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読み書きの苦手な生徒を伸ばす中学校英語の授業づくり

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Academic year: 2021

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読み書きの苦手な生徒を伸ばす中学校英語の授業づくり

~音声指導と音感指導を手がかりとして~

高度学校教育実践専攻 実習責任教員 西 村 公 孝

教職実践力高度化コース 実習指導教員 阪 根 健 二

近 藤 江 美

キーワード: 小中連携に関する学習指導要領 音声指導 音感指導 フォニックス チャンツ

Ⅰ.実践研究課題 1.実習校の概要

実習校は徳島市中心部に位置し、昔からの商 業地域である地区と住宅地域や商業地域として 発展がめざましい地区からなり、校区内には定 時制も含め4つの高校がある。素直で明るい生 徒が多く何事にも前向きに取り組むが受け身的 姿勢が見られる。また支援の必要な生徒も多く 学力や学習意欲が二極化している傾向にある。

2.研究課題設定の理由

平成24年度から小学校外国語活動の全面実施 が 始 ま り 、「 聞 く 」「 話 す 」 と い う 音 声 中 心 の 活動が行われている。中学校ではそれに加え文 字が導入され、単語のつづりを覚え「読む」「書 く」の活動が入ってくる。実習校のアセスメン トの結果からも、1年生後半から2年生前半に かけて苦手意識を持ち始める生徒が多く、「単 語の読み方が分からない」「単語の覚え方が分 からない」「英語の勉強の仕方が分からない」

という困り感を抱えていることが分かった。音 声と文字が上手く結びついていないのが原因だ と考えられる。このような実態から、中学校初 期段階で、音声と文字を結びつけるフォニック スや英語の音感を身につけるチャンツを取り入 れた指導を行い、小中連携を意識しながら取り 組むことで、読み書きの苦手な生徒が基礎的・

基本的な学力を身につけるための手助けになる

であろうと、本研究課題を設定した。

Ⅱ.先行研究

1.小中連携に関する学習指導要領

小学校学習指導要領によると、小学校では活 動が中心となり体験的に英語に触れるのが目標 であり、その体験を通して「コミュニケーショ ン能力の素地を養う」と示されている。中学校 学習指導要領では、中学校では教科、語学とし て英語を学び「コミュニケーション能力の基礎 を養う」と示されている。小学校での素地とは 積極的に活動に参加する態度の育成、中学校で の基礎とは小学校で培った素地の上に基礎的な 英語の運用を求めている。小中のスムーズな移 行が行えるよう違いを意識した指導が求められ る。

2.フォニックス

フォニックスとは、19世紀に英語圏の子ども たちのために発案された、英語の音と文字を結 びつけるルールであり、綴り字と発音の間に規 則性を明示し、正しい読み方を容易にさせる方 法の一つである。ルールには例外もあるが75%

が規則的だと言われており、規則性を学ぶこと で基礎を固め約7割の語彙を正確に読むことが できる。松香(2008)はフォニックス自体を学ぶ ことが目的ではなく児童生徒の自主性を育てる のが目的であると述べている。

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3.チャンツ

一定のリズムに乗せて英語の語や句、文など を発音させて歌ったもので、英語特有の音やリ ズム、抑揚を習得させる学習に用いられる。言 語体系の違いから、英語の音やリズム、抑揚に 不慣れな日本人にとって効果的だと言われてい る。小学校の外国語活動でよく使われている。

Ⅲ.実践研究の概要

1.仮説と手立て・実習計画

読み書きの苦手な生徒に基礎的・基本的な力 を身につけさせるために3つの仮説と手立てを 考えた(図1)。1つ目は生徒の実態把握のた めの座席表の活用である。2つ目は小中連携の 視点からの音声指導、音感指導である。3つ目 は個別化・個性化に対応できるよう学習形態の 提案である。これらを基盤として実習を進めた。

図1 3つの仮説と手立て

2.実習の概要

手立て1個に対応した座席表の活用

手立て1として、座席表の活用によって生徒 の実態を把握しながら個々の生徒に対応できる よう心がけた。個の様子、ペア活動の様子も書 き留め、机間指導に役立てた。また一人ひとり が学習内容を理解しやすいよう、帯活動、授業 実践ともにICTの活用を試みた。

手立て3個別化・個性化に対応した学習形態の提案

仮説1

座席表を活用することで生徒 の実態を把握しながら個々の 生徒に対応した指導をおこな い、基礎的・基本的な力をつ ける補助ができるだろう。

個に対応した座席 表の活用

仮説2

小学校でも行われている活動を 取り入れたり、フォニックスを学 習することで音声に慣れ親しみ、

読み書きへのスムーズな移行 を図ることができるだろう。

小中連携の視点から の指導法の工夫

仮説3

学習規範の確立、学習形態の 工夫によって、苦手生徒も臆す ることなく授業に参加でき、学 ぶ意欲を高めることができるだ

ろう。

個別化・個性化に対応し た学習形態の提案

手立て3として、学習形態を提案するには至 らなかったが、後期の授業で毎時間できるだけ ペア活動を多く組み込み、苦手生徒の参加を促 進した。普段の授業ではあまり声の聞かれない 生徒や授業参加が難しい生徒も、ペア活動では 積極的に取り組めており、英語本来の目的であ るコミュニケーション活動を多く仕組むことに つながった。

手立て2小中連携の視点からの指導法の工夫 主に手立て2を中心に、前後期を通して全て の活動において音声指導・音感指導を重視して 実践した。帯活動として(1)フォニックスの指 導、授業実践で(2)チャンツの活用、音声と文 字をつなげるために(3)音読筆写・指書き・な ぞり書きによるワークシートの工夫を試みた。

(1)フォニックスの意識化

前後期を通して、帯活動のフォニックス指導 を柱とし、音声への意識付けを本研究における 第一の目的として実践した。

前期ではアルファベットの音読みの定着を徹 底し、アルファベットそれぞれの持つ音や発音 の仕方、音と音のつながり方を重点的に指導を 行った(表1)。5月半ばには一人ずつ口頭で のチェックテストを行い、言えなかった発音は 休み時間や放課後を使い、繰り返し聞くことと し全員が言えることを目標とした。

後期では前期同様10~15分の帯活動で、頻度 の高いフォニックスのルールを抜粋し、苦手生 徒の定着を考慮しながら進めた(表2)。毎時 間前時の復習をすることで、学習したことを生 徒たちが自分で確認できるように、思い出す時 間を確保した。ただ真似をするのではなく自分 で読む姿勢を作るよう心がけた。そして毎回授 業の最後には聞き取り問題を実施し、教師の口 元を見て発音の仕方を確認させ、英語の発音の

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仕方を常に意識させるようにした。

表1 FWⅠにおける指導計画

表2 FWⅡにおける指導計画

音声指導をしたことで生徒たちの発音に対す る意識が高まり、実習終了後のアンケートでは 約9割の生徒がその指導が自分たちの学習に役 立っていると答えている。

(2)チャンツを取り入れた文法指導

単元の授業ではチャンツを用いて音感を頼り に文法の理解や定着を促した。リズムに乗って 英文を口にすることで、音声から読み書きへの スムーズな移行を図ることを目的とした。

前期では「三人称単数be動詞」を扱い、生徒 の理解の補助になるよう、自作のICTを活用し

フ ィ ー ル ド ワ ー ク Ⅰ に お け る フ ォ ニ ッ ク ス 指 導 計 画 実 施 内 容

授 業 実 践 音 声 指 導 ( 音 読 み に つ い て ) (45分 )

音 読 み の 復 習 、 ジ ン グ ル

(15分 ) 小 文 字 カ ー ド ・ 母 音 の 歌 ・ 聞 き 取 り

音 読 み の 復 習

(15分 ) 小 文 字 か る た ( 文 字 を つ な げ て み よ う ・ 聞 き 取 り

音 読 み の 復 習

(15分 ) か る た ( 文 字 を つ な げ て み よ う ・ 聞 き 取 り 音 読 み だ け で 読 め る 単 語 1

テ ス ト ( 音 読 み の チ ェ ッ ク テ ス ト )

担 当 教 師 と 2 人 で 実 施

音 読 み の 復 習

(10分 ) 音 読 み だ け で 読 め る 単 語 2 ・ 復 習 ・ 聞 き 取 り

音 読 み の 復 習

(10分 ) 組 み 合 わ せ 文 字 (sh, ch, ck, th) ・ 聞 き 取 り

音 読 み の 復 習

(15分 ) ま と め ・ 復 習 、 か る た 1 ( 音 読 み )

音 読 み の 復 習

(15分 ) ま と め ・ 復 習 、 か る た 2 ( 音 読 み + 組 み 合 わ せ )

フィールドワークⅡにおけるフォニックス指導計画 1 アルファベットの音、発音の復習

【a - e】 【i - e】 【u - e】

2 マジック- e①

【e - e】 【o - e】

3 マジック- e②

【ea 【ee】

4 ポライト母音①

【ai 【ay】

5 ポライト母音②

【ow 【oa 【ui 【ue】

6 ポライト母音③ 】 】 】 7 まとめ、チェックテスト

8 英語に関する意識調査アンケート《昨年度との比較・授業の感想》

英語の基礎学力の自己評価アンケート《4月との比較》

て、何を勉強するのか生徒たちに考えさせなが ら新出文法を導入した。時間的関係で各クラス 1時間ずつの実践となったが、授業後の自己評 価からは、新出文法の使い方を理解できたと全 ての生徒が答えた(表3)。しかし1時間の実 践で一斉指導に留まり、個の活動につなげられ なかったことが課題として残った。

表3 チャンツを活用した授業後の自己評価(62人)

後期では比較的習得するのが難しいとされる

「三人称単数現在形 -s, -es」の指導にチャン ツを活用した。前期での単発的な指導を改善す るために、後期は一人ひとりの定着を目標とし て、活用の仕方を変えて実践することとした。

毎時間の始めに帯活動として同じチャンツを使 い、動詞を変えて繰り返し言うことで定着を狙 った。練習問題をする際にチャンツを口ずさみ ながら問題を解く生徒の姿が見られた。

(3)音読筆写・指書き・なぞり書き

新出単語の導入時から、まず生徒に読み方を 推測させるようにし、フラッシュカードにも発 音の仕方や音声の区切りが理解しやすいように 下線をつけて提示した。発音練習の後、単語の 音読筆写・指書き・なぞり書きによるワークシ ートの工夫で、普段の授業での単語の読み書き の際に、学習したフォニックスがつながるよう、

そして自学へとつながるよう「単語の書き方」

の指導を行った。練習する単語も数を1日5~

6語に絞り、まずは鉛筆を持たせずに書かせる ことで覚えることに集中させた。

表3-4 2クラスの授業後の振り返りの自己評価 (人 / 62人中)

よく だいたい あま り 当て は 全く 当 ては ま 評価項目

当てはまる 当てはまる まらない らない

①授業に積極的に

参加できた。 42 19 1

②He is ~. She is ~.

の使い方が理解できた。 55

③発音に気をつけて単語

や本文の読みの練習ができた。 52

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Ⅳ.実践研究の成果と課題 1.成果

主に音声指導に見られた。フォニックスのル ールの指導はいくつかの抜粋となったが、多く の生徒が読み書きだけでなく4技能全てに役立 っていると感じており、全体で見るとほとんど の 項 目 で 8 割 を 超 え る 肯 定 的 回 答 が 得 ら れ た

(表4)。また読み書きにおいて今後の活用に 関わる「単語のつづりを覚えるのに役立った」

「未習語をまず自分で読もうとするようになっ た」「未習語を推測できるようになった」の3 つの項目では7~8割の生徒から肯定的回答が 得られ、音声指導をしたことによって、多くの 生徒にとって今後自分で学習していくための基 盤が作られたことが分かった。

表4 音声指導に関するアンケート(%)

音声を意識して作成したなぞり書きのワーク シートも、単語の読み書きにおいて音声と文字 を結びつけるのに役立ったようである。約9割 の生徒が肯定的に答えた(グラフ1)。苦手生 徒からも「覚えやすい」「今後も続けてほしい」

との声が聞かれた。ワークシートでの単語練習 と次時での単語テストとを連動して実施したこ とで、ワークシート、単語テストに関しても、

全体 上位 中位 下位 フォニックスの学習について

○ 役に立っている 87 90 93 73

△ 役に立っていない 13 10 7 27

フォニックスの学習を通して

・発音が前より上手くなった(英語らしく発音しようとする 84 87 93 61 ようになった)

・似た音の聞き取りが前より分かるようになった 88 95 90 65

・単語を読むときに役に立つ 89 93 95 73

・単語を書くときに役に立つ 76 81 80 58

・単語のつづりが覚えやすくなった 74 84 78 43

・習っていない単語でもまず自分でどう読むんだろうと考え 79 90 83 47 るようになった

・習っていない単語でもいくつかは推測(当て読み)ができ 82 97 90 38 るようになった

肯定的な感想が多く見られた。スモールステッ プでの小さな成功体験で苦手生徒も自信につな がり、楽しんで授業に参加できたようであった。

グラフ1 ワークシートに関するアンケート(%)

音感指導についても、ただの暗記でなく楽し く覚えられたと感じた生徒が多く、ICTの活用 も合わせ五感をフルに稼働させる活動となり、

苦手生徒にも効果が見られた。

2.課題

音 声 指 導 に 関 し て 全 体 で は 成 果 が 見 ら れ た が、伸ばしたかった下位層の生徒たちにはある 程度の成果に留まり、今後の活用に至るにはま だまだ時間も改善も必要である。授業内容に組 み込むにも時間配分や内容も考慮しなければな らない。ワークシートについては、未習語を覚 える際には自分で音の区切を工夫しなければな らないので、その感覚を身につけるためにやは り継続指導が必要である。今後もより充実した 指導の工夫改善を重ねなければならない。音声 指導、音感指導ともに見通しを立てた指導、継 続指導が重要であることを再認識させられた。

【参考文献】

①文部科学省(2008)『小学校学習指導要領解説 外国語活動 編』東洋館 ②文部科学省(2008)『中学校学習指導要領解説 外国語編』開隆堂 ③松香洋子(2000)『アメリカの子どもが

「英語を覚える」101の法則』講談社 ④瀧沢広人(2013)『英 語授業のユニバーサルデザイン』明治図書

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