2倍体ユキバタツバキの形態変異
著者 折川 武司, 岩坪 美兼, 太田 道人
雑誌名 富山市科学文化センター研究報告
号 21
ページ 1‑8
発行年 1998‑03‑30
URL http://repo.tsm.toyama.toyama.jp/?action=repos itory̲uri&item̲id=716
2 倍 体 ユ キ バ タ ツ バ キ の 形 態 変 異 *
折 川 武 司 ・ 岩 坪 美 兼 富山大学理学部
〒930‑8555富山市五福319O
太 田 道 人 富山市科学文化センター
〒939‑8084富山市西中野町l‑8‑3i
MorphologicalVariationofDiploi。Cα腕e"Zαo"jcaL,var.z""zjaTuyama
通keshiORIKAWAandYOshikanel乳低rSUBO FacultvofScience,TbyamaUnivcrsity 3190Gofuku,ToyamaCi呪930‑8555JAPAN
Michihil(〕OHTA TovamaScienceMuseum
ジ
1−8−31Nishinakano‑machi,ToyamaCityう939−8084JABヘN
ThevariationsofnoralandleafshapesofthrccCα"ze/"αtaxa,C,ノ o"Icavar.
e『腕jα,C、ノapo"zcaandC.『"cα"α,wercstudiedonlocalpopulationbasesmToyamaand NiigataPrefectures・Meioticabcrratlonandpollenstainabihtyofthemwerealsoobserved・ Ca腕e"iαノo"zvar.ermZahadawidediversityinnoralvariaUon,thepopulationsat lowaltitudehadmtermediatenowers,somesmnartoC,ノapo"z andsomesmnartoC rzィs"cα"α,andthepopulationsathighaltitudehadsmnarflowerstoC・mmcα"αor mtcrmediateHowersasfoundinthepopulationsatlowaltitude・Ca胴e"、o"zcavar・
zmme成αshowednormalchromosomepairingslnmeioticcellsandhadnormalpoⅡens、These rcsultsledustoIhinkthatC.i ommvar.z"だγm iawasformcdastheresultof 皿rogressivehybridizationbetwccnCjo"zcaandCr"cα"α・
Keywords:Came"jαノapo"zcavar.どγ腕eαα,C・ノapo"',C、r"cα"α,morphological variation,mtrogressivehybridization.
富山県内と新潟県西部に生育するツバキ属植物(ヤブツバキ,ユキツバキ,ユキバタツバキ子 の花と葉の観察をおこない,3分類群間での比較をおこなった。さらに,これら3分類群の減 数分裂と花粉の観察もおこなった。その結果,ユキバタツバキには,ヤブツバキに近いものか らユキツバキに近いものまでがあり,また,正常な減数分裂や花粉が観察されたことから,ユ キバタツバキはヤブツバキとユキツバキの間での浸透性交雑によって生じたものと推測され た。ユキバタツバキの形態変異と標高との関係では,低標高地点では,ヤブツバキに近い株か らユキツバキに近い株までを含む集団がみられ,高標高地点では,低標高地点と同様に変異の 大きい集団もあれば,ユキツバキに近い株からなる集団もみられた。
キーワード:ユキバタツバキ,ヤブツバキ,ユキツバキ,形態変異,浸透性交雑.
*富山市科学文化センター研究業績第192号
折 川 武 司 ・ 岩 坪 美 兼 ・ 太 田 道 人
告している。しかし,富山県内で観察するかぎり,標 高の低い地域に生育するユキバタツバキは,必ずしも ヤブツバキに類似した株だけではないことから,ユキ バタツバキの形態と標高との関係は,さらに調査をお
こなう必要がある。
本研究は,富山県西部から新潟県西部にかけて自生 するツバキ属植物の花と葉について観察をおこない,
この地域のユキバタツバキの形態変異を,ヤブツバキ およびユキツバキの形態変異とともに明らかにするこ とを目的とした。
ところで,ヤブツバキとユキツバキには3倍体も存 在することが知られており(福島ら,1966;太田,
1994),ユキツバキの3倍体は,2倍体に比べて葉身長 や葉身幅が大きくなることが報告されている(太田,
1994)。また,ユキバタツバキにも3倍体の存在が知ら れている(太田,未発表)。一般に4〜5倍体までの同 質倍数体は,各器官が増大することが知られているこ とから(渡辺,1982),本研究では倍数性による形態変 異 を 除 く こ と を 目 的 に , 2 倍 体 に 限 っ て 調 査 を お こ なった。
は じ め に
北陸に自生するツバキ属植物には,おもに海岸近く に分布するヤブツバキcame"iαノapo"IcaL,積雪の多
い山岳地帯に分布するユキツバキCr" cα"αHonda,
それに両種の分布域の中間地域に生育するユキバタツ バキCノapo"jcaL,var. crmg"jaTuyamaの3分類群が
知られている(桐野,1960)。ユキバタツバキは,ヤブ ツバキとユキツバキの中間,もしくは双方の形質を兼 ね 備 え て い る こ と か ら , ヤ ブ ツ バ キ と ユ キ ツ バ キ の 交 雑 に よ っ て 生 じ た も の と 考 え ら れ て い る ( 桐 野 , 1960;Hagiya,K,andS、Ishizawa,1961;北村・村田,
1971)。
Hagiya,KandS,Ishizawa(1961)は,新潟県産のツ
バ キ に つ い て 形 態 学 的 調 査 を お こ な い , ユ キ バ タ ツ バ キは,ヤブツバキとユキツバキの中間の形態をもつも のの,ヤブツバキに近いものからユキツバキに近いも のまでの'幅広い変異を示すことを明らかにした。また,
桐野(1960)と藤巻(1984)は,それぞれの観察にお いて,標高の低い場所に生育するユキバタツバキはヤ ブツバキに類似しており,標高の高い場所に生育する ユキバタツバキはユキツバキに類似したことから,ユ
キバタツバキには標高に対応した変異がみられると報 材 料 と 方 法 1 . 花 形 , 葉 形 の 形 態 学 的 調 査
富山県東部,富山県西部,新潟県西部の3地域(図 l)において,それぞれの地域からヤブツバキはlか 所(J1,J2,J3),ユキバタツバキは2か所(11と12 13と14,15と16),それにユキツバキはlか所(Rl,R2 R3)の合計12か所で採集をおこなった。なお,それぞ れの地域の各2か所のユキバタツバキは,近接した標 高の異なる場所で採集をおこなった。
1 1 入 〆
‑'し′
図1ヤブツバキ(J),ユキバタツバキ(1)),
ユキツバキ(R)の採集地点 J1:小杉.富山県氷見市小杉(20m)
J2:宮崎.富山県朝日町宮崎(15m)
J3:勝山.新潟県青海町勝山(15m)
11:五位.富山県福岡町五位(250m)
12:小院瀬見.富山県福光町小院瀬見(540m)
13:柳沢.富山県黒部市柳沢(150m)
14:嘉例沢.富山県宇奈月町嘉例沢(470m)
15:大沢.新潟県青海町大沢(10m)
16:橋立.新潟県青海町橋立(270m)
Rl:袴腰山.富山県福光町袴腰山(1050m)
R2:僧ヶ岳.富山県宇奈月町僧ヶ岳(750m)
R3:福来ケロ.新潟県青海町福来ケロ(700m)
rl
− b −
1 1 1
B
剛 ー fi̲!
測定部位A、花弁a:花弁長,b:花弁幅B・雄 ずいc:雄ずい群長,。:雄ずい群の癒着部の長 さC・葉e:葉身の長さ,f:葉身の幅,g:葉柄 の長さ,h:葉身最広部距離
図 2
部までの距離の割合(葉身最広部距離/葉身の長さ:
。istallceofthewidestpoitfrombase/bladelength)として 百分率で表した。
a・花について
lか所につき18〜27株,12か所の合計265株につい て,l株あたりl〜8個,合計967個の花について観察 および測定をおこなった。観察および測定した形質は,
花弁の数(numberofpetals),花弁の長さ(petallcngth〉
と幅(pctalwidth),雄ずい群の長さ(androeceumlcngth ),雄ずいの癒着部の長さ(lcngthofunitedpartof androcccum)である(図2−A,B)。測定値は各株ご
とに平均して,株の代表値とした。なお,雄ずいの癒 着部の長さは,雄ずいの全長に対する癒着部の長さの 割合(雄ずいの癒着部の長さ/雄ずい群の長さ:lcngth ofunitedpartofandroeceum/androeceumlength)として百
分率で表した。
2 染 色 体 数 , 減 数 分 裂 に お け る 染 色 体 対 合 お よ び 花 粉稔性の細胞学的観察
a・染色体数の調査
採集した枝についている幼芽をもちいて,以下の方 法で染色体数を調べた。
葉芽を0.OO2M8‑hydroxyqumoune水溶液に浸し,室 温(約20℃)で1時間,続いて5℃に15時間保ち前処理 を お こ な っ た 。 そ の あ と , 酢 酸 ア ル コ ー ル ( 酢 酸 : エ タノールニl:3)で1時間固定した。つぎに,60℃の1N 塩酸で11分30秒間,解離をおこなった。細胞分裂の盛 んな芯の部分をスライドガラス上に取り,1.5%ラク
ト・プロピオニックオルセイン液で染色し,通常の押 しつぶし法によって標本を作製し,光学顕微鏡で観察 をおこなった。
b・葉について
富山県西部(J1,11,12,Rl)と新潟県西部(J3,
15,16,R3)の8か所において,lか所につき14〜28 株,合計165株について観察および測定をおこなった。
観察および測定には,乾燥標本の乾燥葉をもちい,な るべく1年越冬葉を選んでおこなった。l株につき20 枚,合計3300枚の葉をもちいて,葉身の長さ(bladE
lcngth)と幅(bladewidth),葉柄の長さ(petiolelength), 葉身最広部距離(。istanccofthewidestpoitfrombasc)を
調査した(図2−C)。測定値は各株ごとに平均して,
それを個々の株の代表値とした。なお,葉身最広部距 離は,葉身の長さに対する葉身の基部から葉身の最広
b ・ 減 数 分 裂 の 観 察
材料は,富山県西部の3か所(J1,11,Rl),富山県 東部の3か所(J2,13,14),それに新潟県西部の2か 所(J3,15)に加えて,僧ヶ岳および有峰湖近くの林 道沿い(有峰)に自生するユキツバキの合計10か所に おいて採集をおこなった。
減 数 分 裂 は 花 粉 母 細 胞 で 観 察 し た 。 各 調 査 地 点 の 14〜25株から,適切な時期の花芽 を選び,現地でニューカマー液で 固定した。塩酸で解離した後,満 表 l 花 の 測 定 結 果
雄ずい群の長さ雄ずいの癒着部の をスライドガラス上に取り出し,
(m、)長さ/雄ずい群の
長さ(%)
1.5%ラクト・プロピオニックオル
3 1 . 5 9 5 7 , 0 3
セイン液で染色,押しつぶし法に
士 4 . 6 0 士 5 . 6 8
よって減数分裂時の染色体対合を
2 1 . 7 4 4 2 . 6 3
観察した。
士 4 . 0 4 士 6 . 4 3 分 顛 群 個 体 数 花 弁 数 花 弁 長 ( m 、 ) 花 弁 幅 ( m m >
ヤブツパキ 5.64
士0.56*
41.1C 士4.5号
加佳1﹃J可︺︲土
顕
5.69 士0.84
38.9弓 士5.25
27.5塁 士5.00 ユ キ パ タ ツ パ キ 1 2 7
6.23 士0.9.:
へ︑︶八U
F.月守﹃J士 78432士
16.89 士2.7二を
39.7.号 士6.5で ユ キ ツ バ キ 69
c・花粉稔性の調査
富山県西部の3か所(J1,11,
R l ) の 植 物 に つ い て 調 査 を お こ なった。
それぞれの場所の11〜20株か ら,適当な花芽を選び,採集後た だ ち に 7 0 % エ タ ノ ー ル で 固 定 し た 。 固 定 し た 花 芽 か ら 薪 を ス ラ イ ドガラス上に取り出し,ヨード試 薬によって染色し,観察した。
★平均値±種準僅差
表 2 葉 の 測 定 結 果
分類群個体数葉身長(m、)葉身幅(m、)葉柄長(m、)葉身最広部距随/
葉身長(%)
ヤブツバキ 48 83.14
±10.76★
40.2s 士5.3曇
可⁝72.口−19士 ︽b﹃fqゾフ﹄4士
ユ キ バ タ ツ バ キ 79
裾に一匪
司︶q︶8土
39.40 士4.94
6.82 士1.1号
︽b4
q︶今と4︲士
ユ キ ツ バ キ 38 ︽U士 コ︶︿b ︿b﹃イ︵U吾︻F︐ 3士 94 31
6.80 士0.8星
52.1皇 士1.88
☆平均値士標準偶差
折 川 武 司 ・ 岩 坪 美 兼 ・ 太 田 道 人
80
剣戟柵
70
000
︵ま︶刊略e誌二や判︑刊略e話卿頃eこや料 654
□
goロヰロ・ロ。
磐厘辰唱患 A
己口
口屍
1 1
鞄
】 I淘津燐ロ ヤ ブ ッ バ キ
▲ ユ キ バ タ ツ バ キ
30 ﹄︑ロー
Q▲
○ ユ キ ッ バ キ
20
1 0 2 0 3 0 4 0 5 0
雄ずい群の長さ(m、) ・
伽鋤・轍門I
図3ヤブツバキ,ユキバタツバキ,およびユキツ バキの雄ずいの形態変異
C
結 果 1.形態変異の分類群間での比較
各分類群の花と葉の測定結果を,表1,2に示した。
花では,雄ずい群の長さと,雄ずいの全長に対する癒 着部の長さの割合において,ヤブツバキとユキツバキ の間で顕著な差が認められた。雄ずい群の長さの平均 値と標準偏差は,ヤブツバキが3L59±4.60mm,ユキバ タツバキは21.74±4.04mm,ユキツバキが16 89±2.74 mm,雄ずいの全長に対する癒着部の長さの割合は,ヤ ブツバキが57.03±5.68%,ユキバタツバキは42 63士 6.43%,ユキツバキが39.76±6.50%であり,いずれも ユ キ ツ バ キ は ヤ ブ ツ バ キ に 比 べ て , 著 し く 小 さ な 値 を 示した。ユキバタツバキは,ヤブツバキとユキツバキ の中間の値を示していた。そのほかの形質では,これ ら3分類群の間に顕著な差は認められなかった。葉に ついては,いずれの形質においても3分類群間に顕著 な違いは認められなかった。
図3は,各分類群の特徴がもっともよく表れた雄ず いの形態について,各分類群の変異を示したものであ
花粉母細胞における減数分裂第一中期像 A・ヤブツバキ,B、ユキバタツバキ,
C・ユキツバキバーは10〃mを示す。
図 4
る。ヤブツバキとユキツバキは,雄ずいの形態におい て明確に区別された。ユキバタツバキは,その中間に 位置しているが,ヤブツバキやユキツバキと同様の形 態をもつ株もみられ,多様であった。
2 減 数 分 裂 の 観 察
減数分裂第一中期の観察結果は図4,表3に示した雲 今回調査した富山県西部(JLIl,Rl),富山県東部(J2 13,14),それに新潟県西部(J3,15)のヤブツバキ,
ユキバタツバキ,ユキツバキのいずれにおいても正常 な2価染色体が観察された。しかし,有峰と僧ヶ岳の ユキツバキには異常な染色体対・合を示す株がみられ た。有峰産のユキツバキでは,正常な減数分裂が観察
表3ヤブツバキ,ユキバタツバキおよびユキツバキの減数分裂第一中期における染色体接合型とその頻度
染 色 体 接 舎 函
分 類 群 採 集 地 個 体 数 1 百T ‐1411+ZI1311+411ZIl+611111+811011+101911+121811+141711+161611+1815N+2014M+22:
ヤ ブ ツ バ キ 小 杉 ( J 1 ) 1 4 1 7
(1 %》
宮 崎 ( 」 Z ) 3 1 2 7 3
(99.61号
屡 山 ( 」 3 ) 3 1 1 5 6
(99.57)
ユ キ バ タ ツ バ キ 五 位 ( 1 1 ) 8 2 8 8 8
(99‑01:
柳 沢 ( 1 3 ) 1 2 6 可
(100)
嘉 例 沢 ( 1 4 ) 1 6 6 5
(99.40)
大 沢 ( 1 5 ) 5 1 5 2 7
(99.67)
ユ キ ツ パ キ 袴 腰 山 ( R 1 ) 1 3 4 4 4 7
(99.11:
有 峰 3 1 9 5
(43.05)
儀ヶ岳(R2)Z
5 (0.3雲
5 (0.43.二
27 (0.9詮
4 (0.6a
5 (0.33卦
37 (0.82:
136 (30.0乙
2 (0.07?
2 (0.04)
93 (20.531
1 (0.0Z昔
25 (5.52F
表 4 ヤ ブ ツ バ キ , ユ キ バ タ ツ バ キ お よ び ユ キ ツ バ キ の正常花粉率(%)
分 頚 群 採 錐 地 鵠 室 自 体 数 観 察 花 粉 粒 数 正 常 花 粉 率 ( % ) ヤ ブ ッ バ キ
ユ キ バ タ ツ バ キ
ユ キ ツ バ キ
小杉
五位
袴 塵 山
11
20
15
1 2 1 9 6 9 8 . 4 9
2 1 5 6 5 9 8 . 0 8
1 6 4 7 0 9 2 . 2 7
された花粉母細胞は全体の約40%,僧ヶ岳産では,観 察した全ての花粉母細胞で染色体対合の異常がみられ た。
3 花 粉 稔 性 の 調 査
ヤブツバキ,ユキバタツバキ,ユキツバキのいずれ においても,大きさが均一で内容が一様に染まる正常 な花粉が観察された(図5,表4)。
4 ユ キ バ タ ツ バ キ の 形 態 変 異 と 標 高 と の 関 係 ヤブツバキとユキツバキの花の間で顕著な違いを示 した雄ずいの長さと,雄ずいの全長に対する癒着部の 長さの割合について,富山県西部(J1,11,12,Rl),
富山県東部(J2,13,14,R2),新潟県西部(J3,15, 16,R3)のそれぞれの地域内での集団間比較をおこなっ た。
4 (0.88)
8 (3.64)
21 (9.55了
25 (11.36)
41 (18.64)
55 (25. )
4 0 (18.18)
21 (9.5墓
9 (4.09穆
富山県西部地域(図6):標高の低い場所の集団(11, 250m)では,ヤブツバキとユキツバキの中間的な形態 をもつ株が多くみられた。また,なかにはヤブツバキ に近い株やユキツバキに近い株も存在した。標高の高 い場所の集団(12,540m)では,ユキツバキに近い,
または同様の形態を示す株が多くみられた。
富山県東部地域(図7):標高の低い場所の集団(13, 150m)には,富山県西部地域と同様にヤブツバキとユ キツバキの中間的な形態をもつものが多く,またヤブ ツバキやユキツバキに近い株もみられた。標高の高い 場所の集団(14,470m)では,変異幅が大きく,ヤブ ツバキに近いものからユキツバキに近いものまで様々 なユキバタツバキがみられた。標高の低い場所の集団 (13)に比べると,標高の高い場所の集団ではユキツノ胃 キと類似した株がやや多く存在した。また,この地域 のヤブツバキは変異の幅が広く,ユキツバキに近い値 を示す株もみられた。
新潟県西部地域(図8):標高の低い場所の集団(15, 10m)には,ヤブツバキと同様の値を示すものからユ キツバキと同様の値を示すものまでの様々なユキバタ ツバキが存在し,幅広い変異を示した。標高の高い場 所の集団(16,270m)には,ユキツバキと同様の値を
もつ株が多くみられた。
折 川 武 司 ・ 岩 坪 美 兼 ・ 太 田 道 人
⑰ 口 ⑧ f
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霧 ・ ・ 鋤 J 感鋤
簿 ・ 蕊駁
翁 蝿 鐙 ・
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弓 3 h 簿 感
図 5 ヨ ー ド 試 薬 に よ り 染 色 し た 花 粉 の 顕 微 鏡 写 真 A、ヤブツバキ,B・ユキバタツバキ,
C,ユキツバキバーは10〃mを示す。
80
70
︵固口四口□□口匙□◆◆
□◆
654
000︵ま︶刊略e誌二や濁︑刊略e爺卿躍e二や鞠
□ ロ
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▲◆▲
◆◆◆▲◆▲今▲▲
至言卑冬金識琢酔い知・畔8
▲ご○一○○
□J1(20m:
◆11(250m)
30 ▲12(540m)
OR1(1050m)
20
1 0 2 0 3 0 4 0 5 0
雄ずい群の長さ(m、)
富山県西部地域のユキバタツバキにおける雄ずい の形態変異と標高の関係
□:ヤブツバキ,◆▲:ユキバタツバキ
○ : ユ キ ツ バ キ 図 6
の事実は,ヤブツバキとユキツバキの間のみならず,
ユキバタツバキ,ヤブツバキおよびユキツバキの3分 類群間においても交雑がおこなわれている可能性を示 唆するものである。また,今回の観察から,ユキバタ ツバキの雄ずいは幅広い変異を示し,3分類群は連続 す る こ と が 明 か に さ れ た ( 図 3 ) 。 以 上 の こ と を あ わ せ て考察すると,ユキバタツバキはヤブツバキとユキツ バ キ の 間 で の 浸 透 性 交 雑 の 結 果 生 じ た も の と 推 測 さ れ
る。
ところで,福島ら(1966)は,野生のユキツバキと 栽 培 の ヤ ブ ツ バ キ に お い て 様 々 な 程 度 の 花 粉 の 不 稔 を 観 察 し , そ れ ら に お け る 種 々 の 程 度 の 染 色 体 の 構 造 変 化の存在を推測している。今回,有峰と僧ヶ岳のユキ ツバキに異常な染色体対合が観察されているが,この 異常は福島ら(1966)の推測するような,染色体の構 造変化によるものなのかどうか今後さらに詳しく調べ
る必要がある。
桐野(1960)は,富山県大沢野町笹津山のツバキに 考 察
花と葉の今回の観察から,ユキバタツバキはヤブツ バ キ と ユ キ ツ バ キ の 中 間 で あ る か , も し く は い ず れ か と同様の値を示すことが明らかにされた。この結果は ユ キ バ タ ツ バ キ が ヤ ブ ツ バ キ と ユ キ ツ バ キ の 交 雑 に よ っ て 生 じ た 中 間 型 で あ る と い う 見 解 を 支 持 す る も の である。
桐野(1960)は,ヤブツバキ,ユキバタツバキ,お よ び ユ キ ツ バ キ の 核 型 は 類 似 し て お り , 花 粉 母 細 胞 の 減 数 分 裂 に お い て も 規 則 正 し く 2 価 染 色 体 が 形 成 さ れ ると報告している。今回の減数分裂の観察と花粉稔性 の調査においても,僧ヶ岳と有峰で採集したユキツノミ キ を 除 き , 3 分 類 群 は い ず れ も 正 常 で あ っ た 。 こ れ ら
80 80
70 70
000654
︵ま︶刊岨e誌二拾︐週︑刊略e記抑頃eこや料
000654
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□︑◆◆
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認母︑静弗△
▲
□J2(151正 □J3(15m)
◆15(10m)
▲16(270m;
OR3(700mを
◆13(150m;
▲14(470m;
○R2(750唾
30 30
20 20
1 0 2 0 3 0 4 0 5 0 1 0 2 0 3 0 4 0 5 0
雄ずい群の長さ(m、)
富山県東部地域のユキバタツバキにおける 雄ずいの形態変異と標高の関係
□:ヤブツバキ,◆▲:ユキバタツバキ,
○ : ユ キ ツ バ キ
雄ずい群の長さ(m、)
新潟県西部地域のユキバタツバキにおける 雄ずいの形態変異と標高の関係
□:ヤブツバキ,◆▲:ユキバタツバキ,
○ : ユ キ ツ バ キ
図? 図 8
ついて,低標高から高標高の地点にかけてヤブツバキ に類似したものから,ユキツバキに類似したものへと 標高に対応した変異があることを報告している。また 藤巻(1984)は新潟県上越地方のユキバタツバキにつ いて,海岸に近い低標高の集団はヤブツバキに近い形 態を,高標高の集団はユキツバキに近い形態を示すこ とを明らかにし,ヤブツバキ型からユキツバキ型への 変異の傾斜がみられると報告している。今回富山県 西部,富山県東部,新潟県西部の3つの地域において,
雄ずいの形態の変異と標高との関係をユキバタツバキ に つ い て 調 べ た と こ ろ , 標 高 の 低 い 地 点 で は , ヤ ブ ツ バキとユキツバキの中間的な形態をもつ株からヤブツ バキあるいはユキツバキに近い株まで,様々なものが 存在した。標高の高い地点では,ユキツバキに近い集 団と,ヤブツバキに類似した株とユキツバキに類似し た株を含む幅広い変異を示す集団とがみられた。ユキ バタツバキがこのような変異を示す原因として,開花 時期と地形の影響か考えられる。ユキツバキの開花時
期は,冬期に大量の積雪があることで,ヤブツバキよ り大幅に遅れ,両者の開花時期には絶対的な差が生じ ている。しかし,低標高地においては,雪解けが早い ため,ユキバタツバキの開花時期は,ヤブツバキの開 花期と重なりやすく,浸透性交雑が進行しやすい。ま た,低標高地では斜面上部あるいは谷上流部からの種 子導入も容易におこなわれるために,集団の変異が大 きくなるものと推測される。今回は,標高の違う集団 を比較したが,同標高地域でも斜面と尾根などの地形 の違いによって雪解け時期に差があることから,標高 の高い地点でも,ユキツバキに近い集団や幅広い変異 を示す集団が形成されたものと考えられる。
富山県内ではユキツバキとユキバタツバキにおいて 3倍体の存在が確認されている。野生ツバキの倍数体 の形態学的研究はほとんどおこなわれておらず,これ らのツバキにおいて倍数化が花形,葉形,樹形などに どのような影響を与えているのか,さらに研究を進め ていきたい。
折 川 武 司 ・ 岩 坪 美 兼 ・ 太 田 道 人
引 用 文 献
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