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「多読素材としての高校英語教科書」

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Received on September 2, 2008.

電気通信大学総合文化講座

「多読素材としての高校英語教科書」

西 村 芳 康

The Use of High School English Textbooks for Extensive Reading

Yoshiyasu NISHIMURA Abstract

The report about studying English by oneself proposes that college students should make different use of the authorized English textbooks for senior high school students in order to acquire reading skills. In general, those readers are made up of varied interesting materials. The words they use are limited to some extent and the expressions are mostly basic and common. The writer advises seeing the textbooks just as selected readings for young people. By continuing to read each lesson at a time for the information they are interested in, juniors and seniors at university can gain broad knowledge and expand their horizons as well as get used to reading a wide variety of English passages. Nevertheless, college students are not expected to read all the lessons in a textbook. They can choose to read whichever passages they like.

The second section of the report introduces sample articles from three kinds of current textbooks with different levels. English readers for senior high school students are classified into three categories: English I, English II and Reading. So it is advisable to read a textbook whose level suits each student. The last section shows how to use the textbooks including rapid reading and reading out aloud. The report concludes that those English textbooks with good reading materials offer the opportunity for college students to keep reading diverse articles out of intellectual curiosity for themselves, which will lead to the improvement of their English abilities.

Keywords:高校英語教科書、多読、自習

第1節 高校教科書の今昔

英語ではなく、国語の思い出から始めたいと思います。

今からちょうど 40 年前に私は高校に入学しました。中 3になって遅まきながら読書に耽り始めたせいで高校 用「現代国語」の中身には興味がありました。使ったの は筑摩書房版の教科書で、表紙の色が学年毎に青・黄・

赤と変わる分厚いハードカバーでした。今でもすぐに思 い出せる収録作品は、木下順二「夕鶴」、森鷗外「舞姫」、

夏目漱石「こころ」、小林秀雄「無常といふこと」、丸山 真男「『である』ことと『する』こと」、梅棹忠夫「発見 の手帳」です。難易度の差はあるにせよどの文章もそれ なりに面白く、最後の二つはのちにそれぞれ岩波新書版

『日本の思想』『知的生産の技術』を手に取るきっかけ

になりました(注1)。一方、英語の教科書は三省堂版の CROWN でしたが、A・ミルン作クマのプーさんの一節 を読んだ記憶しかありません。これは表現や内容の難易 度の差に依るものかもしれません。

ところが昨年、現在の高校英語のレベルを確認するた めに読解用の教科書(英語Ⅰ、英語Ⅱ、リーディング)

を買い集めて気がついたことが幾つかありました。ひと つは、昔と比べて装丁や中身がとても色彩豊かになった ことです。手元には平成元年発行の三省堂版があります が、それと現行版を比べてもビジュアル化は著しい。ふ たつめは、口語体の英文が増えたことです。といっても 単なる日常会話ではなく、スピーチやインタビュー、プ レゼンテーションという形式を採っています。さらに、

同学年用でも教科書に依り難易度の差が大きいというこ

(2)

とも分かりました。平易なものと高度なものと二種のシ リーズを用意している教科書会社もあります。最後に強 調したいのは、興味深い内容が多いという印象です。こ れは私が英語を読み慣れたせいもあるでしょうが、種々 の英語教科書を読み比べていくうちに思い至ったのは高 校時代の「現代国語」でした。多くの生徒が使う検定教 科書の著作・編集者として苦心するのは、今の高校生に 親しみやすいレイアウトや構成にするだけでなく、いか に読者の興味を引く内容を集めるかではないかと思われ たのです。後者は市販のテキストを採用する大学の英語 教員にとっても共通の関心事です。3、4年毎に改訂さ れる高校教科書とは異なり大学用テキストは毎年量産さ れますが、大学生が読むのに相応しい内容であってかつ 表現の程度が適切なものを見つけるのはそれほど容易で はありません。

昨年は大学の授業以外で行なう英語自習法を考えてい たので、高校の教科書が意外と面白くて良くできている という ʻ 発見 ʼ は私にとって新鮮でした。使い方次第では 大学生にも「手軽で、良質、かつ安価な」学習素材にな ると思えたのです(ここでは電通大の3年生以上を利用 者に想定しています)。大きさはB5版よりも一回り小 さいものが多く、他の教科と比べて薄い紙表紙版という 形は昔も今も変わりません。内容についてはあとで具体 的に検討しますが、価格は検定教科書のため一律で、英 語Ⅰは 485 円、英語  Ⅱは 565 円、リーディングでも 740 円です(注2)。IT  時代といえばすぐインターネットやパ ソコンが連想されますが、英語学習の手段は長所短所を 考え利用目的に応じて多種多様であっていいでしょう。

インターネットを使えばすぐさま膨大な量の新しい英語 情報にアクセスすることが可能です。しかし、電通大の 学部学生に読みこなせるレベルのサイトは余り多くない ようです。他方、高校の英語教科書が大学生の自習用言 語材料として思い浮かばないのは、店頭で実物を見かけ ないためと、教科書とは本来学校で教員が説明をして生 徒が学ぶものという観念が一般的だからです。教室で説 明を受ける前やそれを聞き逃した場合には、先生の替わ りになる ʻ 準拠の参考書 ʼ が必要とされる所以です。

しかしながら、高校教科書を青年向けの読み物と捉え てみたらどうでしょう、というのが私の提案です。雑誌 や新聞のように見なして様々な記事の中から自分の興味 に合ったものを選んで読むという使い方です。それも、

高校の時のように1冊の教科書を1年かけて全部読むの ではなく、面白そうな記事だけを一挙に読んで、終えれ ば次の ʻ 読み本 ʼ に移る利用法です。自習の場合は教えて くれる人がいないので、自力で読み進められる材料でな ければなりません。その点、検定教科書は学年別にレベ ルを想定して語彙や表現に制限を設けた英語で書かれて いるので極端に難解なものはなく、Reader's  Digest  や 

Graded Readers と似たところがあります(注3)。しかし、

漫然と読み流すのはお勧めできません。興味本位でいい のですが知的探究心を働かせたいところです。高校英語 教科書を大学生の自習用に使うには、「英語を学ぶ」の ではなく「英文から情報を読み取る」という視点の転換 が必要です。授業で得た自分の英語力を発揮するひとつ の場所を高校教科書は提供していると見なすことができ るのです。

第2節 現在の読解用英語教科書を読む

多くの人にとって高校の教科書に触れる機会は、高校 を卒業した後は自分の子供が高校に入った時ぐらいしか ないと思いますので、現在の英語教科書がどのように なっているかここで実際に見てみましょう。紙面の制約 や著作権問題があるのでここではほんの一部しか提示で きませんが、本稿の提案を説明するには十分です。また、

ありのままを知るには教科書の1単元全体を見るのが一 番ですが、著作権遵守のため英文のみとしました。

次に掲げる英文記事は、現在の高校1年生が使用して いる英語Ⅰから採りました。まずは自分のペースで御一 読下さい。

Diving into Mystery

Akira  went  to  Yonaguni  lsland  during  the  summer  vacation.  He  talks  to  his  class  about  the  mysterious 

ruins.”

Today I would like to talk about my trip to Yonaguni  lsland.  Do  you  know  where  this  island  is?  As  you  can  see  in  the  map  here,  it  lies  in  the  far  west  of  Japan. 

The reason why I chose this particular island was that  I had heard about a huge stone structure found on the  sea  bottom  near  the  shore.  This  spot  has  often  been  featured  on  TV  and  in  books  and  magazines,  so  some  of you may already

know about it. I wanted to do some research on this  mysterious structure, and thatʼs why I decided to visit  this island.

For those of you who have not seen the spot before,  I have prepared some slides. Letʼs take a look at them.

The fi rst one shows what the structure looks like (#

1). It is 150 meters wide and 26 meters high. The top  of  the  structure  rises  one  meter  above  the  sea.  What 

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impression  do  you  get  from  this  slide? Do  you  think  itʼs natural or man-made? Before we try to answer this  question, letʼs take a closer look.

The  next  slide  shows  a  stone  structure  which  looks  like a gate (#2). If you swim through here, you see a  pair of large stones standing right in front of you (#3). 

Now,  this  one  here  shows  what  appears  to  be  a  road  about fi ve or six meters wide (#4). If you keep going,  you get to a stairway. On top of it, there is a fl at open  area as you can see her (#5).

There  are  other  interesting  features  at  the  upper  part of the structure. This slide shows something that  appears  to  be  a  waterway  (#6).  There  are  also  two  large  rocks  that  look  like  turtles  (#7).  The  last  slide  shows  a  place  where  a  round  stone,  three  meters  across, is sitting on a base (#8).

If  these  features  are  man-made,  what  was  their  purpose?  Some  researchers  believe  that  this  stone  structure  was  a  fortress.  Others  say  that  it  was  a  shrine because of the turtle-shaped rocks and the round  stone on the base. No one has yet been able to explain  fully  why  the  structure  was  made,  if  it  was  actually  man-made.

Now, if this structure is man-made, it had to be built  on  land.  As  a  matter  of  fact,  scientists  believe  that  there  was  a  long  land  bridge  between  Okinawa  and  China  about  200,000  years  ago.  Since  then,  the  area  around the mysterious structure has been under water  several  times.  About  6,000  years  ago,  it  went  under  water again, and the present geological features of the  area  were  formed  sometime  before  6,000  years  ago. 

One  scientist  even  claims  that  it  was  created  over  10,000  years  ago.  If  it  is  that  old,  it  means  that  there  was once a very old civilization that has now been lost.

Some scientists donʼt believe that this stone structure  was  man-made.  They  claim  that  the  evidence  is  not  strong enough. Some people say that stories about lost  civilizations should always be taken with a grain of salt.

However,  let  me  just  say  this.  People  in  Okinawa  have  long  believed  that  there  is  a  place  called 

“Niraikanai"  at  the  bottom  of  the  sea,  and  that  itʼs  where  their  ancestors  used  to  live.  Some  say  it  is  related  to  the  legend  of    and  the  underwater  castle  he  visited.  Since  we  have  often 

handed  down  our  history  in  the  form  of  legends,  the  belief  in  Niraikanai  and  the  legend  of 

may possibly refl ect the memory of people who used to  live in old Ryukyu.

We  know  that  Urashima  Taro  brought  back  a  ,  a  treasure  box  from  the  underwater  castle.  What  will  scientists  bring  back  from  the  sea  bottom  of  Okinawa?  Will  it  cause  a  big  change  in  our  understanding  of  human  history,  or  will  it  be  nothing  but “smoke"? We will just have to wait and see.

Thank you for listening.

(平成19年度版『CROWN English Series I New Edition』

Lesson 5 三省堂)

さて、いかがだったでしょうか。基本的な表現や語彙 で書かれているので読みやすかったと思います。この単 元の実物は写真入り本文が9頁、加えて練習問題や文法 説明が4頁で構成されています。また、本文のある各頁 の下部に発音記号と重要表現の説明や例文が付いている のは他の教科書と同様です。この単元は調査内容のプレ ゼンテーションという体裁を採っているので、先に挙げ た教科書のビジュアル化・口語化という特徴が端的に現 れています。最初の見開き2頁では半分以上を海中写真 と地図が占め、次の見開きの左上には見取り図があり左 頁は全て写真、また次の見開きの左頁は全てが写真で右 頁上半分も写真、さらに次の見開き両頁上部にも写真と 地図、そして最終頁の上側も小さな写真が置かれている といったレイアウトです。英文の第2節はスライドを利 用しながら説明しているので、対応する写真なしでは分 かりにくかったかも知れません。各単元には本文の前に 必ず導入英文があるのがこの教科書の小さな特徴ですが、

この課では場面設定を He  talks  to  his  class  about  the  mysterious  ruins." としています。従って、本文は口語 表現を多用した説明文であり、学生のコミュニケーショ ン能力向上も目指した内容と言えます。

この教科書は「中学校の基礎語:941 語、新出語 396 語」という約 1400 の単語を用いて書かれています(注4)。 それが読みやすい理由のひとつですが、見方を変えれば その範囲内でこれだけ内容のあるプレゼンテーションが 可能であることを示しています。それでも学生にとって 難しいと思われる箇所を指摘すれば、第4節・第2段落 最後の次の文でしょう。 Since  we  have  often  handed  down  our  history  in  the  form  of  legends,  the  belief  in  Niraikanai  and  the  legend  of  may  possibly refl ect the memory of people who used to live  in  old  Ryukyu."  英語力のある学生でも以下のように日 本語に置き換えるだけで「反映している」ことの意味合 いを充分に考えないかも知れません:「我々はしばしば

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自分達の歴史を伝説という形で伝えるので、ニライカナ イ信仰や浦島太郎伝説は昔の琉球に住んでいた人々の記 憶を反映しているかもしれない」。しかしながら、この 読解は Since 節を踏まえて “ かつて住んでいた人々の記 憶(=過去の事実)が基になってニライカナイ信仰や浦 島太郎伝説が生まれた可能性がある ” と言い換えられる 推論の力が必要です。さらに敷衍すれば、過去の事実か ら伝説が生じるのですから話題の謎めいた「遺跡」は人 間の手になる建造物であることを発表者は示唆していま す。この単元の良質性を示そうとして細密な解釈になり ましたが、課全体に対する皆さんの感想はどのようなも のだったでしょうか。

たった1つの例ではありますが、高校の英語教科書が 大学生にとって読むに耐える内容になっていると感じら れたのではないかと思います。しかし、私が内容につい て推奨する理由には、その質ばかりでなく多様性もあり ます。おそらく高校教科書は教育目的以外にも、様々な 読者の知的関心に応えるため色々な内容の英文を盛り込 んでいるのです。三省堂のHPに載っている英語Ⅰの「目 次」がそれをよく物語っているので、以下 12 の単元を 順に掲げます(注5)。New Faces, New Places[人物・生 き方/自己紹介・スピーチ]、When  I  Was  Sixteen[生 き方・芸術/スピーチ]、Abu  Simbel  −Rebirth  on  the  Nile−[ 歴 史・ 世 界 遺 産 / イ ン タ ー ネ ッ ト ]、Pūnana  Leo −A Voice of Hawaii−[ことば・民族・文化/スピー チ]、Diving into Mystery[科学/プレゼンテーション]、

Fast Food[小説を読む]、Living with Chimpanzees[動 物・環境/インタビュー]、Not  So  Long  Ago[平和・

歴史/スピーチ]、Good Olʼ Charlie Brown[生き方・芸 術/学校新聞]、The  Green  Door[小説を読む]、The  Making  of  Scientifi c  Revolution[ 論 説 文 を 読 む ]、A  Visit  from  Saint  Nicholas[ファンタジーを読む]。ちな みに、環境問題も含めれば科学的な内容の英文が各教科 書の約 25%を占めるのが大勢のようです。

以上、高校教科書・英語Ⅰの主な特徴を挙げてみまし たが「手軽で、良質、かつ安価」なだけではありません。

「多様な内容」なので各単元は大学生が一回で読むのに 適切な長さです。上記の本文語数は 676 語であり、三省 堂版ではほとんどがこの課のように7頁に収まっていま す。写真や絵が多いばかりでなく、文字も大きくて見や すいうえに行間も広くて眼に優しい割り付けです。しか も、当然なことですが難易度は学年に依って “ 三段階の レベル別 ” になっています。しかしながら、高校教科書 全体では次のような欠点もあります。①内容の浅い英文 も少なくない→その場合には速読の練習に切り替えま しょう。②書店に取り寄せるには3〜4週間かかる→図 書館に備えてあれば学生には便利です。③ページが光っ て見にくいことがある→ビジュアル化の裏面です④大学

生の心理的抵抗感→1、2年生では高校で読むのを強い られた記憶が新しいうえ必修の授業もあるため、3年生 を対象に想定した次第です。また、単語や文法を「憶え る」のではなく、自分の英語力を駆使して内容を読み取 るという観点を持てるようになるのはおそらく3年生以 降でしょう。

さて、今度は高校2年生用の英語Ⅱの英文記事を読ん でみましょう。ここでは「英語Ⅰまでの既出語:1337 語、

英語Ⅱ新出語 537 語」(注6)という 1900 語近くの単語が 使われていますので、英語Ⅰの英文とどれくらい難易度 が異なるかが分かると思います。この単元の状況設定は 導入英文にあるように、日本の高校生がイギリスのある 公共機関を訪れて案内役から説明を受けるというもので す。ここでも説明文でありながら口語を採り入れた内容 となっています。全体は約 800 語なので短い英文ではあ りませんが、一気に読んで大事な内容を押さえてみてく ださい。題名は新聞記事のように意表を衝いているので 以下の内容を推測しにくいかも知れません。

Wilderness in a Bottle

Taro is a high school student visiting England for the  summer.  Because  of  his  interest  in  the  environment,  he visits the Millennium Seed Bank in Sussex. A guide  talks about the project.

How many of you have seen the movie  ?  It is an exciting movie about what happens when some  scientists  bring  dinosaurs  back  to  life.  The  dinosaurs  have been extinct for millions and millions of years, but  they are brought back to life by using their DNA. DNA  is  a  molecule  with  a  code  that  contains  everything  needed  to  build  a  living  thing.  Some  scientists  believe  that if you have its DNA, you can make a living thing  that  has  become  extinct.  But  up  until  now,  no  one  has  been  able  to  bring  an  extinct  animal  back  to  life. 

 is science fi ction.

What would you think if I told you that living things  that have become extinct can be brought back to life? 

What  if  I  told  you  that  this  is  not  science  fiction  but  science fact? Would you believe me?

Look at this plant. Would you believe that this plant  was once extinct and that it has been brought back to  life? Well, it is true.

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In  1922  an  English  scientist  discovered  an  Egyptian  kingʼs tomb in the valley of the Kings, where he found  some dried peas, as old as the tomb itself. People would  have  thought  that  they  were  dead,  but  he  was  able  to  use  the  seeds  from  these  peas  to  grow  new  plants. 

These  peas  are  now  planted  and  grown  all  over  the  world,  including  England,  America,  and  Japan.  Just  like  the  DNA  in  ,  the  seeds  contain  the  code  necessary  to  build  a  living  plant.  Science  fiction  becomes fact.

The Millennium Seed Bank you are visiting today is  trying  to  conserve  plants  for  the  future  by  collecting  and storing seeds from all over England and the world. 

Since seeds contain the code necessary to make living  things,  we  can  use  seed  banks  to  save  endangered  species.  Why  are  we  putting  so  much  effort  into  this  project? Why do we need to conserve plants?

Most  importantly,  plants  are  the  basis  of  life  on  Earth.  They  provide  food  for  almost  all  forms  of  life,  including  thousands  of  animals,  birds,  and  millions  of  insects.  Since  not  a  few  plants  have  been  lost,  the  worldʼs other living things dependent upon them must  have disappeared too.

The human cost of the loss of plants would be even  more  terrible.  Plants  provide  food,  fuel,  and  building  materials.  Plants  are  the  source  of  a  great  many  medicines.  Already,  25  percent  of  our  medicines  come  from plants. Yet less than one-fi fth of the worldʼs plants  have  been  studied  for  the  possible  benefi ts  they  could  bring.  We  have  to  keep  in  mind  that  plants  are  often  lost  before  we  know  anything  about  how  much  good  they could bring to society

If  a  plant  should  become  extinct  in  the  wild,  with  its  seeds  kept  in  a  seed  bank,  it  will  not  be  lost  forever.  Seed  banks  are  also  a  very  effi  cient  means  of  conserving  plants,  because  the  seeds  take  very  little  space  and  require  little  attention.  Many  thousands  of  seeds  can  be  stored  for  each  species  in  a  seed  bank. 

As  many  seeds  as  there  are  people  in  a  city  could  be  conserved in a single bottle!

The seeds stored in seed banks could be used in the  future to restore environments, or to increase numbers  of endangered plants in the wild. They can be used in  scientific  research  to  find  new  ways  in  which  plants  benefit  society  such  as  in  medicine,  agriculture,  or 

industry.

I  would  like  to  emphasize  that  conserving  diversity  within  a  given  species  is  just  as  important  as  it  is  to  conserve  different  species.  Every  individual  plant  has  its  own  characteristics,  giving  it  an  advantage  in  an  particular  environment.  The  more  varieties  there  are  for a given species, the greater the chances are for the  species to survive.

Seed  banks  are  helping  us  fight  the  loss  of  global  plant diversity. In one place we can keep seeds for all  kinds of plants from all over the world − grasses from  the tropics, plants from our fi elds and gardens, and wild  plants  that  have  never  been  changed  by  the  hands  of  human beings.

We have been trying to save the worldʼs rain forests,  grasslands, and wetlands, but even national parks have  no  guarantee  of  long-term  security.  Although  seed  banks  cannot  replace  the  natural  environment,  they  can  offer  an  insurance  service  to  other  conservation  techniques.

Finally,  I  would  like  to  suggest  that  the  seed  bank  project  be  promoted  even  further  in  the  rest  of  the  world.

(平成19年度版『CROWN English Series Ⅱ New Edition』

Lesson 7 三省堂)

語り聞かせるのが英語Ⅰの英文では日本人の高校生、こ こでは英国人の大人なので表現のレベルが上回っている のは当然ですが、それほど大きな隔たりは感じられな かったのではないでしょうか。その理由は口語体の採用 にあります。抽象的な表現を避け繰り返しを多くするこ とで、耳で聞いても分かるように配慮がなされているた めです。

この英文の概要をつかむには、あとに掲げるような箇 所に眼を留めればいいのではないかと思います。前回の レポートで示した「段落ごとにその内容を最も良く表し ていると思われる1文を見つける」(注7)方法を応用して みました。第1段落は来館者をガイドの解説に引きつけ るための前口上と判断して要約では省きました。さらに 重複箇所を削ることができるでしょうが、これでも分量 は 239 語なので本文全体の 30.5%にすぎません(カッコ 内は段落を示し、斜線は省略があることを表す)。

(2)The Millennium Seed Bank you are visiting today is  trying  to  conserve  plants  for  the  future  by  collecting  and storing seeds from all over England and the world. 

(6)

Since seeds contain the code necessary to make living  things, we can use seed banks to save endangered spe- cies.

(3)The human cost of the loss of plants would be even  more  terrible.  Plants  provide  food,  fuel,  and  building  materials. Plants are the source of a great many medi- cines.  /  If  a  plant  should  become  extinct  in  the  wild,  with  its  seeds  kept  in  a  seed  bank,  it  will  not  be  lost  forever.  Seed  banks  are  also  a  very  effi  cient  means  of  conserving  plants,  because  the  seeds  take  very  little  space and require little attention. / The seeds stored in  seed banks could be used in the future to restore envi- ronments, or to increase numbers of endangered plants  in the wild. They can be used in scientifi c research to  fi nd  new  ways  in  which  plants  benefi t  society  such  as  in medicine, agriculture, or industry.

(4)I would like to emphasize that conserving diversity  within  a  given  species  is  just  as  important  as  it  is  to  conserve diff erent species. / Seed banks are helping us  fi ght the loss of global plant diversity. In one place we  can keep seeds for all kinds of plants from all over the  world. / Although seed banks cannot replace the natu- ral environment, they can off er an insurance service to  other conservation techniques.

注釈的に補足すると(3)If  a  plant  should  become  extinct in the wild, with its seeds kept in a seed bank,  it  will  not  be  lost  forever.  の 文 頭 に あ る  If  は  Even  if  の 意 味 で、with  〜 は 理 由 を 示 し ま す。 ま た、The  Millennium  Seed  Bank という話題は編集者の関心を引 くようで、大修館書店発行の英語教科書 Genius, English  Course  II  Revised(平成 19 年検定済)でも見開き約2 頁で採り上げられています。

上の要約には含めませんでしたが、第3節第1段落に 記された植物と薬の関係は私に強い印象を与えました。

現在の薬の 25%は植物から得られたのに、世界中の植物 の約 80%は薬になる可能性を研究されないまま絶滅し ていくかもしれないとは驚きです。自分の興味本位で文 章を読み進めるとは、筆者の主張を客観的に把握するだ けでなく、このように自分の知性や感性あるいは問題意 識といった主観に訴える箇所を大切にすることでもあり ます。このような読み方を私は梅棹忠夫氏の『知的生産 の技術』から高校または大学の時に学んだのかも知れま せん。氏がそれについて ʻ 本は二重によむ ʼ という小見出 しの部分で説明していることを最近再読して気づきまし た(注8)

英語Ⅱの見本として挙げた上記英文記事は種子バンク の説明をガイドが語るという体裁を採っていますが、少

し前なら純然たる論説文の形になっていたかも知れませ ん。ここで改めて指摘したいのは、英語教科書における 口語体の増加という特徴です。三省堂版 Crown  English  Series  II の目次を見れば、それが内容の多様性ととも に良く分かります(注9):Black  Sheep  and  Silver  Spoons

[ こ と ば・ 文 化 / エ ッ セ イ ]、Dreamtime− Australian  Aborigines  and  the  Art  of  Living−[ 民 族・ 文 化・ 芸 術 / プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン ]、Crossing  the  Border − Médecins  sans  Frontières−[人生・医療/スピーチ]、

Outside  the  Box[思考・発想/インタビュー]、Mars

− The Only Way Out? −[科学/レポート]、The Bike

[小説を読む]、Mysteries  of  the  Mona  Lisa[芸術・謎

/ 論 説 ]、Wilderness  in  a  Bottle[ 環 境・ 科 学 / ガ イ ド ]、Zero  Landmines[ 平 和・ 音 楽 / テ レ ビ ]、Why  Symmetry?[科学・思考/リサーチ]、Don't Count Me  Out[生き方・障害者/エッセイ]、Hearts  and  Hands

[小説を読む]。小説を別にしても 10 編の記事のうち5 つが口語体を採用しています([テレビ]とあるのは TV  talk-show のことで対話形式)。読解用の教科書にもコ ミュニケーション能力育成の重視が見て取れます。

第3節 高校英語教科書を大学生が使うには

これまで実際の収録英文記事に即して現行の高校英語 教科書の中味と難易度を見てきましたが、ここで私が提 案したい大学生の利用方法をまとめて述べたいと思いま す。

その1.教科書ではなく若者向け読本として扱う 手紙や対話なども含んだ様々な内容から成り、大まか に3種のレベルに分かれた高校教科書を英語読本と見な して、新聞や雑誌を読むときと同じ要領で自分にとって 面白そうな物から読んでいきます。その際、マイペース で読んで7〜8割の内容が分かるものを手にするべきで しょう。ある教科書が難しく思われれば1学年戻るか、

あるいは他の教科書会社のものに移ればいいわけです。

内容が易しいか否かは文字が大きめか、写真や絵が多い かでかなり判断できるようです。知らない単語に出くわ しても辞書を引いて読書を中断するのではなく、その時 間を文脈からの推測に回すか思い切って先に進むほうが 賢明です。先ほど内容の読解について「段落ごとにその 内容を最も良く表していると思われる1文を見つける」

と述べましたが、ここではそれほど律儀にではなく「何 が書いてあるか、知的好奇心から自分の興味本位で読み 進める」ことをお勧めしたいと思います。ここで目標と しているのは英文読解力をつけることよりもむしろ、す でに身についた読解力で情報を獲得することにあるから です。全体的な内容が分かったかどうかという各自の手

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応えを大事にしたいのです。また、高校では各単元を約 7授業時間で扱っているようですが(注 10)、読本の場合に はひとつの記事を一気に、或いは少なくとも1日のうち に読み切ることが肝心です。

★特殊用法A:「科学的読み物」だけを選んで読む

「自分にとって面白そうな物」を読むという観点を極 端に押し進めて、電通大生に勧めたい利用法がこれです。

ここでは図書館などに教科書が所蔵されて借り出すこと ができると仮定します。高校教科書の内容が多様だから といって必ずしも全て読む必要はありません。どの教科 書にも科学的読み物があるようなので、それだけを拾っ て読み続けるというのも有りです。仮に1冊に科学的 記事1つだとしても、平成 20 年度使用の英語Ⅰは 36 種、

英語Ⅱは 45 種、リーディングは 27 種なので約 100 もあ ることになります(注 11)

すでにお気付きのことと思いますが、このレポートで は紹介記事を全て科学的読み物から採りました。三つ目 の実例としては、上級生用教科書のリーディングから英 文記事の冒頭部約1頁(205 語)を以下に掲げます。あ る記事が自分にとって面白そうかどうかは最初の1、2 頁を読めばだいたい推測がつきます。ここでそれを試し てみましょう。英文全体の長さは 1158 語に及び1番目 に上げた英文の約二倍に当たりますが、今年度の入試セ ンター試験英語・筆記の長文読解問題は 1118 語でほぼ 同じ長さです。さて、一読後にもっと先を続けて読みた くなるでしょうか?

Plenty of Room at the Bottom

New  technology  changes  our  lives.  The  19th  century  was  transformed  by  the  steam  engine,  electricity  and  the  telegraph;  the  20th  century  was  transformed  by  radio  and  TV,  automobiles  and  airplanes,  computers,  and  nuclear  power.  What  new  technology  will  most  affect  our  lives  in  the  21st  century?  Many  scientists  believe  the  answer  to  that  question is “nanotechnology."

On December 29, 1959, Richard P. Feynman, a Nobel  prize winner in physics, made an epoch-making speech,  the title of which was  There's Plenty of Room at the  Bottom."  In  his  speech,  Feynman  speculated  on  the  possibility of exploring the world that exists  down at  the bottom," i.e., the world of atoms and molecules. He  cautioned that he was not talking about miniaturization  of,  say,  electric  motors  that  are  the  size  of  the  nail  on  your  little  fi nger,  but  rather  a  staggeringly  small 

world  that  is  below."  He  further  predicted  that  in  the  future we would be able to make machines as small as  molecules.

Feynman's  ideas  seemed  strange  at  the  time  he  made his speech in 1959, but  today he is thought to be  the father of nanotechnology, which is on the cutting

edge  of  modern  science.  What  is  nanotechnology? 

What impact will it have on our lives?

(平成 16 年度版『CROWN  English  Reading』Lesson  10  三省堂)

★特殊用法B:速読の練習

これまで述べてきた「興味のある記事を選んで情報を 求めて読む」というやり方では、未知の単語が気になれ ば辞書を使って調べてもいいし、読む速度はマイペース でかまいません。基本的には日本語の記事を興味深く読 む場合と同じ態勢です。逆に言えば、読み取りに余りに も時間がかかる記事はその読者にとって表現か内容の敷 居が高いので敬遠するほうが賢明です。言葉の壁が知的 好奇心の拡がりを阻んでいる可能性があります。

しかし、ここで紹介する「速読の練習」という方法で は辞書を使ってはなりませんし、普段よりも速度を上げ たまま落とさないように気をつけねばなりません。なぜ このように自分を追い立てるような読み方をする必要が あるのでしょうか。そもそも「英語を速く読めたらいい な」と思っている学生は少なくないはずですが、理由の ひとつにはあまり日本語を介さないで英語の構造に慣れ ることが重要であることと、いまひとつはその結果とし て素早く読み取る力が聴き取る力と繋がると考えられる からです。速読の練習なので複雑な英文の多い読み物は 不向きですが、高校教科書は大学生にその手段を提供し ています。一人で実践を続けるのはそれほど簡単ではな いので、電通大生の多くにとって読む対象は高校1年用 の英語Ⅰが最適だと思われます。前に見たように、使用 される語彙と表現の範囲がもっとも狭いからです。

では、どのような点に気をつけて練習をすればいいで しょうか。一言でいえば、英文中に小さな意味のまとま りを見つけながら、情報を継ぎ足していくように読み進 めることです。これは  Phrase  Reading と呼ばれる読み 方で、高校教科書でもかなり紹介されています。意味の 区切れ目は全ての読者にとって同じとは限らず、その数 は少なければ少ない方が速く読めることになります。既 に読んだ英文を利用してその一例を示します。斜線1本 よりも2本の方が大きな切れ目を意味します。

Akira went to Yonaguni lsland / during the summer  vacation.  He  talks  to  his  class  /  about  the  mysterious 

ruins."

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Today  I  would  like  to  talk  /  about  my  trip  to  Yonaguni  lsland.  Do  you  know  /  where  this  island  is? 

As you can see / in the map here, // it lies / in the far  west of Japan. The reason why I chose this particular  island  /  was  /  that  I  had  heard  about  a  huge  stone  structure / found on the sea bottom / near the shore. 

This  spot  has  often  been  featured  /  on  TV  and  in  books  and  magazines,  //  so  some  of  you  may  already  know about it. I wanted to do some research / on this  mysterious  structure,  //  and  that's  why  I  decided  to  visit this island.

(平成19年度版『CROWN English Series I New Edition』

Lesson 5 三省堂)

基本的には主語と動詞をひとまとめにして、動詞との意 味的関連で目的語のまとまりや時間・場所などのまとま りを見つけます。主語が長い場合にはそれで一区切りに します。カンマや前置詞、後置修飾部(関係詞、進行形、

過去分詞、形容詞など)も切れ目の手掛かりとなります。

内容的にはまとまり毎にそのイメージ(主語、動作、対 象、時間・場所など)を思い浮かべて、それらが出てく る順に繋ぎ合わせて全体の姿が頭に描かれるようにしま す。これには文法的な知識も必要なので、学生には決し て楽な作業ではないと思います。

このイメージ形成に習熟するのに時間がかかるのは、

まとまり毎の連結方式が英語と日本語でかなり異なるか らです。私たちは日本語の語順になじんでいるため英語 の語順に慣れるのに手間取るのです。しかし、基本的な 語彙や表現から成る英文は日本語に変換するよりもイ メージを浮かべる方が応用範囲が広がります。リスニン グの場合では次々と音声が現れては消えるので、リー ディングで「出てくる順のイメージ形成」ができていれ ば文字認識から音声認識の移行が速やかになります。日 本語・英語を問わず、リスニングのスクリプトを発話 時間内で読み取ることができなければ、聴き取ること もおぼつきません。速読力が聴解力に通じると言う所以 です(注 12)

その2.読み聞かせるように朗読する

英文記事の内容を良く理解した上で音読をすると、プ レゼンテーションやスピーキングの素地ができます。本 を声に出して読むことを一般に音読と言いますが、私と しては下記の目的を込めて「朗読」という言葉を使いた い。前に述べたように、黙読でも速読練習ではリスニン グに効果がありますが、眼を使うだけで自分の音声とは 切り離されています。授業などでリスニング練習の後に スピーキング向けに発音練習やリピーティングをするの

は普通ですが、受信と発信という関連はそれだけでなく 読解と朗読の間にもあります。といっても、私の勧める 朗読では英語の発音に気をつける必要はありません。む しろ、教科書のみでは手本がないので発音の向上は目指 ざしていません。私が強調したいのは、記事をただ声に 出すのではなく、目の前に聴く人がいると想定してその 人に向けて説明する、或いは語り聴かせるように読むと いう心構えです。ラジオの朗読やTVのナレーションを 聴いて胸に浸み入ることがありますが、それは朗読者が 巧みだからだけでなく、たぶん事前に何度も読み込んで 内容を熟知しているからでしょう。

音声面ではリスニングとスピーキングが裏表の関係で あり、文字面ではリーディングとライティングが対をな すという見方は当然のように思えますが、これまでの学 校教育ではどちらも受信能力の育成に重点が置かれ、セ ンター試験ですらリスニング・テストが課されたのは 2006 年度からでした。しかし、上のような組み合わせ だけでなく文字と音声を交差させて、そこに受信と発信 の関係を認めることも重要です。ディクテーションの実 践は以前から行なわれていますが、耳で理解できること をさらに文字に表すには綴りの知識があれば十分でダメ 押しをするような印象を与えます。ところが、朗読には 2つの意味で読解にさらなる展開を図ることができます。

ひとつは内方向で、不充分ながらも文字に音声を重ね 合わせることで暗号解読にも似た英文解釈から離れて言 葉本来の姿が再現され、また黙読よりも速度が劣るが故 に英文の形が一層良く認識できます。しかも、この作業 は内容の理解済みを前提にしているので、和訳に頼らず 言葉の出てくる順にイメージを浮かべるのが楽になりま す。さらに朗読は眼と口と耳を総動員して行なうので英 語の形が記憶に留まる確率が高まります。同時通訳の草 分けである國弘正雄氏も約 40 年前から最も効果的な英 語学習法として「只管朗読」、ひたすら音読をすること を勧めています(注 13)

いまひとつは外方向で、朗読はプレゼンテーションや スピーキングにつながります。誰かに読み聞かせるには それなりに留意すべきことがあります。上手な発音や抑 揚は措くとしても、早口ではいけないでしょうし小声も まずいでしょう。さらに大事なのは、小さな意味のまと まりで区切りをつけることであり、動詞・名詞・形容詞 など内容を伝える語は強くはっきりと読むことです。そ もそも朗読は黙読と異なり、息継ぎが必要なのでしぜん と区切り所には注意が向かうでしょうし、聴いている相 手がいるならば何処をとくに伝えたいか考えることにも なるでしょう。

検定教科書を音読の言語材料とする考えはとくに目新 しいものではありません。その名もずばり『英会話・ぜっ たい・音読』という千田潤一氏の本が正続・CD付きで

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3種6冊が講談社インターナショナルから出版されてい ます。ただ、このシリーズの英文は入門編が主に中学2 年生用、標準編が中学3年用、挑戦編が高校1年用教科 書から採られています。また、印刷は白黒なので高校教 科書のビジュアル化とは著しい対照です。なお、先に口 語体表現の増加を特徴として指摘しましたが、三省堂ク ラウンの英語ⅠとⅡには各課のあとに会話形式の  Chat  Room  がついているので、会話表現を声に出して練習す ることができます。

最後になりましたが、Graded  Readers  とは違って高 校教科書にはもうひとつの利用法があります。これは情 報の獲得よりも英語自体の学習となるのでその3とはし ませんが、英文記事との関連で語法を確認することが可 能です。昔と異なりグラマーと呼ばれていた文法の教科 書は今はなく、その代わり読解用教科書に文法の説明が 組み込まれているのです。私の提案する高校教科書の利 用法では章末の練習問題や文法事項は飛ばしていいので すが、高校までに習った文法や基本表現を簡単に確認し たい方には重宝な頁だと言えます(注 14)。また、本文各頁 の欄外には重要語句の列挙以外に、用例として簡潔な英 文を付している教科書もあります。自己表現能力を高め るには断片的な英語表現とその和訳を記憶するだけでは 不充分で、短い英文全体を覚えた方が得策です。一文の 中で英語を並べる順番を理解できるし、その積み重ねで 英語を発信する回路が脳内に育つと考えられるからです。

単語ではなく例文を学ぶ習慣が身につけば、さらに進ん で眼にした英文記事から自分に使えそうな英文を拾い出 すようになるのは造作もないことです。これは ʻ 読み本 ʼ から ʻ 見本集 ʼ への発想の転換と言っていいかもしれませ ん。

今回の報告で採り上げた三種の高校英語教科書は、言 うまでもなく通常の使い方としては英語を中学で3年間 学んだ生徒がさらに高度なレベルの英語を各々1年間を かけて学ぶためのものです。そのため、最近増えてきた オリジナル記事は当然のこと、出典のある英文記事でさ えほぼ全てが癖のない一般的な文体で書かれています。

したがって、高校教科書は大学の上級生にとっては自ら 読解力をつける恰好な素材を提供しているのみならず、

英語を書くためにも話すためにも使える英語表現の宝庫 ともなっています。要は「道具は使いよう」で、英語の リーダーを従来のように語彙と文法を学ぶ言語材料とし か見なさないのは勿体ない話です。さらに、情報という 観点から言えば、わが大学の3年生以上であれば英語と いう媒介を通して自律的に様々な事柄を知り自分の知見 や視野を拡げる手段となり得ます。ひとつの英文記事を 一日のうちに読み切ることでぜひそれを体感してみて下 さい。

1.読売新聞(平成 20 年6月3日付朝刊)の記事「岩波新 書 ロングセラーの宝庫」によれば、岩波新書売り上げ ベスト 10 の第4位は梅棹忠夫『知的生産の技術』(1969 年発行、132 万部)、第9位は丸山真男『日本の思想』(1961 年発行、102 万部)です。

2.文部科学省 高等学校用教科書目録(平成 20 年度使用)

第1部 外国語

  http://www.mext.go.jp/a̲menu/shotou/kyoukasho/

mokuroku/19/koutou/1gaikoku.htm

3.速読用の英文選集として  Jamestown  Publishers (Glen- coe/McGraw-Hill)から次のシリーズが刊行されています:

,  Third  Edition ②

  ③   in  Literature。 い ず れ も 10 種 類のレベル別で 10 冊から成り、内容把握を試す選択肢 問題が付いています。(価格は 2006 年 11 月時点で各 1575 円)。①と②は多彩な内容の英文が 50 編も収められてい るので、速読練習以外にも利用できるでしょう(①は全 て約 400 語の長さ、②は約 400 語と約 200 語の長さが半 数ずつ)。レイアウトは英文が1頁に収まり、白黒だけ の印刷で写真などはありません。

4. 三省堂ホームページ「平成 19・20 年度版 高等学校英 語教科書紹介」

  http://tb.sanseido.co.jp/english/h-english/textbooks/

crown̲new-edition.html 5.注4に同じ。

6.注4に同じ。

7.この紀要に所収の『英語体験を増やす無料サイトにアク セス!』。

8.梅棹忠夫『知的生産の技術』(岩波書店)、111 − 113 頁。

9.注4に同じ。

10.注4に同じ。

11.注2に同じ。

12.ディビッド・セイン氏と森田修氏は、その共著の『理論 編 リスニングの上達にはリーディングが近道だ!』の 中で「本書が提示するのは、英文を速く読むことで、自 然なスピードで話される英語を理解できるようにしよう という、一見掟破りな方法です」と述べ、約 50 の明快 な英文を載せています。(『【CDつき】一分間に二〇〇 語の英文を読めますか?』(新書版・角川 one テーマ 21  B− 62、角川書店、2004 年))

13.國弘正雄氏『國弘流 英語の話し方』(たちばな出版、

平成 11 年)。

14.① YOMIURI  ONLINE(読売新聞)の 2007 年8月 28 日 付記事【高校の英語を「コミュニケーション英語」に統 合…文科省】に拠ると、現行英語教科書4種類6科目

(オーラル・コミュニケーションⅠ、Ⅱ、英語Ⅰ、Ⅱ、リー ディング、ライティング)は将来、「コミュニケーショ ン英語」に一本化される可能性があります。

   ② YOMIURI  ONLINE(読売新聞)の 2008 年7月 27 日 付記事【教科書の厚さを倍増、自習にも対応…改革素案 が明らかに】に拠ると、小中高校で使用される教科書の うち国語、理科、英語のページ数が将来、二倍になる可 能性があります。

(2008.9.2)

参照

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