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〈判例研究〉

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(1)

〈判例研究〉

薬物犯罪の隷助犯から「国際的な協力の下に規制薬物に 係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬 及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律

J11

1

項,および

13

1

項により,没収・追徴できる薬物犯 罪収益等の範囲

最 (

3

小)判平成

20

4

22

平成

19

年(あ)第

1055

号 国際的な協力の下に規制薬物に係る不 正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取 締法等の特例等に関する法律違反訴助被告事件

刑集

62

5

1534

大 野 正 博

【事実の概要】

被告人は.構成員を見張り役.売り子.売り上げの管理役等に役割分 担させ.昼夜

2

交代・

24

時間体制で覚せい剤等の密売をしていた組織 において.長期にわたり他の構成員に指示したり.売上金を管理・報告 するなど.夜の部の責任者として関与していたのであるが,本件は.正 犯者

S.

および

O

が共謀のうえ.営利の目的で,みだりに,平成

18

3

8

日から同月

27

日までの問.大阪市西成区内の路上ほか

1

ヵ所に おいて.前後

3

聞にわたり

. M

ほか

2

名に対し.覚せい剤結品合計

0.5 43

グラム,党せい剤.および覚せい剤混合結品 o .

174

グラムを代金合 計

3

5.000

円で譲り渡すとともに.薬物犯罪を犯す意思をもって.平 成

18

1

23

日から同年

5

10

日までの間.多数回にわたり.岡市 内において.多数人に対し覚せい剤様の結晶を覚せい剤として有償で

朝日法学論集第三十七号

(2)

薬物犯罪の制助犯から没収・追徴できる薬物犯罪収益苛;の範聞

譲り渡し.もって覚せい剤を譲り渡す行為と薬物その他の物品を規制薬 物として譲り渡す行為を併せてすることを業とした際.その情を知りな がら

.M

らに対し.覚せい剤原料.および覚せい剤の混合結品を譲り渡 したほか.平成

18

1

23

日から同年

5

10

日までの問.多数回に わたり.岡市内において.多数人に対し党せい剤様の結品を覚せい斉

JI

として.

S.

および

O

に代わって手渡しして代金を受領するなどしもっ て

S.

および

O

の犯行を容易にさせて.これを柑助したというものであ る 。

1

審(大阪地判平成

18

12

27

日公刊物未搭載)は. r 国際的な

協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るため の麻薬及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律

J

の定める没収・追 徴の趣旨からすれば. r 同法

13

1

項所定の『犯人』とは.常助犯を含 めた共犯者を含むと解.すべきであり,被告人は正犯の薬物犯罪収益から 報酬を受け取っているのであるから.被告人から薬物犯罪収益全額につ いて没収・追徴することは何ら不当ではない

J

と し 被 告 人 に 懲 役

4

6

月.および罰金

300

万円.

64

5.000

円の没収.

685

5.000

円 の追徴を言い渡した。

被告人側は.量刑不当を理由に控訴したが.控訴審(大阪高判平成

19

5

9

日判タ

1238

124

頁)は.職権判断として.第

l

審判決を 破棄し「麻薬特例法の没収・追徴は.刑法

19

l

3

号・

4

号の犯罪 取得物件・その対価物件の没収とそれらに係る同法

19

条の

2

の追徴 の特則であり.麻薬特例法

1

条が定める同法の趣旨にも照らせば.薬物 犯罪により犯人が得た薬物犯罪収益等をはく奪するものと解すべきで あって. (別に定めがない限り)薬物犯罪収益等を得ていない者からこ れを没収・追徴することはできないというべきである。そうすると.部 助犯が得た薬物犯罪収益等については.これを部助犯から没収・追徴す ることができ. したがって,その限度で追徴を科される『犯人

J

には帯 助犯も含まれることになるが.補助犯が得ていない薬物犯罪収益等につ

82 ) 

(3)

いては.これを帯助犯から没収・追徴することはできないと解される」

とし.被告人に懲役

4

6

月.罰金

300

万円.

217

7.000

円の追徴(被 告人が常助行為の報酬として得た額)を言い渡した。

これに対し検察官側は. I 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正 行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の 特例等に関する法律 J

11

l

項.

13

l

項の没収・追徴に関する原判 決の判断が.名古屋高裁金沢支判平成

6

6

21

日.大阪高判平成

9

年 3 月 2 6 日.および東京高判平成

17

年 6 月 3 日に反するとともに.法 令の解釈適用に誤りがあって.これを破棄しなければ著しく正義に反す るとして.上告した。

{判旨]

「原判決は.麻薬特例法の没収・追徴について.薬物犯罪収益等を得 ていない者からこれを没収・追徴することはできないとの解釈を示した 上.本件薬物の売上金である薬物犯罪収益は.正犯が符.たものであり常 助犯である被告人が得たものではないとして.これを被告人から追徴せ ず.被告人が帯助行為の報酬として得た金銭の限度で追徴を認めた。こ の判断は.薬物犯罪収益の具体的な分配等にかかわらず部助犯からも正 犯と同様に薬物犯罪収益全額について没収・追徴することを認めた所論 引用の大阪高等裁判所及び東京高等裁判所の各判例と相反するというべ きである(なお.所論引用の名古屋高等裁判所金沢支部の判決は.共同 正犯たる被告人からの追徴に際して判断を示したもので.事案を異に し本件に適切でない)。しかしながら,麻薬特例法

11

1

項 (

2

3

項 ) ,

13

1

項は.その文理及び趣旨に照らし.薬物犯罪の犯罪行為に

より得られた財産等である薬物犯罪収益等をこれを得た者から没収・追 徴することを定めた規定であると解される。これを制助犯についてみる と.その犯罪行為は.正犯の犯罪行為を都助する行為であるから.薬物 犯罪の正犯(共同正犯を含む。)がその正犯としての犯罪行為により薬

朝日法学論集第三十七サ

(4)

薬物犯罪の制助犯から没収・追徴できる薬物犯罪収益等の範聞

物犯罪収縫等を得たとしても,常助犯は.これを容易にしたというにと どまり,自らがその薬物犯罪収益等を得たということはできず,耕助し たことのみを理由に常助犯からその薬物犯罪収益等を正犯と同様に没 収・追徴することはできないと解される。そして,上記各条文の解釈に よれば.脅す助犯から没収・追徴できるのは.相助犯が薬物犯罪の帯助行 為により得た財産等に限られると解するのが相当である

o

したがって.

これと異なる上掲大阪高等裁判所及び東京高等裁判所の各判例は,いず れもこれを変更し原判決は.その判断が相当なものとして.これを維 持すべきである。

J

[研究]

1 .   r 薬物乱用

(Drug Abuse) J

は,消費行為により.乱用者に「薬物 依存

(DrugDependence) J

を発症させ.場合によっては「薬物中毒

(Drug Intoxication) 

J をも惹き起こすため.個人の健康に対する影響は極めて 大きいといえるが.さらにこれが自傷他害行為を生じさせたり.あるい は薬物入手のために資金を獲得するために財産犯を行うなど

2

次的犯罪 にも及ぶ可能性があるため.社会に対しても.その与える影響は決して 小さいものとはいえない。

そこで,これを撲滅するため.

1988

12

20

日,ウィーンの国連 麻薬委員会条約採択全権会議において. r 麻薬及び向精神薬の不正取引 の防止に閑する国際連合条約

(UnitedNations Convention Against 11 licit  Traffic in  Narcotic Drugs and Psychotropic Substances) J

が採択

された。当該条約においては,①麻薬等の不正取引に由来する財産の隠 匿行為等の処罰,②不正取引等に由来する収議の没収.③コントロール ド・デリヴァリー(c

ontrolled delivery)

の手続規定の新設,④国外犯 処罰規定の新設.⑤麻薬等の不正な製造に用いられる化学物質の監視.

または規制措置等が掲げられている。また.

1989

7

16

日パリにお

ける「第

15

回経済首脳会議

(EconomicSummi

t )   J として開催された.

(5)

国際的に問題となっている 麻薬問題に対処すべく.銀行制度と金融機関を資金洗浄

(moneylaunder ing)

に利用することを防止するため. r 金融活動グループ

(Financial Action Task Force) 

J が設置され.また

1990

7

11

日にヒュースト

ンで開催された「第

16

回経済首脳会議

J.

いわゆる「ヒューストン・サ いわゆる「アルシュ・サミット

J

において.

ミット」においては,同グループが作成した報告書;に基づく報告がなさ れた。わが国も.

1989

12

19

日「麻薬及び向精神薬の不正取引の 防止に関する国際連合条約」に署名しその批准に必要な園内担保法を 整備することとなり.

1991 

年 1 0月 5 日「麻薬及び向精神薬取締法の一 部を改正する法律

J.

ならびに「国際的な協力の下に規制薬物に係る不 正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等 の特例に関する法律」が公布され.

1992

7

1

日に施行されている。

上記 2 法は.いずれも麻薬 4 法では対処が困難なものを「薬物犯罪対 策

J

の観点から一括して規定されたものであり.その特徴の

1

つとして 不法収益の徹底した没収・追徴とそのための保全手続・国際共助手続の 制定が挙げられる。

朝日法学論集第三十七号

国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止 を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律が制定され る以前は.薬物取引における収益は.刑法における没収・追徴に関する 規定で対応せざるを得なかった。刑法における没収・追徴に関する規定 であるが.刑法

19

1

項は.任意的(裁量的)没収の対象物として. r

罪行為を組成した物

J

(1 号・犯罪組成物件), r 犯罪行為の用に供し.

又は供しようとした物

J(2

号・犯罪供用物件). r 犯罪行為によって生

じ.若しくはこれによって得た物又は犯罪行為の報酬として得た物 J(3 号・犯罪生成物件・犯罪取得物件・犯罪報酬物件). r 前号に掲げる物の

対価として得た物

J(4

号・対価物件)を.また刑法

19

2

項は没収の

対人的範聞を規定している。さらに刑法

19

条の

2

は.没収不能な場合

不正な利益を犯罪者に残さないために.その価格を追徴することが

(6)

薬物犯罪の制助犯から没収・追徴できる薬物犯

m!

収益等の範聞

可能であることを規定し刑法

20

条は.没収を科し得ない犯罪につい て規定している。没収とは.犯罪に関連する一定の物について.その所 有権を剥奪して国庫に帰属させる処分であることから,有体物に限ら れる。また,追徴とは.没収の換刑処分であることから.追徴の対象は.

原則として.犯行当時に没収が可能であった物件に限られるため,原則 として,没収対象についての要件が妥当すると考えられる。

しかし薬物犯罪に対し有効にこれを抑止するためには.犯罪から 生じる不正な収益を保持させないことが重要であるため.国際的な協力 の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻 薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律においては.薬物犯罪等に おける不法収益等の有体物ではない利益まで範囲を拡大し必要的没 収・追徴を可能とした。但し.当該必要的没収・追徴に関する規定は.

刑法における任意的没収・追徴に関する規定と同様に.薬物犯罪の犯罪 行為によって得られた財産等が,犯人以外の者に帰属しない場合に限 り,これを没収することが認められるとしこれを言い渡すべき対象を 特定せず.また没収することが不可能な場合には.その価格を犯人から 追徴することが可能であると規定するのみであって.没収・追徴すべき 犯人,ならびに犯罪収益の範囲については明示されていなし」そのため.

従来,下級審においては.制助犯から没収・追徴をなし得る薬物犯罪収 益の範囲につき.①脅す助犯から正犯の得た薬物犯罪収益全額について没 収しこれができない場合には.追徴すべきであるとする判例と②常助 犯から正犯の得た薬物犯罪収益全額については.没収・追徴することは 不可能であると判例が対立する状態にあった。

①として.被告人が他の

2

名と共謀して覚せい剤の有償譲渡を行った

ものの.他の共同正犯者の口座に振り込まれた譲渡代金相当額の現存が

確認できなかった事案(名古屋高裁金沢支判平成

6

6

21日)

,被告

人が密売人を貿受人と引き合わせ,覚せい剤および代金の授受現場に同

席して覚せい剤等の薬物の営利目的譲渡行為を常助した事案(大阪高判

(7)

平成 9年 3 月 2 6 日). ミュージックバーを経営する被告人が.応内にお いて密売人が麻薬等を譲り渡すことを業とする犯行を行うに際し.同庖 従業員に出入口での見張りを指示するとともに.麻薬等の譲渡を黙認し て同腐を譲渡場所として提供し犯行を容易にさせて部助した事案(東 京高判平成

17

6

月3 日).および本件第

1

審判決(大阪地判平成

18

12

27

日)が挙げられ.また②として. ミュージックバーの応内で 氏名不詳の多数者に対して

MDMA

様の錠剤を麻薬として有償で譲り渡 して.規制薬物等を譲り渡すことを業とする犯行を行うに際して.被告 人が岡応の売上を伸ばしたいとの思惑から全く独立した立場から同胞の 経営者として一方的にその犯行を常助していた事案(東京地判平成

16

8

27

日).および本件の控訴審(大阪高判平成

19

5

9

日)が 挙げられる。

このように高裁での判断が分かれるなか.本判決は.②の立場を採用 し謝助犯から正犯の得た薬物犯罪収益全額について没収・追徴するこ とは認められないことを最高裁として,初めて示したものであり.その 意義は大きいといえよう

o

以下.判決の内容につき.検討を加えていく

o

2.

本判決は.国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する 行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法 律

11

1

項 (

2

3

項).

13

l

項は. r 薬物犯罪の犯罪行為により得 られた財産等である薬物犯罪収益等をこれを得た者から没収・追徴する ことを定めた規定であると解される

J

とするものの.その根拠について は. r 文理及び趣旨に照らし」としか述べていない。そこで,最高裁が 指摘する ( a ) r 文理

J.

および ( b ) r 趣旨」の意味するところについて考え てみた L

。、

( 1 )   まず. ( a )   r 文理

J

についてであるが.国際的な協力の下に規制薬物 に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬 取締法等の特例に関する法律

13

1

項は. r

11

条第

l

項の規定によ

朝日法学論集第三十七号

(8)

薬物犯罪の帯助犯から没収・追徴できる薬物犯罪収益等の範囲

り没収すべき財産を没収することができないとき.又は同条第

2

項の規 定によりこれを没収しないときは.その価額を犯人から追徴する」こと を定めている。ここにいう「第

11

条第

l

項の規定により没収すべき財 産

J

とは.本件事案においては. r 薬物犯罪収益(第

2

条第

2

項第

6

又は第

7

号に掲げる罪に係るものを除く。

)J

(同法

11

1

l

号)を指 す。また. r 薬物犯罪収益」とは.国際的な協力の下に規制薬物に係る 不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法 等の特例に関する法律 2 条 3 項によると. r 薬物犯罪の犯罪行為により 得た財産若しくは当該犯罪行為の報酬として得た財産」をいう。このよ うな条文の定義からすれば.その文理解釈として.国際的な協力の下に 規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び 向精神楽取締法等の特例に閲する法律における没収・追徴が.薬物犯罪 の犯罪行為により得られた財産等である薬物犯罪収益等をこれを得た者 から.その限りにおいて科すべきものと解することは.極めて自然なも のであるといえよう

o

(2) 

次に. ( b )   r 趣旨」についてであるが.没収・追徴の性質につき. ( イ )

「不正利益の剥奪(刑法

19

1

3

号における犯罪生成物件・犯罪取 得物件・犯罪報酬物件.同条項

4

号における対価物件の没収.およびこ れに代わる同法

19

条の

2

の追徴 ) J を目的とする見解と. (ロ)関税法

118

2

項に代表されるように「不正の剥奪のほか.懲罰・威嚇

J

を目的と する見解が考えられる。では.国際的な協力の下に規制薬物に係る不正 行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神楽取締法等の 特例に関する法律における没収・追徴は.どちらの場合と考えるのが妥 当であろうか。つまり. (イ)のように解するのであれば.不正利益を得た 者のみから,これを行うことが可能となり. (ロ)のように解するのであれ ば.不正利益を得ていない者に対しても.これをなすことが可能となり.

その範囲が異なることになる。

従来,実務においては.国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為

(9)

を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例 に関する法律につき. r 従前の薬物

4

法による必要的没収の規定を補完 するために立法されたものというべきであって.薬物犯罪による『不法 収益jだけではなく.それが変形.転換した f 不法収益に由来する財産

J

をも必要的没収の対象とし.更に没収ができない場合にはその価額を追 徴 す る こ と と し も っ て f 不法収益jの循環を断ち切るとともに. r

法収益j を全面的にはく奪することにより.経済面から薬物犯罪を禁圧 しようとするものと解される

J

と 最 (

1

小)決平成

7

12

5

日が示 したことから. r 経済面から薬物犯罪を禁圧

J

することが.国際的な協 力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための 麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律における没収・追徴の趣 旨であると解してきた

D

このように解する背景としては.おそらく.関 税法においてさえ耕助犯は正犯と同様に没収・追徴の責任を科されるの であるから.関税法違反を禁圧する以上に薬物犯罪を禁圧する必要性は 高い以上.国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為 等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律に おいて.正犯と同様に常助犯から没収・追徴することは当然であるとの 考え方が存在するのであろう。そのため.上告趣意に掲げられた名古屋 高裁金沢支判平成

6

6

21

日.大阪高判平成

9

3

26

日.および 東京高判平成

17

6

3

日のいずれも.常助犯から正犯の得た薬物犯 罪収益全額について.没収・追徴することを認めているとする

o

しかし本件控訴審が判示するように.上掲東京高判平成

17

6

月 3日は. r 単に

f

麻薬特例法制定の経緯.同法の定める没収・追徴の目 的.趣旨j と判示するのみであり.それが何を意味するのかは不明で」

あり.また.上掲最(

1

小)決平成

7

12

5

日も含め.国際的な協 力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための 麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律における没収・追徴の趣 旨は. r 犯人からの薬物犯罪収益等の徹底的なはく奪.あるいは全面的

朝日法学論集第三十七号

(10)

薬物犯罪の制助犯から没収・追般できる薬物犯

m!

収益等の純附

なはく奪であると解するのが自然であり.犯人からの利益のはく奪にと どまらず.これを超えるものであると解すべき根拠は見当たらない

J

と 解すべきが.むしろ自然であろう

o

すなわち.本件控訴審判決は.続けて国際的な協力の下に規制薬物に 係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取 締法等の特例に関する法律における没収・追徴の趣旨と関税法における 没収・追徴の趣旨の相違について検討しているのであるが.後者は. r 不 正な利益のはく奪を超えるものであることは.その規定内容自体に現れ ている」として,閑税法

118

l

項が規定する没収対象物が.犯罪組成 物件・犯罪供用物件であり.同条

2

項は,犯罪供用物件である船舶,ま たは航空機を除外しているものの.犯罪組成物件である犯罪貨物等の価 格の追徴を規定していることを指摘したうえで.判例が関税法の没収・

追徴において.正犯と部助犯とで没収・追徴の範囲に違いはないことの

根拠は.関税法が(ロ) r 不正の剥奪のほか.懲罰・威嚇

J

の性質にあると

解している。そして.国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助

長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関

する法律が.関税法と阿様の性質を有するかにつき. r 仮に.上記のよ

うな関税法の没収・追徴を薬物犯罪にそのまま当てはめるとすると.規

制薬物の所持,譲渡.譲受,輸入.輸出等の罪について.当該罪に係る

薬物を没収するだけでなく,没収不能の場合にはその薬物の価額を追徴

すべきことになる。しかしこのような薬物の価額の追徴は.各薬物法

(麻薬及び向精神薬取締法.覚せい剤取締法.大麻取締法.あへん法)

にも麻薬特例法にも何ら規定されていない(薬物の譲渡等により現実に

得た対価が薬物犯罪収益として追徴されることはもとより別論であ

る)。麻薬特例法が関税法のような懲罰的性質を有しないことは.この

ような規定内容の相違に照らして明らかである

jとし国際的な協力の

下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬

及び向精神薬取締法等の特例に関する法律は. r 薬物犯罪収益等隠匿罪

(11)

(同法

6

条)及び薬物犯罪収益等収受罪(同法

7

条)に係る薬物犯罪収 益等の没収・追徴を定めており(同法

11

l

3

号.

13

1

項).こ これらの薬物犯罪収 しかし

益等はその元になる薬物犯罪により犯人が得た利益なのであるから.そ の没収・追徴の趣旨はやはり犯人からの不正な利益のはく奪にほかなら れらは犯罪組成物件の没収・追徴である

D

ないと解される(なお.元の薬物犯罪により没収・追徴がなされている 場合に.薬物犯罪収主主等隠匿罪・同収受罪により重ねて没収・追徴する 上掲東京高判平成

17

年 6月 3日が.国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行 為等の防止を図るための麻薬及び向精神楽取締法等の特例に関する法律 の没収・追徴の趣旨は. r 不正の剥奪のほか.懲罰・威嚇

J

と解する点 ことができないことはいうまでもない

)J

とし

国際 的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図る ための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律は.組成物件・供

充分な根拠がないことを明らかにしている

D

つまり.

については.

用物件を対象とする没収・追徴を認めておらず

01

l

3

項.

2

3

‑‑5

項.

13

l

項・

2

1 J U. その趣旨は. ( イ ) r 不正利益の剥奪jで あるということになろう。また.犯罪取締り等の目的については.本来.

主刑の量刑において考慮すべきものであり.原則として.追徴の本質的 制約を超えて.これを適用すべきは妥当でないとの側面からも.

うに解釈すべきが妥当であると考えられる。

以上のように解するのであれば. r 文理及び趣旨」に照らして. r

このよ

朝日法学論集第三十七号

( 3 )  

物犯罪の犯罪行為により得られた財産等である薬物犯罪収益等をこれを 得た者から没収・追徴することを定めた規定であると解される

J

との判 断を示した本件判決は是認されよう

D

よって.没収・追徴の対象は.薬 物犯罪の犯罪行為によって得た財産に限るということになる

o

困際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長す このように.

る行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する

3. 

(12)

薬物犯罪の部助犯から没収・追徴できる薬物犯罪収益等の範聞

法律における没収・追徴の対象が. r 薬物犯罪の犯罪行為によって得た 財産等である薬物犯罪収益等」に限定されるのであれば.次に「犯罪行 為によって得た財産

J

の意義.ならびに補助犯に対し,正犯と同様に没 収・追徴を科すことが可能であるかが問題となる。

( 1 )   まず. r 犯罪行為によって得た財産

J

の意義についてであるが.国 際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図 るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律

13

1

項にお ける追徴対象の「犯人」が制助犯である場合,正犯の得た薬物犯罪収益 が.同法

11

l

l

号における「薬物犯罪収益

J.

すなわち同法

2

3

項における「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産

J

といえるかが問題と なる。換言するならば,国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を 助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に 関する法律

13

l

項における追徴対象の「犯人

J

のなかに,共同正犯 のほか,狭義の共犯も含まれるか.またその場合.没収に代わる追徴を 科す場合.その全額を共犯者全員に言い渡すことが可能であるか. とい

う問題である。

この点につき,上掲名古屋高裁金沢支判平成

6

6

21

日,大阪高 判平成

9

3

26

日,および東京高判平成

17

6

3

日は.ここでい う「犯人

J

には共同正犯だけでなく.狭義の共犯も含まれるとしており.

また刑法

19

2

項の「犯人

J

の意義についても,大審院以来,判例に おいて当該被告人のほか.共犯者もこれらに含むとされ.共同正犯.狭

(29) 却)

義の共犯.必要的共犯もこれに該当するとされていることから, 目的物 がこれらの共犯者中

1

人に帰属していれば,共犯者全員から没収するこ とが可能であり.また.国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を 助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に

│期する法律の制定経緯からも,薬物犯罪収益等の不法利益全額につい

て.薬物犯罪に関与した者が不法利益を収得し.あるいは,現にその利

援を取得したか否かに関わらず.すべての共犯を含む犯人全員から没

(13)

収・追徴するのが当然であるとの見解に依拠し.検察官上告趣意が構成 されている

o

これに対し.本判決は. r これを常助犯についてみると.その犯罪行 為は.正犯の犯罪行為を智助する行為であるから,薬物犯罪の正犯(共 同正犯を含む。)がその正犯としての犯罪行為により薬物犯罪収益等を 得たとしても.帯助犯は.これを容易にしたというにとどまり.自らが その薬物犯罪収益等を得たということはできず.都助したことのみを理 由に帯助犯からその薬物犯罪収益等を正犯と同様に没収・追徴すること はできない」との判断を示した。

( 2 )   この点を検討するにあたり.同様の利害状況にある問題として.賄 賂の必要的没収・追徴を定める刑法

197

条の

5

が挙げられ.近時,最高 裁として新たな判断を示しているため.これと対比しながら.その正当 性を検討する。最( 3 小)判平成 1 6 年 1 1月8 日は. r 収賄の共同正犯

者が共同して収受した賄賂については,これが現存する場合には.共犯 者各自に対しそれぞれ全部の没収を言い渡すことができるから.没収が 不能な場合の追徴も.それが没収の換刑処分であることに徴すれば.共 犯者ら各自に対し.それぞれ収受した賄賂の価額全部の追徴を命じるこ とができると解するのが相当であり,賄賂を共同収受した者の中に公務 員の身分を有しない者が含まれる場合であっても.異なる扱いをする理 由はない。もっとも.収受された賄賂を犯人等から必要的に没収.追徴 する趣旨は.収受された賄賂を犯人等から必要的に没収,追徴する趣旨 は.収賄犯人等に不正な利溢の保有を許さず.これをはく奪して国庫に 帰属させるという点にあるにあると解される。また.賄賂を収受した共 犯者ら各自からそれぞれその価額の全部を追徴することができるとして も.追徴が没収に代わる処分である以上,その全員に対し重複してその 全部につき執行することが許されるわけではなく.共犯者中の 1 人又は 数人について全部の執行が了すれば.他の者に対しては執行し得ないも のであることはもちろんである。これらの点に徴すると.収賄犯人等に

朝日法学論集第三十七号

(14)

薬物犯罪の制助犯から没収・追徴できる薬物犯罪収益等の範聞

不正な利益の保有を許さないという要請が満たされる限りにおいては.

必要的追徴であるからといって.賄賂を共同収受した共犯者全員に対 しそれぞれその価額全部の追徴を常に命じなければならないものでは ないということができるのであり.裁判所は.共犯者らに追徴を命じる に当たって.賄賂による不正な利益の共犯者間における帰属.分配が明 らかである場合にその分配等の額に応じて各人に追徴を命じるなど,相 当と認められる場合には.裁量により.各人にそれぞれ一部の額の追徴 を命じ.あるいは一部の者にのみ追徴を科することも許されるものと解 するのが相当である

J

とした。

国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止 を図るための麻薬及び向精神楽取締法等の特例に関する法律における

「薬物犯罪の犯罪行為により得た財産

J

を当該判断に当て猷めるのであ れば.共同正犯者全員が共同して薬物犯罪行為を行い.当該行為に基づ いて薬物犯罪収益の全体を共同して重畳的に得たのであれば.共同正犯 者中 l 人がその犯罪行為によって得た薬物犯罪収益は.他の共同正犯者 全員が得たと解することが可能であるため.当該薬物犯罪収益全額をい ずれの共同正犯者からも,没収・追徴することが可能であるとの結論が 導き出される。しかしながら.上掲最 (3小)判平成 1 6 年 1 1月 8日の 射程範囲は.仮に選挙買収の罪における不正利益の追徴については及ぶ としても.国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為 等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律.

あるいは組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律には及 ばないと解すべきであり.また.そもそも正犯と狭義の共犯との関係に おいては.刑法

60

条の規定が適用されない以上.理論的に正犯と狭義 の共犯者が共同して重畳的に薬物の犯罪収益を得るとは考えにくいた め.常助犯から「薬物犯罪の犯罪行為により得られた財産

J

を没収・追 徴することは困難であろう。

このことは.法務省の立案関係者による文献によっても示されてい

(15)

o

すなわち. r r 犯人jから追徴するとあるのは,共犯を含む犯人全員 から追徴するとする趣旨であり.不法財産の権利を取得しなかった犯人 からも追徴することとなる

D

犯罪によって得た利益は.第一次的に形式 的に特定の犯人に帰属するとしても,分配等が予想されているもので あって.本来.一体的に評価されるべきものであるからである。……し かし帯助犯.教唆犯については.本法の追徴が没収に代わる追徴であ るので.結局これらの者について没収可能な範囲で追徴をすることにな ると考えられる

J

としており.正犯と帯助犯とでは没収・追徴の範囲が 異なるものであって.まず最初に没収の対象となるか否かが判断され.

その後.追徴の範囲が決められるのである。同様に.西浦検事も. r  (

正前の麻薬〕特例法

17

条の『犯人jには共同正犯だけでなく,輔助犯.

教唆犯も含まれることは.一般論としては正しいが.不法収益を得たと 評価できるか否か等を検討することなく.ただ.共犯関係があるとの一 事をもって,没収・追徴ができるということではないというべきであ る

J

とする

o

朝日法学論集第三十七号

控訴審判決も.法務省の立案関係者による文献につき. r 犯人」から 追徴するとあるのは.共犯を含む犯人全員から追徴するとする趣旨であ りという箇所と. r 不法財産の権利を取得しなかった犯人からも追徴す ることとなる」以下の部分は区別して考えるべきものであって. r 前者

は.そこにいう『共犯』には狭義の共犯が含まれると解されるが.あく

まで『犯人jの意義について述べたものであって.没収・追徴すべき薬

物犯罪収益等の範囲については特に触れたものではなく.後者は.共同

正犯を前提にして.個別具体的な利得の分配にかかわらず犯人全員から

全額を没収・追徴すべきであるという.一般に通用すると考えるべき解

釈……を述べたものと解すべきである(もっとも.共同正犯の場合に犯

人全員から全額を没収・追徴すべきなのは.特定の犯人から他の犯人へ

の利益の分配等が予想されているという点よりも.むしろ.犯罪行為そ

れ自体は共同正犯者の全員が共同して利益を得たと見ることができるも

(16)

薬物犯罪の輔助犯から没収・追徴できる薬物犯罪収益等の範囲

のであるから.没収・追徴の根拠事由が共同正犯者の全員について発生 しそれとは別問題である犯人相互の問での利益の分配等によって特定 の犯人が利益を得る結果になったとしても.上記没収・追徴の根拠事由 は消滅しないと見ることができる点に根拠を求めるべきである

)J

とし いている

o

(3) 

よって,常助犯が「薬物犯罪収益等の必要的没収・追徴を科される 者」に含まれると解すること自体には特に問題があるわけではなく.国 際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図 るための麻薬及び向精神楽取締法等の特例に│期する法律

13

l

項にお ける「犯人

J

が部助犯である場合.正犯の得た薬物犯罪収益を「薬物犯 罪の犯罪行為により得た財産

J

と看倣すことは事実上不可能であること から.帯助犯は正犯の得た薬物犯罪収益を得たと解することはできない のであり.そうであるならば本判決の示した判断は妥当であるといえよ う

o

現実問題として.常助犯が得る薬物犯罪収益とは.都助行為の報酬 として得た財産以外のものを想定することはほとんどなく.このように 解しても問題はないと考えられる。

4.

本判決は.従来の実務における国際的な協力の下に規制薬物に係る 不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法 等の特例に関する法律における没収・追徴の運用を変更するものであ る。最高裁が,都助犯に対しては.智助行為によって得られた財産.ま たは都助行為の報酬として得られた財産に限り.必要的没収・追徴の対 象になることを示したことから.今後.実務においては.従来にも増し て帯助犯の得た財産の立証に遺漏がないよう適切に処理をしていくこと が要求されよう

o

本件は.国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為 等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法等の特例に関する法律に おける没収・追徴が問題となったものであるが.必要的没収・追徴が定

96 ) 

(17)

さらにこの点に関する 今後.

められた犯罪は他にも多く存在するため,

判例の集積が待たれるところである。

また.従来にも増して.合衆岡の没収制度についても.詳細に検討し 示唆する点を見出すことが重要になってこよう。なぜなら.合衆国にお いては.組織犯罪の目的である「経済的利益の獲得

J

に対し わが国以

上に没収制度を活用し犯罪のインセンティプを無くしているからであ まったく批判が存在しないわけでもないた これについては.

る。但し.

め.犯罪から得た財産を刑事没収の対象とする

R1CO

(Racketeer1n fluenced and Corrupt Organization Act)

の没収規定や

CCE(Continu Enterprise)

犯罪の没収規定等に関する判例等について も.慎重に分析しなければならないことはいうまでもない。

Criminal  mg 

朝日法学論集第三十七号

「薬物乱用

J.

r 薬物依存

J.

r 薬物中毒」の違いに閲し.和田清 f 依存症薬 物と乱用・依存・中毒一時代の狭間を見つめて

‑J

(星和性房・

2000

年)

2

頁 以下.大野正博「公立学校内における薬物探索活動の必要性と児童・生徒の 人権保障一合衆国における近時の判例の状況を踏まえてー J 朝日大学法学部 創立

20

周年記念論文集編集委日会編 I 朝日大学法学部創立

20

周年記念論文 集

J

(成文堂・

2007

年)

201 11~; 参照のこと。

登里輝男「麻薬犯罪取締りのための国連麻薬新条約 f 団連麻薬及び向精 神薬の不正取引防止条約

J(I)‑(5

・完

)J

評論

42

4

(1989

年)

40

頁以 下.同

42

5

0989

年)

142

頁以下.同

42

6

(1989

年)

91

頁以下.

42

7l

J ‑

(1989

年)

110

百以下.同

42

8

号(1

989

年)

122

頁 以 下 . 平 良木登規男「没収についてー麻薬新条約.とくに利益没収理解のためにー」

法学研究

6312

号(1

990

年)

283

頁以下.森下忠「同述の麻薬新条約と没 収

J

曹時

42

3

0990

年)

1

頁以下等参

mt

) ‑ ‑ ‑ ‑ ‑

︐ ︐

. ︑

(3 ) 

麻薬

4

法とは.

r

大麻取締法

J

(昭和

23

年法律第

124

号 ) ,

r

覚せい剤取締 法

J

(昭和

26

年法律第

252

む ) , r 麻薬及び向精神薬取締法

J

(昭和

28

年法律 第

14

号).

r

あへん法

J

(附和

29

年法律第

71

号)を指す。

丸山雅夫「いわゆる f 麻薬特例法j について

J

(4 ) 

この点の詳細につき.

1411

311

以下参照。

岡藤重光緬『注釈刑法

(1

リ(有斐悶・

19

臼年)

131

頁〔大塚仁).大塚仁

( 5) 

(18)

薬物犯罪の剖助犯から没収・追徴できる薬物犯罪収益等の純問

『注解刑法〔哨補第

2

JJ

(背林

lt

f 院・

1977

年)

73

頁.岩井宜子

ir

支収・追

J

西原存夫=宮沢 i 告ー=阿部純二=板倉宏=大谷前=芝原邦爾嗣 f 判 例 刑 法研究(l←刑法の基礎.構成要件.刑罰

J

(有斐 l 剖 ・

1980

年)

275

頁.

111

本部 之「刑法における没収・追徴 J 町野朔=林幹人編 f 現代社会における没収・

追徴

J

(信山幸

:1

1996

年)

f t   . 

n .   1 1 1 口厚「わが恒│における没収・追徴制 度の現状」同

23

頁.林美月子「没収・追徴と均衡原則一麻薬特例法を

111.(.

、 と してー」同

44

頁.清水一成「麻薬特例法における没収・追徴

J

I 司

12011

121

頁.前田雅英編集代表『条解刑法〔第

2

JJ

(弘文!な・

2007

年)

34

頁.浅間 和茂『刑法総論〔補正版]j(成文堂・

2007

年)

504

:n以下.山中敬一 f 刑 法 総論〔第

2

JJ(

成文堂・

2008

年)

1033

頁.大塚仁『刑法概説総論〔第

41

JJ

(有斐閣・

2008

年)

528

頁・

529

頁.井田良 f 講 義 刑 法 学 ・ 総 論 J (有斐!剖・

2008

年)

555

頁等。なお.賄賂Uj!における没収・追徴(刑法

197

条の

5

)は.

賄賂とは.人の需要または欲望を光たすに足りるべき一切の利益であること から(大判明治

43

12

19

E I 刑 録

16

2239

n . 大 判 明 治

44

5JJ 19

刑 録

17

879rn.

無形の利益も合まれ.また無形の利益は.没収が不可能で あることから.その場合には.その価格を追徴されるとされ.これは刑法総 則の没収・迫償制度の修正であるとされる。刑法

19

条の

2

を刑法

197

条の

5

後 段 を パ ラ レ ル に 理 解 し 刑 法

19

条の 2 によっても.無形の財産的利雄を剥 奪することが可能であると解する余地があると指摘するものとして.古田1(j 紀「無形の財産的利益の剥奪 J 判タ

561

(1985

年)

56

頁 以 下 。 し か し こ のような理解は.立法論としては充分に考慮に値する見解であるものの.解 釈論としては無理があるように思われる(山口昭fI術協の没収・追償」松尾 治也=芝原邦爾編『内藤謙先生古稀祝賀・刑事法学の現代的課題 J (有斐問・

1994

年)

209 頁.拙内捷三「没収~I!と追徴」同 232 頁)。

(6 ) 

刑 法

197

条の

5

が.

r

そ の 全 部 又 は 一 部 を 没 収 す る こ と が で き な い と き は.その価税を追徴する

J

と 規 定 し 無 形 的 賄 賂 に つ い て は . 追 徴 を 科 す こ とが可能であるのは.刑法

19

条の 2 が緩和されているためである。

r

国際的な協力の下に規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を 図るための麻部及び向精神薬取締法等の特例に関する法律 J 1 条は.

r

薬物犯

罪による薬物犯罪収益等をはく奪すること等により.規制薬物に係る不正行

為が行われる主要な要因を国際的な協力の下に除去することの重要性にかん

がみ.並びに規制薬物に係る不正行為を助長する行為等の防止を図り.及び

これに関する I

l 際約束の適確な実施を確保する」ことを目的とする。同級に.

(19)

「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律 J 1条も.

r

組織的

な犯罪が平総かつ健全な社会生活を著しく告し及び犯 ~I! による収益がこの

舶の犯罪を助長するとともに.これを!日いた事業活動への干渉が健全な経済 活動に重大な忠影響を与えることにかんがみ.組織的に行われた殺人等の行 為 に 対 す る 処 刑 を 強 化 し 犯 罪 に よ る 収 益 の 隠 匿 及 び 収 受 並 び に こ れ を

JUI.、

た法人等の事業経営の支配を日的とする行為を処罰するとともに.犯罪によ る収益に係る没収及び追徴の特例等について定めることを目的」とし.

13

条 以ドにおいて犯罪収益等の没収・追徴等につき.規定している。

(8 ) この点につき.野々!こ 1~lfJ r

麻薬新法における不法収益等の没収・追徴」

ジュリ

992-~} (1991

年)

84 

l " ' i 以下.ド

Jr

麻薬新法における没収・追徴制度の 慨要」ひろば

455

(1992

年)

251'(

以ド等参照。

(9 ) 名古屋向裁金沢支判平成 6 年 6 月 21 日判時 15 1O~j-158

頁 。

(0) 

大 阪 高 判 平 成

9

3

J J  

26 

I J 判時

1618

日 .

150

頁。本判決の解説・評釈と して.菊池

i;tir

麻薬特例法

17

l

項の追徴すべき f 犯人j には.都助犯とし て加担した者も合まれ.現に利益の分配を受けたか否かによって左右されな いとして.制助犯である被告人からも譲渡代金の価格合計額を追徴すべきで

あると判示した IJ~ 例」持公 53 巻 5 号 (}998 年) 90

頁以ド.高部道彦「麻薬 特例法による必要的追徴の対象となる『犯人jの範囲」研修

606

号(1

998~f~)

21

頁以ド等.参照のこと

O

( 1 1 )   東京尚判平成

17

6)J 3

日判時

1895

149

頁 。 ( 1

2) 

大阪地判平成

18

1227

日公刊物未設載。

(3) 

東京地判平成

16

8

27

日判時

1880

135

頁 。

(}4) 

大阪尚判平成

19

年 5JJ9 日判タ

1238-~.・ 124 頁。

(}5) 

本判決の解説・評釈として.三上正降

I1

司際的な協力の下に規制薬物に 係る不正行為を助長する行為等の防止を図るための麻薬及び向精神薬取締法 等の特例等に!則する法律

11

1

項 及 び

13

l

項により.部助犯から没収・

迫徹し得る薬物犯罪収益の絶問」法時

8012

(2008{I:) 96

頁以ド.

1

薬 物犯罪の郁助犯から f 国際的な協力のドに規制薬物に係る不正行為を助長す る行為等の防止を図るための麻薬及び向紺神薬取締法等の特例等に閲する法

WJ 11

1

r t i .   1 3 条

l

項により没収・追徴できる薬物犯罪収益等の範聞」同

80

13

(2008

年). J : : I 上宏「薬物犯 I J I ! の部助犯から迫慣すべき薬物犯罪収 益の範聞」研修

726

(2008

' . ド )

13

頁以ド.前田敦史「国際的な協力のドに 規制薬物に係る不正行為を助長する行為者;の防止を図るための薬物及び向精

朝日法学論集第三十七号

参照

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