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密教文化 Vol. 1996 No. 195 004大塚 裕晤「There 構文とX, Y, Z style (1)――ヘミングウェイの「異国にて」―― PL83-L59」

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(1)

There構 文 とX, Y, Z style (1) -ヘ ミ ン グ ウ ェ イ の 「異 国 に て 大 塚 裕 曙 There構 文 分 析 There構 文 は 単 にS+Vで 表 現 で き る と こ ろ を、 意 識 的 にThere+V+S で 文 の 流 れ を ポ ー ズ を 置 い て 読 者 の 気 分 を 一 新 さ せ る と 同 時 に 作 者 も述 べ る べ き核 心 に つ い て の 一 端 を 如 実 に 提 示 し て い る 重 要 構 文 で あ る と 言 え る。 There構 文 は 倒 置 文 で あ る が、 単 な る 副 詞+do+S+Vの 倒 置 構 文 ル ー ル に 当 て は ま ら な い。 い わ ゆ る'do'を 用 い な い の で あ る。 Be動 詞 の 場 合 はThere+V+Sと な り、 倒 置 構 文 と 同 じで は あ る が、 倒 置 構 文 の 副 詞 又 は 副 詞 句 は 訳 出 し な け れ ば な ら な い。(1)そ れ に 反 し てthere構 文 の 場 合 は thereは 「そ こ に 」 と 訳 して は な ら な い。 そ の 点 が 倒 置 構 文 と 異 な る。 そ れ 故、 作 者 は 読 者 に 話 題(Topic)を 提 供 す る の で あ る か ら、 Topic style と考 え た い。 従 っ て 単 に 「∼が あ る 」 と い う受 け止 め 方 だ け で は、 作 者 の 意 図 が 十 分 に 読 者 に 伝 え られ た と は 言 え な い。 作 品 の 題 に 対 し て、 文 展 開 と密 接 に 関 係 して い る こ と に 注 目 し な け れ ば な ら な い。 言 わ ん と す る テ ー マ に 直 接 結 び っ い て い る の で 適 格 に 注 意 し て 把 握 す べ き な の で あ る。 there構 文 を 文 の 構 造 の 観 点 か ら も 考 察 し て み る と、 thereを 形 式 主 語 と 考 え て、 次 の 様 に 樹 系 図(2)で 表 示 で き る。

(1) cf The strawberry season by Erskine Caldwell

There were always a lot of girls there (そ こに いつ も多 くの女 の 子 が い た) 英 米 珠 玉 短 篇 集 金 星 堂p. 101974. 12. 1

(2)「 言 語 学 へ の招 待 」(=An invitation to Linguistics)Zillo Song著p. 246 南 雲 堂1990. 1. 18

There

(2)

密 教 文 化 s NP Aux VP N Tenqe V NP Det N There PAST be a student

(=There was a student.)

astudentを

意 味 上 の主 語 と考 え るの が 妥 当 で はな い だ ろ うか。 さ ら に否

定 文、 疑 問 文 にっ いて も、後 で 考 察 して み た い。

be動 詞 で な い場 合 は 自動 詞 の 主 客 補 語 と して 考 え ね ば な らな い。 こ の

場 合Do-導

入 (Do-support)

は必 要 な い が、 否 定 文、 疑 問 文 の場 合 に は

Auxの

下 のPASTの

直 後 にDo-導

入 が 必 要 とな る。 前 述 の'do'を

用 い

な い と言 った の は、 肯 定 文 の場 合 で あ る。本 論 で 問題 に な る の は肯 定 文 の

場 合 で あ る。 しか し樹 系 図 を問 題 にす る場 合 に は、 否定 文 や 疑 問 文 も問題

に しな け れ ば な い ので 後 で 論 述 す る こ と にす る。

There構 文 の形 式 主 語 を'there'と し、眞 主 語 を 主 格 補 語 と して 考 え る

の は樹 系 図 の分 析 上 の問 題 で あ る。 本 論 で は眞 主 語 を 問題 に しな け れ ば な

らな い。 これ まで 問 題 に して き たの は 「テーマ と語、構文-there構

文 ボー、

ワイ ル ドの場 合 」(3)であ っ た。 要 約 して み る とthere構 文 の 眞 主 語 は テ ー

マ と直 接 に結 びっ く語 で あ る。3人 の 女流 作 家 とヘ ミン グ ウ ェ ー の場 合 を

比 べ る と一 目瞭 然 で あ る。

(3)同 論 文 大 塚 裕 曙 大 阪 商業 大 学 論集 第37号1973. 11. 1

(3)

さ ら に 耽 美 主 義 の 作 家 と し て 知 られ る ボ ー と ワ イ ル ドのthere構 文 に 比 較 して み た。 ま ず ボ ー の 「赤 死 病 の 仮 面 」 のthere構 文 の 眞 主 語 に つ い て 要 約 す る と、 光、 音、 時、 耽 美 的 な も の で あ り、there+be動 詞+眞 主 語 か ら、stand, come, stalk, strike, ariseと 状 態 の 動 詞 か ら、 す な わ ち 'state'な も の か ら動 作 の 動 詞 へ の 移 行 が 見 ら れ、 し た が っ て 眞 主 語 も 次 第 に 耽 美 的 な 傾 向 が 強 く な っ て い く。 there構 文 を 公 式 化 して み る と次 の よ う に な る。 There+be動 詞 又 は stand come stalk+名 詞 strike arise

立 日

耽 美 的 な もの

+関 ・代 (1)「耽 美 的 な 雰 囲 気 を か もす 名 詞 」 が ま ず 出 さ れ る。There was(又were) +耽 美 的 な 名 詞、

(a) sharp pain, (は げ し い 痛 み)、sudden dizziness (不意 の 目 の く らみ)、 profuse bleeding (と め ど もな い 出 血)

(b) buffoon (s) (道 化 師)、improvisatori(即 興 詩 人)、ballet-dancer(s) (踊 り子)、musician(s)(楽 人)、 Beauty(美 人)、 wine(酒)

(c) seven-an imperial suite (壮 麗 な7っ の 広 間 の 続 い た 宴 会 場)、a sharp turn(急 な 曲 が り 角)、a novel effect(新 し い 効 果)

次 に ワ イ ル ド と の 比 較 で、 ワ イ ル ドの 「 ド リ ア ン ・ グ レ イ の 肖 像 」 を 取 り 上 げ て み る と、 ボ ー に は見 ら れ な い 表 現 技 巧 が、There is something、 や there is nothing に 見 ら れ る。

There is something

fearful (お そ ろ し い) of the martyr(about her) (彼 女 に つ い て 殉 教 者 の よ う な)

形 容 詞 や 形 容 詞 句 をっ け、 耽 美 的 名 詞 と同 じよ うな 表 現 を作 り出す の で

あ る。

There 構 文 とX, Y, N style (1)

(4)

密 教 文 化 「ポ オ は そ の 物 ず ば り の 表 現 を 好 み、 ワ イ ル ドは何 か 表 現 し た い も の を 包 み 込 む よ う な 表 現 で あ る。」 「ド リア ン ・ グ レ イ の 肖像 」 を 調 べ て 驚 い た こ と に は、there+is+some-thing(no such thingな ど)+修 飾 語 句 が48も あ る と い う こ と で あ る。 次 に 修 飾 語 句 を 比 べ て み る と 4回 3回 2回 1回 32語 (イ) 修 飾 語 句 there is nothing+修 飾 語 句 は16語 あ る。 ・3回 2回 1回 (ロ) 修 飾 語 句 (イ) の 場 合 there is something+修 飾 語 の 場 合 に は純 粋 で、 若 々 し い 修 飾 語 が 用 い ら れ て い る。 そ れ に 反 し て(ロ)の 場 合there is nothing+修 飾 語 の 場 合 に は、 必 死 の 態 度、 対 決 の 意 図 に あ ふ れ た も の が 修 飾 語 に あ ふ れ て い る。 ボ ー の 場 合 に はthere is名 詞 と い う 簡 潔 で あ る が、 迫 力 に あ ふ れ たstyleで あ る の に、 ワ イ ル ドの 場 合 はthere is something∼、there

(5)

う態 度 がstyleに も 表 わ れ て い る。 結 局、 ア メ リカ 作 家 と イ ギ リ ス 作 家 の 思 考 態 度 の 反 映 だ と考 え ら れ る。 ヘ ミ ン グ ウ ェ ー が 極 度 に 形 容 詞 を 避 け、 Hard-boiled styleを 確 立 し た こ と と も関 係 が あ る。

「ド リア ン ・ グ レ イ の 肖 像 」 のthere is+名 詞 を 分 析 す る と、

上 の 図 の 様 に な り、 前 述 の 如 く、there is+「 匂 」 の 耽 美 名 詞 やthere is something+修 飾 語 句 やthere is nothing+修 飾 語 句 は、ポ オ の 「赤 死 病 の 仮 面 」に 見 ら れ な い ワ イ ル ドの 「ド リア ン ・グ レ イ の 肖 像 」の 特 徴 と言 え る。 styleと し て 見 れ ばthere is something+修 飾 語 句 が32例 も あ り、 又 There is nothing+修 飾 語 句 が16例 も あ る の は 著 し い 特 徴 と い え る。又 ボ ー のthere構 文 は前 述 の 如 くbe動 詞 よ り もstand、come、stalk、strike、a riseと 動 的 表 現 を 好 む の に 対 し て、 ワ イ ル ドの 場 合 はThere is something ∼、there is nothingに 見 られ る よ う にbe動 詞 を 好 み 物 事 を 静 的 に 把 え て

い る の で あ る。 こ の 点 も ア メ リカ 作 家 と イ ギ リ ス 作 家 の 人 生 観 や 物 の 見 方 に 対 す る 態 度 の 違 い に 起 因 す る の で あ ろ う。 「異 国 に て 」(ヘ ミ ン グ ウ ェ イ)の 文 体 分 析 There 構 文 とX, Y, N style (1)

(6)

Eynest Hemingway (1899-1961)ノ ー ベ ル 文 学 賞 作 家 で、'A Farewell to Arms' (1929)「 武 器 よ さ ら ば 」(4)は代 表 作 で あ る。 そ の 中 の ミ ラ ノ の 場 面 を 書 く下 敷 に な っ た の が、 こ の 「異 国 に て 」(ln another country) で あ る。 「彼 は"Hard-Boiled style"と 呼 ば れ た 感 情 を お さ え た 簡 潔 な 文 体 を 工 夫 し、 そ れ に よ っ て 人 間 の 前 に 宿 命 と して 立 ち は だ か る 「死 」 の 意 識 を 常 に 書 い て き た 作 家 で あ る。」(5)

本 論 で 扱 うthere構 文 は 伝 統 的 なstyleでHard-Boiled Style(6)で は な い が、there is+名 詞 のstyleで 名 詞 の 選 定 に 関 し て は テ ー マ と 語 と い う 意 味 か ら す れ ばHard-boiled wordを 用 い て 文 展 開 を 試 み て い る と 考 え ら

れ る。

「異 国 に て 」 の 冒 頭 で(I) In the fall the war was always there. (=There was always the war in the fall. の 倒 置)(秋 に は い つ も戦 闘 が あ っ た)こ の 一 文 か ら も 「戦 争 」 が テ ー マ で あ る こ と が わ か る。 冒 頭 か ら 倒 置 で 始 あ る と は 読 者 に 強 烈 な 印 象 を 与 え る。 物 語 全 体 の 中 でthere構 文 の 頻 度 を 調 べ て み る と、 there構 文 (真 主 語) → story展 開 図 の 「時 」 と 「写 真 」 のthere構 文 に つ い て は (1) の テ ー マ の と こ ろ で 論 究 す る。

(4) AFarewell to Arms (E. Hemingway・ 高 村 勝 治、注 解)英 潮 社1968. 4. 1 (5)「英 米 珠 玉 短 篇 集 」(岩 元 巌、注 解)p. 88成 美 堂1991. 1. 20

(6)英 潮 社 版p. 3「 短 文 を 使 え、 小 第 一 文 節 を 使 え、 生 々 した英 語 を使 え、 積 極 的 で 否 定 的 に な るな、 古 い俗 語 を使 う な、 楽 しい俗 語 は新 鮮 だ。 形 容 詞 を避 け よ。 特 に 立 派 で 豪 華 で、 壮 大 で も っ た いぶ っ たそ ん な 法 外 な もの を 」

(7)

上 の 図 か らわ か る よ う にstoryの 冒 頭 で 最 高 度 に 用 い ら れ 徐 々 に 頻 度 が 減 少 し物 語 が 完 結 す る。

秋 に は 戦 闘 が 切 れ 目 な くっ つ い て い た が、 ぼ く ら は も う前 線 に は い か な か っ た。秋 の ミ ラ ノ は 寒 く、日 が 暮 れ る の が 実 に 早 い。 す る と 電 灯 が と も さ れ て、 ウ イ ン ドウ を 覗 き な が ら大 通 り を 歩 く の が 楽 し く な る。(7) (2) There was much game hanging outside the shops. (店 の 前 に は 猟 の 獲 物 が た く さ ん ぶ ら さ が っ て い た。) 冒 頭 のthere構 文 の 意 味 上 の 主 語 がthe war (戦 闘)で あ っ た の に、 死 体 で は な く動 物 の 死 体 で あ る の は、 ヘ ミ ン グ ウ エ ー の 美 的 感 覚 で あ ろ う。 無 気 味 さ と 異 状 さ で 読 者 の 心 を 引 き つ け る の に は 十 分 な 表 現 で あ る。 店 の 前 に は獲 物 が た く さ ん ぶ ら さ が っ て い た。 狐 の 皮 に 雪 が こ び り っ き、 そ の 尻 尾 が 風 に 吹 か れ て い た。 鹿 は硬 直 し て、 ず っ し り と、 虚 ろ に ぶ ら さ が っ て い た。 小 鳥 た ち も風 に 吹 き さ ら さ れ、 羽 毛 が 逆 立 っ て い た。 い か に も寒 い 秋。 山 か ら風 が 吹 き下 ろ し て い た。(8) there 構 文 は 文 展 開 の 話 題 を 提 供 す る に は、 最 適 の 構 文 と い え る。 (3) there were different ways of walking across the town through the dusk to the hospital.

(夕 暮 れ に 町 を 通 り抜 け て 病 院 に ゆ く道 順 が 三 通 り あ っ た。) 「異 国 に て 」 の 話 題 の 本 論 に 入 る 糸 口 がthere構 文 で 始 め ら れ る。 ぼ く ら は 毎 日 午 後 に な る と、 み な 病 院 に 通 っ た。 夕 暮 れ に 町 を 通 り抜 け て 病 院 に 行 く道 順 は 三 通 り あ っ た。 そ の う ち の 二 っ は 運 河 沿 い の 道 だ が、 ど ち ら も 遠 ま わ り だ っ た。 い ず れ に せ よ、 病 院 に 入 る に は 運 河 に か か る 橋 を わ た る こ と に な る。(9)

(4) There was a choice of three bridges. (橋 は三 つ の 中 の ど れ か を 選 ぶ こ と が で き た。) (7) ヘ ミ ン グ ウ ェイ短 篇 集(一)(大 久 保 康 雄 訳)新 潮 文 庫p. 1601970. 6. 25 (8) 同 上 (9) 同 上 There 構 文 とX, Y, N style (1)

(8)

密 教 文 化

コー ス選 択 と はい って も病 院 へ い く負 傷 兵 の橋 の選 択 で あ って、 息 づ ま る

よ うな苦 しさを感 ぜ ざ るを得 な い。 しか し、 自 由 の きか な い負 傷兵 に と っ

て唯 一 の 自 由 で あ る。

橋 は三 っ の 中 の ど れ か を選 ぶ こ とが で き た。 一っ の 橋 で は、焼 き栗 を

売 って い る女 性 が い た。 彼 女 の炭 火 の前 に立 っ と暖 か か った し、栗 を

ポ ケ ッ トに入 れ て お くと、 あ とで体 も温 ま った。 病 院 の 建 物 は とて も

古 く、 とて も美 しか った。 いっ もゲ ー トか ら入 って 中 庭 を 横 断 し、反

対 側 の ゲ ー トを通 り抜 け る。(10)

そ の選 択 は戦 闘 の冷 酷 さ か ら解 放 され た時 の人 間 は、 暖 か い 思 い や りを

感 じさせ る もの-焼 栗 を売 って い る女 性 で あ る こ と は当 然 に思 わ れ る。 焼

栗 は負 傷 兵 の体 を暖 た め、 冷 え切 った心 まで も暖 ため て くれ た の で あ る。

そ の よ うな意 味 で3っ

の橋 の 中で この橋 の選 択 は大 きな 意 味 を も って い た

と言 え る。 この 「

異 国 に て」の 最 初 の一 頁 でthere構 文 が4っ、

そ の 眞 主

語 はthe war(戦

闘)、game(獲

物)、ways

of walking(道

順)、 choice

(選択)で

あ る。負 傷 兵 た ち は リハ ビ リに病 院 に 向 か うの で あ る。

(5) There were usually funerals starting from the courtyard. (こ の

中 庭 か らは、 た いて い葬 列 が 出 発 して いた。)負 傷 兵 が 直 面 す るの は ま た

して も葬 列 なの で あ る。 戦 闘 の傷 跡 は病 院 に ま で続 い て い く の で あ る。

異 国 に て」 の核 心 部 分 に迫 って く るの で あ る。

この 中 庭 か らは、 た いて い葬 列 が 出 発 して いた。 古 い病 棟 の 向 こ うに

新 しい レ ンガ造 り の病 棟 が で きて いて、 そ こで ぼ く らは毎 日午 後、 顔

を 合 わ せ て いた の だ。 ぼ く らはみ ん な行 儀 よ く振 舞 い、 相 手 の病 状 に

関 心 を 示 し、卓 効 あ らたか だ と い う機械 装 置 に す わ るの だ った。

There構 文 は書 き言 葉 で あ るた め、storyを 展 開 す る た め に効 果 的 技 巧

で あ るが、 筋 を 収 敏 しす ぎ る傾 向 が あ り、 そ の 緊張 度 を弛 め る ことが 必 要

にな って く る。 す な わ ち、 戦 闘→獲物→道順→選択→葬

列 と この高 ま った

(10) 同上

(9)

緊 張 を 弛 め る た め に は、 対 話 文 で あ る。 ヘ ミ ン グ ウ ェ イ は対 話 文 の 達 人 で あ る こ と は、 同 音 変 調 ス タ イ ル(11)で十 分 察 せ ら れ る。 ぼ くの す わ っ て い る機 械 の そ ば に、 医 師 が 近 寄 っ て き て 言 っ た。 「従 軍 す る前 は、 ど ん な こ と が 好 き だ っ た ん だ ね?何 か ス ポ ー ッ は や っ て い た の か い?」 ぼ く は 答 え た。 「え え、 フ ッ トボ ー ル を や っ て い ま した 」 「そ い つ は い い 」 医 師 は 言 っ た。 「き っ と、 前 よ り 上 手 に フ ッ ト ボ ー ル が で き る よ う に な る ぞ 」 ぼ く は 片 方 の 膝 が 曲 が らず、 脚 は ふ く ら は ぎが な く て 膝 か ら く る ぶ し ま で じ か に っ な が っ て い る よ う な 具 合 だ っ た。 そ の 機 械 に か か る と、 ち ょ う ど 三 輪 車 を 漕 ぐ と き の よ う に、 膝 を 曲 げ て 動 か せ る よ う に な る は ず だ っ た の で あ る。 だ が、 膝 は ま だ 曲 が らず、 曲 が る 箇 所 に さ し か か る と 機 械 の ほ う が ガ ク ガ ク し た。 医 師 は 言 っ た。 「そ の う ち、 す ん な り と 動 く よ う に な る。 き み は 幸 せ な 若 者 だ ぞ。 い ず れ ま た、 チ ャ ン ピ オ ンの よ う に フ ッ トボ ー ル が で き る よ う に な る さ 」 と負 傷 兵 と の 対 話 で、 負 傷 兵 が"Yes, football."と 返 答 し た の に、 医 者 は"Good,"と 即 座 に 言 っ た。football〔fntbo: 1〕 に 対 してGood〔gud〕、 〔u〕 と 〔u〕と 同 音 変 調 ス タ イ ル の 一端 が う か が わ れ る。 隣 の 機 械 に か か っ て い た の は、 赤 子 の よ う に小 さ な 手 を した 少 佐 だ っ た。 そ の 手 は二 本 革 の 帯 に 挟 ま れ て お り、 そ の 帯 が 上 下 に 動 い て 硬 直 し た 指 を 揺 す ぶ る仕 掛 け に な っ て い る の だ が、 医 師 が そ の 手 を 調 べ る と、 少 佐 は ぼ く に ウ ィ ン ク して 言 っ た。 「じ ゃ あ、 わ た し も フ ッ トボ ー ル が で き る よ う に な り ま す か ね, 軍 医 殿?」 彼 は フ ェ ン シ ン グ の 達 人 で、 戦 争 前 は イ タ リ ア 一 の 名 手 だ っ た の だ。 医 師 は 奥 に あ る 自 分 の オ フ ィ ス に い っ て、 一枚 の 写 真 を も っ て き た。 (11) ヘ ミン グ ウ ェ イ の同 音 変 調 ス タイ ルー 「殺 し屋 」 に お け る視 点 と時 間 と虚 無 に っ い て 大塚 裕 曙 帝 塚 山短 大 英 文 科 研 究 誌Helicon 3号1978. 4 There 構 文 とX, Y, N style (1)

(10)

密 教 文 化 そ こ に は、 以 前 は 少 佐 の 手 と 同 じ く ら い 小 さ く し ぼ ん で い た の が、 そ の 機 械 の 治 療 コ ー ス を 受 け て す こ し大 き く な っ た 手 が 写 っ て い た。 い い ほ う の 手 で 写 真 を っ ま む と、 少 佐 は 仔 細 に な が あ た。 「こ れ は 怪 我 を し た の かな?」彼 は訊 い た。 「工 場 の 事 故 で ね 」 医 師 は 答 え た。 「そ い っ は 興 味 深 い な、 実 に 興 味 深 い 」 少 佐 は 写 真 を 医 師 に 返 し た。 「自 信 が っ い た か ね?」 「い や 」 少 佐 は 答 え た。

こ の 一 節 で も very interesting, very interesting と 連 語 す る の も、 同 音 変 調 ス タ イ ル で あ る。 ま た、 一 語 対 話 も ヘ ミ ン グ ウ ェ イ の 対 話 の 特 徴 で も あ る。"Awound?"「怪 我?」 と 負 傷 兵 が 質 問 し た の に 対 し て、 医 者 は "An industrial accident,"「工 場 の 事 故 」 と答 え る。 リズ ム も単 純 さ を

重 視 して い る がwoundとaccidentと 異 音 で、 意 味 上 で も生 じ る 不 均 衡 を 'i nteresting'を 二 度 重 ね る こ と に よ っ て、 リズ ム も高 め て い る。 こ の よ う な 対 話 文 を 生 じ た 効 果 はthere構 文 の 緊 張 感 を 弛 め、storyの 生 気 を 甦 ら せ ヘ ミ ン グ ウ ェ イ の 文 体 の 魅 力 を 高 め て い る。 次 の 展 開 に は 再 度there構 文 が 必 要 に な っ て く る。

(6) There were three boys who came each day who were about the same age l was. (ぼ く ら と ほ ゴ同 年 で、毎 日 病 院 を 訪 れ る若 者 が 三 人 い た。)

ぼ く と ほ ぼ 同 年 で、 毎 日病 院 を 訪 ね る 若 者 が 三 人 い た。 い ず れ も ミ ラ ノ 出 身 で、 一 人 は 弁 護 士 志 望、 も う 一 人 は 画 家 志 望、 あ と の 一 人 は 根 っか ら の 軍 人 志 望 だ っ た。 機 械 の 治 療 を 終 え る と、 ぼ く ら は と き ど き 一 緒 に、 ス カ ラ座 の 隣 の カ フ ェ ・コ ー ヴ ァ に立 ち 寄 っ た。 近 道 を し て 共 産 党 地 区 を 通 り 抜 け た の は、 ぼ く らが 四 人 連 れ だ っ た か ら だ。 ぼ く ら は 将 校 だ と い う 理 由 で 人 々 に 憎 ま れ て い た。 あ る酒 場 の 前 を 通 り す ぎ る と、 「ア ・バ ッ ソ ・グ リ・ ウ フ ィ チ ア リ(能 無 し 将 校 に 乾 杯)!」 と い う掛 け声 が 中 か ら飛 ん で き た く ら い だ。 ヘ ミ ン グ ウ ェ イ を 含 あ、 弁 護 士、 画 家、 軍 人 そ れ ぞ れ を 戦 闘 が 巻 き 込 む

(11)

ば か りで な く、負 傷 とい う代 償 と して、 勲 章 を得 るが、 将 校 で あ るが故 に

共 産 地 区 で罵 声 を浴 せ か け られ る とい う予 想 外 の悲 劇 も生 む に 至 る とい う

筋 の 展 開 の 冒頭 はThere構

文 で あ る こ とにThere構

文 の意 味 を感 ぜ ざ るを

得 な い。

さ らに も う一 人 の若 者 が 登 場 し、 ヘ ミング ウ ェー は ア メ リカ人 で イ タ リ

ア 戦 線 に義 勇 兵(12)として参 加 した と い う理 由 で、 前 述 の 三 人 の 勲 章 の 意

味 が少 し異 な って い た ので、 疎 外 感 を も って いた。 この若 者 は勲章 が なか っ

た の で 二 人 は親 近 感 を もって い た。

と き ど き、 も う一 人 の 若 者 が 同 行 して ぼ く らが五 人 組 に な る と きが

あ った のだ が、 そ の 若 者 は黒 い絹 の ハ ンカ チ ー フで顔 を覆 って い た。

彼 に は鼻 が な くて、 近 日中 に整 形 手 術 を 受 け る予 定 に な って い た。 彼

は士 官 学 校 を 出 て 従 軍 し、初 め て 最 前 線 に 出て 一時 間 も しな い うち に

負 傷 した の だ った。 そ の後 彼 は顔 を 整 形 して も ら った の だ が、 由緒 あ

る 旧 家 の 出 だ った 彼 の鼻 は、 そ の家柄 にふ さわ しい形 には もど らなか っ

た。 彼 は南 米 にい って、 銀 行 に勤 め た。 で も、 これ はず いぶ ん昔 の話

だ し、 そ の 頃 自分 た ち の将 校 に つ い て わ か って い る者 な ど、 ぼ く らの

だ れ一 人 と して い な か った。 当 時 ぼ く らにわ か って い たの はた だ一っ、

戦 闘 は絶 え ず続 い て い るけ れ ど も 自分 た ち は も う前 線 に 出 る必 要 は な

い、 とい う こ とだ け だ った。

この 一 節 の最 後 に、 五 人 組 は も う戦 闘 に は出 な い と い う安 堵 感 と戦 闘 が

続 いて い る とい う複 雑 な気 持 が入 り組 ん で い る。 戦 闘 は絶 えず 続 い て い る

と い うthere構 文 は、 この 「

異 国 に て」 の 冒 頭 と同 一 文 で あ る。 こ こで は

(12) 英潮社版 「ヘ ミングウェイ」(p. 3)

ヨーロ ッパ の戦争 は、 しか し、Hemingwayを

じっとさせて はおか なか った。

たまた ま、イタ リア戦線 の赤十字で志願兵 を求 めてい ることを知 ると、彼 はさっ

そ くそれ に応募 し、1918年5月、 中尉 と して入 隊 し、イ タ リア戦線 に加わ った。

ヨー ロッパ はHemingwayた

ち若 いアメ リカ人 に とって は、夢 と ロマ ンスの舞

台 と思 われて いた し、戦争 は冒険 と正義 に充 ちあふれた、美 しい、楽 しいものと

思 われて いたのだ。だが、

There 構 文 とX, Y, N style (1)

(12)

倒 置 文 で は な い。

(7) there was always the war.

there構 文 は 眞 主 語 が 「人 」 か 「物 」 か に よ っ て 異 な る が、 今 ま で 戦 闘、 獲 物、 道 順 く 選 択、 葬 列、 若 者、 戦 闘 で あ っ た。 若 者 で あ る眞 主 語 を 除 け

ば、 他 の6っ は す べ て 「物 」 で あ る。Topic構 文 と し てthere構 文 を 考 え る こ と が で き る。 文 の 主 語 と し てTopicとCommentは バ ラ ン ス よ く入 り 混 じ る の がGood styleと 言 え る。Topicは 話 題 と か テ ー マ に 関 す る の で hardな イ メ ー ジ を 与 え る。Commentは 「人 」 を 主 語 と す る の で、 soft

イ メ ー ジ を 与 え る。Comment styleに は 流 暢 な 説 明 文 と し て はnatural で あ る。 ぼ く ら は み ん な 同 じ勲 章 を も ら っ て い た。 例 外 は 黒 い 絹 の 包 帯 を 顔 に 巻 い た 若 者 だ け だ っ た が、 彼 の 場 合 は そ も そ も勲 章 を も ら え る だ け 長 期 間 前 線 に い な か っ た の だ。 弁 護 士 志 望 の、 青 白 い 顔 を した 長 身 の 若 者 は ア ル デ ィ テ ィ(特 攻 隊)の 中 尉 で、 ほ か の み ん な が 一 っ しか 持 っ て い な い よ う な 勲 章 を 三 個 も ら っ て い た。 死 と 背 中 合 わ せ の 暮 ら し が か な り長 か っ た 彼 は、 す こ し引 っ 込 み 思 案 な と こ ろ が あ っ た。 ぼ く ら は み ん な、 多 少 と も引 っ 込 み 思 案 な と こ ろ が あ っ た。 ぼ く ら を 結 び っ け て い た 絆 が あ る と し た ら、 毎 日 午 後、 病 院 で 顔 を 合 わ せ る と い う、 た だ そ れ だ け の こ と で しか な か っ た。 い や、 そ れ だ け で は な い。 町 の 危 険 な 地 区 を 通 り 抜 け て コ ー ヴ ァ に い く と き は、 酒 場 か ら 明 り や 歌 声 が 洩 れ て い る 暗 い 通 り を 歩 い て い くの だ が、 と き に 歩 道 に 男 女 が 群 れ て い る と、 そ こ を か き 分 け て い くの を 避 け て、 車 道 を 歩 く こ と もあ る。 そ う い う と き、 ぼ く ら は、 自分 た ち が 一 っ に 結 ば れ て い る の は、 ぼ く らを 敵 視 し て い る連 中 に は理 解 し 得 な い こ と を 共 に 体 験 し て い る か ら な の だ、 と思 っ た り した も の だ。

(8) We felt held together by there being something that had happen-ed that they, the people who dislikhappen-ed us, did not understand.

(13)

せ る も の な の で あ る。 ぼ く ら 自 身 は み な、 コ ー ヴ ァ と い う店 の 何 た る か を 理 解 して い た。 そ こ は 贅 沢 で 暖 か く、 照 明 は 明 る す ぎ ず、 時 間 に よ っ て は 騒 々 し く タ バ コ の 煙 が 充 満 し て い た。 テ ー ブ ル に は た い て い 若 い 女 の コ た ち が い て、 壁 の ラ ッ ク に は 挿 し絵 入 り の 新 聞 が 入 っ て い た。 コ ー ヴ ァ に 集 ま る 女 の コ た ち は 愛 国 心 が 旺 盛 だ っ た。 実 際、 イ タ リア で い ち ば ん 愛 国 的 な の は カ フ ェ に 集 ま る 女 の コ た ち だ と い う こ と を、 ぼ く ら は知 っ 彼 女 た ち は き っ と い ま も、 愛 国 心 が 強 い だ ろ う。

(9) there were always girls at the tables and the illustrated papers on arack on the wall.

こ のthere構 文 の 眞 主 語 はgirls (人) と the illustrated papers(物) と2っ あ る。comment and topic style が 一 文 に な っ て い る。 さ ら にgirls は テ ー マ 展 開 さ れ る。(Cross style)

The girls at the Cova were very patriotic.

the most patriotic people were the cafe girls.

they are still patriotic.

最 初 の うち、 仲 間 の若 者 た ち は ぼ くの勲 章 に一 目置 いて くれ て、 ど

ん な殊 勲 を あ げ た の だ、 とたず ね た。 ぼ く は彼 ら に表 彰 状 を見 せ た。

そ こ に は美 辞 が連 ね て あ って、"フ

ラテ ラ ン ッ ァ(友 愛)"と

か"ア

ブ ネ ガ ツ ィオ ー ネ(犠 牲 的 精 神)"と

い った言 葉 が ふ ん だ ん に盛 られ

て いた が、 そ うい う形 容 詞 をみ な取 り除 い て しま う と、 要 す る に、 ぼ

くは ア メ リカ人 な るが 故 に勲 章 を授 け られ た、 とい う ことが書 いて あ っ

た。 そ れ を 境 に、 ぼ くに対 す る彼 らの 態 度 は微 妙 に変 わ っ たが、 町 の

人 間 を前 にす る と き、 ぼ くは相 変 わ らず 彼 らの友 人 だ った。 そ う、 ぼ

く は友 人 だ っ た。

前 述 の There were three boys の さ らな る展 開 が こ の一 節 で み られ る。

There

(14)

(Parallel style)The boys at first were very polite about my medals. そ のmedalが 「友 愛 」(13)「犠 牲 的 精 神 」(14)によ る も の だ と わ か っ た 後、 友 情 が 変 化 す る。Iwas their friend against outsiders. す な わ ち、 部 外 者

(町 の 人 間)に 対 す る 時 だ け と 条 件 が つ く に 至 る。

Cross styleはXstyleと 名 付 け、parallel styleをYstyleと 名 付 け る こ と と す る。 け れ ど も、 彼 ら が あ の 表 彰 状 を 読 ん で か ら は、 ぼ く は も う 彼 ら の 真 の 仲 間 で は な か っ た。 な ぜ な ら、一彼 ら の 場 合 は ぼ く と ち が っ て、 ぜ ん ぜ ん 別 の こ と を し て 勲 章 を も ら っ た か ら だ。 ぼ く も た し か に 負 傷 し た が、 本 当 の と こ ろ、 戦 場 で 負 傷 す る の は単 な る 偶 然 にす ぎ な い こ と を、 ぼ く ら は み ん な 承 知 し て い た。 で も、 ぼ く は あ の 勲 章 を 恥 じ て は い な か っ た し、 と き ど き、 カ ク テ ル を 飲 ん だ あ と な ど、 彼 ら が 勲 章 を も ら う た め に や っ た こ と な ど 自 分 だ っ て や れ た だ ろ う、 と 想 像 す る こ と も あ っ た。 け れ ど も、 夜、 商 店 が み な 店 仕 舞 し冷 あ た い 風 に 吹 か れ て 帰 る と き な ど、 な る べ く街 灯 か ら離 れ な い よ う に 歩 き な が ら、 ぼ く は つ くづ く、 自 分 に は 決 し て あ ん な こ と は で き な か っ た ろ う な、 と思 う の だ っ た。 ぼ く は 死 ぬ の が と て も怖 か っ た。 夜、 ベ ッ トに 一 人 横 た わ っ て、 死 へ の 恐 怖 に 包 ま れ な が ら、 こ ん ど 前 戦 に も ど っ た ら ど う な る だ ろ う、 と 不 安 に 襲 わ れ る こ と も し ょ っ ち ゅ う あ っ た。

Athey had done very different things. (彼 ら は 大 変 異 な っ た こ と を し た。)

B Iwould imagine myself having done all the things. (私 自 身 は す べ て の 事 を し た と想 像 し た。)

C Iwould never have done such things. (私 は そ ん な 事 は 決 し て し な か っ た だ ろ う。)

(13)、かatellanza [fratelanze]=brotherhood.「 兄 弟 愛 」 (14) abnegazione [abnegezioune]=abnegation.「 克 己」

(15)

A(否

定): 自 己 の行 動-B(肯

定): 自己 の 行 動 の再 検 討

C(否 定)/-D (restorative style) こ のstyleをZstyleと 名 付 け る。

さ ら に こ の 一 節 は Iwas very much afraid to die, ……afraid to die. と 死 の 恐 怖 を 反 復 してYstyleで 戦 闘 の 意 味 を 結 論 づ け る。

X, Y, and Z style

X style に つ い て 詳 細 に 述 べ る と、 修 辞 学 で 言 う chiasmus〔Kaiezmes〕 で 交 差 対 句 法 な の で あ る、 す な わ ち 対 に な っ た 表 現 で、 後 ろ の 部 分 を 前 の 部 分 の 語 順 と 逆 に す る と プ ロ グ レ ッ シ イ ブ 英 和 辞 典(15)で は 説 明 さ れ、 次 の 例 が 挙 げ ら れ て い る。He was a success in business but in marriage a failure. (彼 は仕 事 上 は 成 功 し た が、 結 婚 に お い て 失 敗 で あ っ た。)下 線 部 は 本 来 な らafailure in marriageと す べ き と こ ろ を 逆 に し て 新 鮮 な 気 分 を 読 者 に 与 え、 注 意 を 喚 起 した の で あ る。A+B…A+Bの 単 調 さ を 避 け る た め にA+B…B+Aと した の は 一 目 瞭 然 で あ る。

シ ェ イ ク ス ピ ア も 「ロ ミオ と ジ ュ リ エ ッ ト」(16)で、対 差 対 句 法(交 錯 配 列)を 用 い て い る 。Even so lies she, bluffering and weeping, weeping and bluffering. (お 嬢 さ ん も ち ょ う ど 同 じ よ う に う ち 伏 して、 む せ ん だ り 泣 い た り、 泣 い た り む せ ん だ り) こ の 一 文 で 見 られ る よ う にliesの 後 に 来 る bluffering and weeping は 叙 述 用 法 で あ りな が ら、Even so lies sheと 倒 置 に な り、 カ ン マ が あ り、liesよ り交 錯 配 列 の Bluffering and weeping, weeping and bluffering カミ独 立 し た 感 が 強 く な る。 逆 にliesと の 関 係 が 弱

く な る と い う点 で は、 限 定 用 法 の 場 合 よ り 文 法 性 が 希 薄 に な る。 しか し、

(15) プ ロ グ レ ッ シイ ブ 英 和 中 辞 典p. 328小 学 館 昭 和55年12月5日 (16) Shakespeare, Romeo and Juliet III iii 86-7

There

(16)

密 教 文 化

本 来、Chiasmus(交

錯 配 列)の 例 は叙述 用 法 に多 く見 ら れ る。 サ マ セ ッ

ト ・モ ー ムや ジ ェ イ ム ズ ・ジ ョイ スの 例 は(I)で

論 述 す る こ と とす る。

モ ー ム は語 と語 の 交 錯 配 列 を用 い、 ジ ョイ ス は語 と語、 句 と句 の交 錯 配

列 を用 い、 ヘ ミ ング ウ ェ イ は文 と文 の 交錯 配 列 的文 を実 験 して い る。

(主 語)

(補語)

(店 名)コ

ー ヴ ァの 女 の 子=愛

国 的

も っ と も愛 国 的 な 人 々 一

カ フ ェの女 の午

彼女 ら 一

愛 国的

二 重 交 錯 配 列 が 用 い ら れ て い る。 二 重 に 用 い る こ と に よ っ てpatriotic (愛 国 的)と い う語 が 三 語 用 い ら れ 強 調 さ れ て い る。cross styleす な わ ち Xstyleと 簡 略 化 し た の で あ る。

Parallel styleで あ るYstyleに つ い て 一 言 し な け れ ば な ら な い。 ・The boys at first were polite about my medals. (最 初 の う ち、 仲 間 の

若 者 た ち は ぼ く の 勲 章 に 一 目 置 い て く れ て)

・Iwas their friend against outsiders. (町 の 人 間 を 前 に す る と き、 ぼ く

は 相 変 ら ず 彼 ら の 友 人 だ っ た。)

こ の 二 っ の 文 はat first(最 初 の う ち)とagainst outsiders(町 の 人 間 を 前 に す る と き)と そ れ ぞ れ の 条 件 の も と でparallel(並 列)のstyleな の で あ っ て 、 厳 密 なparallelで な い。 だ が1里as very much afraid to die, … afraid to dieの 二 文 に お い て(死 ぬ の が 怖 い)と い う の は 同 音 変 調 ス タ

イ ル で あ る。 こ れ は ま さ にparallel styleで あ る。

従 っ てparallel styleに は 上 述 のconditional parallel style(条 件 付 並 列 型)と 同 音 変 調 ス タ イ ル の2っ の 型 に 分 か れ る。

同 音 変 調 ス タ イ ル の 実 例 を 挙 げ て み る と、

'Cat in the Rain'と い う短 編 の 中 で 次 の よ う な 会 話 が あ る。 「あ な た 何 か 失 っ た の?」

'He perduto qualque c

(17)

'There was a cat, 'said the American girl. 'Acat?'

'Si, it gatto. '(=(ltalian)Yes, the cat.) 'Acat?' the maid laughed. 'A cat in the rain?'

There構 文 で 猫 を 提 示 し て、 イ タ リ ア 語'il gatto' (猫) ま で 用 い て 同 音 変 調 ス タ イ ル で 会 話 を 展 開 さ せ る。

'Iwanted it so much,' she said, I don't know why I wanted it so much. I Wanted that poor Kitty. It isn't any fun to be a poor Kitty cat in the rain.'X17

Iwanted it so much, (大 変 猫 が ほ し か っ た の)と 三 度 も く り 返 さ れ、 さ ら に、 雨 の 中 の 濡 れ たthat poor Kitty (あ の あ わ れ な 子 猫) が 二 度 く り 返 さ れ る。 同 音 変 調 ス タ イ ル は ヘ ミ ン グ ウ ェ イ の 会 話 を リ ズ ミ カ ル に か つ 強 調 の ス タ イ ル で あ る。

Ystyleと はone-point focus styleな の で あ る。 そ の 点、there構 文 が テ ー マ か ら のZoom styleと は 対 照 的 で あ る。Y styleは 結 局、 同 音 変 調 ス タ イ ル にfocusさ れ て し ま う。 前 述 の 「異 国 に て 」 の 例 を 挙 げ て、 図 示 し て み る と、

(17) Adozen gem-like stories p. 58金 星 堂1978. 12. 1 同 書p. 59 cf「 ヘ ミ ン グ ウ ェ イ と 猫 と 女 た ち 」p. 130今 村 楯 夫 新 潮 選 書1990. 2. 20

There

(18)

密 教 文 化 意 味 的 「仲 間 」 と い う点 で (parallel) 並 列 で は あ る が、 こ こ で 問 題 視 して い る の はmedal(勲 章)で あ る。 結 局、 勲 章 と は 勲 功 が 問 題 で 「死 」 と 背 中 合 わ せ に 受 賞 す る も の な の で あ る。afraid to die, afraid to dieと 二 度 く り返 さ れ る こ と に よ っ でfocusさ れ て い く、 音 と意 味 が 完 全 に 一 致 す るstyleで あ る と言 え る。(II)で 詳 細 に 検 証 し て み る。 こ の 「異 国 に て 」 と い う ヘ ミ ン グ ウ ェ イ が ア メ リカ 人 で あ る の に、 イ タ リ ア戦 線 に 義 勇 軍 と し て 参 加 し、 勲 章 を も ら う が 仲 間 の イ タ リア 人 三 人 と は 勲 章 の 意 味 合 い が 違 う と い う一 点 が、 こ の 「異 国 に て 」 の 物 語 の 伏 線 と し て 盛 り 上 げ て い る。

前 述 のthere構 文 は テ ー マ に 向 っ て のZoom styleと い う 点 に つ い て、 「異 国 に て 」 の 冒 頭 の 一 節 よ り 図 示 し て み る。 (テ-マ) →there 構 文 の 意 味 上 の 主 語

倒 置:In the fall was the war always there. 語 順: There was always the war in the fall.

戦 闘 で 負 傷 し た 仲 間 三 人 と ヘ ミ ン グ ウ ェ イ が 緊 張 か ら解 放 さ れ、 電 灯 の 明 る い ウ イ ン ドウ を 覗 き な が ら平 和 な 街 を 歩 く解 放 感 に よ っ て 緩 和 さ れ る 有 様 は た ま ら な い 魅 力 と い え る。(I)に お い てthere構 文 の 図 示 を 順 次 ス ト リ ー 展 開 に 合 わ せ 考 察 す る こ と と す る。 次 にZstyleに つ い て 一 言 して お く と、 一 見、 正 反 合 の 弁 証 法 の よ う に 見 え る が、 合 の 世 界 を 提 示 す る の は 哲 学 で あ っ て、 文 学 は ス ト リ ー 展 開 の 中 で 読 み 取 り、 各 個 人 様 々 な 読 後 感 を 得 る の が 文 学 の 醍 醐 味 と い え る。

(19)

「異 国 に て 」 の 前 述 の 引 用 文 か ら再 度 考 察 し て み る と (A) they had done very different things.

ヘ ミ ン グ ウ ェ イ 以 外 の 他 の 三 人 は 将 校 と し て の 勲 章 を 得 る た め に様 々 の 異 っ た こ と を-勲功 を 果 し た。 三 人 と も ミ ラ ノ 出 身 で、 そ れ ぞ れ 弁 護 士 志 望、 画 家 志 望、 軍 人 志 望 で あ り、 そ の 中 の 一 人 の 少 佐 は 「赤 子 の よ う な 小 さ な 手 」 を 「二 本 の 革 帯 に は さ ま れ る 」 機 械 治 療 を 行 っ て い る。 回 復 の 見 込 は ほ ゴ不 可 能 と 思 わ れ る。 しか し、 そ の 機 械 の 隣 り で 治 療 を 受 け て い る ヘ ミ ン グ ウ ェ イ は、 こ の 重 傷 の 少 佐 と は 勲 功 の 差 は 歴 然 と し て い る。 他 の 二 人 も か な り の 重 傷 で あ る。 こ の 点 を-こ の 事 実 をhad doneと 過 去 完 了 形 で 表 現 して い る。

(B) Iwould imagine myself having done all the things.

Bで は ヘ ミ ン グ ウ ェ イ はwould imagineと 想 像 の 世 界-仮 定 法 で、 ア メ リカ よ り イ タ リア に 義 勇 兵 と し て や っ て 来 て、 負 傷 し 重 傷 で は な く と も(18)ヘ ミ ン グ ウ ェ イ 自身 と し て はhaving doneと 動 名 詞 を 用 い て 強 く精 神 上 の 自 己 肯 定 の 態 度 を 主 張 す る。 ヘ ー ゲ ル の 弁 証 法 な ら正 に 対 して 反 な の で あ ろ う。 しか し、 正 も反 も歴 史 的 事 実 の 対 比 で あ る。 ヘ ミ ン グ ウ ェ イ の 場 合 は 正 は 事 実 の 世 界: 反 は 想 像 の 世 界 と 対 比 の 次 元 が 異 っ て い る。 こ の 精 神 力 こ そ ヘ ミ ン グ ウ ェ イ の 強 さ で、 事 実 だ け で 人 間 の 価 値 が 決 定 さ れ な い。 こ の 強 い 精 神 力 こ そ、 読 者 に 限 り な い 力 を 与 え る。 こ の 点 が 高 く評 価 さ れ、 や が て ピ ュ リ ッ ツ ァ賞、 ノ ー ベ ル 賞 に と な っ て い く の で あ る。 こ の 「異 国 に て 」 は 「武 器 よ さ ら ば 」 の ミ ラ ノ の 場 面 の 下 敷 と な っ て い る こ と が 十 分 窺 わ れ る の で あ る。 さ て、Cに っ い て 考 察 して み る。

(C) Iwould never have done such thing.

さ ら に、 想 像 の 世 界 でwould never have done. 仮 定 法 過 去 完 了 の 否 定 を 用 い て 冷 静 な 態 度 で 自 己 を 見 詰 め 直 す。 す な わ ち、 事 実-想 像-想 像 と 自 (18)英 潮 社 版 ヘ ミ ング ウ ェ イ(p. 3) There 構 文 とX, Y, N style (1)

(20)

密 教 文 化

己 を厳 し く 自己否 定 の態 度 を捨 て ず、 リア リズ ム(19)であ る点、 こ の 「

国 に て」 を一 層 す ば ら しい作 品 に昇 化 させ て い る。(B)で 考察 した よ うに

弁 証 法 的 な合 と して の世 界 で はな く、(C)は 事 実(A)か

ら想 像(B)を

過 して、 否 定的-す

な わ ち リア リズ ム の精 神 を 徹 底 して 再 想 像(C)に

る の で あ る。 頭 の 中 で仮 空 に作 り上 げ た物 語 とは違 って、 あ く まで も行 動

的事 実 に も とつ く文 学 の迫 力 が読 者 に 肉迫 す る す さま じさ を秘 め て い る。

力 強 い作 品 の根 底 に な って い る。 この点 を見 過 して は な らな い の で あ る。

このZstyleをrestorative

style(再 活 生 の ス タイ ル)を

ま と め て 図 示

す る と、

A(事

実)

B(想

像: 自 己肯 定)

C(想

像: 自 己否 定)

D

上 図 のDに

つ い て一 言 しな け れ ば な らな い。Dに

つ い て は、 読 者 の 側

へ の ヘ ミ ング ウ ェ イの メ ッセ ー ジ の衝 動 の 余 韻 と い え る。 個 人 と して多 少

の差 こそ あれ、A→Cへ

の再 生 と同 様B→Dへ

の再 生 は否 め な い。A:C=

B:Dで

あ る ので、A→Cへ

の 態 度 がneverで

あ り、強 い否 定 的 態 度 が 感 じ

られ る。 一 方Bはall

the thingsで 表 現 され、 一 っ 一 っ す べ で の戦 場 で の

行 動 を 再 検 討 した上 で の 想 像 で 単 な る思 いっ きで な い点 が 読 者 の側 にか ん

じ られB→D余

韻 は否 めな い ので あ る。 この 段 階 で 一 つ の 区 切 りと考 え る

の は妥 当 で あ る。

本 論 で はヘ ミ ング ウ ェイ 「異 国 にて」 の 前半 を 検 討 して き たが(I)で

は後 半 を考 察 して み る。 文 体 論 的 考 察 を 実 際 的 に推 論 で き、 ヘ ミ ング ウ ェ

イ リア リズ ム の 世 界 に も触 れ られ た の は、本 論 の キ ー ポイ ン トで あ る。 こ

の リア リズ ム に つ い て一 言 して 本論 の締 め くく り と した い。

(19)英 潮社版 「ヘ ミングウェイ」p.

3

文体 のみでな く、記者 として、冷静 に客観 的に事物 を観察 する力 を この期 間に学

びと ったと思 われる。のちのHemingway文

学 の特徴 である、感 情 を描 く こと

を拒否 して、冷静 に非情 に外面 を描写 する態度 は この ころか ら生 まれた と考えて

よかろ う。

(21)

リ ア リ ズ ム ニ 十 世 紀<1>リ ア リ ズ ム の 諸 相(20)の 中 で、 ヘ ミ ン グ ウ ェ イ をLost ge-neration (「失 わ れ た 世 代 」) の 一 人 と して 位 置 づ け、 次 の よ う に 延 べ ら れ て い る。 「ヘ ミ ン グ ウ ェ イ は 戦 い に 傷 っ き 心 の よ り所 と 失 望 を 失 っ た 人 々 を 描 い た の で あ る。」 ヘ ミ ン グ ウ ェ イ も イ タ リ ア 戦 線 で 赤 十 字 の 運 転 手 と し て 脚 に 傷 を 受 け た。 「異 国 に て 」 の 引 用 文 よ り箇 条 書 き に し て 再 度 取 り 上 げ る と(1)片 方 の 膝 が 曲 が ら な い。(2)ふ く ら は ぎ が な い。(3)三 輪 車 型 の 治 療 機 具 で 回 転 さ せ、 リハ ビ リ を 行 う。(4)片 方 の 膝 が 曲 が ら ず ガ ク ガ ク と な る。 こ の 脚 の 傷 の 体 験 が 多 く の 作 品 に 書 か れ て い る。(21) 赤 十 字 の 運 転 手 と い う の は 第1次 世 界 大 戦 で イ タ リ ア 戦 線 で 負 傷 兵 運 搬 の 任 務 に志 願 し負 傷 し た の で あ っ た。 「武 器 よ さ ら ば 」(AFarewell to Arms, 1929)に こ の 体 験 が 書 か れ て い る。 ミ ラ ノ の 所 は こ の 「異 国 に て 」 が 下 敷 に な っ て い る。 負 傷 す る ま で の 経 歴 を 簡 潔 に 述 べ る必 要 が あ る。 ヘ ミ ン グ ウ ェ イ(Ear-nest〔Miller〕Hemingway)は シ カ ゴ の 西 部Oak Parkで1899年 に 恵 ま れ た 家 庭 に 生 れ、 学 校 時 代 に は 北 部 ミ シ ガ ン で 狩 猟 や 魚 釣 り を 楽 し ん だ。 高 校 卒 業 後 カ ン サ ス 市 で 記 者 に な り、 そ の 修 業 がhard-boiled styleの 素 質 が 磨 か れ、 義 勇 兵 に 志 願 し負 傷 し た の で あ っ た。

脚 の 負 傷 に っ い て、 軍 医 は ヘ ミ ン グ ウ ェ イ に 次 の よ う に 言 っ て い る。 「異 国 に て 」 よ り 引 用 す る。"That will all pass. You are a fortunate young man." (「そ の う ち、 す ん な り と動 く よ う に な る 。 き み は 幸 せ な 若 者

だ ぞ。」 さ ら に 軍 医 は ヘ ミ ン グ ウ ェ イ を 激 励 す る よ う に 続 け て 言 う。"You will play football again like a Champion." (22)(「い ず れ ま た、 チ ャ ン ピ

(20)教 養 と して の英 米 文 学 須 藤 信 雄 ・繁 尾 久 著p. 189南 雲 堂1960. 4. 15 (21)テ キ ス トP. 7 (22)同 書P. 7 T here 構 文とX, Y, N style (1)

(22)

密 教 文 化 オ ン の よ う に フ ッ トボ ー ル が で き る よ う に な る さ 」 こ の 軍 医 の ヘ ミ ン グ ウ ェ イ の 病 状 の コ メ ン トに 対 して、 う れ し い と も何 も言 わ ず、 隣 り の 重 傷 の 小 さ な 手 の 前 述 の 少 佐 に っ い て 言 及 して い る。 こ の よ う な 非 情 なstyleこ そ、hard-boiled style の 特 徴 と 言 え る。 リ ア

リ ズ ム の 一 面 で も あ る。hard-boiled style へ の 修 業 が 本 格 的 に 始 っ た の は 1921年9月 に 結 婚 して ト ロ ン ト市 の The Tronto Daily Star 紙 の 特 派 員 と して 渡 欧 パ リ に 住 ん こ と が 文 学 修 業 に と っ て 幸 運 で あ っ た。 さ ら に 幸 運 な こ と に は、 二 人 の 師 に 出 合 っ た こ と が 決 定 的 と な っ た。 一 人 は Gertrude Stein. ガ ー トル ー ド ・ ス タ イン(23)で、 ヘ ミ ン グ ウ ェ イ の 「日 は ま た 昇 る 」 (The Sun Also Rises, 1926) の 登 場 人 物 像 を 図 示 す る と

戦 争 の 傷 手 を ま ぎ ら わ そ う と し て 放 らっ な 生 活 を す る 若 者 た ち、 そ の 場 面 は パ リ の 酒 場 や ス ペ イ ン の 闘 牛 場 で あ る。 こ の 有 様 を ガ ー トル ー ド ・ ス タ イ ン は"You are all a lost generation."と 語 っ た。 「君 た ち は み ん な 失 わ れ た 世 代 だ 」 こ の 言 葉 も 「日 は ま た 昇 る 」 と い う題 名 と 有 名 に な っ た。 こ の 両 方 の 語 源 も 旧 約 聖 書 の 「伝 道 の 書 」 か らで あ る。(忽) (23)英 潮 社 版 「ヘ ミ ング ウ ェ イ」(p. 4) 「パ リで、Sherwood Andersonの 紹 介 状 を も って、 パ リに い た ア メ リカ の 女 流 作 家Gertrude Steinを 訪 ね、 彼 女 の サ ロ ンに 出入 して い た多 くの作 家 た ち に 会 い、 彼 らの は げ ま しで、 詩 や 短 篇 を 書 いた。」 (24)教 養 と して の 英 米 文学p. 189

(23)

"One generation passeth away, and another generation cometh; but

the earth abideth forever……The sun also rises, and the sun goes down, and hasteth to the place where he arose……(以 下 略) 一Ecclesiastes

「一 っ の 世 代 が 消 え 去 れ ば、 又 別 の 世 代 が 現 わ れ る。 しか し、 地 球 は永 久 に と ど ま る、 ……日 は ま た 昇 る。 そ して、 日 は 沈 む 人 が 起 き る 所 に 急

ぐ……伝 道 の 書 よ り

も う一 人 の 師 は詩 人 エ ズ ラ ・パ ウ ン ドEzra Pound(25)で あ る。 そ の 影 響 … で、 パ リで Three Stories and Ten Poems, (1923) を 出 版 し た。

Lost generation の'lost'「失 わ れ た 」 と か 「迷 え る」 と か の 意 味 だ が、 ガ ー トル ー ド ・ス タ イ ン が 主 張 した 根 底 に は 「伝 統 へ の 反 嬢、 戦 後 の 混 乱 に 対 処 で き な か っ た こ と に よ っ て 精 神 的 よ り ど こ ろ を 失 い、 ヨ ー ロ ッパ の 芸 術 へ の 憧 憬 の た め で あ った。」(26)しか し、 ヘ ミ ン グ ウ ェ イ は こ の 混 乱 を 強 く生 き 抜 い て 新 し い 境 地 を 切 り 開 い た。 彼 のhard-boiled styleも リ ア リ ズ ム の 主 張 を 徹 底 す る 文 体 で、 第1次 世 界 大 戦 (1914∼20) の 戦 後 の 空 虚 感 を 如 実 に 提 示 して く れ た。 筆 者 も第 二 次 大 戦(1940∼45)を 体 験 した。 大 陽 族 が 石 原 慎 太 郎 の 「太 陽 の 季 節 」 で 「伝 統 へ の 反 掻 」 「戦 後 の 混 乱 」 を 単 的 に 示 した の と 同 様 で あ る。 ま と あ 本 論 で は ヘ ミ ン グ ウ ェ イ の 「異 国 に て 」 の 前 半 を 文 体 論 的 に 考 察 して み た の で あ る。 (25)「 詩 が 生 ま れ る と き 私 の 現代 詩 入 門 」 辻 井 喬p. 121エ ズ ラ ・パ ウ ン ドと イ マ シ ズ ム 講 談 社 現 代 新 書1994. 3. 20 cf英 潮 社 版 「ヘ ミ ング ウ ェイ」(p. 4) 「ア メ リカの 詩 人Ezra PoundがHemingwayの 書 い て き た短 篇 を 読 み、 青 鉛筆 で そ の 短 篇 か ら大 部 分 の形 容 詞 や副 詞 を削 り と り、Flaubertの 書 き方 を 学 ぶ よ う に と忠 告 した。」 (26) 同書p. 184 There 構 文 とX, Y, N Style (1)

(24)

密 教 文 化

(1) there 構 文 の意 味 上 の主 語 と テ ー マ との 関 係 を 文 展 開 の 出 発 点 と 考

え 文 節 ご と に見 て み た。there 構 文 は伝 統 的 な形 と して の 器 で 中 身 と し

て の 意 味 上 の主 語 が ヘ ミ ング ウ ェ イ独 特 の テ ーマ と深 く関 係 して い る。

(2) Xstyle も伝 統 的 修 辞 法 で あ り、chiasmus

(対差 対 句 法、 交 錯 配列)

を 語 や 句 は シ ェ イ ク ス ピアか ら用 い られ て い るが、 ヘ ミン グ ウ ェ イ は文

に応 用 した文 が 見 られ る。 文展 開 の 強調 ス タイ ル で あ る。

(3) Ystyle は部 分 的parallel (並列) styleか ら完 全 一 致 の 同 音 変 調 ス

タイ ル へ形→意 味 へfocusし

て い くstyleで 実 験 的 に試 み て み た。

(4) Zstyleは

ヘ ミン グ ウ ェイ独 自の ス タ イ ル と考 え た い。restorative

(再 活 生)styleで、

形→意 味 へ の移 行 が 窺 え るス タイ ル で あ る。 文 体 論

は学 問 的 な確 立 が望 ま れ て い るが、 多 くの実 験 的 試 案 が試 み られて い る。

本 論 は ヘ ミン グ ウ ェイ の文 体 論 に一 石 を投 投 じる ことが 出来 れ ば 幸 いで

あ る。(II)で

は 「異 国 にて 」 の 後 半 に実験 を試 み る所 存 で あ る。

以 上 を図 に して ま とめ る に 当 って一 言 す る と、 中 心 的 構 文 と して テ ー マ

を考 え る に当 って、 まず there 構 文 を問 題 視 し、次 に、 そ の テ ー マ展 開 と

して Xstyle す な わ ち、chiasmus(交

錯 配 列)と

い う従来 の修 辞 法 を用 い、

さ ら に文 を収 敏 させ て い く た め に、Ystyleす

な わ ち、 部 分 的parallel

(並列) か ら同音 変 調 ス タイ ル へ、 前 述 の如 く意 味 と音 を 完 全 一 致 さ せ よ

うと単 純 化 と リズ ム化 が 強 調 され て い く、 い よ い よ最 終 段 階 で はZス

タイ

ルで、 哲 学 で 言 う弁 証 法 的 傾 向 を示 唆 しなが ら、読 者 の 読 後 感 へ の訴 え を

暗 示 す る に至 るの で あ る。

(25)

上 図 で は、 言 語 学 の 基 本 で あ る音→形→意 味 に向 って 論 究 して い る ので

あ るが、 実 際 上 は も っ と複 雑 で 音→形→意味 が 入 り乱 れ るの で あ る。 さ ら

に音→意味 の 直 接効 果 も生 れ て くる。

そ うい う意 味 で はス ク ラ ン ブル 状 態 に な るの が、 正 しいか も しれ な い。

立 目

意味寓

「異 国 に て 」 の 結 末をII(27)で 取 扱 う こ と に す る が、 こ ん な 短 編 で も様 々 な 起 伏 が あ る。 中 篇 「武 器 よ さ ら ば 」 で は も っ と複 雑 な 様 相 を 呈 し て く る と 考 え られ る。 と り あ え ず 今後(II)で「異 国 に て 」 を 方 法 論 で 分 析 し、 さ ら に 他 の 作 品 へ 考 察 の 糸 口 を 把 み た い と 思 っ て い る。 主 要 参 考 文 献 1. 英 米 珠 玉 短 篇 集 金 星 堂 1974. 12. 1

2.「言 語 学 へ の招 待 」(=An invitation to Linguistics) Zino Song 著 南 雲 堂 1990. 1. 18

3.「テ ー マ と語 ・構 文-there 構 文 ポ ー、 ワイ ル ドの 場 合 」 大 塚 裕 晒 ・大 阪 商 業 大 学 論 集 第37号1973. 11. 1

4. 英 米 珠 玉 短 篇 集 岩 元 厳 注 解 成 美 堂1991. 1. 20

5. A Farewell to Arms (E. Hemingway) 高 村 勝 治 注 解 英 潮 社1968. 9. 1 6. ヘ ミン グ ウ ェ イ短 篇 集 (一) (大久 保 康 雄 訳) 新 潮 文 庫1970. 6. 25 7.「 ヘ ミン グ ウ ェ イの 同 音 変 調 ス タ イ ルー「殺 し屋 」 に お け る 視 点 と 時 間 と虚 無 にっ い て 」 大 塚 裕 晒 帝 塚 山 短 大 英 文 科 研 究 誌 Helicon 3号1978. 4 8. プ ロ グ レ ッ シイ ブ英 和 中 辞 典 小 学 館 昭55. 12. 5 9. ヘ ミン グ ウ ェイ全 短 篇1高 見 浩 訳 新 潮 文 庫 平 成7年10月1日 10. 教 養 と して の英 米 文 学 須 藤 信 雄 ・繁 尾 久 著 南 雲 堂1960. 4. 15 11. Romeo and Juliet(大 塚 高 信 注)研 究 社 小 英 文 叢 書 昭. 37.2

<キ ー ワ ー ド> 文 体 論 (27) HARMONY 7. 高 野 山大 学 英 米 文学 専 攻 機 関 紙 There 構 文 とX, Y, Z Style (1)

参照

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