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大規模電力系統のロバスト安定化に関する研究

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

大規模電力系統のロバスト安定化に関する研究

吉村, 健司

九州大学システム情報電気電子システム工学

https://doi.org/10.11501/3180438

(2)

第4章 発電機励磁系とパワエレ機器の併用による安定化対策手法の開発

4.1 開発手法の背景と概要

2章および3章においてダンピング力に主眼を置き, 複数の系統運用条件の断面を 同時に考慮、したロバスト性の高い制御系の定数最適設計手法と, ローカル動揺および 広域動揺のロバスト安定化手法を提案した。 これらPSSに着目した制御系設計手法は 実用化レベルにあり, 電力会社ヘS法として導入されている。 しかし, 21世紀中葉ま でに送電電力の重潮流化は進むため, 発電機内部相差角の拡大や, 中間母線電圧の維 持能力低下により過渡安定度 (同期化力) の悪化は避けられない。 過渡安定度を向上 させるためには3 発電機界磁電圧だけでなく, 系統内の母線電圧の低下を防ぐ、ことも 重要である。 系統電圧の低下に対しては, 電圧無効電力制御(VQC)山やSVC36)による電 圧制御が基本である。 高速制御が可能なパワエレ機器を用いたSVCは, 近年実系統へ の導入が進んでおり発電機と並んで系統安定化のもう一つの選択肢となり得3 ダンピ ング向上や電力輸送力向上への利用も必要となる。

本章では, 発電機とSVCの両方に着目し, 以下の2つの検討を行った。

(l)SVC制御系定数最適化による定態安定度向上効果

基本となるSVC電圧制御系に系統のダンピング向上を目的とした制御系を付加しそ の定数を最適化する手法を開発し, 長距離串形系統を用いてその効果を検証するとと もに導入指針を明らかにした。

(2 )限界送電電力の増大を図るための制御系設計手法の開発

ダンピング力だけでなく同期化力も固有値で定量的に評価しながら, 両者をバラン ス良く向上させる論理を開発した。 AVRとPSSの定数を同時に最適化することにより電 圧維持能力を積極的に定数最適化ヘ反映させた。 この際3 安定度評価関数を改良し過 渡安定度を定量的に評価した。 また3 重潮流条件において, 母線電圧の低下による安 定度の悪化を防ぐために, 主要母線電圧を遠端情報として発電機励磁系に入力する手 法も開発した。 発電機励磁制御系だけでなくSVCとの併設効果についても検証した。

(3)

4.2 SVCダンピング制御系定数最適化手法の開発57,川9,60)

近年のパワーエレクトロニクスの長足の進歩により, 大容量SVCの電力系統への導 入が進んでいる37,38)0 SVC電圧制御系による安定度向上効果と制御系設計の限界につい て検討されている(..)が, これにダンピング制御回路を付加することでより効果的な安 定化が図れる。SVC制御系定数設計については, 固有値・ 固有値感度に基づく設計法 が提案されている山0)ものの3 大規模電力系統を対象とした最適設計手法は見あたら ない。

4.2.1 SVC制御系モデルと定式化問

(l)SVC制御系モデル

図4.1 に系統安定化用大容量SVCとして広く採用されているTCR(Thyristor Controlled Reactor)形SVCの構成図 を, 図4.2にそ の電圧 ・無効電力特性を示す。

TCRはサイリスタの点弧角制御 によってリアクトル電流を連続的に変化させるもの で, SWC(Switched Capacitor)は機械的に並解列制御されるコンデンサである。ただ し3 本検討 のシミュレーションの際は, コンデンサのスイッチ制御 機構はロックとし コンデンサを不変として取り扱った。

図4.3にSVCのリアクトル制御 部のモデルを示す。この制御回路は電圧制御回路と電 力 動揺の安定化を目的として送電線の有効電力潮流を付加信号として入力とするダン ピング制御回路から成る。電圧制御回路における電圧検出遅れ, サイリスタ点弧角遅 れ時定数 ( T Ml' T M3 )はそれぞれハードウェアによって決まる値であるが, 本論文で はTM1=100ms, TM3=220msとした。また, 電圧レギユレータ部の時間遅れTM2は, 通 常安定度上問題となる動揺周期は数秒であることを考慮し, T M2=550皿sに設定した。

なお3 電圧制御回路ゲインGM1はスロープリアクタンスの逆数として定義される (ス ロープリアクタンス1%の場合, GM1=100となる) 。

(4)

svc用 I

変圧器 / I

制御回路

1 f T T

等価アドミタンス

(TCR)

コンデンサ ( SWC)

図4.1 SVCの構成

ノsvc :

.

J制御領埠

X.!:ス?ープリアクタンス

V

無効電力

電圧母線

容量性 誘導性

図4.2 SVCの電圧 ・無効電力特性

ダンピング制御回路

TA1S 1+九2_$_ _ GA 1 + TA 1 S 1 + TA3 S 1 +九.s

電圧倒衝i回路

図4.3 SVCリアクトル制御部モデル

タンスリアク

(5)

(2)SVCの定式化と大規模系統微分方程式との結合

図4.3において, SVC出力のリアクトル変化分ムXoutは次式で、与えられる。

M

oul =印(s){l1V; + DC(s)M:,} .• •. •• .• •. •.• •• •.• • . ・ ・ ・… (4.1)

ただし, VR( s) :電圧制御回路, V i 電圧検出値, DC(s) :ダンピング制御回路,

Pa :線潮流

線路潮流変化分ムPaは線路の両端電圧Vm' V nと線路インピーダンスを用いて表せる ので(.), VR( s)とDC(s)より得られる内部状態変数ベクトルXs' 電圧検出値V i' 母線 電圧Vm' V nの微小変化分を用いて以下のように表される。

Ms =

AsMs + Bsl1Us . …・……・・ ……・…・ …・・・……・………・……… ……一一一一.(4均 すこ?とし3

凶s

= (l1Vi,l1Vmム.VJT

また, SVC等価リアクトルYSを流れる電流1 sは, V sを用いて次式で表される。

fs=ヒ叱=(Yso

+ X OUI)\う (4.3)

ただし, y sO : SVC初期アドミタンス

これを微小変化分についての式に書き直すと次式となる。

Als=叱M

oul +

YsO

l1 Vs

= VsCs M s

+

Ysol1

V

s

・ …一………一 ……… ……… ………(4.4) ただし,

Cs zh

,l,o, ,or lの位置はXsの中のXoutに対応する位置

ここで, (4.4)式のVsCsを改めてCsとし, (4.2)式のムUsと(4.4) 式のムVsをま とめて新たにムUsと表すと, 最終的にムUsを入力としム1 sを出力とするSVCの線形 状態微分方程式は次式となる。

(μS戸=

As山M叫Sけ+鳥

A叫Iんs =刊Vsl1μXsけ+D叫'sl1叫

ただし,l1U s = (l1 Vp l1只,l1 V m , l1 Vn

r

.一…….一….一.一…….一…….一….一. ..一.(4.5)

(6)

以下, 簡単のためにムは省略する。 一方, N機の発電機から成る系統の微分方程式 は, (2.13),(2.14),(2.15)式で表されている。

(~zM+B出

ie = Ccxe

+ Dev

・ … ・ ・ ・(2.15) (再掲)

ここで, (2.14),(2.15)式から負荷電圧, 電流(VL,1L)を消去すると, 発電機端子 電圧, svc設置母線電圧の電圧, 電流に関する次式を得る。

Ies =九'sVes ・……・・……… . . . ... . . ..... . . ... . . ... . . ....

.6) ただし,

九s=

一九L

(

Yu_ーJI,)

1

c

)

les=

(

Ic'/s

Y

, Ves=

(

Ve,η

Y

ここで, (4.5),(2.13),(4.6)をまとめると次式となる。

{�ーんM

1 es = VesX es

+

Des Ves X es =

(

Xe,Xs r

%s

�(; �). 8GS-(と�l

したがって, (4.6),(4.7)式から1GS' V GSを消去すると, 最終的に発電機とsvcを含 んだ系統の線形状態微分方程式は次式で得られる。

Xes = AX es ………・…H・H・..……...・H・-………(4.8)

ただし,

A = Acs + Bes

(

Yes -Dω)ーlCCS

4.2.2 SVCダンピング制御系定数最適化による安定度向上効果川8)

( 1 )解析対象系統モデルと安定化対象動揺

(7)

svcダンピング制御回路の定数最適化による安定度向上効果を検討した。 使用した 系統モデルはこれまでと同じ長距離串形系統モデルである (図2.8と同じ) 。 本節で はsvcによる安定度向上効果をみることが主眼であるので, 最適化対象系統は重潮流 条件のみを考慮するだけで十分である。

(2)ダンピング制御系定数最適化による安定度向上効果

svcの設置個所は, 主たる安定化対象である広域第1動揺の動揺の特徴による設置 地点の効果の比較をするために, 図2.8の基幹送電線の母線A-Pのうち次の3ケースの うちいずれかーケ所とした。

svc設置個所:西端部(母線A), 中央部(母線H), 東端部(母線P)

最適化対象としたダンピング制御回路の定数は, 位相補償回路(T A2' T A3)およびゲイ ン(G A)とした。 表4.1に各設置ケースにおけるSVC定数最適化結果 (固有値) を示 す。

表4.1 最適設計svcダンピング制御による安定化効果

svc設置個所によるダンピング係数 (単位:1/sec)

西端部 中央部 東端部 基準ケース

(SVC設置無し) +0.07

広域第1動熔の svc電圧制御のみ -0.04 +0.10 +0.08 ダンピング係数 (ダンピング制御回路無し)

ダンピング制御回路最適化 ー0.19 +0.10 一0.02 (提案手法)

TA2 0.97 0.14 3.32

最適化後の定数 TA3 0.65 1.45 0.07

GA 0.07 0.002 0.02

結果をまとめると以下のとおり。

-西端部設置:電圧制御のみでも安定化はできるが, ダンピング制御回路を付加し定 数を最適化することにより一層安定化できた。

-中央部設置:電圧制御, ダンピング制御回路最適化いずれの場合も安定化できな かった。

(8)

-東端部設置:電圧制御のみでも安定化はできるが, ダンピング制御回路を付加し定 数を最適化することにより安定化できた。 ただし, 西端部設置よりも 若干安定度向上効果は劣る。

Y法を用いたシミュレーションを実施した。 図 上記固有値結果を検証するために,

4.4に基準ケースと西端部設置ケースを代表させて示す(発電機回転数偏差, SVC設置 シミュレーションからも安定度向上効果が検証された。 た 母線電圧, SVC出力)。

だ, 本ケースは固有値結果の検証のため, SVC容量を1000MVAと非常に大きくしてい る。 実際の適用に際しては4.2.3で述べるような注意が必要である。

ミ26

』 も-;ミ �

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10.l∞2∞‘4.1切6.切 !∞• Id.txl‘f2.必14∞、瓜00 18ω2ò.∞

T/ME(SEC)

(0.)基準ケーλ( SVC設置約j

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(b) l!i嶋都世置ケFス

ミJ中iQ r:­

くシミュレーション条件〉

-系統事故点:送電線AB(母線AB間)の2回線のうち片回線 -事故条件:3線地絡ー線路開放(3LG-O), 故障継続時間O.07sec . SVC諸量:スロープリアクタンス1%, 調整容量1000MVA

svcダンピング制御回路最適化結果のシミュレーション検証 図4.4

(9)

4.2.3 長距離串形系統へのSVCの導入指針山0) (l)SVCの適正容量

SVCの実系統導入に際しては, 適正な容量の検討が必要不可欠である。 ここでは,

小外乱と大外乱に対するSVC容量の検討を行い適正なSVC容量を明らかにした。

表4.2, 図4.5に小外乱時のシミュレーション結果を示す。 小外乱時の場合3 電圧維 持能力を高くしたスロープリアクタンス1%の場合は600MVAでSVC制御系に起因する 高周波振動動揺が発生するようになり, 400MVAより小さくなるとSVC出力が上下限で 振動するリミット振動となる。 これに対して, スロープリアクタンスを5%と少し大 きくすることにより, 200MVAまで容量を低減できた。

表4.3, 図4.6に大外乱時の結果を示す。 スロープリアクタンスを5%とし容量 200MVAと600MVAの比較を行った。 大外乱の場合, 200MVAではSVCがリミット運転モー ドに入る時間が長く広域動揺を抑えられない。 これに対して, 600MVAとすると十分安 定化できた。 これらの結果から4.3節の検討にあたってはSVC容量は600MVAとした。

(10)

表4.2 小外乱に対するSVC容量の影響

SVC容量の最多響(注1) スロープリア

クタンス(注2)

1000MVA 600MVA 400MVA 200MVA 100MVA 10MVA

安定 安定 安定 安定 安定 不安定

1% 一一一一 一一 一一 一一 一一一 一一一

安定 1%幅で振動 3%幅で振動 2%幅で振動 1%幅で振動 不安定 安定 安定 安定 安定 安定 不安定

5% 一一ーー 一一一 一一 一一一 一一 一一

安定 安定 安定 安定 微小振動 不安定

(注1)上段:広域第1動婦の安定性 (注2)スロープリアクタンスは1000MVAベース値 下段: SVC設置母線電圧の安定性 ※故障条件:送電線ABの3L-0

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RW

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Tl峰崎"'

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TlllllUCI

SVC容量1000附A SVC容量400MVA

冒dEa・m・-・4v-da.‘.‘‘ .. 2・・M・・・4

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n,.lIJm ‘., .句" ・・・. ・・・・ ・・・ ・・-・・ ・‘" ・・-・ ‘・b個

n略IInI

SVC容量400MVA SVC容量200MVA

(a)スロープリアクタンス1 % (b)スロープリアクタンス5%

図4.5 Jj\外乱に対するSVC容量検討のシミュレーション結果(SVC出力波形)

(11)

表4:3

大外乱に対するsvc容量の影響

スロープリアクタンス

SVC容量の影響(注)

600MVA 200MVA

安定

5%

不安定

一一

安定

一一一

安定

(注)上段:広域第1動矯の安定性 下段:SVC設置母線電圧の安定性

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svc.効竃カ出カ svc儀費車電力出カ

(a)SVC容量200MVA (b)SVC容量600HVA

図4.6

大外乱に対するsvc容量検討のシミュレーション結果

(12)

(2 )長距離串形系統へのSVCの導入指針

4.2.2を含め以上の検討をま とめると, 以下のようになる0

SVC設置地点 :長距離串形系統の安定化には, 最適に設計されたダンピング制御を 付加したSVCを西端部あるいは東端部に設置することが肝要である0

・SVC容量:小外乱に対するダンピング向上の観点からは200MVA程度で十分である が3 大外乱時の安定性まで考慮すると600MVA程度が必要となることを明 らかにした(いずれも, スロープリアクタンスは5%程度)。

表4.4にダンピング向上からみたPSSとSVCの効果の比較を示す。

(3)解決した問題と残された課題

-解決した問題: SVCのダンピング制御回路の定数を提案手法により最適化するこ とにより, 発電機と同等のダンピングを向上させた。

- 残された課題:過渡安定度を考慮したSVC単独あるいは発電機励磁系最適化との 併設による, 電力輸送力の向上効果の観点からの検討がなされて いない。

表404 ダンピング向上からみたPSSとSVCの効果比較

PSS SVC

-系統のダンピングを決定している発

電機の状態量を直後入力としている -小外乱に対する広域動揺に対しては,変電 ことから,ダンピング向上効果は変電 所集中設置により比較的小容量でダンピング 利点 所設置のSVCよりも一般に高い 向上効果が得られる。

-長距離串形系統の場合,制御感度 -長距離車形系統の場合,安定度を決定して の高い2...3台の発電機PSSを最適 いる発電機近傍に設置すればより効果的で 設計することにより高い安定化効果 ある。

が得られる。

-変電所設置であるので一般にPSSより制御 .PSS設計上の定数の設定範囲が制 感度は低い。

欠点 約されるような場合,励磁系全体のリ -高速制御であるために,発電機や系統回路 プレースが必要になる場合がある。 網との共振による高周波振動の発生に注意

する必要がある。

-電圧維持制御のみでも安定限界は向上し 安定度向上 -ダンピング向上効果により安定限界 ダンピング制御を付加することでさらに向上 効果への寄与 も増大する。 する。

.PSSとの併設により.さらに安定限界が向上 する可能性がある。

(13)

4.3 電力輸送力向上のための発電機励磁系設計手法の開発61,山3・64,65)

4.3.1 開発手法の背景

( 1 )背景

4.2節までにダンピングカに主眼をおいた各種安定化対策を提案しその制御性能の 高さを明らかにしてきた。 しかしながら, より実用的な手法とするためには, これに 併せて送電電力 の限度を増大させることが必要不可欠である。 そのためには, 同期化 力も考慮、に入れて大規模擾乱時の安定性も向上させるような総合的設計手法とするこ とが肝要である。 制御系設計の際に技術者の技術的なノウハウに依存せず, より普遍 的な手法が必要である。

本節では, ダンピングカだけでなく同期化 力も固有値で定量的に評価しながら3 両 者をバランス良く向上させる論理を提案した。 具体的には, 発電機励磁系定数を最適 設計する際に, 設計対象となる制御系をPSSだけでなくAVRにも拡張し 電圧維持能 力 を 積極的に定数最適化ヘ反映させた。 同時に3 安定度評価関数の入カとして従来のダン ピング係数(固有値の実部)に加え, 動揺周波数(固有値の虚部)も組み込み3 過渡 安定度を定量的に評価した(提案手法1 )。 さらに, 重潮流条件において, 母線電圧 の低下による安定度の悪化を防ぐために, 主要母線電圧を遠端情報として発電機励磁

系に入力 する手法も提案した(提案手法2 )。 提案手法の検証は長距離串形系統で実 施した。 また, 発電機とSVCとの併設による限界送電電力も検討した。

(2 )簡単なモデルによる定性的説明

図4.7に一機無限大母線系統における発電機出力(P )一内部相差角曲線(δ)(P-δ カーブ )を示す。 系統事故直後の運転点はAからBヘ移動する。 過渡安定度の向上 は3 基本的には 系統事故後の発電機の加速エネルギーを減少させ, 減速エネルギーを 増加させればよい。 送電線リアクタンスXは不変とすると, 加速エネルギーを減少させ るためには以下のような方法がある。

( i )事故後の内部電圧Eを上昇させる等により 系統電圧の低下を防ぐ。

( i i )事故後の運転点BにおけるP-δカーブの傾きを大きくする。

(14)

Pm

ノB

r医故後己点

{b盲者(問問イkチ1) i曽地

E:発電機内的電圧 p_一一一一�EVsinô v 無限大母線電圧 X X:リアクタンス

図4.7

発電機出力(P)一内部相差角(δ)曲線

B点における傾きすなわち同期化力は次式で与えられる。

dP EV cosð

X

一方3 発電機回転子の運動方程式は次式で与えられる。

Mð +Dð +Kð =0

ここで, M 慣性定数, D ゲンヒ。ンゲ係数, K 周期化力係数

- ・ ・ …・ ・ ・ ・ …・ ・ .(4.9)

- ・……….(4.10)

(4.10)式の解は, 一般に次式のような振動解となり, Kはω の二乗に比例する。

-D土、/D2. -4M.'K -D_ 同一一手j,/-:云=DIK '+jω …・…・ ・ … ………・………(4.11) 2M . Vルf

4M 2 >>D2 as usual

K=Mω1 . .(4.12)

ここで, 同期化力係数Kは(4.9)式そのものである。 したがって, 同期化力係数(P 一δカーブの傾き)を大きくするためには, 事故後の電力動揺の周波数ωを高くすれ ば良い。 制御系定数最適化過程の中にどのように上記方策を組み入れていくか, 次節 以降で三つの考え方を提案する。

(3)AVR定数とPSS定数同時最適化論理の開発

一般的にはAVRとPSSの定数整定手順は文献(12)によると, 最初に総合電圧変動率に

(15)

よってAVRの定常ゲインが決定され, 以後固定として扱われる。 後は無負荷時や負荷 時の所要の応答特性が得られるまで繰り返すことで, AVR位相補償回路定数,乱調防 止回路定数, PSS定数が決定される。 これらの検討はシミュレーションでの試行錯誤 によるため3 安定度等の定量的な評価が得られ難く作業が繁雑となる。 また, 最初に 固定したAVR定常ゲインも実際には若干の設定裕度があり, この定数を含めたAVR定数 を積極的に活用することにより発電機電圧制御機能を強化できる。 そこで3 本論文で は, 従来の固有値ベースによるPSS定数最適化論理51)を拡張し, AVR定数も取り込ん で, AVR, PSS一体として最適設計することを提案する。 しかしながら3 この方法だけ では同期化力を向上させるための安定度評価指標が無いため, ダンピング力と周期化 力の両者を向上させることは難しい。 したがって, 次項に述べるような安定度評価関 数を導入した。

(4)発電機周期化力向上論理の開発

周期化力を定量的に考慮した定数最適化のために, 次式の評価関数を用いた。

づCislekλ+ek「 (413)

ここで, λij系統断面jの固有値iの実部,ωij:系統断面jの固有値iの虚部,

ωi j 0 :ωijの初期値, n 断面JでS法で求まった固有値数。 m:系統断面数,

kf:ダンピング評価の重み, kω:動揺周波数評価の重み

(4.13)式の第一項は3 従来から固有値の実部λijを用いた評価値7)であり3 ダンピ ングカを評価していた。 今回これに第二項の固有値の虚部である動揺周波数ωijを新 たに評価関数として加え, これにより同期化力を間接的ではあるが定量的に評価し た。 ダンピングカと同期化力の向上はFの最小化により達成できる。 すなわち, λij はダンピングが向上する方向ヘ変化し, ωijは動揺周波数が上昇する方向ヘ変化する ように定数を更新する。 ωijと初期値ωijOとの差分の比としたのは, 比較的高い周波 数の発電機ローカル動揺や3 それ以上の周波数帯の制御系動揺の値が非常に大きくな り, 比較的低い周波数帯の広域動揺の評価値との聞の適切な評価が行えなくなること

(16)

を避けるためである。(4.13)式の重みパラメータkfとkωについては現在のところ体 系的な決定方法は無いが, 本論文ではkf=l 0.0, kω=3.0とした。なお, (1)と(2)の

2つの提案を合わせて3 以降, 提案手法1と呼ぶ。

評価関数Fの最小化は最急勾配法を用いた。Fを最小化する際, 文献(51 )と同様に 各繰り返し計算においてαの修正幅に上限を設け ( 11α 11 2の20見) , この範囲内では θλij/δα, θωij/θαを一定と見なし, λijとωijを次式で近似し,

0・::L aω川

ii=へik + ð.α ωij =ωiik + ð.αー」こ …-………… …・・………ー… ・……・…-一(4.14)

., .,.. .r-

ただし, λijk' ωijkはk回目の繰り返し計算時の固有値のダンピングと動揺周波数の初期値

繰り返し毎に次式を最小にするαを求め, αk+l =αk+ムαとして最適化計算を進 めた。

. ..(4.15)

( 5 )遠端主要母線電圧入力形励磁系の提案

系統が重潮流になった場合, 系統電圧低下による同期化力の低下が問題となる。系 統電圧の低下に対しては, 電圧無効電力制御(VQC)やSVCによる電圧制御が基本であ る。ただし, 定常時における電圧維持制御だけでなく安定度まで考慮することによる 調相設備の増強やSVC設置によるコスト増が大きい場合, 当該母線近傍の発電機励磁 系を最大限に活用することも十分選択肢の対象となる。 そこで, AVR入力信号に従来 の発電機端子電圧偏差に加え, 発電機から遠方の母線電圧偏差を遠端情報として入力 とすることを提案する。これにより, 発電機内部電圧を強め母線電圧の大幅な低下を 防ぐことで安定度が向上する。発電機端子電圧の他に別の電圧を入力する考え方自体 は, PSVR (Power System Voltage Regulator) として既に実系統に導入されている ところもある35)が, 付加信号は発電機昇圧変圧器の高圧側母線電圧であり3 基本的に は過渡安定度の向上を積極的に目指したものではない。なお, 本節の提案を以降, 提

(17)

案手法2と呼ぶ。

4.3.2 制御系定数最適化におけるダンピング力と同期化力の向上方策

提案手法1の検証にあたっては, まず, 簡略な系統モデルを用いて固有値や制動力 係数, 同期化力係数, さらに限界送電電力でその制御性能を定量的に明らかにし, 次 に実用性の検証のためにこれまでに用いてきた長距離串形系統において安定度向上効 果を明らかにする。

( 1 )簡略系統における限界送電電力向上効果

(a)発電機励磁系モデ、ルと一機無限大母線系統モデル 検討に使用した発電機励磁系モデルを図4.8に示す。

PSS

/::,Vt

|£;;斗..-EF

/::'PG

/::,ωG

設計対象定数(太枠のブロック)

AVR: GA, T AVR1, T AVR2

(オリジナル値はGA=1.0, TAVR1=1.3, TAVR2=7.1) P ff�PSS: G P, T Pl, T P2, T P3, T P4

ω形PSS: Gw, Twl, Tw2, Tw3, Tw4

PSS

図4.8 超速応形サイリスタ励磁系とP+ω形PSSモデル

発電機励磁系は超速応のサイリスタ励磁方式, PSSはP+ω形PSSで、検討することとし た。 表4.5に発電機諸定数を示す。

表4.5 発電機諸定数

定格容量(MVA) 972 xq' (pU) 0.53 慣性定数(sec) 7.81 xq" (pU) 0.25

xd (PU) 1. 61 T d' (sec) 1.05

xd' (pu) 0.30 Td" (sec) 0.03

xd" (pU) 0.24 Ta (sec) 0.31

x q (PU) 1.48 xL (PU) 0.19

(18)

図4.9に一機一負荷無限大母線系統モデ、ルを示す。

系統事故条件:送電線中間地点の 3LG-Q-C故障継続時間0.07秒, 送電 線1回線開放後10秒後に再開路) 無限大母線

jl.0pu

jl.0pu jl.0pu 中間

母線 jl.0pu 送電端

母線

@

α mc M V A 市巴

かG IL '内d

一機一負荷無限大母線系統 図4.9

発電機出力は0.86puで0.43puを無限大母線ヘ送っている。 送電線リアクタンスを片回 線j2.0puの2回線とした。 送電限界の判定は, 発電機内部相差角力S360度を超える状

S法による発電機励磁系定数の最 態となったケースの送電線潮流を限界潮流とした。

2回線健全系統と事故後1回線系統の2断面を同時に考慮、した。

適化に際しては,

最適化ケースとして以下の3ケースを実施した。

(Case1) PSSのみ最適化(タ。ンヒ。ンゲのみ考慮、して最適化)

(Case2 :提案手法1) AVRとPSSを同時に最適化(ゲンヒロングと同期化力の両方を考慮、

して最適化)

(Case参考) AVRとPSSを同時に最適化(タゃンヒロンク。のみを考慮、して最適化)

,AU K

(b)励磁制御系定数最適化とKs,

2の定数最適化時の固有値の推移を図4.10に示した。

「「缶ーCase 1 (f)ト トー-Case2(f) i-・ーC竺吐(川

Case 1

0.8 Û 06

・0 0.4 。z l!lí 号、 o I . d-0211 3 5

、 - 0 4

-0.6

-0.8 3 5 7 9 111315 17 192123252729

Il適化繊り返し回数

( b )周波数の変化

Case 1, 2の制御系定数最適化過程におけるダンピングと

周波数の変化の様子( 1回線系統断面ケース

(a)ダンピング係数の変化

図4.10

(19)

Case1は, 最適化計算が進むにつれダンピングの向上とともに動揺周波数が急速に低 下する傾向にある。Case2は, 動揺周波数の落ち込みが抑えられるだけでなく初期値 よりも大きくなっており, 提案手法の特徴を表している。最適化後の励磁制御系の定 数を表4.6に示す。 次に3 ダンピング係数(Kct)と同期化力係数(Ks)を計算し,

図4.11にその結果を示した。提案手法によりCase1よりもCase2のKsを大きくした。

表4.6 -機無限大母線系統における最適化後の励磁系定数と限界送電電力

一一一一---ー-ー

限界送電電力 増分率 最適化後のAVR, PSS定数値(注2) (lGVAヘーース) (注1)

(Case1) P+ω形PSSのみ最適化 AVR: GAVR=l.OO, TAVR1/TAVR2=1.30/7.10

(ゲYt。ンクーのみ考慮) 0.37pu 一一一ーーーー PPSS:GP=0.15,0.09/0.16 0.67/0.12 ωPSS: Gω=1.15, 1.87/0.88 7.63/0.65

(Case2) (提案手法1 ) AVR: GAVR=1.11, TAVR1/TAVR2=3.00/3.00

AVR&PSS最適化 0.41pu +10.8% PPSS: GP=O.Ol, 0.08/0.25 0.15/0.13 (ゲンt。ンゲ&同期化力考慮) ωPSS: Gω=0.62, 1.97/0.66 5.57/0.54 (Case参考) AVR&PSS最適化 AVR: GAVR=l.ll, T AVR1/ T AVR2=3. 00/3.00

(ゲンt。ンゲのみ考慮) 0.40pu +8.1% PPSS: GP=O.Ol, 0.08/0.25 0.15/0.13 ωPSS: Gω=0.62, 1.97/0.66 5.57/0.54

(注1) Case1の限界送電電力を基準にした場合の増分率

(注2) PSS定数はゲイン, 進み遅れ時定数の)1債で標記している。例えば: PPSS: GP=0.153, 0.093/0.155,

0.655/0.116, は, GP TP1/TP2 TP3/TP4Jの意

k4z mfPL、8 rkd即11'即'lIJ

]00 即即 3即 曲国

2.00 40∞ 1由 柏田

I田 1/)却 I即 百》曲

。。。 000 。∞ 000

-1/)00 4∞ -1/)即

』国曲

図4.11 励磁系定数最適化後のダンピング力係数( K d)と同期化力係数( K s

)

( c )限界送電電力による提案手法1の検証

限界送電電力の観点から提案手法1の検証を加える。表405に各ケースの最適化後 の限界送電電力(発電端子から無限大母線への送電電力)を示す。その大きさは,

Case 1 < (Cases参考) <Case3 であり提案手法により限界送電電力を増大させた。

Caselを基準にしたときの, 他のケースの潮流増分率は, それぞれ約+8%, 約11%で ある。なお, Case3の限界送電電力0.41puを他のケースに適用したときのY法シミュ

(20)

レーション結果を図4.12に示す。同図の各ケースの界磁電圧を見ると, Case 1は事故 直後の電圧の突き上げが不足しており急速に1波脱調に至っている。Case2はAVR定数 の最適化計算によりAVRの過渡ゲインがCase1よりも高くなっているため, 事故直後の 突き上げは十分である。 これらにより提案手法1の有効性を明らかにした。

-10

000

界磁電圧(E f)

。冊 a・o 2田 ・20 $.崎 '部 @曲 3叫 Z軒 ・田 S個 '∞ s・o •闘 1/20 は師 同曲

1 T_I.・4

ヲー_.

:

.

: l�盗 母線電圧

0却 J岬 之10 4l1J j即 F即000

T, 0団 1" 2・o 4lf) '60 1即 '40 ,酎 1J1D 12即 ,.00 お刷/・..}

(a)Case1 (b)Case2

図4.12 一機無限大母線系統シミュレーション時の発電機諸量

(2)多機系統における限界送電電力向上効果

提案手法1をより実際に近い 多機系統に適用しその効果を検証し, その有効性を明 らかにする。

(a)長距離串形系統モデルと緒元

検討に用いた系統モデルは, 図2.8と同じ18機 長距離串形系統である。 安定化対象 発電機は広域第1動揺に大きい感度を持つ系統左端のG1とし, 励磁制御系は図4.8と 同じとした。 基幹送電線AB (母線A-B間)の増分潮流の設定は母線201, 母線210 と212の負荷調整とした。 系統事故条件は, 送電線ABの送り側母線至近端の3LG-0 (故障継続時間0.07秒, 送電線1回線開放, 再開路無し)で与え, 負荷特性は定電流 特性とした。

(b) G 1発電機励磁系定数最適化結果と限界送電電力

(21)

G1の励磁制御系定数を最適化した (CASE1と2)。最適化結果と限界送電電力の比 較を表4.7に示す。

表4.7 18機串形系統モデルでの定数最適化後の結果

一一一一一一

広域動揺 ローカル動揺 限界送電電力(増分率) |

(ベースケース) +0.13 一0.73

G 1にPSS設置無し (0.33Hz) (1.31Hz)

(Casel) 一0.22 ー0.93 2.7pu

P+ω形PSSのみ最適化 (0.33Hz) ( 1. 68Hz) (一一)

(Case3)提案手法1 一0.28

AVR&PSS最適化 -2.02 2.88pu

(ゲンtロング&周期化力考慮) (0.35Hz) (3.78Hz) (6.8児)

(Case参考) ー0.30

AVR&PSS最適化 一1.88 2.83pu

(ゲンヒロンゲのみ考慮) (0.34Hz) (2.84Hz) (5.0%)

提案手法1は他のケースに比べて, 広域動揺3 ローカル動揺ともに動揺周波数を高め に設定でき, ダンピングも十分な値を確保した。限界送電電力の大きさは, Case1<

Case2であり, +6.8%の潮流を増大させた。Case2の限界潮流値(2.88pu)を他のケー スに適用したシミュレーション結果の比較を図4.13に, 詳細な発電機諸量と系統母線 電圧の動揺波形を図4.14に示す。特徴的なのは3 送電線開放後の主要な母線電圧の動 揺が大きく持続するということである。

若'JO∞

Iω∞

120∞

80ω

40ω

B∞

。ω 20り 10ω 12ω 14ω 1600 18ω 20ω Tvn.ef_l

図4.13 Case2送電限界値(2.88pu)における他ケースの発電機内部相差角波形

(22)

。E 母線電圧 母線電庄

。即

。叩 z田 4叩 600 8田 /0即 日四 /4即 /6即 IØ即 E冊 000 z掴 4曲 。田 600 1000 1200 J.I即 M叩 /8掴 l1Ioo

"-1嗣l Tø凶1-'

(a)Case1

(b)Case2

。剖 2.00 .00 ði田 '00 1000 JZCXJ '400 16剖 岬即 置酎 n.wfut)

(c)Case参考

図4.14 C ase1の多機系統詳細シミュレーション波形 (Case3での送電限界値(2.88pu)における発電機内部諸量波形)

4.3.3 SVCと発電機励磁系の併用による安定度向上効果

限界送電電力を増加させるためには, 発電機励磁系だけでなくパワエレ機器の導入 も有効である。過渡安定度を向上させるためには, SVCによる電圧一定制御による系 統の同期化力を維持することが重要である。SVCは近年実系統への導入も進んでお り, 系統安定化装置として今後も期待できる。 そこで, 本節ではSVCの導入と発電機 励磁系との制御協調による輸送力向上効果を簡単に検討する。

(l)SVC設置地点別の限界送電電力向上効果

まず, SVC設置地点による限界送電電力の違いを簡略系統モデルと多機系統モデル を用いて明らかにする。

(a) 簡略系統における限界送電電力向上効果

(23)

図4. 15にSVCを含めた一機一負荷無限大母線系統モデルを示す。

送電端 PG=O.86pu 母線

@

j1.0pu i1.0pu

1000MVAベース 中間 無限大

母線 母線

j1.0pu j1.0pu

is

vIC2|

PL=O.43pu 3しG-Q-C

図4.15 SVC導入検討のための系統モデル

SVCを発電機送電端(SVC1)と中間母線(SVC2)のいずれかに設置し, その制御系定 数を最適化した時の固有値と限界送電電力を検討する。SVCの制御ブロックを図4.16 に示す。 なお, 以下の検討に際しては, 簡単のため発電機励磁系は4.3.2で設計した 提案手法1(Case2)による励磁系を用い3 その定数は固定とした。

A母線一J

1

電圧 -! 1 +T mS

A送電線潮流

I

GH1

!

! _ -

I

1

1 1 _

1

_

リアク

---1 "1 _l_... _ Iγ タンス

1+TH1S

1 1 +-

IH2s

I

SVC諸定数 Tm=0.10, TH1=0.05, 丁 目=0.02

GH1=33.3 (600MVA自己容量ベース) =10.0 (2000MVA自己容量ベース)

※ともに1000MVAベースのスロープリアクタンスで5%

ダンピング制御回路設計対象定数(太枠のブロック) G SVC' T l' T 2

図4.16 SVC制御ブロック図(TCRタイプSVC)

SVC容量は600MVA (スロープリアクタンスは1000MVAベースで5 %)とし, 送電端 と中間母線それぞれに設置し, SVCの制御系設計を以下のケースで行った。

(Case4)電圧制御のみ(定数最適化無し)

(Case5)ダンピング回路最適化(ダンピングのみ考慮して最適化)

(Case6)ダンピング回路最適化(ダンピングと周期化力両方考慮して最適化)

(24)

svc定数最適化結果とそのときの限界送電電力をそれぞれ表4.8, 表4.9に示す。

表4.8 SVC制御系最適化結果固有値

送電 端設置ケース 中間母線設置ケース 最適 SVC定数 2回線系統1回線系統 2回線系統1回線系統 (注2)

(SVC設置無 し) -0.95 -0.95

AVR&PSS最適化 』一一ーーーー (0.54Hz) 一一ーーーーー (0.54Hz). 一ーーーーーー (ゲンヒ。ンゲ&同期化力考慮)

(Case4)電 圧制御のみ -0.54 -1.19 -2.60 -1.22 一一ー一一一ー (1. 26Hz) (0.72Hz) (1. 33Hz) (0.62Hz)

(Case5)ダンピング制御 -2.05 -3.23 一0.15

ー一一ーーーー 一一一ーーーー

(ゲンt。ンゲのみ考慮) (1. 36Hz) (1. 40Hz) 0.34/0.23 (Case6)ダンピング制御 一0.80 一一一ー一一一 ー2.99 -1. 60 -1.73 (ゲンヒ。ンゲと同期化力 考慮) (2.00Hz) (2.00Hz) (0.69Hz) 0.08/0.40

表4.9 -機無限大母線系統のSVC制御系!とよる限界送電電力

(Case4)電 圧制御のみ (Case5)ダンピング制御 (ゲンtOンゲのみ考慮) (Case6)ダンピング制御 (ゲンヒロンゲと同期化力 考慮)

結果から次のことが分かる。

送電 端設置ケース 限界送電 増分率

電 力 (注1) 0.46pu +24.9%

0.47pu +26.5%

o .46pu +24.9%

中間母線設置ケース 限界送電 増分率

電 力 (注1) 0.56pu +51. 6%

0.57pu +53.0%

0.57pu +53.0%

備 考

いずれのケースも,

- 限界電 力超えると1 波脱調-事故後SVC出力はリ

ミッタにはりつく時間 長い

・限界送電電力は, 発電機送電端, 中間母線設置いずれも発電機励磁系のみよりも大 幅に向上する。

- 送電端設置よりも, 電圧低下の大きい中間母線設置の方が限界電力は大きい。

-固有値の面では3 電圧制御のみよりもダンピング制御を加えダンピングと周期化力 を同時に考慮した方が動揺周波数は上がる。 送電限界の面では, 電圧制御のみとほと んど差はない。

(25)

固有値ではCase4, Case5, Case6で差が生じるが, 限界送電電力に差が出ないの は, 設計後の定数が高ゲインとなっており, 事故後にSVC出力のリミッタに張り付く 時聞が長くなり, その期間は単なるコンデンサとなっていることによる。

(b)多機系統における限界送電電力向上効果

(a)の結果を多機系統で検証した。 系統構成, 潮流条件, 系統事故条件は図2.8と同 じである。

SVCを事故後の電圧変動の大きさの異なる母線201, 母線301, 母線303に設置した。

設置容量は600MVA(スロープリアクタンスは1000MVAベースで5 %) とした。 電圧変 動の大きさは, 母線201<母線301<母線303である。 ここでは表4.10にCase4,

Case5, Case6に対する限界送電電力のみを比較した。

表4.10 串形系統でのSVC制御系による限界送電電力(SVC容量: 600MVA)

(Case4)電圧制御のみ (Case5)ダンピング制御 (ゲンヒ。ングのみ考慮) (Case6)ダンピング制御 (ゲンドンゲと同期化力考慮)

母線201設置 限界送電 増分率

電力 (注1) 3.12pu +15.6%

3.14pu +16.3%

3.16pu + 17.0%

田園L...

結果から次のことを明らかにした。

母線301設置 母線303設置 送電限界 増分率 送電限界 増分率

電力 (注1) 電力 (注1)

3.15pu + 16.7% 3.10pu +14.8%

3.16pu + 17.0% 3.14pu +16.3%

3.18pu + 17.8% 3.13pu +15.9%

・電圧低下の大きい母線への設置で・限界送電電力は向上する。 ただし, SVC容量が不

足しているため, 事故後にSVC出力がリミッタに張り付く時間が長く(約2""3 秒) , SVCの効果が現れにくく, 設置場所による効果はほとんど同じ。

・ 一機無限大母線系統と同じく3 限界電力向上の点からは電圧制御のみで十分。

(2)SVC設置容量増加による向上効果比較

連系線潮流が重潮流となっ た場合でもSVC設置により限界電力を増加させることがで

(26)

きるが, SVC容量が小さい場合, 効果には限界があることを明らかになった。そこ で, SVC容量を2000MVAに増やして同じケースを検証し, SVC容量増加による限界送電 電力の増加を明らかにする。SVCスロープリアクタンスは同じく5 % (1 OOOMVAベー ス)とした。

結果を表4.11に示す。以下のことを明らかにした。

-容量増加により限界電力を更に増大させた。電圧低下の大きい母線への設置が効果 的となるが, 低下が大きすぎると(母線303)その効果には限界がある。

. SVC容量を増加させてもSVC制御形態は, 限界電力向上の観点からは電圧制御のみで 十分である。

表4.11 串形系統でのSVC制御系による限界送電電力(SVC容量: 2000MVA)

(Case4)電圧制御のみ CCase5)ダンピング制御 (ゲンヒロングのみ考慮) (Case6)ダンピング制御 (ゲンヒ。ンゲと同期化力考慮)

母線201設置 限界送電 増分率

電力 (注1 )

3.27pu +21.1 % 3.27pu +21.1 % 3.30pu +22.2%

母線301設置 送電限界 増分率

電力 (注1 )

3.62pu +34.1 % 3.66pu +35.6%

3.67pu +35.9%

4.3.4 発電機励磁系入力信号の拡張による限界送電電力向上効果

( 1 )多機系統における限界送電電力向上効果の限界

母線303設置 送電限界 増分率

電力 (注1) 3.55pu +31.5%

3.57pu +32.2%

3.57pu +32.2%

図2.8系統において安定化対象発電機を増やし, G1とG2の2台の発電機を一つに合

わせ約19000MVAの大容量発電機とし, これに超速応サイリスタ励磁系を付けた究極的 な状況を作り限界送電電力を検討し, 発電機台数を増やしても限界送電電力の増大効 果に限界が生じることを明らかにする。表4.12にその結果を示す。

(27)

表4.12 大容量発電機による限界送電電力

限界送電電力 (増分率)注l (Casel) P+ω形PSSのみ最適化

(Case2) (提案手法1) AVR&PSS最適化 (ダンピング&同期化力考慮) (Case参考) AVR&PSS最適化

(ダンピングのみ考慮)

卯%一卯協一仰mnHU

--門J・

,P、-n吋U,t144AFhu-qtUOLE--円《U-h,・ワ

= -ud - 3hけ-qJU一34 -MA

(注1)表4.7のCase1の限界送電電力を基準にした場合の増分率

Case1でも限界送電電力は約3.4puとG1のみによる結果に比べ更に増加する。 しかし その差分は0.7pu程度とさほど大きくはない。 また, 各ケースの限界送電電力がほぼ 同じ値となっていることを明らかにした。 この時のシミュレーション結果を図4.17に Case2を代表させて示す。

。ω �======�==========�-2即

000 05(] /5(} 200 l5.

富由∞

I曲曲

/2000

8000

40ω

/2由

25(} n-fuc} J 00 J却 400 45(} 5叩

。師

072

0柑

oa・

000 000 「一一�-�11旬 /00 /� 200 , 守 一γ�l5(] 1岬 J 511 4()() 4却 500

ル硲/蹴l

図4.17 安定化対象発電機増ケース(G1&G2)の送電限界時の波形 事故後の主要中間母線電圧(母線301や303)が単調に減少し崩壊に至っている。

方, 発電機の励磁電圧と端子電圧は, 事故直後の第1波動揺後はほぼ事故前の状態に

(28)

落ちつき, 上位系母線の電圧低下による不安定現象とは無縁となっている。 このこと が各ケースの限界送電電力の差を小さくしている。 すなわち, 重潮流の場合, 究極的 に発電機励磁系を強化しでも従来手法では電圧低下に起因する安定度の崩壊には無力 であることを明らかにした。 そこで3新たな制御系入力信号を加える手法を提案し,

これによりこの不安定現象を安定化し更に輸送力を増強させることを明らかにする。

(2)発電機無効電力入力励磁系による限界電力向上効果

重潮流となり内部相差角が大きく開いた状態で制御系を活用するためには, 発電機 無効電力出力QをAVRの入力信号とすればよいことが提案されている41 )。 そこで, ここ ではその効果を利用し電圧低下現象を改善した。 図4.18に示すように, P+ω形PSSにQ 入力ブロックを追加し位相進み遅れ時定数T QlとT Q2を最適化した(この場合, Gv=O とした) 。 表4.13(a)に限界送電電力を示す。 限界電力は約3.7puとQ入力導入前に比 べて更に向上させた。 この時の波形を図4.19(a)に示すが3 事故後の母線電圧が低め で推移している。

P+ω形PSS(図2と同じ)

ðVt

追加信号

ðOG

ð Vnode

EFS/170

GO I Vt

EF

�一一ー ↓

1+0.025

�_

追加

、ノF 信号

炉| Gv 年

図4.18

発電機励磁系の入力信号を拡張したモデル(Qg'

V node

)

表4.13

励制御系入力信号拡張による限界送電電力

---

限界送電電力(増分率)注l 備考

(a) P +ω+Q入力PSS (+37.0%) 3.70pu -中間母線電圧の低下はかなり抑制できる

(b) P +ω+ V node入力PSS (+63.0%) 4.40pu 母線電圧の低下町+ω+Q以上に抑制できる

l

(注1)表4.7のCaselの限界送電電力を基準にした場合の増分率

(29)

( 3 )遠端主要母線電圧入力による限界電力向上効果

より一層限界送電電力を増大させるために, 図4.18のV node入力ブロックに示すよ

うに3 発電機から遠方の主要な母線電圧をAVRに補助信号として入力しP+ω+V node励 磁系とすることにより, 中間母線電圧の低下を積極的に抑制でき一層安安定度を向上 させることを明らかにする。 簡単のために, V nodeの入力に際しては位相補償は行わ ずに, Gy二1.0で直接入力した(この場合, GQ=Oとした)。 表4.13(b)に限界送電電 力を示す。 限界電力は約4.4puとなりP+ω+Q形PSSのケースよりも更に大幅に増加させ た。 なお, この時の波形は図4.19(b)のように母線電圧が振動発散的に低下し脱調に 至る。 また3 安定潮流状態時の母線電圧もP+ω+QよりもP+ω+V nodeの方が動揺収束後 の電圧を高めに維持できており, 提案手法2の有効性を明らかにした。

/000

6.00 界磁電圧CE f)

-2曲

4曲

-/0

。甜 /00 200 100 400 j即 6即 100 100 900 /000

t却

/lIJ

。酎

J却

/lIJ

060

010

7初、.'ucJ

i∞ Z曲 3∞ ・∞ s∞ 6∞ ?曲 S個 '∞ 同国 T胴凶/.<<}

000 /00 200 1却 4伺 5即 6即 F国 600 9即 10即 TtnW{uc)

(a)P+ω+Q入力励磁系ケースの限界送 電超過時のシミュレーション波形

/0即

600 界磁電庇(:E f)

Z個

-200

4個

-/0曲

。冊 Z曲 ・曲 6即 日@ 山田 旧国 同国 同国 同加 盟国 τh・bu.J

2却

/20

。即

。出

0.30

。即

000 2曲 4 00 600 ,∞ 10即 応即 1400 16曲 /100 lIJoo n-/・..,

I却

/20

。却

。剖 Z即 4即 6.即 600 /0.却 は即 /400 1600 /1即 昂伺 Tvrw/,..cj

(b)P+ω+Ynode入力励磁系ケースの限界 送電超過時のシミュレーション波形

図4.19 励磁制御系入力信号を拡張したケースの送電限界状態の波形

(30)

(4)解決した点

・発電機AVRとPSSの両方を一括してその定数を最適化することにより, ダンピング と同期化力の両者を向上させることができた。 多機系統に適用し, 限界送電電力 を向上させた。

・ 系統が重潮流になったときの系統母線電圧低下による同期化力低下を防ぐため に3 母線電圧を遠端情報としてPSSに新たに追加することにより, 限界送電電力を さらに大幅に向上させた。

SVCによる電圧維持効果を発電機励磁制御系と併用することにより3 限界送電電 力を向上させた。

(31)

第5章 安定度を総合的に向上させるための電力系統安定化対策の提案

5. 1 多機電力系統のロパス卜安定化方策のまとめ

ここまでの検討結果を以下にまとめた。 概要を記すと以下のとおりである。

5. 1 . 1 電力系統の定態安定度向上方策

( 1 )複数の系統運用条件を考慮、したロバストな制御系設計手法

-幅広い系統運用条件の安定性を確保するロバストな制御系設計手法を開発した。 各 運用条件の固有値を全て評価しその値を最小化することにより3 各条件毎の最適性は 若干減少するものの3 多様な運用条件をバランス良く安定化させた。

(2)幅広い周波数帯の動揺を安定化するロバストな制御系設計手法

-発電機固有のローカル動揺や系統全体が動揺する広域動揺はといった動揺形態も周 波数帯も異なる現象をバランス良く安定化する設計手法を開発した。 従来の位置入力 形PSSを拡張し, 2入力のP+ω形PSSの定数を最適設計し, さらに(1 )も用いることで

ロバスト性の高い制御系の設計を可能とした。

5. 1 .2 電力系統の過渡安定度向上方策

( 1 )発電機励磁系による電力輸送力向上効果

・従来のダンピングの向上のみを目的としたPSS定数最適化よりも, AVRも含めた励磁 系全体の定数を最適化する手法を開発した。 これにより同期化力を向上させ電力輸送 力も増大させた。

(2)安定化対象発電機増による輸送力向上効果

-安定化PSS設置対象発電機を増やすと輸送力は一層増加することを明らかにした。

・ただし, 系統が重潮流な条件下では基幹送電線母線の電圧低下が顕著になり3 その 制約条件で輸送力向上は飽和することを明らかにした。

( 3 )励磁系入力の拡張による電圧制約の改善

・電圧低下現象を防止するために従来のAVRとPSSに加え3 電圧変動に感度の高い発電

(32)

機無効電力を入力に追加することにより, 電力輸送力が改善することを明らかにし た。

-より直接的に系統電圧を維持し安定度を向上させるために, 主要母線の電圧を遠端 情報として励磁系に入力する手法を開発した。 これにより, 系統電圧低下問題は解消 し飛躍的に電力輸送力を増大させた。

(4)SVCの導入, 発電機励磁系との併設による輸送力向上効果

. SVCの設置は輸送力向上の観点からは電圧低下の大きい母線への設置が効果的で、あ ることを明らかにした。

・検討に用いた18機長距離串形系統モデルの場合, SVC容量は少なくとも600MVA程度 は必要であり, さらに十分な輸送力向上効果を得るためには2000MVA程度の大容量が 必要になることを明らかにした。

-限界送電電力向上の観点からは, SVCは電圧制御のみで十分であることを明らかに した。 ダンピング制御を付加するとダンピングを向上させるが送電限界の点からは電 圧制御のみの結果とさほど変わらない。

. SVCはいまだ高価なものであるが, 電力輸送力を上げるために多くの発電機の励磁 系を更新する必要がある場合, SVCは十分に選択肢の対象となり得る。

なお, 本論文における発電機励磁制御系の定数最適化論理は, 筆者らが開発した手 法制により, 任意の制御ブロック形態に対応することができる。 また, 定数最適化計 算過程において, 各繰り返しステップ毎に最適化対象固有値がどのように収束してい くかを視覚的に表示するための, 高精度なモード追跡機能も併せ開発67)しており, 制 御系設計業務を効率化させた。

参照

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