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How Speech Style Affects Performance of Fluency in Measuring Oral Proficiency
ATAKA Noriko
Currently, tests that measure oral proficiency are conducted according to various methods, such as carrying out a dialogue between an examinee and an examiner; a dialogue between an examinee and other examinees; or by having an examinee reply to a speaker's questions in a telephone or a computer exchange. It is said that measuring errors occur because of factors such as the test environment and the implementation method in language tests (Brown, 1999). Therefore, it is believed that these factors have some kind of influence on examinees’ performances.
This study looked into the effects of speech style on performance in measuring oral proficiency. In the investigation, face-to-face interviews were conducted with 15 non-native speakers who have the same level of Japanese proficiency. Dialogues and monologues appearing in the interviews were analyzed in terms of fluency.
As a result, there were no differences in amount of utterance and pauses between speech styles, but a significant difference was shown in the frequency per minute of fillers. The results of this research show that the speech styles affects the quantity of the filler.
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中級日本語学習者の意見文に見られる「しかし」の分析
― 「JLC1 年コース作文データベース」を用いて ―
清水由貴子・藤村知子・伊集院郁子
【キーワード】・ 意見文、「しかし」、「JLC1 年コース作文データベース」、
・ 中級日本語学習者
1. はじめに
日本語学習者の作文に現れる接続詞について、「しかし」「また」「そして」「だか ら」といった初級の早い段階で導入され、かつ定着度の高いものが上級レベルの 作文に多く使用されていると指摘されている(安藤 2002、浅井 2003)。上記の接 続詞は、中級レベルの作文においてもよく使用されるが、単に文と文をつなぐ場 合には問題なく使えるようになっていても、まとまった文章の場合には適切な位 置で効果的に使えるようになっているとは言い難い。
このような接続詞の使用には、教育の影響もあると考えられる。本研究の対象 となる東京外国語大学留学生日本語教育センターの国費学部進学留学生予備教育 プログラム(以下、1 年コース)においても、接続詞については初級レベルで意味 を導入し、産出練習を行ったきり、中級レベル以降では特に取り上げず、まとまっ た文章を書く際の接続詞の産出練習は行わないことが多い。実際には、文章読解 の際に文章構造の流れの中で確認したり、文章表現1指導の際にモデル文の中で 提示したりする程度である。これらの指導が学習者の作文における接続詞の産出 にどのように影響しているかは不明である。
1年コースの主教材『初級日本語(上・下)』および『中級日本語(上・下)』2では、「し かし」「でも」「けれども」「それなのに」「ところが」「だからといって」「しかしなが ら」「だが」の 8 つの逆接の接続詞を学習する。これらが中級終了時の意見文3に、
どの程度使用されているかを調査したところ、表 1 に示す結果を得た。
東京外国語大学
留学生日本語教育センター論集 42:41~56,2016
1・ 1 年コースでは、文章表現カリキュラムにおいて、作文指導を行っている。
2・『初級日本語(上・下)』は全 28 課、『中級日本語(上・下)』は全 21 課である。
3・本研究で分析の対象とした中級学習者の作文は、意見文 6 種(全 295 編)、総文数 5,203 で ある。詳細は本稿の 3 節で説明する。
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表 1:中級終了時の意見文に使用された逆接の接続詞4
表 1 より、中級レベルの学習者の意見文に出てくる逆接の接続詞は、初級で学 習する「しかし」が 8 つの接続詞の合計の 80 %程度を占め、次いで中級後半に学 習する「だからといって」「だが」が5~7%程度、初級で学習する話し言葉の「でも」
も 5 %程度使用されていることが分かる。
そこで本研究では、中級レベルの日本語学習者の意見文を対象とし、逆接の接 続表現のうち圧倒的な頻度で現れる「しかし」に焦点を当て、中級レベルでの「し かし」の産出傾向を把握するとともに、文書表現指導にどのように還元するかに ついて述べる。
2. 先行研究
日本語教育の分野において、接続詞を含む接続表現の使用頻度や分布に関する 研究が多く行われてきた。以下では、接続表現のうち逆接の接続詞「しかし」を 取り上げている先行研究について概観する。
仁科(1998)は、論の展開を示す際、文の前後関係を表す上で代表的かつ出現 頻度の高い逆接の接続詞「しかし」と逆接の接続助詞「が」に焦点を当て、日本語 母語話者による工学系論文における使用位置および具体例を分析し、特徴を示し ている。しかし、日本語学習の作文を対象にした調査は行われていないため、学 習者の作文における「しかし」の具体的な問題点は挙げられていない。
砂川(2015)は、日本語学習者の縦断的な作文コーパス5を用いて、逆接の接続 詞「しかし」と「でも」の接続範囲と文章全体の構成の変化およびそれらの関係に
逆接の接続詞 学習課
しかし 209 (77.1%) 初級L5 だからといって 20 (7.4%) 中級L15
だが 14 (5.2%) 中級L20
でも 13 (4.8%) 初級L12
ところが 10 (3.7%) 中級L 6
けれども 3 (1.1%) 初級L26
しかしながら 2 (0.7%) 中級L19 それなのに 0 (0.0%) 初級L28
合計 271 (100.0%)
出現数
作文テーマ 執筆者数 国籍 作文数 文数 「しかし」の文数
6種 295 56 295 5,203(17.60) 214(0.73)
*( )の数値は1作文当たりの平均値である。
「はじめ」 「なか」 「おわり」 合計
83(38.8%) 119(55.6%) 12(5.6%) 214(100.0%)
認識 評価
50(23.4%) 26(12.1%) 24(11.2%) 14(6.5%) 9(4.2%) 91(42.5%) 214(100.0%)
思考動詞 立場表明 疑問文 叙述のモダリティ
事実文 合計
主張 反論 譲歩 展開 その他 誤用 合計
63(29.4%) 107(50.0%) 8(3.7%) 17(7.9%) 11(5.2%) 8(3.7%) 214(100.0%)
4・ 分析データから当該の接続詞を文字列検索で抽出した。この数値に「しカし」等の誤表記 は含まない。
5・ 台湾東呉大学研究グループが 2011 年 5 月に公開した縦断的な学習者コーパス「LARP・at・
SCU 第二版」を使用している。
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表 1:中級終了時の意見文に使用された逆接の接続詞4
表 1 より、中級レベルの学習者の意見文に出てくる逆接の接続詞は、初級で学 習する「しかし」が 8 つの接続詞の合計の 80 %程度を占め、次いで中級後半に学 習する「だからといって」「だが」が5~7%程度、初級で学習する話し言葉の「でも」
も 5 %程度使用されていることが分かる。
そこで本研究では、中級レベルの日本語学習者の意見文を対象とし、逆接の接 続表現のうち圧倒的な頻度で現れる「しかし」に焦点を当て、中級レベルでの「し かし」の産出傾向を把握するとともに、文書表現指導にどのように還元するかに ついて述べる。
2. 先行研究
日本語教育の分野において、接続詞を含む接続表現の使用頻度や分布に関する 研究が多く行われてきた。以下では、接続表現のうち逆接の接続詞「しかし」を 取り上げている先行研究について概観する。
仁科(1998)は、論の展開を示す際、文の前後関係を表す上で代表的かつ出現 頻度の高い逆接の接続詞「しかし」と逆接の接続助詞「が」に焦点を当て、日本語 母語話者による工学系論文における使用位置および具体例を分析し、特徴を示し ている。しかし、日本語学習の作文を対象にした調査は行われていないため、学 習者の作文における「しかし」の具体的な問題点は挙げられていない。
砂川(2015)は、日本語学習者の縦断的な作文コーパス5を用いて、逆接の接続 詞「しかし」と「でも」の接続範囲と文章全体の構成の変化およびそれらの関係に
逆接の接続詞 学習課
しかし 209 (77.1%) 初級L5 だからといって 20 (7.4%) 中級L15
だが 14 (5.2%) 中級L20
でも 13 (4.8%) 初級L12
ところが 10 (3.7%) 中級L 6
けれども 3 (1.1%) 初級L26
しかしながら 2 (0.7%) 中級L19 それなのに 0 (0.0%) 初級L28
合計 271 (100.0%)
出現数
作文テーマ 執筆者数 国籍 作文数 文数 「しかし」の文数
6種 295 56 295 5,203(17.60) 214(0.73)
*( )の数値は1作文当たりの平均値である。
「はじめ」 「なか」 「おわり」 合計
83(38.8%) 119(55.6%) 12(5.6%) 214(100.0%)
認識 評価
50(23.4%) 26(12.1%) 24(11.2%) 14(6.5%) 9(4.2%) 91(42.5%) 214(100.0%)
思考動詞 立場表明 疑問文 叙述のモダリティ
事実文 合計
主張 反論 譲歩 展開 その他 誤用 合計
63(29.4%) 107(50.0%) 8(3.7%) 17(7.9%) 11(5.2%) 8(3.7%) 214(100.0%)
4・ 分析データから当該の接続詞を文字列検索で抽出した。この数値に「しカし」等の誤表記 は含まない。
5・ 台湾東呉大学研究グループが 2011 年 5 月に公開した縦断的な学習者コーパス「LARP・at・
SCU 第二版」を使用している。
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ついて考察している。その結果、日本語の習得が進むにつれ、接続詞の接続範囲 の拡大が見られることと、それによって、マクロな観点からの談話構成を可能に し、より高度なレトリックを駆使して豊かな表現が産出できるようになることを 明らかにした。この研究によって、談話構成の点で、学習段階が上がるとともに
「しかし」が効果的に使用されるようになることが明らかになったが、砂川(2015)
が分析対象としたデータには意見文と物語文というタイプの異なるものが含まれ ており、意見文に限った「しかし」の使用実態は明らかにされていない。
工藤・伊集院(2013)および伊集院・工藤(2014)は、意見文における譲歩の現 れ方を調査し、その特徴を明らかにしている。前者は超級日本語学習者の作文を 対象に、後者は日本語母語話者の作文を対象に分析しているが、いずれの研究で も譲歩の箇所で「確かに~。しかし~。」というコロケーションが多数見られると いう指摘がなされている。これらの研究により、意見文における「しかし」の使 用実態の一端が示されたが、これらは「譲歩構造」を分析したものであり、「しかし」
の使用実態の全体像は明らかにされていない。
浜田(1995)は、談話における「しかし」の機能について分析している。その結 果、「PしかしQ」は「ひとつのことがらについてPという側面が存在すると同時に、
それと異なるカテゴリーに属する Q という面が存在するということを示し、結 果として『Q にも注目せよ』ということを表示する性質を持つ(浜田 1995:589)」と し、「Q にも注目せよ」の部分が談話において反論として使われていると指摘して いる。
本稿では中級レベルの日本語学習者の意見文を分析対象とし、逆接の接続詞「し かし」の使用実態を包括的に分析する。具体的には、①「しかし」の出現位置、②「し かし」の文の文末の特徴、③「しかし」の出現位置と機能との関係、について明ら かにする。
3. 分析方法
分析データとして、東京外国語大学留学生日本語教育センター(2013)「JLC1 年コース作文データベース- 2008 年度~ 2013 年度データ-」6を用いた。本デー タベースは、1 年コースに在籍している学習者が教育課程内で執筆した作文を
6・ 本データベースは東京外国語大学留学生日本語教育センターの教員にのみ公開されてい るものである。詳細は伊集院・大津(2012)を参照のこと。
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データ化したものである。本研究では、このうち、中級終了時に文章表現の試験 として執筆された計 6 つのテーマの意見文を用いる。これらの意見文は、ある社 会的問題について、賛成、反対のいずれかの立場に立って論じるタイプのもので、
1 作文 800 字程度という指示のもとに 90 分以内で執筆されたものである。執筆に 際して、辞書等はいっさい参照されていない。
分析は、本論文の執筆者 3 名で 2 テーマずつを担当し、以下の手順で進めた。
(1)データベースから分析対象のテキストデータを取り出し、1 文 1 行の Excel ファイルに変換した。1 文を認定する際には意見文の執筆者が付した「。」を手掛 かりとしたが、引用文中に出現する「。」や、明らかに「、」の誤用と考えられる「。」
は文末とは見なさなかった。逆に、「。」が付されていない場合でも明らかに文末 である場合と意見文のタイトルについても 1 文と認定した。
(2)「しかし」が含まれる文を抽出し、①出現する段落、②「しかし」が係る文末表 現、③「しかし」の機能についてコーディングを行った7。②、③のコーディング の方法については初めから基準を設けず、それぞれの担当データでどのような分 類が可能かを検討した。
(3)(2)の分析結果を持ち寄り、②文末表現および③「しかし」の機能に関する分 類基準の精査を行い、次節で示す定義を策定して分類の精緻化を行った。
以上の分析で用いたデータの概要は表 2 のとおりである。
表 2:分析データの概要
4. 分析結果
4. 1 「しかし」の出現位置
はじめに、意見文中のどの位置に「しかし」を用いた文が出現しているかを検 討するため、段落を手掛かりに出現位置の特定を行った。段落は、原稿用紙の左 に設けられている空欄(通常は 1 マス)を手掛かりに認定した。1 年コースの学生
逆接の接続詞 学習課
しかし 209 (77.1%) 初級L5 だからといって 20 (7.4%) 中級L15
だが 14 (5.2%) 中級L20
でも 13 (4.8%) 初級L12
ところが 10 (3.7%) 中級L 6
けれども 3 (1.1%) 初級L26
しかしながら 2 (0.7%) 中級L19 それなのに 0 (0.0%) 初級L28
合計 271 (100.0%)
出現数
作文テーマ 執筆者数 国籍 作文数 文数 「しかし」の文数
6種 295 56 295 5,203(17.60) 214(0.73)
*( )の数値は1作文当たりの平均値である。
「はじめ」 「なか」 「おわり」 合計
83(38.8%) 119(55.6%) 12(5.6%) 214(100.0%)
認識 評価
50(23.4%) 26(12.1%) 24(11.2%) 14(6.5%) 9(4.2%) 91(42.5%) 214(100.0%)
思考動詞 立場表明 疑問文 叙述のモダリティ
事実文 合計
主張 反論 譲歩 展開 その他 誤用 合計
63(29.4%) 107(50.0%) 8(3.7%) 17(7.9%) 11(5.2%) 8(3.7%) 214(100.0%)
7・ 出現段落、文末表現、機能のコーディングを行う際に、伊集院・髙橋(2012)、伊集院・
盧(2015)の分析方法を参照した。
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データ化したものである。本研究では、このうち、中級終了時に文章表現の試験 として執筆された計 6 つのテーマの意見文を用いる。これらの意見文は、ある社 会的問題について、賛成、反対のいずれかの立場に立って論じるタイプのもので、
1 作文 800 字程度という指示のもとに 90 分以内で執筆されたものである。執筆に 際して、辞書等はいっさい参照されていない。
分析は、本論文の執筆者 3 名で 2 テーマずつを担当し、以下の手順で進めた。
(1)データベースから分析対象のテキストデータを取り出し、1 文 1 行の Excel ファイルに変換した。1 文を認定する際には意見文の執筆者が付した「。」を手掛 かりとしたが、引用文中に出現する「。」や、明らかに「、」の誤用と考えられる「。」
は文末とは見なさなかった。逆に、「。」が付されていない場合でも明らかに文末 である場合と意見文のタイトルについても 1 文と認定した。
(2)「しかし」が含まれる文を抽出し、①出現する段落、②「しかし」が係る文末表 現、③「しかし」の機能についてコーディングを行った7。②、③のコーディング の方法については初めから基準を設けず、それぞれの担当データでどのような分 類が可能かを検討した。
(3)(2)の分析結果を持ち寄り、②文末表現および③「しかし」の機能に関する分 類基準の精査を行い、次節で示す定義を策定して分類の精緻化を行った。
以上の分析で用いたデータの概要は表 2 のとおりである。
表 2:分析データの概要
4. 分析結果
4. 1 「しかし」の出現位置
はじめに、意見文中のどの位置に「しかし」を用いた文が出現しているかを検 討するため、段落を手掛かりに出現位置の特定を行った。段落は、原稿用紙の左 に設けられている空欄(通常は 1 マス)を手掛かりに認定した。1 年コースの学生
逆接の接続詞 学習課
しかし 209 (77.1%) 初級L5 だからといって 20 (7.4%) 中級L15
だが 14 (5.2%) 中級L20
でも 13 (4.8%) 初級L12
ところが 10 (3.7%) 中級L 6
けれども 3 (1.1%) 初級L26
しかしながら 2 (0.7%) 中級L19 それなのに 0 (0.0%) 初級L28
合計 271 (100.0%)
出現数
作文テーマ 執筆者数 国籍 作文数 文数 「しかし」の文数
6種 295 56 295 5,203(17.60) 214(0.73)
*( )の数値は1作文当たりの平均値である。
「はじめ」 「なか」 「おわり」 合計
83(38.8%) 119(55.6%) 12(5.6%) 214(100.0%)
認識 評価
50(23.4%) 26(12.1%) 24(11.2%) 14(6.5%) 9(4.2%) 91(42.5%) 214(100.0%)
思考動詞 立場表明 疑問文 叙述のモダリティ
事実文 合計
主張 反論 譲歩 展開 その他 誤用 合計
63(29.4%) 107(50.0%) 8(3.7%) 17(7.9%) 11(5.2%) 8(3.7%) 214(100.0%)
7・ 出現段落、文末表現、機能のコーディングを行う際に、伊集院・髙橋(2012)、伊集院・
盧(2015)の分析方法を参照した。
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は、中級終了時の文章表現の試験で作文を執筆するまでに 9 ~ 10 回にわたって 原稿用紙に執筆する学習を経ている。また、全体の段落構成を考えた上で書くこ とを指導されてきているため、段落を設けずに書かれているものは見当たらな かった。
「しかし」8の出現していた段落を、「はじめ」(第 1 段落)、「おわり」(最終段落)、
「なか」(その他の段落)に分けて表 3 に示す。最も段落数の多い意見文は 6 段落構 成のものであった。6 段落構成の作文の場合、「なか」は第 2 段落から第 5 段落ま でを指す。
分析の結果、最終段落で「しかし」が出現する割合は全体の 6 %に満たず、い わゆる「逆接」の接続詞は結論部分では用いられにくいことが分かる。それぞれ の段落で出現した「しかし」がどのような機能を果たしているかについては後述 する。
表 3:「しかし」の出現段落
4. 2 「しかし」が係る文末表現
続けて、「しかし」が係る文末表現の分析を行った。全ての文末形式を拾い出し た結果、出現する形式は表 4 に示す 5 つのカテゴリーに分類された。
表 4:「しかし」が係る文末表現
それぞれのカテゴリーの詳細は以下のとおりである。例文は全て、分析データ から取ったものであり、誤用も含めてそのまま提示する。
①・「思考動詞」:「思う」「考える」「感じる」「言える」「見られる」および、これらの 動詞の活用形である「思われる」、「考えている」等
逆接の接続詞 学習課
しかし 209 (77.1%) 初級L5 だからといって 20 (7.4%) 中級L15
だが 14 (5.2%) 中級L20
でも 13 (4.8%) 初級L12
ところが 10 (3.7%) 中級L 6
けれども 3 (1.1%) 初級L26
しかしながら 2 (0.7%) 中級L19 それなのに 0 (0.0%) 初級L28
合計 271 (100.0%)
出現数
作文テーマ 執筆者数 国籍 作文数 文数 「しかし」の文数
6種 295 56 295 5,203(17.60) 214(0.73)
*( )の数値は1作文当たりの平均値である。
「はじめ」 「なか」 「おわり」 合計
83(38.8%) 119(55.6%) 12(5.6%) 214(100.0%)
認識 評価
50(23.4%) 26(12.1%) 24(11.2%) 14(6.5%) 9(4.2%) 91(42.5%) 214(100.0%)
思考動詞 立場表明 疑問文 叙述のモダリティ
事実文 合計
主張 反論 譲歩 展開 その他 誤用 合計
63(29.4%) 107(50.0%) 8(3.7%) 17(7.9%) 11(5.2%) 8(3.7%) 214(100.0%)
逆接の接続詞 学習課
しかし 209 (77.1%) 初級L5 だからといって 20 (7.4%) 中級L15
だが 14 (5.2%) 中級L20
でも 13 (4.8%) 初級L12
ところが 10 (3.7%) 中級L 6
けれども 3 (1.1%) 初級L26
しかしながら 2 (0.7%) 中級L19 それなのに 0 (0.0%) 初級L28
合計 271 (100.0%)
出現数
作文テーマ 執筆者数 国籍 作文数 文数 「しかし」の文数
6種 295 56 295 5,203(17.60) 214(0.73)
*( )の数値は1作文当たりの平均値である。
「はじめ」 「なか」 「おわり」 合計
83(38.8%) 119(55.6%) 12(5.6%) 214(100.0%)
認識 評価
50(23.4%) 26(12.1%) 24(11.2%) 14(6.5%) 9(4.2%) 91(42.5%) 214(100.0%)
思考動詞 立場表明 疑問文 叙述のモダリティ
事実文 合計
主張 反論 譲歩 展開 その他 誤用 合計
63(29.4%) 107(50.0%) 8(3.7%) 17(7.9%) 11(5.2%) 8(3.7%) 214(100.0%)
8・「しかしながら」2 例、および「しカし」3 例を含む。
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例:・しかし、それはただ、学生の間違った考え方に過ぎないと思う。
例:・しかし、私はテレビや雑誌・新聞でたばこの広告をするべきではないと 考えている。
②・「立場表明」:「反対する」「賛成しない」「疑問がある」等、執筆者の立場を表明 する言語表現
例:・しかし、私はこの意見に反対である。
例:・しかし、この考え方には疑問がある。
③・「疑問文」:「のではないか」「のだろうか」等も含め、末尾に疑問の「か」を伴う もの。「のではないか」は情報要求機能を本来的な機能としながらも、情報提供 機能への機能の移行が生じているもの」(宮崎・安達他 2002:193-197)であるが、
「疑問のモダリティ」とするか「認識のモダリティ」とするかの判断が難しいた め、文末表現の分類においては一律に「疑問」に入れることとした。
例:・しかし、たばこの広告はそれと関係があるか。
例:・しかし、そもそもたばこ税が設けられているのは、政府は人々にたばこ を遠慮するような呼びかけからに他ならないのではないだろうか。
④・「叙述のモダリティ」:情報を述べ伝えることに関わる「叙述のモダリティ」は、
命題内容に対する話し手の認識的な捉え方を表す「認識のモダリティ」と命題 内容に対する話し手の評価的な捉え方を表す「評価のモダリティ」に二分され る。このうち、以下に示す有標形式のみ分類を行った。
④・-1「認識のモダリティ」:推量の「だろう」、可能性・必然性を表す「にちがいない」
「はずだ」「かもしれない」、証拠性を表す「らしい」等
例:・しかし、だからといって、子供の思い出と、「自己探し」の余裕を奪って もいいとは言えないであろう。
例:・しかし、男性の場合、うるさいと思っているはずである。
④・-2「評価のモダリティ」:ある事態が必要もしくは妥当という評価を表す「なけ ればならない」「べきだ」「ざるを得ない」、ある事態が許容されないという評価 を表す「てはいけない」等
例:・しかし、たばこによる肺がんや心臓病といった病気になる危険などにつ いて忘れてはならない。
例:・しかし、私の意見では、女性専用者を作るべきだ。
⑤・「事実文」:上記の①~④以外の言語表現
例:・しかし、これは広告を禁止することでなくなる問題ではない。
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例:・しかし、それはただ、学生の間違った考え方に過ぎないと思う。
例:・しかし、私はテレビや雑誌・新聞でたばこの広告をするべきではないと 考えている。
②・「立場表明」:「反対する」「賛成しない」「疑問がある」等、執筆者の立場を表明 する言語表現
例:・しかし、私はこの意見に反対である。
例:・しかし、この考え方には疑問がある。
③・「疑問文」:「のではないか」「のだろうか」等も含め、末尾に疑問の「か」を伴う もの。「のではないか」は情報要求機能を本来的な機能としながらも、情報提供 機能への機能の移行が生じているもの」(宮崎・安達他 2002:193-197)であるが、
「疑問のモダリティ」とするか「認識のモダリティ」とするかの判断が難しいた め、文末表現の分類においては一律に「疑問」に入れることとした。
例:・しかし、たばこの広告はそれと関係があるか。
例:・しかし、そもそもたばこ税が設けられているのは、政府は人々にたばこ を遠慮するような呼びかけからに他ならないのではないだろうか。
④・「叙述のモダリティ」:情報を述べ伝えることに関わる「叙述のモダリティ」は、
命題内容に対する話し手の認識的な捉え方を表す「認識のモダリティ」と命題 内容に対する話し手の評価的な捉え方を表す「評価のモダリティ」に二分され る。このうち、以下に示す有標形式のみ分類を行った。
④・-1「認識のモダリティ」:推量の「だろう」、可能性・必然性を表す「にちがいない」
「はずだ」「かもしれない」、証拠性を表す「らしい」等
例:・しかし、だからといって、子供の思い出と、「自己探し」の余裕を奪って もいいとは言えないであろう。
例:・しかし、男性の場合、うるさいと思っているはずである。
④・-2「評価のモダリティ」:ある事態が必要もしくは妥当という評価を表す「なけ ればならない」「べきだ」「ざるを得ない」、ある事態が許容されないという評価 を表す「てはいけない」等
例:・しかし、たばこによる肺がんや心臓病といった病気になる危険などにつ いて忘れてはならない。
例:・しかし、私の意見では、女性専用者を作るべきだ。
⑤・「事実文」:上記の①~④以外の言語表現
例:・しかし、これは広告を禁止することでなくなる問題ではない。
228041_外大_留日センター論集42号_4校.indb 46 2016/03/16 0:36:59
- 47 -
例:・しかし、インターネットやテレビではよく使う単語なので、実際に外国 人が使う言葉を学べる利点がある。
なお、データの中には、複数の文末表現を複合形式で用いているものも見られ たが、その場合は両者をコーディングするのではなく、もっとも外側に位置する ものを基準に分類した。すなわち、以下の例では、「(た)ほうがいい」という「評 価のモダリティ」と「と思う」という思考動詞の両者が同時に用いられているが、
「しかし」が直接係る文末表現としては「と思う」のみを対象とした。
例:・しかし、私はそれでも外国語を勉強する時には、学校へ行って習ったほ うがいいと思う。
以上の基準で分析した結果(表 4)から、「しかし」で始まる文は「思考動詞」「立 場表明」「疑問文」「叙述のモダリティ」のいずれかと共起しているものが過半数
(57 %)を占め、執筆者の主観的な態度を表明する際に「しかし」が用いられやす いことが分かる。一方、残りの 43 %を占める「事実文」についても、上に示した 例の他、「~の数は少ない」「ほんの一部にすぎない」「~が多い」「~は良くない」等、
事実文とはいえ評価的表現を含むものも散見され、本データの分析結果からは、
意見文における「しかし」は執筆者の判断を表明する指標として機能していると 考えられる。なお、「立場表明」のカテゴリーは、「しかし+反対だ(「反対する」/「賛 成しない」/「疑問がある」等)」というパターンが 26 例中 25 例を占め、「しかし+
同感だ」は 1 例に過ぎない。このパターンが意見文の立場表明の典型的なパター ンであるのか、1 年コースでの学習の影響であるのかは、本分析からは明らかに できない。今後の課題としたい。
続いて「しかし」の文が意見文全体でどのような機能を果たしているのか、次 節で分析する。
4. 3 意見文における「しかし」の機能
「しかし」で始まる文が意見文においてどのような機能を果たしているか、文 章全体の構造を解釈しながらコーディングを行った結果、「しかし」の文の機能は、
大きく「主張」提示、「反論」提示、「譲歩」提示、「展開」提示、「その他」の 5 つに分け られた。また、わずかながら、「しかし」ではなく別の接続表現がふさわしいと言 える「誤用」も見つかった。
これらの基準で分類した結果は、表 5 のとおりである。
228041_外大_留日センター論集42号_4校.indb 47 2016/03/16 0:36:59
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表 5:意見文における「しかし」の機能
それぞれの機能の例と特徴を以下に詳述する。
①・「主張」:課題文(問い)に対する意見文の執筆者の回答や意見の提示
例:・しかし、私はテレビや雑誌・新聞でたばこの広告をするべきではないと 考えている。
例:・しかし、私はそれらの国のやり方法に賛成しない。
・ これらの他に、次のような疑問文形式で読み手に「反語」解釈を求めることに より、主張として機能している例も見られた。
例:・しかし、英才教育が必ずしも子供によいと言えるのだろうか。
②・「反論」:以下③の「譲歩」をくつがえすような事実、見解の提示
例:・最後に、確かに、早い時期から一つの分野に励めば、いち早く他人より 優れている能力が培えるかもしれない。しかし、だからといって、子供 の思い出と、「自己探し」の余裕を奪ってもいいとは言えないであろう。
例:・だから、広告がなくてもたばこがまだたくさん売られる。しかし、国民 の健康にとってたくさん売られることは良くない。
・ このような「反論」の中には、明らかに「対比」の構造を有している例も 25 例(「反 論」の 23 %)見られた。下の例はそれぞれ、「一般の日本人」対「ヨーロッパ」、「一 般の場合」対「日本の場合」という対比的構造をなしている。
例:・一般の日本人は英語を試験のためにのみ勉強しているらしい。しかし ヨーロッパではそれは違う、
例:・一般的に、外国語を学ぶことには基本から複雑までという順番があると されている。しかし、日本の場合はどうかというと、反対ではないかと 思う。
③・「譲歩」:「主張」と対立する立場への理解や対立する立場に有利な情報の提示お よび「主張」の問題点や限界、「主張」に不利な情報の提示
例:・以上の三つの理由から、子どものときから専門的に教育され、厳しい練 習が時々神理学的にあまり良くないものといっても、人の教育に重要で あると思う。しかし、このテーマは子どもがある大人に大切なテーマで あり、私の考え方に対して、色々な異なる考え方があるのであろう。
逆接の接続詞 学習課
しかし 209 (77.1%) 初級L5 だからといって 20 (7.4%) 中級L15
だが 14 (5.2%) 中級L20
でも 13 (4.8%) 初級L12
ところが 10 (3.7%) 中級L 6
けれども 3 (1.1%) 初級L26
しかしながら 2 (0.7%) 中級L19 それなのに 0 (0.0%) 初級L28
合計 271 (100.0%)
出現数
作文テーマ 執筆者数 国籍 作文数 文数 「しかし」の文数
6種 295 56 295 5,203(17.60) 214(0.73)
*( )の数値は1作文当たりの平均値である。
「はじめ」 「なか」 「おわり」 合計
83(38.8%) 119(55.6%) 12(5.6%) 214(100.0%)
認識 評価
50(23.4%) 26(12.1%) 24(11.2%) 14(6.5%) 9(4.2%) 91(42.5%) 214(100.0%)
思考動詞 立場表明 疑問文 叙述のモダリティ
事実文 合計
主張 反論 譲歩 展開 その他 誤用 合計
63(29.4%) 107(50.0%) 8(3.7%) 17(7.9%) 11(5.2%) 8(3.7%) 214(100.0%)
228041_外大_留日センター論集42号_4校.indb 48 2016/03/16 0:36:59
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表 5:意見文における「しかし」の機能
それぞれの機能の例と特徴を以下に詳述する。
①・「主張」:課題文(問い)に対する意見文の執筆者の回答や意見の提示
例:・しかし、私はテレビや雑誌・新聞でたばこの広告をするべきではないと 考えている。
例:・しかし、私はそれらの国のやり方法に賛成しない。
・ これらの他に、次のような疑問文形式で読み手に「反語」解釈を求めることに より、主張として機能している例も見られた。
例:・しかし、英才教育が必ずしも子供によいと言えるのだろうか。
②・「反論」:以下③の「譲歩」をくつがえすような事実、見解の提示
例:・最後に、確かに、早い時期から一つの分野に励めば、いち早く他人より 優れている能力が培えるかもしれない。しかし、だからといって、子供 の思い出と、「自己探し」の余裕を奪ってもいいとは言えないであろう。
例:・だから、広告がなくてもたばこがまだたくさん売られる。しかし、国民 の健康にとってたくさん売られることは良くない。
・ このような「反論」の中には、明らかに「対比」の構造を有している例も 25 例(「反 論」の 23 %)見られた。下の例はそれぞれ、「一般の日本人」対「ヨーロッパ」、「一 般の場合」対「日本の場合」という対比的構造をなしている。
例:・一般の日本人は英語を試験のためにのみ勉強しているらしい。しかし ヨーロッパではそれは違う、
例:・一般的に、外国語を学ぶことには基本から複雑までという順番があると されている。しかし、日本の場合はどうかというと、反対ではないかと 思う。
③・「譲歩」:「主張」と対立する立場への理解や対立する立場に有利な情報の提示お よび「主張」の問題点や限界、「主張」に不利な情報の提示
例:・以上の三つの理由から、子どものときから専門的に教育され、厳しい練 習が時々神理学的にあまり良くないものといっても、人の教育に重要で あると思う。しかし、このテーマは子どもがある大人に大切なテーマで あり、私の考え方に対して、色々な異なる考え方があるのであろう。
逆接の接続詞 学習課
しかし 209 (77.1%) 初級L5 だからといって 20 (7.4%) 中級L15
だが 14 (5.2%) 中級L20
でも 13 (4.8%) 初級L12
ところが 10 (3.7%) 中級L 6
けれども 3 (1.1%) 初級L26
しかしながら 2 (0.7%) 中級L19 それなのに 0 (0.0%) 初級L28
合計 271 (100.0%)
出現数
作文テーマ 執筆者数 国籍 作文数 文数 「しかし」の文数
6種 295 56 295 5,203(17.60) 214(0.73)
*( )の数値は1作文当たりの平均値である。
「はじめ」 「なか」 「おわり」 合計
83(38.8%) 119(55.6%) 12(5.6%) 214(100.0%)
認識 評価
50(23.4%) 26(12.1%) 24(11.2%) 14(6.5%) 9(4.2%) 91(42.5%) 214(100.0%)
思考動詞 立場表明 疑問文 叙述のモダリティ
事実文 合計
主張 反論 譲歩 展開 その他 誤用 合計
63(29.4%) 107(50.0%) 8(3.7%) 17(7.9%) 11(5.2%) 8(3.7%) 214(100.0%)
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・ この例は、意見文の末尾に出現した例である。意見文の締めくくりに「譲歩」
が出現すると、最後に自身の「主張」が弱まってしまうため、効果的とは言え ないだろう(工藤・伊集院 2013、伊集院・工藤 2014)。一方で、意見文の締め くくりで、単にこれまでの「主張」を繰り返すのではなく、「主張」に条件や制約 を設ける形であらたな提案を行う次のような例も見られた。
例:・機械のおかげで、人間の社会が向上していると考えられている。そのた め、生活に便利な機械はできるだけ使うべきだと思われるのである。(中 略)しかし、生活に便利な機械を利用するべきだが、乱用しないように 注意しなければならない。
・ このような「譲歩」は、主張が極論になることを避けるための提案として位置 付けられるものであり、「ある社会的問題について、賛成、反対のいずれかの 立場に立って論じる」という課題の性質に起因するものと考えられる。
④・「展開」:ある状況から、新たな状況への展開の提示
例:・昔、人々は農業するだけ、生活がつづけられた。みんなは幸せ生活があっ た。しかし、科学技術はだんだん進歩して、人々が少しずつ慣れてきた。
・ これには、課題文に用いられていた「しかし」(例:過去の状況+「しかし」+状 況の変化)をそのまま引用しているものも含まれる。
⑤・「その他」:上記①~④のいずれにも分類できなかったもの
・ 主に、誤用とは言えないが文意が把握しにくく、判定が困難なものが含まれる。
⑥・「誤用」:他の接続表現の方が適切だと判断されるもの
・ 本来は「つまり」等の言い換え表現を用いるべき例が 2 例見られたほか、「また」
「では」「もちろん」「よって」が適当だと判断される「しかし」が見られた。
5. 考察
本節では、「しかし」の出現位置における特徴的な機能について述べる。表 6 は、
「しかし」の出現位置と機能・文末表現をまとめたものである。
228041_外大_留日センター論集42号_4校.indb 49 2016/03/16 0:37:00
- 50 -
表 6:「しかし」の出現位置と機能・文末表現のまとめ
「はじめ」「なか」「おわり」の三つの区分の中では、「しかし」は「なか」で多く現 れるが、「はじめ(第 1 段落)」と「なか(第 1 段落と最終段落以外全て)」の段落数の 違いを考慮すると、「はじめ」に現れる割合が高いと言える。
「はじめ」で出現する「しかし」の機能は「主張」である。このような早い段階で「主 張」が「しかし」を伴って明示されるのには、文章表現カリキュラムで学ぶ教材の 影響が大きいと考えられる。
この教材は横田・伊集院(2010)『大学で必要とされる日本語文章力の習得をめ ざす初級・中級文章表現』である。初級指導内容については横田・伊集院(2009)、
中級の指導内容については伊集院・横田(2010)を参照されたい。
本研究の対象となった意見文9は、中級段階の「7 意見の述べ方」「8 意見文 の構成」を学習10したのちに書かれたものである。前者では意見を述べるときの
9・『大学で必要とされる日本語文章力の習得をめざす初級・中級文章表現』の初版は 2010 年であるが、前年度の 2009 年度よりその試用版が授業で使用されているため、本研究の 対象となった 6 課題の作文は、同一のテキストを用いた指導後に書かれた作文と見なし
10・ 文章表現の指導は、通常授業の中に組み込まれている。教室授業における文章表現の教てよい。
材を用いた指導時間は各課 20 分から 30 分程度である。その内容は、モデル文を読みな がら、言語表現を指導し、書くべき内容や文章構成について学習者とともに考え、短い 作文を書いてその理解を確かめるといったことである。理解を確かめるための課題作文 は、宿題となることが多い。課題作文の提出後は、授業時間外に教師が一人ひとりの学 生にフィードバックを行っている。
認識 評価
主張 30 20 7 1 2 - 60 ( 72.3% )
展開 - - - - - 10 10 ( 12.0% )
反論 - 1 1 - 1 2 5 ( 6.0% )
その他 - - 1 - - 4 5 ( 6.0% )
誤用 - 1 - - - 1 2 ( 2.4% )
譲歩 - - - - - 1 1 ( 1.2% )
合計 30 22 9 1 3 18 83 ( 100.0% )
反論 16 3 11 9 2 54 95 ( 79.8% )
展開 - - - - - 7 7 ( 5.9% )
その他 - - 1 1 - 4 6 ( 5.0% )
誤用 1 - 1 - 1 3 6 ( 5.0% )
主張 2 - 1 - - - 3 ( 2.5% )
譲歩 - - - 1 - 1 2 ( 1.7% )
合計 19 3 14 11 3 69 119 ( 100.0% )
反論 1 1 - 1 1 3 7 ( 58.3% )
譲歩 - - 1 2 1 1 5 ( 41.7% )
合計 1 1 1 3 2 4 12 ( 100.0% )
合計 思考
動詞 立場 表明
疑問 文
モダリティ 事実 文
はじめ
(全83例)
なか
(全119例)
おわり
(全12例)
文末表現
出現位置 機能
事 実 ( 一 般 的 な 意 見 )
↓
し か し 、 自 分 の 意 見
↓ 理 由 の 列 挙 ま ず 、 … 。 ま た 、 … 。 さ ら に 、 … 。
↓
以 上 の 理 由 か ら 、 自 分 の 意 見 の 再 提 示 本 文 文 型 例 文
主 張 0 1
反 論 18 6
譲 歩 0 0
展 開 2 2
そ の 他 4 0
計 24 9
228041_外大_留日センター論集42号_4校.indb 50 2016/03/16 0:37:00
- 50 -
表 6:「しかし」の出現位置と機能・文末表現のまとめ
「はじめ」「なか」「おわり」の三つの区分の中では、「しかし」は「なか」で多く現 れるが、「はじめ(第 1 段落)」と「なか(第 1 段落と最終段落以外全て)」の段落数の 違いを考慮すると、「はじめ」に現れる割合が高いと言える。
「はじめ」で出現する「しかし」の機能は「主張」である。このような早い段階で「主 張」が「しかし」を伴って明示されるのには、文章表現カリキュラムで学ぶ教材の 影響が大きいと考えられる。
この教材は横田・伊集院(2010)『大学で必要とされる日本語文章力の習得をめ ざす初級・中級文章表現』である。初級指導内容については横田・伊集院(2009)、
中級の指導内容については伊集院・横田(2010)を参照されたい。
本研究の対象となった意見文9は、中級段階の「7 意見の述べ方」「8 意見文 の構成」を学習10したのちに書かれたものである。前者では意見を述べるときの
9・『大学で必要とされる日本語文章力の習得をめざす初級・中級文章表現』の初版は 2010 年であるが、前年度の 2009 年度よりその試用版が授業で使用されているため、本研究の 対象となった 6 課題の作文は、同一のテキストを用いた指導後に書かれた作文と見なし
10・ 文章表現の指導は、通常授業の中に組み込まれている。教室授業における文章表現の教てよい。
材を用いた指導時間は各課 20 分から 30 分程度である。その内容は、モデル文を読みな がら、言語表現を指導し、書くべき内容や文章構成について学習者とともに考え、短い 作文を書いてその理解を確かめるといったことである。理解を確かめるための課題作文 は、宿題となることが多い。課題作文の提出後は、授業時間外に教師が一人ひとりの学 生にフィードバックを行っている。
認識 評価
主張 30 20 7 1 2 - 60 ( 72.3% )
展開 - - - - - 10 10 ( 12.0% )
反論 - 1 1 - 1 2 5 ( 6.0% )
その他 - - 1 - - 4 5 ( 6.0% )
誤用 - 1 - - - 1 2 ( 2.4% )
譲歩 - - - - - 1 1 ( 1.2% )
合計 30 22 9 1 3 18 83 ( 100.0% )
反論 16 3 11 9 2 54 95 ( 79.8% )
展開 - - - - - 7 7 ( 5.9% )
その他 - - 1 1 - 4 6 ( 5.0% )
誤用 1 - 1 - 1 3 6 ( 5.0% )
主張 2 - 1 - - - 3 ( 2.5% )
譲歩 - - - 1 - 1 2 ( 1.7% )
合計 19 3 14 11 3 69 119 ( 100.0% )
反論 1 1 - 1 1 3 7 ( 58.3% )
譲歩 - - 1 2 1 1 5 ( 41.7% )
合計 1 1 1 3 2 4 12 ( 100.0% )
合計 思考
動詞 立場 表明
疑問 文
モダリティ 事実 文
はじめ
(全83例)
なか
(全119例)
おわり
(全12例)
文末表現
出現位置 機能
事 実 ( 一 般 的 な 意 見 )
↓
し か し 、 自 分 の 意 見
↓ 理 由 の 列 挙 ま ず 、 … 。 ま た 、 … 。 さ ら に 、 … 。
↓
以 上 の 理 由 か ら 、 自 分 の 意 見 の 再 提 示 本 文 文 型 例 文
主 張 0 1
反 論 18 6
譲 歩 0 0
展 開 2 2
そ の 他 4 0
計 24 9
228041_外大_留日センター論集42号_4校.indb 50 2016/03/16 0:37:00
- 51 -
表現を中心に学習し、後者では「導入部分の展開パターン」「全体の構成」が学習 できるようになっている。「導入部分の展開パターン」では、ある事実を述べたあ と自分の意見を述べるというパターンが紹介され、「全体の構成」では、「新聞に関 するアンケート結果」から「インターネットでニュースが見られるようになった 現代には、新聞はもう不要なのではないだろうか。」という問いに対し、理由を 示しながら見解・主張を述べる、いわゆるモデル文が提示されている(図 1 参照)。
その文章構成は、中心文となる主張が「はじめ」と「おわり」に述べられているが、
「はじめ」の段落において、「自分の意見」を述べる際、「事実」を述べた後、「しかし」
が「自説を効果的に導入するきっかけ」(石黒 2012:175)として機能している。
しかしながら、本稿 1 節で述べたとおり、「しかし」は 1 年コースの主教材であ る 28 課構成の『初級日本語』の第 5 課11で、対比の用法と予想に反した事態の用 法を導入し、産出練習まで行った後は、特に取り上げられることはない。その後、
『中級日本語』の読解文においては、説明文が主体となっていることもあり、表 7 の通り、主張の機能を果たす「しかし」は文章中では用いられておらず、前述の 文章表現の教材で新たに提示されたものと考えてよい。今回の調査では対象には しなかったが、逆接を表す接続助詞「が」で主張を導いている例もあり、文章表 現の教材で示された展開パターンを利用し、形式的には整った文章を産出してい ると言えよう。
「なか」の段落では、反論の機能を有するものが最も多い。前述の浜田(1995)
の言う、P という側面の他に Q という側面を見せるという「しかし」の機能がよ く使われている。具体的には、工藤・伊集院(2013)、伊集院・工藤(2014)の指 摘する通り、「確かに」を使った譲歩の文の直後に「しかし」を伴う反論が始まって いる例が目立つ。例えば、「自説と反対意見に『確かに』いい面がある。『しかし』悪 い面もあるから、自説の方がいい」、「自説にも『確かに』悪い面がある。『しかし』
自説にはそれを上回るいい面があるので、自説の方がいい」というパターンで「自 説が有利である」という根拠づけを行っている。
11・ 学習者に対する解説は、次のサイトで確認可能である。http://jplang.tufs.ac.jp/en/
bu/5/5-12.html
228041_外大_留日センター論集42号_4校.indb 51 2016/03/16 0:37:00
- 52 - 表 7:主教材『中級日本語』における
「しかし」の機能
図 1 モデル文の文章構成
『中級日本語』は読解文である「本文」と新出文型を示す「文型」からなり、「文型」
には「文型例文」が挙げられている。「本文」では、次のような対比の機能が多く用 いられていることから、1 年コースの学習者は、この用法を習得しやすかったの ではないかと考えられる。
例:・桜は、昔から(中略)種類はあまり多くなかった。しかし、(中略)今では、
三百種ぐらいになっている。(第 4 課本文)
譲歩については、文型「というと」の例文で取り上げられている。この例文で は 4 文とも「しかし」ではなく接続助詞「が」が用いられているが、「確かに」のあと に逆接の接続詞が用いられるという点では同じパターンと考えてよいであろう。
ただ、譲歩を教えるというよりは、「というと」を使って、別の見解を示すことに 重点が置かれている。分析対象の意見文で譲歩が少なかったのは、このことが影 響していると考えられる。
例:・数学というと、すぐ数式を思い浮かべる人が多いだろう。数学では、・
確かに数式をたくさん使うが、本来は計算より論理的な推論が重要なこ となのである。(第 17 課文型 3「~というと、…」例文)
「おわり」の段落で使われた「しかし」は「反論」または「譲歩」の機能を有するも のであった。このうち「反論」の「しかし」は、「P しかし Q」の「Q にも注目せよ」
という機能により、読者に「反論」の開始を予感させておきながら、議論が終わっ てしまうという中途半端な印象を与えている。他方「譲歩」の「しかし」は、「自分 の意見」を再提示した後に使われているが、4.3 節のとおり、主張を弱めてしまい、
効果的な使い方とはなっていない。それでも、敢えて「おわり」の段落で「しかし」
認識 評価
主張 30 20 7 1 2 - 60 ( 72.3% )
展開 - - - - - 10 10 ( 12.0% )
反論 - 1 1 - 1 2 5 ( 6.0% )
その他 - - 1 - - 4 5 ( 6.0% )
誤用 - 1 - - - 1 2 ( 2.4% )
譲歩 - - - - - 1 1 ( 1.2% )
合計 30 22 9 1 3 18 83 ( 100.0% )
反論 16 3 11 9 2 54 95 ( 79.8% )
展開 - - - - - 7 7 ( 5.9% )
その他 - - 1 1 - 4 6 ( 5.0% )
誤用 1 - 1 - 1 3 6 ( 5.0% )
主張 2 - 1 - - - 3 ( 2.5% )
譲歩 - - - 1 - 1 2 ( 1.7% )
合計 19 3 14 11 3 69 119 ( 100.0% )
反論 1 1 - 1 1 3 7 ( 58.3% )
譲歩 - - 1 2 1 1 5 ( 41.7% )
合計 1 1 1 3 2 4 12 ( 100.0% )
合計 思考
動詞 立場 表明
疑問 文
モダリティ 事実 文
はじめ
(全83例)
なか
(全119例)
おわり
(全12例)
文末表現
出現位置 機能
事 実 ( 一 般 的 な 意 見 )
↓
し か し 、 自 分 の 意 見
↓ 理 由 の 列 挙 ま ず 、 … 。 ま た 、 … 。 さ ら に 、 … 。
↓
以 上 の 理 由 か ら 、 自 分 の 意 見 の 再 提 示 本 文 文 型 例 文
主 張 0 1
反 論 18 6
譲 歩 0 0 展 開 2 2 そ の 他 4 0
計 24 9
事実(一般的な意見)
↓
しかし、自分の意見
↓ 理由の列挙 まず、…。
また、…。
さらに、…。
↓
以上の理由から、自分の意見の再提示
228041_外大_留日センター論集42号_4校.indb 52 2016/03/16 0:37:01