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第11章多変量解析による東北・北海道方言の共通語化の 構造分析

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(1)

第11章多変量解析による東北・北海道方言の共通語化の 構造分析

11.1.目的

 前章における個別の語形の分類から,共通語化の流れの大枠については読み取るこ とができた.さらに本章では多変量解析を用いて共通語化の構造分析をおこなう.

11.2.分析用データ

11.2.1.方言形を加えた分析

 本章では,第10章で使用した30項目のデ・・一・・タを使用するが,本章では,共通語形 30語とともに,「代表的な方言形」41語を挙げた(表11−1).調査で回答された方言形 は多岐にわたっており,数量的分析においてあまりに使用地点の少ない語形を使用す ると結果の精度がおちる危険性がある.そのため,本研究ではある一定の勢力(10地 点程度が目安)を持っている語形に絞り込んだ.

 これら71語は,厳密には類似の発音を持つ語形も包含している.回答の記述方法 は10.2.でも述べたとおり,カタカナ表記であるTH調査の処理に準じた.

(2)

GAJ

}番号

質問 共通語形 方言形

4 ごカ みたい

5 ゜が(好きだ)

6 ミ (飲む)

11 ピールは まない)

12 }は(む

19 の方へ桁け)

21 に(㌍った)

24 ここに(る)

25 に(せ)

27 犬に( いかけられた)

33 (雨が)っているから カー ハンデ

38 い1 ど(がましよ

52 円ぶん(ください) プン アデ ガナ

72 きない オキナ オギネ

84 しない シナ シネ ス サネ

86 ミロ ミレ

90

91 シロ

110 よう コヨー ルベ クッペ

111 しよう シヨー スツペ スルベ

113 るだろう クルダロー クルベ クッペ

120 させる コ セル コーZル

130 ば レパ

134 なら クルナー クンナラ クルダバ

137 くない タカクナ タガグネー タカクネー

141 かった カカツタ ガ・・ ガガ・・

142 いだろ タカイダロー タカイベ タゲベ

144 いなら カイナラ タケナー

146 かな(ところ) シズカナ シズカダ

150 かなら シズカナラ ダバ

表11−1・統合項目一覧(表10−1の再掲)

11.2.2.数量化3類の適用

 共通30項目において,共通語形30語と,代表的な方言形41語の,計71語につい て,使用するか否かの行列を作成した(表11−2).代表的な方言形とは,グロットグラ ム集計時にある程度(およそ10地点)の勢力があると認められた語である.

 そしてパターン分類の方法として,多変量解析法の一つである数量化3類を適用し た.数量化3類は,2値(Yes−No型)の要素をとるデータを対角状に並べ替えるような 計算をおこない,「ある質問とある回答の傾向が似ている」と解釈することによってパ ターン分類をする方法である.相関係数が高い(=対角状に並びやすい)順に第1軸,

第2軸…と,複数の軸が存在し,通常は傾向の説明がしやすい上位の軸によって分類 がおこなわれる.数量化3類とほぼ同様の分析法は数多く存在し,代表的な分析法と

して「コレスポンデンス分析」がある.

      230

(3)

 71語のデータを数量化3類によって解析する際に出力される,各解の固有値,寄与 率,相関係数を表11−3に示す.第5軸の値まで示すが,以下の分析は,上位2軸につ いておこなう.上位2軸の寄与率は,それぞれ,16.33%,8.22%と決して高くはない,

しかし,変数・ケース数が多い場合には複雑な要因が絡み合い,明確な解が得られず 寄与率が下がることが多い.そのため解釈自体には意味があると考えるが,同時に2 っの軸だけで全てを説明できるわけではない,ということも留意しなければならない.

4酒が i飲みた

@い)

4酒φ i飲みた

@い)

5酒が

i好き

セ)

5酒φ

i好き セ)

6酒を

i飲む)

6酒φ

i飲む)

11ビー 汲ヘ(飲

ワない)

■ ■ ●

150静 ゥなら

150ダ

o

0

1 1

0

1

0

1

0 0

1

0

1

0

1

0

1 1

0

1

0

1

0 0

1 1 1

0

1

0

1

0

1

0

1 1

0

滝川 10代 齔?@30代 齔?@50代 齔?@90代(GAJ)

ャ樽 10代

ャ樽30代

ャ樽 50代 ャ  70代

0

1 1

0 0

1

0

1

0

1

0

1

0

1

0

1 1

0

0 1

0 0 0

1

0 0 0

0

1

0

1

0

1 1

● ● ●

怐@● ●

1

0

1

0

1

0

1

0

1

1

0

1

0

1

0

1

0 0

東福島30代 剣沒№V0代 沒〟@10代 氈@ 70代

1

0

1

0

1

0

1 1

0

0

1 1

0 0

1 1

0 0

表11−2・各地点における共通語形・方言形使用の行列

。与率 累 寄与率 相関係数

1 0.3463 16.33% 16.33% 0.5885 2 0.1743 8.22% 24.56% 04175

3 0.1194 5.63% 30.19% 0.3455 4 0.1026 4.84% 35.03% 03203

5 0.0894 4.22% 39.24% 0.2990

表11−3・数量化3類の各軸の値

(4)

11.3.結果

11.3.1.話者からの分析

 数量化3類の結果は通常は,軸ごとに項目を並べ替えて表示したり,任意の2軸を 選んで散布図にプロットして分析することが多い.本研究においては,グロットグラ ムというデータの特性(地域差,年齢差)にあわせ,各話者(世代・地点)における 各軸の値をグロットグラム上に表現した分析もおこなった.

11.3.1.1.第1軸一年齢差

 第1軸の値をグロットグラム上にあらわしたものを図IHに示す.最大値(2.2701)

から最小値(−2.0476)までを5段階の記号で示したものである.値が小さいほうが濃い 記号となっている.

 共通語形使用率のグロットグラムである図11−3と比較して空白部分が多いのは,

未調査項目のためである.すなわち調査時間の都合等で,一部の質問をしていないこ とが原因である.そのため福島県の中年層の多くが失われている.

 図11−1の第1軸をみると,左右の差が顕著である.特にGAJ世代である90代と,

10代との差は明確である.右側(老年層)に薄い記号が並び,左側(若年層)に濃い記号 が並んでいる.このように第1軸は年齢差をあらわしていると予測できる.

 これは共通語形使用率のグロットグラム(図11−3)の特徴に類似しており,年齢差が 共通語化とも関係していることを示す.共通語化が先行している北海道において,50 代以上にも濃い記号が多いことも,第1軸が共通語化と関係していることを表してい る.同様に,他の地域より薄い記号が目立つ青森県旧津軽藩地域も,共通語化の遅い 地域と一致していることがわかる.

 以上から,第1軸は,共通語化を背景とした年齢差として位置づけることができる.

232

(5)

旧藩道県 10代30代 50代70代90代 旧藩道県10代30代50代70代90代

〜老

〜老

O X

〜− R.356

−3.356〜

−0.130〜

−0.903〜

n.?ク4〜

0.975〜

0.399〜

−O.177〜

−0.752〜

〜_n7Kり

一×O★■

図11−1・第1軸(話者)のグロットグラム 図11−2・第2軸(話者)のグロットグラム

(6)

〜老

〜20%

〜40%

〜60%

〜80%

ΩnOfN

一xO★■

図11−3・30項目の共通語使用率のグロツトグラム(図10−3の再掲)

234

(7)

11.3.1.2.第2軸一地域差

 第1軸と同様に,第2軸の結果を最大値(3.0856)から最小値(−6.1180)までグロッ トグラム上に分布させたものが図11−2である.第1軸が左右で分かれていたのに対し て,こちらは上下で分かれている.北海道を別に扱えば,青森以南は青森県旧津軽藩 地域でもっとも薄く,宮城・福島県でもっとも濃い記号となっている.このことから,

第2軸は地域差をあらわしていることが予想される.

 地域差とは,すなわち,各地で独自の方言形を持っていることをあらわす.例えば 図11−4の「百円ぶん」の共通語化は典型的な例といえる.90代(GAJ)において各地域 で勢力をもっていた青森・岩手「アデ」,岩手の「デ」,宮城・福島の「ガナ」といっ た語形が,共通語形「ぶん」に統合されている.90代では明確に存在した地域ごと のバリエーションが徐々に縮小している状況が計算結果に反映しているのであろう.

        100%

        80%

        60%

        40%

        20%

         0%

       10代  30代  50代  70代  90代       (GAJ)

    図11−4・「百円ぶん」の共通語形と代表的方言形の世代別使用率        (図10−7の再掲)

 ただし,10代においても差がみられることから,わずかであっても地域差は保持さ れているといえる.ただし90代では「一×○★■」と幅広い記号がみられるが,10 代では多くが「×○★」のみであり,若年層ではそれだけバリエ・・一一Lションが減少した

ものととらえることができるだろう.

 第2軸においてあらわれている地域差は,左側の地域表示と照らし合わせると旧藩

一■●一一52ブン

[←−52アデ

{52デ

[Cト西52ガナ}〜一}㎜一『

    l    i

@  ⊃    …

@   |一一一一「    …    …

(8)

領域を反映していることがわかる.第1軸でも部分的には読み取ることが出来たが,

第2軸のほうがより明確に現れている.

 図11−2における旧津軽藩と旧南部藩の境界は鮮明であり,県境より明確である.

青森県旧津軽藩地域は全体が薄い記号のまま10代まで保たれている.佐藤(1996)は,

津軽地方について「方言主流社会」という術語を用いている.佐藤の定義では「いわ ゆる方言と共通語が連続的な言語様式として同一言語体系内に共生しながらも,どち らからといえば,日常の言語生活を方言で営むことが自然な社会」としている.若年 層が,方言形を多く回答するこの地域は,佐藤のいう「方言主流社会」の特徴をあら わしているといえるだろう.

 もう一つの境である旧南部藩と旧伊達藩の境界は,岩手県旧伊達藩地域をみるとわ かるが,斜めの線を描いて,境界が南側に移動しているのがわかる.つまり方言境界 が,旧藩の境界から現在の県境へと移動していることを示している.

 さらに,全体でみると,地域差が顕著であるのは,30代以上であり,10代では方 言境界は曖昧にみえる,この曖昧さは10代の共通語化の高さが原因と考えられ,地域 差を決定づけるような方言形の使用が10代では少なくなっているのではないかと推 測される.そのため,たとえ「新方言」などが生まれたとしても大きな勢力にならず,

本研究における代表的な41方言形に入らないことになる.

 図11−5は,話者を地域(道県・旧藩)・世代ごとに分類して,散布図にしたもので ある.第1軸が縦軸に,第2軸が横軸になっているので注意が必要である.

 縦(第1軸)を年齢差,横(第2軸)を地域差と考えると,右の福島県から左の青森県 旧津軽藩まで,北海道を除いて地域の順番に綺麗に並んでいる.また,上の高齢層か ら下の若年層へと綺麗に並んでいる.高年層で広く散らばっていた地域が,若年層で は集まっていることがわかる.これは共通語化によって地域的差異が失われていく過 程を示していると考えられる.北海道が下側に集まっているのは,北海道が高年層か

ら共通語化が進んでいることを反映したものといえるだろう.

      236

(9)

第2軸×第1軸

2 ・r

i

}一一一一一一ベー一一一一 青{津}9

(津)3

(津}5

榊ユー一 一 一一i−

・1

青圃う

漏一

。騨・

北1岩楠

岩{伊}7 岩{伊}5

宮{伊

  福3

福9

i

・1.5

青(南)

岩(

宮(伊)

城島 宮福

図11−5・第1軸×第2軸(話者)

(10)

11.3.2.語形からの分析

 本研究では,変化全体のパターンを捉えることに主眼をおいたため,具体的にどの ような文法項目が言語変化に影響を与えているか,といった側面からは分析していな い.しかし,地域差・年齢差による要因が,分析対象の71語形からもみられるかどう かを検証する必要がある.

 図11−6は,数量化3類による各語形の第1・2軸の得点を,散布図によって示した ものである.話者による図11−5の散布図に対応するものだが,この図も第1軸が縦に,

第2軸が横になっているので注意が必要である.図中●記号が付加されているものは 共通語形を示している.

 第9章で示した,青森の「ハンデ」(図10−2)や,図11−4の青森・岩手の「アデ」,

岩手の「デ」,宮城・福島の「ガナ」といった語形の,図11−5の散布図における位置 に代表されるように,左右(第2軸)は地域差を反映していると考えられる.前記以外 の語形においても,左側に青森県,右側に宮城・福島県のように,その語形の配置が 主に使われている地域と対応することが確認できた.

 さらに,こうした方言形は主に図の上側に位置しており,下側には●記号で示され る共通語形が集まっている.つまり,矢印の線を引いたように,各地にあった地域独 自の方言形が,時間を経るごとに共通語という一つの語形に統合されていく様子があ らわれていると思われる.

 このことは,話者の数量化3類における,地域差・年齢差の結果を裏付けるもので

ある.

238

(11)

        葺ぽ 茅1………tttt…… …………tt … 1

       乃漬      i

      i       °84v i        2(       i       i       i

       ・ sns  Nきだ   ミ   パ  デ      ミ

      i…百円・デ・・37タガグネト1    …ハ・デ i

       .、、酒ぽ4,飲酬    輪=バ  i        弔愉。方サ     134来るダ1く   i        ・84スネ

       ・9・= 耀繊惚         i

      ベ       ミ

      …見サ・行・た}e・2・・弓畷こサ有る1 ・27*v、せ      i       ミ      ミ

        警        第、軸i

 lttt…w当秘状…tt: t→……一 −ttt −t… …『……  1   −、、3ク、じ㌣祠………… ・i

       −3     −2.5     −2     −1.5     −1     −0.5      g}     0.5      1      15      2      2.S      3      3.5  i  ・4.5    4    −3.5

i       i  °21°見に(行った)111スルベ    l

i    ._芦⇒盤戴:::   i

i         …一∫灘藁羅蕊,     i

i      i・…蜘鯛        i

i        ・木・bi,ma・$le5    i

i        i ⌒い    i

i       −l     i

㌔.._._____一    .t_vs_____________一__._,____..___________________._____」

図11−6・第2軸×第1軸(語形)

11.3.3.第3軸一中年層での新方言一統合対分岐

 次に,第3軸について考える.まず,話者における分布図(図11−7)をみる.第1軸 と組み合わせており,世代との関係で考察する.

 GAJ世代と,北海道の全世代がプラス側に位置し,福島県の全世代がマイナス側に 位置している.また,多くの地域において,高年層がプラス側に,若年層がマイナス 側になっており,30代で最もマイナスの値を示していることがわかる.

 一見すると,第1軸の世代差に似た傾向を示しているが,共通語化の進んだ地域と 伝統的方言の使用地域がともにプラスである点で異なっており,また,もっとも共通 語化が進んでいる10代が,30代よりもプラス側となっている点でも異なっている.

(12)

・1.5

  第1軸x第3軸

 2週

  i塒

  … 北9151

青Y− ,

      i

      { 榊』P、va、、 I

      i       l

      i

軸.

2

一i,, .i

図11−7・第1軸x第3軸(話者)

 話者の傾向だけでは明確でないため,つづいて語形の分布図(図11−8)をみる.

 第3軸プラス側でもっとも突出している項目を第1軸のプラス・マイナスによって それぞれみると,第1軸プラス側では,「(酒)φ(=が)(好きだ)」(図11−9)のような 無助詞項目や「タガグネ(一)(=高くない)」(図11−10)に代表される,GAJ世代のほぼ すべてが回答する語形である.

      240

(13)

i 25

●84●しない

       ・113●来るだろう       ゜142タカイベ

禰鍛㍊欝う

  .、42●齢璃撃う   ・144●高いなら

i

l.一______t.,..v...,_____.

・25●おれに{貸せ}

 ・134●来るなら

         ・9東の方二  ㌍㍊。耀躍

c …… ÷ …tt ÷

謔ユ≡緬ところ}

・2     ・1.S◆15θQ額砂葉あ方へ{行け)・O.S        ■120●9蹴る、 t       ・ S2●蔦9b4abCく7劔、}]

      …酬好3tl}i.、、シネ        .、、ぷ轡rご2

      ミ

      ∴纏欝槻37タカ・細励麻

       .、。》

      i

      …       .,・}       i

       144タケナラ  1        ,25 −i・ 、、」■、F■L ト」Lt∨、、」「.■L、tt七1■、1■、」■L1       …1

  第1軸x第3軸      i

       …      ・5]     ・・ピー・昧酬  l        i

・一

笥:一_・・84・・一 }        {      i

    ・52百円ガナ      1

      …        ・・5・馳デ  i     .21見サ{行った)       i

       ・146シズカダ         i

      …     ・24ここサ有る}      i

   ・91せ      i

      ・134来るダパ       i

      i

    ◆、,犬サ         i

      i

______.___________]

図11−8・第1軸x第3軸(語形)

一方で第1軸マイナス側には,「クルダロr(図1HO)「シナイ」(図1H1)や,

「オキナイ」「コヨー」といった共通語形が分布している.一見,第1軸の特徴である 世代差の反映ともいえるが,ここで示された共通語形は若年層でも多くて40%程度で あり,比較的共通語化が遅れている項目といえる.

(14)

   、。%        i、。%L___.____−i

       …

   60%   −t  ……     ・一・…−v− ・ 一  ・ 一  一H… −         60%

   40%       L       −一一一         40%

   2°% …… … ………・i2°%

∴竺三∵竺一三、L≡

   図11−9・「酒スキダ」の使用率   図11−10・「タガグネ(一)」の使用率

      113●来るだろう        84●しない

   100%1       100%{

     ミ      ミ

   80%C…一一一一一一一一一一・一一一…−   80%↓_._________._____

     ミ      ト

     i      i    6°%「………}…一 …  6°%{

     10代  30代  50代  70代  90代         10代  30代  50代  70代  90代

   図11−11・「クルダロー」の使用率   図11−12・「シナイ」の使用率

 第3軸のマイナス側をみると,第1軸プラス側に「(犬)サ(=に)(追いかけられた)」

(図11−13)「セ(=しろ)」(図11−14)や,「(来る)ダバ(=なら)」「(ここ)サ(=・に)(あ

る)」といった,30代に使用率のピークがある方言形がみられる.

  80%・一一一一一一…一…一一…一一一…一一一一一一一一一一    80% 1−一一 一一一一一…・一…一……・一一一一一

  60%____.______一.一__....,.. 60%      i   4°% ……一…  i4°%

  竺 v。,。一:.一。%、,v.Ll−

       ii      i

       ii 1°代3°代5°代7°代9°代i

    10イ」t   30イ」t   50イ」覧   70{£   90{£

      i       l

 Vi・^vs・t−−tμ∨一一。・s一ムー焔^叫牌^^−v・・一一SH・一一一A∨nv−m∨−r・れMV・V・V・nv−−v−一∨・ …一芦一・s…一・nt−・・AW友〔∨_」  ・_ぷ__−s.V.一一eWr.v.pmN.ww __ ∨_nvvtA−tA−t__甲__、、_^_^《{∪_〔{∨ふ∨_∨県⌒一{_一sw{一一∨_一、.{_き

     図11−13・「犬サ」の使用率     図11−−14・「セ」の使用率        242

… 

w

鯵ふ… …{…〉嶋 斌爪一…、…∨一∨…〜……… 、 一A

10代

丁小

30代

50代

A ¥

70代

90代

}       悟

(15)

 これらはかつて,世代が若くなるにつれて使用率が増加していた「新方言」といえ るだろう.しかし10代ではその使用が減少していることがわかる.

 第1軸マイナス側には,「(酒)が(飲みたい)」(図1H5)や,「来い」(図11−16)の ような共通語形と,「クンナラ(=来るなら)」(図11−17),「クルベ(=来るだろう)」(図

11−18)のような10代がピークになっている「新方言」が混在している.これはどちら もグラフが若年層になるにしたがって増加傾向にあるからであろう.

100%

80%

60%

40%

20%

0%

4●酒が{飲みたい)

   10代  30代  50代  70代  90代

[一__._._一__一___一______

100%9

80%一

90●来い

60%・

 40%

 20%

 0%

   10代  30代  50代  70代

      90代

________________{

 図11−15・「酒が飲みたい」の使用率  図11−16・「来い」の使用率

……w…………一… ………〜………… … …一

W……un……… ………}… ………−

     134クンナラ    ii

       113クルベ

、。。%        ii、。。%㍗__..______−

8・%        ii・・%1−一一一一一一一・・一・・一・一 t−一

、。%     .il、。%{_一一一一_、__

14・%

       {

L_竺_竺_竺7°ご叉」__竺し竺…竺一竺∵1⊇

 図11−17・「クンナラ」の使用率    図11−18・「クルベ」の使用率

    内

ノ∨∨∨

∨ ∨七七、∨ ∨…一七、  、、 wヒ、 、w∨ 、 ∨、、

A

hAA AAM、h東ト ∨.、

A 吟ヴ

(16)

 以上から,第3軸マイナス側は,若年層に従って増加傾向にある語形ということが できるが,特に値が大きい語形は30代で使用率の多い,かつての「新方言」と考えら

れる.

 総合すると,第3軸は,伝統的方言形から,将来の共通語形へ繋がる中間段階が特 徴であると考えられる.今後は,共通語化の進展とともに,図中矢印の方向へと変化

していく可能性がある.

11.4.結論

11.4.1.共通語化のモデル

 以上,北海道・東北地方の方言使用の変化について,GAJという過去の方言調査デ ータと,TH調査という現代のグロットグラム調査のデータを組み合わせて,多変量解 析である数量化3類によるパターン分類を試みた結果,共通語化のモデルを導き出す

ことができた.

 数量化3類を適用した結果,第1軸は「年齢差・共通語使用」,第2軸は「地域差」,

第3軸は「(かつての)新方言」という,3つの要因を抽出することができた.

 このうち第1・2解は,グロットグラムの「地理×年齢図」という形状を反映して おり,多変量解析法を利用することで,言語の使用状況からグロットグラムを再現で きたといえる.これは話者における値からの分析から導き出されたが,さらに語形に おける値の分析を組み合わせることで,この地域差と年齢差の関係は.以下のように まとめることができる.

 第1軸 年齢差 → 方言使用頻度の減少      → 量的衰退  第2軸 地域差 → 方言形のバリエーションの減少 → 質的衰退  第3軸 新方言 → 独自の変化の減少

第1軸のように,年齢が若くなるごとに方言の使用(使用者)が減少することで,

244

(17)

方言の絶対量は減少していると思われる.また,第2軸のように,地域差が失われ,

用いる表現のバリエ・一・一ションが減少することで,残存している方言であっても中身が 変質していると思われる.微細な方言差は徐々に失われ,有力な方言形に統合されて いき,それが現代の方言と呼ばれるようになっていることをあらわしている.

 そうしたバリエーションは,必ずしも老年層の世代にのみあったのではなく,第3 軸で示されたように,共通語にさらされながらも生じていた地域独自の方言形を生み 出していた.しかしさらに共通語化が進んだ若年層では,そうした新しい方言形も失 われっつある,という状況が示されたといえる.

 図1H9は,図11−5,10−6の地域差と年齢差の関係をさらに簡略化したものである.

地域差が時間ごとに失われ,徐々に共通語形に置き換わっていくという「共通語化の モデル」を示すものと考える.されに,図11−7,10−8の結果をあわせると,共通語形 に置き換わる過程において,伝統的方言形の変化も存在しており,伝統的方言形から 新方言形への交代もおきている.しかしその流れも最終的には共通語化へと収敏され

る.

         →質的衰退(バリエーション減少)

←地域差→

共通語形

図11−19・共通語化のモデル

(18)

 年齢差と地域差の存在は,単純集計からはもちろんのこと,一般的な共通語化の方 向性として,常識的に導き出すことが可能である.しかし,実際の方言調査データを 適用した多変量解析の2つの解として,年齢差と地域差が自動的に分離され,元のグ ロットグラムの2つの要素を再現できたということは,意義深いことと思われる.こ うして共通語化によって方言の衰退が量的に質的に進行していく状況を確認すること ができたといえる.

 数量化3類の結果において,第1軸である年齢差の説明力は,第2軸である地域差 の説明力よりも大きい.その理由として,地域差が若年層で失われる傾向にあること が考えられる.若年層では,わずかに青森県の旧津軽藩地域によって地域差が保たれ ているだけである.このことは,大きな方言へ収敏する現象ともいえる.

 語彙に関しては,すでに東日本対西日本という対立のみに収敏されつつあると指摘 されている(井上2002).本研究で考察してきた文法項目もまた,語彙と同じ道を進ん でいると考えられる.佐藤(2002)は,現在の共通語化の勢いはひと段落しており,「方 言安定期」にあると指摘しているが,むしろ安定期にあることが大きな方言への収敏

という側面の表れと考えることもできるだろう.

 また,地域差の中には旧藩領域の残存も確認することができた.すでに玉井(2003)

や鑓水(2003)でも指摘されたことではあるが,玉井(2003)による方言語彙の分布境界 の集計は,厳密な統計的処理ではなく,また,鑓水(2003)による境界の存在の指摘も,

最初に旧藩領域に分けてから集計しているため,その分類に対する検証はなされてい なかった.今回の数量化3類の結果は,旧藩領域の残存についての分析をより客観的 にしたといえるだろう.

246

(19)

11.4.2.今後の課題

 現代日本語におけるバリエーションの減少は急速であり,細かい地域的差異が失わ れる状況下で,言語変化の研究をおこなうには,地理的に広範囲のデータ分析が必要

となる.

 このTH調査に後続する調査として「日本海グロットグラム調査」が実施されてい るほか,いくつかの地域で現在もグロットグラム調査は進んでおり,地域が線状に限

られるというグロットグラムの問題点が改善されることが期待される.

 このときに調査項目の共通化もされることが望ましい.ある地域だけに特徴的な変 化や,新しく生まれた変化などを観察することは非常に重要なことである,しかし,

全国規模の調査であるGAJのデータが公開されていることなどを考えても,デv−・一・タの 共通化は数量的分析において意味を持つと思われる.

 また,大きな方言への収敏に関連して「東京語化」という問題がある.「東京語化」

とは,「東京の口語的・俗語的表現が全国に広がりつつある現象」(井上・鑓水2002),

つまり共通語形より東京方言を志向する現象をさす.本研究の調査結果においても,

逆接の接続助詞「けれども」において,普及しつつあった共通語形「ケレドモ」が,

東京の口語表現である「ケド」の普及によって減少している例がみられる.また,多 くの「東京新方言」と呼ばれる東京で普及した新しい非共通語形の普及も進んでいる

(11章参照).

 今後の東北地方(太平洋側)は,隣接する関東・東京の言語の影響をさらに強く受 けることが予想される.しかし,こうした関東地方との連続性について,本研究での 考察は不十分である.福島県以南のグロットグラム調査としては,井上(1985.3)が代 表的であるが,いくつかの項目については比較可能である.今後はこうした調査結果

との接続や,不足分の調査なども検討して,さらに分析していく必要がある.

 本研究は,あくまで面接調査で得られた回答を基に分析しているため,実際の共通 語と方言との併用状況についての解明はいまだ不十分といえる.たしかに若年層での

(20)

共通語化は進んでいるものの,単純に図11−17のモデルのように消滅してしまうとは いえないであろう.10代はまだ地域社会に出ておらず,学校教育やテレビ,マンガ等 の影響を強く受けており,回答場面では規範意識が強く出ている可能性もある.方言 の衰頽過程についてはより慎重に分析すべきであろう.

最後に,本研究では,地域と世代の分類という手法をグロットグラムと多変量解析と いう側面からみることに重視したために,語形の面から考察が不十分である.どのよ うな語形が影響を及ぼすことで共通語化に影響を与えるかなどの視点をもちつつ,分 析していく必要がある.

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参照

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