 商業地域 許容建蔽率 80% 許容容積率 600% 適用距離 25[m] 斜線勾配 1.5 階高 4[m] 表2 敷地縦横比を変化させたときの容積率と建築物高さ 直方体 七面体 縦横比 容積率 容積率 r = 0.1 386% 440% r = 0.3 406% 499% r = 0.5 420% 540% r = 1.0 444% 600% r = 2.0 480% 600% r = 3.0 409% 600% のすべてを消化できているわけではない.一方,七面体で は縦横比r≥ 1の場合,許容容積率V = 600[%]を消化 できている.なお,天空率は許容容積率V = 600[%]を 消化できている. 4.3 セットバックによる容積率の違い 次に,セットバックを考慮した場合の計算例を示す.直 方体,七面体それぞれの場合,様々なセットバック距離に おける容積率の変化を図5・図6に示す.概して,敷地 の奥行きが相対的に深くなり,かつセットバック距離が増 加するほど,許容容積率を消化できる.一方で,間口が相 対的に広い場合,適切なセットバック距離の存在が確認さ れる.一般にセットバックでは,高さ制限が緩和される反 面,敷地の建築可能面積が減少するトレードオフの関係が 存在する.今回の数値計算の一例として,間口と奥行きが 1:0.5 (r = 0.5),つまり間口20[m],奥行10[m]の敷地の とき,直方体・七面体ともに約2.0[m]のセットバックに より最も容積率を消化しているが,これは上述のトレード オフ構造が導いた結果と考察できる. 4.4 敷地の縦横比による建築物高さの違い 最後に,建築物高さの観点から,斜線制限と天空率緩和 の比較を行う.図7に,様々に敷地の縦横比を変化させた 場合の建築物高さを示す.なお,実線でつないだ部分は, 許容容積率を消化できていることを示している. まず,天空率緩和の場合,全体的な傾向として,敷地の 縦横比が増加するほど(=奥行きが深くなるほど)建築物 高さが低くなる.前述のように,許容容積率を常に消化し きるため,より実現が容易な建築物形状となっていくこと が確認される. これに対し,斜線制限(直方体)の場合には,奥行きが 深くなるほど,建築物高さが高くなっている.斜線制限の

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0 2 4 6 8 2 3 4 5 6 r = 0.5 r = 1.0 r = 2.0 セットバック距離 容積率 図 5 セットバック距離と容積率の関係 (直方体) 0 2 4 6 8 2 3 4 5 6 r = 0.5 r = 1.0 r = 2.0 セットバック距離 容積率 図 6 セットバック距離と容積率の関係 (七面体) 場合,大まかには,建築物が高くなるほど容積率を消化で きるため,上記の性質は,天空率緩和と斜線制限の差異が 減少していることを意味している.なお,斜線制限(七面 体)の場合には,奥行きが深い敷地形状のとき,煩雑な天 空率緩和をしなくとも,同水準の容積率・建築物高さが実 現可能なことが明らかとなった.   5 おわりに 本研究では,道路斜線制限や天空率緩和下での容積率や 建築物高さを定式化し,その分析を行った.分析の結果, 間口の広い敷地においては,天空率の利用が圧倒的に有利 である結果が出た.このときの建築物高さは,セットバッ クなしの道路斜線制限の場合と比較すると2倍以上の高 さの細長い建築物形状である.初期段階でのボリューム スタディを行う上で,示唆的である. 今回は最も強い制限となることが多い道路斜線制限の みを考慮したが,実際には隣地斜線制限や北側斜線制限, 日影制限など多岐に亘る建築規制を考慮する必要がある. 様々な形状の敷地に対し,それぞれの規制がどのように影 響するか,さらに精査が必要である.また,前述したよう に,都市計画は決して単体の建築物によって完結するもの ではなく,複数の建築物群を想定した包括的な視点も重要 である.その意味において,GISデータ等を用い,実際の 土地形態を前提としたシミュレーション実験も,魅力的な 今後の課題である. 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 20 30 40 50 60 斜線制限(直方体) 斜線制限(七面体) 天空率緩和 縦横比 建築物高さ 図 7 敷地の縦横比と建築物高さの関係 謝辞 本研究は、科学研究費補助金基盤研究(B) 『視覚情報に基づく快適・安 全・有用な都市空間の設計に関する数理的研究』(課題番号:15H02974) の補助を受けました.納税者の皆様に感謝致します. また,匿名の査読 者の懇切なるアドバイスによって,論文の改訂を行うことができました. 深く御礼申し上げます. 参考文献 1) 青木充広,大澤義明,切田元,小林隆史 (2010):天空率規制下で 建築ボリューム最大化により誘導される建物形態,日本建築学会 計画系論文集,648,pp.403–410. 2) 蓮香文絵,大澤義明,切田元,小林隆史 (2006):天空率と天空比との 関係に関する考察,日本建築学会計画系論文集,600,pp.121–127. 3) 本間裕大, 栗田 治, 鈴木絢子 (2008): 計算幾何学アルゴリズム に基づく立体角指標を用いた都市景観評価, 日本建築学会計画系 論文集, No.643, pp.2035–2042. 4) 川上光彦,大西宏樹 (2013):形態規制による建築利用可能空間と 建築物のモデル化とそれを用いた形態規制評価–住居系用途地域 における斜線制限緩和と建築物高さ規制の場合–,日本建築学会計 画系論文集,687,pp.1041–1048. 5) 川上光彦,大西宏樹,藤田和也 (2013):中高層建築物の建築行為 に対する斜線制限および高さ規制による影響—住居系用途地域の 場合—,日本建築学会計画系論文集,691,pp.1981–1988. 6) 切田元,大澤義明,蓮香文絵,中川享規 (2007):天空率規制が建 物平面配置・形状に及ぼす影響に関する解析的研究,日本建築学 会計画系論文集,617,pp.71–78. 7) 国土交通省 (2017): 基本建築基準法関係法令集 2017 年版,建築 資料研究社. 8) 駒田政史, 深滝准一 (2013): Jw cad 日影・天空率完全マスター, エクスナレッジ. 9) 中川享規,腰塚武志 (2000):斜線制限・敷地形態が建物形態に 与える影響に関する研究,日本建築学会大会学術講演梗概集, pp.245–246. 10) 中川享規,腰塚武志 (2001):斜線制限のセットバック緩和の効 果,日本建築学会大会学術講演梗概集,pp.941–942. 11) 中川享規,腰塚武志 (2001):敷地割りによる斜線制限と容積制限 の影響の違い—新橋・銀座・八重洲を事例として—,都市計画論 文集,36,pp.499–504. 12) 生活産業研究所,生活産業研究所 HP,日本語 http://www.tokyo.epcot.co.jp/,2017/08/17 13) 立唐寛之,宇於崎勝也,根上彰生,小嶋勝衛 (2007):天空率規定の 適用建築物の実態に関する研究—東京都千代田区の実態から—, 日本建築学会技術報告書,26,pp.737–740.

参照

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