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教師の省察とプロセスレコード−教育実習生のプロ セスレコードのアンケートより−

著者 中山 俊昭

雑誌名 大和大学研究紀要

巻 6

ページ 51‑58

発行年 2020‑03‑16

URL http://id.nii.ac.jp/1677/00000181/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止

(2)

教師の省察とプロセスレコード

−教育実習生のプロセスレコードのアンケートより−

Teacher reflections and process records

−from a survey of process records of student teachers−

中 山 俊 昭*

NAKAYAMA Toshiaki

要 旨

本稿では,まず,教師にとっての「省察」とは何かを論じ,教師の「省察力」を高める方法のひとつであるプロセスレ コードを紹介した。続いて,教育現場でプロセスレコードは有用であるかどうかを,教育実習生のプロセスレコードに関 する自由記述アンケートをもとに検証した。自由記述アンケートの分析にはテキストマイニング手法を用いた。結果,実 習生の子ども理解や気づきは,教育実践の中だけでなく,その行為の振り返りの中で多く見いだされたことが示唆された。

Abstract

This document firstly discusses the meaning of teacher “reflections” and introduces process records as one method of increasing teachersʼ ability for reflection. Then the usefulness of process records in a teaching environment was examined through a survey of comments regarding process records by student teachers. Text mining was used to analyse the comments. The results suggest that student teacher understanding and awareness can be found not only while teaching, but also in later reflections upon their actions.

キーワード:省察 プロセスレコード 教育実習生 自由記述 テキストマイニング keywords:Reflections, Process Records, Student Teacher, Comments, Text Mining

Ⅰ.はじめに

文部科学省(2012)の「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」(中教審答申)にお いて,教職に対する責任感や探究力,教科指導や生徒指導等を的確に実践できる力等においては,それぞれ独立して存 在するのではなく,省察する中で相互に関連し合いながら形成されることに留意する必要があると述べられており,改 めて教師の省察力が問われている。

しかし,教師は,日々,多忙感の中で「省察」を行っているといえるだろうか。筆者は小学校,中学校,高等学校の 現場を経験してきたが,教育現場で「省察」するという文化,風土はなかった。何かトラブル等がない限り,日々の児 童生徒と自己の関係性を振り返る教師はほとんどいないのが現状ではないだろうか。トラブルがなければ必要性を感じ ないのである。

学級崩壊や授業が困難なクラスがあった場合は,子どもの表面的な現象を客観的に記録,分析し対応する。教師自身 の関わりが子どもに,どのような影響を与えているのか等の振り返りや分析はほとんど行われていないといっても過言 ではない。問題があれば指導し,改善すべき事象は改善する。しかし,その対応方法は教師の経験知による思い込みの 指導に始終する場合も少なくない。このような指導,対応では,ある事象の奥にある子どもの内面を深く理解すること は難しい。

そこで,何よりも,児童生徒と教師自身の相互の関係性を「省察」する力が重要となる。

本稿では,まず教師にとっての「省察」とは何かを論じ,「省察」を行うための方法としてのプロセスレコードを紹 介する。続いて,教育実習生のプロセスレコードによる省察後の振り返りアンケートを分析し,教職におけるプロセス レコードの有用性を考察する。

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Ⅱ.省察について

Ⅲ.プロセスレコードとは何か

表 1 プロセスレコード用紙 (角田ら2017より筆者が改変)

(1)エピソード・タイトル(

(2)この場面を選んだ理由:

(3)子どもの言動

(発言 の他,行動・態 度や表情なども記述する)

(4)私が感じたこと考えた こと

(5)私 の 言 動(発 言「 の他,行動で示したこと も記述する)

(6)分析・考察

(7)私がこの場面から学んだこと:

省察とは,単なる反省の意味ではない。常に自らの実践を省みて,課題を考え改善していくことをいう。

ドナルド・ショーン(2001)の「専門家の知恵」によれば,専門家の職業生活は暗黙の「行為の中の知」(knowing -in-action)に依存しているが,不確実性,不安定性,価値の葛藤という状況で実践者が対処する技法の中心は「行為 の中の省察」(reflecting-in-action)というこの過程全体であると述べている。また,「行為の中の省察」(reflecting-in- action)は「技術的合理性」にしばられない。「行為の中の省察」(reflecting-in-action)は実践の核であるとも述べてい る。

例えば,技法をもつ教師は子どもが読み学ぶ時の困難を,子どもの欠点ではなく「自身の教授の欠点」とし,その時,

その場で実験的研究をしなければならないと述べているが,教師は,その教授行為の中での自身の行為を省察できてい るといえるだろうか。

村井(2015)は,教職における行為の中での省察の時間性について述べている。省察の時間性を①予期的な省察② mindfulness③活動的あるいは相互行為的省察④事後的省察の4つに分類して論じている。

この内の②,③がいわゆる行為の中の省察であり,教師がこの行為の一瞬,一瞬の中で児童生徒と瞬時に関わり合い ながら,自己洞察を深めていくことをさす。④の事後省察は,教師にとっては,③と共に重要なものと思われる。④の 場合,時間的経過の中でナラティブな省察になる面もあるが,自己と他者との関係性の再構築での気づきは大いにある。

では,教師はどのような方法で行為の中の省察を行うことができるのか,その一つの方法としてプロセスレコードが ある。

教職とプロセスレコードに関する先行論文に山口(2006)の論文がある。教師教育に関して大学での「省察」の学 びと,教育実習での「体験」をもとにプロセスレコードを作成し,その後スーパーバイズを受ける流れの重要性が論じ られている。さらに,リフレクションは教育の「臨床の場」で求められる判断力や子どもたちとの相互作用を省察する 態度と方策であるとして,教員養成現場でプロセスレコードを用いた実践を行っている。

また,山口ら(2007)の論文では,教師教育におけるリフレクションの検討と題し学生のプロセスレコードの事例 分析が行われたものがある。

最近の論文として,角田ら(2017,2018)は教職大学院に内地留学中の教師が書いたプロセスレコードをグループ 省察し,多面的な視点で省察を行った実践を報告している。続いてプロセスレコードについて述べる。

プロセスレコードはヒルデガルト・ぺプロウ(1952)によって提唱された。看護現場における患者と看護者との相 互関係,相互作用を記した記録のことである。初期の記録形式は「患者の反応」と「ナースの反応」のみの記録であっ た。その後,アイダ・オーランド(1972)は「患者に関して知覚したこと」「患者に関して知覚したことと考えたこと,

感じたこと」「患者に対して言ったこと,おこなったこと」の三項目とし,最終的に,看護者がある事象の後で,内省 的な観察を加えて記述する方法へと変化させた。教育関係で使用するプロセスレコードを表 1に示した。

続いて,教育実習生のプロセスレコード記入後の自由記述アンケートを分析し,教育現場でのプロセスレコードの有 用性を検討する。

(4)

Ⅳ.教育実習生に対するプロセスレコードの有効性の検証

表 2 頻出語上位30

抽出語 出現回数 抽出語 出現回数 抽出語 出現回数

1 プロセスレコード 89 11 対応 23 21 記入 9

2 書く 63 12 実習 20 22 思い出す 9

3 自分 56 13 見える 15 23 指導 9

4 生徒 40 14 分析 15 24 9

5 行動 37 15 有効 14 25 教育実習 8

6 振り返る 35 16 反省 12 26 言う 8

7 考える 29 17 実際 11 27 部分 8

8 思う 26 18 今後 10 28 分かる 8

9 感じる 25 19 発言 10 29 良い 8

10 場面 23 20 文字 10 30 悪い 7

1 研究背景と目的

筆者は前期「教育相談の方法」を担当した。この授業において,受講学生自身の自己理解と他者理解を深めるため の方法の一つとしてプロセスレコードを紹介した。さらに,筆者はプロセスレコードの記入は教育実習現場での自己 省察に有効と考え,教育現場でのプロセスレコードの書き方を指導した。そして,プロセスレコードは教育実習にお いて活用できたか,有用であったかを分析するために,「プロセスレコードを書いて」というテーマで受講生に自由 記述のアンケートを行った。

2 調査対象者

教育学部中等専攻3年次生で,前期「教育相談の方法」受講者の内,この講座開講期間中に,中学校の教育実習を 経験した学生66名。

3 調査期間とアンケート項目

2019年7月24日 前期授業の最終日。

項目は,「プロセスレコードを書いて」というテーマの自由記述。

4 分析方法

自由記述アンケート分析の恣意性をできる限り排除する目的と,自由記述の視覚化を意図し,テキストマイニング の手法で分析した。テキストマイニングは文章データーを形態素解析し,数値化,多変量解析によりデーターを処理 したものである。本稿のテキストマイニング分析には樋口(2019)が開発したフリーソフトである KH Coder3(以 下,KH コーダー3)を用いた。

5 アンケート調査の結果と考察

記述の統計量

自由記述の内容について,KH コーダー3を用いて形態素解析を行った。結果,総抽出語の数は4,806,使用語数 は1,818,異なり語数は,623,文は161であった。尚,前処理として,語の取捨選択を行い,プロセスレコード などの複合語はタグ付けし,「助詞」「助動詞」は省き分析を行っていった。頻出単語の上位30語を表 2に示した。

結果,「プロセスレコード」「書く」以外では,「自分」「生徒」「行動」「振り返る」「考える」「思う」「感じる」と 続き,「実習」「場面」「対応」「見える」「分析」「有効」「反省」などの語が並んだ。

さらに,頻出単語の品詞別(各品詞上位5回以上の単語)一覧表を表 3に示した。名詞(タグ)の「プロセスレ コード」と動詞の「書く」を除いた品詞別では,動詞の「振り返る」と,ポジティブに感じる形容動詞の「有効」

(有効だ)と「良い」という形容詞が最上位に位置している。

しかし,「悪い」「難しい」等のネガティブな表現の形容詞も出現している。

(5)

表 3 頻出単語一覧(各品詞5回以上,なおプロセスレコードはタグで表示すべきであるが名詞に入れた)

サ変名詞 形容動詞 形容詞

1 プロセスレコード 89 行動 37 有効 14 書く 63 良い 8

2 自分 56 対応 23 冷静 7 振り返る 35 悪い 7

3 生徒 40 実習 20 非常 6 考える 29 多い 6

4 場面 23 分析 15 思う 26 細かい 5

5 文字 10 反省 12 感じる 25 深い 5

6 部分 8 発言 10 見える 15 難しい 5

7 視点 7 記入 9 思い出す 9

8 出来事 7 指導 9 言う 8

9 状況 7 記録 7 分かる 8

10 機会 6 客観 7 見る 7

10 言動 6

ネガティブな形容詞の「悪い」「難しい」は,どのような文脈で使用されていたかを原文で確認した。

「有効」について

1「プロセスレコードの記入で,この時,この対応でよかったのか迷ったときに,振り返りができ有効と感じた。 2「教師としての生徒への接し方を学ぶうえにおいては,非常に有効なものであったと思う。

3「チーム対応時の有効な記録になる。」

4「自分の対応を理解したり,今後の自分の他人への接し方や教師としての接し方を学び非常に有効であった。 5「その時はみえなかったことが見つかり,自分の成長につながった気がするので有効なものと感じた。 6「事後でもプロセスレコードを記入し分析することは有効だなと感じた。

7「瞬間,瞬間が過ぎるのが早かった,その時にプロセスレコードで文字化することによって振り返ることはとて も有効であったし時系列によって反省できることが特に良かった。

これら表記からプロセスレコードを書くことで自己分析できていることが伺える。また,チーム対応時の記録な ど他の人とのプロセスレコードのシェア希望を述べた者も5名あり,プロセスレコードの有効性を感じていると いえる。

「行動」について

1「プロセスレコードを書くと,三人称の視点で自分の対応がみえて,自分の発言や行動が適切であったか改めて 振り返ることができた。

2「プロセスレコードを行ったことにより,自分のその時の行動や発言を鮮明に思い出すことができた。

3「記録するという行動をしなければ,その時の自分の行動をすぐに忘れてしまうし,自分の行動を分析し発言を 鮮明に思い出すことができた。

4「実習中,その場その場で対応していた発言や行動が適切であったか否かを振り返り,冷静に判断するきっかけ となった。

5「プロセスレコードを記入しているときに,改めて自分の行動や言動が適切であったか自己分析できた。 6「自分が何でこの言動をしたかだけではなく,生徒はどのような理由でこの行動をとったんだろうなという分析

や推測が行いやすかった。

7「子どもの様子を表面的にとらえてしまうことが多い私はプロセスレコードを使うことで何でこんな行動をとっ たのだろう,何んでこんな言葉がけをしたのだろうということがよく理解できた。

これらの表現は,まさに行為の中では捉えられなかった自分自身を改めてプロセスレコードの記入で振り返り意 識化できたと読める。ここでもプロセスレコードの有用性が伺われた。

「振り返る」について

1「自分がどのような対応してよいのか,また,それは正しかったのかなどを振り返ることができ,今後につなが るものであると感じた。

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2「その状況をプロセスレコードの記入で,その行動を書きながら振り返ると,その生徒の発言に何度もかかわっ ていたことを思い出された。

3「プロセスレコードを書くことによって教育実習についての振り返りができ,何がよくて何が駄目だったのかを 具体的に知ることができて良かった。」等が多くあった。

「振り返る」の出現回数は35回であったがすべて文から否定的な表現はみられなかった。

「悪い」について

1「記入しないと,その時の自分の行動をすぐに忘れてしまうし,自分の行動を分析し,良かったか悪かったのか ということや改善点について考えることができなくなる。記入していると,改めて自分の行動,言動が適切であっ たか自己分析できた。

2「悪い点もよい点も確認でき,指導や相談に活用できると感じた。」

3「何日かにまたがって子どもと関わっているし,一場面で急激に関係が良くなったりは悪くなったりすることは 少ないと思われる。

4「プロセスレコードをかいたことで自分の行動は良かったか,悪かったかが見つけることができた。」

5「冷静になって振り返ってみるという行動で,自分の対応が良かったか,悪かったかたかということがはっきり 分かった。

6「はじめは生徒との距離感をつかめていたのだが,ある場面から関係が悪くなり,プロセスレコードにより理由 が見えた気がした。

7「文字化することによって実際にあの時のあの行動は良かったか,悪かったのか,分析と気づきがあった。」

「悪い」は7回出現した。上記の3番目の文は少し否定的に感じるが,その他はプロセスレコードに対する否定的 内容はみられなかった。

「難しい」について

1「プロセスレコードを書くのは難しかったけど,書いてみると,全てが整理されて,自分が何でこの言動をした かを考えることができるのでプロセスレコードは価値があると感じた。

2「実習中にかかわり方が難しいと感じた生徒についてプロセスレコードは有効と感じた。」

3「何度か関わるうちに,その生徒との関係が変化するので,プロセスレコードに表すことは難しい。」

4「プロセスレコードを書くのは難しかった。」

5「実習中の印象深い場面は思い出せるがなかなか言語化が難しい。」

以上の5文中より,3文に,プロセスレコードの記入そのこと自体が難しいと感じている学生の声がみられた ので66名のアンケートを点検した。

結果,全体が否定的な表現で始終した自由記述が2名にあった。内容として「細かい場面を覚えていなくて,

思い出すことができず言語化しにくい。形だけの内省で負担であった」「連続的な関わりが現実なので,ある場 面だけ切り取りプロセスレコードに表すことは難しい」であった。

また,アンケート全体は肯定的ではあるが,「初め何を書いてよいかわからない」「プロセスレコードに書くよ うなことに出会っていない」「書くことそのことがしんどい」「記憶が薄れているので書けない」との記述がみら れたが,書きだすと意外と書けた」など後半が肯定になっている表現のアンケート記述が10名あった。

さらに,気になる表現としては,「とにかく教職は忙しい。「一瞬一瞬の流れの中で書けない。「対応はスピー ド勝負なのでどうしても事が済んで暇ができないと書けない」との記述もみられた。

これらの結果より,学生はプロセスレコードの使用(記入)で,様々な視点がみえたことや反省点などを鮮明に 思い出すことができて,プロセスレコードは有効との思いにいたったことが読み取れる。しかし,多忙間の中でプ ロセスレコードを定着させることの難しさも示唆されているといえよう。

共起ネットワーク

次に,共起ネットワークでの頻出語の関係性を検証する。

共起とはあるキーワードが出現するときに,一緒に出現する(利用される)語のことをいい,KH コーダー3で は,ある語とある語の共起性,関係性を視覚的に捉えることができる。共起ネットワーク図は,自由記述内の各頻

(7)

図 1 共起ネットワーク

Ⅴ.考

い単語は太く表示される。

結果,メインは「プロセスレコード」を中心として「書く」「振り返る」「感じる」「考える」と動詞でつながり,

「自分」と「生徒」の「対応」を「考える」と読み取れる。これらの頻出単語を原文で参照すると,学生はプロ セスレコードの使用(記入)で,生徒と自己の行為を「振り返り」様々な視点がみえたと述べている。また,文字 化することで「反省点」などを鮮明に思い出すことができたとの記述が多くみられた。

次に,左側下は,「改めて」「思い出し」「良い」「悪い」を「分析」していると読める。さらに,左側は「冷静」

「理解」「改善」「今後」「教師」「非常」「有効」の集まりがあり,特に「教師」と「接す」「非常」が強く共起し,プ ロセスレコードは「教師」にとって「非常」に「有効」と読める。また,このクラスターでは,その他の共起はそ れほど強くはない。従って,プロセスレコードを「有効」と思っている者は「非常に」を付けたくなるくらい有効 性を感じていると読み取れる。

KH コーダー3の形態素解析による頻出単語の分析及び共起マップから,教育実習生は,プロセスレコードを非常に 有効なものであると感じている者が多かったと結論付けてよいであろう。しかし,多忙感の中,行為の中での省察は困 難であると述べている者もいる。いくら,プロセスレコードが有効なものと感じていても活用するにはエネルギーが必 要と感じていることも伺える。

また,実習生はプロセスレコードの記入で,日々の教育活動では,みえなかった気づきが数多くあったと述べている。

山本(2009)は看護実習にプロセスレコードを活用した後のアンケート調査結果で,学生自身は振り返りの中で自分 自身の内面に気づき,自己練磨することで専門職としての自己を形成する一助になったと考えられると述べている。ま

(8)

表 4 プロセスレコードカード (筆者がプロセスレコードをアレンジしたものである)

(1)エピソード or タイトル この遊びの楽しさの世界を保証,配慮するか,危険行為との社会性を身につ けさせるべきか?

(2)子どもの言動

(発言「 」の他,行動・態度や表情 なども記述する)

(3)私が感じたこと考えたこと (4)私の言動

(発言「 」の他,行動で示した ことも記述する)

①「どいて」と段ボールの飛行機で 園内を飛び回る(実際は走り回る)

②危ないな。

・他の園児に当たらないかな?

・注意すべきかな?

・見守るべきかな?

③「気をつけてね,

お 友 だ ち に ぶ つ か ら な い よ う に ね!!」

(5)分析・考察・問題点など 「子どもにとって遊びは重要だし? でも,危険なことは教えるべきだし迷 う。放課後チームで相談してもらおう」

さに同様の結果である。この,気づきは教育活動にたずさわる者にとっては最も重要である。

気づきは日々の子どもたちとのかかわり合いの一瞬一瞬の中では認知されにくい。そこで,この一瞬,一瞬のかかわ り合いの中を記録することが重要となる。自身や相互の行為が記憶にある間に記録し省察することができるかどうかが 大きなカギとなる。

プロセスレコードの記入で,自己省察し,文字化することは,その状況が的確に想起され,時に,その振り返りの中 で,みたくない自分自身に出会うこともある。永石(2004)は,プロセスレコード演習で,学生は時に,自己対峙に 直面化していると考えなければならないと述べている。筆者のゼミのグループ省察で,ある学生が自身のプロセスレコー ドを発表したとき,プロセスレコード用紙の(7)「私がこの場面から学んだこと」の項目で,はじめ,自身の対応が 良かったと記述し発表した。しかし,他のゼミメンバーが質問を重ねるうちに,発表学生は,「その時の対応は,自身 が対応した子どものイメージをステレオタイプ的にみていた」との気づきに発展した。このようなことから,プロセス レコード記入後にグループ省察,又は誰かにスーパーバイズしてもらうことが重要であり,その中から,さらなる自己 理解が進むと思われる。

いずれにせよ,何度もプロセスレコードを記録するうちに,自身はどういう思考の持ち主かを直面化せざるおえなく なり,自ずと自己省察力は増すと思われる。教師の省察がそのように進めば子どもたちとのかかわり合いの中に活かさ れてくるものになると思われる。

また,自分が教師になり,プロセスレコードは有効であるとわかっていたとしてもプロセスレコードは重大なことが ない限り活用しないだろうとの感想を書いた学生がいた。書くという行為そのものに負担を感じるからである。教師は 多忙感の中,日々の実践を丁寧に振り返る時間的余裕がないのが現状である。何かことが起これば教師の経験知で対応 してしまっていることも多いだろう。しかし,その経験知そのものが教師の経験による思い込みである場合もあるだろ う。そのような場合の指導では,対象の子どもが傷ついていることがあるかもしれない。

以上の考察より,筆者は短時間で書けるプロセスレコードが必要であると考える。プロセスレコードが教師にとって 有効な自己省察ツールであったとしても継続できなくては意味がない。しかし,多忙感の中,ストーリー性のある長め のプロセスレコードは難しい。

そこで,筆者は一場面だけのスポット的な仕様のプロセスレコードカードを活用している。記入例を表 4に示した。

このプロセスレコードカードは気になった場面をメモするだけである。但し,重要なのは,(3)「私が感じたこと考え たこと」は本音でしっかり記述することが重要である。なぜなら,その本音の記述が自己理解に繋がり,行為の中の自 己省察を行えるカードとなりうるからである。

この事例は,筆者が幼稚園訪問時に体験した事例である。幼児の発達において遊びは重要であり,同時に,子どもの 安全は最優先されなくてはならないものである。このような場合の対応は時として瞬間的に対応しなくてはいけない場 合もあり大いに迷う場面である。

そのようなとき,次回の対応にはなるがこのカード記録は有効であると感じている。自身のその時の思いを,チーム でシェアすることで新しい対応が生まれる可能性も高いと思われる。今後はこのカードレベルでのプロセスレコードの

(9)

Ⅵ.おわりに

引用文献

参考文献

本研究の今後の課題として,本稿のアンケートは授業内でのアンケートであり,評価には入らないと説明したうえで 記述を求めたが,評価を意識して,恣意的にプロセスレコードは有効とのバイアスがかかった記述が含まれているかも しれない。今後はさらにそのようなバイアスのかかりにくい場面での調査を増やし比較していくことも重要であると考 えている。

D. ショーン:(佐藤学,秋田喜代美訳)「専門家の知恵」,ゆるみ出版,2001

H. E. ぺプロウ(1952):(稲田八重子訳)「看護の探求」,メジカルフレンド社,1964 樋口耕一:KH Coder(テキストマイニングフリーソフト) https://khcoder.net 2019 I. J. オーランド(1972):(池田明子・野田道子訳)「看護過程の教育訓練」,現代社,1977

角田 豊,柴崎朱音:「学校臨床力」とプロセスコードによる教師の省察京都教育大学紀要 No121,1-15.2017 角田 豊,上良祐子:プロセスレコードによる教師の自己省察とグループ省察会−中堅中学教員によるプロセスレコー

ドの具体例− 京都教育大学紀要 No133,101-115.2018

村井尚子:教師教育における「省察」の意義の再検討:教師の専門性としての教育的タクトを身につけるために 大阪 樟蔭女子大学研究紀要5,175-183.2015

文部科学省:「教職生活の全体を通じた教員の資質能力の総合的な向上方策について」(中教審答申)2012 永石喜代子:プロセスレコード演習における自己理解の効果 鈴鹿国際大学短期大学部紀要 第24 51-62 2004 山口美和,越智康詞,山口恒夫:「教師教育におけるリフレクション方法の検討−「プロセスレコード」による事例の

振り返りを通して−」 信州大学教育学部紀要 No119 ,79-90.2007

山口恒夫:「教員養成教育における「臨床経験」のリフレクションをめぐって−「プロセスレコード」を用いたリフレ クションの意義」 哲学研究94, 75-79. 2006

山本千昭:「保育実習(施設)におけるプロセスレコードの活用−精神力動的な看護の視点を導入して−」 大阪樟蔭 女子大学 The Human Science Research Bulletin No8 , 233-243. 2009

末吉美喜:「テキストマイニング入門」,オーム社,2019

牛澤賢二:「やってみようテキストマイニング−自由回答アンケートの分析に挑戦!− 朝倉書店 2018

表 4 プロセスレコードカード (筆者がプロセスレコードをアレンジしたものである) 年 月 日 (1)エピソード or タイトル この遊びの楽しさの世界を保証,配慮するか,危険行為との社会性を身につ けさせるべきか? (2)子どもの言動 (発言「 」の他,行動・態度や表情 なども記述する) (3)私が感じたこと考えたこと (4)私の言動(発言「 」の他,行動で示したことも記述する) ①「どいて」と段ボールの飛行機で 園内を飛び回る(実際は走り回る) ②危ないな。 ・他の園児に当たらないかな? ・注意すべきか

参照

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