学 位 論 文 審 査 の 概 要
博 士 の 専 攻 分 野 の 名 称 博 士 ( 医 学 ) 氏 名 木 下 哲 志
主 査 教 授 村 上 正 晃
審 査 担 当 者 副 査 教 授 野 口 昌 幸
副 査 教 授 清 水 宏
副 査 教 授 石 田 晋
学 位 論 文 題 名
Novel Pharmacological Target for the Treatment of Ocular Neovascular Diseases
( 眼 内 血 管 新 生 性 疾 患 に 対 す る 新 規 治 療 の 探 索 )
先 進 国 に 於 け る 中 途 失 明 の 主 な 原 因 で あ る 加 齢 黄 斑 変 性 ( A M D ) の 治 療 に は 、現 在 、抗V E G F
抗 体 の 複 数 回 の 眼 内 注 射 が 用 い ら れ て い る 。 し か し 、 こ の 治 療 法 に は 、 一 定 頻 度 で 生 じ る
感 染 性 眼 内 炎 な ど の 合 併 症 が 問 題 と な る 。 本 研 究 で は 、 A M D 疾 患 モ デ ル を 用 い て 眼 内 血 管
新 生 性 疾 患 の 新 規 補 助 療 法 の 1 つ と し て 大 豆 な ど に 含 ま れ る イ ソ フ ラ ボ ン の 一 種 ゲ ニ ス テ
イ ン 投 与 の 可 能 性 を 示 し た 。A M Dモ デ ル で あ る レ ー ザ ー 誘 導 の 脈 絡 膜 血 管 新 生 ( C N V ) モ デ ル
を 用 い て 試 料 に ゲ ニ ス テ イ ン を 混 入 さ せC N V形 成 と そ の 病 態 誘 導 の 分 子 機 構 を 解 析 し た 。
ゲ ニ ス テ イ ン 投 与 に てC N V形 成 が 抑 制 さ れ 、病 変 部 で の E t s 1転 写 因 子 、C C L 2ケ モ カ イ ン 、
I C A M 1接 着 分 子 、 M M P 9 プ ロ テ ア ー ゼ の 発 現 、 マ ク ロ フ ァ ー ジ の 浸 潤 が す べ て 抑 制 さ れ た 。
こ れ ら の 結 果 と 先 行 研 究 の 結 果 か ら 、ゲ ニ ス テ イ ン は 、主 にE t s 1 転 写 因 子 の 発 現 を 抑 制 し
て 前 述 の 炎 症 誘 導 に 関 与 す る 分 子 群 の 発 現 を 負 に 制 御 し てC N V形 成 を 抑 制 し て い る こ と が
示 唆 さ れ た 。
審 査 に あ た り 、 副 査 の 清 水 教 授 よ り 、 中 心 窩 の 細 胞 の 層 構 造 が 少 な い 理 由 、AMD の 病 態 が 中 心 窩 か ら 生 じ る 理 由 に つ い て の 質 問 が あ っ た 。 申 請 者 は 視 神 経 が そ こ に 多 く 、 視 覚
認 識 を 鋭 敏 に す る た め に 層 構 造 が 少 な い こ と 、 光 ス ト レ ス が こ の 部 位 に 集 中 し て 病 態 形 成
を 誘 導 し て い る 可 能 性 を 返 答 し た 。 副 査 の 野 口 教 授 よ り 、AMD の 発 症 率 と 喫 煙 と 加 齢 が 相 関 す る 理 由 に つ い て の 質 問 が あ っ た 。 申 請 者 は 喫 煙 と 加 齢 に て 酸 化 ス ト レ ス が 上 昇 し 、
そ れ に 伴 う 細 胞 由 来 の 代 謝 物 な ど の 増 加 が 刺 激 と な り 、 慢 性 炎 症 を 誘 導 す る 可 能 性 を 返 答
し た 。 副 査 の 石 田 教 授 よ り 、 中 心 窩 の 役 割 、 進 化 論 的 解 釈 の コ メ ン ト と 補 助 療 法 と し て ゲ
ニ ス テ イ ン を 用 い る 場 合 、 他 の 療 法 と の 併 用 の 利 点 に つ い て の 質 問 が あ っ た 。 申 請 者 は 抗
酸 化 剤 と の 併 用 や 抗V E G F抗 体 と の 併 用 の 可 能 性 を 返 答 し た 。主 査 の 村 上 教 授 よ り 、ゲ ニ ス
テ イ ン は ど の よ う に 炎 症 を 抑 制 す る 可 能 性 が あ る か に つ い て 質 問 が あ っ た 。 申 請 者 は ゲ ニ
ス テ イ ン の チ ロ シ ン キ ナ ー ゼ 阻 害 活 性 が 主 と し て 関 連 す る 可 能 性 を 返 答 し た 。
本 研 究 の 基 礎 論 文 はJournal of Nutritional Biochemistry誌 に 掲 載 さ れ て い る 。 ま た 、 本 研 究 の 成 果 はA M Dを 含 む 眼 内 血 管 新 生 性 疾 患 の 安 全 な 治 療 法 に 必 要 な 新 規 補 助 療 法 の 開
発 の 一 助 と な る 可 能 性 が 高 く 非 常 に 重 要 で あ り 、 今 後 、 ゲ ニ ス テ イ ン の ヒ ト へ の 投 与 を 含
め た 予 備 実 験 を 行 え ば 、 眼 内 血 管 新 生 性 疾 患 の 新 し い 治 療 法 を 開 発 で き る と の 可 能 性 を 示
し た も の と 考 え ら れ る 。
審 査 員 一 同 は 、 上 記 の 成 果 を 高 く 評 価 し 、 大 学 院 課 程 に お け る 研 鑽 や 取 得 単 位 な ど も 併