論文要約 論文題名
Changes in the oral environment in perioperative patients with cardiovascular diseases
(心臓血管外科周術期患者における口腔環境変化に関する検討)
掲載雑誌名
BioMedCentral Oral Health
歯学研究科歯学専攻(地域連携歯科学)博士課程氏名 大 野 か お り
論文要約
【背景・目的】
歯科領域において,歯周病と感染性心内膜炎(Infectious Endocarditis:
IE)は強く関連しているまた心臓血管外科の周術期管理では,人工弁や弁 形成術のため,人工物を有する症例や経カテー テル大動脈弁置換術後で は,IEに罹患するリスクが高い. IEは黄色ブドウ球菌や口腔連鎖球菌が原 因菌として関与していることから周術期の口腔環境管理は重要とされて いるが,その経時的な変化は不明な点が多い.そこで,心臓血管外科周術期 患者の口腔環境評価を実施し,口腔環境管理の重要性について検討を行っ た.
【方法】
対象は,2020年3月から9月までに心臓血管外科から依頼を受け,周術期 ロ腔機能管理を実施した患者56名.口腔細菌叢の評価,口腔内水分量,口 腔環境評価を行った.口腔内検査および口腔内水分測定量の測定は,手術 前後の専門的口腔衛生指導時(以下,指導時)の計4回歯科医師が行った.
そのうちの術前指導術後48時間および術後指導時の計3回については,
舌背の口腔細菌を採取し,分析はBML社に委託した. 統計学的有意差の検 定にはIBM SPSS version26. 0 (IBM Japan, Ltd, Tokyo, Japan)を用いた.
術式による口腔環境および口腔細菌叢の違いの検定にはPaired T test を用いた.
(倫理審査委員会承認番号: 3033)
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【結果】
被験者を術式により比較した結果,口腔水分測定値は,開胸群の方が非開 胸群と比較し,術後 48 時間では減少する傾向があるも,術後指導時には術 前の数値まで回復した.口腔環境は,開胸群の方が,口腔乾燥や粘桐性唾液 等の変化が多く認められた. 口腔細菌叢細菌量に関して,開胸群と非開 胸群の中でも残存歯数による分類を行い,比較検討した検出された細菌 は 、 S t r e p t o c o c c / J s 属 , S t a p l J y J o c o c c l l s 属 , K l e b s j e J l a 属 , E s c l J e r f r l J j a
属 H a肌e o p l J j J l J sp a r a j n f l l l e n z a e , P s e l l d o
肌o n a s 属等の通性嫌気性菌や偏 性好気性菌である P s e / J d o
肌o n a s 属や N e j s s e r j a 属であった.他に,好気性 菌の A c j n e t o b a c t e r や S t e n ot r o p l J o
肌o n a s , 嫌気性菌の P r e v o t e l l a 属 真 菌 で は C a n d M a が 検 出 さ れ た . 通 性 嫌 気 性 菌 で は , S t r e p t o c o c C / J s
属 S t a p l J y l o c o c C / J s 属 K l e b s j e J J a 属 E n t e r o b a c t e r 属偏性好気性菌の中 で は 舵 h s e r j a 属は多くの患者で検出された.嫌気性菌は術後 4 8 時間に やや多く認められたが,術前術後に大きな変化はなかった好気性菌と真 菌は数名のみに認められた.これらの細菌叢に開胸群と非開胸群に術前術 後に有意差は認められなかった開胸群,非開胸群術ともに術後 4 8 時間に は細菌量が増加しており,特に残存歯が多い患者に認められた.一方,術後
4 8 時間から術後歯科受診時の際には減少していた.開胸群の 12 0 歯の患 者には術前と術後 4 8 時 間 術 後 4 8 時間と歯科再受診時の細菌総量として は,有意差が認められた. { p < O . 0 5 ) しかし,開胸群,非開胸群の術前後の 1 人当たりの細菌量では有意な差は認められなかった
【考察】
口腔環境は,開胸群の方が,口腔乾燥や粘桐性唾液等の変化が多く認めら れたことから,開胸予定の患者においては経口摂取開始時期等をふまえ,
口腔環境を整える事が重要であると考えられた.
心臓血管外科の周術期口腔機能管理を行うにあたり,開胸手術のように高 侵襲手術を受ける場合はより一層口腔健康管理を徹底することが重要で あることが示唆された特に術前の口腔健康管理は,術後の炎症反応抑制 の為には重要であると考えられる.今後の課題として,嫌気性菌をターゲ ットとした経時的な口腔細菌叢と術後感染症との関連性についての分析 が必要であると考えられた
本研究では,術後感染症と口腔細菌との関連性は低かったが、周術期口腔
機能管理を行うにあたり、術後感染症予防は重要である.心臓血管手術を
行う患者の口腔健康管理において,術前術後の口腔環境の変化や手術直後
に増加した細菌が口腔健康管理を行うことにより減少していたことから,
周術期口腔健康管理は有用であり,特に侵襲の大きな手術直後の早期の介 入の重要性が示唆された.
【参考文献】