Kyushu University Institutional Repository
On the Evaluation of Competitiveness of Agricultural Products in Japan-Korea FTA Negotiations
深川, 博史
九州大学大学院経済学研究院教授
有田, 一輝
九州大学大学院
https://doi.org/10.15017/4738322
出版情報:韓国経済研究. 14, pp.27-42, 2017-03. Kyushu Unversity Interdisciplinary Programs in Education and Projects in Research Development (P&P)
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権利関係:
On the Evaluation of Competitiveness of Agricultural Products in Japan-Korea FTA Negotiations
深川 博史
*・有田 一輝
FUKAGAWA Hiroshi and ARITA Kazuki
**
はじめに
本稿では、日韓農産物の競争力について比較 分析を行う。本稿において、「競争力」の意味す るところは、貿易上の競争力、換言すれば「輸 出競争力」であり、国内生産だけではなく、為 替、競合相手国、世界市場の状況により競争力 は変わる。自国通貨が安い時には価格競争力が 上昇し、競合国の産品が世界市場に存在すれば、
自国産品の競争力は影響を受ける。そのような
「競争力」について、本稿では、日韓の農産物に 焦点を当て検討する。
両国農産物の競争力は、2004年の日韓FTA
(自由貿易協定)交渉を契機に議論されてきた。
日韓FTAは交渉開始直後に中断し、現在も未締 結のままである。中断原因は、農産物市場開放 への日本側の消極姿勢が指摘されている。両国 間の農産物貿易は韓国側の出超であり、韓国農 産物の貿易上の競争力優位が、日本側の消極姿 勢と交渉中断を招いたというのである。本稿で はこのような議論を踏まえ、近年のデータによ り日韓農産物の競争力分析を行う。
本稿における競争力分析は貿易実績により行 うが、現行関税下の分析は、結果が歪められる
恐れがある。関税等の輸入規制は、輸入額の極 小化を通じて純輸出額を膨張させるなど、競争 力を正確に反映しない。そこで本研究では、競 争力分析に先立ち、両国の関税率、輸入規制、
保護貿易水準について検討を加えている 1)。
1.先行研究
先行研究では、韓国農産物の対日輸出超過が、
FTA交渉において、日本の農産物市場開放への 消極姿勢を生んだとされており、韓国農産物の 対日輸出超過の背景として、貿易上の競争力優 位が示唆されている。他方で、日本より高水準 の韓国の輸入関税や、韓国の対日農産物輸出に 占める特産品割合の大きさから、韓国農産物の 競争力優位論に疑義も示されている。
韓国外交通商部の『外交白書』によれば、2003 年の12月から6回にわたりFTA交渉が行われた が、日本の農業分野の譲許水準などを巡る対立 から、2004年11月に交渉は頓挫した。そのため 韓国側は、交渉再開には日本の農産物市場の一 層の開放が必要と考えている 2)。
ソン・ヨンギルによれば、農業分野の交渉で 日本側は一定の譲許数を示したが、韓国側はよ
* 九州大学大学院経済学研究院
Faculty of Economics, Kyushu-University
** 九州大学大学院
Graduate School of Kyushu-University
1 ) 本研究では既に、以下の拙稿において、両国の保 護水準の検討を行っている。有田一輝・深川博史
「日韓FTA交渉における農産物の競争力比較につい て」『韓国経済研究』第13巻、2015年。
り多くの譲許を期待した。譲許数以外にも非関 税措置が問題となり、他分野では政府調逹市場 の進出拡大など、韓国側の関心分野で、成果を 得られなかった 3)。
Sung Chun JUNGによれば、日本は一定の市 場開放水準を提示したが、これに、韓国側は満 足できなかった。日本側の提示した開放水準は、
品目割合で5割程度であるが、韓国側は、より 大幅な農産物市場の開放を求め、実現に至らず 交渉は決裂した 4)。
交渉中断の原因については、農業分野以外に あるとする見解もある。鄭仁教等によれば、農 産物市場開放は表向きの理由であり、本質的な 理由は、韓国側がウィン = ウィン関係のFTA締 結に交渉過程で確信が持てなかったからである という 5)。
Sung Chun JUNGも、農業分野以外の理由と して、市場開放後の韓国製造業分野の危機感を 指摘している。日韓FTAにより関税が撤廃され れば、化学・ゴム・プラスチック、鉄鋼・金属、
輸送機器、機械産業では、日本製品が流入し、
韓国の国内生産が減少して、日韓の貿易収支が 悪化するという 6)。
山本栄二も同じく、交渉中断の原因は、韓国 製造業の競争力の問題に由来する、と述べてい る。山本によれば、韓国は日本から圧力を受け、
比較的弱い立場にある鉱工業品で高水準の自由 化を実現すべく国内調整に努力したのに、日本 側は弱い立場にある農水産品について汗をかい ていないとの認識がある 7)。
それゆえ、山本によれば、韓国側は、農水産 品についての日本の開放水準が改善されない限 り交渉再開には応じないという姿勢を示してい る。しかし、2006年段階で、農水産品が日韓貿 易全体に占める比率は約2% に過ぎず、その程 度の問題では、FTA 交渉中断の主たる理由とは ならない 8)。韓国側の自動車、機械産業および 一部の中小企業などは、関税が撤廃されれば、
質の高い日本の完成品、部品・素材が関税分安 い価格で販売され、国内シェアを奪われると懸 念している 9)。
奥田聡も、農産物が韓国の輸出に占める割合 はごくわずかで、交渉を止めなければならない ほど深刻な問題であるとは考えにくいという 10)。
ただ、韓国側は、日本の一層の市場開放後に、
対日農産物輸出が伸びると期待している。崔世 鈞等の分析によれば、日韓FTA後の関税引き下 げにより、韓国の非鉄金属、電気、電子、機械 装備部門などの製造業分野で、生産の縮小と貿 2 ) 外交通商部『2006年外交白書』156頁。
http://www.mofa.go.kr/ENG/policy/whitepaper/
index.jsp?menu=m_20_160&sp=/webmodule/hts- board/template/read/engreadboard.jsp%3FtypeID=1 2%26boardid=761%26seqno=303626
3 ) ソン・ヨンギル「韓日FTA, 韓米FTAと韓国の政 策」『東アジア政策協力への展望 ―自由貿易協定
(FTA)・アジア共同国際債市場・環境政策・CSRの 現状と展望―』、総合研究開発機構(NIRA)2006 年、3頁。
http://www.nira.or.jp/past/newsj/kanren/180/182/
pdf/05_jpn.pdf
4 ) Sung Chun JUNG「日韓FTA交渉と締結への障害 要因」『V.R.F Series』、No.470、2011年12月、日本貿 易振興機構 アジア経済研究所。41頁。
5 ) 鄭仁教・趙貞欄「韓日FTAは可能なのか―韓国 のFTA政策の考察及び韓日FTA交渉に対する示唆
―」、Economic Research Institute for Northeast Asia
『ERINA REPORT』Vol.76、2007年、5頁。
http://www.erina.or.jp/jp/Library/er/pdf/Er76.pdf
6 ) Sung Chun JUNG、前掲論文、24頁。
7 ) 山本栄二「日韓FTA・EPA―教訓と交渉再開に向 けた展望―」 『New ESRI Working Paper Series』、
第6号、10頁、内閣府経済社会総合研究所。
http://www.esri.go.jp/jp/archive/new_wp/new_
wp010/new_wp006.pdf。
8 ) 山本栄二、同上論文、9頁。
9 ) 山本栄二、同上。
10) 奥田聡『韓国のFTA—10年の歩みと第三国への影 響』アジア経済研究所2010年、166-167頁。
易赤字が発生するものの、農畜産物、水産物、
食料品、衣類などでは、輸出増加と生産増加が 期待できるという 11)。
金中基も、日本は農産物の純輸入国であり、
地理的な近接性などの要素を考えても、日本と
のFTA は韓国から農産物の輸出を増加させる可
能性が高いとみている 12)。
農産物の輸出増加について、具体的な予測分 析も行われている。崔世鈞によれば、日韓FTA により、韓国の農業部門は大部分の品目で生産 活動が増加する。輸出に牽引されて、とくに、
畜産、花卉、野菜、果実、米穀生産が増加する。
例えば、野菜21%、果実27%、花卉6%、豚肉 47%、肉加工品12%、果実および野菜加工品 18%等である。一方、日本の対韓農産物輸出も、
果実、加工食品などの増加が予測されるものの、
その規模は大きくないという。結局、日韓FTA は、日本ではなく、韓国の農業分野にプラスの 影響を与えるとされる 13)。
これに対して、韓国側の農産物輸出が限定的 とする見方も少なくない。九州地域産業活性化 センターの報告書は、次のように記している。
日韓FTAが日本、九州の農業分野に対してどのよ うな影響を与えるのかについては、様々な意見があ る。一般的には、日本より労賃も含めて物価水準が 低い韓国の方が生産費の面で有利であり、その点を 以って韓国から日本への輸出が増加するとの意見が
根強い。しかしながら、必ずしも韓国の方が有利と は言えないとする見解もある。例えば、一般に関税 率は韓国の方が高く、加重平均実行関税率でみた場 合、農産品は日本の10.60%に対して韓国84.04%、水 産品及び水産加工品は日本4.40%に対して、韓国 13.04%となっている。これがFTA締結によって撤 廃されるとするならば、品目よっては日本側の方が 有利になるケースもあると考えられる。但し、韓国 のリンゴ、ナシ、茶、コメ、唐辛子といった高関税 率品目は、もともと韓国にとってのセンシティブ品 目なので、韓国-チリFTAで除外されたように、例 外扱いされる可能性もある。
また、日本では野菜等はすでに関税が低く設定さ れており、たとえ日韓FTAが締結され、すべての関 税が撤廃されても影響は薄いだろう。現在、韓国か ら日本に輸出されている農作物の多くは、価格競争 力を要因とするものよりも、むしろ韓国農業・水産 業の特産品的な物が多い。韓国から日本が輸入して いる農作物の代表的品目としては、パプリカや朝鮮 人参があるが、これらの品目は日本国内ではほとん ど栽培されていない。パプリカについては韓国にとっ ても輸入作物であり特産品とは言いがたい面もある が、戦略的な輸出作物として韓国政府が積極的に農 家での栽培を支援してきた歴史的経緯がある 14)。
鈴木宣弘も、韓国側の見解に疑義を示してい る。すなわち、主要品目ごとの関税を見ると、
日韓の食料品価格が接近している中で、日本側 から見れば、すでに関税が低く競争にさらされ ている品目について数%の関税撤廃で失うもの よりも、数十~数百%の韓国側の関税がなくな ることによる日本からの輸出可能性の拡大メ リットの方が格段に大きいという 15)。
11) 崔世鈞・権オボク「韓・日FTAと農産物交易の 展望」江原道農漁村研究所・北海道農業研究所『韓 日FTAと農産物交易活性化の方策』(第17回江原道 農漁村研究所シンポジウムおよび韓日農業シンポジ ウム)インジェ郡、2005年8月26日、7頁。
12) 金中基「韓国のFTA推進と農業部門の対応の課 題」韓国応用経済学会『応用経済』、第5巻第2号 特別号、2003年、9頁。
13) Sei-Kyun Choi (2002)「Effects of Korea-Japan FTA on the Korean Agricultural Sector: Evaluation and Strategy」韓国農業経済学会 『農業経済研究』第43 巻第2号、2002年12月、32頁。
14) 財団法人九州地域産業活性化センター『日韓自由 貿易協定(FTA)の影響と日韓海峡経済圏の可能性 に関する調査』、2005年、75頁。
http://www.kiac.or.jp/library/pdf/houkoku_h16nik- kan.pdf
15) 鈴木宣弘編『FTAと食料 評価の論理と分析枠 組』2005年、55頁、筑波書房。詳しくは第2節「日 韓の関税と農業保護」を参照されたい。同書の刊行 は2005年であるが、韓国の農産物関税が日本に比し て高い状況は現在も変わっていない。
実際に、過去の韓国の農業交渉を見ると、農 産物に競争力優位があるとはなかなか考えにく い。
ミレヤソリースによれば、シンガポールおよ
びASEANとの交渉では、韓国政府があまりに
多数の農産物を対象外としたために、タイ政府 が当初、調印を拒否するという事態が起きた 16)。
Yoocheul Songによれば、日本は日本シンガ ポールEPAで農業分野を除外したが、韓国もチ リとのFTAの交渉の際、農業分野で苦しい交渉 を経験した 17)。
柳京煕・吉田成雄によれば、韓米FTA交渉に 際して、韓国側はSSG(特別セーフガード)と TRQ(関税割当)による農業保護を図り、米国 側はSSG導入反対とTRQへ消極的な姿勢をとっ た 18)。
韓国は2015年に、コメのミニマムアクセスを 止めて関税化に踏み切ったが、同年12月発効の 中韓FTAでは、コメ、ニンニク、トウガラシな ど、自国の敏感品目を関税削減対象から外した。
以上に見るように韓国は、対外交渉で守るべ き自国市場の保護水準が高く、対日輸出実績の みから競争力優位を判断可能か、検討の余地が ある。先行研究は、FTA発効後の韓国農産物の 輸出増加の可能性を指摘したが、交渉中断から
相当な時間を経た現在、中断後の状況変化を踏 まえた分析が必要となっている。
分析手法と統計 2-1.分析手法
貿易実績を比較する際には品目を特定する必 要がある。特産品のように何れか一方でのみ生 産される品目は、輸出増に関する比較が不可能 であり、双方ともに生産を行い他国に輸出して いる品目を特定してこそ比較が可能になる。そ れらはここでは、野菜・果実が該当する。
本稿では畜産物は対象外とした。とくに豚肉 は、韓国の度重なる口蹄疫の発生の度に、国際 獣疫事務局によって、ワクチン接種清浄国のス テータスを失っており、牛・豚・馬など口蹄疫 に感染する恐れがある肉類の輸出が一定期間、
不可能になった。このような事情を踏まえて、
畜産品の比較分析は困難と判断した。また、加 工食品については、加工前の農産物に限定し競 争力を算出・比較するため対象外とした。畜産 品と加工食品を除外し、韓国からの対日輸出増 加が指摘された野菜・果実に焦点を当てた。手 法は、貿易特化指数(Trade Specialization Index:
TSI)及び顕示比較優位指数(Revealed Comparative Advantage: RCA)による競争力分析である。TSI
16) ミレヤソリース「TPPをめぐる韓国の運命的な決 断」ブルッキングス研究所『POLICY PAPER』、Number 31、2013年9月、8頁。
17) Yoocheul Song, “Liberalization of the Agricultural and Fishery Sectors,” Korea-Japan FTA: Toward a Model Case for East Asian Economic Integration. February 2005, pp.201, Korea Institute for International Economic Policy.
18) 柳京煕・吉田成雄編『韓国のFTA戦略と日本農 業への示唆』筑波書房、2011年5月、49頁。
SSG(特別セーフガード)とは、WTO農業協定
第5条に基づき、ウルグアイ ・ ラウンド合意におい て輸入数量制限等の非関税措置を関税化した農産品 について、関税化の代償として認められている 「改
革過程の期間中」 効力をもつ緊急措置である。SG
(一般セーフガード)と異なり農産物に限定される。
日本では、関税暫定措置法第7条の3及び4をもっ て規定される。同措置は①輸入数量が増加した場合 に関税を引上げる 「数量ベース」 と②輸入価格が下 落した場合に関税を引上げる 「価格ベース」 の2種 類がある。
TRQ(関税割当)とは、一定の輸入数量の枠内に
限り無税又は低税率(一次税率)を適用し需要者に 安価な輸入品の供給を確保する一方、輸入数量枠を 超える分への高税率(二次税率)の適用で、国内生 産者の保護を図る仕組みである。
とRCAの算出方法は後の各節に述べている。
2-2.日韓農産物の貿易統計
前稿で分析したように、日韓の農産物貿易は 韓国の出超であるが、農産物の関税水準は、韓 国でより高い。韓国の対日農産物の主要品であ る野菜・果実をみると、韓国の輸出に占める日 本の割合や、日本の輸出に占める韓国の割合は 低下しているものの、韓国の輸出額は日本を依 然として上回っている。韓国の関税は日本より も高く、野菜と果実は、日本より2・3割高 い 19)。韓国の高関税政策により、韓国の輸出競 争力が過大評価されている可能性があるが、本 稿では、そのことを勘案したうえで、既存の貿 易データにより、競争力比較を行うこととする。
その貿易データについては、農水産物と食料 品は貿易統計上、表1の通り、第1部(第1類 から第5類)、第2部(第6類から第14類)、第 3部(第15類)、第4部(第16類から第24類)に 分類される。
農水産物のうち、本稿は第2部の植物性生産 品に焦点を当てる。先行研究における韓国農産 物の競争力優位論は、第2部の植物性生産品の 野菜・果実の輸出実績を根拠としている。この 第2部内の分類は表2に示す通りであり、野菜
(第7類)、果実(第8類)が、対日輸出実績に 関わる。
前稿では、これらの貿易データから、いくつ かのことが確認された。すなわち、野菜・果実 を含む植物性生産品についてみると、近年の日
19) 前掲、拙稿「日韓FTA交渉における農産物の競 争力比較について」、16頁。
表1 農水産物と食料品の HS コード分類表 第1部 動物(生きているものに限る。)及び動物性生産品
第2部 植物性生産品
第3部 動物性又は植物性の油脂及びその分解生産物、調製食用脂並びに動物性又は植物性のろう 第4部 調製食料品、飲料、アルコール、食酢、たばこ及び製造たばこ代用品
出所:財務省『輸出統計品目表』(2015年版)http://www.customs.go.jp/yusyutu/2015/index.htm
表2 植物性生産品(第2部)の HS コード分類表
第6類 生きている樹木その他の植物及びりん茎、根その他これらに類する物品並びに切花及び装飾用の葉 第7類 食用の野菜、根及び塊茎
第8類 食用の果実及びナット、かんきつ類の果皮並びにメロンの皮 第9類 コーヒー、茶、マテ及び香辛料
第10類 穀物
第11類 穀粉、加工穀物、麦芽、でん粉、イヌリン及び小麦グルテン
第12類 採油用の種及び果実、各種の種及び果実、工業用又は医薬用の植物並びにわら及び飼料用植物 第13類 ラック並びにガム、樹脂その他の植物性の液汁及びエキス
第14類 植物性の組物材料及び他の類に該当しない植物性生産品 出所:同上、財務省 『輸出統計品目表』(2015年版)
韓貿易は韓国の輸出超過であった。しかし両国 の関税を比較したところ、韓国の関税水準は日 本より高く、日本を含む他国からの農産物輸入 の制約要因となっていた 20)。韓国の高関税の水 準からみて、日本の競争力は必ずしも韓国より 低くはないと推測される。保護水準は競争力を 直接的に示さないが、韓国の農産物に競争力が あれば、高い保護水準維持の必要はないはずで ある。韓国の高水準の関税は、韓国農産物の競 争力優位論に疑問を抱かせるものである。
次の、TSI分析やRCA分析では、既存の貿易 額から競争力を測っていくことになり、関税等 の輸入政策で歪められた輸出入データを使わざ るを得ない。しかし、品目別分析に際して、関 税等の輸入制限の要素を一定程度、勘案するこ とができれば、実際の競争力を反映した分析結 果を導き出すことが可能であろう。
3.日韓農産物のTSI分析
ここでは、野菜・果実についてTSI分析を行っ た。TSIは、高関税による過大な数値に留意し なければならないが、一定程度、輸出競争力の 指標となる。日韓の野菜・果実をHSコード分 類し、1990年から2013年までのTSIを算出した 結果、野菜と果実の競争力は依然として韓国が 高いものの、日韓のTSI差は近年縮小しており、
競争力格差は2000年代前半ほど大きくないこと が判明した。
3-1.TSI分析
製品・品目毎、あるいは、産業毎の競争力を 測る際に使われる指標として貿易特化指数
(Trade Specialization Index : TSI)がある 21)。こ の指数は、当該国の特定製品の輸出額と輸入額
さえあれば算出できる。
TSIは、上式のように、当該国の当該製品の 輸出額から輸入額を引いた純輸出額を、当該国 の当該製品の輸出額と輸入額を合せた貿易額で 除したものである。計算された数値は、+1と
-1の間に収まり、+1に近づくほど、当該製 品の貿易構造が輸出に偏り、当該国の当該製品 が国際市場で比較優位にあると解釈される。逆 に-1に近づけば、その製品の貿易構造が輸入 に偏ることとなり、当該国の当該製品が国際市 場で比較劣位にあると解釈される。
TSIのメリットは、当該国の輸出額と輸入額 のみで当該製品の比較優劣が測定でき、計算も 比較的簡単なことである。一方でTSIのデメリッ トとして、輸出入規制により分析結果が歪めら れる可能性がある。その背景には、自由貿易阻 害の問題があり、具体的には、①特定の財の輸 出規制、②輸入関税や非関税障壁などがあげら れる。前者は、当該国の競争力を実際よりも弱 く示す。逆に後者は、当該国の競争力を実際よ りも強く示す。TSIが競争力から乖離する一例 を以下に示す。
例えば、A国のi製品の輸出が75で、輸入が 25、B国のi製品の輸出が45、輸入が5とする。
となる。
TSI = X M X M
i i i
i i
TSI =
iA75 25 = = 75 25
50 0.5 100
TSI =
iB45 5 = = 45 5
40 50 0.8
20) 前掲、拙稿「日韓FTA交渉における農産物の競 争力比較について」、15頁。
21) TSIは国際競争力指標とも呼ばれ競争力測定に一 般的なものである。齋藤之美、齋藤勝宏(2011)「国 際競争力指標とその推計について」創価大学経済学 会『季刊創価経済論集』、2011年3月、28-29頁。
このように、TSIで判断する限りB国の方が A国よりも競争力が高い。しかし、このとき、i 製品の関税がA国では0%、B国では50%とす る。つまりA国には国際価格で輸入されるが、
B国には国際価格の5割高で輸入される。この 場合、TSIの結果からB国に競争力があると結 論づけることは不適切である。B国が国内産業 の保護を目的として、i製品に高関税をかけ、そ の結果、B国の輸入が減少したと想定されるか らである。B国が関税を撤廃すると、i製品の輸 入は増加し、TSIは0.8より低下する。0.8という TSIはB国の競争力を反映しないことになる。
以上にみるように、TSI分析では、関税率や 非関税障壁などを考慮しておく必要がある。と くに、農業分野には、依然として高関税や厳し い輸入規制を敷いている国が多い。高い安全性 が求められての衛生上の理由による輸入規制、
生態系保護等の環境保護を目的とした検疫、特 定地域からの輸入禁止などである。そのために、
農業分野のTSIによる競争力比較は、関税及び 非関税障壁に留意することが求められる。
関税がTSIにもたらす歪みを踏まえた上で、
注意すべきは日韓の関税差である。日本の農産 物の関税はコメやこんにゃくなど極端に高い品 目もあるが、多くの品目で比較的低い関税が設 定されている。一方、韓国の農産物関税は、日 本に比べて高く、韓国のTSIは日本のTSIより も大きく算出されることになる。
以下では先ず、第2部の植物性生産品のTSI を比較し、日韓の競争力推移を検討する。次に、
第2部から、HSコード第7類、第8類を取り 上げ、これらのTSIを比較する。この3つは、
日韓FTA締結後、韓国からの輸出が伸びると指 摘された野菜・果実に相当する。
3-2.HSコード第2部のTSI
図1は1990年から2013年までの日韓のHS コード第2部(植物性生産品)のTSI推移を示 したものである。
日本は2001年を除いて-0.90と-1.00の間に 位置している 22)。日本の植物性生産品の競争力 はこの20数年間低迷している。この間の韓国の TSIは日本より高く、日本よりも高い競争力を 維持した事になる。しかし、日韓のTSI差は徐々
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
-0.200 -0.400 -0.600 -0.800 -1.000
1400 1200 1000 800 600 日本の第2部の TSI 400
韓国の第2部の TSI 1US$あたりのウォン
TSI 為替
図1 HS コード第2部の TSI とウォン・ドル相場 出所 : UN Comtrade Databaseより作成。
http://comtrade.un.org/data/
為替は世界銀行データ
“Official Exchange Rate (LCU per US$, period average)”http://data.worldbank.org/indicator/PA.NUS.FCRF
に下降し、1992年の-0.55から、10年後の2000 年には-0.69、2013年には、-0.84付近まで低下 した。韓国の通貨ウォンの対ドルレートをみる と、韓国のTSIは為替変動に幾分、影響されて いる。為替がウォン高で推移したため競争力が 落ちたのではない。為替がウォン安傾向にも拘 わらず競争力が低下している。1990年から2013 年までのトレンドとしてはウォンの対ドルレー トは低水準で推移しているが、それにも拘わら ず韓国のTSIは低下しており、輸出競争力は、
グラフが示す以上に低下したとみられる。
3-3.HSコード第7類(野菜)・第8類(果実)
のTSI
図2は1990年から2013年までの野菜(HSコー ド第7類)のTSIを示したものである。
図2に示されるように、日本は-0.90と-1.00 の間に位置している。一方、韓国は20年間継続 して日本より大きい。TSIでは、韓国の野菜の 競争力は1990年から2013年にまで一貫して日本
より高かったことになる。しかし、韓国のTSI はこの間に、1990年から1992年までのプラス値 が、2013年には-0.63まで低下している。野菜 のTSIは韓国の方が大きいが、交渉開始時の 2000年代前半に比べると、2013年時点にTSI差 はかなり縮小している。これは野菜の競争力格 差の縮小を示している。
次の図3は1990年から2013年までの果実(HS コード第8類)のTSIを示している。
図3で示した、日韓の果実(HSコード第8 類)のTSI推移をみると、2つの点で先に見た 日韓の野菜のTSIに似ている。1つは、日本の TSIは-1.00から-0.90の間に位置し、韓国の TSIよりも一貫して小さい。2つは、韓国のTSI が徐々に下降している。1990年には0.40を超え た韓国のTSIは、2013年には-0.81まで下降し た。この減少幅は野菜のTSIよりも大きく、韓 国の果実の競争力は野菜以上に低下したことに なる。他方、日本の果実のTSIは2001年に-0.98 を記録した後、僅かではあるが上昇を続け2013
1990 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
0.200 0.000 -0.200 -0.400 -0.600 -0.800 -1.000
日本の第7類の TSI
韓国の第7類の TSI TSI
出所:UN Comtrade Databaseより作成。
http://comtrade.un.org/data/
図2 HS コード第7類の TSI 推移
22) 2001年のTSIの改善理由は、穀物輸出の拡大であ る。但し、穀物輸出の大半は援助米とみられ、同年 のTSIは実態を反映しないと推察される。
年には-0.93まで改善した。TSIを見る限り、依 然として韓国のTSIが大きいが、その差は縮まっ てきている。
TSIを見る限り、野菜と果実の日韓の競争力 は、1990年前半ごろに比較すると、その差は縮 小してきている。花卉・野菜・果実の韓国の関 税が日本よりも高いことを考え合わせると、日 韓の競争力格差は、さらに縮小している可能性 もある 23)。
4.日韓農産物のRCA分析
TSIと同じく、UN Comtrade Databaseを用い て野菜・果実の分析を行った。TSI分析とは異
なり関税の影響を受けにくいRCA分析では、幾 つかの品目で日本の競争力優位が確認された。
全般的に、韓国の競争力は依然として高いが、
近年の競争力格差は縮小している。野菜から9 品目、果実から7品目抽出し、品目ごとのRCA を算出したところ、野菜2品目(サツマイモ、
山芋・里芋)、果実3品目(りんご、桃・ネクタ リン、ぶどう)について、RCA上に日本の競争 力優位が確認された。
4-1.RCA分析
RCAとは、i商品のA国における輸出シェア をA国の世界全体での輸出シェアに対して比較 0.600
0.400 0.200 0.000 -0.200 -0.400 -0.600 -0.800
-1.000 日本の第8類の TSI
韓国の第8類の TSI
199019911992199319941995199619971998199920002001200220032004200520062007200820092010201120122013
TSI
図3 HS コード第8類の TSI 推移 出所:図2に同じ
日韓両国は、共にチリとFTAを締結しており、そ の主要な輸入品の一つが「生鮮ぶどう」である。韓 チリFTA後に韓国は、生鮮ぶどうの輸入が増大し、
日本の生鮮ぶどう輸入額を上回り、2013年に輸入額 は日本の3倍近くに達した。この生鮮ぶどうについ ては、日韓ともに、対チリFTA後に、関税を引き 下げているため、関税の影響を受けずに、日韓の競 争力比較が可能になる。この点に筆者等は注目し、
日韓の生鮮ぶどうのTSIを比較したところ、日本の 競争力がより高いことが確認された。
23) 品川優によると「ぶどう、キウイ、桃の3品目」
が韓・チリFTAにより影響が強く生じると予測さ れた。キウイはチリからの輸入が08~12年の間に3.5 倍に伸びたが、「キウイの生産面積は、韓国の果樹 生産面積の1%にも満たないため、全体に与える影 響は極めて限定的である」。桃に関しては、当初は FTAを画期にチリからの輸入が拡大すると予測され たが、「植物検疫の問題で輸入禁止となるなど政府 当局の予想が外れたことで、12年においてもいまだ チリからの輸入はゼロのままである」。懸念された 3品目のうち影響を与えたのはぶどうだけであった。
品川優(2014)『FTA戦略下の韓国農業』2014年4 月、筑波書房、72頁。
したものである。このRCAはTSIに比べて、関 税の歪みを受けにくい。TSIは輸入額も構成要 素となるが、RCAの数式の構成要素は輸出額の みである。ただし、輸出補助金等は、RCA指数 の数値を高め、実際より高く競争力を示してし まう。そのためRCAも、正確な競争力測定には 限界がある。
RCAiA-wはA国のiという商品の世界市場での 顕示比較優位指数である。右辺の左上のxiA-Wは A国のiという商品の世界市場への輸出額を表 す。右上のxA-WはA国の世界市場への総輸出額、
左下のxiWは世界全体のiという商品の世界市場 への輸出額、右下のxWは全商品の世界総輸出額 をそれぞれ示す。RCAは、ある国のi商品の輸 出シェアを世界全体での同商品の輸出シェアと 比較したものである。RCA指数が1より大きけ れば、世界平均よりも競争力が高いと考えられ る。
本稿の分析対象としては花卉も想定されるが、
日本の花卉関税率は0% であり、日韓FTAによ る追加的な影響が限定的なため、ここでは花卉 を除き、野菜・果実の分析を行う。以下では野 菜・果実について、品目毎のRCAを分析し、
RCA値の大きい品目を析出する。野菜・果実の HSコードはそれぞれ第7類と第8類である。
4-2.HSコード第7類(野菜)・第8類(果実)
のRCA
以下の表3が近年の野菜のRCAである。日本 の野菜のRCAは0.01程度で低位安定している。
韓国の野菜のRCAは日本より大きいが、この15 年間に悪化している。これは韓国の野菜の競争 力の低下を示唆するものであり、日間のRCA格
RCA x / x x / x
A-wi
=
A-W iA-W Wi
W
差は縮小している。
以下の表4は両国の果実のRCAである。日韓 の果実のRCAを比べると、日本の果実のRCA は、この15年で少し上昇した。一方、韓国の果 実のRCAは依然として日本よりも大きいが、同 期間に大きく下落している。
野菜・果実の日韓のRCAを比較した結果、韓 国のRCAが大きいことが確認されたが、韓国の RCAが悪化するなか、日本のRCAは改善傾向 にあり、日韓のRCA差は縮小している。
4-3.品目別のRCA
次に、品目別のRCA比較を行う。対象品目は 魚明根の先行研究を参考にした 24)。野菜は、ニ ンニク、ジャガイモ、トマト、玉ねぎ、唐辛子
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.01 0.20 2007 0.01 0.07 2000 0.01 0.19 2008 0.02 0.08 2001 0.01 0.21 2009 0.01 0.09 2002 0.02 0.14 2010 0.01 0.07 2003 0.01 0.13 2011 0.01 0.07 2004 0.01 0.12 2012 0.01 0.09 2005 0.01 0.11 2013 0.01 0.08 2006 0.02 0.08 - - - 出所:UN Comtrade Databaseのデータを用いて筆者作成。
UN Comtrade Database http://comtrade.un.org/data/
表3 HS コード第7類(野菜)の RCA 比較表
表4 HS コード第8類(果実)の RCA 比較表
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.01 0.15 2007 0.03 0.06 2000 0.01 0.17 2008 0.03 0.06 2001 0.01 0.18 2009 0.03 0.07 2002 0.02 0.16 2010 0.03 0.06 2003 0.02 0.12 2011 0.03 0.05 2004 0.02 0.09 2012 0.02 0.05 2005 0.02 0.09 2013 0.03 0.05 2006 0.02 0.06 - - - 出所:表3と同じ。
属又はピメンタ属の果実、サツマイモ、山芋・
里芋、レタス、人参・カブの9品目を取り上げ た 25)。果実は、リンゴ、梨・マルセロ、桃・ネ クタリン、ぶどう、マンダリンオレンジ、イチ ゴ、栗の7品目を取り上げた 26)。野菜について 韓国のRCAが大きい品目は、トマト、唐辛子属 又はピメンタ属の果実の2品目であり、日本の RCAが大きい品目は、サツマイモ、山芋と里芋 の2品目であった。両国RCAに大差ない品目 は、ジャガイモ、玉ねぎ、ニンニク、レタス、
人参とカブであった。
先ず、韓国のRCAが大きい品目を示す。
表5からトマトのRCAをみると、2002年以降 に韓国のRCAが下落しているが、15年間、一貫 して日本よりも大きい。表6は唐辛子属又はピ
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.00 0.22 2007 0.00 0.02 2000 0.00 0.28 2008 0.00 0.01 2001 0.00 0.20 2009 0.00 0.01 2002 0.00 0.08 2010 0.00 0.02 2003 0.00 0.07 2011 0.00 0.03 2004 0.00 0.07 2012 0.00 0.04 2005 0.00 0.05 2013 0.00 0.04 2006 0.00 0.03 - - - 出所:表3と同じ。
表5 トマトの RCA 比較
メンタ属の果実のRCAである。この品目には、
唐辛子の他に、ピーマン、パプリカ等が含まれ、
圧倒的に韓国のRCAが大きい。韓国の第7類の 輸出額では最上位にあり、2013年は第7類の 56%を占めている。
次に日本のRCAが大きい品目を示す。
サツマイモの韓国のRCAはこの間、0.02程度 であったが、日本のRCAは改善傾向にあり2013 年には0.36まで上昇した(表7)。山芋と里芋の
24) 魚明根他『日中韓域内農業協力の可能性』、2005 年、ビスタ ピー・エス、127~130頁。
25) 魚明根の著作で取り上げられていた品目に加えて、
日韓両国での主要な野菜を追加した。
26) 梨とマルセロに関しては、2012年以降、異なるHS コード(梨:080830、マルセロ:080840)で分類さ れているが、2011年以前は一つの番号(080820)で あった。連続性を維持するために、2012年以降に関 しては、梨とマルセロを合算したものを分析に用い ている。
本来ならば、日韓両国にとって生産量の多い柿も 含めるべきだが、柿は2011年以前、「その他果実」に 分類され、柿のみの貿易量を把握することが困難で あった。
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.00 0.31 2007 0.00 0.53 2000 0.00 0.52 2008 0.00 0.53 2001 0.00 0.78 2009 0.00 0.56 2002 0.00 0.69 2010 0.00 0.49 2003 0.00 0.72 2011 0.00 0.52 2004 0.00 0.63 2012 0.00 0.68 2005 0.00 0.76 2013 0.00 0.60 2006 0.00 0.62 - - - 出所:表3と同じ。
表6 唐辛子属又はピメンタ属の果実の RCA 比較
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.05 0.02 2007 0.13 0.00 2000 0.02 0.00 2008 0.17 0.01 2001 0.06 0.00 2009 0.19 0.03 2002 0.08 0.00 2010 0.22 0.06 2003 0.05 0.00 2011 0.07 0.02 2004 0.09 0.02 2012 0.22 0.04 2005 0.16 0.02 2013 0.36 0.03 2006 0.12 0.02 - - - 出所:表3と同じ。
表7 サツマイモの RCA 比較
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.22 0.02 2007 1.17 0.01 2000 0.53 0.01 2008 1.39 0.03 2001 0.73 0.01 2009 1.48 0.01 2002 1.46 0.00 2010 1.47 0.01 2003 1.26 0.00 2011 0.79 0.00 2004 1.07 0.01 2012 1.40 0.01 2005 0.89 0.01 2013 1.26 0.01 2006 1.20 0.01 - - - 出所:表3と同じ。
表8 山芋と里芋の RCA 比較
韓国のRCAは0.02程度である。日本のRCAは 毎年の変動が大きいが、2001年以降は0.7以上を 維持している。山芋と里芋のRCAは日本が圧倒 的に大きく競争力が高いと言える(表8)。
日韓のRCAに大差のない5品目(ジャガイ モ、玉ねぎ、ニンニク、レタス、人参とカブ)
は、両国とも輸出額が小さく、日韓両国ともに 15年間にRCAが0.1を上まわることがなかった。
RCAをみる限りでは、これら5品目は日韓両国 とも競争力を持たないと言える。
果実7品目について、韓国のRCAが大きい品 目は、梨・マルセロ、イチゴ、マンダリンオレ ンジ、栗の4品目、日本のRCAが大きい品目は リンゴ、桃・ネクタリン、ぶどうの3品目であっ た。ただ、ぶどうの日韓のRCA差は小さかった。
韓国のRCAが大きい果実4品目(梨・マルセ ロ、イチゴ、マンダリンオレンジ、栗)は次の 通り。
日本の梨・マルセロのRCAは、韓国に比べる と小さく低下傾向にある(表9)。韓国のRCA は年による変動も見られるが、2000年以降は0.6 以上を維持している。日本のイチゴのRCAは05 年から上昇傾向にあるが、依然として韓国の RCAよりかなり低い(表10)。栗のRCAに関し ては韓国側の値が極めて大きいが、トレンドと しては、日本のRCAが上昇傾向、韓国のRCA は下降傾向にある(表11)。競争力格差は縮小し つつあると言える。マンダリンオレンジは2006 年までは、韓国のRCAが日本よりも高かった が、2007年以降は日本のRCAと同程度まで低下 している(表12)。そのため、2006年までは韓国 の競争力が高く、2007年以降に競争力格差は縮 小していると言える。
日本のRCAが大きい3品目(リンゴ、桃・ネ クタリン、ぶどう)は次の通り。
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.00 0.10 2007 0.01 0.10 2000 0.00 0.30 2008 0.02 0.18 2001 0.00 0.38 2009 0.02 0.34 2002 0.00 0.14 2010 0.02 0.43 2003 0.00 0.06 2011 0.02 0.28 2004 0.00 0.04 2012 0.02 0.30 2005 0.01 0.04 2013 0.03 0.38 2006 0.01 0.08 - - - 出所:表3と同じ。
表10 イチゴの RCA 比較
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.18 0.45 2007 0.08 0.92 2000 0.12 0.69 2008 0.05 0.73 2001 0.10 0.82 2009 0.07 0.83 2002 0.09 1.30 2010 0.03 0.75 2003 0.07 0.96 2011 0.03 0.59 2004 0.07 0.90 2012 0.05 0.61 2005 0.08 1.26 2013 0.05 0.60 2006 0.05 0.80 - - - 出所:表3と同じ。
表9 梨・マルセロの RCA 比較
表12 マンダリンオレンジの RCA 比較
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.04 0.18 2007 0.03 0.04 2000 0.04 0.12 2008 0.03 0.02 2001 0.05 0.16 2009 0.02 0.03 2002 0.04 0.14 2010 0.02 0.01 2003 0.04 0.08 2011 0.02 0.02 2004 0.03 0.10 2012 0.02 0.04 2005 0.03 0.06 2013 0.03 0.04 2006 0.02 0.06 - - - 出所:表3と同じ。
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.00 14.03 2007 0.17 4.25 2000 0.02 13.52 2008 0.37 3.68 2001 0.00 14.30 2009 0.44 3.93 2002 0.02 10.93 2010 0.49 3.43 2003 0.16 10.21 2011 0.17 3.18 2004 0.11 6.41 2012 0.29 3.27 2005 0.08 6.66 2013 0.23 2.50 2006 0.10 5.43 - - - 出所:表3と同じ。
表11 栗の RCA 比較
韓国のリンゴのRCAは、2002年と2009年を除 いて0.1以下で推移しているが、日本のRCAは 2002年以降0.1を下回ることはなく、2005年以降 は0.2前後である。2003年以降の日本のRCAは 韓国を常に上回っている(表13)。
2001年から2002年にかけての日本のRCA上昇 の背景には、2002年1月の台湾のWTO加盟があ る。農林水産省のレポートによれば、台湾はWTO 加盟後、「リンゴ、もも、ぶどう等の輸入が自由 化(輸入割当の撤廃、関税引き下げ等)され、な し、かき等についても輸入割当から関税割当へ と移行し、その割当量についても徐々に緩和」さ れてきた 27)。リンゴの輸入数量割当に関しては、
1981年から輸入割当制が敷かれ、1994年までは年 間400トン、1995年に600トン、1996年から2001年 までは2000トンであった 28)。関税はWTO加盟に よって2002年に50%から20%に削減された 29)。そ の結果、「それまで台湾のリンゴ市場を席巻して
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.03 0.02 2007 0.23 0.02 2000 0.03 0.03 2008 0.22 0.05 2001 0.03 0.05 2009 0.22 0.12 2002 0.11 0.20 2010 0.22 0.09 2003 0.17 0.08 2011 0.25 0.04 2004 0.11 0.05 2012 0.13 0.02 2005 0.21 0.07 2013 0.23 0.03 2006 0.20 0.02 - - - 出所:表3と同じ。
表13 リンゴの RCA 比較 いた米国産リンゴのシェアを日本産が徐々に 奪って輸出を増やしてきた」 30)。
台湾の日本産リンゴ輸入量は、2001年の1,696 トンから、2002年の8,376トン、2003年の15,626 トンへと急増した。台湾のリンゴ輸入に占める 日本シェアも1%(2001年)から14%(2003年)
まで拡大した 31)。2013年の日本から台湾へのリ ンゴの輸出量は16,795トンであった 32)。日本産 リンゴの台湾向け輸出は、台湾の2002年WTO 加盟後、劇的に増加した。台湾と所得水準が同 程度の韓国は、日本産リンゴの輸入を原則禁止 している。加えて生鮮リンゴに課すMFN関税 も45%と高い。台湾での輸入割当の撤廃と関税 引き下げによって、日本からのリンゴの輸出が 大きく拡大したという事例は、日本産リンゴの 対韓輸出可能性を示唆するものである。
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.00 0.00 2007 0.04 0.00 2000 0.00 0.00 2008 0.04 0.00 2001 0.00 0.01 2009 0.06 0.00 2002 0.04 0.02 2010 0.05 0.00 2003 0.02 0.00 2011 0.03 0.00 2004 0.03 0.01 2012 0.05 0.00 2005 0.05 0.00 2013 0.06 0.00 2006 0.04 0.00 - - - 出所:表3と同じ。
表14 桃・ネクタリンの RCA 比較
30) 前掲、農林水産省「平成23年度国別マーケティン グ 東アジア(台湾・香港、韓国)」、23頁。WTO加 盟前の台湾の輸入数量割当は2,000トンであった。
31) 横田洋之「青森リンゴ輸出の現状」21世紀政策研 究所、2007年、17頁。
http://www.21ppi.org/pdf/thesis/070116.pdf 日本産リンゴは台湾では高級リンゴとの評価を受
けており、輸入額シェアは2001年4%、2003年24%
と伸びており、日本産リンゴの存在感が大きい。
32) 財務省『単純貿易統計』2013年12月
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/OtherList.do?
bid=000001008800&cycode=1 27) 農林水産省「平成23年度国別マーケティング 東ア
ジア(台湾・香港、韓国)」、10頁.
http://www.maff.go.jp/j/shokusan/export/e_enkatu/
pdf/h23_easia_taiwan1.pdf
28) 深澤守「平成24年度輸出リンゴの総括と今後の戦 略」青森県リンゴ輸出協会
http://ca-ringo.jp/material/2013_H24appleexstrategy _j.pdf
29) 深澤守「青森リンゴの輸出の現状と展望」青森県 農林水産部総合販売戦略課
http://www.umai-aomori.jp/know/marketing/apple_
export/1.phtml
ここで、表14を見る限り、桃・ネクタリンは 1999年から2001年までは両国ともRCAは低くゼ ロに近かった。ただ、2002年以降日本のRCAが 改善され、韓国よりも大きいRCAを維持してい る。2011年に大きく落ち込んだ要因は、日本の 桃生産の7割弱を占める山梨(33.1%) 福島
(20.3%)長野(13.7%)の3県が福島の原発問 題で、輸入禁止・輸入規制を受け、輸出が低下 したことが主因である 33)。ただ、2013年には、
過去最高の輸出額を記録し、RCAも0.06まで改 善した。RCAでみる限り、桃・ネクタリンは日 本の競争力が高いと言える。
日韓のぶどうのRCAを見る限りにおいては、
両国ともに、ぶどうの競争力は低い。ただ日本 のRCAは2009年以降、原発問題で日本の輸出が 減少した2011年を除いて、0.02である。それに 対し、韓国は2005年から一貫して0.01と日本よ りも低い(表15)。この RCAの結果からみる限 り日本の競争力が僅かに高いと言える。
以上の分析から、両国ともに野菜より果実に おいてRCAが大きい傾向にあることが判明し た。その要因は、「果実は野菜と比較すると特に 品種・大きさ・品質を優位点として製品差別化 が可能」と佐藤が述べているように、果実が価
年 日本 韓国 年 日本 韓国
1999 0.00 0.00 2007 0.01 0.01 2000 0.00 0.00 2008 0.01 0.01 2001 0.00 0.00 2009 0.02 0.01 2002 0.00 0.00 2010 0.02 0.01 2003 0.00 0.00 2011 0.01 0.01 2004 0.00 0.00 2012 0.02 0.01 2005 0.01 0.01 2013 0.02 0.01 2006 0.01 0.01 - - - 出所:表3と同じ。
表15 ぶどうの RCA 比較
格競争に陥りにくいことであろう 34)。両国を比 較すると、野菜、果実ともに、韓国の競争力が 高いが、2000年代初めに比べてその競争力は低 下している。品目別には、サツマイモ、長芋・
里芋、リンゴ、ぶどう、桃・ネクタリンでは、
日本のRCAが韓国を上回っており、RCAで見 る限り、日本の競争力が高いと言える。
おわりに
本稿では、これまでの研究に続き、日韓の野 菜・果実について農産物の競争力を分析した。
野菜・果実のTSI分析の結果、野菜・果実の競 争力は依然として韓国が日本よりも高いが、日 韓のTSI差は近年、縮小していることが判明し た。ただ、TSI分析では、日韓の関税差により 韓国のTSIが実際よりも高く算出される恐れが あるため、次に、関税による歪みの影響を受け にくいRCA分析を行った。
野菜・果実のRCA分析を行ったところ、全般 的に、韓国の競争力が高いことが示されたが、
TSIと同じく近年の競争力格差の縮小が顕著で あった。また、野菜・果実の品目別のRCAを算 出したところ、複数の品目で日本の競争力がよ り高いことが確認された。
以上の分析により、日韓FTAによる相互の農 産物市場開放を想定する場合、韓国だけでなく、
日本の輸出も伸びる可能性があることが判明し た。日韓農産物の競争力格差は縮小してきてお り、日本の農産物の競争力は相対的に高まりつ つある。このことから今後、日韓FTA交渉が再 開される場合において、農業問題は、交渉進展
33) 「果物ナビ 桃」
http://www.kudamononavi.com/zukan/peach.htm
34) 佐藤敦信(2011)「日本産農産物の対中国・台湾輸 出における輸出主体の制度的対応」国際中国学研究 センター(ICCS)『ICCS 現代中国学ジャーナル』、
第4巻、第1号、2011年11月、30頁。
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を阻む要因にはなりにくいと考えられる。
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本研究はJSPS科研費 25380306の助成を受けたものです。