The Japanese Society for Plant Systematics
NII-Electronic Library Service
The Japanese Sooiety for Plant Systematios
ISSN OOO1− 6799 植 物 分 類,地 理
49 (1):57− 66 〔1998)
西 南 日 本 の 植 物 雑 記 IV
.九 州 南部 か ら 南 西 諸 島 の ヤ
マラ
ッキ
ョウ群
の分 類
堀田 満
〒890− 0065鹿 児 島 市郡 元1丁目21−35 鹿 児 島大 学 理 学 部 地 球 環 境 科 学 科
MITSURU HOTTA :Taxonomical notes on plants of southern Japan IV. The AJti”m thunbergii group (Li]iaceae)dist亘buted in southern Kyushu and Ryukyu Islands.− Aeta Phytotax. Geobot .49(1):57−66
,1998.
Department ・.广Earth and Envir・nm 翩 a’Sciences, Faculty OゾScience, KagOh’hima Univex吻 , J−21−35Kourimoto, Kagoshi〃la 890−0065,ノapan
Abstr肌 t. A〃ium aastrok )’ushuense
, a new speeies endemic to southem Kyushu , is described
and illustrated. The species is closely related to ∠4Uium thunbergii but is clearly distinguished from .4. thunbergii by its trigonous and non −fistulose leaf. A new variety of
A’〃跏 virgunculae , var. yak“shimense , is also proposed, and a distinctness of メLUium pseμdoiaponicum incl皿djng”
ノ1. amamianum ”is
discussed .
Key words : Allium,.4’伽 n aust厂okiu ,yhuense , AUittm pseudoiaponicum, Al’iμm thunbe厂9島 .4”ium virgun ‘u.〜α8 var . yakushimense , southem Kγushu, taxonomy
1〜eeeiVE〜d 1)ecembe 厂4,199乃accepted May 16,1998
ヤ マ ラッ キ ョ ウAllium thunbergii G . Don は 日本 列 島の東北 地方か ら九 州に かけて 知ら
れ,さ ら に朝 鮮,中 国大 陸,台 湾と東アジア の温 帯 草 原に結びつ い て広 く分 布 するユ リ科 ネ ギ属の 普通 な多年 草で あ る。雄しべ の基部に あ る 小突起 (歯 牙)の 発達の 程 度 (在る もの と 無い もの)や, 葉の形 態, さらに は染 色 体 数にも2n= 16(2X), 32(4X),46(6X )とい っ た変 異が知ら れてお り,そ れ らの特 徴か ら種や種 内レベ ル の分 類群 が区別さ れる こと もある。
九 州 南 部に は,こ の ヤマ ラッ キ ョ ウ に良 く似た植 物が分 布 し て お り,そ れ ら は ヤマ ラ ッ
キ ョ ウと同定さ れて きた。 とこ ろ が, ヤマ ラ ッ キ ョウ は通 常 ネ ギの よ うに葉は中 空になる の に,九 州南 部か ら知 ら れ る もの は 中実と なっ てい て,様 子が異なっ て い る。 初 島は
1977
年に薩 摩 半 島 南 部の鬼 門 平で採 集 し た この 型の標 本 (KAG 所 蔵)に 「葉は中 実, Allium sp .
nov ,?」 とノート してい るが,その後は これ もヤマ ラ ッ キョ ウ と同 定 して い る (初 島, 1986:
p
.217)。こ の 葉の 特 徴は乾 燥 標 本で は 識 別 が 大変 難 しくな るが,生 きてい る植 物で はは っ き りしてい る。 ま た, 奄 美 大 島 北 部 海 岸か らは ア マ ミ ヤマ ラッ キ ョ ウA
.amamianumTawada が報告さ れてい る。 こ の種は 初島の見 解で は 別 種 と さ れ たり(初 島,1986:p ,217),
ヤマ ラ ッ キョ ウと同 種とされ た りしてい る (初 島・天 野
, 1994:
p
.316)。以前,Makino (
1910
)は,対馬か ら タマ ム ラ サ キAllium
pseudOjaponicμm MLakinoを記 載した が,これ は現 在で は種とし て は ヤマ ラ ッ キ ョ ウと同一視さ れ
, 通 常は分 類 群と して は区
N工 工一Eleotronio Library
58 Acta Phytotax. Geobot . Vol .49
別 は さ れて い ない (北村,1964:p .125;ohwi ,1965:
p
.295)。染 色 体 数で はB 一染 色 体 を 有 する もの も 知 ら れて い るが (野 田 ・渡辺,1968 ;星 谷, 1982), ヤマ ラッ キ ョ ウ は通 常 は 2n= 16の 2倍 体 と さ れ る。 し か し,2n= 32の 4倍 体や
2n
=48
の 6倍 体が知ら れ てい る。ま た, この4
倍体の ヤマ ラ ッ キ ョ ウ に は核型 か ら 同質倍 数 性の もの と異 質 倍 数 性の もの がある こ と が知 ら れてい る (野田 ・渡 辺,1968)。 こ の異 質 倍 数 性 (複 2倍 体)の核型 を示 す ものは,野田 ・渡辺 の記 載 して い る 形 態 や生育 環 境か ら Makino の 記 載し た タマ ム ラサ キであると推 定さ れ る。屋 久 島に は, 初 島(1991)がヤ クシマ ヤマ ラ ッ キョ ウAllium thunbergii var . gtaucum と名 付 けたネギ属の一
種が分 布 する。 こ れ は西 南 部の 七 五岳山頂 付近の他に
2
ヶ所ほ どの産 地(岩川,談)が知ら れ てい る が, 正式に は記 載は さ れ てい ない 。 ま た, 甑 島に も 野 生 ネギの 系 統で, ヤマ ラッ キョ ウ と さ れる てい た ものが分 布 する。 標 本で の観 察で は,屋 久 島や甑 島
産の標 本の花 茎は葉 群に側生するイ トラ ッ キ ョ ウの特 徴を有 してい る もの であ る。
こ の ように 九 州 南部か ら奄美大島に 分布する ヤマ ラッ キ ョ ウ類の分 類 につ いて はい くつ か
の 混 乱 がある ように見 え, ま た九 州 南 部の群は はっ き りし た分 類 群で ある と思わ れ るの で,
形 質の 検 討と再 分 類を行っ た。
材 料
九 州 南部と九 州西部
1
毎岸,屋 久 島や奄 美 大 島 か ら採 集し,鹿 児 島 大 学 理 学 部 圃 場に系 統 栽 培さ れてい る野生ネギ属の生植 物 を中心 に し,現地採 集 標本や鹿 児 島大学農 学 部 (KAG )及び理 学 部 (KAGS )に所 蔵さ れ てい る標 本を含め て 形質や染色体 数の 観察を行っ た。
観 察 葉の長さ と巾
福江島や 九州 南 部屋 久 島, そ れ に奄 美大島に分 布す る ヤマ ラ ッ キ ョ ウ と さ れて い る植 物
は,葉の形 態か ら4つ のグル ープ が 識 別で き る
。 すな わち, 1) 線形で, 断 面が鈍三角 形で
上 面が 凹み中 空の もの (線 形 中 空 型)。 2)中 実に なる点を除 けば ヤマ ラ ッ キ ョ ウの 葉 に外形 的に は酷 似 した もの (線 形 中 実型,Fig. 21>,3)ニ ラに 似 たやや 広い 線 形で 中実の 葉に な る
もの (広線形 型,Fig,20 ),4)葉は線 形で 中 空, 断 面は円 形に近 くなるもの (円 柱型, Fig.
2U
), である。 こ の 中で線 形 中実 型と広 線 形 型の葉 を 有 する各 地の野生集 団やそ れの 栽 培 系 統か ら,花 茎につ く最大の葉を採 取し て,生 きた状 態での 葉の 長さと最 大 巾 を測 定 して散 布 図に し たのがFig
.1で あ る。 線形中 実型の葉 と広 線 形 型の葉は, 長さの点で はそれほ ど違いは な くて も, 巾は は っ き り異 な り,九州 南 部の薩 摩 半 島に分 布 する前者は 35mln 以 下 (多 くは 3mm 以 下)の 巾に, 福 江 島 ・亀が 岡 ・奄 美大 島 産の 後 者は 3.5mm 以 上 (多 くは45
mm 以 上)の巾にまと まる。 千 貫 平 産の線 形中実型 で,葉の サ イ ズを野生 系 統と栽 培 系 統と
で比較 して見 る と, 栽 培 系統で はや や葉の長さ も巾も大 き くは なるが,それで も3,5mm 以 上の 巾になる ものは見ら れ な かっ た。ま た,散布図 に は 入 れ てい ない が, 円柱 型の葉は初 島 が ヤ ク シマ ヤマ ラッ キ ョ ウ と し たもの で,葉の直 径は 1− 1.5 mm 前 後 し か な く,時に は 葉
上 に珠 芽 (ム カ ゴ)を 生 じ るこ と が 特 徴的 で あ る。
The Japanese Society for Plant Systematics
NII-Electronic Library Service
The Japanese Sooiety for Plant Systematios
June 1998 堀田 :西南日本植 物 雑記
IV
59(mm 》 350
300
250
f 曽
2°°,
ES
莞
3
・5・100
匆
0
0,0 1,0 2.0 3.0 4.0 5.0 6,0 7.0 8.0 (mm }
Leaf
Wid
亡h
FIG.1. Relationship hetween leaf Iength and leaf width in the 、4’伽ητ thunbergii gπoup , Nallow linear leaves ale indicated in black, and rather wide linear正eaves in white . C,1eaves collected
cultivate plants;W , leaves collected from wild plants. 花 茎と葉の関 係
葉が花 茎につ い てい る か,そ れ と も独立 して出る か は ヤマ ラッ キ ョ ウとイ トラ ッ キ ョ ウを 識別 する区 別 点にされてい る。 葉の 4型 をこの点で 区分 する と線 形 中空 型と線 形中実型,お
よ び広 線 形の葉 を右す る もの は,い ずれも葉は花 茎の 基 部 を 抱 き,「ヤマ ラッ キ ョ ウ」の特 徴を有してい る。 そ れに対して , 円 柱 形の ヤク シマ ヤ マ ラ ッ キ ョ ウとさ れ る もの の花茎 は, 独 立 して 生.じ,イ トラ ッ キ ョ ウ の特 徴 を示 す。
雄 しべ基 部の歯 牙
ネ ギ属の識 別形質の 一つ と して,雄しべ の花 糸の基 部に 突 出する歯 牙の有 無や その形 態が あ げら れる。 現 在 まで に知ら れ てい るい わ ゆ る 「ヤマ ラ ッ キョ ウ」では,こ の形質に は変 異 があっ て,全 く ない もの か ら はっ きり あ る もの ま である とさ れて い る。 こ の形 質に 関 し て は
「ヤマ ラッキ ョ ウ で は歯 牙は退 化 的で ある」 (OhWi ,1965)とす る 意見か ら,「タマ ムラ サ キ に はない が ヤマ ラ ッ キ ョ ウ に は ある (し か し 区 別は し が たい )」 (北村, 1964)とい う意 見ま
で研 究 者に よっ て見 解が 異 な る。 九州 南 部の細い 線 形の葉 (線 形中 実 型)を有 する集 団で は,
外 花 被 片に対生する雄しべ に は歯 牙 が ない が,内 花 被片に対 生する雄しべ の基 部に は小 さく
て 先端が尖る歯 牙が 1対 有る (Fig.2G, H)。 各 雄しべ の問に発 達の 程度 はい ろい ろ であるが
N工 工一Eleotronio Library
60 Acta Phytotax,Geobot. Vol.49
FIG.
cmm}
"o
Pi
'g
u-I
twU (ISR @s
v2ZT
2. A-I,Altiumat{strokyush"ense M. Hotta,sp. nov, J-O,A. pseudoiaponicum Makino.
?-U,
A,virguneulae F. Muekawa et Kitamura var. yakushimense M.Hotta, var. nev. A, habit
(Mt.
Onodake, from Hotta 33e68);B,flower;C and D, fiowersinmale and femalestages, with tepals amd stamens removed; E, outer tepal; F,innertepal;G, tepalsai]d stamens; H, stamen; I,cross
section of leaf;J,fiower
(from
a cultivated plantcollected at Fukue,Nagasaki Pref.);K and L, fiowersinmale and femalestages, tepals and stamens removed; M, outer tepal; N,innnertepal with a stamen; O, cress section of leaf;P,habit(from
a cellection at Mt. Sbichigo-dake,Oct. 4,1996,lvagawa s. n,); Q, flower;R, outer tepal; S,inneTtepal; T, stamens; U, cross section of leaf.
The Japanese Society for Plant Systematics
NII-Electronic Library Service
The Japanese Sooiety for Plant Systematios
June 1998 堀田 :西南日本 植 物 雑 記 IV
6
ユ1個の歯 牙がある の は, タマ ムラ サキを除 く 「ヤマ ラ ッ キ ョ ウ」の特 徴である。 それ に対し
て奄 美 大 島の アマ ミ ヤ マ ラ ッ キョ ウ や福 江 島や鹿 児 島に分 布 する広 線 形の葉を有 する 「ヤマ
ラ ッキ ョ ウ」とさ れ てい た も の の雄 しべ は歯 牙 を 欠い てい て,タマ ム ラ サキの特 徴 と一致 する (Fig.2N)。
ヤ ク シマ ヤマ ラ ッ キ ョウ に は,内 花 被 片に対生する雄 しべ に や や 発達し た歯 牙が
1
対あ る(Fig.2T )。 雄しべ 基 部の や や発達した歯牙はイ ト ラッ キ ョ ウの特徴で もある。 雌しべ の蜜腺
ヤマ ラ ッキ ョ ウ 類 で は,雌 しべ の 基部に 3個の 蜜 腺が ある が,本 州に分 布 する ヤマ ラ ッ
キ ョウ や九州か ら奄 美に分 布 する広 線型の葉を有 する 「ヤマ ラッ キ ョウ」は, 開 花が 進んだ 雌花期 に はこ の蜜腺が深く くぼ み, その上半分を帽子状の 構造 が覆っ てい る (
Fig
,2L
)。し か し九州 南 部の 細い 葉を有 する 「ヤマ ラ ッ キョ ウ」(線 形 中 実 型)
で は,開 花 期の後 半 になっ て もこ の蜜 腺 を帽 子 状 に覆 う構 造はあま り発 達せ ず,蜜 腺は ほ と ん ど露 出 してい る
(Fig.2D )。
染 色 体 数
ヤマ ラ ッ キ ョ ウ 類 に は
2
倍体,4
倍 体,6
倍体が知 ら れ てい る。 花茎 の出方で イ トラ ッ キョ ウ の特 徴を有 して い る屋 久 島七五 岳の ヤク シマ ヤマ ラ ッ キョ ウ (2n= 16)を 除 き, 九 州 か ら奄 美 群 島に分 布 する,い わゆ る 「ヤマ ラ ッ キ ョ ウ」では葉の 形 態が線 形 中 実型 も広 線型の もの も観 察さ れ た諸 系 統はすべ て 4倍 体で 2n =32 本の染 色 体 数 を有してい た(Table 1)。
TABLE 1. Chromosome numbers of wild species of Allium ill Kyushu and Amami lslands. Locality Chror皿osome
number (2n) Notes
Mjyanoiyo , Kagoshima Pref, Mt Shichigo−dake, YakushimaA
Mt . Senganbira, Kagoshima Pref. Mt . Onodake , Kagoshima Pref. Fukue−lima, Nagasaki Pref. Mt . Kamegaoka , Kagoshlma Pref. Youa 皿, Amami Is.
Ayamaru −misaki
, Amami ls.
32 16
32 32 32 32 32 32
Leaf fistulose, naturalized Alt’um chinense
Leaf
cylindrial ,
fistulose,
A.
virgunculae var . yakushimense, val 、
nOV .
Leaf na 皿 owly Hnear, not fistulose, A. austrokyushuense , sp. nOV .
Leaf na π owly linear, not 五stulose, A . austrokyushuense , sp. nov.
Leaf linear,且at and not fistulose, A.
pseudOjaponicum
Leaf linear,且at and not fistulose, A , pseudOJ’
aponicum
Leaf linear, 且at and not fistulose, A.
pseudOjaponicum
Leaf linear,且at alld not fistulose,ノ4.
pseudo.
iaponicum
N工 工一Eleotronio Library
62 Acta Phytotax. Geobot .
Vol
.49分 類の検討
屋 久島や トカラ列 島に は,初 島の言 うヤクシマ ヤマ ラ ッ キョ ウを 除 くとヤマ ラ ッキョ ウ類
は分 布 してい ない 。その た めアマ ミヤマ ラ ッキ ョ ウAllium amamianum Tawada は,奄美群 島に遠 く隔 離された 「島の 固有 種」と考 え られ, 記 載さ れ た。 し か し,葉はニ ラ型で幅の広
い 線形 に なり,雄しべ の花 糸の基部に棘 状 突起 が なく, 雌しべ の蜜 腺に は帽 子 状の覆い が発 達 する とい う基本的な 特徴で は 福 江島や鹿 児 島県西部の 海岸に分布してい る 広線型の葉を有 す る 「ヤマ ラ ッ キ ョ ウ」
(
タマ ム ラサ キ)
とアマ ミ ヤマ ラ ッ キョ ウ とは形 態 的には異 なる点は な く,分 類 学 的に区 別し なけれ ば な ら ない特 徴は見い だ せ な かっ た。 ま た,染 色 体 数は両 者ともに 4倍 体 (2n =32)で ある。こ の 広 線 型の 葉 を有 する 「ヤマ ラッ キ ョ ウ」(タマ ム ラサ キ)は,九州 本 島で は海 岸や海 岸 近 くの岩 石 地 帯の草 原に成 育 してい る こ と が多い 。 アマ ミ ヤマ ラ ッ キ ョ ウの現在ま で知ら れ てい る
2
ヶ所 の生育地 も,海岸の琉球石 灰岩の上 に 発 達 し た草原 である。1910年に Makino が対 馬か ら記 載 した タマ ム ラサ キAllium pseudoiaponicum は,こ の広 線型の 葉を有 する 「ヤマ ラッ キ ョ ウ」で あろう。 この 種は,現 在で は多 くの 場 合は ヤマ ラッ キ ョ ウ か ら 区 別 さ れて い ない が,「葉はや や幅 広 く,…花 糸の 糸間 に歯 片な し
」(牧野 ・根 本,193ユ)とい う特 徴 か らすれ ば, こ こ で い う広 線 型の葉 を有 する 「ヤマ ラッ キョウ」と考 えら れ る。こ の葉の 型の 「ヤマ ラ ッ キ ョ ウ」は 九 州本島だけで な く,隠 岐 や 四 国,さ ら に 本 州 南 部の 海 岸地域に ま で分布してい る。 四 国や本州の 広 線 型の 葉を有 する 「ヤマ ラ ッ キ ョ ウ」の染 色 体 数の報 告は無い ようだ が,これ ら海 岸 草 原 性の 「ヤマ ラ ッ キ ョ ウ」は,葉の特 微や染色体 数か ら ヤマ ラ ッキ ョ ウその もの か ら は明ら か に種と して 区別で き る。生育 環境 も 異 なっ てい る。 北 村 (1964)は 「葉の細い ものと太い もの とが あるが同じ所に生えてお り, 地理的な区 別は ない」 とノートしてい るが,広 線型の葉の もの で も,花茎 を 出 さ ない鱗茎 か
らの葉 は 細 く な る。し か し,花 茎につ く葉 を比較 すると,九 州 南 部で は葉の細い群 と広い 群 とは生態 ・地 理的に も 区 別が出 来る地域 集団を形 成してい る (Fig.1)。 葉が中 空になるヤマ ラ ッ キ ョ ウその ものは,本 州 東 北以南 ・四国・九州に広 く分 布 して い る
。 そ し て 九州で は宮 崎 県 南 部の 霧 島[
tl
麓や鹿 児 島県北部に まで分 布 してい る。 し か し霧 島 山 系の 高 地や宮 崎 県 側のえび の高原に は葉が鈍三角 中 実 型に なる 「ヤマ ラッ キョ ウ」が知ら れる。 鹿 児 島 県の薩 摩 半島の 内 陸部に分布する 「ヤマ ラ ッ キ ョ ウ」は,現在まで 知ら れて い る 限 りすべ て葉が 中実
の 形 質 を示す。 この 線形で 断 面が鈍三角 中 実の葉 を有 する 「ヤマ ラ ッキョ ウ」はまた,6本 有る雄 しべ の な かで 内 花 被 片 に対生する 3本の花 糸の基部に だけユ対の小 さ な棘 状 突 起を 有し,雌 しべ の基部の蜜 腺に は帽子 状の 覆い が 発 達 せず露出し てい る形 態 的な特 徴 を有 し てい る。染 色 体 数は 4倍 体(2n ・・32)で ある。
結 論 的に ま とめれ ば,九州に はヤマ ラ ッ キ ョ ウ と その類 似 品と して は,1)線形 中 空の 葉 を持 ち,3本の雄しべ の基 部に対になっ た棘 状 突 起があ り(合 計 する と6箇),雌 しべ の基部 にある蜜 腺は帽 子 状の 覆い が発 達 する ヤマ ラ ッ キ ョ ウ (染色体 数は基 本 的 に は 2n =16の 2 倍 体,東北 地方か ら広 く分布 し, 朝 鮮 半 島や 中 国 大 陸にも知ら れる),2)広 線 形のニ ラに 似
た葉を 有 し, 雄しべ 基部の棘状 突起は な く,雌 しべ の 基 部にある蜜 腺には帽 子 状の 覆い が 発 達 する タマ ム ラ サ キ(染 色 体 数は 2η= 32の 4倍 体),3)線 形で中 実の葉を有し,3本の雄し
べ の基部に対 に なっ た棘状 突起があり(合 計 すると 6 箇), 雌 しべ の 基 部にある蜜 腺 を 覆 う 帽 子 状の構 造は発 達しない 九州 南 部に知ら れる 「ヤ マ ラ ッ キ ョ ウ」(染色体 数は 2n・・:32 の 4