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東アジアに渡来・起源した 作物資源の多様性を探る

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Academic year: 2021

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 地球規模の環境変動や不安定化が農業に重大な影響を 及ぼしています。このような状況において、世界の人口 を支える食糧の確保や高品質な農産物の安定生産の鍵を 握るのが品種改良であり、そのための素材(交配親)と して作物遺伝資源(改良品種、在来品種、野生種など)

が利用されています。作物遺伝資源は、計り知れないほ ど多様な有用機能をもつ未利用資源の宝庫ですが、農業 の近代化や開発により急速に失われており、その保全が 緊急の課題となっています。

 研究グループは、コムギ、オオムギ、ダイズおよびメ ロンを研究する5大学(岡山、鳥取、山形、弘前、北海 道)計10名の研究者で構成されています。私たちは、

地理的・生態的に変化に富む東アジアを中心に在来品種 や野生種が残っている地域を訪問し、現地研究者と一緒 にフィールド調査をして作物遺伝資源を収集していま す。このようにして収集した材料を栽培して特性評価や 種子増殖を行い、さらに分子遺伝学的手法を用いて各作 物の起源や進化、多様性について研究しています。一例

としてメロン班の研究成果を紹介します。

 メロン班は、中国雲南省や東南アジア諸国で世界的に も貴重な遺伝資源を収集することができました(図1)。

これらの遺伝資源と世界の多様なメロン在来品種(図2)

を用いて葉緑体ゲノムを解析し、栽培メロンの母系が少 なくとも東アジアのメロン(Ia型)、欧米のメロン(Ib型)、

アフリカ中南部のメロン(Ic型)の3つであることを世 界で初めて明らかにしました(図3)。さらに、東アジ アに固有で日本では弥生時代から利用されてきたマクワ ウリやシロウリ(小型種子)は、欧米のデザートメロン

(大型種子)とは独立して成立(起源)したことが判明 しました。

 私たちは基礎研究だけでなく、耐病性や開花時期など の農業生産に直結する重要形質についての応用研究も 行っています。遺伝資源の一部は、文部科学省ナショナ ルバイオリソース事業ならびに農業・食品産業技術総合 研究機構・遺伝資源センターに登録されるとともに希望 者に配布されており、研究成果が減農薬や省力生産を可 能にする新品種の育成に貢献することが期待されていま す。ただし、遺伝資源の持ち出しを許可しない国もある ので、そのような国とはどのような共同研究が可能かを 現地研究者と議論しながら、引き続き作物遺伝資源に関 する基礎および応用研究を進めていく予定です。

研究の背景

研究の成果

今後の展望

東アジアに渡来・起源した 作物資源の多様性を探る

岡山大学 大学院環境生命科学研究科 教授

加藤 鎌司

〔お問い合わせ先〕 TEL:086-251-8323(研究室) E-MAIL:kenkato@okayama-u.ac.jp

関連する科研費

2011-2013年度 基盤研究(A)「東アジアに渡 来・起源した作物資源の遺伝的評価と開発的研究」

2014-2016年度 基盤研究(A)「東アジアに渡来・

起源した作物資源の遺伝的評価と開発的研究(第2次)」

図1  ミャンマーの在来メロン(左、C. melo L.)と野生種 C. hystrix

(右)。C. hystrixはキュウリと交配できるので、品種改良に利用

できる。

図2  世界の多様なメロン(すべて C. melo L.)。中央・西アジアおよ び欧米のメロンは主にデザートメロンで、東・南アジアのメロン は野菜用が多い。

図3  栽培メロンで見つかった3つの母系の分布域。Ia型;東・東南ア ジア、アフリカ南部に多い、Ib型;中央・西アジア、欧米、アフ リカ北部に多い、Ic型;アフリカ中・南部に分布。

生物系  Biological Sciences

科研費NEWS 2016年度 VOL.3 16

最近の研究成果トピックス

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参照

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