• 検索結果がありません。

食品スーパーの顧客満足を規定する要因に関する経験的研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "食品スーパーの顧客満足を規定する要因に関する経験的研究"

Copied!
17
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

論     文

第17巻 第4号 2015年5月

流 通 研 究 日本商業学会

食品スーパーの顧客満足を規定する 要因に関する経験的研究

横山 斉理

(日本大学)

(2)

1. はじめに

 小売業はドメスティックな性格を持つと 言われているが、グローバル化の波は小売業 にも押し寄せている。食料品や日用雑貨を扱 う小売市場においても、海外小売企業の日本 市場参入や日本の小売企業の海外進出はそ れほど珍しいことではなくなった。その主た るプレイヤーは巨大な資本を持つ大規模小 売商業者で、これらの企業は規模を活かして 競争優位を獲得している。

 規模による競争優位の実現は、グローバ ル化以前から国内市場においてもみられる。

チェーンオペレーションに基づく大量仕入・

大量販売により、総合量販店が日本の小売企 業の売上ランキング 1 位になったのは 1972 年のことである。以降、チェーンオペレー

ションを基礎としたビジネスモデルを採用 する大規模小売商業者は、仕入や PB 開発に おいて優位な立場を維持し、高品質な商材を 低価格で販売することを可能にしている。

 その一方で、一見すると優位な立場にはな いと思われる中小商業者が大規模小売商業 と同一商圏において健闘している例も数多 く観察することができる。たとえば、従業者 が 4 人以下の零細な食品小売商であっても、

品揃えを高度に専門化 ・ 個性化させ、顧客と 密接な関係を構築することによって、事業の 維持存続に成功している例は多く存在する。

 トップクラス以外の食品スーパーも、スー パー業態の市場集中度が他業態と比べると 低い水準にある1ことから考えると、顧客の 支持を得ることに成功していると言えるだ 要約(アブストラクト)

 本研究の目的は、日本の小売流通構造を特徴づける要因のひとつである中規模小売商業者の相対的な競争 優位がどこにあるのかを探るために、小売ミックスと顧客満足の関係を検討することである。この目的のた めに、本研究では、多様な買い物先の選択肢がある都市部で店舗展開する中規模チェーン小売業の顧客を対 象とした調査を行い、小売ミックスと顧客満足の関係を経験的に確認した。

 分析の結果、顧客満足に影響を与える小売ミックス要因は、影響力が強い順に、価格、品揃え、サービス であることが明らかになった。このことから、都市部で店舗展開する中規模小売チェーンは、一見不利に思 われる低価格競争においても大規模小売チェーンに対して優位性を持っていることが示唆された。

キーワード

 食品スーパー、顧客満足、小売ミックス

食品スーパーの顧客満足を規定する 要因に関する経験的研究

横 山 斉 理

(日本大学)

(3)

ろう。成熟市場のもとでは既存顧客の維持 はきわめて重要だが(懸田(1997))、このよ うな食品スーパーは、チェーンオペレーショ ンにより規模の経済の恩恵を享受しつつ、品 揃えやサービス、適した立地での出店、販促 プログラム、顧客関係の管理などといった点 で、直接競合する大規模小売商業者との差別 化に成功していると考えられる。

 以上の背景を受けて、本研究では、大規模 小売商業者と同様のチェーンオペレーショ ンを採用している、巨大資本を基盤としない 中規模の小売商業者(以下、「中堅スーパー」2 と表記)を対象に、その競争優位の源泉を顧 客満足という視点から考察する。

 トップ企業の動向を探ることはもちろん 重要だが、日本の小売構造全体の動態を考察 する際には、トップ以外の中小規模の小売商 業者に着目することも重要である。というの は、日本の小売市場においては、売上・従業 員数という観点では、トップ企業以外の、特 に中規模企業の存在感が大きく、このような 企業群がむしろ流通の構造全体を特徴づけ ているという側面があるからである。

 グローバルな視点で見た場合でも、中小小 売商業者(特に中規模小売商業者)が健闘し ている日本の現状は、大手資本による市場集 中がかなり進行している先進欧米諸国、ある いは進みつつある発展国にとって、きわめて 示唆に富むケースとなり得る。

 以下、本研究では次の構成をとる。第 2 節 では、国内外の研究動向をレビューし、問題 の所在を明らかにする。その上で、第 3 節 で仮説と方法を検討し、第 4 節で分析と考 察を行い、最後に第 5 節で貢献と課題を確 認する。

2. 先行研究のレビュー

顧客満足をめぐる研究の概観と本研究の位置 づけ

 顧客満足(あるいは消費者満足)3は、消費 者行動研究においては購買後に抱く態度と 位置づけられ、高橋(1998)では、満足源泉 解明型研究、満足形成プロセス解明型研究、

そして満足の帰結解明型研究という 3 つのア プローチがあることが指摘されている4。満 足源泉解明型研究は消費者の満足の源泉を 製品 ・ サービスの属性に求めてその因果関係 を探ろうとする研究、満足形成プロセス解明 型研究は満足が形成されるまでの心理的プ ロセスを説明しようとする研究、そして満足 の帰結解明型研究は満足(不満足)と事後に 生じる行動や意図といった帰結との関係を 探る研究である。近年では、先行要因と顧客 満足、そして結果の因果モデルを構築 ・ 検証 するという研究が盛んに行われ、小売業(小 売店における購買)という文脈でも多くの研 究が蓄積されている。

 この流れは、顧客満足を顧客維持やサービ ス品質とのかかわりで論じるサービス ・ マー ケティング研究においても見られる。サービ ス・マーケティングにおける顧客満足モデル も、消費者行動研究の先行要因と結果を統合 したモデルと同様、原因と結果の結節点に顧 客満足を位置づけ、その因果プロセスを検討 するモデルとなっている。ACSI(Anderson and Fornell(2000))を参考に作られた日本版 顧客満足度指数(JCSI)の顧客満足モデルも

「原因系と結果系の両者を合わせた全体モデ ル」(南 ・ 小川(2010)、6 頁)であり、サービ ス業のみならず、小売業についても多様な 業態を対象に実証研究が行われている(小野

(2010))。

 このような研究蓄積がある中で、本研究 は、顧客満足に影響を与える小売ミックス

(4)

要素の検討を行うことにする。その理由は、

日本の食品スーパーの顧客満足を検討する 際に、多くの先行研究が理論的基盤とする Oliver(1980)の「期待不一致(不確認)モデル

(Expectancy disconfirmation model)」がその まま適応できるかには、以下の 2 つの点で 慎重な姿勢が求められると思われるからで ある。

 第 1 は、期待不一致モデルにおける知覚 価値や知覚品質といった先行要因や、態度や 行動といった結果が、食品スーパーでの購買 においては有効に機能しない可能性がある ことである。日本においては食品スーパーの 顧客はきわめて熟練した反復購買者である ことが多く、自分のなじみの店舗の商品の品 質や価格設定の範囲をかなり正確に把握し ている可能性がある。その場合は、期待不一 致モデルの鍵概念である不一致そのものが 起こりにくくなる。また、買い物行動が習慣 的 ・ 固定的である場合は、顧客の買い物に対 する意識は相対的に低くなり、その結果、顧 客満足の結果として位置づけられる態度や 行動をとりにくくなる可能性もある5  第 2 は、顧客満足の先行要因そのものが成 立しない可能性である。日本の食品スーパー はハイ・ロー・プライス戦略を採用すること が多く、店内のマーチャンダイジングを頻繁 に変更する。このような、関与度が低いにも かかわらず変化の激しい対象に高い頻度で 出会う状況においては、顧客は事前に明確な 期待を持たなくなる可能性がある。「継続利 用客は買い物前にあらかじめ期待を持って 食品スーパーに来店している」と想定する よりは、むしろ、「継続利用客は店頭で商品 に出会ってはじめて欲望が生起し(あるいは 潜在ニーズが顕在化し)購買の意思決定を行 う」と想定するほうが妥当であるように思わ れる6

 以上から、本研究では中堅スーパーの固定 客の顧客満足を、期待不一致モデルではな く、原因系である小売ミックス要素を中心 に検討していく。それにより、中堅食品スー パーの相対的な競争優位がどこにあるのか を明らかにすることができる。というのは、

日本においては、ほとんどの食品スーパーは 他店あるいは他事業(ネットスーパーや宅配 など)と競合関係にあるので、それらと比較 した場合の相対的優位性を明らかにできる と考えられるからである。

 以下では、食品スーパーの顧客満足に影 響を与える小売ミックス要素を明らかにす るために、それらの関係を論じた研究をレ ビューしていく。

顧客満足と小売ミックスの関係を論じた研究  顧客満足(あるいはそれに準じる指標)と小 売ミックス要素の関係を論じている研究で本 研究の参考になる研究は、Mägi and Julander

(1996)、 進 藤 ・ 戸 梶(2001)、 高 橋(2004)、

そして寺島(2007; 2008; 2009a; 2009b)であ る。これらは、関与度がそれほど高くない商 品を扱う小売店舗の来店客から得られたデー タを実証的に分析する研究である。それぞれ の研究を、本研究の着眼点、すなわち顧客満 足と小売ミックス要素の直接的関係に関わる 限りで確認しておこう。

 Mägi and Julander(1996)は、4 タ イ プ の 食品小売店舗内でランダムに選ばれた顧客 から得られたデータをもとに、小売ミックス に関する知覚品質と顧客満足の関係を検討 している。その結果、顧客満足に対しては、

「品揃え(Assortment)」、「店の雰囲気(Store ambience)」、「スタッフの親切さや愛想よさ

(Personnel interaction)」、そして「対応の迅 速さ(Personnel promptness)」がそれぞれ正 の相関をもつことが明らかにされている7

(5)

 進藤 ・ 戸梶(2001)は、小規模の雑貨店と 衣料品店の来店者から得られたデータを用 いて小売ミックス要素と顧客満足の関係を 分析している。小売ミックス要素は、「店舗 の感性」、「接遇」、「店舗快適性」、「商品数」、

そして「価格」という 5 次元で、これらが顧 客満足に与える影響は、年代ごとに異なるも のの、「接遇」(+)、「商品数」(+)、「店舗の 感性」(+)、「店舗の快適性」(+)であること を明らかにしている8。なお、それぞれの潜 在変数を構成する観測変数は、「接遇」は店 員のアドバイスや対応、「商品数」は商品数、

「店内の感性」は商品のディスプレイや構成、

「店舗の快適性」は歩きやすさや店の場所や 陳列状態や価格表示や営業時間9で、それぞ れに対する顧客の評価を 7 件法で測定して いる。

 高橋(2004)は、2001 年と 2002 年にホー ムセンターの顧客を対象に実施・回収された データをもとに、消費者の態度的ロイヤル ティに影響を与える小売ミックス諸要素を 検討している10。分析の結果、態度的ロイヤ ルティに影響を与える変数は、消費者の「品 揃え」(+)、「接客対応」(+)、「独自サービス」

(+)、「チラシ広告」(+)、「催事・イベント」(-)、

「店内の感じ」(+)であることが明らかになっ 11。高橋(2004)では、2 年分のデータにお いて安定して影響関係を確認できるという 理由から、態度ロイヤルティは店舗の雰囲気 によって規定されるという仮説を導き出し ている。

  寺 島(2007; 2008; 2009a; 2009b)は、 中 小食品スーパーの顧客から得られたデータ を用いて顧客満足に影響を与える要因を明 らかにしている。一連の研究の結果、寺島

(2009a)は、顧客満足に影響を与えるのは、

影 響 力 が 強 い 順 に「 顧 客 サ ー ビ ス ク オ リ ティ」(+)、「商品クオリティ」(+)、「価格」(+)

であることを明らかにしている12。なお、「顧 客サービスクオリティ」は、「レジ係りの接 客」、「対応・商品知識」、「身だしなみ・礼儀」、

「挨拶や親しみやすさ」から、「商品クオリ ティ」は「肉類(牛、豚、鳥)」(の鮮度 ※ 筆 者補足)と「魚類」(の鮮度 ※ 同補足)とい う観測変数からなる構成概念であり、「価格」

は「特価魅力」という観測変数である。

 以上でみてきた先行研究の発見を要約す ると、小売業の顧客満足に影響を与える小売 ミックス要素は、大雑把に捉えると、品揃え、

店の雰囲気(快適さ)、スタッフの対応、アク セス、鮮度、価格、ということになる。これ らの実証研究は小売ミックスの有用性を来 店客から得られたデータを定量的に確認し ているという点で高く評価すべきである。

 しかしながら、小売業は状況依存性が高い ビジネスであるため、国、業種、業態、ある いは規模が変われば、その結果は異なってく る可能性がある。そのため、実証研究を実施 する際には、業種や業態、あるいは特定の業 態の中でも戦略グループごとに議論の対象 を絞る、調査対象を様々な属性(性別、所得、

購買頻度、など)で分類する、といった対応 が必要になる13

 つまり、小売業を研究対象とする場合は、

たとえそれが一般化を目指す実証研究で あったとしても、分析枠組みや発見事項の 適応範囲(一般化可能性)を狭く想定したリ サーチを実施せざるを得ない側面がある。こ のような対応をとることによって、分析枠組 みや発見事項の適応範囲は狭くなるという デメリットは生じるものの、一部の範囲内だ けでもより説明力の高い枠組みや仮説を構 築することが可能になる14

 この観点を考慮すると、調査対象小売業 者の業種が食品で、かつ、中小規模である ことから、本研究がもっとも参考にできそ

(6)

うなのは Mägi and Julander(1996)と寺島の 一連の研究となる。しかしながら、Mägi and Julander(1996)は国が異なっているため消費 者がそもそも異なる可能性がある。寺島の 一連の研究は、特に寺島(2008)および寺島

(2009a)はボランタリーチェーンに加盟する 独立系中小食品スーパーを調査対象として いることから、本研究が着目する、チェーン オペレーションを採用する中堅スーパーと は異なる。

 つまり、本研究の問題意識にもっとも合致 する先行研究においても、手続きに沿った慎 重な検証が行われてはいるものの、そこでの 結果や発見をそのまま無批判に受け入れて リサーチや分析モデルを構築するのは、現実 的な妥当性という点で難しい側面があると 思われるのである。この点を考慮しつつ、以 下では本研究の問題意識に沿った具体的な 仮説を検討していく。

3. 仮説と方法 仮説の設定

 本研究の調査対象は食品スーパーの顧客 である。このような顧客にとっては、食料品 の購買は日常的な行動となっていることが 想定されるため、店舗の小売ミックス要素 を 5 次元(田村(2001))あるいは 6 次元(Levy and Weitz(2012))で詳細に評価していると は想定しにくい15。むしろ、顧客は複雑な処 理を避け、大まかに小売店のメリットを評価 しているのではないかと思われる。

 この点を考慮し、本研究では顧客満足と小 売ミックス要素の関係について、先行研究の 知見と調査対象企業(後述)へのヒアリング 結果を参考にすることで、調査対象のコンテ クストに合った仮説を設定することにした。

 ヒアリングは、調査対象企業の上級役員、

役員、役職従業員に対して複数回、それぞれ

1 時間から 2 時間程度、実施した。具体的に は、「お客さんの支持を得るために重要だと 考えている要因は何ですか?」という質問を 皮切りに、様々な要因を話してもらうという 半構造化インタビューのかたちをとった。こ こでは、端的に本研究の仮説導出ともっとも 関わりが深いと思われる部分だけを引用し ておこう。

「われわれの仕事に必要なのは KKD だと よく言われています。勘と経験と度胸です。

店舗の状況は一店一店違うので、本部に言 われた通りではうまくいかないことが多い ですからね。売場は常に動いているのです。

(中略)実感としては、お客様の支持を得る のに重要なのは、立地が 50、価格が 20、

残りを品揃えとサービスが分け合うくらい でしょうか。」(2013 年 3 月 12 日、Y 本部長)

 この意見は、実務家との話し合いの中から 出てきたものである。ここで重要な点は、本 研究の問題意識と関わる限りでは、2 つある。

 ひとつは、店舗の状況は一店一店違う、売 場は常に動いている、ということである。調 査対象となった企業は阪神地区に 20 数店舗 を展開する食品スーパーである。売上規模は 350 億円程度(当時)で、トップランクの企業 のグループ会社でもないため、本稿が着目す る中堅スーパーと言えるだろう。ここで注目 すべき点は、阪神地区という相対的に狭い範 囲でチェーン店を展開する小売企業ですら、

店舗は一店一店違うと述べていることであ る。店舗を展開するエリアが狭いということ は、それだけ当該エリア内での食文化や消費 者意識などの異質性は低いはずだが、そうい う状況ですら、店舗は一店一店違うというの は、調査対象をより狭い範囲(たとえば、業 種単位、業態単位、戦略グループ単位、企業

(7)

単位など)に絞ることの妥当性を傍証してい るように思われる。

 もうひとつは、顧客の支持を得るために重 要な要因を整理している点である。具体的に は、立地、価格、品揃え、そしてサービス という小売ミックスにおける主要な要因が 指摘され、そのウエイトが述べられている。

立地すなわちアクセスの良し悪しが最も重 要な要因で、顧客が小売店を支持する要因の 50% を占めており、次いで価格が 20%、品 揃えの良し悪し、店内サービスの良し悪しが 残りである。調査対象企業の店舗は都市部に 展開しているため、すべての店舗は他店との 競争環境下にある。したがって、顧客の支持 を得るということは、つまり、他店との差別 化を実現し継続して来店してもらうことを 意味している。

 以上は現場を熟知する調査対象企業の実 務家が仕事の熟達化の過程で経験を通じて 獲得してきた知見(実践知)であり、先行 研究の結果ともおおむね整合的である。先 行研究では、品揃え、店の雰囲気(快適さ)、

スタッフの対応、アクセス、鮮度、価格が 顧客満足に影響を与える要因であると指摘 さ れ て い た が(Mägi and Julander (1996)、

進 藤 ・ 戸 梶(2001)、 高 橋(2004)、 寺 島

(2009a))、これらはすべてヒアリングから 得られた知見(立地、価格、品揃え、サービス)

に含まれる。店の雰囲気(快適さ)とスタッ フの対応はサービスに関するものであるし、

鮮度は取り扱う商品のクオリティという観 点から品揃えに含めてもよいだろう。以上 から、次の仮説を設定することができる。

仮説 1: 立地の評価が高いほど、顧客満 足は高くなる

仮説 2: 価格の評価が高いほど、顧客満 足は高くなる

仮説 3: 品揃えの評価が高いほど、顧客 満足は高くなる

仮説 4: サービスの評価が高いほど、顧 客満足は高くなる

 以上の仮説に加え、ヒアリングでは、顧客 の支持を得るための重要な要素には優先順 位があることも指摘されている。そのため、

以下の仮説も設定し得る。

仮説 5: 顧客満足に与える影響は、立地、

価格、品揃え・サービスの順に 強い

 ここまでは、顧客満足に影響を与えると考 えられる小売ミックス要素に関する仮説を 検討してきた。本研究の主眼は中堅スーパー の顧客満足の源泉を探ることであるが、顧客 満足と成果の関係についても検討しておく ほうがよいと思われる。というのは、店舗へ の来店自体が顧客満足の重要な成果ではあ るものの、来店客の財務的なインパクトが大 きいほうが企業にとって好ましいこともま た、確かであると思われるからである。

 食品スーパーでは最寄品の購買が多頻度 で行われるが、最寄品の購買には複数の選択 肢(他店舗や宅配など)が存在しており、消 費者は複数の店舗を使い分けることも多い ことを鑑みると、顧客満足が高い店舗ほど、

顧客の支出における当該店舗のシェアは大 きくなるはずである。この論理により、以下 の仮説が導かれる。

仮説 6: 顧客満足が高くなるほど、店舗の 成果は高くなる

(8)

調査対象の選定

 以上の仮説を検証するために、阪神間で 21 店舗(調査時点)の食品スーパーを運営す る A 社の店舗で日常的に買い物をしている 顧客(なじみ顧客)を対象に、その店舗への満 足度についての質問票調査を実施した。

 調査対象をなじみ顧客に限定した理由は、

継続的な利用顧客の満足とワンショットで の利用顧客の満足は質的に異なると考えた からである。継続的な利用は、いくつかある 選択肢の中から選ばれ続けた結果とみなす ことができるので、そこで得られている満足 はある程度安定した評価であると判断する ことができる。一方、ワンショットでの利用 で得られた満足は、その利用者がその店舗で 買い物をしたときにどのような状況に置か れていたのかに依存する可能性が高い。中堅 スーパーの強みは(他の選択肢があるにもか かわらず)継続的な利用顧客を作りだすこと に成功している点にあると考えられるため、

本研究では一見客ではなく継続的な利用客 に着目する。

調査方法

 調査は 2013 年 4 月から 6 月の平日 13 時〜

15 時に各店舗(21 店舗)で買い物を終えた顧 客に質問票を記入してもらうという方法を とった。実施に際しては、事前に本部を通じ て各店舗に協力を依頼し、調査実施直前に店 内放送でアンケートを実施している旨を告 知してもらった上で、調査者の代理人が買い 物終了後の顧客に声掛けを行い、用意した机 に着席の上、質問票に回答してもらった。な お、調査依頼に応えてもらう確率を上げるた め、謝礼として図書カード 500 円分を用意 していることも併せて告知し、回答後に謝礼 として手渡した。

 回収された質問票は 690 票であったが、

不正回答や欠損値が含まれるサンプルと、

明らかに不正と思われる回答を行っていた サンプルをリストワイズ削除し、その上で、

普段から当該店舗で買い物をしている顧客 のみを残した結果、有効回答数は 401 票と なった16

測定尺度

 具体的な測定尺度としては、小売ミックス 要素(立地、価格、品揃え、そしてサービス)、

顧客満足、そして成果の指標が必要となる。

 小売ミックス要素については、先行研究で 用いられた尺度を参考にしつつ、現場のコン テクストに合うよう、適宜、ヒアリングを参 考にして質問項目を作成した。具体的には、

立地、価格、品揃え、サービスについて複数 の質問項目を用意するとともに、先行研究の 知見を参考に、それ以外の項目(店の雰囲気、

商品の鮮度、設備、陳列、レジ待ち時間など)

も加え、スーパーで買い物経験のある消費者 を対象としたパイロット調査を実施し、実務 家と議論しながらワーディングを洗練させ ていった。最終的には 25 の質問項目を用意 し、それらに同意する程度を 7 件法で回答 してもらった。質問順が因子抽出に影響を与 える可能性があるため、対応策として各質問 をランダムに配置した。

 顧客満足については先行研究(サービス産 業生産性協議会編(2009)、小野(2010))にお いて頑健性が確認されている尺度が存在す るため、それを用いることにした。具体的に は、全体満足、選択満足、そして生活満足に 同意する程度を 7 件法で回答してもらった。

 顧客満足の成果としては、態度ロイヤル ティや行動ロイヤルティ、あるいは売上高や 利益や回転率などの業績が考えられるが(高 橋(1998))、本研究では、1 週間の利用金額を 成果と捉えることにした。具体的には、1 週

(9)

間当たりの店舗の平均利用頻度と 1 回当た りの平均利用金額を実数で記入してもらい、

それらを掛け合わせることで 1 週間の利用 金額を算出した。

 成果としてクチコミや利用意図を用いな かったのは、食品スーパーの利用客は反復・

継続利用が多く、クチコミが発生したとして もそのことが店舗の成果に与える影響は利 用金額ほど大きくはないと判断したからで ある。売上や利益、回転率などの業績につい ては、店舗が置かれた環境から受ける影響が 大きいため、顧客満足の成果とは想定しにく いと判断した。

分析モデル

 以上の変数により分析モデルを設定する が、これらの変数は店舗という集団にネスト されている可能性がある。チェーン経営であ るため、価格や品揃えあるいはサービスに店 舗ごとの差異は生じにくいと思われるが、顧 客満足や利用金額は店舗の顧客特性の違い

から影響を受ける可能性がある。立地に関し ては、顧客にとっての店舗へのアクセスの容 易さという主観尺度ではあるものの、店舗ご とに状況は大きく異なる可能性がある。ヒア リングにおいても、同一企業が狭いエリアで 運営するチェーン店ですら 1 店 1 店の状況 が違うと指摘されている。

 そこで、上記で操作化した変数が店舗ごと に異なるのかを確認するために一元配置の 分散分析を行った。その結果、立地が 1%水 準で、品揃えと成果が 5%水準で有意となっ たため、多重比較により店舗間の差を確認し たところ、有意差が認められたのは立地の みであった。具体的には、調査対象となった 21 店舗中、特定の 2 店舗間で平均値の差が 10% 水準で有意となった。そのため、今回 のサンプルにおいては店舗間の異質性(デー タの階層性)が分析に深刻な影響を与えると は考えにくいが、慎重を期して、分析モデル に店舗ダミーを導入することにした。分析モ デルは以下の図 1 のようになる。

図 1 分析モデル

(10)

コモン・メソッド問題

 本研究では従属変数と独立変数を同一の 回答者に答えてもらっているため、変数間 の関係が過度の強調されてしまうというバ イアス(コモン・メソッド問題)が生じる可 能性がある。そこで、すべての観測変数を 対象に、ハーマンの単一因子テストを行っ た(Podsakoff and Organ (1986))。具体的に は、固有値 1 以上を因子抽出条件とした探 索的因子分析(主因子法、回転なし)を行い、

固有値 1 以上の因子が 1 つ以上あるか、そ して第 1 因子の説明力が大多数(majority)に ならないかを確認した。その結果、固有値 1 以上の因子は 5 つ抽出され、第 1 因子の寄 与率は 42.2% にとどまったため、今回のサ ンプルにおいてはコモン・メソッド問題の影 響は深刻ではないと判断した。

4. 分析 手続き

 仮説検証に先立って、2 ステップ・アプロー チ(Anderson and Gerbing(1988))を用いて測 定尺度の妥当性および信頼性を確認した。先 行研究を参考にしたとは言え、分析に用いる 独立変数は調査対象に合うようにカスタマ イズされており、想定通りの小売ミックス要 素が構成概念として析出できるか分からな いからである。

探索的因子分析

 まず、小売ミックス要素が想定通りの次元

(立地、価格、品揃え、そしてサービス)に分 かれるのかを確認するために、関連する 25 項目を投入して探索的因子分析(最尤法、プ ロマックス回転)を行った17。その結果、固 有値 1 以上の因子が 4 つ析出された。各因 子の寄与率は、第 1 因子が 43.69%、第 2 因 子が 10.15%、第 3 因子が 7.72%、そして第

4 因子が 5.51% であった。

 第 1 因子は、「買い物をするのに便利な場 所にある」「お店までの交通手段を利用しやす い」「お店はいい場所にある」「来やすい場所 にある」という 4 項目から構成されているた め、この因子は立地と考えてよいだろう。第 2 因子は「品質を考えると商品の価格は安い」

「生鮮食品の価格は安い」「特売品の価格は安 い」「お店全体として、平均的な価格は安い」

の 4 項目で、この因子は価格と考えられる。

第 3 因子は「お店の全体的な雰囲気はよい」「全 体的な買い物スペースの配置はよい」「従業員 の対応は迅速・的確である」「従業員の対応は 心地よい」の 4 項目であった。雰囲気と従業 員に関する項目が一つの因子にまとまってし まっているが、広い意味ではサービスと捉え ても差し支えがないと思われる。第 4 因子は

「品揃えが豊富である」「欲しいと思う商品が ある」「同じ商品でも種類が多い」の 3 項目で、

この因子は品揃えと考えられる。

信頼性および妥当性の確認

 続いて、構成概念の信頼性および妥当性を 確認するために、析出された 4 つの因子に 顧客満足(3 つの観測変数で測定した構成概 念)を加えて確証的因子分析を行った(最尤法 による推定)。その結果、χ2値は 352.474 で 有意(p<.01)となったが、自由度(df.=125)を 考慮した値(χ2/df.)は 2.82 と、許容範囲と される 3 以内に収まっている(Carmines and McIver(1981))。データのサンプル数は 401

(250 以上)でモデルの観測変数は 18(12 以 上 30 以 下 )で あ る た め、CFI=.958(>.920)、

SRMR=.0378(<.08、CFI が .920 以上の場合)、

RMSEA=.067(<.070、CFI が .920 以上の場合)

についても水準を満たしていると言える(Hair et al. (2014))。各構成概念の測定尺度および 信頼性は以下の表 1 に示されている18

(11)

 信頼性については、Cronbach の α 係数 は .70 以上、CR(composite reliability:合成 信頼性)は .60 以上であった(Bagozzi and Yi

(1988))。収束妥当性については、潜在変数 から観測変数へのパスの標準化係数はすべて 1% 水準で有意かつ 0.5 を超えており(Bagozzi and Yi (1988))、各構成概念の AVE(Average

Variance Extracted:平均分散抽出度)も .50 を上回っている(Fornell and Larcker(1981))。

弁別妥当性についても、以下の表 2 に示すよ うに、各構成概念の AVE が構成概念間の相 関係数の平方を上回っていることが確認でき た(Fornell and Larcker(1981)。

表 1 測定尺度とその信頼性、収束妥当性

表 2 構成概念の AVE と概念間の相関係数

(12)

分析結果

 以上の構成概念に観測変数である成果(利 用金額)を加えた全体モデルの推定を行った と こ ろ、 適 合 度 指 数 は、χ2/df.=2.59(χ2 413.678、df.=160、p<.01)、CFI=.954、

SRMR=.0425、RMSEA=.063 と な っ た。 モ デルの適合度は良好と言えるため(Hair et al.(2014))、以下の図 2 に示される推定結果 に基づいて考察を進めていく。

図 2 推定結果

考察

 顧客満足に影響を与える小売ミックス諸 要素の標準化推定値は、立地が .066(ns.)、

価格が .417(p<.01)、品揃えが .257(p<.01)、

そしてサービスが .129(p<.10)であった。顧 客満足から利用金額へのパスの標準化推定 値は .049(ns.)であった。なお、店舗ダミー を導入したモデルと導入しなかったモデル を比較してみたところ、適合度の指標はほぼ 変わらなかったが19、サービスから顧客満足 へのパスにおいてのみ、変化が生じた。具体 的には、ダミー変数を導入しなかったモデ ルでは 5% 水準で有意であったのに対し、ダ ミー変数を導入したモデルでは 10% 水準で 有意であった。そのため、サービスにおいて

は店舗の影響が存在することが示唆される。

 仮説検証という点では、仮説 2(価格)、仮 説 3(品揃え)は支持された。仮説 4(サービス)

については有意傾向があると言えるだろう。

しかし、仮説 1(立地)は支持されなかった。

さらに、品揃えとサービスの影響力は、仮説 では同等と想定したが、標準化係数の値は 品揃え(.257)のほうがサービス(.129)より高 かった。そのため、仮説 1 および 5 は支持さ れなかった。顧客満足が成果に与える影響に 関する仮説 6 についても支持されなかった。

 以上の結果から、中堅スーパーのなじみ顧 客にとっての相対的優位性は、まずは価格、

次いで品揃え、そしてサービスにある、とい うことになる。一般的には規模が大きいほど

(13)

仕入れの面で有利になるため低価格を実現 しやすいように思われるが、実際にはそうは なっていない可能性が示唆される。

 立地が有意にならなかったことについて は、2 つの原因を考えることができる。ひと つは継続的な利用客を調査対象にしている ことである。なじみの来店客は、店舗を選 好した結果として継続して来店しているた め、立地(アクセスの容易さ)についてはすで にある程度は満足している(あるいは最低限 の条件は満たしている)可能性が高い。した がって、アクセスのよさは、なじみ顧客を対 象とした分析においては、価格や品揃えと いった他の小売ミックス要素とは異なる次 元の要因と捉える必要があったのかもしれ ない。

 もうひとつは、調査対象者の偏りである。

今回の調査は、調査協力企業の都合により平 日の昼間(13 時〜 15 時)に実施された。この 時間帯の買い物客は他の時間帯よりも急い でいる人が少ない。さらには、店頭での調査 依頼に応えてくれる人はそうでない人と比 べて時間に余裕がある可能性が高い。立地は アクセスのよさについての指標であるため、

以上の事情が分析結果に影響を与えている かもしれない。

 以上の問題は、前者が分析モデルの、後者 はリサーチ・デザインの問題と言えるだろ う。いずれにしても本研究の限界であり、今 後の検討課題となる。

 顧客満足から成果(利用金額)へのパスが有 意にならなかったことについては、2 つの側 面から考えることができる。ひとつは、当該 店舗がすでに顧客の支出における最大シェア を得ている場合である。この場合は、満足度 が高くなったとしても利用金額の上昇には限 界があり、満足と利用金額の間には 1 次関数 のような直線的関係は想定しにくい。

 もうひとつは、満足していないからといっ て利用金額が小さくならないという場合で ある。食品スーパーの商材は生活必需品で あるため、他の魅力的なオプション(他店舗、

宅配など)がない場合は、満足が下がっても 利用金額は小さくならない可能性がある。本 研究の調査対象は都市部で展開するチェー ン店の顧客であるため、食料品購入において 他のオプションが存在しないことは想定し にくいが、他のオプションが魅力的でないと いうケースはあるだろう。

5. おわりに

理論的・実践的貢献

 本研究の貢献は、都市圏の中規模チェーン 食品スーパーのなじみ顧客を対象に、満足度 に影響を与える小売ミックス要素を整理 ・ 尺 度化し、その関係を定量的に明らかにした 点である。特定企業の特定時間帯(平日昼間)

に買い物に訪れたなじみ顧客のみが対象で ある点で一般化可能性については慎重に検 討しなければならないものの、中規模のスー パーの相対的な魅力度を検討する際のヒン トとなりえる可能性がある。

 学術分野としては、流通研究において、小 売店同士の競争や小売市場そのもののダイ ナミクスを考察するための手がかりになる という貢献もあるだろう。特殊と言われる小 売市場をもつ日本というコンテクストにお いて、流通の動態を解き明かそうという問題 意識のもと、小売ミックスと成果の関係を考 察した研究は豊富に蓄積しているとは言い 難い(そうした研究としては、田村(1981)や 野口(1987))。この状況を鑑みると本研究の 試みには一定の意義を見出すことができる だろう。

 それに加え、小売市場における中小小売商 業者の存在意義を考察する研究に対しても

(14)

意義があるだろう。中小小売商業者は競争 劣位にあり市場から退出していくだけの存 在ではない。小売市場にさまざまな次元の 競争をもたらす存在でもある(横山 (2010))。

大きなシェアをとれない中小小売商業者に とっては、顧客満足を高めることが維持・

存続・成長のために重要である。一般的に、

シェアの大きさや生産性と顧客満足はト レードオフの関係にあると指摘されている が(Fornell(1992)、Anderson et al.(1997))、

この想定に基づくと、中小小売商業者は、大 規模小売商業者のように不特定多数の広範 囲の顧客の満足を追求する必要がないとい う点で、有利な立場にあると言える。した がって、中小小売商業者にとっては特に、ど のような側面で顧客満足を追求していくの かの意思決定が重要になるだろう。

 実践的には、一般化可能性の範囲はかなり 限られるものの、業態の中で中位に位置する 食品スーパーに対して戦略上の示唆を与え る可能性がある。

 今後の課題は、尺度や分析モデルを精緻化 しつつ、継続的かつ高頻度な反復購買を特徴 とする食品スーパーに独自の満足度モデル を構築することである。今回は、顧客満足に 影響を与える原因系として小売ミックス要 素を、顧客満足の結果系として利用金額を用 いたモデルを構築したが、モデルの適応範囲 を慎重に見極めつつ、精度の高いモデルの構 築を目指す必要がある。モデルの一般化可能 性についても慎重に検討して行く必要があ るだろう。

〈謝辞〉

 本論文は、2013 年度日本商業学会第 4 回全国 研究報告会における研究報告を大幅に加筆・修正 したものです。学会での研究報告後、慶應義塾大 学の高橋郁夫先生から貴重なご示唆を賜りまし

た。また、匿名レビューアーの先生方から建設的 かつ貴重なコメントを賜りました。この場をお借 りして御礼申し上げます。ただし、本論文内にあ りうべき誤謬はすべて筆者の責に帰するものです。

なお、本論文は学術研究助成基金助成金(課題番 号 24730377)および科学研究費補助金(課題番号 26245051)の助成を受けた研究の一部である。

〈参考文献〉

Anderson, E. W., and C. Fornell (2000), “Foundations of the American Customer Satisfaction Index,”

Total Quality Management, 11(7), 869-882.

Anderson, E. W., C. Fornell, and R. T. Rust (1997),

“Customer Satisfaction, Productivity, and Profitability: Difference between Goods and Service,” Marketing Science, 16(2), 129-145.

Anderson, J. C. and D. W. Gerbring (1988),

“Structural Equation Modeling in Practice:

A Review and Recommended Two-Step Approach,” Psychological Bulletin, 103(3), 411- 423.

Bagozzi, R. P. and Y. Yi (1988), “On the Evaluation of Structural Equation Models,” Journal of the Academy of Marketing Science, 16(1), 74-94.

Carmines, E. G., and J. P. McIver (1981),

“Analyzing Models with Unobserved Variables:

Analysis of Covariance Structure,” in G.

W. Bohrnstedt and E. F. Borgatta (eds.), Social Measurement: Current Issues, Sage Publications, 65-115.

Fornell, C. (1992), “A National Customer Satisfaction Barometer: The Swedish experience,” Journal of Marketing, 55(1), 1-21.

Fornell, C., and D. Larcker (1981), “Evaluating Structural Equation Models with Unobservable Variables and Measurement Error,” Journal of Marketing Research, 18(1), 39-50.

藤村和宏(1992)「顧客満足戦略における消費者

(15)

満足概念」、『広島大学経済論叢』、第16巻第3 号、141-179頁。

Hair, J., R. W. Black, R. B. Babin, and R. Anderson, (2014), Multivariate Data Analysis, 7th ed., Pearson Education Limited, Edinburgh Gate Harlow.

懸田豊(1997)「中小小売業と顧客満足」、『中小 公庫月報』、1997年5月号、10-15頁。

岸本徹也(2013)『食品スーパーの店舗オペレー ション ・ システム』、白桃書房。

Levy, M. and B. A. Weitz (2012), Retail Management 8th edition, McGraw-Hill, New York.

Mägi, A and C-R. Julander (1996), “Perceived Service Quality and Customer Satisfaction in a Store Performance Framework: An empirical study of Swedish grocery retailers,” Journal of Retailing and Consumer Services, 3(1), 33-41.

南知惠子 ・ 小川孔輔(2010)「日本版顧客満足度

指数(JCSI)のモデル開発とその理論的な基

礎」、『マーケティング・ジャーナル』、第30 巻第1号、4-19頁。

野口智雄(1987)『現代小売流通の諸側面』、千倉 書房。

Oliver, R. L. (1980), “A Cognitive Model of the Antecedents and Consequences of Satisfaction Decisions,” Journal of Marketing Research, 17(November), 460-469.

小野譲司(2010)「JCSIによる顧客満足モデルの 構築」、『マーケティング・ジャーナル』、第30 巻第1号、20-34頁。

Podsakoff, P. M. and D. W. Organ (1986), “Self- reports in Organizational Research: Problems and prospects,” Journal of Management, 12(4), 531-544.

サービス産業生産性協議会編(2009)『サービス・

イノベーション サービス産業生産性協議会  平成20年度活動報告書』、生産性出版。

進藤綾子 ・ 戸梶亜紀彦(2001)「小売戦略におけ

る地域性と顧客満足―東広島市の小規模店舗を 例として」、『地域経済研究』、第12号、81-92頁。

高橋郁夫(1998)「買物行動における消費者満足 プロセス」、『三田商学研究』、第41巻第1号、

85-99頁。

高橋郁夫(2004)「小売マーケティング成果と買 物行動」、『三田商学研究』、第47巻第3号、

229-245頁。

田村正紀(1981)『大型店問題』、千倉書房。

田村正紀(2001)『流通原理』、千倉書房。

寺島和夫(2007)「中小食品スーパーにおけるサー ビス・クオリティと顧客満足の因果関係に関 する研究」、『経営学論集』、第47巻第3号、

41-52頁。

寺島和夫(2008)「中小食品スーパーにおけるサー ビス・クオリティと顧客満足の因果関係に関す る研究(2)」、『経営学論集』、第48巻第3号、

28-47頁。

寺島和夫(2009a)「中小食品スーパーにおける サービス・クオリティと顧客満足の因果関係に 関する研究(3)」、『経営学論集』、第48巻第4号、

38-53頁。

寺島和夫(2009b)「中小食品スーパーにおける サービス・クオリティと顧客満足の因果関係に 関する研究(4)」、『経営学論集』、第49巻第2号、

19-32頁。

渡辺達朗(2010)「日本の流通」尾上伊知郎・恩 藏直人 ・ 三浦俊彦 ・ 芳賀康浩編著『ベーシック・

マーケティング』、同文舘、171-189頁。

横山斉理(2010)「地域商業における大型店と中 小店の創造的競争」、『マーケティング・ジャー ナル』、第24巻第4号、55-70頁。

Yokoyama, N. (2012) “The competitive advantage of regional grocery chain stores in Japan’’, Proceedings of The Asian Retailing and Distribution Workshop (University of Marketing and Distribution sciences, Japan), 1-18.

(16)

〈注〉

1 渡辺(2010)では、スーパー等の上位 3 社の相 対シェアは 40%未満であり、家電量販店やコ ンビニと比べてかなり低いことが指摘されて いる。Yokoyama(2012)でも、スーパー業態

(GMS と食品スーパーそして生協を含む)の 相対的市場シェア(上位 100 社に対するトッ プ 3 社のシェア)を算出しているが、持株会 社の売上を含めたとしても 56.6%、HHI(ハー フィンダール・ハーシュマン・インデックス)

は 1549 である。持株会社で小売業以外の売 上(不動産業など)を除けば市場集中度の水準 はさらに低くなる。

2 本研究では、中規模小売商業者を「巨大資本 を背景に持たない売上高 100 億円から 1000 億円程度の小売商業者」と捉えることにする。

3 顧客満足と消費者満足を別の概念として使い 分ける立場もあるが(藤村(1993))、用語の定 義そのものの検討は本研究の目的ではないた め、以下では「顧客満足」という用語で統一 する。

4 高橋(1998)、88-91 頁。

5 小野(2010)は、JCSI の顧客満足モデルの業 界ごとの適合度はおおむね良好なものの、企 業単位でみた場合、会員登録したネット通販 サイトにおいて頻繁に購入を繰り返す購買行 動が想定される企業においては不適解が見ら れたことを報告している。その原因について は詳しく言及されていないが、高頻度 ・ 習慣 的な購買においては先行要因が機能しにくく なる、あるいは満足の結果としての態度や行 動をとりにくくなるからなのかもしれない。

6 店頭でその晩の夕食のメニューを考える、と いう風景は日本の食品スーパーではよく見ら れるが、これは店頭で欲望やニーズが喚起さ れている状態であり、それほど珍しいことで はない。ニーズや欲望をアプリオリに想定す るほうが妥当な局面もあれば、ニーズや欲望

はその場で生成する(あるいは顕在化する)と いう想定が妥当な局面もあると思われる。

7 顧客満足との相関係数(スピアマンの順位相 関係数)は、品揃えが .590、店の雰囲気が .584、

スタッフの親切さや愛想よさが .555、そして 対応の迅速さが .631 で、すべて 1%水準で有 意であった。

8 標準化回帰係数は .305 から .540 の値をとり、

10 代の接遇から顧客満足の影響と、30 代の 店舗の感性から顧客満足の影響が 5%水準で 有意、それ以外は 1%水準で有意である。

9 「店舗の快適性」については、田村(2001)が 識別するところのアクセスという小売ミック ス次元が中心となっているものの、それ以外 の要素も因子の中に含まれているように思わ れる。なお、因子ごとの尺度の信頼性は論文 内には記載されていない。

10 ここでは態度的ロイヤルティに影響を与える 小売ミックス要素のみを取り上げているが、

高橋(2004)では、態度的ロイヤルティだけで なく、行動ロイヤルティや業績面から捉えた 成果(労働生産性、売場効率、在庫回転率)と 小売ミックス要素(店舗側の評価と消費者側 の評価)との関係も併せて分析されている。

11 ただし、態度的ロイヤルティに影響を与える 変数、「品揃え」、「接客対応」、「チラシ広告」、

「催事 ・ イベント」に関しては 2001 年のデー タでのみ、「独自サービス」に関しては 2002 年のデータでのみ有意な関係が確認されてお り、両年ともに有意な確認されているのは「店 内の感じ」(標準化係数は .158(p.<.005)と .743

(p.<.001))だけである。この理由の一つとし て、2002 年の消費者調査の項目が 10 項目か ら 15 項目に増えていることが考えられる。

12 標準化係数はそれぞれ .544、.284、そして .181 であった。

13 たとえば、小野(2010)では、業態が異なれば 顧客満足の水準も異なることが示されている

(17)

し(p.27)、岸本(2013)では、食品スーパー業 態の中にも、競争的価格志向と品揃え提案志 向という 2 軸により 4 つの戦略グループが識 別できることを指摘している(pp.129-132)。

14 一般化可能性の範囲を広くすることを重視す るか、一般化可能性の範囲は狭くてもモデル

(枠組み)として高い妥当性を重視するかに よって、リサーチの設計は異なってくる。本 研究は後者を志向しているが、食品スーパー 業態の市場規模を考えると、それでもなお、

ある程度の適応範囲(一般化可能性の範囲)を 期待できると思われる。

15 小売ミックスを構成する次元として、田村

(2001)で は ア ク セ ス、 品 揃 え、 価 格、 販 売促進および接客サービス、そして雰囲気 の 5 つ(p.222)が、Levy & Weits(2012)で は Location、Merchandise management、Pricing、

Communication、Store design and display、そ して Customer service の 6 つ(p.20)が、それ ぞれ指摘されている。田村 (2001) は販売促進 および接客サービスを一つの次元として整理 しているが、両者の内容はほとんど同様であ るとみなしてよいだろう。

16 調査については 2 つの注意点がある。ひと つは、今回の調査ではすべての設問で同じ数 字に丸をつけるといった明らかに不正と思わ れる回答が多かったことである。回答者に謝 礼を用意したことで、それを目的として調査 依頼に応じた顧客が多かったからかもしれな い。もうひとつは、調査対象企業の希望によ り、調査を行った日時が平日の特定の時間に 限られたことである。つまり、サンプルに偏 りが生じるのは不可避である。これらの点に ついては結果を解釈する際に十分注意しなけ ればならない。

17 分析に際しては、固有値 1 以上の因子を抽出 することとし、因子負荷量が 0.4、共通性が 0.25 以下の項目を削除し、さらに複数の因子 に対して負荷量が高い項目を削除した。

18 立地を構成する質問項目の 2 つ(「買い物をす るのに便利な場所にある」と「来やすい場所 にある」)において若干の天井効果が生じてし まった。質問票のデザインや回答者の答えや すさ、そしてパイロット調査の結果を考慮し て、今回の調査では 10 件法ではなく 7 件法 で問題ないと判断したが、先行研究が指摘す る通り(たとえば Fornell(1992))、右に偏向 した分布が生じてしまっている。そのためこ れらの 2 項目を外した分析も試みたが、適合 度が少し下がったぐらいで結果に大きな違い は生じなかった。

19 店舗ダミーを導入しなかったモデルの適合度 指 標 は、χ2/df.=2.66(χ2= 378.176、df.=142、

p<.01)、CFI=.957、SRMR=.0382、RMSEA=.064 であった。

(特集論文:受稿 2014 年 11 月 1 日/受理 2015 年 2 月 17 日)

表 1 測定尺度とその信頼性、収束妥当性

参照

関連したドキュメント

 肺臓は呼吸運動に関与する重要な臓器であるにも拘

成績 在宅高齢者の生活満足度の特徴を検討した結果,身体的健康に関する満足度において顕著

(b) 肯定的な製品試験結果で認証が見込まれる場合、TRNA は試験試 料を標準試料として顧客のために TRNA

新設される危険物の規制に関する規則第 39 条の 3 の 2 には「ガソリンを販売するために容器に詰め 替えること」が規定されています。しかし、令和元年

部分品の所属に関する一般的規定(16 部の総説参照)によりその所属を決定する場合を除くほ か、この項には、84.07 項又は

経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を

い︑商人たる顧客の営業範囲に属する取引によるものについては︑それが利息の損失に限定されることになった︒商人たる顧客は