研 究 ノ ー ト StudyNotes
市 販 冷 却CCDカ メ ラ シ ス テ ム 、 SBIG製ST‑BXME‑NABGの 性 能 テ ス ト
山 縣 朋 彦*・ 伊 藤 信 成**・ 安 田 恵 子***・
濱 部 勝****・ 剣 持 周 子*****・ 青 木 勉******
Evaluation of the Performance of a Commercial CCD Camera System, SBIG ST-8XME-NABG
Tomohiko Yamagata, Nobunari Ito, Keiko Yasuda, Masaru Hamabe, Chikako Kenmotsu & Tsutomu Aoki
1.は じ め に
か つ て 、 天 体 観 測 に お け る可 視 光 ・赤 外 線 領 域 の検 出 器 と して は 写 真 が 主 流 で あ っ たが 、1980 年 代 か らCCDカ メ ラが 多 く利 用 され る よ う に な っ て きた 。 現 在 で は、 検 出 器 と して写 真 が 使 わ れ る こ と は 、 一 部 の 例 外 を 除 い て ほ と ん ど無 い 。 ま た 、 デ ジ タ ル カ メ ラ の 普 及 に 伴 い 、CCD素 子 の値 段 も急 速 に低 下 して きた こ と もあ り、 アマ チ ュ ア用 の安 価 なCCDカ メ ラ も普 及 して きて い る。 天 体 観 測 で は 、 多 くの場 合 、 低 照 度 の 光 を長 時 間 露 光 す る こ とか ら、 ノ イ ズ対 策 特 に 熱雑 音 に よ る 暗 電 流 を押 さ え る た め に 、CCDカ メ ラ を冷 却 す る必 要 が あ る。 従 っ て 、 一 般 の デ ジ タ ル カ メ ラ と天 体 観 測 で 使 用 さ れ るCCDカ メ ラ の もっ と も大 き な 違 い の1つ は 、 冷 却 機 能 の 有 無 で あ る 。 研 究 用 のCCDカ メ ラで は、 冷 凍機 や 液 体 窒 素 を利 用 して 、暗 電 流 の 心 配 の低 い 一100℃
程 度 ま で 冷 却 す る こ とが 多 い 。 市 販 のCCDカ メ ラ で は、 冷 却 の た め に ペ ル チ ェ 素 子 を利 用 して 電 気 的 に 冷 却 し、 フ ァ ンや 水 冷 装 置 で 熱 を逃 す 機 構 が つ い て い る こ とが 多 い の で 、 暗 電 流 を 完全
に無 視 で き る と こ ろ まで 冷 却 で き る も の は ま れ で あ る 。
最 近 で は 、 市 販 のCCDカ メ ラ の 性 能 も上 が り、 測 光 観 測 に も十 分 耐 え う る もの も出 て き て い て 、 コ ス トパ フ ォー マ ンス の 良 さか ら研 究 目的 の モ ニ タ ー観 測 等 で も利 用 さ れ る こ とが 多 くな っ て きて い る。 た だ し、 問 題 点 は カ タ ロ グ に記 載 さ れ て い る性 能 の 評価 の 条 件 が 必 ず しも明 確 で は
*や ま が た と も ひ ご 文 教 大 学 教 育 学 部
**い と う の ぶ な り 三 重 大 学 教 育 学 部
***や す だ け い こ 三 重 大 学 教 育 学 部
****は まべ ま さ る 日本 女 子 大 学 理 学 部
*****け ん もつ ち か こ 日本 女 子 大 学 理 学 部
******あ お き つ とむ 東 京 大 学 大 学 院 理 学 系 研 究 科 木 曽 観 測 所
ない た め に 、 そ の性 能 評 価 を別 途 す る必 要 が あ る こ とで あ る。 そ の 試 み は そ れ ぞ れ のCCDカ メ ラ につ い て な され て い る が 、一 般 に公 表 さ れ て い る もの は 数 少 ない(例 え ば 、宮 坂 ・市 川(1999) D 、小熊 ・水野(1999)2)、 稲 村 ・中 垣(2006)3))。
文 教 大 学 教 育 学 部 地 学 研 究 室 で は 、 平 成17年 度 文 教 大 学 学 長 調 整 金 で教 育 研 究 用 にSBIG社 製 CCDカ メ ラ シ ス テ ムST‑8XME‑NABGを 購 入 し た 。 これ を同 じ く平 成16年 度 文 教 大 学 学 長 調 整 金 で 購 入 した30cmセ レス トロ ン社 製 望 遠 鏡(CGEIlOO)に 取 り付 け て デ ー タ取 得 に利 用 して い る。 このCCDカ メ ラの 基 本 性 能 を東 京 大 学 大 学 院理 学 系 研 究 科 天 文 学 教 育研 究 セ ン ター 木 曽観 測 所 のCCD較 正 装 置 を利 用 して測 定 した の で 報 告 す る 。
2.CCDカ メ ラ シ ス テ ム
SBIG社 製CCDカ メ ラ シ ス テ ムST‑8XME‑NABG(図1)に は 、2つ のCCD素 子 が つ い て い る 。 1つ は 、 ガ イ ド用 の 素 子 でTI社 製TC‑237Hで あ る 。 メ イ ン の 撮 像 用 の 素 子 の 脇 に 設 置 して あ っ て 、 ガ イ ド星 を 指 定 す る こ と に よ っ て 望 遠 鏡 に オ ー トガ イ ド信 号 を 出 す 事 が 可 能 と な っ て い る 。 メ イ ン の 撮 像 用 のCCD素 子 は 、 コ ダ ッ ク のKAF‑1603MEで あ る 。 今 回 は こ ち ら のKAF‑1603MEに つ い て 、基 本 性 能 を 調 べ た 。KAF‑1603MEの ピ ク セ ル 数 は1530×1020、 ピ ク セ ル サ イ ズ は9μ ×9μ で あ る 。 こ の 素 子 の 表 面 に は マ イ ク ロ レ ン ズ が つ い て い て 、 素 子 の 隙 間 の 不 感 光 領 域 に 落 ち る 光 を 拾 っ て 開 口 率 を 稼 ぐ働 き を し て い る 。 そ の た め 、 見 か け 上 の 量 子 効 率 を 上 げ る こ と に 役 立 っ て い る 。 な お 、 製 品 名 のNABGは ア ン テ ィ ブ ル ー ミ ン グ 機 能 が つ い て い な い と い う 意 味 で あ る 。 惑 星 等 の 比 較 的 明 る い 天 体 を 観 賞 用 に 撮 影 す る と き に は 、CCD素 子 が 飽 和 し た と き の 光 電 子 の 漏 れ に よ る 画 像 の 乱 れ が 問 題 に な る こ と が あ る 。 ア ン テ ィ ブ ル ー ミ ン グ と は 、 そ れ を 防 ぐ た め に 光 電 子 が 飽 和 に 近 づ く と 意 図 的 に 光 電 子 を 外 部 に 流 す 機 能 で あ る 。ST‑8XMEで は 、 こ の 機 能 を 持 つ 素 子KAF‑1602LEを 装 着 し た も の も あ る 。 しか し な が ら 、 こ の 機 能 の た め に 入 力 信 号 に 対 す る 出 力 信 号 の リ ニ ア リ テ ィ ー が 保 証 さ れ ず 、 デ ー タ 取 得 用 に は 必 ず し も適 さ な い と 考 え る 。
ST.8XMEの 冷 却 は ペ ル チ ェ に よ る ヒ ー トエ ク ス チ ェ ン ジ ャ ー で 、 カ タ ロ グ に よ る と 、 フ ァ ン
図1SBIG製CCDカ メ ラ シ ス テ ム ST‑8XME‑NABG。 右 に 出 て い る2 つ の 管 は 水 冷 の た め の 水 を循 環 す る パ イ プ で あ る 。 測 定 の た め に 三 脚 に取 り付 け て あ る 。
に よ る 空 冷 支 援 と 合 わ せ て 、 外 気 温 一35℃ ま で 冷 却 可 能 で あ る 。 さ ら に 、 水 冷 支 援 装 置 が つ い て い て 、 こ れ を 使 う と さ ら に 外 気 温 一45℃ ま で 冷 却 可 能 と 言 う こ と に な っ て い る 。 露 光 は 回 転 式 シ ャ ッ タ ー で 制 御 し て い る 。ADコ ン バ ー タ は16ビ ッ トで あ る 。 フ ィ ル タ ー は 別 売 の フ ィ ル タ ホ イ ー ルCFW‑8AをCCDカ メ ラ シ ス テ ム の 前 面 に 取 り付 け る こ と に よ っ て 使 用 で き る 。 フ ィ ル タ ー は 通 常 の カ ラ ー 写 真 合 成 用 のRGBフ ィ ル タ ー が 附 属 し て い る が 、 観 測 デ ー タ 取 得 の 便 宜 を 考 え て 、 国 際 光 器 製 の 天 体 測 光 用 ジ ョ ン ソ ン カ ズ ン ズ フ ィ ル タ ー(UBVRI)を 購 入 し 、 置 き 換
え た 。 メ ー カ ー に よ る 透 過 率 デ ー タ は 図2の と お り で あ る 。 こ の 他 に 、 補 償 光 学 シ ス テ ム(AO‑
7)を 取 り付 け る こ と も 出 来 る よ う に な っ て い る 。CCDカ メ ラ シ ス テ ム はUSBに よ り コ ン ピ ュ ー タ と 接 続 し 、 制 御 す る よ う に な っ て い る 。 制 御 ソ フ ト はCCDOPSver5.40JでWindowsXP上 で 動 作 す る 。 他 のOSに 対 応 し た 制 御 ソ フ ト もサ ー ドパ ー テ ィ ー か ら利 用 可 能 の よ う で あ る 。 制 御 ソ フ トCCDOPSは フ ィ ル タ ー 制 御 や デ ー タ 取 り込 み 、 温 度 コ ン トロ ー ル 等 必 要 な こ と は 、 ほ ぼ リ モ ー トで 行 え る が 、 積 分 時 間 が0.11〜3600秒 に 限 ら れ 、 積 分 時 間0の バ イ ア ス 取 得 が で き な い 点 が 問 題 で あ る 。
図2国 際 光 器 製 の 天 体 測 光 用 ジ ョ ン ソ ン カ ズ ン ズ フ ィ ル タ ー(UBVR1)の 透 過 率 曲線(フ ィ ル タ ー 添 付 の 資 料 よ
り作 成)
波長(nm)
3.CCD較 正 装 置
今 回 、 測 定 に使 用 したCCD較 正 装 置(図3)は 、 東 京 大 学 大 学 院 理 学 系 研 究 科 天 文 学 教 育 研 究 セ ン タ ー 木 曽 観 測 所 が 所 有 す る 日本 分 光 製 の 装 置 で あ り、 モ ノ ク ロ メ ー タ ー の 部 分 と積 分 球 (Oriel40481)か ら な っ て い る 。 写 真 で左 側 の箱 の 中 に 電 源 ど2次 光 除 去 の フ ィ ル タ ー が あ り、
そ の 後 部 に光 源 が あ る。 中 央 の小 さい 箱 の 中 に グ レー テ ィ ン グ(1200本!mm)が 内 蔵 され て い て 、 出 射 光 の波 長 を制 御 して い る。 出射 光 は右 の箱 内 の 光 学 系 を通 して、 積 分 球 に送 られ る 。 積 分 球 の 直 径 は8イ ンチ 、 出射 穴 径 は2イ ンチ で あ る。 光 源 の ハ ロ ゲ ン ラ ン プ はPhilips製Type7158で あ る 。 モ ノ ク ロメ ー タ ー か らの 出射 光 の 波 長 は ス キ ャ ナ ー で の 自動 制 御 も可 能 に な っ て い る が 、 今 回 は手 動 で 行 っ た。 波 長 範 囲 は200nmか ら1400nmま で ±1.Onmの 制 度 で制 御 可 能 で あ る 。
4.測 定
CCD較 正 装 置 に よ る測 定 は2006年7月29‑30日 お よ び 、10月27日 に木 曽観 測 所 の 暗 室 で 行
っ た。 い ず れ も暗 室 内 の 空 調 に よ り室 温 を 約20℃ に設 定 した。 暗 電 流 の測 定 は9月6日 及 び9月
図3日 本 分 光 製CCD較 正 装 置 。 左 の 箱 の 中 に 電 源 と2次 光 除 去 の フ ィ ル タ ー が あ り、 そ の 後 部 に ハ ロ ゲ ン ラ ン プ の 光 源 が あ る 。 中 央 の 箱 の 中 に グ レ ー テ ィ ン グ(1200本/mm)が 内 蔵 さ れ
て い る 。 出 射 光 は右 の 箱 内 の光 学 系 を通 して 、 積 分 球 に送 られ る 。
8日 に文 教 大 学 地 学研 究 室 に お い て 、空 調 に よ り室 温 を約20℃ に して行 っ た。 温 度 設 定 は カ タ ロ グ に よ る と水 冷 支 援 を行 っ た場 合 で 、 周 囲 の 温 度 よ り も 一45℃ ま で との こ とで あ る 。 従 っ て 、 外 気 温20℃ の場 合 は 一25℃ まで 可 能 と言 う こ とに な るが 、 ペ ル チ ェ の 能 カ ー 杯 まで 使 用 す る と、
温 度 や 電 気 系 統 が 不 安 定 に な っ て しま う。 試 行 錯 誤 の 結 果 、 今 回 の 環 境 で は 、‑17.37℃ で 、 ペ ル チ ェ の 能 力 約84%(制 御 ソ フ トの示 す 値)に な り、 温 度 変 化 が 落 ち着 くこ とが 分 か っ た の で 、 今 回 の 環 境 で は、‑16℃ を現 実 的 な 冷 却 温 度 と考 え 、 実 験 を行 っ た 。 デ ー タ解 析 に はMacOSX 上 のIrafを 使 用 した。
4.1暗 電 流
暗 電 流 、 即 ち ダー ク カ ウ ン トは多 くの 場 合 、‑100℃ 程 度 まで 冷 却 す る こ とで 、 ほ ぼ 無 視 で き る と こ ろ ま で 減 る こ とが分 か っ てい る が 、 そ の た め の 冷 凍 機 や 液 体 窒 素 等 の冷 却 装 置 を準 備 す る こ と は 、 安 価 な 市 販CCDカ メ ラで は 、 現 実 的 で は な い 。 そ こ で 、 こ こ で は、 附属 の 冷 却 装 置 で 容 易 に実 現 可 能 な 温 度 で あ る、 常 温(+20℃)、0℃ 、‑16℃ に設 定 した場 合 の 、 ダ ー ク カ ウ ン
トの平 均(図4)及 び標 準偏 差(図5)の 変 化 を調 べ た 。 い ず れ も横 軸 は暗 電 流 の積 分 時 間(秒)で あ る 。 縦 軸 は 平 均 及 び標 準 偏 差 の値 で 、 各 ダ ー ク フ レー ムの 全 ピ ク セ ル か ら求 め た 平 均 及 び標 準 偏 差 の カ ウ ン ト値(ADU)で あ る 。 図 か ら分 か る よ う に、 ダ ー ク カ ウ ン トの平 均 は0℃ 以 下 で あ れ ば 、積 分 時 間3600秒 以 下 で ほ とん ど変 化 しな い こ とが 分 か る 。 従 っ て 、 少 な くと も0℃ 以 下 に冷 却 す る こ とが 望 ま しい とい え る 。 た だ し、 標 準 偏 差 を見 る と明 らか に温 度 依 存 が あ り、‑16℃
で も30秒 以 上 の積 分 で 、 ダ ー ク カ レ ン トの ば ら つ きが 上 が りは じめ 、 い わ ゆ る ホ ッ トピ ク セ ル
が 増 え始 め る 様 子 が 分 か る。 こ の様 子 は 、 ダ ー ク フ レー ム の ヒス トグ ラ ム(図6a,b)に 良 く現 れ
て い る 。 図6aは 設 定 温 度 一16℃ 、 積 分 時 間600秒 の ダ ー ク フ レ ー ム の ヒ ス トグ ラ ム で あ る 。 図
O aV N
」O U
Expowre(seconds)
図4積 分 時 間 と ダ ー ク フ レ ー ム の 平 均 カ ウ ン トの 変 化 の 様 子 。 横 軸 は 積 分 時 間(秒)、 縦 軸 は ダ ー ク フ レ ー ム の 平 均 カ ウ ン ト(ADU) で あ る 。 設 定 温 度 は+20℃ 、0℃ 、‑16℃ で そ れ ぞ れ 測 定 し た 。
Expowre(seconds)
図5積 分 時 間 と ダ ー ク フ レ ー ム カ ウ ン トの 標 準 偏 差 の 変 化 の 様 子 。 横 軸 は積 分 時 間(秒)、
縦 軸 は ダ ー ク フ レー ム の 平 均 カ ウ ン ト(ADU) で あ る 。 設 定 温 度 は+20℃ 、0℃ 、‑16℃ で そ れ ぞ れ 測 定 した 。
図6図6a(左)は 設 定 温 度 一16℃ 、 積 分 時 間600秒 の ダ ー ク フ レ ー ム の カ ウ ン トに 対 す る ヒ ス トグ ラ ム で あ る 。 図6b(右)は 積 分 時 間3600秒 の ダ ー ク フ レー ム で あ る 。
6bは 積 分 時 間3600秒 で あ る 。 積 分 時 間 と 共 に ホ ッ ト ピ ク セ ル の ダ ー ク カ ウ ン トが 増 加 し て い く 様 子 が 分 か る 。 図4、 図6か ら こ のCCDの バ イ ア ス カ ウ ン トは1950ADU付 近 で あ る こ と が 推 定
で き る 。 図6で 特 徴 的 な の は 、 図6aで2250ADU付 近 、 図6bで3750ADU付 近 の ピ ー ク の 存 在 で あ る 。 こ の 現 象 は コ ダ ッ ク の 他 のCCD素 子 、KAF‑1001Eで も報 告 さ れ て い る(柳 沢(2006)4))。
原 因 はHowel1(2006)5)に よ る と 、CCD製 造 段 階 で の 欠 陥 と の こ と で あ る 。 こ の ピ ー ク の カ ウ ン トの 値(バ イ ア ス を 引 い た 値)は 積 分 時 間 に 比 例 し て 増 加 す る 傾 向 が あ る 。
以 上 か ら 、‑16℃ 程 度 の 冷 却 で は 、 平 均 レ ベ ル で の 暗 電 流 の 上 昇 は な い が 、 ホ ッ ト ピ ク セ ル の 暗 電 流 の 量 は 確 実 に 増 加 し、 且 つ 素 子 の 欠 陥 に よ り不 均 一 な 分 布 と な る こ と が 分 か る 。 こ れ ら
図73600秒 露 出 の ダ ー ク フ レ ー ム を2 枚 で 、 そ れ ぞ れ の ピ ク セ ル ご と に 引 き算 を行 っ て 作 っ た フ レ ー ム の ヒ ス トグ ラ ム 。 縦 軸 は対 数 目盛 で あ る こ と に 注 意 。 素 子 欠 陥 に よ る 影 響 は 消 え て い る 。
の 影 響 を で き る だ け 除 去 す る た め に 、 オ ブ ジ ェ ク ト フ レ ー ム と 同 じ積 分 時 間 の ダ ー ク フ レ ー ム を と っ て お い て 、 ピ ク セ ル ご と の 引 き 算 を 行 う こ と が 必 要 と な るOこ の 効 果 を 確 か め る た め に 、 3600秒 露 出 の ダ ー ク フ レ ー ム を2枚 と り、 そ れ ぞ れ の ピ ク セ ル ご と に 引 き算 を行 っ た フ1ノー ム の ヒ ス ト グ ラ ム を 示 し た の が 図7で あ る 。 こ の 結 果 か ら 、 素 子 欠 陥 と 暗 電 流 の 影 響 は ピ ク セ ル ご と の 減 算 で 、か な りの 部 分 が 補 正 可 能 で あ る こ と が 分 か る 。従 っ て 、こ のCCDカ メ ラ で は 、‑16℃
程 度 の 冷 却 の 場 合 、 フ ラ ッ ト フ ィ ー ル ド に よ る 補 正 の 前 に 、 ダ ー ク フ レ ー ム を利 用 す る こ と が 必 須 で あ る 。
4.2分 光 感 度 特 性
分 光 感 度 特 性 測 定 の た め に、 光 源 か らの 出 射 光 の 中 心 波 長 を変 化 させ て 、CCD素 子 の カ ウ ン
トを測 定 した 。 出 射 光 の半 値 幅 は1.Onmで あ る。300nmか ら1100nmま で20nmお きに 波 長 を変
え て 、 フ ィ ル ター 無 しで 積 分 球 か らの 光 を30秒 積 分 した 。 得 られ た 各 フ レ ー ム か らは 、 同 一 積
分 時 間 の ダ ー ク フ レー ム を 減 算 した 。 光 学 系 の 影 響 に よ り、CCD素 子 全 体 に必 ず し も一 様 な光
が 当 た らな い可 能 性 が あ る の と、 時 々 出 力 む らが 生 じ る こ とが あ る(後 述)の で 、 測 定 値 は、 中
心 部 分[600:900,400:600]の み を使 い 、 平 均 を求 め た 。 今 回 は 、 絶 対 較 正 まで は 出来 なか っ た の で 、
ハ ロ ゲ ンラ ン プ の 色 温 度 を3000Kと 仮 定 して 、相 対 値 と して分 光 感 度 特 性 を求 め た 。 結 果 は 図
8aに 示 した とお りで あ る 。 なお 、 光 源 の ハ ロ ゲ ン ラ ン プ の 色 温 度 は 、 仕 様 書 に よ る と、 電 源 電
圧24Vで 、 色 温 度3400Kで あ る 。今 回 の 測 定 で は電 圧 を15Vに 設 定 し た の で 、色 温 度 は90%程
度 下 が っ て い る こ と に な る(CCD較 正 装 置 仕 様 書(2000)6)よ り)。 図8bは メ ー カ ー 提 供 の
KAF‑1603MEの 量 子 効 率 で あ る 。 両 者 を比 較 す る と、 長 波 長 側 の感 度 特 性 は概 ね 一 致 して い る が 、
感 度 の ピー ク位 置 は今 回 の 測 定 値 の方 が や や 短 波 長 側 に な っ て い る 。 ま た 、 ピ ー ク よ りも短 波 長
側 で の 感 度 は測 定 値 の 方 が か な り下 が っ て い る こ とが わ か る 。 こ のCCDカ メ ラで は 、 冷 却 の 際
の水 滴 防止 の た め に 、CCD素 子 は乾 燥 剤 と共 に 封 入 され て い る。 そ の た め に 受 光 部 に は 窓 材 が
使 わ れ て い る 。 こ の 窓 材 は 、 販 売 元 に よ る と 、BK7に コ ー テ ィ ン グ を施 した もの との こ とで あ
るが 、 そ の 特 性 の 詳 細 が不 明 で あ る の で 、 断 言 は 出 来 ない が 両 者 の 違 い 、特 に短 波 長 側 の 違 い は
こ の 窓 材 の 影 響 と考 え られ る 。
蠶
図8分 光 感 度 特 性 。 横 軸 は 波 長(nm)で 縦 軸 が 感 度 を表 す 。 図8a(左)は 今 回 測 定 した も の で 、 測 定 は相 対 測 定 の た め に 縦 軸 の 値 は任 意 で あ る 。 ま た 、 光 源 の 色 温 度 は3000Kを 仮 定 し て い る 。 図8b(右)は メ ー カ ー の 資 料 に あ る分 光 感 度(量 子 効 率)の 様 子 で あ る 。
4.3リ ニ ア リテ ィ ー
CCDカ メ ラ に 国 際 光 器 製 の ジ ョ ン ソ ン カ ズ ン ズ フ ィ ル タ ー(UBVRI)を 取 り付 け て 各 バ ン ド の リ ニ ア リ テ ィ ー を 測 定 し た 。 光 源 か ら の 出 射 光 は 半 値 幅 を1.Onm、 中 心 波 長 をUバ ン ド は350 nm、Bバ ン ドは450nm、Vバ ン ド は520nm、Rバ ン ドは650nm、1バ ン ド は850nmに 設 定 し た 。 Uバ ン ド以 外 の 各 バ ン ド に つ い て 、0.9秒 か ら 飽 和 す る ま で 、 積 分 時 間 を 変 え て カ ウ ン ト を 測 定
し た 。 各 バ ン ド各 積 分 時 間 の カ ウ ン ト値 は 、 各 フ レ ー ム か ら 、 積 分 時 間 に 対 応 す る ダ ー ク フ レ ー ム を 減 算 し、 中 心 部 分[600:900,400:600]の 平 均 を と っ た も の で あ る 。 ま た 、 測 定 は 各 積 分 時 間 に つ い て 、5回 ず つ 測 定 し 、 平 均 し て い る 。 結 果 は 図9に 示 し た と お り で あ る 。Uバ ン ド以 外 は 飽 和 す る 直 前 ま で 、 良 好 な リ ニ ア リ テ ィ ー が 得 ら れ て い る 。Uバ ン ドに つ い て は 、 図5aの 分 光 感 度 か ら も 分 か る よ う に 、 感 度 は 期 待 で き な い が 、320秒 ま で 積 分 し た 結 果 を 見 る と 、 か ろ う じ て カ ウ ン トが 上 が っ て い る 事 が 分 か る 。 し か し な が ら、 い ず れ に し て も 通 常 の 使 用 で は 、 実 用 的 で は な い と考 え ら れ る 。
Exposure(seconds)
図9UBVRIそ れ ぞ れ の バ ン ドの リ ニ ア リ テ ィ ー の 様 子 。 横 軸 は 積 分 時 間 (秒)で 、 縦 軸 は フ レ ー ム の 中 央 部 分 [600:900,400二600]に つ い て 、 ダ ー ク を差 し引 い た後 の 平 均 カ ウ ン トで あ る 。
4.4ゲ イ ン
こ こ で い う ゲ イ ン は 、CCDの 出 力 カ ウ ン ト(ADU)と 実 際 にCCDか ら 出 て く る 光 電 子 の 個 数 (e)の 比 で あ る 。 各 積 分 時 間 で 、 同 一 積 分 時 間 の フ レ ー ム の 差 を 取 っ て 、 そ の 分 散 と 、 平 均 値 の2倍 を プ ロ ッ トす る こ と に よ り、 こ の ゲ イ ン を 求 め る こ と が 出 来 る 。 リ ニ ア リ テ ィ ー と 同 様 に 、 平 均 値 、 分 散 を 求 め る 際 に は 、 中 心 部 分[600:900,400:600]の ピ ク セ ル の み を 使 っ た 。 図10はB バ ン ド の 例 で あ る 。 こ れ よ り 、Bバ ン ドの ゲ イ ン は 最 小 二 乗 フ ィ ッ ト に よ り2.62e/ADUと な っ た 。 同 様 に し て 、Vバ ン ドは2.75e‑/ADU、Rバ ン ドは2.77e!ADU、1バ ン ドは2.66e/ADUと な っ た 。 メ ー カ ー の カ タ ロ グ に よ る と 、2.6e/ADUと あ る の で 、 ほ ぼ 仕 様 通 り の 値 と な っ て い る こ と が 確 認 さ れ た 。 読 み 出 し ノ イ ズ に つ い て は 、 バ イ ア ス の 測 定 が 出 来 な い の で 、7月29日 に 測 定 し た0.9秒 積 分 の2枚 の ダ ー ク フ レ ー ム の 差 を と り 、 暗 電 流 を 無 視 出 来 る も の と し て 、 そ の 分 散 を 轟 で 除 して 求 め た 。 値 は8.83ADUと な っ た 。 ゲ イ ン を2.6e/ADUと す る と、23eと な る 。 因 み に カ タ ロ グ 値 は15eで あ る 。 今 回 の 測 定 値 に 暗 電 流 の 影 響 が あ る と し て も 、 読 み 出 し ノ イ ズ に つ い て は カ タ ロ グ 値 ま で 出 て い な い 。 原 因 と し て は 暗 電 流 の 影 響 以 外 に は 電 源 の 安 定 性 の 問 題 が 考 え ら れ る 。 原 因 解 明 に は 、 よ り詳 細 な 検 証 が 必 要 で あ る 。
図10Bバ ン ドの ゲ イ ン の 測 定 。 横 軸 は2つ の フ レ ー ム の 差 の 分 散 、 縦 軸 は 差 の フ レー ム の 平 均 値 の2倍 で あ る 。
a2
5.そ の 他
素 子 全 体 の様 子 を調 べ るた め に 、全 体 に一 様 に光 が 当 た る よ うに して 、 各 バ ン ドに つ い て、 露 光 した 。CCD素 子 の 大 き さ に比 べ て 、積 分 球 の 大 き さ が 必 ず し も十 分 で は な い た め に 、 積 分 球 本 来 の 使 い 方 に よ っ て 一様 光 を得 る こ とは 困 難 で あ る の で 、CCDカ メ ラ と積 分 球 の 距 離 を約1m 離 し、 素 子 全 面 に一 様 に光 が 当 た る よ う に し た 。 図11aはVバ ン ドで600秒 積 分 した 場 合 の フ レ ー ム全 体 の 様 子 で あ る 。 丸 く見 え て い る の は 、 フ ィ ル ター 上 の 埃 で あ る と考 え られ る 。 図11bは 図11aの フ レ ー ム を 同 じ条 件 で 別 に取 っ た フ レ ー ム で 割 り算 した もの で あ る。 これ か ら、 バ ン ド が 同 じで あ れ ば パ タ ー ン は保 存 され る こ とが 確 か め られ た 。 他 の バ ン ドで も結 果 は 同様 で あ る 。
た だ し、 出力 む らの 現 象 が あ る こ と も確 認 さ れ た 。 図12はVバ ン ドで 、 同 条 件 で 、300秒 積 分
の 場 合 の フ レ ー ム の 一 例 で あ る 。 左 下 を2次 元 座 標(xy)の 原 点 と して 、 ピ ク セ ル を示 す と、
図11図11a(左)はVバ ン ドで 積 分 球 か らの 一 様 な光 で600秒 露 光 した 場 合 の フ レー ム 全 体 の 様 子 で あ る 。 丸 く見 え て い る の は 、 フ ィ ル タ ー 上 の 埃 で あ る と考 え られ る 。 図11b(右)は 図11aの フ レ ー ム を同 じ条 件 で 別 に 取 っ た フ レ ー ム で 割 り算 した も の で あ る。
図12図11aと 積 分 時 間 以 外 は 同 じ条 件 で 積 分 した も の 。 積 分 時 間 は300秒 。 左 下 を2次 元 座 標 (xy)の 原 点 と す る と 、y>805の ピ ク セ ル で の 光 電 子 の 出 力 が ス ム ー ズ に い か な い こ とが あ る 。
y>805の ピ ク セ ル で の 光 電 子 の 出 力 が ス ム ー ズ に い か な い 場 合 が あ る 。 因 み に こ の フ レ ー ム で の y>805で の カ ウ ン トは お よ そ3500ADu、y<805で は お よ そ3600ADuで あ る 。 必 ず し も再 現 性 が あ る わ け で も な い の で 、 因 果 関 係 は 不 明 で あ る が 、 露 光 量 が 少 な い 場 合 に お き る 可 能 性 が あ る よ う な 印 象 で あ る 。
6.最 後 に
今 回 の 測 定 で は 、ST‑8XME‑NABGに つ い て 、お お ま な 基 本 性 能 の 測 定 を し た 。 そ の 結 果 、分 光 感 度 特 性 に つ い て は 、400nm以 下 の 短 波 長 即 ち 、Uバ ン ドで は 、 カ タ ロ グ 値 ほ ど に は 感 度 は な く 、 実 用 的 な も の と は 言 え な か っ た 。 し か し 、BVRIの 各 バ ン ドで は 、 十 分 に 使 用 に 耐 え る 感 度 が 確 認 さ れ た 。 ま た 、 各 バ ン ドに つ い て 、 飽 和 直 前 ま で 良 好 な リ ニ ア リ テ ィ ー を 示 す こ と が 分 か っ た 。 冷 却 に 関 して は 、3600秒 以 内 の 露 出 に 関 し て は 、0℃ 以 下 に 冷 や す こ と が 必 要 で あ り、‑16℃ 程 度 で も デ ー タ 処 理 の 際 に は ダ ー ク フ レ ー ム の 減 算 が 必 須 で あ る こ と が 分 か っ た 。
今 後 は 、 実 際 に望 遠 鏡 に装 着 した際 の フ ラ ッ トフ レー ム の様 子 と限 界 等 級 につ い て定 量 的 に調 べ る必 要 が あ る。
謝 辞
本 研 究 の 一 部 は文 教 大 学 共 同研 究 費 に よる もので あ る 。 ま た 、東 京 大 学 大 学 院 理 学 系 研 究 科 天 文 学 教 育 研 究 セ ン ター 木 曽観 測 所 の 装 置 を利 用 させ て い た だ い た 。 東 京 学 芸 大 学 教 育 学 部 の 西 浦 慎 悟 氏 に は 資 料 提 供 を う け た 。 国 立 天 文 台 岡 山 天 体 物 理 観 測 所 の柳 沢 顕 史 氏 に は貴 重 な情 報 提 供
をい た だ い た 。 こ こ に感 謝 の 意 を示 す 。
参 考 文 献
1)宮 坂 正 大 、 市 川 伸 一:市 販CCDカ メ ラ の 性 能 評 価 、 国 立 天 文 台 報 、459‑731999
2)小 熊 竜 一 、 水 野 孝 雄:市 販CCDカ メ ラ の 試 験 的 導 入 と そ の 性 能 評 価 、 東 京 学 芸 大 学 紀 要 第4部 門 、 5157‑651999
3)稲 村 真 琴 、 中 垣 輝 子:簡 易 積 分 球 の 自 作 と 市 販CCDカ メ ラ の 性 能 評 価 、 日 本 女 子 大 学 理 学 部 卒 業 論 文 、2006
4)柳 澤 顕 史:privatecommunication2006
5)Howell,S.B.:HandbookofCCDAstronomysecondedition,CambridgeUniversityPress,2006
6)日 本 分 光:CCD較 正 装 置 仕 様 書 中 の 取 扱 説 明 書 ・SO‑H150型 ハ ロ ゲ ン ラ ン プ 、p.2‑3,日 本 分 光 株 式 会 社,2000