一般化プロクラステス問題の研究 : 因子分析法と 多次元尺度法の確認的結合
その他のタイトル A study of generalized Procrustes problem : Confirmatory linkage between factor analysis and multidimensional scalings
著者 柴田 満
雑誌名 関西大学社会学部紀要
巻 18
号 1
ページ 153‑183
発行年 1986‑11‑04
URL http://hdl.handle.net/10112/00022718
一 般 化 プ ロ ク ラ ス テ ス 問 題 の 研 究
―因子分析法と多次元尺度法の確認的結合—
柴 田 満
A
study of generalized Procrustes problem:Confirmatory linkage between factor analysis and multidimensional scalings Mitsuru Shibata
Abstract
A generalized method for comparing and matching two kinds of different solu‑
tions of multivariate analysis such as in factor analysis and in multidimen‑
sional scaling was discussed and developed with mathematical formulations and also with Fortran programs.
Generalized Procrustes analysis proposed by Schoneomann and Carroll in which a rotation of axes as well as a central dilation and a translation within Enclidian space was adopted was reinterpreted geometrically in terms of orthogonal pro‑
jection matrix for substantial scientists to understand it easier by using nu‑
merical examples of YG Personality Inventory obtained from two different sam‑
ples of Japanease highschool students. Results indicate the clear matching of high level in terms of indexes for evaluating the congruence of the multidi‑
mensional structures of both two different sample and also of two different solutions : between oblique Promax factor analytic solution and ADDSCAL solu‑
tion with constrained factor axes. (author abstract)
Key words: factor analysis, multidimensional scaling, Procrustes analysis, constraint of factor axes, Fortran program,
YG
personality Inventory抄 録
因子分析法や多次元尺度法のような 2 種の異なる多変量解析法の解を比較し,合致さ せるための一般的な方法が,数学的な公式とフォートランプログラムによる分析を通して 討論され,開発された。
ユークリッド空間内での座標空間全体としての拡張・短縮と原点の移動をともなう軸 の回転を採用した
Schonemannと
Carrollの一般化プロクラステス法が,本稿では.実 質科学者の理解を深める目的で,直交射影子行列による幾何学的説明によって再解釈さ れ,また,日本の高校生の 2つの異なる標本から得られた YG性格検査の数値例によって 再解釈された。数値例研究の結果は, 2 つの異なる標本で,かつ異なる解の多次元構造,
すなわち固定された因子軸上での斜交プロマックス因子解と ADDSCAL 解の間の一致 を評価する指標によれば,高水準のはっきりした合致を示している。
キーワード:因子分析法,多次元尺度法,プロクラステス法,因子軸の固定,
フォートラン・プログラム, YG性格検査
関西大学『社会学部紀要」第 1 8 巻第 1 号
[ 要 約 目 次 ]
[ 問 題 ]. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ( 1 5 5 l
(因子分析以外の各種の多変址解析にも適用可能なプロクラステス解法とその適用範囲および 確認システムの基本構想)
[ 方 法 ] ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ( 1 5 7 )
1 . 代数的解法と射影子および幾何学的検討
(実質科学的理解を深めるため,解法の原理を,新たに射影子と幾何によって解説した)
2 . 解の最小二乗法的一意性 3 . 適合度の評価測度 4 . 単純構造の原理による回転
〔 1 〕演繹基準による回転
〔 2 〕帰納基準による回転 5 . 総合評価システム
[ 結果と解釈 ] . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . (169) 1 . 分析資料と解法
2 . 分析経過の検討 Tablel YG 性格検査の ADDSCAL 解と因子分析解 T a b l e 2 Sch5nemann & C a r r o l l の解法の分析経過 3 . 結果の評価 T a b l e 3 プロクラステス解の評価指標
T a b l e 4 単純構造へ回転された最終解
[ 考 察 ] ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ( 1 7 4 )
1 . 本稿の総合確認システム
2 . 解析間比較における集団の異同と条件設定 3 . 将来の展望
[ 異種解析間解法システムのためのコンピュータプログラム] ……… (176)
[ 参 考 文 献 ]. . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . (182)
[ 問 題 ]
複雑で曖昧性の大きな事象を取り扱わなければならない心理学などの行動科学研究の諸領域に おいては,それぞれの研究対象に対する確認的な推論モデルを確立することはかならずしも容易 ではない。それは,この領域で扱われる諸変数が,主に経験的に構築された種々の構成概念であ ることに起因している。たとえば,性格心理学における代表的な変数である気質・価値観・態度・
要求などに属する構成概念を例にとれば明らかなように,これらは明確な理論的枠組みや確固た る外的基準をもとにして定立されたものではなく,人間行動の諸過程での経験を通して得られた 間接的な抽象概念に他ならないのである。
周知のとおり,このような構成概念の分類整理や相互関連の構造を解明するために,因子分析 法や多次元尺度法などの幾多の多変量解析法が提案されてきた。これらの多変量解析法は,いず れも内的ならびに外的な変数相互の関連をあらわす指標(相関係数,分散共分散,非類似性,各 種の距離など)を手がかりとして,その領域の構造の解明をはかるものであり,それら指標の相 互関連の大小や強弱に依存して構造が決定されてきた。しかし,分析の対象となる被験者集団が 異なれば,この指標の値も多少異なるのが通例であり,これに伴って,分析によって見出される構 造も微妙にその姿を異にすることが多い。この微妙な構造の変化を構造差とみなすか,単なる誤 差とみなすか,あるいは分析方法に依存するものとみなすかは,その後の実質科学的解釈や心理 学的モデルを構成する上に大きな影響を与えることになる。本論文は,このような問題への 1 つ の解決策を提案するものである。
ところで本論文の主要な研究対象である因子分析論の領域においては,このような構造の安定 性の問題は「因子的不変性 ( f a c t o r i a li n v a r i a n c e ) 」の問題とよばれ,多くの研究者が積極的にこ の問題解決にとりくんできた。そして,この解決法として,プロクラステス法に基づく最小二乗 法的アプローチや母集団概念を背景とした最尤解法的アプローチをはじめとする諸解法が開発さ れてきた。また,筆者らは,これまでの伝統的な研究の系譜を念頭において,最小二乗解法を基 礎とした確認システムを構成するための一連の研究(辻岡・柴田 1 9 8 3 , 柴田・辻岡 1 9 8 3 , 1 9 8 4 , 柴田 1 9 8 5 ) を行い,この因子分析論当初以来の重要課題にとりくんできた。
しかし,先述したとおり,この安定した構造の実現は,方法の性質上,因子分析のみならず,
すべての多変彙解析に共通の課題である。このような観点から,従来,因子分析の領域で発展し てきた諸方法,特にプロクラステス解法を,他の多変量解析法にも一般化して適用しようとする 試みが生まれてきた。この最初の試みは,まず Schonemann& C a r r o l l ( 1 9 7 0 ) によって行われ,
従来のプロクラステス問題の主たる関心事であった座標軸の回転 ( r o t a t i o n ) に加えて,座標空間
全体としての統一的な拡張あるいは短縮 ( c e n t r a ld i l a t i o n ) と座標原点の移動 ( t r a n s l a t i o n ) を
含む数学的方法論が展開された。彼らの初期の興味は,当時発展途上にあった K r u s k a l( 1 9 6 4 ) や
関西大学『社会学部紀要」第
18巻第
1号
Guttman ( 1 9 6 8 ) の提案になる技法,すなわち,相関係数を類似性の測度として取り扱う非計量 多次元尺度法 ( n o r u n e t r i cm u l t i d i m e n s i o n a l s c a l i n g ) の普及を念頭におきながら,同じく相関係 数を分析対象とする伝統的な因子分析法の分析結果との比較可能性を追及しようとするものであ った。しかし,その後, M e r e d i t h( 1 9 7 7 ) によって,この方法は,原理的にみて因子分析法や多 次元尺度法のみならず,主成分分析,クラスター分析,潜在構造分析をはじめ,回帰分析,判別 分析や多変量分散分析にも,広く適用可能な汎用性の高い技法であることが指摘された。また高 根 ( 1 9 8 0 ) は,この技法が,座標軸の拡張・短縮や原点の移動に加えて,座標軸の回転に対して も距離の不変性をもつ単純ユークリッド・モデルの範囲に適用可能であることを指摘した。これ らの指摘を整理すると,従来のプロクラステス解法が, 2 群あるいは多群の因子分析結果同士の 比較を念頭におき,軸の拡張・短縮や原点の移動を必要としなかったのに対し, S c h l i n e m a n n &
C a r r o l l の方法は,この操作を可能ならしめることによって,因子分析以外の種々の多変量解析も 含めて,その適用可能性を高めたものと見ることができる。そして,その適用範囲は,座標空間 の全体的拡張・短縮と原点の移動に加えて,さらには回転をも許容する単純ユークリッド・モデ ルを基礎とした解法であるということになる。たとえば,多次元尺度法に適用可能であるといっ ても,それは単純ユークリッド・モデルに基づく解法に対してであって,座標軸の回転に対して 距離の不変性が保たれないモデル(重みづきユークリッド・モデルなど)に基づく解法に対して 適用することはできないのである。
さて,このような適用範囲を念頭において,実際の諸家の研究の現状を考えてみよう。性格心 理学や知覚心理学などの種々な心理学の領域において,その領域の心理学的モデルを構成する際 には,多くの研究者が多様な方法を用いている。たとえば,同じテスト・バッテリーを用いて研 究している諸家の間でも,ある研究者は因子分析法を用い,ある研究者は多次元尺度法を用いる という具合に,研究者の目的や志向によって種々の方法が適用されている。
先述した筆者らの一連の研究は,相互に因子分析を用いている研究者間のコミュニケーション をはかろうとするものであったが,多様な方法論が提案されている現状において,使用する解析法 そのものが異なる場合を想定しないわけにはいかない。本稿で提案する異種解析間解法のための 確認システムは,このような立場から多様な解析空間相互の比較可能性を追求しようとするもの である。また,先述した「因子的不変性」の研究の伝統と単純構造の原理による回転等の解釈ヘ の方法論をもつ因子分析法の諸特性を活用するため,本稿の異種解析間解法を,筆者らの一連の 確認システムの構想の中に位置づけたのである。すなわち,このような位置づけによって,異種 解析間解法においても,因子分析解を標的とし,①固定された同一の座標軸間相関のもとでの比 較確認と②プロクラステス解に基づく最大近似の原理 ( p r i n c i p l eo f maximum a p p r o x i m a t i o n )
と単純構造の原理 ( p r i n c i p l eo f s i m p l e s t r u c t u r e ) の合理的な結合を兼ね備えた確認システムの 基本構想を継承しようと考えたのである。
しかし,この一方で異種解析間解法独自の問題にも配慮しなければならない。たとえば,最小
二乗解に基づく適合度の評価については,後述する L i n g o e s& Schonemann ( 1 9 7 4 ) の指摘を考 慮しなければならず,従来のプロクラステス問題とは異なった種々の留意が必要となってくる。
本論文では,以上の観点から,筆者らの一連の論文と同様に,①数理論による検討,②実際の 数値データによる検証,③結果の整理と考察,④コンピュータプログラムの紹介という手順をと ることにした。なお,数理論による検討においては,射影子や幾何による説明を新たに加え,方 法論の実質科学的理解をはかった。また,数値例検証においては,計量多次元尺度解と因子分析 解を比較の対象とし,本稿の確認システムの検証を試みた。
[ 方 法 ]
1 • 代数的解法と射影子および幾何学的検討
ここでは,まず, Schcinemann & C a r r o l l のプロクラステス解法の代数的解法過程を簡単に紹 介し,ついで,この方法に,射影子および幾何学的検討を新たに加えることによって,この解法 の本質をとらえ,さらに本論文独自の立場からの考察を試みる。
まず Schcinemann& C a r r o l l の解法における誤差行列 E(nx m 次; n は変量数, m は分析次元 数:以下同様)は,
( 1 ) E = B 。 ー (dA 。 T 。+ l n c ' )
と定義される。ここで, B 。(n x m 次)は,変換の標的あるいは基準となる任意の直交多変量解 析解, A 。 (nx m 次)は,変換の対象となる任意の直交多変量解析解である。また, T 。 (mxm 次)は,正規直交の座標軸変換行列であり,一般の直交プロクラステス変換の場合と同様, T 。 " I ' . 。=
T 。 Ta'=lm の条件のもとでの解法が行われる。さらに, d は,座標空間全体の拡張・短縮を調節す るスカラーであり, c (mx 1 次)は,各次元ごとの原点移動を調節する定数ベクトルである。
また l n (n
X1 次)は,すべての要素が 1 である単位ベクトル(成分が 1 つだけ 1 で他は 0 であ るベクトルを単位ベクトルと呼ぶこともある)である。なお,この解法に限らず,直交プロクラ ステス解法に共通することであるが,解法過程において,変換行列冗が正規直交行列でありさえ すれば,当初の 2 つの解析解(ここでは, A 。 と B 。)は必ずしも直交解である必要はなく,任意の 解析解としてもさしつかえない。しかし,本論文では,後述するような幾何学的説明による実質 科学的検討やプロクラステス回転後の単純構造への斜交回転といったわれわれの確認システムの 構想を念頭において,対象を直交解に限定した。
さて, Schcinemann & C a r r o l l のプロクラステス解法は, ( 1 ) 式の誤差行列の各要素の平方和
が,変換行列 T o の正規直交条件のもとで最小化されるように, T , 。 d および
Cを定める最小二乗
問題として位置づけることができる。すなわち,目的関数 I ( T , 。 , d'C) を,ラグランジェの
未定乗数から成る行列 A (mxm 次)を用いて,
関西大学『社会学部紀要』第
18巻第
1号
( 2 ) f ( T o , d , c ) =tr(E'E)+tr{A(Tc 。 'To‑Im)}
= tr(Bo'B 。 ) +が t r ( T c 。 'A 。 'A 。 T 。 ) +n c'c +2dtr(To'A 。 'Inc')
‑2dtr(To'Ao'Bo) ‑2tr(Bo'ln c ' ) +tr{A ( T o ' T o ‑I m ) } と定めたとき.これを最小化する未知の T 。 . d ,
Cを最小二乗法によって求めようとするのであ る。この ( 2 ) 式を.まず T o の各要素で偏微分し,その結果をすべてゼロと置くと,
( 3 ) 1 紆 ( T o , d , c )
2 aT0 = d2A 。 'A 。 To+dA 。 'Inc'‑dA 。 'Bo+ToI= 0
となる。ここで, ( 3 ) 式の I(mxm 次)は, I=A+A'=I' であり,未知の対称行列である。つい で , d,
Cのそれぞれについても偏微分し,その結果をそれぞれゼロと置くと,
( 4 ) 1 a t ( T o , d , c )
2 ad = dtr(To'A 。 'A 。 T 。 ) +tr(Tc 。 ' A o ' I n c ' )‑tr(Tc 。 'A 。 ' B o )= 0 ( 5 ) 1 a t ( T c 。 , d , c )
百 ac = nc+ dTo'A 。 'ln‑B 。 (In= 0 となる。ここで,ベクトル
Cは , ( 5 ) 式より,
( 6 ) c = (Bo‑dAo T o ) ' l n / n
とあらわされる。すなわち,原点移動を調節するベクトル
Cは,標的行列 B 。 と dA 。 T 。の差の列ご との総和を変量数 n で割った値を各要素とするベクトルであることがわかる。
ついで. ( 3 ) 式の左から T。'を乗じて整理すると,
( 7 ) が T 。 'Ao'A 。 T 。 +I=d T c 。 'A 。 'Bo‑dTc 。 'A 。 ' I n c '
となる。ここで,左辺の 2 つの項が対称であることは明らかであるので,右辺もまた対称でなけ ればならないことに留意し,右辺第二項の c ' に( 6 ) 式の関係を代入して整理すると(ただし,スカ ラー dは.行列の対称性の証明と無関係であるので省略する。), ( 7 ) 式右辺は ( 8 ) 式左辺のように 書け,さらに ( 8 ) 式右辺のように整理される。
( 8 ) T c 。 'A 。 'lnB 。 ‑Tc 。 'A 。
II ふ '(Bo‑dA 。 T 。 ) /n
=Tc 。 'A 。 '(In‑I ふ '/n)Bo+dTc 。 'A 。 ' ( I ぷ /n)A 。 T 。
ここで, I n は , nxn 次の単位行列である。また ( 8 ) 式において.右辺第二項が対称であることと ( 7 ) 式の右辺の対称性の関係を考えあわせると, ( 7 ) 式の右辺第一項も対称でなければならない。
したがって.この ( 8 ) 式右辺第一項の T o ' を除く行列群を.
( 9 ) S = A 。 '(In‑I ふ; /n)B 。
と定義すると,先の対称性から,
( 1 0 ) T c : 。 S=S'Tc 。
という関係が得られる。この ( 1 0 ) 式の形は, S を A 。 と B 。の内積とおいたときの Schonemann
( 1 9 6 6 ) の 2 つの因子分析解を対象とする直交プロクラステス解法の手順と同形となり,以下同様
の手順を適用することができる。すなわち, S の主積率と従積率の固有分解を,
( 1 1 ) SS'= P~2 P'
( 1 2 ) S'S= Q . d 2 Q ' 〔ただし ( 1 1 )式と ( 1 2 )式の4 の対角要素(固有値)は一致する。〕
とし, ( 1 0 ) 式の両辺に,おのおのの転置を左から乗じて, ( 1 1 ) 式 , ( 1 2 ) 式の関係を代入すると,
( 1 3 ) Q が Q'=T i 。
Ip,d2P'Ti 。
となり,変換行列 T 。と固有ベクトルを列要素とする mxm 次の行列 P,Q の関係が,
( 1 4 ) P'Ti 。 =Q'
と与えられる。さらに,固有ベクトルを列要素とする行列 P , Q が P'P=PP'=Q'Q = QQ'=Im となる性質をもつことから,この ( 1 4 ) 式の両辺に左から P' を乗じると,求めんとする変換行列冗 は ,
( 1 5 ) To= PQ' となる。
以上の解法プロセスにおいて,特に注目すべきことは,未知の変換行列冗の解は, d や
Cとは 独立に求まるという点である。 Schonemann& C a r r o l l は,この問題について,これ以上言及し てはいないが,上記の解法手順は,彼らの解法を実質科学的手続きとして理解する上で,また彼 らの解法と S c h l > n e m a n n の解法をはじめとする因子分析同士のプロクラステス解法との関連を明 らかにする上で重要な視点を与えてくれている。そこで本論文では,この問題を射影子の概念を 用いて多面的に検討し, ScMnemann& C a r r o l l の代数的解法に新しい視点を与えるとともにこの 解法手順の本質を明らかにしようと試みた。
まず, 2 群の因子分析結果を対象とする Schonemann の解法では, ( 9 ) 式の行列 S にあたるもの として, SAmxm 次)を,
( 1 6 ) Sf= A 。 'B 。
と定義したが,この ( 1 6 ) 式と先の ( 9 ) 式の相違点は, ( 9 ) 式のカッコ内の直交射影子行列,
( 1 7 ) I l ‑ 1 ; = / n ‑ l n l , ; / n
にある。ここで, 古は nxn 次の直交射影子行列である。この直交射影子行列は,周知のとおり,
平均を単位ベクトル l n への正射影としてあらわす射影子行列 I l n(n
Xn 次)を,
( 1 8 ) Iln= J n ( J , ; l n ) 一 11,(=ln じ In と定義するとき,平均偏差得点をあらわす行列,
( 1 9 ) 耳 =ln‑Iln
として定義されるものである。すなわち,この直交射影子行列 n 古を,任意の行列(仮に X とする)
の左から乗ずると,
( 2 0 ) I I ‑ J i X = Un‑Iln)X=X‑ln(l,(X) =X‑ln n 豆
と展開され,平均偏差得点をあらわすことができる。ここで, x(mx1 次)は,行列 X を構成す
るm個の列ベクトルの,列ごとの平均値(あるいは重心)を要素とするベクトルであり, l n ぷ (n
X関西大学『社会学部紀要』第
18巻第
1号
m 次)によって平均値行列を表現している。
さて, Schonemann & C a r r o l l によって導かれた ( 9 ) 式を,この射影子の概念を用いて説明して みよう。まず,分析の対象となっている 2 つの直交行列 A 。 , Bo の左から.直交射影子 古を乗じ.
( 2 0 ) 式と同様の平均偏差ベクトルから成る 2 つの直交行列ふ (n xm 次 ) . j j 。 (n xm 次)を.
( 2 1 ) ふ = l l 古 A 。 =(In‑lnl,: は) A 。
( 2 2 ) 瓦= 古 Bo=Un‑lnl,: は) B 。
と定義する。すなわち,座標の原点が同一でない 2 つの直交多変量解析解の原点を,とりあえず 各列ベクトルの重心におき,この平均からの偏差として,個々の座標値を定義し直したのである。
ついで,直交射影子の性質,すなわち.
( 2 3 ) l l 古 '=(In‑lnl,: は) = 古
( 2 4 ) n 古 n 古 = Un‑lnlr!/n)(In‑lnl,:/n) = In2‑2(1nlr! /n)+(lnlr!/n)2
=ln‑2(1n じ/叫 +(lnln' は) =ln‑lnl,: は= 古 を考慮して, ( 2 1 ) 式および ( 2 2 ) 式の平均偏差行列の内積を求めると.
( 2 5 ) A : 。 ,8 。 = A 。 , I I 古 , l l 古 Bo=A 。 ' I I ‑ J ;I I ‑ } ; B 。 = A 。 ' I I ‑ J iB 。 = A 。 '(In‑lnl,:/n)B 。 となり, ( 9 ) 式と同型になることがわかる。すなわち. ( 9 ) 式の Sは.座標原点を各解析次元ごと の重心においた 2 つの平均偏差行列の内積としてあらわされる。この ( 9 ) 式と ( 1 6 ) 式の相違は.そ のまま,因子分析結果を対象とする Schonemann の解法と,広く単純ユークリッドモデルに基づく 分析結果を対象とする Schonemann & C a r r o l l の解法との基本的な相違をあらわしている。換言 . . . . . . . .
すれば.この 2 つの解法は.変換行列冗を求める操作に関する限り,重心への原点移動を除いて 同一の原理.すわなち,対応変量ベクトル頂点間のユークリッド距離を最小化する原理 ( E v a n s 1 9 7 1 , 幾何学的説明については辻岡・柴田 1 9 8 3 ) に基づく解法である。
本来.この最小二乗法の手続き,あるいはユークリッド距離は,座標原点の移動に関して不変 であり,原点を任意に定めてよいのであるが,奥野ら ( 1 9 7 1 ) や高根 ( 1 9 8 0 ) が指摘するように.
原点の位置によって誤差の影響が異なり.解も微妙に異なってくる。すなわち.原点を重心に置 くという操作は.この誤差を平等に扱うための統計学的配慮であり,重回帰分析をはじめとする 数多くの多変量解析において.座標原点を重心に置く分散共分散行列や相関行列が,分析の出発 行列として用いられてきた所以である。
さて,先述したとおり, Schonemann & C a r r o l l の解法は.変換行列冗の解法操作に限れば.
Schonemann の解法と同一の原理に基づくものであると考えられるが.実質科学的理解を容易に するため,この Schonemann & C a r r o l l の解法を幾何学的に説明してみよう。 Schonemann の解法 の幾何学的説明は.すでに辻岡・柴田 ( 1 9 8 3 ) において行われ,対応変量ベクトル頂点間のユー クリッド距離と対応因子間の座標値の誤差平方和の関連が明らかにされた。ここでは,さらに.
原点移動を伴う解法の特徴を明らかにするため,対応変董ベクトル間の内積と対応変量ベクトル
頂点間のユークリッド距離の関係を示し,原点を重心においた座標軸上での内積がどのように表 現されるかを考えてみることにした。
先の解法手順をみれば明らかなように, S c h i : i n e m a n n& C a r r o l l の解法は,変換行列の解法に 関する限り,座標の重心を原点とする 2 つの直交行列 A o , B 。を用いた跡和 ( t r a c e ) ,
( 2 6 ) t r ( ふ j j ) 。 = t r (A 。 j j 。 ' )
を考え,これを最大化する変換行列冗を求める問題,すなわち,
( 2 7 ) t r ( T i 。'ふ, B i 。 ) = t r ( . A 。 T 。 j j 。 ' ) の最大化問題として表現できる。
このとき, ( 2 6 ) 式の右辺が, A 。,氏の各対応行(対応変量)の各要素の積和を対角要素とする 行列ふ B 。'の跡和となっていることに留意して,この 2 つの変量ベクトルの関係を考えてみよう。
ここでは,まず,原点を重心に移動する手順を明示するため,原点移動をする前の行列 A o , B 。を 用いて, t rUo B o ' ) を考える。また, A 。の任意の i 番目の行を a ; , この個々の要素を a ; p (p =
1 , 2 , ……, m), これと対応する B 。 の i 番目の行を b ; , この個々の要素を b ; p とあらわすと,
行列 A 。 B o ' の対角要素に入る積和は,対応変量ベクトル a ; , b ; の内積として,
( 2 8 ) a ; b ; =~a;pb;p
P=I
とあらわされる。ついで,幾何学的説明を容易にするため, F i g .l に示したように,直交解析解の 第一軸と第二軸から成る 2 次元空間をとりだし,ここに変量ベクトル a ; ,b 冷布置すると, ( 2 8 ) 式
の右辺は,この 2 次元上では,
(29)~a;pb;p= a ; 1 b i 1 + a ; 2 b ; 2
P=I
とあらわされる。
また, 2 つの変量ベクトルの突角を e , ベクトル a ; ,b ; のそれぞれのノルムを,
IIa ;
II= d a ,
IIb ;
11=d 此すると, ( 2 9 ) 式の内積は,
( 3 0 ) a ; 1 b ; 1 + a ; z 加 = da 必 c o s8
となり,対応変量ベクトル間の央角度を用いて表わすことができる(詳細は,田中 1 9 7 7 参照)。
また,対応変量ベクトル頂点間のユークリッド距離 d e は ( 3 0 ) 式の関係を考慮して展開すると,
( 3 1 ) d/ = d 訊+d 訊ー 2dadbcos8
= d 名 +d 訊ー2 ( a i lb ; 1 +a;2b;2)
と表わすことができる(詳細は,印東 1 9 6 9 , 田中 1 9 7 7 参照)。すなわち,対応変量ベクトル頂 点間のユークリッド距離の平方 d/ は , 2 つの変量ベクトルのノルムの長さの平方和と内積の差 であらわされ,ノルムの長さが決まれば,頂点間のユークリッド距離と内積が表裏一体の対応関 係となることがわかる。また, 2 つの変量ベクトルの爽角度 0 と頂点間のユークリッド距離の密 接な対応関係も明らかである。これらの対応関係は, S c h i : i n e m a n n や Evans の解法を理解する上で
も重要な視点を含んでいる。
F i g . I
S o l u t i o n 2
a;2
b , 2
関西大学『社会学部紀要』第 1 8 巻第 1 号
b ;
a i l b i l S o l u t i o n 1 G e o m e t r i c a l r e p r e s e n t a t i o n b e t w e e n t h e c o r r e s p o n d i n g s c a l e v e c t o r s
(む=I a I 1 , d
戸I I bd む = E u c l i d i a n d i s t a n c e b e t w e e n t h e t e n n m 1 o f c o r r e s p o n d i n g s c a l e v e c t o r s )
以上の関係は,解析次元を m 次元に拡張し,さらに対応変量間以外の変量ベクトルの組み合せ に拡張しても一般性を損なわない。そこで,上記の関係を m 次元空間に拡張し,Ao,Bo 各々の解析 空間内の重心をそれぞれ l n . i = I I a 石 k l = : l b ゅとあらわすと,座標軸の原点を各解析次元の重心に おいた場合のベクトル i i J ・んの内積は,
m ̲ ̲ m
( 3 2 ) む ふ = P I = ! l a J p b ゅ = P I = ! l ( a J p ― ― n 1 J = I !
nl aJp)(bkP--~bkP) I
nnk~I
とあらわされる。ここで, a ; p , b k p は , i i . ; , bk のそれぞれの要素である。この ( 3 2 ) 式を展開し,
( 3 1 ) 式の距離と内積の関係を考慮しながら整理すると,
( 3 3 ) P ~a;PbkP- - ~ ~a;PbkP- - ~ m = l n 1 n m j = l P = l n k 1 n m = l P ~ = l a,;pbkP+i 点孟孟 a . ; p b k P
1 1 n 1 n
=が (di。J+dl。 k-d訟)一ー~(晶。J+dt。k-d弘)一一 ~(di。J+dt。 k-d~Jk) n
た1n k = l
十
↓ 盈孟 (d~。i 噴Ok—叫)}
となる。ここで, d
aoJは,原点 0 から,変量ベクトル a ; の頂点までのユークリッド距離, d
bOkは , 同じく原点 0 から,変量ベクトルふの頂点までのユークリッド距離,また de J k は,ふ, b k のそれ
n n
ぞれの頂点の間のユークリッド距離である。また,このとき ~dtok i = l = ndtok k ~d!。1=nd!。i = l となることを考慮して,さらに展開整理すると, ( 3 2 ) 式の 2 つのベクトルの内積は,
( 3 4 ) a J bk= -½<d. かー i 因 d~;k-¼ 孟如+~ 点孟 d か)
とあらわされる。すなわち,解析次元の重心に座標の原点を置く 2 つの変量ベクトルの内積は,
その変量ベクトル頂点間のユークリッド距離の平方の関数としてあらわされる。この ( 3 4 ) 式を,
対応変量ベクトル間の関係のみをあらわすように書き換えると,
~d2e;,)
n ,~11
nd 私十 7 n
・2
i=I
n 苫
1 ‑ n
.9
•9
2e
d
n 苔
•9
1 ‑ n
. ··~
̀
2e
d ︵
1 ‑ 2
= .
b
. , ‑ ︐
︵ 3 ︶ 5 a
となる。
( 3 0 ) 式や ( 3 1 ) 式あるいは ( 3 2 ) 式 , ( 3 3 ) 式の展開は印東 ( 1 9 6 9 ) , 上笹 ( 1 9 7 6 ) , 田中 ( 1 9 7 7 ) , 高根 ( 1 9 8 0 ) などにみられる単一の多次元尺度解の幾何学的説明と原理的に同一のものであるが,
本論文では,この原理を, 2 種類の解析解 A 。 , Bo を同一の座標軸上で重ね合わせて考える 2 群間の プロクラステス問題に拡張し,この目的にそった数式記述に変更している。
さて,このような解法手順の特徴を念頭におきながら,再び ScMnemann & C a r r o l l の代数的 解法にもどり,座標空間全体の拡張・短縮を調節するスカラー dを求めてみよう。まず, ( 6 ) 式の 関係を ( 4 ) 式に代入し,
Cを消去すると,
( 3 6 ) d t r ( T i 。 'A 。 'A ぶ ) +tr f T o ' A 。 'Un 丘 I n ) ( B o ‑d Ao T i 。 )} ‑tr ( T i 。 'AoBo)= 0 となる。ここで,左辺第二項をさらに展開し,
ると,
スカラー d を有しない項を右辺に移項して整理す
( 3 7 ) d t r ( T i 。 'A 。 'A 。 T 。 ) + d t r { T i 。 'A 。 ' ( 1 ふ I n ) A o T o }=tr(To'A。'B0)-tr{7i。~A。'(lnl; む) B o }
とあらわされる。さらに, t r ( 7 i 。 ' A 。 'A 。 T 。 ) = t r ( 7 i 。 ' A 。 'lnA 。 T o ) ,t r ( T i 。 ' A ' . o B o )= t r ( 7 i 。 ' A 。 ' l n B o ) を考慮して• d について整理すると.
( 3 8 ) d t r { 7 i 。 'A 。 : Un‑1 ぷ /n)A 。 T o }= t r { 7 i 。 'A 。 'Un‑1 ぷ /n)Bo}
となる。したがって,座標空間全体の拡張・短縮を調節するスカラー d は ,T 。の正規直交条件を 考慮して整理すると.
( 3 9 ) d= t r { To'Ao'Un‑lnl,; /n)Bo} / t r { T i 。 'A 。 '(ln‑lnl,;/n)A 。 T o }
= t r ( T i 。 'A 。 ' / 1 ‑ J i B 。 ) / t r ( 7 i 。 T 。 'A 。 , I I 姐 o )
= t r ( 7 i 。 'A 。
II I : 古 Bo)/tr(A 。
I/ 1 ‑ J i A 。 )
とあらわされる。すなわち.直交射影子 n 古によって変換された平均偏差行列の内積(分散)の直 和合計(跡和)として拡張・短縮の対象となる A 空間全体の大きさ(分母)をあらわし,さらに.
この平均偏差行列を直交変換した行列と標的空間 B 。の平均偏差行列の内積(共分散)の直和合計
(跡和)として,重ね合わせた空間全体の大きさ(分子)をあらわし.その両者の比によって座
標空間全体の短縮・拡張を行うスカラー d が定義されているのである。
関西大学「社会学部紀要』第
18巻第
1号以上,まず ( 1 5 ) 式によって T O が求まり,ついで ( 4 7 ) 式によって d が定まれば,各次元ごとの原 点移動を調節する定数ベクトル
Cは , ( 6 ) 式にこれら各値を代入することによって容易に求めら れる。そして, ( 6 ) 式をみれば明らかなように,このベクトル
Cの役割は, T O と d による変換後の 誤差行列 (B 。 ‑dA 。 T o ) の列和の平均を両空間のズレとして, dAoT 。の各次元ごとに一定の定数 (C の各要素)を加えて,最終的な調節を行うことにある。また,この原点移動の本質は,
Schonemann & C a r r o l l による次式の展開によって,さらに明らかとなろう。すなわち,行列 Ao を標的 B 。に最小二乗近似させて求まる推定値行列を B 。(n x m 次 ) , B 。の各列ごとの平均から成 るベクトルを fi=Bo'ln/n として, ( 6 ) 式の関係を考慮しながら j j 。を展開すると,
( 4 0 ) i i , 。 =dA ぶ +le'
= d A 。 T 。 +(lnl'n/n)(B 。 ― dA 。 T 。 )
= d(In‑lnl,; /n)A 。 T 。 +(1 ふ :/n)B 。
= d(In‑ln じ /n)A 。 T 。 +1 ぷ
となり,最小二乗解瓦。を求める際に,必ずしもベクトル
Cを求めなくてもよいことが明らかにな るのである。そして,この ( 4 0 ) 式が示唆するように,ベクトル
Cによる原点移動とは, A 。 T o の座標 原点を各解析次元の重心においたとき,これに Bo の対応する各解析次元ごとの平均値 ( b の各要素)
を加えることに他ならないのである。また,この ( 4 0 ) 式の関係を ( 1 ) に代入して,誤差行列を定義し なおすと,
( 4 1 ) E=B 。 ‑ i i 。
=B。― Unl,!,/n)B。— d(In-lnl,!,/n)A 。 T。
= U n ‑ l n l , : , /n)(Bo ‑dA 。 T 。 )
となり,ベクトル
Cを含まない定義が可能となる。すなわち, Schonemann & C a r r o l l の解法の 目的関数を構成する最小二乗誤差は,両空間の原点の相対的位置とは本質的に無関係であり, ( 4 1 ) 式は,この解法の原理の重要な側面を明示するものである。
2 . 解の最小二乗法的一意性
プロクラステス解法の適用範囲を因子分析相互の解法に限り,さらに直交制限解法に限れば,
一連の論文(辻岡・柴田 1 9 8 3 , 柴田・辻岡 1 9 8 4 , 柴田 1 9 8 5 ) において述べたとおり,解の 最小二乗法的一意性が保持される。辻岡・柴田 ( 1 9 8 3 ) は , Schonemann の解法で&を標的とし た場合, A 。を標的とした場合,および C l i f f( 1 9 6 6 ) の解法
0による A o , ‑ B 。の正準回転をも含めて,
これら 3 つの解の最大化された跡和が,
( 4 2 ) t r ( A T i 。 'A 。 'B 。 ) = t r ( s T i 。 'B 。 'A 。 ) = t r ( T J . A 。 'B 。 T s )
と等しくなることを示し,解の最小二乗法的一意性を明示した。ここで, A J ; 。 (mxm 次)は, B 。
を標的として A を回転する場合の変換行列,
BT i 。 (mxm 次)は, Ao を標的として Bo を回転する場
合の変換行列, TA(mxm 次 ) , T8(mxm 次)は, A , 。 B 。をそれぞれ正準回転するための変換行列
である。また, Schonemann & C a r r o l l は,評価の測度の対称性の観点から,回転のみを行う解 法では,標的を交換した場合の 2 つの解の誤差平方和の総和 t r(E'E) が等しくなることを示唆
している。
上記の解の最小二乗法的一意性は,多群間の因子分析解相互のプロクラステス解法においても 維持され(柴田 1 9 8 5 ) , また因子得点を対象とする縦断的因子分析においても保証される(柴田・
辻岡 1 9 8 3 ) 。しかし,本論文でとりあげた Schonemann & C a r r o l l の解法のように,回転以外 の変換を施す場合にも,この「解の最小二乗法的一意性」は保証されるのであろうか。
まず,変換行列 T 。は,その解法過程をみれば明らかなように,座標空間の拡張・短縮や原点移 動とは無関係に求まるので, Schonemann の解法の場合と同一の原理があてはまる。すなわち, B 。
に代わって A 。を標的とした場合の誤差行列 E(nx m次)を,
( 4 3 ) E=A ― 。 (dB ぶ + l n c ' )
とすると,このときの変換行列 T o (mxm 次)は, ( 1 1 ) 式 , ( 1 2 ) 式の固有ベクトルを用いて,
( 4 4 ) T i 。 =QP'
とあらわされ, Schonemann の解法と同様 ( 4 5 ) To= T i 。
という関係が維持される (Schonemann & C a r r o l l 1 9 7 1 , P 2 4 8 ) 。
また,座標原点の移動をつかさどるベクトル
Cは , ( 4 1 ) 式から明らかなように誤差行列 E の要素 とは関係しない。
一方,座標空間全体の短縮・拡張をつかさどるスカラー d は,この解法独得の留意点を内包し ている。すなわち, ( 4 3 ) 式に基づいて ( 3 6 ) 式以下と同様の解法を施したとき, ( 4 3 ) 式の J は ,
( 4 6 ) d= tr(t 。 'B 。 I l l 古 A 。 ) / t r (B 。 ' / P , ; B o ) とあらわされる。したがって,
( 4 7 ) d = t = d
( 4 8 ) tr(E'E)=t=tr(E'E)
という関係が導かれる。このとき, d と J の関係を, t r ( T o ' B 。 1 丑 A 。 ) =tr ( T o ' A 。 1 丑 B 。 ) となることを考慮して整理すると,
( 4 9 ) U=d/d=tr(B 。 1 丑 Bo)/ t r ( A o ' I I 古 Ao)
とあらわされる。したがって, ( 4 8 ) 式の両辺の誤差平方和の関係は,
( 5 0 ) t r (E'E) = utr(E' 方 ) あるいは,
( 5 1 ) t r (E'E)tr(A 。
II I 古 Ao)=tr(E'E)tr(B 。
II I 古 Bo)
とあらわされる。また ( 4 9 ) 式から明らかなように,この両者の関係をあらわす
Uは , T 。
' Cおよ
び d のいずれとも独立に決定される。なお, Schonemann& C a r r o l l ( 1 9 7 1 , P 2 4 9 ) は,上記と
異なる論証手順をとって,この誤差平方和についての ( 5 0 ) 式および ( 5 1 ) 式の結論を導いている。
関西大学『社会学部紀要』第
18巻第
1号
3 • 適合度の評価測度
前節で示されたように, A , 。 B 。のいずれを標的とするかによって誤差平方和の値は異なったも のとなり,誤差平方和をそのまま適合の評価関数として用いることがむずかしくなる。そこで Schonemann & C a r r o l l は , 2 つの誤差平方和の関係を示した ( 5 0 ) 式の両辺に
U―らを乗じて,
( 5 2 ) い tr(E'E)= u ―½utr( 方 E)
とあらわし,さらに整理して適合の対称測度 ( as y m m e t r i c measure o f f i t ) e およびとを,
( 5 3 ) e =u-½tr(E'E)=uhr( 片 E)=e
と定義した。すなわち, B 。を標的とした場合の誤差行列 E について誤差平方和を求めたときは u姥乗じ, A 。を標的とした場合の誤差行列 k について誤差平方和を求めたときは u½ を乗じる ことによって調節し,測度の対称性を維持しようとしたのである。
しかし, L i n g o e s & Schonemann ( 1 9 7 4 ) が指摘するように,この測度 e は,標的のノルムに 依存する ( n o r m ‑ d e p e n d e n t ) 。すなわち, B 。を標的とした場合, A 。はスカラー d によって B 。の ノルムに調整されるので, ( 5 3 ) 式の e やその基礎となる ( 4 9 ) 式の
Uの値は,直接的には B 。のノル ムと関わることになり,このノルムの大小によって e の値が大きく変化し,その比較可能性が損 われるというのである。換言すれば, B 。を順次置き換えて数種類の標的に対して A 。の適合度を比 較しようとするとき,どのようなノルムをもつ解を Bo として採用するかによって e の値が大きく 変化していまうので, A 。がどの標的と最も良く適合するかの評価が不可能になってしまうという のである。そこで,彼らは,まず B 。のノルムを相殺した測度として,
( 5 4 ) g = tr(E'E)/tr(B 。 'B 。 )
を提案し,このノルムに対して不変 ( n o r m ‑ i n v a r i a n c e ) な測度によって先の比較可能性を保証し ようとした。しかし,彼ら自身が指摘するように,この測度はもはや対称ではない。すなわち,
新たに A 。を標的としたとき,その A 。のノルムを相殺した測度として,
( 5 5 ) ふ= tr(E'E)/tr(A 。 'A 。 )
が考えられるが,この 2 つの測度は,特殊なケースを除いて ( L i n g o e s & Schonemann 1 9 7 4 , P 4 2 6 ) ,
( 5 6 ) g = I = i
となり,一般に等しくはならない(測度に対称性がない)。
このような知見を総合して, L i n g o e s & Schonemann は , e の対称性と g のノルムに対する不 変性を合わせもつ測度,
( 5 7 ) h = tr(E'E)/tr(B 。]丑 B 。 )
を提案した。この ( 5 7 ) 式は B 。を標的とした場合の測度であるが,新たに A 。を標的とした場合の測 度 ,
( 5 8 ) ft= tr(E'E)/tr(A 。 , I I 古 A 。 )
を考えると,この 2 つの測度には以下のような関係がみられる。
まず, 2 つの誤差平方和は, ( 4 1 ) 式の関係を考慮して展開すると,
( 5 9 ) tr(E'E) = tr(B 。 , I l ‑ J ; B 。 ) ‑ { t r ( 7 1 。 'A 。 ' I l ‑ h B o ) } 2 / t r ( A 。 ' I I 古 A 。 ) ( 6 0 ) tr(E'E) =tr(A 。 ' I I 古 Ao)‑{t r ( T o ' B 。 , I I 古 A 。 ) } 2 / t r ( B o ' I I 古 B o ) となる。ついで,上記の ( 5 7 ) 式 , ( 5 8 ) 式にこの関係を代入して整理すると,
( 6 1 ) h=l‑{tr(71 。 :A 。 , I I カ B o ) } 2 / t r ( A 。 , I I ゎ Ao)tr(B 。 1丑Bo) ( 6 2 ) h= 1 ‑{tr(To'B 。 , I I 古 Ao)}2/tr(A 。 : I I 古 Ao)tr(B 。 , I I 古 B 。 )
とあらわされることがわかる。ここで, T 。 = T i 。'に留意すれば, t r ( 7 1 。 'A 。 : n 古 Bo)=tr(T. 。 'B 。 , I I ヵ
Ao) から,容易に,
( 6 3 ) h = h
となることがわかり,まず評価測度の対称性が保証される。
また, Bo を標的とした場合の ( 6 1 ) 式の右辺第二項が ( 3 9 ) 式の d をさらに t r( B o ' I 1 古 B 。)で規準 化し, A 。を標的とした場合の ( 6 2 ) 式の右辺第二項が ( 4 6 ) 式の J をさらに t r (A 。 ' I 1 如知)で規準化 していることに注目すると,この測度が標的のノルムに対する不変性を有することがわかる。す なわち, ( 6 1 ) 式を例にとれば,標的 Bo の平均偏差行列と直交回転後の A 。の平均偏差行列の内積の 跡和によって表現された共分散を, A 。の平均偏差行列同士の内積の跡和によって表現された分散 と , B 。の平均偏差行列同士の内積の跡和によって表現された分散によって規準化し,標的のノル ムに影響されない測度を定義しているのである。さらに,この ( 6 1 ) 式の右辺第二項が規準化され ていることから,
( 6 4 ) O~h~l
となることは明らかである。すなわち, ( 6 1 ) 式と ( 6 4 ) 式から,この評価測度は, 0 に近づくほど 適合度が高く, 1 に近づくほど適合度が低い。 L i n g o e s & Schonemann は,この ( 6 1 ) 式が,右辺 第二項を相関係数の平方 ( r りと考えたときの離間係数 ( c o e f f i c i e n to f a l i e n a t i o n ; 1 ‑ r 2 ) の類似 ( a n a l o g u e ) 測度であると指摘した。ただし,ここで留意すべきことは,ここでの対称性 とは,評価の測度の対称性であって,最小二乗解の誤差平方和そのものの対称性を意味するもの でないことは言うまでもない。なお,本節の論証過程では,新たに ( 5 5 ) 式 , ( 5 8 ) 式 , ( 6 0 ) 式 , ( 6 2 ) 式を導入し, L i n g o e s& Schonemann の原典とは幾分異なる論証過程をとった。原典の論証につ いては L i n g o e s & Schonemann ( 1 9 7 4 , P 4 2 6 , P 4 2 7 ) を参照していただきたい。
4. 単純構造への回転
因子分析法は,主として心理学者によって培われ,実質科学的研究を配慮した独得の発展過程 を示してきた。その 1 つが.心理学的解釈を容易にする目的で開発されてきた所謂「単純構造の 原理 ( p r i n c i p l eo f s i m p l e s t r u c t u r e ) 」による因子軸の回転技法である。前記の解法過程の検討 では単純ユークリッドモデルに基づく分析方法に限るという条件以外は,特に分析法を限定せず,
広く多変量解析全般を対象とした解法手順を示したが,本節では,本論文の主旨である確認的因
関西大学『社会学部紀要』第
18巻第
1号
子分析システムの構成を念頭において検討を進める。すなわち,プロクラステス問題における構 造確認の基準としての標的行列 B 。を直交因子分析解と考え,これに変換の対象となる単純ユーク
リッドモデルに基づく任意の直交多変量解析解 A 。を最小二乗近似する問題に限定した上で,
Schonemann & C a r r o l l の解法をわれわれの確認システムの中に位置づけようと考えたのであ る。また,他の解法に比して,解釈を容易にするための回転技法を整備した因子分析の結果を基 準解とすることは,実質科学的にも有効な方策と考えられる。この方法の提唱者でもある Schonemann & C a r r o l l は,非計最多次元尺度法と因子分析の両解を比較する際に,実際の使用に おいては,因子分析解,とりわけ単純構造解を標的とする方が一般に好まれることを指摘してい
る。また C a r r o l l ( 1 9 6 9 ) は , この実証研究を行っている。
さて,単純構造への具体的な回転技法としては,因子軸間相関の固定を前提とする確認システ ムの構想をふまえたわれわれの一連の論文の手続きと同様に,演繹基準 ( d e d u c t i v ec r i t e r i o n ) と 帰納基準 ( i n d u c t i v ec r i t e r i o n ) の 2 つの基準に基づく回転法をとりあげることとした。また,単 純構造への回転技法は,周知のとおり多数提案されているが,本論文では B 。を主因子解と考え,
直交回転法として Varimax 法,これに続く斜交回転法として Promax 法を採用することにした。
〔 1 〕 演繹基準による回転
まず演繹基準では, Schonemann& C a r r o l l の解法が 2 群間解法であることから, Schonemann の解法の場合と同様な手順,すなわち因子分析解 B 。を単純構造に導く各変換行列をそのままプロ
クラステス変換後の行列 j j 。に適用する手順がとられる。換言すれば, Bo に関する Varimax 変換行 列を TvB(mxm 次 ) , Promax 因子軸変換行列を TfB(mxm 次)とすると,各斜交因子パタン BfP (n x m 次 ) , i i f P(n
Xm 次)は,
( 6 5 ) Bfp= B 。 TvB(Tfs) 一 1
( 6 6 ) j j f p = j j 。 TvB(Tfs) 一 1=(dA 。 T 。+ lnc) TvB(TfB) 一 1
とあらわされる。この方法は,標的の斜交単純構造解の因子間相関 C1B=TfB,TfB を絶対的な演繹 的枠組みとして位置づけることによって,確認システムにおける因子間相関の固定の立場をはっ
きりと明示しているが,一般に j j f p は厳密な意味での単純構造とはならない。
〔 2 〕 帰納基準による回転
一方,帰納基準では, 2つの直交解析解から成る超行列 B 。(2 n x m 次)を,
c e 1 ) B。 ~J ‑ { ‑ ‑ ‑ ‑ ‑ ] m
と定義し,この超行列に Varimax 法 , Promax 法を適用し,超行列全体としての単純構造解を求め
る方法がとられる。すなわち,このときの Varimax 変換行列をれ (mxm 次 ) , Promax 変換行列
を Tf(mxm 次)とすると,超行列の因子パタン行列 i J f P(2nx m 次)は,
( 6 8 ) Jjfp= i J 。 t v <t ; ) 一
1とあらわされる。この方法は,超行列を構成する 2 つの解を同一の因子間相関の枠組みの中に位 置づけ,かつ超行列全体としての単純構造解を導くが,瓦。を構成する A 。が他の集団の解や異なる 多変量解析解と置き換わるたびに,因子間相関が多少変化してしまうことになる。
この 2 つの方法のいずれを選択するかは,主としてそれぞれの実質科学者の主体的な研究意図 に依存するものであり,いずれの方法が最善であるかを論ずることは妥当ではない。しかし,ぃ ずれの方法で直交回転あるいは斜交回転するにしても, 2 群の各変量ベクトルの最小二乗法的位 置づけに変化がないことは明らかであり(辻岡・柴田 1 9 8 3 ) , ここでも単純構造への回転原理は,
プロクラステス回転による最大近似の原理(柴田 1 9 8 5 ) と独立に機能し,確認システムの基本 的な性質が維持される。
5 • 総合評価システム
プロクラステス変換につづいて 2 つの解の適合度(一致度)を測定・評価する指標については,
柴田・辻岡 ( 1 9 8 4 ) において詳述した。しかし,本論文でとりあげた Schonemann & C a r r o l l の 方法では,先に検討したとおり,誤差平方和の取り扱いに留意しなければならない。すなわち,
これまでの因子分析解相互の比較の枠を超えた配慮が必要となるのである。具体的には標的の相 互入れ換えに対して対称かつ標的のノルムに影響されない ( 5 7 ) 式の h あるいは ( 5 8 ) 式の k を用い るのが最適であろう。
また,標的を因子分析解 B 。に限定して考える確認システムのもとでは,誤差平方和の測度とし て h を用い,さらに Schonemann の解法と同様に,一致性係数や対応変量ベクトル頂点間のユーク リッド距離および対応変量ベクトル間の突角度などの適合度あるいは因子的不変性を測定する指 標を加えて総合的に評価するのが適切であろう。
[ 結果と解釈 ]
1 • 分析資料と解法の選択
上記の方法論の実証的数値例として,高校生男子から成る A 群 ( 1 0 8 名)および B 群 ( 2 4 4 名)の Y G 性格検査資料の分析結果をとりあげた。
分析法としては,方法において述べた構想に基づいて,まず B 群の資料に因子分析法(主因子 法)を適用し,この結果を基準標的解とした。なお,因子分析のコンピュータ・プログラムは,
東村 ( 1 9 7 4 ) の KANDAI‑FACPAC を用い,因子数は S c r e e Graph による検視の結果, 7 因子 と決定した。また,共通性は,繰返し推定法によって収束した推定値を用いた。
また A 群の資料には,計量多次元尺度法のうち,単純ユークリッドモデルに基づく ADDSCAL
関西大学 r 社会学部紀要』第 1 8 巻第 1 号
(Torgerson 1 9 5 2 , Messi<;k & Abelson 1 9 5 6 , 柳井・高根 1 9 7 7 , Saito 1 9 7 8 ) を適用し,こ の出発行列の要素となる類似性の測度としてはパターンの類似性(高根 1 9 8 0 , P 2 5 ) を用いた。
これは, 2 つの尺度得点を X, y であらわすとき,両者の非類似性 0x y を , ( 6 9 ) Oxy={ L ! (X;-Y;)2}½
i=l