◎論説WTO加盟後の中国経済と日本
W T O 加 盟 後 の 中 国 と 台 湾 の 経 済 関 係
田君美・・⁝
はじめに
中国と台湾は︑それぞれ二〇〇一年末および二〇〇二年
初めに世界貿易機関(WTO)に加盟し︑中国はWTOの
一四三番目の加盟国︑台湾はWTOの一四四番目の加盟国
となった︒両岸(中国と台湾のことを指す)がWTOに加
盟してから︑台湾は両岸経済貿易政策に対してどのような
調整を行ったのか︑そしてこの調整が両岸の経済貿易相互
の動きにどのような結果をもたらしたのか︑さらにこの結
果が台湾経済にどのような影響を及ぼしたのか︑というの
が本文の研究分析の重点である︒本文では︑まず台湾がW
TOに加盟する以前(二001年末以前)の両岸の経済貿 易情況を分析し︑次にWTO加盟後(二〇〇二年以降)の
台湾当局の両岸経済貿易政策に対する調整および具体的な
措置を分析する︒さらに両岸がWTOに加盟してから現在
までの経済貿易における相互の動きを検討し︑最後に一歩
進めて︑将来の両岸経済貿易発展の趨勢と台湾の対応策に
ついて分析する︒
WTO加盟以前(二〇〇一年末以前)の両岸経済貿易発展の状況
WTO加 盟後 の中国 と台湾 の経 済関係
間接貿易
切 一九八七年︑人道的理由により︑台湾当局が中国への親
族訪問を許可して以来︑両岸経済貿易が発展することとなっ
た︒一九八七年八月︑台湾は最初に二七品目の中国産の農
工原料の間接輸入を開放し︑一九八八年には中国産品間接
輸入処理原則を公布した︒一九九六年七月一日からは︑中
国工業製品の輸入に対して﹁負面表列﹂という管理措置を
採り︑農産物に対して﹁正面表列﹂措置を採った︒二〇〇
一年末には︑農工産品の許可輸入比率は五六・四%に達し
た︒いわゆる﹁間接貿易﹂とは︑両岸商品の輸出入貿易を
指し︑台湾←香港(あるいはその他の地区)←中国︑逆も同
様に︑中国←香港(あるいはその他の地区)←台湾というよ
うに︑必ず第三地区を経由しなければならない︒統計によ
ると︑一九八六年台湾の中国市場に対する依存度はわずか
に一・四九%であったが︑一九九六年には一六・五%まで上
昇し'X1001年には一九・六%に達し︑上昇し続けてい
る︒近年︑各国の中国市場に対する依存度も高くなり続け
ているが︑依然として台湾より低く︑台湾はすでに世界で
最も中国市場依存度の高い地域となった︒
台湾政府の統計によると︑一九九一年︑台湾の対中間接
輸出額は六九・三億ドルで︑その後年々増加し︑二〇〇一年
には二四〇・六億ドル︑一九九一1X1001年の累計間接輸
出額は一九=二・○億ドルに達した︒一方︑一九九一年︑台
湾の中国からの間接輸入額は一一・三億ドルで︑これもまた
年々増加し'二001年には五九・○億ドル︑一九九一‑二 ○〇一年の累計間接輸入額は三五九・五億ドルになった︒こ
のことは︑一九九一ー二001年の台湾の対中貿易黒字額
が一五五三・五億ドルに達したことになる(表1参照)︒台
湾はすでに中国の第四の貿易相手国︑第二の輸入市場にな
り︑中国は台湾の第三の貿易相手国︑第一の輸出市場︑第
四の輸入市場︑そして最大の貿易黒字国なのである︒
ここ十年︑台湾の対中輸出の高い成長は︑中国市場にお
けるシェアにも反映している︒X1001年︑台湾の中国市
場におけるシェアは=・二一二%で︑日本の一七・五八%に
はわずかに及ばないが︑台湾は中国の第二の輸入国である︒
これに続いて︑アメリカが一〇・七六%︑韓国九・六一%︑
ドイツ五・六二%となっている(表2参照)︒台湾製のレー
ヨン︑プラスチック製品は中国市場においてシェア第一位
を占め︑電気機械設備︑機械用具︑有機化学製品︑スフ綿︑
生皮皮革︑これらの中国市場におけるシェアもみな一割を
超えている︒X1001年には︑台湾から大陸向け一〇大産
品は︑対中輸出総額の七八・五%に達した(輸出各項目ラン
キングは表3参照)︒
口間接投資
間接投資においては︑台湾は企業活動の要求を満たすた
め︑一九九〇年一〇月に︑﹁間接投資または技術協力の管理
弁法﹂(間接投資或技術合作管理弁法)を定め︑これによっ
12g
表1両 岸経 済貿 易統 計表
(単位:百 万 ドル)
年
台湾の対 中間接輸 出 台湾の対中間接輸 入 批 准 され た 中 国 向 け 間 接 投資
金額 増 減(%) 金額 増 減(%) 件数 金額
1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
6 9 12 14 17 19 20 ig 21 26 24
928.3 696.8 727.8 653.0 898
148 518 380 221 144 061 2 3 0 i 3 0 3
66.1
・11
31.3 15.1 22
7 7
‐io 15 23
̲g
1 0 2 4 5 2 0
1 i i 1 3 3 3 4 4 6 5
126.0 119.0 015.5
..
091.3 059.8 915
iio 526 223 902 3 5 3 3 0
47.1 1.
‑
1 66.3
‑1 .0 28
5 10 37
‑5 0 0 1 5 2
237 264 9,329 934 490 383 8,725 1,284
,..
840 1,186
1 1 4 2 1 2 2
174.16 246.99 3,168.41 962.21 092 229 334 034 252 607 784
71 24 31 61 74 14 is
1999^2001 191,296.4 一 35,951.3 一 24,160 19,886.73
注:増 減 は 前年 同時 期 と比 較 。 台 湾 の対 中 輸 出 は 、1992年 以前 は香 港 税 関統 計 を 採 用 し、1993年 以 降 は、台 湾 の香 港 経 由 中 国 向 け輸 出 と台湾 の対 中 直接 輸 出 の 総 計 に な って い る。 また 、台 湾 の 対 中輸 入 は、1992年 以 前 は香 港 税 関 統 計 を採 用 し、1993年 以降 は台 湾税 関統 計 を 採用 して い る。
出 所:経 済 部 国 際 貿易 局 。
表2主 要 国家 の対 中輸 出依 存 度 お よび シ ェア
(単位:%)
国名
対 中輸出依存度 中国 市 場 に お け る シ ェア
1998年 2001年 1995年 2000年 2001年 2002年
上半 期 台 湾
EU 日本 韓 国 ア メ リカ
ドイ ツ オ ー ス ト ラ リ ア カ ナ ダ イ ン ドネ シ ア マ レ ー シ ア ニ ュ ー ジ ー ラ ン ド
16 2 5 9 2
4 0 3 2 2 7 3 2 0 i
‑
3 8 8 7 9
19 2 7 12 2
6 1 3 4 4 6 9 7 0 6
‑
2 1 9 i 2
11.2
‑
22.0 7.8 12.2 6.1
: :
一
11.3
‑
18.5 10.3 9.9 4.6
: :
一
11.2
‑
17.6 9.6 1:
5.6 2.2
:
2.6 一
13.1
‑
:1 9.5 9.4 5.6
二 :
一
注:依 存 度 は、 対 中輸 出総 額 が そ の 国 の全 輸 出総 額 に 占め る割 合 を表 して い る。
出所:経 済部 国 貿 局 。
12g‑‑WTO加 盟 後 の 中 国 と台湾 の 経 済 関 係
(単 位:億 ドル;%)
台湾 の対 中十大 主要 輸 出商 品 表3
順位 商 品
2000年 2001年
前年増減比率 金額 輸出依存度 金額 輸出依存度
1 電 気 機械 設 備 お よび そ の部 品 64.02 14.9 59.54 17.6 一7 .0 2 機械用具 およびその部品 40.83 10.3 39.30 11.9 一3 .7
3 プ ラス チ ッ クお よ び その 製 品 33.45 42.1 29.82 42.9 一10 .9
4 鋼鉄 15.70 37.0 15.32 43.9 一2 .4
5 レ ー ヨ ン 13.19 34.6 11.16 34.4 一15 .4
6 工業用紡織物 .;. 51.2 8.04 ,.. 一18 .7
7 有機化学製品 5.21 43.8 7.99 53.2 53.4
8 光 学 カ メ ラ等 測 定 器具 お よび
その 部 品 や付 属 品 7.20 19.8 7.39
.・ 2.7
9 銅 お よび そ の製 品 .1' 41.8 5.51 47.4 一9 .6
10 ス フ綿 6.03 32.1 ., 33.9 一18 .1
台湾の対 中輸出総額 261.44 17.6 240.61 19.6 :1
注:依 存 度 は、 その 産 品 の対 中輸 出総 額 が 全輸 出総 額 に 占め る割 合 を表 して い る。
出所:経 済部 国貿 局 。
て台湾企業の中国向け投資に規範を設けた︒その
後︑両岸関係活動の法制化を築き︑一九九二年九
月には︑日々多様化かつ複雑化する両岸事務に対
応するように︑﹁台湾地区と大陸地区人民関係条
例﹂(台湾地区与中国地区人民関係条例)を施行し
た︒両岸経済交流が日増しに頻繁になってきたに
もかかわらず︑政府は台湾企業の投資動向に関す
る情報に甚だ乏しく︑経済部は一九九三年になっ
て︑すでに中国向け投資をしている台湾企業の許
可登記を補足し︑一九九三年三月に︑﹁大陸地区で
投資または技術協力に従事する許可弁法﹂(在中国
地区従事投資或技術合作許可弁法)を定めた︒一
九九六年三月︑まさに台湾総統選挙の期間に︑中
国は台湾海峡で軍事演習を実施し︑直接台湾を脅
かした︒そうしたこともあり︑台湾は一九九六年
九月になって︑中国との経済貿易に対して︑﹁戒急
用忍﹂政策を採り︑一九九七年に︑﹁大陸地区で投
資または技術協力に従事するプロジェクトの審査
原則﹂(在中国地区従事投資或技術合作項目審査原
則)を公告した︒一件につき︑中国向け投資を申
請する際︑金額が五〇〇〇万ドルの上限を超えて
はならないことを定めた︒ここにきて︑両岸の経
済貿易活動は︑間接貿易や間接投資という﹁間接﹂
i30
をもって行うことになった︒
いわゆる﹁間接投資﹂・とは︑台湾企業が中国へ投資する
際︑必ず第三地区で子会社設立の登記をしてから中国へ投
資しなければならないことを指す︒一般に第三地区は香港︑
バージン諸島︑ケイマン諸島になることが多い︒このよう
な間接経済貿易の規定は︑台湾と中国が敵対国家であり︑
双方は決して投資保障協定を締結せず︑中国が常に武力で
台湾を攻撃しようとすることにある︒もし台湾企業が第三
地区を経由して中国へ投資するのであれぼ︑台湾企業は第
三地区政府の保障を得ることができる︒これは︑両岸の特
殊な政治関係下での︑経済貿易の便宜的措置である︒台湾
政府側の統計によると︑一九九一年に許可された中国向け
間接投資の金額は一・七四億ドル︑全部で二三七件であっ
た︒その後毎年投資案件はふえ︑二〇〇一年には︑許可さ
れた間接投資金額は二七・八四億ドル︑一一八六件になっ
た︒一九九一‑二〇〇一年の台湾政府許可中国向け投資額
累計は︑全部で一九八・八億ドル︑投資案件は全部で二万四
一六〇件に達し︑中国はすでに台湾の最も主要な対外投資
国となった(表1参照)︒
ここ数年︑第三地区を経由し中国へ投資する多くが大企
業である︒この間接投資は︑投資する際のリスク回避に有
利であり︑その結果は確かにある程度の効果もあげている︒
しかし︑まだ多くのメーカーが間接投資の原則を実行して おらず︑政府の許可なく直接中国に投資している︒そのた
めに︑台湾が許可している実際の投資金額と︑中国外経貿
部が公表している投資金額との間に︑大きな格差が生じる
こととなった︒中国外経貿部の統計資料によると︑台湾企
業の中国向け投資金額は台湾側の統計よりもはるかに多い︒
二001年一二月末までの累計は︑全部で五・〇八万件の投
資件数︑契約投資金額は五四七・三億ドル︑実際の使用外資
は二九一・四億ドルに達し︑同時期の台湾側許可金額の一・
四七倍になっている︒台湾における中国向け投資雑誌の調
査データによれば︑格差は一層大きい︒その調査結果では︑
台湾企業は中国に六・二四万社︑投資総額が二二九四億ドル
に達しており︑わが国および中国政府側のデータを非常に
上回っている︒これは政府の権力が及ぼず︑とりわけ企業
資金の流れが不明で︑投資について大衆は知る方法がなく︑
政府機関も全く把握することができないからである︒これ
らが対中投資金額が諸説入り乱れるという局面をもたらし
ている︒
十余年の投資過程を経て︑台湾企業は大陸の投資領域︑
投資規模︑産業構造において変化してきた︒投資の主体は
中小企業を主としたものから大企業へ︑投資の産業構造は
労働集約型から資本・技術集約型に変わった︒投資地域は
沿海部から全国各地へ︑またハイテク分野に拡がって行っ
た︒こうして電子産業を主要投資分野とする中国投資ブー
WTO加 盟 後の中国 と台湾 の経 済関係 iii
表41991‑2001年 台 湾 企 業 対 中 国 認 可 間 接 投 資 統 計(業 種 別)
(単位:百 万 ドル、%)
業 種 件数 金額 総金額 に
占める割 合 業 種 件数 金額 総金額 に
占め る割合 電子および電気
器具製造業 3,994 6,051.2 30.43
非金属 および鉱
産物製品製造 業 1,174 1,057.0 5.31 化学品製造業 1,526 1,280.3 , 運輸手段製造業 734 78L5 3.93
金属製品製造業 2,093 1,616.7 8.13 機械製造業 837 643.3 3.23 プ ラス チ ッ ク製
品 製造 業 2,互35 1,496.3 7.52 精密器械製造業 2,239 982.7 4.94 食品および飲料
製造業 2,235 1,338.3 6.73 その他産業 6,170 3,790.0 19.06
紡織業 1,023 849.4 4.27 合計 24,160 19,886.7 100.00
注:1)「 両 岸 人 民 関係 条 例 」 第35条 規 定 に基 づ き、 大 陸 向 け投 資 メ ー カ ー に3か 月 の期 限 (1997年7〜9月)を 与 え 、 この期 間 に補 足 許 可 登 記 を した 企業 が 、 この統 計 に含 ま れ て い る。
2)四 捨 五 入 に よ り、 各項 目 の数 字 は合 計 と等 し くな って い な い。
出 所:経 済 部 投 資 審議 委 員 会。
表51991‑2001年 台 湾 企 業 対 中 国 認 可 間 接 投 資 統 計(地 区 別) (単位:百 万 ドル、%)
地 区 件数 金額 総金額 に
占め る割合 地 区 件数 金額 総金額に
占める割合
広 東 8,480 6,822.8 34.31 湖 北 421 203.2 LO2
江 蘇 5,926 7,311.9 36.77 山 東 668 410.7 2.06
漸 江 1,236 932.0 4.69 遼 寧 413 231.7 1.16
福 建 3,136 1,790.0 9.00 湖 南 254 125.7 0.63
河 北 1,726 1,098.1 5.52 そ の他 の地 区 1,522 692.9 3.48
四 川 378 267.9 1.35 合 計 24,160 19,886.7 100.00
注:1)「 両 岸 人 民関 係 条 例 」 第35条 規 定 に 基 づ き、 大 陸 向 け投 資 メ ー カ ー に3か 月 の 期 限(1997年7〜9月)を 与 え、 この期 間 に 補足 許 可 登 記 を した企 業 が 、 この統 計 に含 まれ て い る。
2)四 捨 五 入 に よ り、各 項 目の数 字 は合 計 と等 し くな っ て い ない 。 出所:経 済部 投 資 審 議委 員会 。
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