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『見性成仏論﹄と﹃顕密問答鈔﹄の﹁禅門の人﹂の関係について古瀬珠水

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(1)

見 性 成 仏 論

﹄ と

﹃ 顕 密 問 答 鈔

﹄ の

﹁ 禅 門 の 人 ﹂ の 関 係 に つ い て 古

瀬 珠 水

仙石 山仏 教学 論集

第6 号︵ 平成 年︶ 23 Sengokuyama Journal

of Buddhist Studies Vol. VI, 2011

(2)

見 性 成 仏 論

﹄ と

﹃ 顕 密 問 答 鈔

﹄ の

﹁ 禅 門 の 人 ﹂ の 関 係 に つ い て

古 瀬 珠 水

はじ めに 金沢 文庫 所蔵

﹃見 性成 仏論

﹄は

︑同 じく 金沢 文庫 所蔵

﹃成 等正 覚論

﹄と 共に

﹁達 磨宗

﹂に よる もの と思 われ て きた

︒最 近の 研究 者の 中に は﹃ 見性 成仏 論﹄ を﹁ 本覚 思想()

﹂ま たは

︑﹃ 宗鏡 録﹄ の作 者の 延寿 の﹁ 一心 思想()

﹂と 結び つけ る人 もい る︒ しか し︑ いず れも

﹃見 性成 仏論

﹄の 全体 を詳 細に 読み 込み 考察 した 結果 では なく

︑﹃ 見性 成仏 論﹄ に書 かれ てい る一 部の 引用 され た文 言な どか ら結 論を 導い てい ると 思わ れる

︒ 筆者 の研 究に 依れ ば︑

﹃見 性成 仏論

﹄の 内容 は﹁ 教外 別伝

﹂で ある こと

︑﹃ 宗鏡 録﹄ の取 り扱 い方 が限 定的 であ るこ と︑ 筆者 が坐 禅を して いる こと など であ る︒ また

︑﹃ 見性 成仏 論﹄ の作 者が 述べ るこ とば が頼 瑜撰

﹃顕 密問 答鈔

﹄に 書か れて いる こと も判 った

︒本 稿で は︑ 頼瑜

﹃顕 密問 答鈔

﹄巻 下に 書か れて い る﹁ 禅門 の人

﹂の こと ばを 中心 に﹃ 見性 成仏 論﹄ の作 者と の関 係に つい て考 察す る︒

使

(3)

一︑

﹃顕 密問 答鈔

﹄の

﹁禅 門の 人﹂ のこ とば

『見 性成 仏論

﹄の 奥書 には

﹁永 仁五 年 月四 日﹂ の書 写年 時が 記さ れて いる が︑

﹃見 性成 仏論

﹄が いつ 誰に より 作成 され

︑ど んな 人々 に読 まれ たか とい うこ とな ど︑

﹃見 性成 仏論

﹄に まつ わる 具体 的な 情報 を筆 者は 得ら れな かっ た︒ しか し︑ 千葉 正氏 が﹁ 中世 真言 密教 の禅 宗観 袞道 元禅 にお ける 密教 研究 の必 要性 袞()

﹂の 中 で﹃ 顕密 問答 鈔﹄ 巻下 の冒 頭に

﹃見 性成 仏論

﹄か らの 引用 があ るこ とを 指摘 した

︒つ まり

﹃顕 密問 答鈔

﹄に は︑

「故 宗鏡 中

眞言 法花 華嚴 三論 法相 所立 教

皆 名

染 淨對 治

之教

︒﹂

︵故 に宗 鏡の 中に 具に 眞 言法 花華 嚴三 論法 相所 立の 教門 を列 て︑ 皆染 淨對 治の 教と 名く()

︒︶ と記 され てい る︒ これ とほ ぼ同 文が

﹃見 性成 仏論

﹄に ある

「宗 鏡に は︑ 三論 法相 華嚴 等の 宗を ば染

□對 治の 教え と云 へり()

︒﹂

『見 性成 仏論

﹄が 一文 でも 他の 史料 に引 用さ れて いな いか 探し てい た筆 者に とっ て︑ 千葉 氏の 指摘 は誠 に有 難 いも ので あっ た︒

﹃顕 密問 答鈔

﹄は 鎌倉 時代 の真 言僧

︑頼 瑜に よる 問答 集で ある が︑ 巻下 には 特に 禅宗 につ いて の質 問と

︑そ れに 対す る回 答が 盛り 込ま れて いる

︒巻 下は 九つ の問 答か らな るが

︑特 に︑ 第一 と第 二の 問答 は︑

﹃見 性成 仏論

﹄と の関 わり が極 めて 大き いこ とが わか った

︒ まず

︑問 答第 一は 問者 の言 葉で 始ま り︑

﹁禅 門の 人﹂ の語 った 内容 を述 べる

︒そ の部 分を 抜き 出し てみ よう

「問

︒謹 承

慈 誨

深 悟

性德

︒庫 内

珍寳 採

用不

︒夢 中

野客 實

來有

禪門

達磨

顯密

矣︒ 或

︒諸 教

皆是 起

對治 道

如 幻

本 有

︒ 故宗 鏡

(4)

眞言 法花 華嚴 三論 法相 所立 教

皆 名

染 淨對 治

之教

︒所 以五 相五 輪

之妙 觀

三妄 霧

三智 三觀 之

玄軌 五

雲厚

諸教 皆

心相 之

智斷

心性 之

本佛

︒既 悟

心 體

迷 悟

斷 證

而 得

出離

︒教 外

相 外

︒ 故祖 師

云︒ 不

文字

方便

︒直 指

人 心

見 性成 佛

︒所

謂 禪門 也云 云︒ 又黄 蘖云

︒断 際禪 師也

︒但 了

此 心

既 是 無心 無法

文 又悟 性論 云

︒夫 眞

見者 無

見 亦無

︒見 滿

十方

︒何 以

所見

無見

︒見 非

見 故

凡夫 所

妄想

︒若

寂滅

見 始

眞 見

︒ 心境 相對

其 中

文 首楞 嚴

︒知 見立

︒既 無明 本

︒知 見

見斯 則涅 槃

故知

眞知 之

體見 性

之義 是

外別 傳

異 諸教

也云 云 又云

︒ 然

佛法 總

︒一

者教 道︒ 二

證道

︒台 教

︒藏 通別 三

人︒ 終

圓人

︒眞 言宗 云

顯教 圓

人登

初住

時皆 入

眞 言

︒ 禪宗 亦

︒顯 密

二藏 如

鼠 婁栗

︒ 秘藏 亦從

因 中

心 宗

知︒ 諸教 極

位不

初 住

︒ 二住 以上 有

教無 人

故心 要

︒ 如

黄 葉

金 錢

權 止

小兒 哭

文 既

黄葉

︒知 無

果 人

︒佛 世

眞性

︒但 八

迦葉 一人 傳

心 印

︒亦 是教 道化 儀

之邊

︒不

實 人處 處

得入

︒但 爲

末世 著相 人

方便

︒別

衣 法

云 云 私

大梵 王所 問經 云

︒吾

正法 眼藏 涅槃 妙心

︒ 不

文字

教外 別傳

︒付

屬 於

︒ 未來 流

斷 絶

文 若爾 末

學士 狐疑 猶

智光

餘暗

()

︒﹂ (問 ふ︒ 謹ん で慈 誨を 承け て深 く性 德を 悟る

︒庫 内の 珍寳 は採 用悋 なら ず︒ 夢中 の野 客は 實に 是れ 帝質 なり

︒ 然る に︑ 近來 禪門 の人 有て

︑達 磨を 高く し顯 密を 降せ り︒ 或が 云く

︒﹁ 諸教 は皆 是對 治の 道を 起し て︑ 如幻 の障 を斷 じ︑ 本有 の理 を證 すと

︒故

︵に

︶︑ 宗鏡 の中 に具 に︑

︽眞 言法 花華 嚴三 論法 相所 立の 教門 を列 て︑ 皆

(5)

染淨 對治 の教 と名 づく

︒︾ 所以 に︑ 五相 五輪 の妙 觀は 三妄 の霧 深く

︑三 智三 觀の 玄軌 は五 住の 雲厚 し︒ 爰に 知ぬ

︒諸 教は 皆心 相の 智斷 を明 して

︑未 だ心 性の 本佛 を示 さず

︒既 に心 體を 悟れ ば︑ 迷悟 を受 けず

︒斷 證を 用い ずし て︑ 而も 出離 する こと を得

︒教 外に 別に 相外 の體 を傳 ふ︒ 故︵ に︶

︑祖 師の 云く

︽文 字を 立ず

︑方 便を 假り ず︑ 直に 人心 を指

︵て

︶見 性成 佛す

︒謂 う所 の禪 門な り︒

︾云 云﹂

﹁又

︑黄 蘗の 云う

︒︻ 斷際 禪師 な り︒

︼︽ 但︑ 此の 心を 了す れば

︑即 ち是 無心 無法 なり()

︒︾ 又︑

﹃悟 性論

﹄に 云く

︑︽ 夫れ

︑眞 見は

︑所 とし て見 ずと 云ふ こと 無し

︒亦 見ら るる もの 無し

︒見 十方 に滿 つれ ども

︑未 だ曾 て見 有ら ず︒ 何を 以て の故 に︒ 所見 無き が故 に︒ 無見 を見 るが 故に

︒見 は見 に非 らざ るが 故に

︒凡 夫の 所見 をば

︑皆 妄想 と名

︵づ く︶

︒若 し寂 滅に して 見無 きを

︑始 て眞 見と 名づ く︒ 心境 相對 する とき は︑ 見其 の中 に生 ず()

︒︾

﹃首 楞嚴

﹄に 云く

︑︽ 知見

︑ 知を 立つ る︒ 即︵ ち︶ 無明 の本 なり

︒知 見に 見無 きは

︑斯

︵れ

︶即

︵ち

︶涅 槃な り()

︾故 に知 ぬ︒ 眞知 の體

︑ 見性 の義 は︑ 是︑ 教外 別傳 にし て︑ 永く 諸教 に異 なる なり

︒云 云︒

﹂又 云︵ く︶

﹁然 も︑ 諸々 の佛 法に 總じ て 二の 意有 り︒ 一に は教 道︑ 二に は證 道な り︒ 台教 に云 く︑

︽藏 通別 の三 は果 頭に 人無 し︒ 終に 圓人 と成 るが 故に

︒︾ 眞言 宗の 云く

︑︽ 顯教 の圓 人︑ 初住 に登 る時

︑皆 眞言 に入 る︒

︾禪 宗に 亦云 く︑

︽顯 密の 二藏 は鼠 婁栗()10 の如 し︒ 祕藏 亦因 の中

︵に

︶從 って

︑心 宗に 入る が故 に︒

︾應 に知 るべ し︒ 諸教 の極 位︑ 初住 に過 ぎず

︒二 住以 上は

︑有 教無 人な り︒ 故︵ に︶

︑﹃ 心要

﹄に 云く

︽黄 葉を 將て 金銭 と爲

︵し

︶︑ 権に 小兒 の哭 を止 める が 如し()

︒︾ 既に

︑黄 葉と 云ふ

︒知 ぬ︒ 果人 無き なり

︒佛 世に は皆 眞性 に入 る︒ 但し

︑八 萬の 衆の 中に 迦葉 一人 心 11

印を 傳う とは 亦︑ 是︵ れ︶

︑教 道化 儀の 邊な り︒ 實人 處處 に得 入す るこ とを 遮き らず

︒但

︑末 世著 相の 人 の爲 の故 に︑ 方便 を帯 びず

︒別 して 衣法 を傳 ふ︒ 云云

﹂︒ 私に 勘へ て云 ふ︒

﹃大 梵王 所問 經﹄ に云 く︽ 吾れ に 正法 眼藏 涅槃 妙心 有︵ り︶

︒文 字を 立て ず︑ 教外 別傳 なり

︒汝 に付 屬す

︒未 來に 流布 して

︑斷 絶し むる こと なか れ︒

︾若 し爾 らば

︑末 代の 学士 狐疑 猶を 殘れ り︒ 重ね て智 光を 射︑ 再び 餘暗 を照 する のみ

︒︶

(6)

二︑

﹃顕 密問 答鈔

﹄の

﹁禅 門の 人﹂ と﹃ 見性 成仏 論﹄ の作 者 まず

︑問 者は

︑﹁ 近來 有

禪 門

達磨

顯密

矣︒

﹂︵ 近來 禪門 の人 有り て︑ 達磨 を高 くし 顯密 を降 せり

︒︶ と︑

﹁達 磨﹂

︵= 達磨 大師

=達 磨大 師の 法= 禅宗

︶を

﹁顕 密﹂ に置 いて いる こと を冒 頭に 述べ る︒ これ は︑

﹃悲 想伝 授抄

大日 房能 忍の 云っ たこ とば を髣 髴と させ る︒

「達 广宗 理

大日 御房 云︑ 達广 宗

超顕 密二 宗一 是心 宗

々︒ 葉上 房僧 正榮 西云 々︒ 眞言 三密 中

意密

両義 可會

合 云々()

︒﹂

︵達 磨宗 は理 教な り︒ 大日 御房 云く

︑達 磨宗 は顕 密二 宗を 超ゆ

︑是 れ心 宗な り云 々︒ 葉

12

上房 僧正 榮西 云々

︒眞 言三 密の 中の 意密 なり

︒両 義會 合す べし

︒云 云︶

『顕 密問 答鈔

﹄の

﹁禅 門の 人﹂ も﹃ 悲想 伝授 抄﹄ の大 日房 能忍 もど ちら も顕 密と 禅宗 を分 け︑ 禅宗 が顕 密よ り も勝 れて いる こと を語 って いる

︒こ こで 注意 しな けれ ばな らな いの は﹁ 達磨

﹂ま たは

﹁達 磨宗

﹂の 表現 であ る︒

﹃顕 密問 答鈔

﹄の

﹁達 磨﹂ は﹁ 達磨 大師

﹂を 意味 し︑ 広く は禅 宗を 指し てい る︒ また

︑﹃ 悲想 伝授 抄﹄ の﹁ 達磨 宗﹂ は﹁ 達磨 の宗

﹂︑ つま り﹁ 達磨 大師 の法

﹂つ まり 禅宗 の意 味で あり

︑い ずれ も達 磨宗 とい う一 宗派 を指 すの では ない

︒﹃ 顕密 問答 鈔﹄ の﹁ 禅門 の人

﹂及 び﹃ 悲想 伝授 抄﹄ の大 日房 能忍 はど ちら も禅 宗が 他の 宗派 の考 え方 とは 異な るこ とを 示し てい る点 で一 致し てい る︒ 続い て︑ 問者 は︑

﹁禅 門の 人﹂ のこ とば を語 る︒

「或 云

諸教 皆

是起

對 治

如幻 障

本有 理

︒故 宗鏡 中

眞言 法花 華嚴 三論 法相 所立 教

皆 名

染 淨對 治

之教

(

)

﹂︵ 或が 云く

︒諸 教は 皆是 れ對 治の 道を 起し て︑ 如幻 の障 を斷 じ︑

13

(7)

本有 の理 を證 すと

︒故 に︑ 宗鏡 の中 に具 に︑ 眞言 法花 華嚴 三論 法相 所立 の教 門を 列て

︑皆 染淨 對治 の教 と名 く︒

︶ この 中の

﹁宗 鏡

眞 言法 花華 嚴三 論法 相所 立

教門

皆名

染淨 對治 之

﹂︵ 宗鏡 の中 に具 に︑ 眞 言法 花華 嚴三 論法 相所 立の 教門 を列 て︑ 皆染 淨對 治の 教と 名づ く︒

︶は 上述 した よう に千 葉氏 が﹃ 見性 成仏 論﹄ につ いて 指摘 した 箇所 であ る︒ しか し︑ 実際 の金 沢文 庫所 蔵﹃ 見性 成仏 論﹄ には

︑次 のよ うに 記さ れて いる

「故 宗

論法 相華 嚴等 宗

染□ 對治

イヘ リ()

﹂︵

□は 判読 不明

︶︵ 故に

︑﹃ 宗鏡

﹄に は︽ 三論 法相 華嚴

14

等の 宗を ば染

□對 治の 教︵ え︶ と云 へり

︒︾

︶ さて

︑こ の一 文に つい て三 つの 重要 なこ とを 記さ ねば なら ない

︒ まず 一つ は︑

﹃見 性成 仏論

﹄の 原文 から 判読 不能 であ った

﹁染

﹂の 後の 一文 字が

﹁淨

﹂で ある こと が︑

﹃顕 密問 答鈔

﹄に より 判明 した こと であ る︒ 二つ 目は

﹁﹃ 宗鏡

﹄に は﹂ とあ るが

︑﹃ 宗鏡 録﹄ 百巻 の中 に該 当す る部 分が 見当 たら ない

︒恐 らく

﹃宗 鏡録

﹄第 三と 第三 八の 次の 部分 を﹃ 見性 成仏 論﹄ の作 者が 一文 にま とめ たも のと 考え られ る︒

①﹃ 宗鏡 録﹄ 第三

﹁夫 教明 一切 萬法

︒至 理虚 玄︒ 非有 無之 詮虚 自他 之性

︒若 無一 法自 體︒ 云何 立宗

︒答

︒若 不立 宗︒ 學何 歸趣

︒若 論自 他有 無︒ 皆是 衆生 識心 分別

︒是 對治 門︒ 從相 待有

︒法 身自 體︒ 中實 理心

︒豈 同幻 有︒ 不隨 幻無

︒﹂

②﹃ 宗鏡 録﹄ 第三

﹁宗 密禪 師釋 云︒ 大乘 經教

︒統 唯三 宗︒ 一法 相宗

︒二 破相 宗︒ 三法 性宗

︒﹂

③﹃ 宗鏡 録﹄ 第三 八﹁ 此猶 約對 治教 中︒ 為被 物轉 者︒ 方便 言轉

︒若 直見 心性 之人

︒既 無所 轉之 物︒ 亦無 能轉 之智

︒ 總上 十玄 門︒ 皆於 此唯 心迴 轉門

︒成 就︒

便

(8)

宗密 の理 解で は︑ 大乗 経教 には 三宗 あり

︑一 に法 相宗

︑二 に破 相宗 つま り三 論宗

︑三 に法 性宗 つま り華 厳宗 で ある

︒﹃ 見性 成仏 論﹄ の作 者が

︑宗 密の 云う 三宗 を大 乗の 代表 とし て列 挙し たも ので あろ う︒ また

︑教 が︑ 衆生 が心 の中 に抱 いた 間違 った 見方

を押 さえ 込む こと を目 的と して いる から 対治 門で あり

︑心 はそ のま ま悟 りで ある

︑と する 禅宗 とは 異な るこ とを 説く 意図 があ るの であ ろう

︒ 三つ 目に

﹃顕 密問 答鈔

﹄で は︑

﹃見 性成 仏論

﹄に はな い﹁ 眞言

﹂と

﹁法 花﹂ の二 宗を 加え

︑更 にそ の順 序を

﹁眞 言﹂

︑﹁ 法花

﹂︑

﹁華 嚴﹂

︑﹁ 三論

﹂︑

﹁法 相﹂ に変 えて いる

︒﹃ 見性 成仏 論﹄ では

﹁三 論﹂

︑﹁ 法相

﹂︑

﹁華 嚴﹂ の順 序 に書 いて ある が︑ それ らに 優劣 をつ けて いる とは 考え られ ない

︒な ぜな らば

︑﹃ 見性 成仏 論﹄ の主 な内 容が

﹁教 外別 伝﹂ であ り︑ 教と 禅の 違い につ いて 述べ てい るの であ って

︑﹁ 三論

﹂︑

﹁法 相﹂

︑﹁ 華嚴

﹂の 優劣 を追 究し てい ると は考 えら れな い︒ 但し

︑﹃ 見性 成仏 論﹄ には 次の よう に禅 宗以 外の 宗派 を小 乗︑ 権大 乗︑ 実大 乗と 区別 して いる

「 ︒ ここ に︑ 本朝 に傳 へ果 たせ るは

︑八 宗並 びに 禅宗 なり

︒成 實と 倶舎 と律 とは 小乗 宗な り︒ 法相 と三 論と はこ れ權 大乗 の宗

︒華 嚴と 天台

言と は︑ これ 實大 乗の 宗︒ 禅宗

︑こ れ大 小兩 乗の 他お いて

︑権 實二 宗の うち にあ らず

︒故 に︑ 教外 の別 傳︑ 不立 文字 の宗

づく

︒亜 瞬︑ 相 傳の 法と 言へ り()

︒﹂

15

『顕 密問 答鈔

﹄で

﹁眞 言﹂ を最 初に 列し てい るこ とは

︑千 葉氏 が﹁ 眞言 密教 側の 優位 性を 説い てい る()

︒﹂ と分 析

16

して いる 通り であ ろう

︒ま た︑

﹃見 性成 仏論

﹄で は教 と禅 の違 いを 主張 して いる にも かか わら ず︑

﹃顕 密問 答鈔

﹄ では

︑そ の教 の優 劣に つい て論 じて いる こと は︑ 最初 から 禅の 考え 方を 否定 して いる と理 解で きる

︒ とこ ろで

︑上 記以 外に

﹃顕 密問 答鈔

﹄に は﹃ 見性 成仏 論﹄ を熟 読し てい た可 能性 を強 く示 す箇 所を あげ てみ た

(9)

い︒

﹃顕 密問 答鈔

﹄で は第 二の 問い に対 し︑ 答者 が答 える 中に

「大 師釋 云

西天 佛

東土 之

心佛

︒曹 鶏玄 旨

應機 者

︻ 未

正 文

(

)

17

西

と記 述し てい るが

︑こ れは まさ しく

﹃見 性成 仏論

﹄か らの 引用 であ る︒ それ は︑

「弘 法大 師は

︑西 天の 佛心 を以 て東 土の 佛心 を印 す︒ 曹谿 玄旨 の宗 をば 應機 の者 に属 在す

︑と 云へ り()

︒﹂

18

であ る︒ 但し

︑﹃ 見性 成仏 論﹄ の﹁ 東土 の佛 心﹂ が﹃ 顕密 問答 鈔﹄ では

﹁東 土の 心佛

﹂に 変わ って いる

︒頼 瑜が 恣意 的に 変え た可 能性 も考 えら れる

︒さ て︑ ここ で言 う弘 法大 師

は 日本 の真 言宗 祖師 の空 海を 示し てい るの では なく

︑十 世紀 頃の 朝鮮 僧の こと を指 して いる

︒﹃ 禅学 大辞 典﹄ によ れば 次の よう に書 かれ てい る︒

「弘 法は 諡号 で︑ 諱も 生没 年も 不詳

︒十 二歳 で剃 髪し

︑景 順王 の三 年 に北 山摩 訶岬 壇で 具足 戒を 受 く︒ 後︑ 入唐 参禅 して 帰国 し︑ 成宗 より 大禅 師号

︑穆 宗よ り玉 円光 遍照 国師 号を 受け

︑奉 恩寺 に住 す︒ また

︑ 開天 山淨 土寺

住持 とな る︒ 寂後

︑弘 法と 諡さ れる()

︒﹂

19

弘法 につ いて は︑

﹃朝 鮮金 石總 覧﹄ に︑

﹁大 宋高 麗國 中原 府開 天山 淨土 寺圓 光遍 照弘 法大 禪師()

﹂と あり

20

僧と して 著名 な人 物で あっ たこ とが 理解 でき る︒ さら に︑ 弘法 につ いて は日 本の 愚中

の﹃ 大通 禅師 語録

﹄巻 四に

「元 哉説

︒嘗 て聞 く︒ 弘法

︑元 師に 勧め て云 く︑ 當に 西天

心を 以て 東土

心に 印す べし と︒ 此れ に由 りて 曰く

︑竺 土 大仙

︑東 西の 密に 相付 する() は是 れに あざ らる こと 莫し

︒元 哉こ れを 勉べ

︒右

21

符契 侍者 の爲 に述 べ︑ 爾云 う()

︒﹂

22

とあ り︑ 朝鮮 僧︑ 弘法 大師

のこ とば は︑

﹃見 性成 仏論

﹄成 立の 鎌倉 期か ら愚 中の 著し た江 戸時

(10)

代ま で伝 え知 られ てい た事 実が 理解 でき る︒ 果た して

︑﹃ 見性 成仏 論﹄ の作 者が 何に よっ て朝 鮮僧

︑弘 法大 師の こと ばを 引用 した のか

︑残 念な がら 筆者 には 未だ 判明 でき てい ない

︒し かし

︑﹃ 見性 成仏 論﹄ の作 者が 朝鮮 から の書 物に も目 を通 して いた こと は︑ 国外 の仏 教に も関 心が あり

︑そ れら を入 手で きる 環境 にい たこ とを 物語 って いる と ︒ もあ れ︑ 頼瑜 は︑ 朝鮮 僧︑ 弘法 大師 の存 在を 知ら ずに

︑﹃ 見性 成仏 論﹄ にあ る﹁ 弘法 大師

﹂を 日本 の弘 法大 師空 海の こと と誤 認し て︑

﹁大 師釋 云

と記 述し たの であ ろう

︒ま た︑ 彼は

︑空 海の 著作 を 調べ て︑ 該当 する 文が 見当 たら ない ので

︑﹁

︻未

見 正文

︼﹂

と 記し たの であ ろう

︒ とこ ろで

︑前 述の 問者 の﹃ 見性 成仏 論﹄ の引 用部 分に して も︑ 頼瑜 の引 用箇 所は 実に 正確 であ り︑ 口伝 えに 知 った とい うよ りも

︑﹃ 見性 成仏 論﹄ を側 に置 いて 記述 して いた こと が推 測で きる

︒当 時︑ 真言 僧の 頼瑜 にと って も無 視す るこ との でき ない テキ スト であ った こと が想 像に 難く ない

︒ 三︑

﹃顕 密問 答鈔

﹄の

﹁禅 門の 人﹂ と﹃ 見性 成仏 論﹄ の思 想的 共通 点 次に

︑﹃ 見性 成仏 論﹄ と﹃ 顕密 問答 鈔﹄ の思 想的 に共 通す る部 分を 取り 上げ てみ よう

︒ まず

︑﹃ 顕密 問答 鈔﹄ の﹁ 禅門 の人

﹂の こと ばで ある

「爰 知

皆明

心 相

之智 斷

心 性

之本 佛

︒ 既

心體

迷悟

斷證

而得

出 離

︒ 教外 別

相外 體

︒故 祖師 云

︒不

文 字

方 便

︒ 直

人心

見性 成佛

所 謂禪 門也 云云()

﹂︵ 爰に 知ん ぬ︒ 諸教 は皆 心相 の智 斷を 明か して

︑未

︵だ

︶心 性の 本佛 を示

︵さ

23

ず︶

︒既 に心 體を 悟れ ば︑ 迷悟 を受 けず

︒斷 證を 用ず して

︑而 も出 離す るこ とを 得︒ 教外 に別 に相 外の 體を

(11)

傳ふ

︒故

︵に

︶︑ 祖師 の云 く︽ 文字 を立 ず︑ 方便 を假 らず

︒直 に人 心を 指︵ して

︶見 性成 佛す

︒謂 う所 の禪 門な り︒

︾云 云︶ この 中で

「諸 教

皆明

心 相

之智 斷

心 性

之本 佛

心體

迷悟

斷證

而得

出 離

﹂︵ 諸教 は皆 心相 の智 斷を 明し て未 だ心 性の 本佛 を示

︵さ ず︶

︒既 に心 體を 悟れ ば︑ 迷悟 を受 ず︒ 斷證 を用 ずし て︑ 而も 出離 する こと を得

︒︶ は︑

﹃見 性成 仏論

﹄の 次の 部分 など に比 定で きよ う︒

「所 断の 煩惱 は四 住五 住に 分か れ︑ 能断 の觀 智は

︑二 觀三 觀に 異な れど

︑断 惑證 理の 教へ 滅罪 生善 のは かり ごと は︑ 大乘

小 乘 掟︑ 権宗 實宗 の習 いな り()

24

「真 に︑ 権宗 實宗 異な れば

︑能 詮所 詮似 ざれ ども 出離 生死 のお きて には

︑断 迷開 悟 教へ 入證

︹槃 涅︺ 道に は遠 塵離 垢述 べた まへ り()

︒﹂

25

また

︑前 記の

「未

心 性

之本 佛

(

)

26

は︑ 教で は自 分自 身の 佛を 持た ない

︑と の意 味で

﹃見 性成 仏論

﹄の 以下 の部 分に 説明 を求 める こと がで きよ う︒

「何 ぞ必 ず身 長丈 六に して

︑紫 磨金 輝く なる を︑ 遍知 縛伽 と言 ひ︑ 項偑 圓光 にし て廣 長舌 相な るを のみ 如来 世尊 とい はむ

︒凡 そ諸 有相 皆是 虛妄 と述 べた り︒ 自性 の真 佛を 持ち て佛 とせ よ()

︒﹂

27

更に

︑﹃ 顕密 問答 鈔﹄ の

「既 悟

心 體

迷 悟

斷 證

而 得

出離

︒教 外

相 外

(

)

﹂︵ 既に 心體 を

28

(12)

悟れ ば︑ 迷悟 を受 けず

︒斷 證を 用い ずし て︑ 而も 出離 する こと を得

︒教 外に 別に 相外 の體 を傳 ふ︒

︶ は︑

﹃見 性成 仏論

﹄の 以下 の文 に詳 しく 解釈 を求 める こと がで きる

「然 りと いへ ど︑ 道︑ 元を 尋ぬ れば

︑諸 佛金 口の 甘露 衆生 乃心 の良 薬な り︒ 然れ ば︑ 出離 生死 の弄 引︑ 入證 菩提 の方 便な り︒ ここ に︑ 本朝 に傳 へ果 たせ るは

︑八 宗並 びに 禅宗 なり

︒成 實と 倶舎 と律 とは 小乗 宗な り︒ 法相 と三 論と はこ れ權 大乗 の宗

︒華 嚴と 天台

言と は︑ これ 實大 乗の 宗︒ 禅宗

︑こ れ大 小兩 乗の 他お いて

︑権 實二 宗の うち にあ らず

︒故 に︑ 教外 の別 傳︑ 不立 文字 の宗

づく

︒亜 瞬︑ 相 傳の 法と 言へ り()

︒﹂

29

ここ では

︑﹃ 顕密 問答 鈔﹄ の﹁ 禅門 の人

﹂と

﹃見 性成 仏論

﹄の 作者 の仏 教に 対す る考 え方 がど ちら も﹁ 教外 別 伝﹂ であ るこ とが 明確 に書 かれ てい る︒ 更に

﹃顕 密問 答鈔

﹄の

﹁禅 門の 人﹂ は﹃ 首楞 厳経

﹄の 引用 文を 挙げ た後

︑ 次の よう に述 べる

「故 知

眞知 之

體見 性

之義 是

外別 傳

諸教

也云 云()

﹂︵ 故に 知ぬ

︒眞 知の 體︑ 見性 の義 は︑ 是︑

30

教外 別傳 にし て︑ 永く 諸教 に異 なれ り︒ 云云

︶ とこ ろで

︑日 蓮 は遺 文の 中で 大日 房能 忍の 禅が

﹁教 外別 伝﹂ であ ると 以下 に明 言し てい る︒

『教 機時 国鈔

﹄日 蓮︑ 弘長 二年

「建 仁

來于

今 五十 餘年 之間 大日 佛陀 弘

禪 宗

︑ 法然

・隆 寛興

淨土 宗

︑ 破

實大 乘

權宗

︑捨

一 切經

教 外

譬 如

石 離

地 登

(

)

﹂︵ 建仁 より 已來

︑今 こに お

31

いて 五十 餘年 の間

︑大 日︑ 佛陀() 禪宗 を弘 め︑ 法然

・隆 寛淨 土宗 を興 し︑ 實大 乘を 破し て權 宗に 付き

︑一 切經

32

(13)

を捨 てて 教外 を立 つ︒ 譬へ ば︑ 珠を 捨て て石 を取 り︑ 地を 離れ て空 に登 るが 如し

︒︶

『開 目鈔

﹄日 蓮︑ 文永 九年

「建 仁年 中に 法然

・大 日の 二人 出來 して 念佛 宗・ 禪宗 を興 行す

日云 教

外別 傳等 云云

︒此 兩義 國 土に 充滿 せり

︒天 台眞 言の 學者 等︑ 念佛

・禪 の檀 那に へつ らい

︑を そる 仭事

︑犬 の主 にを をふ り︑ ねづ みの 貓を をそ るる がご とし

︒國 王將 軍に みや つか ひ︑ 破佛 法

因縁

・破 國

因縁 を能 説

たる なり()

︒﹂

33

『佐 渡御 書﹄ 日蓮

︑文 永九 年

「法 然が 一類

︑大 日が 一類

︑念 佛宗 禪宗 と號 して

︑法 華經 に捨 閉閣 抛の 四字 を副 へて 制止 を加 て權 經の 彌陀 稱名 計を 取

︑教 外別 傳と 號し て法 華經 を月 をさ す指

︑只 文字 をか ぞふ るな んど 笑ふ 者は

︑六 師が 末流 の佛 教の 中に 出來 せる なる べし()

︒﹂

34

つま り︑ 日蓮 遺文 に書 かれ た大 日房 能忍 の禅 は﹁ 教外 別伝

﹂で あっ たこ とが 明ら かで ある

︒﹃ 顕密 問答 鈔﹄ の

﹁禅 門の 人﹂ は達 磨が 他宗 より

﹁高 い﹂ とい う︒ これ は﹃ 悲想 伝授 抄﹄ の大 日房 能忍 が︑ 達磨 宗が 他宗 を﹁ 超え る﹂ とい うこ とと 同じ であ り︑ 明ら かに

﹁教 外別 伝﹂ を意 味し てい る︒ 従っ て﹃ 顕密 問答 鈔﹄ の﹁ 禅門 の人

﹂が 大日 房能 忍で ある 可能 性が 極め て高 い︒ また

︑﹃ 見性 成仏 論﹄ は主 題が

教外 別伝

﹂で あり

︑そ の作 者は 大日 房能 忍の 可能 性が 十分 に考 えら れる

︒ 次に

︑﹃ 顕密 問答 鈔﹄ の中 に︑

﹃見 性成 仏論

﹄で は見 られ ない こと ば等 につ いて 考察 して みよ う︒ まず 一つ 目は

︑﹃ 顕密 問答 鈔﹄ で示 され る菩 提達 磨の 四つ の標 語に つい てで ある

「教 外

相 外

︒ 故祖 師

云︒

立 文字

假 方便

︒直 指

人 心

見 性成 佛

︒所

謂 禪門 也云 云()

﹂︵ 外に 別に 相外 の體 を傳 ふ︒ 故︵ に︶

︑祖 師の 云く

︽文 字を 立ず

︑方 便を 假り ず︒ 直に 人心 を指

35

参照

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