• 検索結果がありません。

クリニックにおける外来抗菌薬処方動向分析

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "クリニックにおける外来抗菌薬処方動向分析"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

クリニックにおける外来抗菌薬処方動向分析

―保険薬局と連携した簡便なセルフチェックの有効性―

くろさきこどもクリニック

黒 崎 知 道

(令和元年10月11日受付)

(令和2年1月16日受理)

Key words : antimicrobial resistance (AMR) action plan, antimicrobial stewardship, antimicrobial prescription, pediatric clinic

厚生労働省は薬剤耐性(AMR)アクションプランを策定し,抗菌薬の適正使用を求めている.この取組 に賛同し抗菌薬処方の現状を省みるため,今回の研究を思い立った.

保険薬局の協力を得て,自施設の抗菌薬処方量についてフィードバックを受けた.応需処方箋から抗菌薬 処方量と処方箋枚数を調べ,経年動向を調べ自分の抗菌薬処方の現状を省みた.また,同様の手法で近隣の クリニックの抗菌薬処方動向も調査した.

抗菌薬処方枚数は処方量と正の相関を示した.対受診患者

1,000

人の抗菌薬処方枚数は

2009

125,2011

199.3,2014

173.3,2016

171.1,2017

103.0,2018

38.6

であった.「抗微生物薬適正使用の手引 き」が公表された

2017

年下半期から抗菌薬処方枚数が減少し,

2011

年と比較し

2018

年は処方全体の−80.6%

であり,経口セフェム系薬,キノロン系薬,マクロライド系薬に限ると−89.6% でありアクションプランの 目標を達成していた.抗菌薬種類別にみると,ペニシリン系薬主体の治療で対応可能であった.第

3

世代経 口セフェム系薬の微増傾向が判明したが,第

1

世代セフェム系薬でも対応可能な皮膚疾患等に第

3

世代セ フェム系薬の処方を行っていた.近隣耳鼻いんこう科クリニックの抗菌薬処方数を検討したところ,著明な 減少を認め,地域における抗菌薬処方の減少を確認できた.

処方枚数から抗菌薬の処方量の動向を推定することは可能であり,自己の抗菌薬処方の傾向を省みること により抗菌薬不必要,不適切使用の低減に繋がると考えられる.

〔感染症誌 94:304〜309,2020〕

はじめに

2016

4

月薬剤耐性(AMR)対策アクションプラ

2016〜2020

1)が公表され,抗菌薬適正使用の推進に

より全体の抗菌薬使用量

33% 減,経口セフェム系薬,

キノロン系薬,マクロライド系薬に限ると

50% 減ら

すことを目指している.上気道感染症の病名でもっと も多く処方される抗菌薬は経口セフェム系薬(特に第

3

世代),マクロライド系薬2)〜4)で,抗菌薬処方割合は 病院外来とクリニック(開業医)で比較するとクリニッ クの方が高いことが報告されている2).さらに,抗菌 薬使用量について小児領域での抗菌薬使用頻度が多い ことが指摘されており5)我々開業医は適正使用に取り

組む必要がある.しかし,抗菌薬使用量を比較的簡便 に評価する方法が見当たらない.そこで,簡便に保険 薬局の処方箋応需に基づいて自分自身の抗菌薬処方を 省みることが可能か否か検討した.その有用性と考え られる問題点について報告する.

対象・方法

当院は

2009

8

月開院の小児科・アレルギー科標 榜のクリニックである.診療は常勤医

1

名で行ってお り非常勤医はいない.隣接する保険薬局があり,当院 で発行される処方箋の

97〜99% を応需している.

年毎に保険薬局で応需した薬の使用数,使用量一覧 の出力を依頼し,その中から抗菌薬処方枚数を算出し,

対受診患者

1,000

人で比較した.患者数は,来院され た総受診者から,健康診断および予防接種での来院者

別刷請求先:(〒263―0043)千葉市稲毛区小仲台6―23―6 くろさきこどもクリニック 黒崎 知道

(2)

Fig. 1 Annual  trend  of  the  number  of  antimicrobial  prescriptions  and  antimicrobial types per 1,000 visits 

0 50 100 150 200 250

2009 2011 2014 2016 2017 2018 Penicillins 3rd cephalosporins Macrolides

Quinolones Tetracyclines Others

Guidance on the Proper Use of AnƟmicrobial Agents

を除いた人数とした.

検討した年は,開院した当初の

2009

年(8月〜12 月)をはじめとして,2011年,抗菌薬処方減を目指 していた

2014

年と

2016

年,「抗微生物薬適正使用の 手引き」が公表された

2017

年,およびそれ以降の

2018

年とした.

抗菌薬処方枚数と処方量の相関の有無に関しては,

患者数の安定した

2011

年以降ペニシリン系薬での推 移を検討した.処方量を力価(g)換算し処方枚数と 比較した.処方量と処方枚数の関係については,線形 回帰分析を行い,P<0.05を有意とした.統計ソフト は,JMP Pro 13.0.0(SAS Institute Inc., Cary, NC,

USA)を使用した.

2011

年,2014年,2016年,お薬手帳の抗菌薬処方 状況から抗菌薬処方減に努めていると考えられる近隣 の耳鼻いんこう科クリニック(3診体制)の抗菌薬処 方と当院の抗菌薬処方とを,薬局の対応需処方箋

1,000

枚で推移を比較した.

抗菌薬処方の変化は,受診患者の行動変容をもたら す可能性がある.その評価として,当院患者

1

名あた りの平均受診回数,2次病院への紹介数を検討した.

患者

1

名あたりの平均受診回数は,レセプト実日数(延 べ患者数)をレセプト件数(患者実数)で除して算出 した.当院からの

2

次病院への紹介患者数推移に関し ては,2次病院地域医療連携室の協力で紹介患者の一 覧を抽出し,後方視的に当院のカルテで,抗菌薬処方 を控えに結果として症状の増悪を来したと考えられる 患者数を検討した.なお,この研究は千葉市医師会倫 理特別委員会の承認(番号

006)を得ている.

1.抗菌薬処方数の経年推移

対 象 患 者 数 は 計

99,636

名(2009年

3,888

名,2011 年

18,265

名,

2014

18,841

名,

2016

19,671

名,

2017

19,663

名,2018年

19,308

名)であった.Fig. 1,Ta-

ble 1に年毎の推移を示す.対受診患者 1,000

人の抗菌

薬処方数は

2009

125,2011

199.3

と開院当初か らは増加していたが,2017年

103.0(上半期 121.7,下

半期

83.7)と減少し,2018

年にはさらに減少してい

た.「抗微生物薬適正使用の手引き」公表後である

2017

年下半期から抗菌薬処方数の減少が顕著になってい た.2018年は,2011年と比較して−80.6%,2016年 との比較−77.4%,

2017

年との比較−62.5% であった.

2.抗菌薬の種類別処方数

ペニシリン系薬,第

3

世代セフェム系薬,マクロラ イド系薬,キノロン系薬等について推移を示す(Fig.

1,Table 1).

ペニシリン系薬は,

2011

年以降経年的に減少し,こ れに付随して全体の抗菌薬処方数は減少していた.β―

ラクタマーゼ阻害剤との合剤の処方割合は,5〜10%

程度であったが,2011年のみ

19.3

(%)であった(Ta-

ble 1).第 3

世代セフェム系薬は,2011年以降漸増し

ていたが全体の処方箋枚数増加に繋がるほどではな く,

2017

年以降には僅かではあるが減少していた.マ クロライド系薬は,肺炎マイコプラズマ感染症の流行 に伴い

2011

年と

2016

年に増加していた.キノロン系 薬は,開院した

2009

年以降処方が増加していたが,

2017

年,2018年減少していた.

3.ペニシリン系薬処方枚数と処方量の推移比較

薬局で応需したペニシリン系薬処方枚数,処方量(力

(3)

Fig. 2 Correlation between the number of antimicrobial prescriptions and anti- biotic potency 

y = 2.2172x + 1,130.7 R² = 0.9805

0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 7,000

0 500 1,000 1,500 2,000 2,500

AnƟďŝŽƟc ƉŽtency (䡃)

EƵŵďĞƌ ŽĨ anƟďŝŽƟc pƌesĐƌŝƉƟŽŶs

pƌĞƐĐƌŝƉƟŽŶs pŽtency (g)

2011 2,157 5,657.6 2014 2,248 6,423.9 2016 1,824 5,019.2 2017 1,356 4,242.3 2018 519 2,278.9

䠄 䡌㻩㻜㻚㻜㻜㻝㻞䠅

Table 1 Trends in antimicrobial prescriptions per 1,000 visits for each antimicrobial from 2009  to 2018

2009 2011 2014 2016 2017 2018 %reduction 

in 2018

Antibiotic prescriptions 125 199.3 173.3 171.1 103.0 38.6 80.6

Penicillins

(% of PCs with β-lactamase inhibitors)  110.3  (7.9) 

118.1  (19.3) 

119.3  (7.3) 

92.7  (9.5) 

69.0  (5.3) 

26.5  (8.5) 

77.6

3rd cephalosporins 8.2 5.9 8.1 10.5 6.7 0.3 94.9

1st & 2nd cephalosporins 0 3.3 0 0.1 0.4 3.3 0

Macrolides 5.2 59.3 36.0 41.4 17.9 6.5 89.0

Quinolones 1.3 4.1 6.3 15.3 5.9 0.4 90.2

Tetracyclines 0 6.9 2.3 4.2 1.6 0.05 99.3

Carbapenems 0 0.2 0.6 0.15 0.2 0 100

Others** 0 1.6 0.8 6.65 1.4 1.5 0.06

: compared to 2011

**: Sulfamethoxazole-trimethoprim and Fosfomycin

価:g),および,それらの関連を

Fig. 2に示す.両者

の相関を求めたところ相関係数は

0.9902

で強い正の 相関を認めた.

なお,当院からの処方箋発行枚数に対する保険薬局 応需率は

97〜99%(2011

99.1%, 2014

97.7%, 2016

98.5%,2017

97.9%,2018

96.9%),患者数に

対する処方箋応需率は

88〜93% 程度(2011

92.5%,

2014

91.9%,2016

90.4%,2017

88.7%,2018

87.7%)であった.

4.近隣耳鼻いんこう科クリニックとの比較(Fig. 3)

応需処方箋数

1,000

枚に対する抗菌薬処方枚数で比 較 し た.当 院 の 対 象 と な る 処 方 箋 数 は 計

52,553

(2011年

17,165

枚,2014年

17,589

枚,2016年

17,799

枚)で,耳鼻いんこう科クリニックの対象処方箋数は 計

118,566

枚(

2011

36,976

枚,2014年

37,759

枚,

2016

43,831

枚)であった.耳鼻いんこう科クリニッ

クから発行される処方箋の

95% 以上は当該薬局で応

需されているとのことである.

当院の抗菌薬処方数をみると

2014

年,2016年は

2011

年と比較し若干の減少はあるものの横ばいであ るのに対して,近隣耳鼻いんこう科クリニックでは著 明な減少を認めた.地域における抗菌薬処方の減少を 確認することができた.

5.患者 1

名あたりの平均受診回数,および当院か らの

2

次病院紹介患者数の推移

(1)患者

1

名あたりの平均受診回数の推移

2009

1.57

回,

2011

1.52

回,

2014

1.45

回,

2016

1.47

回,2017年

1.46

回,2018年

1.46

回であった.

(2)2次病院への紹介患者数の推移

食物アレルギー,心疾患,長引く頭痛,発育・発達 の問題等での紹介を除いた急性疾患は,

2016

35

名,

2017

39

名,2018年

38

名で,患者数

10,000

名に対 し て

2016

17.8

名,2017年

19.8

名,2018年

19.7

名 であった.抗菌薬処方を控えたことによる症状増悪例

(4)

Fig. 3 Comparison of the number of antibiotic prescriptions with a neigh- boring otolaryngology clinic 

0 100 200 300 400 500 600 700

2011 2014 2016

own clinic otolaryngology clinic

䠄per 1,000 prescripƟons䠅

212.0

185.7 189.1

689.7

358.2

61.8 No. of anƟbioƟĐprescripƟons

は,2016年

2

名,2017年

2

名,2018年

1

名 あ っ た.

症例の内訳は,2016年,①3歳児;発熱,咳の経過中

IgA

血管炎併発,精査にて肺炎マイコプラズマ肺炎と 判明,②2歳児;滲出性扁桃炎経過中,咳増悪.洗浄 喀痰培養にて肺炎球菌,インフルエンザ菌検出,CRP

6.7mg/dL.2017

年,①1歳

1

か月児;前日からの発 熱,鼻汁で初診.翌日乳突洞炎で再診.②1歳

1

か月 児;発熱,咳,鼻汁にて来院.対症療法にて鼻汁軽快 傾向にあったが,発熱,湿性咳増悪.洗浄喀痰培養に てインフルエンザ菌優位検出.

2018

年,①11か月児;

咳にて初診.2日後から発熱.その後湿性咳増悪.胸 部レントゲンで肺炎と診断.洗浄喀痰培養にてインフ ルエンザ菌優位検出.以上の計

5

名であった.

抗菌薬処方枚数の推移から抗菌薬の処方量の動向を 推定し,抗菌薬の不適切使用や不必要使用2)〜4)を省み ることが可能であることが判明した.その結果,

AMR

アクションプランを実現するため,抗菌薬の使用を減 らすことが可能であった.指標として,抗菌薬処方枚 数は有効である.

開業医での抗菌薬不必要使用2)〜4)の改善が

AMR

対 策上必須である.自身の抗菌薬処方を省みることは抗 菌薬の適切な処方につながるとされている6).しかし,

抗菌薬使用に関する指標は

days of therapy(DOT),

antimicrobial use density(AUD)など幾つかある

7)

が,これらの算出法は煩雑であり診療の合間に算出す るのは困難である.このようなことから,広く行える 可能性のある活動として,経口抗菌薬を処方する医師 が簡便に自分自身の抗菌薬使用状況,処方傾向を自己 確認できる方法として「保険薬局と連携したクリニッ

クにおける抗菌薬処方セルフチェック」を考え,受診 患者数および処方箋応需数から抗菌薬処方数の推移を 省みた.単純に抗菌薬処方枚数の増減をみるだけで,

抗菌薬処方量(力価)の増減を推定することが可能か 否か,患者数の安定した

2011

年以降ペニシリン系薬 で検討した.Fig. 2のごとく抗菌薬処方枚数と処方量 には強い正の相関を示し,抗菌薬処方枚数をチェック することで抗菌薬処方量を推定することは可能である ことが判明した.

開院当初の抗菌薬処方数は増加していた.抗菌薬処 方をセーブしようと努力した

2014

年,2016年はそれ ぞれ僅かな処方数減少が認められたが,自分自身が予 想していたよりも抗菌薬処方の減少は僅かであった.

そこで,2017年

6

月に厚労省から公表された「抗微 生物薬適正使用の手引き ダイジェスト版」を用いて 説明を行ったところ,患者の受け入れは以前と比べ明 らかに良好になり,近隣クリニックを再受診し抗菌薬 処方を受ける患者が少なくなったと感じるようになっ た.その結果,2018年の処方数は

38.6

2016

年と比

較して

77.4% の減少となり,アクションプランで提

唱されている「抗菌薬処方全体の

33% 減」の目標は

達成できていた.「抗微生物薬適正使用の手引き」を 用いた患者指導は抗菌薬処方減に有効であった.抗菌 薬種類別検討では,従来通り8)ペニシリン系薬主体の 治療で臨床的に問題はなかった.

2011

年と比較し

2018

年は,経口セフェム系薬,キノロン系薬,マクロライ ド系薬に限ると−89.6% であり,アクションプランの 目標(−50%)を達成していた.2016年の第

3

世代 経口セフェム系薬処方の背景をみると,皮膚軟部組織 感染症,リンパ節炎,外耳炎など第

3

世代以外の経口

(5)

セフェム系薬で対応可能症例にも処方していた.薬剤 耐性の面から考え改善した.2011年のβ―ラクタマー ゼ阻害剤との合剤の処方割合の増加は,保育園児に対 して分

2

処方製剤を多用したためであり,その後は減 少している.

今回セルフチェックを実施したことにより,自分自 身の抗菌薬処方の実態を把握することができた.その 結果,特定の抗菌薬処方増加が流行に付随したもので 納得できる結果であるのか,または,改善を要するも のであるかを知ることができ,自身の抗菌薬処方を省 みることの大切さ6)を認識した.

保護者の受診行動をみると,発熱・鼻汁・軽度な咳 では耳鼻いんこう科を受診している患者が少なからず いる.近隣の耳鼻いんこう科クリニックに協力してい ただいたところ,Fig. 3に示すような著明な抗菌薬処 方数の減少があり,地域での抗菌薬処方の傾向を認識 することができた.どのような取り組みを行ったのか 確認したところ,お薬手帳から当院の抗菌薬処方の実 際を参考に中耳炎ガイドラインなどにより,第

3

世代 経口セフェム系薬からアモキシシリンに,マクロライ ド少量長期療法(特に小児に対する)の適応を限定的 にしたこと,2016年

4

月に,常勤医師の増員により こまめな経過観察,局所治療主体へ移行が進み,抗菌 薬処方の減少が進んだとのことであった.抗菌薬処方 を希望する保護者は,抗菌薬処方するクリニックを受 診する傾向にあることが明らか9)になっており,近隣 のクリニックと共同で

AMR

対策を行うことが大切で ある.しかし,保険薬局での耳鼻いんこう科処方箋応 需数をみると近隣に耳鼻いんこう科新規開院が

2

施設 あったにもかかわらず,2016年処方箋応需数は約

1.2

倍に増加していた.診察間隔の短縮,こまめな局所所 見の確認が抗菌薬処方を抑えることに繋がったとのこ とであるが,診療スタイルの相違,受診間隔の違いに よって処方箋枚数が変化し,その結果,抗菌薬処方箋 率が異なってくる.そのため,他院との比較は単純に はできないが,大まかな傾向を確認することは可能で ある.

抗菌薬処方を控えることによる症状の遷延化・増悪 がなかったのかという点の確認は重要である.今回,

検討を行ったところ,患者

1

名あたりの平均受診回数 の増加はなかったが,急性疾患で当院から

2

次病院へ の紹介患者のうち,抗菌薬処方を控え結果として症状 の増悪を来したと考えられる症例は,2016年

2

名,

2017

2

名,

2018

1

名あった.抗菌薬処方数は,

2017

年〜2018年減少していたが,これに付随した増悪症 例数の増加ではなかった.

Petersen

らの報告では,全

年齢で

4,000

人以上の上気道感染症患者,中耳炎患者

に抗菌薬を処方すると

1

人の肺炎発症,1人の乳突洞

炎発症を予防できるとされている10).この結果は,増 悪症例をなくすために上気道感染症患者,中耳炎患者 への抗菌薬投与を正当化するものではない.患者の経 過から,感染相の評価を行い,抗菌薬処方の適否を判 断する必要がある.しかし,この様な地域中核病院へ の紹介患者数の検討では,休日・夜間救急受診例を含 まないため実態を反映していない危険性がある.後方 視的検討の限界であると考える.この他,本研究の限 界として,単施設での検討であり自分自身の考えで種 類も含め抗菌薬処方を左右できることが挙げられる.

しかし,診療を省みることで第

3

世代セフェム系薬処 方が多い昨今,狭域ペニシリン系薬主体での実臨床が 可能である8)ことを再認識した.

ヒブ(Haemophilus influenzae

typeb;Hib)ワクチ

ン,小児用肺炎球菌ワクチンの定期接種化により,現 在

Hib

全身感染症はみられなくなってきており,肺 炎球菌に関しても肺炎の罹患率低下ばかりではなく,

咽頭保菌株の血清型置換(serotype replacement)に よりペニシリン感受性が良くなってきている11).過去 の第

3

世代経口セフェム系薬の繁用によりペニシリン 耐性を助長した歴史を繰り返さないためにも今こそ

AMR

対策への取り組みは重要である.クリニックで の抗菌薬処方の多さが問題とされている.簡便な方法 でも自分の抗菌薬処方数を省みることは,安易な抗菌 薬処方防止につながる.病院における適正使用の検討 はあるものの,外来における検討は少ない12)13).保険 薬局―クリニックで検討する機運が高まれば

AMR

対 策に寄与することになり,幅広い活動になることを 願っている.

利益相反自己申告:申告すべきものなし 文 献

1)国際的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議:

薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016―

2020 .厚生労働省 [Internet].[cited 2018 Nov.

17] ; Available from : https://www.mhlw.go.jp/f ile/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/00 00120769.pdf.

2)Higashi T, Fukuhara S:Antibiotic prescrip- tions for upper respiratory tract infection in Ja- pan. Intern Med. 2009;48:1369―75.

3)具 芳明,藤友結実子,添田 博,中浜 力,長 谷川直樹,前崎繁文,他:全国の診療所医師を 対象とした抗菌薬適正使用に関するアンケート 調査.感染症誌 2019;93:289―97.

4)Uda K, Okubo Y, Kinoshita N, Morisaki N, Kasai M, Horikoshi Y,et al.:Nationwide survey of in- dications for oral antimicrobial prescription for pediatric patients from 2013 to 2016 in Japan. J Infect Chemother. 2019;25:758―63.

5)かしこく治して,明日につなぐ〜抗菌薬を上手 に使ってAMR対策〜. インフォグラフィック

(6)

で知る!薬剤耐性(AMR)VoL. 4 子どもの風 邪 対 策 か ら 薬 剤 耐 性 を 予 防 し よ う〜知 ろ う

AMR,考えようあなたのクスリ〜 .AMR臨床

リファレンスセンター [Internet].[cited 2018 Nov. 17] ; Available from : http://amr.ncgm.go.j p/infographics/004.html.

6)Antibiotic prescribing and use in doctorʼs of- fices:“Measuring outpatient antibiotic prescrib- ing”. Centers for Disease Control and Preven- tion [Internet]. [cited 2018 Nov. 18] ; Available from : https://www.cdc.gov/antibiotic-use/com munity/programs-measurement/measuring-anti biotic-prescribing.html.

7)日本化学療法学会・日本感染症学会・日本環境 感染症学会ほか8学会合同抗微生物薬適正使用 推進検討委員会:抗菌薬適正使用支援プログラ ム実践のためのガイダンス.感染症誌 2017;

91:709―46.

8)黒崎知道,河野陽一:小児下気道感染症に対す る 抗 菌 薬 療 法―何 故 い ま ペ ニ シ リ ン 系 抗 菌 薬 か―.小児耳鼻 2000;21:37―41.

9)泉谷 徳 男,高 松 勇,平 田 良,圀 府 寺 美:上 気道炎に対する抗菌薬使用に関する医師および

患者アンケート調査報告.小児保健研 2008;

67:656―60.

10)Petersen I, Johnson AM, Islam A, Duckworth G, Livermore DM, Hayward AC:Protective effect of antibiotics against serious complications of common respiratory tract infections : retrospec- tive cohort study with the UK General Practice Research Database. BMJ. 2007;335:982―7.

11)Naito S, Tanaka J, Nagashima K, Chang B, Hishiki H, Takahashi Y,et al.:The impact of heptavalent pneumococcal conjugate vaccine on the incidence of childhood community-acquired pneumonia and bacteriologically confirmed pneumococcal pneumonia in Japan. Epidemiol Infect. 2016;144:494―506.

12)堀越裕歩,樋口 浩,相澤悠太,磯貝美穂子,伊 藤健太,荘司貴代:薬剤耐性アクションプラン の成果指標による小児病院の抗菌薬適正使用プ ログラムの評価.感染症誌 2017;91:936―42.

13)明神翔太,神吉直宙,久呉真章,本郷彰裕,笠 井正志:地方都市の休日急患センターにおける 15歳未満の小児への経口抗菌薬処方状況.日小 児会誌 2019;123:886―90.

Change of Outpatient Antibiotic Prescriptions in the Clinic in Cooperation with Community Pharmacies Tomomichi KUROSAKI

Kurosaki Childrenʼs Clinic

When considering measures against antimicrobial resistance (AMR), it is important to manage the use of antibiotic drugs by outpatients in cooperation with community pharmacies as well as to consider whether the number of antibiotic prescriptions is appropriate or not.

I calculated the number of antibiotic prescriptions for outpatients from prescriptions dispensed by a community pharmacy. The number of antibiotic prescriptions per 1,000 visits was 125 in 2009, 199.3 in 2011, 173.3 in 2014, 171.1 in 2016, 103.0 in 2017 and 38.6 in 2018.

Compared to 2011, the number of outpatient antibiotic prescriptions in 2018 had decreased by 80.6%, and the number of 3rd generation oral cephalosporins, macrolides, and new quinolones had decreased by 89.6%. The goal of the National Action Plan on AMR was attained by these results.

The number of antibiotics prescribed was positively correlated with the prescribed dose (potency). In- creases or decreases in prescribed doses of antibiotics can be estimated by checking the number of antibi- otic prescriptions.

Even if only approximate, it is still possible to monitor any tendency of outpatient antibiotic prescrip-

tions using a simple method, and it is considered that this method can be helpful in reducing unnecessary

and inappropriate usage of antibiotics.

Fig. 1 Annual  trend  of  the  number  of  antimicrobial  prescriptions  and  antimicrobial types per 1,000 visits  050100150200250 2009 2011 2014 2016 2017 2018 Penicillins 3rd cephalosporins Macrolides
Fig. 2 Correlation between the number of antimicrobial prescriptions and anti- Fig. 2 Correlation between the number of antimicrobial prescriptions and anti-biotic potency  y = 2.2172x + 1,130.7 R² = 0.9805 0 1,0002,0003,0004,0005,0006,0007,000 0  500  1,0
Fig. 3 Comparison of the number of antibiotic prescriptions with a neigh- Comparison of the number of antibiotic prescriptions with a neigh-boring otolaryngology clinic  0100200300400500600700 2011 2014 2016

参照

関連したドキュメント

Moreover, it is important to note that the spinodal decomposition and the subsequent coarsening process are not only accelerated by temperature (as, in general, diffusion always is)

We have formulated and discussed our main results for scalar equations where the solutions remain of a single sign. This restriction has enabled us to achieve sharp results on

The methods we are using when considering packing dimensions of intersection measures are influenced bythe theoryfor projections of measures introduced byFalconer and Howroyd in [1]

We will study the spreading of a charged microdroplet using the lubrication approximation which assumes that the fluid spreads over a solid surface and that the droplet is thin so

Motivated by ongoing work on related monoids associated to Coxeter systems, and building on well-known results in the semi-group community (such as the description of the simple

Some insects are known to develop resistance to insecticides after repeated use. As with any insecticide, the use of this product should conform to resistance management

Each Country shall, in accordance with its laws and regulations, take measures which it considers appropriate against its exporters to whom a certificate of origin has been

In order to facilitate information exchange, Japan Customs concluded with various foreign countries the Customs Mutual Assistance Agreement that includes provisions for