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2019 年度 居場所マネジメント実態調査報告書

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2019 年度 居場所マネジメント実態調査報告書

兵庫県立大学 NPO研究連携センター(野津隆志、當間克雄)

認定NPO法人 コミュニティ・サポートセンター神戸

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目次

Ⅰ.調査の意義~居場所支援(実務者)の視点から~

Ⅱ.居場所マネジメント実態調査

1.はじめに-本調査の目的、調査対象団体と居場所の定義-

2.発展プロセスという視点で見た居場所のあり方 3.地域における民間の居場所の必要性と役割 4.居場所の経営・運営

参考文献

Ⅲ.居場所インタビューの記録:リーダーに必要な能力の実際 1.はじめに

2.リーダーの熱意・意欲の原動力

3.つながる力:今までの経験を生かしてつながる 4.情報を収集し発信する力

5.人材育成の課題

6.男性の不在という課題 7.利用料金の課題

8.まとめ

Ⅳ.居場所マネジメント調査報告会&意見交換会 サマリー 1.開会にあたって-居場所調査3年間の概要

2.地域の居場所の役割と経営状況―訪問インタビュー調査の結果―

3.グループワークおよび全体ディスカッション

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Ⅰ.調査の意義~居場所支援(実務者)の視点から~

認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸 理事長 中村順子

1.居場所の政策的位置づけ

CS神戸が、いつでもだれでも集うことのできる「居場所」の必要性を鑑み、積極 的な支援活動に取り組み始めてから、すでに十数年が経過する。国家レベルにおい ては、2006年に地域包括ケアシステムが示され、要介護状態となっても、住み慣れ た地域で自分らしい暮らしを最後まで続けることができるよう、住まい・医療・介 護・予防・生活支援が一体的に提供される仕組みがスタートを切った。 政策上は、

「居場所」は「通いの場」と称され、地域支援事業のなかの一般介護予防事業とし て、予防・生活支援分野をなす事業として類型化されている。

厚生労働省は、「通いの場」の定義について 体操や趣味活動等を行い、介護 予防に資すると市町村が判断する通いの場であること。 通いの場の運営主体は、

住民であること。 通いの場の運営について、市町村が財政的支援(地域支援事 業の一般介護予防事業、任意事業、市町村の独自事業等)を行っているものに限ら ないこと。 1回以上の活動実績があること、としている。

なお、地域支援事業では、通いの場に加え、見守り・配食・買い物等の生活支援 サービス,認知症に対する支援等に関する活動内容も含めている。

それらを一体的に進めるための基盤整備として、① 介護予防に関するボランテ ィア等の人材を育成するための研修 介護予防に資する多様な地域活動組織の育 成及び支援 社会参加活動を通じた介護予防に資する地域活動の実施 介護予 防に資する取組への参加やボランティア等へのポイント付与を挙げている。

神戸市はもとより、全国の市町村では、わが町にふさわしい地域包括ケアシステ ムに関する各種施策を、3年ごとに見直しながら進めている。その最中に居場所活 動はある。

2.調査の意義

このように制度面から眺めてみると、個々思い思いに立ち上がり運営している居

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場所も、実はこのような仕組みの中で、利用者や運営者・支援者の関係にとどまら ず、様々に制度的影響を受けながら、幅広く公共性を増幅させてきている、とみる ことができる。

ここで重要なことは、施策や財政支援といった制度的な公共性(地方自治)と、

現場が感じ取る市民的な公共性(住民自治)のミスマッチはないのか、この視点を しっかり持ち続けることだと考えている。特に神戸市のように、民間立と行政立の 居場所が市内に316か所以上(2017CS神戸調べ)も存立する自治体では、地 方自治から見た公共性と住民自治から見た公共性が、齟齬なく運営に生かされてい るか注視しなければならない。

つまり、行政から見た公共性は、社会全体の利益に適っているかどうかが第一義 となっており、議会や審議会や報告書を通じて公共性を担保している。 一方、実 務者からみた公共性の第一義は、利用者・運営者・支援者等、未知の人を含めたス テークホルダーが、次々と関係を結び多くの市民が新たなつながりに参加できてい るか否か、である。

ところでその新たなつながりの具体像や価値は、集約され分析され発表されなけ れば、やはり公共性としての価値を帯びることにはならない。そこでCS神戸は、

この市民的な公共性を担保し、新たな価値を形成する一連の活動を集約し分析し見 える化するために、大学研究機関と連携した居場所調査を過去4年間実施してきた。

大学との連携によって、客観的な視点、見えないもののデータによる顕在化、社会 的信用等が総合的に確保でき、そのことから1つの現場を社会的に価値ある存在に 導いてくれることが大いに期待できるのである。

3.調査の成果

今回の居場所マネジメント実態調査は、厚生労働省の地域支援事業にある②介護 予防に資する多様な地域活動組織の育成及び支援の施策に該当するものであるが、

兵庫県立大学NPO研究連携センターとCS神戸(NPO中間支援組織)が、前述の 視点に基づき自主的に実施したものである。これまで4年間、居場所の現場を生み 出し運営を支援する実務者と、実態を集約し分析する大学研究者が役割を分担しな がら、新たな公共性という価値を発信してきた。今回もさらに連携を深め、成果を 発信することで、行政の政策策定になにがしかの影響を及ぼし、互いが特徴とする

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場所も、実はこのような仕組みの中で、利用者や運営者・支援者の関係にとどまら ず、様々に制度的影響を受けながら、幅広く公共性を増幅させてきている、とみる ことができる。

ここで重要なことは、施策や財政支援といった制度的な公共性(地方自治)と、

現場が感じ取る市民的な公共性(住民自治)のミスマッチはないのか、この視点を しっかり持ち続けることだと考えている。特に神戸市のように、民間立と行政立の 居場所が市内に316か所以上(2017CS神戸調べ)も存立する自治体では、地 方自治から見た公共性と住民自治から見た公共性が、齟齬なく運営に生かされてい るか注視しなければならない。

つまり、行政から見た公共性は、社会全体の利益に適っているかどうかが第一義 となっており、議会や審議会や報告書を通じて公共性を担保している。 一方、実 務者からみた公共性の第一義は、利用者・運営者・支援者等、未知の人を含めたス テークホルダーが、次々と関係を結び多くの市民が新たなつながりに参加できてい るか否か、である。

ところでその新たなつながりの具体像や価値は、集約され分析され発表されなけ れば、やはり公共性としての価値を帯びることにはならない。そこでCS神戸は、

この市民的な公共性を担保し、新たな価値を形成する一連の活動を集約し分析し見 える化するために、大学研究機関と連携した居場所調査を過去4年間実施してきた。

大学との連携によって、客観的な視点、見えないもののデータによる顕在化、社会 的信用等が総合的に確保でき、そのことから1つの現場を社会的に価値ある存在に 導いてくれることが大いに期待できるのである。

3.調査の成果

今回の居場所マネジメント実態調査は、厚生労働省の地域支援事業にある②介護 予防に資する多様な地域活動組織の育成及び支援の施策に該当するものであるが、

兵庫県立大学NPO研究連携センターとCS神戸(NPO中間支援組織)が、前述の 視点に基づき自主的に実施したものである。これまで4年間、居場所の現場を生み 出し運営を支援する実務者と、実態を集約し分析する大学研究者が役割を分担しな がら、新たな公共性という価値を発信してきた。今回もさらに連携を深め、成果を 発信することで、行政の政策策定になにがしかの影響を及ぼし、互いが特徴とする

公共性のミスマッチを防ぎ、より市民が望む居場所に近づけたいという強い思いを 込めている。

実際に、居場所の見える化を4年繰り返すと、次のような変化がみえてきた、以 下に、居場所支援(実務者)の視点から述べてみる。

出来事の多い現場が、前向きなパワーの源に

居場所の日常は、他者との生活の交差点であり様々な出来事にさらされている。

利用者からの感謝、相談事、未知の人との出会い、新しい仲間、頼られるここち よさ、視野や暮らしの幅の広がり、このような前向きな事柄の片方では、家庭の 経済や家族関係、生活上の課題、病気等で来られなくなった人、開いても人が来 ない、少額の利用料や補助金では運営できない現実等々、喜怒哀楽の連続である。

したがって運営者の揺れ幅も大きく、不安から免れないが、調査によって他団体 の活動や思いの全体が判明するに従い、自分だけではない!皆一緒!皆で考え行 動すれば乗り越えられる!ポジティブな共同意識が生まれてくる。ここに調査の 共有により、パワーが変換するプロセスが見えてきた。

点から面へ拡がった

現場という現在を起点に、過去を分析し、未来を予測する調査手法で、居場所の 役割や重要性を計測されたデータで再認識することができた。そこで得た確信は、

説明しやすく説得性に富むもので、新たな仲間を誘いやすくなり、毎年90団体200 名が集まる居場所サミット㏌神戸を開催でき、市内をカバーするネットワークを形 成することができてきた。神戸にとどまらず全国の自治体からも強い関心が寄せら れた。社会的位置づけが明確になってきたといえるのではないか。

行政への訴求力が高まった

市内の居場所がネットワークすることで、市民的な公共性が一段と高まり、行政 の施策にも影響を及ぼすようになった。民間の中間支援組織が各々に作成してき た居場所データを全市的に一元化し、利用する市民がより使いやすく参加しやす い資料にする計画が整ってきた。居場所マップの統合版データベース化は、早晩、

行政施策として実施される予定と聞いている。

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4.今後に向けて

2016年より4年間4回にわたる調査内容は、実態調査から始まり、利用者から の分析、マネジメントに至る現場をつぶさに観察しデータを分析し発信することで、

居場所の必要性が確かな見地から得られ、実務者を勇気づけてくれた。今後は行政 サイドで実施される評価の内容ともスリ合わせ、多角的な視点からの居場所の現状 と課題を浮き上がらせてみたい。

行政には、利用者のみならず、地域住民全体にとって居場所はどのような価値を 形成してきているのか、全市網羅的で多面的な調査を期待している。民間立と行政 立では、まだまだ格差の多い施策に支援方法や補助金体系の見直しにも期待を寄せ たい。

大学研究機関と市民べースの公共性、自治体行政の視点に立った公共性が、居場 所というシャフト(軸)でつながるとき、自分らしい暮らしを最後まで続けること ができる神戸のまちになっていることを願っている。

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4.今後に向けて

2016年より4年間4回にわたる調査内容は、実態調査から始まり、利用者から の分析、マネジメントに至る現場をつぶさに観察しデータを分析し発信することで、

居場所の必要性が確かな見地から得られ、実務者を勇気づけてくれた。今後は行政 サイドで実施される評価の内容ともスリ合わせ、多角的な視点からの居場所の現状 と課題を浮き上がらせてみたい。

行政には、利用者のみならず、地域住民全体にとって居場所はどのような価値を 形成してきているのか、全市網羅的で多面的な調査を期待している。民間立と行政 立では、まだまだ格差の多い施策に支援方法や補助金体系の見直しにも期待を寄せ たい。

大学研究機関と市民べースの公共性、自治体行政の視点に立った公共性が、居場 所というシャフト(軸)でつながるとき、自分らしい暮らしを最後まで続けること ができる神戸のまちになっていることを願っている。

Ⅱ.居場所マネジメント実態調査

兵庫県立大学 大学院 経営研究科 教授 當間克雄 1.はじめに

1.1 本調査の目的

本調査は、神戸市内にある高齢者が集う居場所 21 か所を対象にインタビュー調 査を行い、地域における居場所のあり方や役割、および居場所の経営の現状・実態を 明らかにすることを目的としている。

近年、日本は高齢化社会に突入しており、2017年の総人口12671万人に占める 65歳以上の高齢者は3515万人となり、高齢化率は27.7%に至っている(内閣府,2018 兵庫県の高齢化率も全国平均とほぼ同じで、2017年に27.5%となっている(兵庫県の HPデータより)。全国および兵庫県とも、実に人口の4人に1人以上が65歳以上の 高齢者という状況なのである。また、独居の高齢者も増加しており、2015年のデータ では、65歳以上の人口のうち、男性の13.3%(兵庫県12.8%、神戸市17.0%、女性 21.1%(兵庫県22.4%、神戸市27.9%)が独居の高齢者となっている(内閣府,2018 兵庫県・神戸市のデータは兵庫県HPより)。このような状況であるため、地域におけ る高齢者が集う居場所の重要性は非常に高まり、高齢者同士が友人・知人をつくり、

一緒に趣味や地域活動を行うことのできるかけがえのない集い場となっているのであ る(兵庫県立大学政策科学研究所NPO研究連携センター=認定NPO法人コミュニ ティ・サポートセンター神戸共著,2019

社会全体からすると、インターネットや SNSなどの通信技術の発展に伴って、情 報技術を通じた人々のつながりは、かつてないほどに増えているように見えるが、実 は人と人との実際のつながりや会話は少なくなり、孤独や孤立を感じる人が倍増して おり、その結果、職場などでの生産性の著しい低下を招いているという研究結果もあ る(石川善樹,2018;ビベック・マーシー,2018。特に日本の場合、男性は職場や仕事 以外の人とのつながりや地域とのつながりが非常に希薄であり、定年後はこのような 関係性の欠如から、孤立することが多くなっているとの報告もある(水無田,2015 したがって、インターネットや SNS を介するような情報技術によるつながりではな く、人と人との実際のつながりの機会を増やそうと、全国的に居場所の設置が増えて

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きており、地域における居場所の重要性が見直されているのである。

地域における居場所の役割は、このような高齢化社会が急速に進展する状況の中で、

重要性が高まっている。そこで本調査では、①期待される居場所のあり方(居場所の 定義と居場所の成長・発展)②地域における居場所の役割(特に民間の居場所の役割)

③居場所経営の現状といった点を明らかにすることを目的としたい。

1.2 調査対象団体と居場所の定義

本調査は、兵庫県立大学NPO研究連携センター(メンバーは野津隆志教授と當間 克雄教授)と認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸(以下CS神戸)

が共同で行うもので、神戸市内の居場所を運営する 21 団体を訪問し、インタビュー 形式で行った。訪問した団体および居場所名は、図表1を参照されたい。インタビュ ー対象となる21団体への訪問は野津と當間が担当し、2019620日から11 22日まで、約6か月かけて訪問調査を行った。

調査対象となる 21 団体を選択するに先立って、我々(兵庫県立大学は野津隆志教 授、當間克雄教授、CS神戸は中村順子理事長、飛田敦子事務局長の4名の研究会)

は、まず我々が期待する居場所とはどのようなものか、すなわち居場所の特徴や定義 について時間をかけて議論し、期待される居場所の定義を明確にした。そしてその後、

調査対象となる居場所を設定する作業を行った。

これまでの居場所に関する先行研究や調査を参照すると、居場所は多様な視点から 定義されていることが分かる。例えば、「居場所とは、地域の人々が、交流目的や安心 して居ることのできる場として集まる場所のことである」(公益財団法人さわやか福

祉財団編,2016年)「居場所とは存在を肯定される場所のことである」(柳下・高橋編

,2011、といったようにである。前者は、高齢者の居場所づくりを開設・運営する

文献の中で紹介されている定義であり、後者はフリースクールなどの子供や若者の居 場所づくりを論じている文献での定義である。この2つの定義を見ても分かるように、

先行研究では、居場所を抽象的に定義しており、その意味は理解できるが、実際に開 設する際に「期待される」居場所や「目指すべき」居場所という意味では、かなり具 体性に欠けるということが分かる。

そこで我々は、居場所の調査をするにあたって、「期待される」居場所をより具体的 に定義することを意識して議論を進めた。そしてまず参考にしたのが、神戸市による

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きており、地域における居場所の重要性が見直されているのである。

地域における居場所の役割は、このような高齢化社会が急速に進展する状況の中で、

重要性が高まっている。そこで本調査では、①期待される居場所のあり方(居場所の 定義と居場所の成長・発展)②地域における居場所の役割(特に民間の居場所の役割)

③居場所経営の現状といった点を明らかにすることを目的としたい。

1.2 調査対象団体と居場所の定義

本調査は、兵庫県立大学NPO研究連携センター(メンバーは野津隆志教授と當間 克雄教授)と認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸(以下CS神戸)

が共同で行うもので、神戸市内の居場所を運営する21 団体を訪問し、インタビュー 形式で行った。訪問した団体および居場所名は、図表1を参照されたい。インタビュ ー対象となる21団体への訪問は野津と當間が担当し、2019620日から11 22日まで、約6か月かけて訪問調査を行った。

調査対象となる21 団体を選択するに先立って、我々(兵庫県立大学は野津隆志教 授、當間克雄教授、CS神戸は中村順子理事長、飛田敦子事務局長の4名の研究会)

は、まず我々が期待する居場所とはどのようなものか、すなわち居場所の特徴や定義 について時間をかけて議論し、期待される居場所の定義を明確にした。そしてその後、

調査対象となる居場所を設定する作業を行った。

これまでの居場所に関する先行研究や調査を参照すると、居場所は多様な視点から 定義されていることが分かる。例えば、「居場所とは、地域の人々が、交流目的や安心 して居ることのできる場として集まる場所のことである」(公益財団法人さわやか福

祉財団編,2016年)「居場所とは存在を肯定される場所のことである」(柳下・高橋編

,2011、といったようにである。前者は、高齢者の居場所づくりを開設・運営する

文献の中で紹介されている定義であり、後者はフリースクールなどの子供や若者の居 場所づくりを論じている文献での定義である。この2つの定義を見ても分かるように、

先行研究では、居場所を抽象的に定義しており、その意味は理解できるが、実際に開 設する際に「期待される」居場所や「目指すべき」居場所という意味では、かなり具 体性に欠けるということが分かる。

そこで我々は、居場所の調査をするにあたって、「期待される」居場所をより具体的 に定義することを意識して議論を進めた。そしてまず参考にしたのが、神戸市による

図表1 本調査の訪問団体と居場所名

出所:著者作成. 居場所の定義である。神戸市は、高齢者向けの居場所に助成金を補助(居場所づくり

NO 調査日時 団体名 居場所名

1 6月20日 西 NPO法人 コミュニティかりば たまり場・だべり場・いこいの場 2 6月25日 生きがい活動ステーション 生き活サロン

3 7月4日 垂水 すずカフェ倶楽部 ふれあい喫茶 すずカフェ 4 8月30日 須磨 NPO法人 福祉ネットワーク西須磨だん

らん みんなの居場所 須磨いるサロン

東灘 NPO法人 ケアット はじめのいっぽ

東灘 ume(うめ)のつぶやき

東灘 ぽっぽくらぶ

6 9月2日 東灘 東灘こどもカフェ 木洩童(こもれど)

7 9月3日 中央 あんだんて あんだんて

8 9月17日 長田 神戸いたやどばあちゃん 神戸いたやどばあちゃん 9 9月17日 長田 株式会社 Happy はっぴーの家 ろっけん 10 9月19日 垂水 七丁目クラブ 七丁目クラブ

11 9月20日 垂水 あさたにダーツの会 ダーツとお茶とおしゃべりと 12 10月2日 NPO法人 インクルひろば インクルカフェ 他

13 10月3日 兵庫 NPO法人 神戸なごみの家 なごみカフェ

14 10月10日 つながるまんまるぅサロン つながるまんまるぅサロン 15 10月16日 NPO法人 花たば(ろっこう医療生協) お茶処 花たば

16 10月18日 居空間RoCoCo 居空間RoCoCo 17 10月18日 有限会社 神輝興産 おせっカフェ 18 10月29日 垂水 舞子坂ふーみん 舞子坂ふーみん 19 11月22日 西 富士見が丘コミレス れんがの家

9月2日 5

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型一般介護予防事業補助金)しているため、補助対象となる居場所を複数の視点で具 体的に定義している。神戸市のHPに記載されている内容を見てみると、①原則月2 回以上の通年開催、②1回あたりの開催時間は2時間以上、③高齢者の誰もが参加可 能、④「通いの場」開催時に最低1名以上のスタッフが常駐となっている。補助金の 募集要項では、開催場所や参加人数などの項目も詳細に規定されている(神戸市のHP つどいの場支援事業補助金募集要項を参照されたい)

このような居場所の定義は、補助金の対象として具体的に示したものであるが、我々 が今後期待する居場所を具体的に定義し、それに相当する神戸市の居場所を選定・調 査することが重要ではないかと我々は考え、議論を重ねた結果、図表2に示されるよ うな居場所の定義に意見の一致をみることができた。以下で、簡単に解説しよう。

図表2 期待される居場所の定義

出所:著者作成.

最初の項目は居場所の開催回数である。神戸市の定義の場合は、月2回以上が原則 となっているが、期待される居場所に関する我々の定義では週1回以上の定期開催と した。まずは週1回以上であれば、高齢者にとって習慣化できるし、少なくとも週1 回は外出することにつながるからである。この点は、特に独居高齢者にとっては、体

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型一般介護予防事業補助金)しているため、補助対象となる居場所を複数の視点で具 体的に定義している。神戸市のHPに記載されている内容を見てみると、①原則月2 回以上の通年開催、②1回あたりの開催時間は2時間以上、③高齢者の誰もが参加可 能、④「通いの場」開催時に最低1名以上のスタッフが常駐となっている。補助金の 募集要項では、開催場所や参加人数などの項目も詳細に規定されている(神戸市のHP つどいの場支援事業補助金募集要項を参照されたい)

このような居場所の定義は、補助金の対象として具体的に示したものであるが、我々 が今後期待する居場所を具体的に定義し、それに相当する神戸市の居場所を選定・調 査することが重要ではないかと我々は考え、議論を重ねた結果、図表2に示されるよ うな居場所の定義に意見の一致をみることができた。以下で、簡単に解説しよう。

図表2 期待される居場所の定義

出所:著者作成.

最初の項目は居場所の開催回数である。神戸市の定義の場合は、月2回以上が原則 となっているが、期待される居場所に関する我々の定義では週1回以上の定期開催と した。まずは週1回以上であれば、高齢者にとって習慣化できるし、少なくとも週1 回は外出することにつながるからである。この点は、特に独居高齢者にとっては、体

力づくりや地域との接点と意味でも重要である。

次に、地域住民が主体となって、居場所の開設、運営、利用が行われているという 点である。この点は、地域の実情や利用者・住民のニーズによって、居場所のあり方 や運営の仕方などが異なってくる可能性があるため、「地域のことは地域の人で」とい う重要や視点となっている。

そのため、利用者は居場所からおおよそ 30 分以内の住居から通ってくる高齢者が 主であることが3番目の項目である。もちろん、居場所によっては、電車やバスを乗 り継いで 1 時間ぐらいかけて来る高齢者も中にはいるが、基本的に地域の居場所は、

徒歩30 分程度で、容易に利用者が通うことのできる距離にあることが重要であると 我々は考えている。

4 番目の項目は、居場所では、利用者が得意なことができるということである。図 2にも示しているように、利用者はいつまでも利用者ではなく、居場所の担い手に もなったりする。例えば、お茶を飲み、おしゃべりだけを楽しみに通ってきた高齢者 が、例えば、以前に習得したうどんやそばを打つスキルを、講座などで披露したり、

歌を歌うことが大好きな高齢者が中心となって、カラオケや歌声喫茶を開催したり、

何らかの得意技を持った高齢者が、その場でそのスキルを披露することができる居場 所である。居場所の利用者は、最初は単なる利用者かもしれないが、通いなれると自 主的に担い手にも変わり、居場所の活動に貢献する。そのような居場所のあり方を我々 は期待しているのである。

5 番目の項目は、居場所への参加対象者についてである、我々が想定している居場 所は主として高齢者向けの居場所ではあるが、居場所によっては近隣の子育て世代や 子供たちが集う場合も多くあるし、子ども食堂を一緒に運営するという場合もある。

それゆえ、我々は、地域の多様な世代間の交流ができる居場所を期待しているし、そ の方が地域の活性化も促進されると考えている。

6 番目の項目は、「対価収入があり、お金が動いている」という点である。例えば、

神戸市内の地域福祉センターなどで、「ふれあいのまちづくり協議会」が主催して月1 2 回行われている高齢者向けの居場所では、神戸市などの行政から施設管理費という 名目で多額の公的資金が支出されていることもあって、利用者である高齢者は非常に 低額のお金を支払うことで運営がされている。しかし、我々が想定する民間団体が運 営する居場所では、コーヒーや弁当、お菓子などを飲食したり、居場所で行われてい

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る講座を受講した場合には、高齢者自らがその対価を支払い、それが居場所の運営団 体の収入となるというお金の循環を考えている。民間団体が継続的に居場所を経営・

運営していくためには、家賃や飲食費などを賄うために、お金の循環が不可欠なので ある。

7 番目の項目は、活動の継続性についてである。我々が期待する居場所は、高齢者 が週1回以上通い、おしゃべりやお茶、昼食、講座などを楽しむといったことを想定 している。そのために重要なことは、開催回数に制限がある単発のイベントとしてで はなく、継続性を持って運営させることである。我々は継続的な居場所の運営が、高 齢者の日常を長期的に豊かなものにしていくと考えているのである。

8 番目の項目は、居場所への出入りに関する項目である。居場所へは高齢者だけで なく、子育て世代や子供たちなど多様な人々が集うため、出入りが自由で、自分の都 合に合わせて居場所に訪れ、おしゃべりやお茶を楽しんで、退出するという出入りの 自由さやオープン性が必要になると我々は考えている。

9番目と10番目の項目は、居場所と外部との関わりに関する項目で、前者が地域課 題への共感性・視点であり、後者が地域社会ニーズへの対応である。

まず前者については、一般に居場所は、高齢者がおしゃべりやお茶を楽しむ場所で あり、居場所の担い手や利用者の視点が、居場所内部だけに向けられるのではなく、

居場所の外の社会的課題にも向けられていることを意味する。例えば、居場所が立地 する地域における家庭や子供の貧困やシングルマザーの子育てなどといった地域の課 題が話題になり、それについてお茶をしながら議論したり、講座で学んだりといった ことが、9番目の地域課題への共感性・視点という意味である。

後者については、地域課題への視点を持った居場所の運営者や高齢者が、実際にそ の課題の解決を試みるということに他ならない。例えば、神戸では地理的に居住地域 の高低差が大きく、高齢者がゴミ出しをするときでも、かなり急な坂を上り下りする 必要がある場所も存在する。そういった地域では、居場所の運営者が有償ボランティ アとなって、日常のゴミ出しに困っている高齢者の自宅まで行って、1 回数百円でゴ ミ出しを代行するサービスを行っている。また、近年は家庭の貧困問題がかなり深刻 になっているが、居場所を運営する団体が子ども食堂も立ち上げることで、貧困家庭 の子供たちを集めて、夕食を一緒に取り、そこで宿題などの学習支援も行うといった こともなされている。このような、地域の社会的課題の解決に実際に対応し、取り組

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る講座を受講した場合には、高齢者自らがその対価を支払い、それが居場所の運営団 体の収入となるというお金の循環を考えている。民間団体が継続的に居場所を経営・

運営していくためには、家賃や飲食費などを賄うために、お金の循環が不可欠なので ある。

7 番目の項目は、活動の継続性についてである。我々が期待する居場所は、高齢者 が週1回以上通い、おしゃべりやお茶、昼食、講座などを楽しむといったことを想定 している。そのために重要なことは、開催回数に制限がある単発のイベントとしてで はなく、継続性を持って運営させることである。我々は継続的な居場所の運営が、高 齢者の日常を長期的に豊かなものにしていくと考えているのである。

8 番目の項目は、居場所への出入りに関する項目である。居場所へは高齢者だけで なく、子育て世代や子供たちなど多様な人々が集うため、出入りが自由で、自分の都 合に合わせて居場所に訪れ、おしゃべりやお茶を楽しんで、退出するという出入りの 自由さやオープン性が必要になると我々は考えている。

9番目と10番目の項目は、居場所と外部との関わりに関する項目で、前者が地域課 題への共感性・視点であり、後者が地域社会ニーズへの対応である。

まず前者については、一般に居場所は、高齢者がおしゃべりやお茶を楽しむ場所で あり、居場所の担い手や利用者の視点が、居場所内部だけに向けられるのではなく、

居場所の外の社会的課題にも向けられていることを意味する。例えば、居場所が立地 する地域における家庭や子供の貧困やシングルマザーの子育てなどといった地域の課 題が話題になり、それについてお茶をしながら議論したり、講座で学んだりといった ことが、9番目の地域課題への共感性・視点という意味である。

後者については、地域課題への視点を持った居場所の運営者や高齢者が、実際にそ の課題の解決を試みるということに他ならない。例えば、神戸では地理的に居住地域 の高低差が大きく、高齢者がゴミ出しをするときでも、かなり急な坂を上り下りする 必要がある場所も存在する。そういった地域では、居場所の運営者が有償ボランティ アとなって、日常のゴミ出しに困っている高齢者の自宅まで行って、1回数百円でゴ ミ出しを代行するサービスを行っている。また、近年は家庭の貧困問題がかなり深刻 になっているが、居場所を運営する団体が子ども食堂も立ち上げることで、貧困家庭 の子供たちを集めて、夕食を一緒に取り、そこで宿題などの学習支援も行うといった こともなされている。このような、地域の社会的課題の解決に実際に対応し、取り組

む活動を10番目の項目は意味している。

もちろん、9 番目と 10 番目の項目について、個々の居場所の運営者や高齢者が考 え、取り組むといったことは、非常に難しいことと予測がつくであろう。それゆえ、

この期待される居場所の定義でも、最後の項目に位置付けられている。

以上のような項目が、現時点で我々が考える期待される居場所の定義である。すべ ての項目を満たさないと居場所とは言えないということでないが、特に1番目から8 番目までは、ある程度は満たして欲しいと期待する項目であり、図表1に示したイン タビュー調査団体は、それらをある程度満たされていると我々は評価している。

2.発展プロセスという視点で見た居場所のあり方

図表2で示した期待される居場所の定義は、ある意味で居場所の理想型なので、実 際にはこれらすべての項目を満たしている地域の居場所はそう多くはない。上述した ように、特に9番目と10番目の項目については、個々の居場所で取り組むには難し い項目であるため、それらを満たす居場所はかなり少なくなるのが実情ではないかと 予測される。

ここでは、我々が調査した地域の居場所が、上述した 10 項目をどのようにして満 たしていくのか、すなわち居場所の発展プロセスを探ってみたい。つまり、①地域に おける居場所がどのようにして設立され、変化・発展していくのか、②その変化の中 で居場所を運営するリーダーはどのような役割を担っているのか、という点について、

インタビュー調査で収集した情報をもとに考察を進めたい。「地域の居場所は、その担 い手である居場所リーダーの活動を基盤にして、発展していくのではないか」「その 発展プロセスは、上述した10項目と密接に関わるのではないか」という2つの仮説 を本節でチェックしてみたいと思う。

2.1 居場所の形成プロセス

居場所を運営する 21 団体へのヒアリング調査を通じて最初に分かったことは、地 域の居場所の設立は、居場所を運営するリーダーたちが生まれ育った、あるいは現在 住んでいる地域で、高齢者や子供たち、あるいは子育て世代といった多世代の人たち の集う場を、地域に創りたいという「熱い想い」から始まっているということである。

その想いを抱いて、居場所リーダーたちは、これまでに関係のあった知人や友人とい

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った仲間同士が集まり、高齢者や子供たち、あるいは子育て世代といった多世代の人 たちが、お茶やおしゃべりを楽しむ地域の居場所を設立するという構想を考えること から始まるのである。

その構想を実現するために、居場所リーダーやその友人や知人が地域の人たちに互 いに声を掛け合って、地域の居場所を設立する。そして、声掛けをすることで、徐々 に利用者を集め、お茶を飲み、会話を楽しむ地域の居場所が誕生するわけである。

誕生した小さな居場所は、地域の高齢者が集い、さらに子供たちや子育て世代が徐々 に集うようになり、多世代交流の場と成長していく。そこでは、高齢者向けの講座だ けでなく、子供たち向けの勉強の講座があったり、子育て世代向けの講座が開催され、

多くの地域住民が集うようになる。

さらに、居場所は地域住民が集うだけでなく、期待される居場所の定義の89 示したように、集った高齢者や子育て世代が担い手となって、独居高齢者向けのゴミ 出しや買い物サービス、あるいは配食サービスなど、地域の困りごとの解決を積極的 に行う生活支援型の居場所へと発展するのである。

以上のような発展プロセスは図表3のように示すことができる。

図表3 居場所の発展・変化のプロセス

出所:ヒアリング調査をもとに著者作成.

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った仲間同士が集まり、高齢者や子供たち、あるいは子育て世代といった多世代の人 たちが、お茶やおしゃべりを楽しむ地域の居場所を設立するという構想を考えること から始まるのである。

その構想を実現するために、居場所リーダーやその友人や知人が地域の人たちに互 いに声を掛け合って、地域の居場所を設立する。そして、声掛けをすることで、徐々 に利用者を集め、お茶を飲み、会話を楽しむ地域の居場所が誕生するわけである。

誕生した小さな居場所は、地域の高齢者が集い、さらに子供たちや子育て世代が徐々 に集うようになり、多世代交流の場と成長していく。そこでは、高齢者向けの講座だ けでなく、子供たち向けの勉強の講座があったり、子育て世代向けの講座が開催され、

多くの地域住民が集うようになる。

さらに、居場所は地域住民が集うだけでなく、期待される居場所の定義の89 示したように、集った高齢者や子育て世代が担い手となって、独居高齢者向けのゴミ 出しや買い物サービス、あるいは配食サービスなど、地域の困りごとの解決を積極的 に行う生活支援型の居場所へと発展するのである。

以上のような発展プロセスは図表3のように示すことができる。

図表3 居場所の発展・変化のプロセス

出所:ヒアリング調査をもとに著者作成.

図表3の縦軸は、居場所となっている物件(不動産)が賃貸か保有かという軸にな っている。賃貸物件となると、毎月の家賃などの固定的な費用が必要となり、居場所 の経営を注意深くやっている必要がある。保有物件となると、固定資産税はかかるも のの毎月の家賃といった固定費はかからないので、居場所の経営のあり方が賃貸物件 とは異なってくる。

図表3の横軸は居場所の発展を意味している。上述したように、地域の居場所は友 人・知人で始まり、その後、多世代や地域住民が集うようになり、さらにゴミ出しや 買い物サービス、配食サービスなど、地域の困りごとまで解決するような生活支援型 の居場所に発展していくのである。

以上のような流れで居場所は発展していくが、設立当初の友人・知人が集う居場所 を「参加型」と称し、そこから発展していく中で(図表3の右側への移行)、地域の困 りごとを解決する生活支援型の居場所を「参画・支援型」と、我々は名付けた。

2.2 居場所の発展とリーダーシップ

地域の居場所は、図表3のように発展・変化していくが、そのプロセスで非常に重 要になる要因が、居場所リーダーの役割に他ならない。それを示したのが図表4であ る。

図表4に示したように、地域の居場所の開設からその発展まで、居場所のリーダー にとって必要な能力は、①熱意・意欲、仲間づくり、②情報収集・発信力、つながる 力、③仕組みづくり、人材育成といった要因になる。

まず、居場所を立ち上げる際のリーダーの地域への「熱い想い」や仲間づくりとい った要因は非常に重要である。何もないところから、高齢者や子供たちの集い場を創 り上げていくので、「何のために」「誰と一緒に(仲間づくり)「どこで」「どのよ うにして居場所を創るのか」といったことを検討し、実行していく必要がある。その ためにも、地域の居場所の「構想」や「仲間づくりの能力」「仲間と何か一緒にやっ ていきたいという意志・意欲」が居場所設立時に必要となる。このような要因は、図 4の左側に示される参加型の居場所をまず立ち上げる際に必要となるリーダーの能 力となる。

地域の居場所が、知人・友人が中心のつどい場から、高齢者だけでなく、子供たち や子育て世代の人たちといった多世代間の交流の場であったり、多様で幅広い地域住

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図表4 居場所の発展に寄与するリーダーの能力

出所:ヒアリング調査をもとに著者作成.

民との交流の場へと発展するには(図表4の中央への変化・発展)、さらなる居場所リ ーダーの意志や行動、能力が不可欠となる。具体的には、関わった人たちと地域を盛 り上げていきたいという意志・意欲を前面に掲げ、知人・友人だけでなく、地域の他 の住民に積極的に声をかけたり、つながりをつくるといった能力や、講座やイベント などで地域の人々を巻き込んだり、これまでに地域活動などの経験のない男性を掘り 起こして、巻き込んでいく能力である。これを図表4では、つながる力と示している。

特に、居場所の参加者は女性が非常に多く、男性が極端に少ないので、地域の高齢男 性陣とつながって、うまく巻き込んでいくことが図表34で示した「居場所におけ る多世代交流」という成果に結びついていくのである。

インタビュー調査をした居場所では、一週間のうち木曜日に「おやじカフェ」を開 催し、地域の男性陣がボランティアとなって、昼食にカレーやコーヒーを提供すると いうことに取り組んでいる。男性陣も楽しんで「おやじカフェ」を手伝っているよう であり、このような仕掛け・仕組みを作っていく居場所リーダーの能力が、居場所が 発展していくには必要不可欠となるのである。

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図表4 居場所の発展に寄与するリーダーの能力

出所:ヒアリング調査をもとに著者作成.

民との交流の場へと発展するには(図表4の中央への変化・発展)、さらなる居場所リ ーダーの意志や行動、能力が不可欠となる。具体的には、関わった人たちと地域を盛 り上げていきたいという意志・意欲を前面に掲げ、知人・友人だけでなく、地域の他 の住民に積極的に声をかけたり、つながりをつくるといった能力や、講座やイベント などで地域の人々を巻き込んだり、これまでに地域活動などの経験のない男性を掘り 起こして、巻き込んでいく能力である。これを図表4では、つながる力と示している。

特に、居場所の参加者は女性が非常に多く、男性が極端に少ないので、地域の高齢男 性陣とつながって、うまく巻き込んでいくことが図表34で示した「居場所におけ る多世代交流」という成果に結びついていくのである。

インタビュー調査をした居場所では、一週間のうち木曜日に「おやじカフェ」を開 催し、地域の男性陣がボランティアとなって、昼食にカレーやコーヒーを提供すると いうことに取り組んでいる。男性陣も楽しんで「おやじカフェ」を手伝っているよう であり、このような仕掛け・仕組みを作っていく居場所リーダーの能力が、居場所が 発展していくには必要不可欠となるのである。

また、このようなつながる力を形成・発揮していくための前提として、情報収集・

発信力もリーダーの重要な能力となる。地域にどのような人が住んでおり、どのよう な人とつながることが居場所の活動に資するのか。このようなことを居場所リーダー は検討する必要があるため、情報収集・発信力は居場所リーダーに不可欠な能力とな る。

最後に、居場所が地域の困りごとを解決するサービスやプログラム(高齢者のゴミ 出し、買い物、配食サービスなど)を提供する組織として発展する際にも(図表4 右側への変化・発展)、居場所リーダーの考え方や能力は重要な要因となる。具体的に は、地域住民の困りごとに目を向け、それらを解決することで高齢者を支援したいと いう意志を抱き、そのための仕組みづくりに積極的に取り組んだりすることである。

また、そのような地域の生活支援活動・事業に取り組む際には、リーダーだけでは困 難であるため、その活動・事業を担う人材の確保と育成が必要となる。この能力を図 4では、仕組みづくり、人材育成と示した。地域の居場所が「参画・支援型」に発 展していくためには、このようなリーダーの能力が必要不可欠となる。

一般に地域の居場所では、高齢者が集い、そこでおしゃべりを楽しみ、お茶や食事 を楽しむといったことをしているが、それを日常的に継続していると、居場所の利用 者は生活にハリが出て、生きがいなどの内面でプラスの変化が生じる。さらに、それ だけではなく、地域課題へ目を向ける、関心が生まれるというと効果も期待できるの である。

以上の点は、2018年に行った「居場所利用者の実態調査」において得られた調査結 果でも明らかになっており、その内容は図表5に示される。このような地域課題に関 心を持った利用者を単なる利用者にとどめずに、今度は地域課題の解決を行う担い手 として誘い、生活支援などの活動・事業の仕組みに参加させていくことが、「参画・支 援型」居場所のリーダーに不可欠な能力なのである。

3.地域における民間の居場所の必要性と役割

これまで、本研究で議論してきたのは、NPO法人やボランティア団体などの民間の 組織が設立した居場所についてであった。しかし、地域に立地する居場所はそれだけ ではない。むしろ、これまで主流であったのは、神戸市などの行政が設置した地域福 祉センターなどで、行政から委託を受けた「ふれあいのまちづくり協議会」などの組

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図表5 居場所に参加することによる生活の変化

出所:兵庫県立大学政策科学研究所NPO研究連携センター・認定NPO法人コミュ ニティ・サポートセンター神戸共著,2019,p.10.

織が運営する高齢者の集い場(居場所)で、数の上でも民間団体が運営する居場所よ りも多かったのである。例えば、CS神戸が2017年に行った調査によれば、このよう な行政設置型のタイプの居場所は、神戸市内に171カ所(2016年の調査では166 所)存在している(同じデータベースによれば、民間団体が設置した居場所は、2016 年のデータでは 108 カ所、2017 年のデータでは 145 カ所となっている:CS 神戸 ,2016,2017年)

ここで素朴な疑問が浮かんでくる。神戸市内でこれだけの行政設置型の居場所が存 在するのであれば、なぜ民間団体がわざわざ居場所を設置する必要があるのかという 点である。これまで論じてきたように、民間団体が居場所を設置して運営する場合、

拠点となる場所を賃貸したり、保有している不動産を使う場合がある。その費用だけ でなく、日々居場所を運営する際にも運転資金などのコストだけでなく、労力も非常 に必要となる。それゆえ、なぜ民間が主導して設置する居場所が必要となるのかとい う点について、以下で「経営イノベーション」という視点から考えてみたい。

表  11   男性の趣味を取り入れる ●男性が好む活動:将棋、囲碁サロン、麻雀、論語の講座、尺八、デジカメなど。 ●金曜日は男性が酒を持参してカラオケをする。 ●毎月第 2 水曜日に飲み会をしている。男性が 20 人くらい集まる。女性も 3 , 4 人 参加している。 ●ナイトカフェのようなものを作っていく構想がある 表  12   ちょっとした声がけが大事 ●あまり話さない男性が来られた。スタッフが意識的に男性に声がけするとだんだ ん答えてくれるようになった。それから喜んできてくれるようになった。

参照

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