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過疎化・高齢化の著しい集落の人口動態及び生活実態に関する研究

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Academic year: 2021

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1 はじめに

近年,中山間地や離島を中心に,全国各地で過疎化・

高齢化が急速に進行している.こうした地域では,水源管 理や相互扶助,農耕地・山林・道路の維持管理など集落 機能の維持や自治会・伝統文化活動などの低下を招いて いる.特に,65 歳以上の高齢者が半数以上を占める「限 界集落」は集落機能の低下が著しく,近い将来,集落自 体の消滅が懸念される.そこで,過疎高齢化を前提とした,

集落維持の仕組みづくりや集落の再編を含む幅広い施 策の検討が求められる.こうした背景のもと,鹿児島県で は平成20年3月に県内全市町村に対し集落の状況に関 するアンケート調査を行った.ここでは鹿児島県を 7ブロ ックに分けてまとめているので,広域レベルでの実態は 把握されている.だが,同県内では集落といった狭域レ ベルの実態は把握されていないのが現状である.

そこで本研究は,鹿児島県で最も高齢化率が高く,人 口減少が著しく,限界集落を多く抱えている自治体を事例 として,人口統計データと住民への生活状況アンケート調 査をもとに,GIS を利用して集落の実態を把握するととも に問題点や課題を明らかにすることを目的とした.

山﨑:〒891-2393 鹿児島県鹿屋市白水町1番地 鹿屋体育大学 スポーツライフスタイル・マネジメント系 E-mail:[email protected]

2 研究方法 2.1 対象地域

日本本土最南端に位置する人口約9000人の鹿児島県 M町を対象自治体とした.同町は2005年にN町(現N地 区)と S町(現S地区)の2町が合併して M 町となった.

2008 年の高齢化率(65 歳以上高齢者の割合)は42.1%と 鹿児島県で最も高い.人口は過去14年間で22%減少して おり,近年,そのペースが加速している.特にS地区は人 口減少が甚だしく,高齢化率は51%で,いわゆる「限界地 区」となっている.対象とした集落は,M町に正式登録さ れている自治会を持つもの109集落とした.なお,連絡員 のみを置く住宅団地や介護・福祉施設及び数戸単位の零 細集落(15 集落)は対象外とした.また,集落を包括する 小学校区である12の校区も分析で用いた.

2.2 利用データの概要

利用データは,M町の人口統計データと各集落に対 するアンケート調査データである.人口統計データは,

2008年4月30日における集落単位のデータ(男女別1 歳階級人口,世帯数,高齢者夫婦世帯数,高齢者単身世 帯数)及び2000年と2005年の国勢調査データ(M町全体 の男女別・1 歳階級人口),生残率,出生率,出生比,人 口移動率である.

アンケート調査は2008年3月にM町職員が,対象とな る集落のすべてに出向いて,自治会役員に対し面接によ 過疎化・高齢化の著しい集落の人口動態及び生活実態に関する研究

山﨑利夫,鶴成悦久,村上幸司,次石健太

A Study on the Demographic Trends and Living Condition of a Village Suffering from Depopulation and Aging Toshio YAMAZAKI, Yoshihisa TSURUNARI, Kouji MURAKAMI, Kenta TSUGIISHI

Abstract: M-cho, a town located in the southernmost of Mainland Japan, is outstanding in its high population aging rate. More than fifty percent of its villages are called “Genkai Shuraku (Critical Village)”that means more than half of the residents are over 65-year-old. This paper analyzes the demographics of the town as well as a survey by questionnaire. The findings of the analysis are summarized as follows:

1. The less the population size is, the higher the aging rate.

2. The villages are divided into four classes as a result of cluster analysis using the demographics of the town.

3. The population will decrease at a faster rate and accordingly, approximately a third of the villages are expected to disappear by 2030

Keywords:高齢化(aging),過疎化(depopulation),集落(village),人口推計(population estimation)

(2)

る聞き取りを行った.全集落から有効回答が得られた.ア ンケートは,生活(14 項目),産業(6 項目),自然環境・防 災(5項目),地域文化(4項目),景観(4項目),定住促進(4 項目),日常生活の利便性 (6 項目),自治会運営(9 項目) の52項目からなる.

2.3 基盤地図の作成

データ分析の結果をGISで主題図として表現するのに 必要となる基盤地図を次の手順で作成した.

①ゼンリンの電子住宅地図「ZMap-TOWNⅡ」(2007年分) を,ESRI ジャパンのホームページからダウンロードした

「Zmap-TOWNⅡ対応ツール」を用いて,ジオデータベー スに変換した.②ESRIジャパンの「測地成果2000対応ツ ール」と国土地理院の「TKY2JGD」を用いて,①で作成し た地図を日本測地系から世界測地系に変換した.③②で 作成した地図は集落と校区のデータを持たないので,校 区と集落のポリゴンレイヤを作成した.

2.4 分析方法

まず,2008年の人口統計データより,集落単位の人口,

高齢化率,高齢者夫婦世帯割合等を求め,さらにクラスタ ー分析で集落をクラス分けした.人口統計データの 9 変 数(人口,平均年齢,60 歳以下人口の割合,55 歳以下人 口の割合,18歳以下人口の割合,15歳以下人口の割合,

12 歳以下人口の割合,高齢者夫婦世帯割合,高齢者単 身世帯割合),それに役場か支所から集落中心までの道 路距離を合わせた10変数から4つの主成分を抽出した.

さらに,高齢化率を説明するため3つの主成分を選び,こ れらの主成分を使って 109 の集落についてクラスター分 析を行い,集落をいくつかのクラスに分類した.

次に,2000年と2005年の国勢調査データと2008年の 人口統計データ(住民基本台帳より)を使用して,2010 年 から2030年まで5年間隔で町全体,校区及び集落単位 の将来人口を推計した.人口推計ではコーホート要因法 を用いた.この方法では,①男女・年齢別基準人口,②生 命表による男女・年齢(5 歳階級)別生残率,③15~49 歳 までの女子の年齢別(5 歳階級)出生率,④出生性比(近 年の出生児の男女比で女児100に対し男児105.6),⑤男 女・年齢別人口の2005年と2000年からの社会動態による 純移動率,⑥2008年4月30日の人口統計データを用い た.推計における基準人口は2000年と2005年の国勢調

査結果を用いた.その理由は.将来人口の推計で利用す る区間生残率及び区間出生率は,国勢調査の結果を用 いて算出されており,基準区間が国勢調査の 5 年区間と なっているからである.推計では,男女を5歳区分ごと(85 歳以上は一括り)の集団(出生コーホート)としてとらえ,各 コーホートの5年ごとの人口変化を推計した.各コーホー トの人口変化を自然動態(出生,死亡)と社会動態(転入,

転出)の2要因に分けて,それぞれの将来の変化率(5年 区間ごと)を設定して人口推計を行った.5 歳階級の推計 人口に2008年4月30日の5歳階級の人口に対する各 集落の5歳階級人口の比率及び5歳階級の構成比率を 乗じて,集落ごとの推計人口(5歳階級および合計)を算出 した.次に推計人口をもとに集落及び校区単位で分析を 行った.人口の年齢構造を年少人口(14 歳以下),生産年 齢人口(15~64歳),老年人口(65歳以上)に分け,これら に後期老年人口(75歳以上)を加えた.

最後に,アンケート調査の全 52 項目中,生活,産業,

自然環境・防災,地域文化からなる主な33項目のデータ を選び,否定的な回答の割合を地図上に表現し,各集落 の課題の多少を比較・検討した.

3 結果及び考察

3.1 2008年の人口統計データ

図1は集落単位の高齢化率を示したものである.高齢化

率50%以上の限界集落は36%と全体の約3分の1存在

する.特にM町南側のS地区では半数近い48%が限界 集落である.また,人口規模の小さい集落ほど高齢化率 の高い傾向がみられる.

図1 高齢化率

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次に,ともに65歳以上の高齢者夫婦世帯の割合を図2 に示した.高齢化率と同様,S地区と人口規模の小さい集 落で高いことがわかる.

図2 高齢者夫婦世帯割合

クラスター分析を行った結果,集落は4クラスに分類さ れた.クラス1を「平均年齢低く人口が多い」,クラス2を

「平均年齢低く人口が少ない」集落,クラス3を「平均年齢 高く人口が少ない」,クラス4を「平均年齢高く人口も少な く老人世帯が多い」と定義した.

各集落がどのクラスに当たるか図3に表した.クラス1は 役場や支所周辺の比較的人口が密集している地域もしく は海岸沿いにある.このタイプはN地区に多くみられる.

クラス2は内陸部に多い.クラス3は最も多い42集落が該 当し,町全体に散らばっている.クラス4は役場や支所か ら比較的離れており,S地区の太平洋沿岸に多くみられる.

このクラスに該当する17集落は高齢化が著しく,高齢者 世帯の割合が大きく,人口規模が小さい.

図3 クラスター分析によるクラス分け

3.2 将来の推計人口データ

将来人口の推計により,男女別・5歳階級のM町の推 計人口(2010,2015,2020,2025,2030年)が得られた.これ らの推計人口に2005年の人口データを合わせた5年ごと の推計人口を図4で表した.総人口と年少人口および生 産年齢人口で減少傾向がみられ,老年人口も緩やかなが ら減少している.老年人口の生産年齢人口に対する比率 を示す老年人口指数は増加傾向にある.この指数は2020 年以降,1.0を上回っている.つまり,2020年からは1人の 働き手が1人を超える高齢者を支えることになる.また,限 界集落は25年間で36ヶ所から73ヶ所へと2倍以上に増 えている.2030年では集落の約3分の2が限界集落にな ると予測される(図5参照).

次に,人口30人未満の集落は,2005年の10ヶ所から,

2030年では37ヶ所に増え,集落の3分の1が零細規模 に陥ると予測される(図6参照).このように高齢化率の上 昇に人口減少が合わさって,近い将来,消滅に至る集落 が多数出現することが予測される.

図4 M町の将来推計人口 ※2005年は実際

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図5 限界集落の出現状況(2030年推計)

図6 集落人口(2030年推計)

3.3 生活実態アンケート調査

アンケート調査中,生活,産業,自然環境・防災,地域 文化から成る33項目で「ハイ」と否定的な回答をした割合 をみた.「ハイ」の割合が25~50%の集落が全体の37%を 占め,最も多かった.また,4割近い集落では「ハイ」の割 合が半分を超え,課題を多く抱えている.これを地区でみ ると,S地区においては,集落の55%で「ハイ」の割合が 50%を超え,N地区よりも課題を多く抱える集落が目立つ.

S地区では「ハイ」の割合が75%以上の集落が2割近くもあ る(図7参照).

図7 集落の抱える課題(否定的回答の割合)

4 まとめ

本研究では,過疎化・高齢化の著しい自治体の実態を,

人口統計データの分析,将来人口の推計,およびアンケ ート調査から明らかにすることを試みた.その結果,以下 のことがわかった.

①同じ町内でも2地区間で違いが多くみられる.

②集落人口は北のN地区や錦江湾沿岸で多く,S地区の 太平洋沿岸では少ない.

③人口が少ない集落ほど高齢化が急速に進行している.

④人口統計データと道路距離を用いてクラスター分析を 行った結果,集落が4つのクラスに分類された.

⑤S地区の太平洋沿岸で課題を多く抱える集落が多い.

⑥今後,人口の減少が急速に進み,2030年には集落の3 分の1が消滅に危機に陥ることが予想される.

参考文献

山口喜一ら (1990)「人口推計入門」,古今書院

高阪宏行・関根智子(2005)「GISを利用した社会・経済の 空間分析,古今書院

鹿児島県地域政策課(2008)「鹿児島県集落状況調査結果 報告書」,鹿児島県企画部

図 5  限界集落の出現状況(2030 年推計)  図 6  集落人口(2030 年推計)    3.3  生活実態アンケート調査 アンケート調査中,生活,産業,自然環境・防災,地域 文化から成る 33 項目で「ハイ」と否定的な回答をした割合 をみた.「ハイ」の割合が 25~50%の集落が全体の 37%を 占め,最も多かった.また,4割近い集落では「ハイ」の割 合が半分を超え,課題を多く抱えている.これを地区でみ ると,S地区においては,集落の 55%で「ハイ」の割合が 50%を超え,N地区よりも課題を多く

参照

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