高齢者・低体力者対象運動プログラム開発 実施報告③
-肩痛・肩こり改善運動プログラム実施者の 状態不安に焦点をあてて-
宮田 浩二
*包國 友幸
**小林 正幸
***Development of a therapeutic exercise program for the elderly and infirm. An implementation report 3
-With a focus on State-Anxiety in individuals undergoing an exercise program to improve shoulder aches / stiffness in the shoulders-
Koji MIYATA, Tomoyuki KANEKUNI, Masayuki KOBAYASHI
* みやた こうじ 文教大学人間科学部人間科学科
** かねくに ともゆき 東京スポーツ・レクリエーション専門学校 非常勤講師
*** こばやし まさゆき NECコントロールシステム株式会社
This is an implementation report on how a new type of exercise program changed State-Anxiety and body sense.
Results are as follows.
1) There was State-Anxiety before the exercise in a range of 23 and 57; State-Anxiety after the exercise changed to a low of 21 to a high of 51. The mean level of State-Anxiety decreased significantly from 39.80 before the program to 32.70 after (p < .001).
2) Flexibility and mobility improved on the spot according to a questionnaire survey. In addition, mood improvement and facial expression and color tended to the positive; a change in psychological factors was noted.
Based on the current results, psychological factors were involved in the improvement of shoulder aches and stiffness of the shoulders; the current program decreased anxiety and was effective at improving physical and mental health.
KeyWords: shoulder aches/stiffness of the shoulders Therapeutic exercise program PNF State-Anxiety wellness life
肩痛・肩こり 機能活性プログラム PNF 状態不安 ウエルネスライフ
1.緒 言
1-1 研究の背景
本年度(平成20年度)より、医療保険者が新 たに特定健康診査や特定保健指導、後期高齢者医 療制度などを活用できる新しいシステムがスター トした。その背景には、超高齢社会を迎え、国民 医療費や介護費用などの高騰問題や生活習慣病の 予防による生活の質(QOL)の確保等があげられ る(川初清典 2005)。また、野崎(2000,2006)は、
より幸福でより充実した人生を送るためには、ウ エルネスライフを実践することが大切であると述 べている。その中で、健康運動プログラムの役割 は予防医学や代替医療、生理的健康または精神的 健康とのかかわりにおいて期待されている。その ような現状の中、さまざまな運動プログラムの開 発が行われてきた(例えば、宮田浩二ら2006,二 宮雅也ら2006,山﨑利夫ら2003)。また、介護保 険制度の見直しとして介護給付費を抑えることを 目的とした筋力トレーニングの導入など、介護予 防サービスが注目されてきた(川初清典 2005)。
しかし、新聞等で報道されているように、その介 護予防サービスのモデル事業の報告では、筋力ト レーニングを実施することで状態悪化となる例や 参加希望者が少数のために筋力トレーニング教室 展開の縮小の例も一部報告されている(例えば、
朝日新聞〔朝刊〕)。
その中で筆者らは、高齢者や低体力者または運 動嫌いや運動をあきらめている対象者に対応し、
即効果が実感でき、民間や公共施設にて集客率や 継続率が高く、経営として成り立ち、経済的にも 有効な集団運動プログラムはできないものかと数 年に渡り調査・研究をしてきた。
1-2 スポーツライフの変化
現在、わが国の成人におけるスポーツクラブラ イフは、「アクティブ・スポーツ人口」「スポーツ クラブ加入率」「スポーツ観戦率」「スポーツ・ボ ランティア実施率」共に、1998年から2000年で 増加傾向がみられたものの、2000年から2002年 で減少傾向がみられる(SSF笹川スポーツ財団
事業部 情報課 2002)。また、一般民間スポー ツクラブ参加率は3%程度、公共の施設参加率を 加えても約4%の参加率であり、スポーツクラブ 参加率においては、欧米と比較すれば、三分の一 にすぎないといわれており、近年、さほど変化し ていないのが現状である(高橋千恵子 2004)。
一般の民間スポーツクラブは、健康で運動習慣 がある人、運動好きまたは運動に興味のある人々 を顧客ターゲットとしており、日本のスポーツク ラブ参加率は、ここ数年前と比較しても伸びはな く、郊外の人気地区において競合され、会員の獲 得合戦に傾注しており、新しい店舗展開による収 益の増大戦略が未だ中心とされている。
1-3 民間スポーツクラブにての運動プログラム 民間スポーツクラブでは様々な中高年者対象運 動プログラムが開発・実施されているが、少しで も集客率が高く、収益に反映できることを目標と している。そのため、その時代の流行やブームに かたよってしまうことも考えられ、一つのプログ ラムを長く展開し縦断的にデータを収集し効果の 分析を行なうことは難しいと考えられる。また、
素早く展開し、提供するプログラムの質を均一化 するため、指導マニュアルでの指導者養成や品質 管理が主流である。その為、裏打ちされた知識や 理論や様々な指導時の配慮を必要とする「高齢者・
低体力者対象運動プログラム」を展開し有効性を 実証していくのは困難であると考えられる。
1-4 新しいタイプの運動プログラム開発と展開 効果が即実感でき「効いた」あるいは「楽に なった」と実感できる手技療法として以前から、
ストレッチングの手法がある。最近では、柳澤健 (1997)らが提案しているPNFや宮本繁範(1998)
らのモビライゼーションなどの治療手技があげら れる。筆者らは、その治療手技の理論やコンセプ トを応用し、マンツーマン施術ではない形式、す なわち集団運動プログラムとしてその効果が実感 できるプログラムはできないものかという発想に 基づき、細田多恵(2004)らの促通という現象に 着目し、高齢者・低体力者対象運動プログラムを 開発してきた。この運動プログラムは「機能活性
プログラム」としてシリーズ化されている(宮田 浩二・包國友幸・小林正幸,2005; 包國友幸・宮 田浩二・小林正幸,2008)。
1-5 肩痛、肩こり改善運動プログラム
以前に報告した運動プログラムは、川初清典
(2005)の機能解剖学、運動学、動作学やPNFコ ンセプト、モビライゼーション理論などの考え方 を応用しており、本研究では「肩プログラム」に 焦点を置き実施した。
肩関節の捉え方としていくつかの分類法がある が、以下のように複合的な関節で構成されている。
①胸鎖関節 ②肩鎖関節 ③肩甲上腕関節
④肩甲胸郭関節 ⑤第二肩関節など
の5つの関節から構成されている(I.A.KAPANDJI・
荻島秀男監訳・嶋田智明訳1998)。今回は、肩甲 帯の各筋が協調的に機能し、肩甲上腕リズムを調 整し、肩甲胸郭関節と肩甲上腕関節のコンディ ショニングによる体幹・肩甲帯・上肢のコーディ ネーションや協調性を改善することとした。
第1プログラム
肩甲胸郭関節のコンディショニングとして、宮 本繁範(1998)のPNFコンセプトの集合運動パター ンの考え方を応用し、肩甲骨パターンの前方挙上
-後方下制(図1)、後方挙上-前方下制(図2)
をセルフにて側仰臥で実施し、前鋸筋・菱形筋・
小胸筋・肩甲挙筋・鎖骨下筋・僧帽筋などの肩甲 帯の筋のコンディショニングによる肩甲骨の可動 性の改善を行った。
第2プログラム
棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋のローテー ターカフコンディショニングとし、肩甲上腕リズ ムを調整した。
第3プログラム
動きの統合や体幹との協調性づくりを目的と し、宮本繁範(1998)が実施している上肢パター ンを過度な負荷とならぬよう適度な抵抗となるよ う、強調のタイミングを重視しセルフにて実施し た。
2.目 的
本研究は、民間スポーツクラブの今後の経営方 針を踏まえ、一般成人に新しいタイプの肩痛・肩 こり改善の為の本運動プログラムを実施し、状態 不安及び身体感覚がどのように変化したかの実施 報告である。
腰痛や肩こりなどの整形外科的慢性痛の情報な どを基に実施展開する中で、整形外科的慢性痛と 心理的要因の関係性に筆者らは注目するようにな り、高齢者・低体力者の本運動プログラムは以下 の2条件をみたすことが重要ではないかと推測さ れる。
①可動性や柔軟性の改善による動きやすさや可 動域の改善
②運動前後における心理状態の変化
上記の2点が即実感できることである。効果の 即実感があって対象者は効果があると評価するの
図1 前方挙上一後方下制
画像をクリックすると動画が再生します。
図2 後方挙上一前方下制
画像をクリックすると動画が再生します。
ではないかと仮定し調査を行った。
3.方 法
3-1 調査対象
本研究における対象者は埼玉県にあるB健康保 険組合の「肩痛予防・改善講座」に参加した組合 員である。
対象者:40名の平均年齢48.10歳(33歳~60歳)
男性16名:平均年齢47.25歳(34歳~60歳)
女性24名であり平均年齢48.66歳(33歳~60歳)
対象者は、肩痛・肩こり改善希望か、または家 族に肩痛・肩こり改善希望者がおりその改善方法 を学ぶために本講座に参加した。
3-2 調査期間
調査日時:2005(平成17)年6月4日(土)
10:00~12:00 調査場所:B健康保険組合
健康増進センター研修ホール
3-3 調査方法
(1) 状態不安質問紙調査
運動プログラム実施前・後に以下の状態不安心 理質問調査を行った。
The State Trait Anxiety Inventory (State- Anxiety状態不安 )調査
今回は、Spielberger(1970)らの分類に従っ て不安を捉えた。彼らは、不安を特性不安と状態 不安に分類し、前者を人格特性として捉え、後者 を一時的情動状態の不安として分けて考えた。
これは20項目から成り、20~80点の範囲で得 点が高いほど状態不安が高いことを示している。
(2) アンケート調査
運動後の身体感覚(「軽くなった」「効いた」な どのアンケート調査)
プログラムに参加したことによる自覚的評価な どを記述するアンケート調査を実施し、一過性で はあるが身体的・精神的健康に運動がどのように 関与するかについて調査することを目的としたア ンケート調査を行った。
アンケートの質問項目は、以下の通りである。
1)参加した動機について(複数回答)
2)全体としてどう感じたか
3)講座内容の『PNFコンセプトに基づいた機能 活性プログラム』は参考になったか
4)今回習得したことを実践し活かしていきたい と考えているか
5)講座における運動終了後、肩や体の感覚につ いてどのような感じが得られたか
以上の5項目について、対象者に自由記述して もらった。
4.結 果
(1) 状態不安質問紙の結果
運動前の状態不安について男女間に有意な差が あるか比較した。男性の運動前状態不安の平均値 は38.94(±8.54)、また女性の平均値は40.38(±
7.17)であり、有意な差はみられなかった。
運動後の状態不安について男女間に有意な差が あるかどうか比較した。男性の平均値は31.44(±
7.40)、女性の平均値は33.54(±7.38)であり、有 意な差は見られなかった。したがって、男女を込 みにして運動前・後の状態不安得点の比較を行 なった。
男女を込みにした被験者40名全員の運動前の 状態不安得点は最低23得点から最高57得点の範 囲にあり、運動後の状態不安得点は最低21得点 から最高51得点の範囲に変動した。平均値は、
運動前の状態不安39.80(±7.68)から運動後の状 態不安32.70(±7.37)と変動し、有意な低下を示 した(p<.001)(表1,図4)。
(2) アンケート調査の結果
1) 参加した動機について(複数回答)
全体では「現在、自分が肩痛・肩こりの症状 に悩まされているので参加した」:26名(65%)、
「自分や家族の健康づくりに役立てたいと思い参 加した」:6名(15%)、「機能活性プログラムに ついて具体的に内容を知るために参加した」:8 名(20%)であり、自分自身が現在肩痛・肩こ りの症状に悩まされているので参加された対象者 が60%以上であった。
2) 全体としてどう感じたか
全体では「良い」:40名(100%)、「普通」: 0 名(0%)、「あまり良くない」:0名(0%)であった。
男性で○をつけた理由の自由記述では、30代
男性では「知識と理屈が結び付いた」「機能的な ストレッチについて学べた」「体が軽くなった」、
40代男性「体を動かしながらの講義なので良かっ た」「実際やってみて少し肩が楽になった」「勉強 になった」50代男性「具体的な説明でわかりや すかった」などであった。
女性で○をつけた理由の自由記述では、30代 女性では「わかりやすい説明で自分のためになっ た」、40代女性「どうして五十肩になるのか説明 が分かりやすかった」「肩こりに肩甲骨が関係し ていることがわかった」50代女性「テニスでの 肩のほぐし方がよくわかった」、60代女性「肩が 軽くなった」などであり、プログラム実施による 効果がみられた。
3) 講座内容の『PNFコンセプトに基づいた機能 図 1
0 10 20 30 40 50 60
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37383940
< 参加者 40 名 > 状 態
不 安 得 点
運動前 運動後
図 2
32.70 39.80
0.00 10.00 20.00 30.00 40.00 50.00
運動前 運動後
状 態 不 安 平 均 値
図3 被験者全員40名各々の運動前・後の状態不安得点の変化
表1 運動前・後の状態不安の変動
図4 被験者全員40名の運動前後の状態不安 得点平均値の変化
N=40 (男:16 女:24)
M SD
運動前 39.80 7.68
運動後 32.70 7.37
t ***
*** p<.001
活性プログラム』は参考になったか
全体では「参考になった」:36名(90%)、「普 通」:4名(10%)、「あまり参考にならなかった」: 0名(0%)であった。
男性では「参考になった」:12名(75%)、「普 通」:4名(25%)、「あまり参考にならなかった」: 0名(0%)であった。
男性で○をつけた理由の自由記述では、30代 男性「知らなかったことを、いろいろ教えてもら えて良かった」「肩が楽になった」、40代男性「コ ンディショニングには最適かもしれない」「ケア の勉強になった」「治したい所が良くなった感じ がする」、50代男性「メンテナンスが必要と思う ので参考になった」「実践的だった」などであった。
女性では「参考になった」:24名(100%)、「普 通」:0名(0%)、「あまり参考にならなかった」:
0名(0%)であった。
女性で○をつけた理由の自由記述では、30代 女性「実演があって動きがわかりやすかった」、
40代女性「できることだったのですぐ実行した い」「肩と骨のリンクの話はおもしろかった」な どであった。
4) 今回習得したことを実践し活かしていきたい と考えているか
全 体 で は「 実 践 し よ う と 考 え て い る 」:39 名(97.5%)、「現在、別の方法を実践しており、
こちらの方が自分にあっていると思う」:1名
(2.5%)、「当面、実践しようとは考えていない」: 0名(0%)であった。
男性では「実践しようと考えている」:15名
(93.75%)、「現在、別の方法を実践しており、
こちらの方が自分にあっていると思う」:1名
(6.25%)、「当面、実践しようとは考えていない」: 0名(0%)であった。
男性で○をつけた理由の自由記述では30代男 性「年をとった時体のバランスを安定的に改善さ せやすくなる」、40代男性「現在行っているスト レッチの準備のようである」「とても体が楽になっ た」「現在肩痛がある」、50代男性「道具を使わ ずに手軽にできそう」などであった。
女性では「実践しようと考えている」:24名
(100%)、「現在、別の方法を実践しており、こ ちらの方が自分にあっていると思う」:0名(0%)、
「当面、実践しようとは考えていない」:0名(0%)
であった。
女性で○をつけた理由の自由記述としては、
30代女性「気持ちよかった」「少しでも肩こりを 治したい」、40代女性「今、肩がつらく今回体験 して楽になった」「テレビを見ながらでもできる」、
50代女性「骨のゆがみを少しでも改善したい」「す ぐ運動するのではなくストレッチが大事」などの 意見があり、今後、実践して活かしていきたいと 思っているようであった。
5) 講座における運動終了後、肩や体の感覚につ いてどのような感じが得られたか
全体では「とてもすっきりした」:10名(25%)、
「ややすっきりした」:25名(62.5%)、「どちら ともいえない」:3名(7.5%)、「やや痛む」:2名
(5%)、「かなり痛む」:0名(0%)であった。
男性では「とてもすっきりした」:4名(25%)、
「ややすっきりした」:10名(62.5%)、「どちら ともいえない」:1名(6.25%)、「やや痛む」:1 名(6.25%)「かなり痛む」:0名(0%)であった。
女性では「とてもすっきりした」:6名 (25%)、
「ややすっきりした」:15名(62.5%)、「どちら ともいえない」:2名(8.3%)、「やや痛む」が:
1名(4.1%)「かなり痛む」:0名(0%)であった。
以上の結果より、介護予防や運動器疾患の予防・
改善を目的とした、高齢者・低体力者対象の運動 プログラムを考えた場合、生理的・身体的問題に 加えて心理・社会的問題も考慮する必要があるこ とがわかった。
5.考察
高齢者・低体力者対象の集団運動プログラムを 考えた場合、筋力アップや筋肥大を目的とした筋 力トレーニングや筋をリラックスさせることを目 的としたストレッチングも重要であると考えられ る。しかし、その準備段階として体の使い方や動 き作りを目的とした促通という現象の重要性に着 目し、機能的な身体の調整を目的とした運動プロ
グラムの効果を研究してきた。この運動プログラ ムを開発・展開し約8年が経過し、全国で様々な 対象者に実施してきた。単発のプログラム参加で はあるが、その場で柔軟性や可動性が改善し、「気 持ちがよくなった」「効いた」などの気分の改善 や顔つきや顔色の変化など、データや数値に表れ にくいと思われる感想が多数寄せられている。
先行研究と同様に、本研究においても、状態不 安質問紙を用いた調査では、運動前・後での状態 不安の変化は、運動後の状態不安得点が明らかに 低下しており(p<.001)、一過性の効果ではあ るがこの運動プログラムは肩痛・肩こり改善希望 者の不安を軽減したことが示された。
次にプログラム終了後に行なったアンケート調 査の結果においても、先行研究と同様に、肯定 的回答が多く、「体の動きがよくなった」「効い た」などの身体上の改善効果や「気持ちよかった」
「すっきりした」などの心理的な効果と 「今後続 けて実践しようと考えている」 など日常の実践活 動につながる可能性などが示唆された。
整形外科的慢性痛と心理的要因の関係性につい て菊地(2003)は、「腰痛を椎間板の損傷・障害 という解剖学的、生理学的病態が原因とする考え 方から、生物学的因子とともに、多様な因子、と くに心理的、社会的因子が、従来われわれが認識 していた以上に早期から、腰痛の増悪や遷延化に 深く関与していることが明らかにされつつある」
としている。
そのようなことから、今回の新しいタイプの肩 痛・肩こり改善運動プログラムは、柔軟性・可動 性の改善や「すっきりした」などの身体感覚や状 態不安が軽減しており、早期から実施することで、
慢性痛の予防や心理的因子の改善に効果があるこ とが示唆された。
また、菊池(2003)は腰痛の運動療法に対す る評価と課題として、「運動療法は、短期的には その有効性が唯一認められている治療法である。
しかし、それでも未解明な点が少なくない。現在 までに判明しているのは、急性期には適応がない が、回復期や慢性期には有効性が認められている という事実がある。治療効果発現機序を考えてみ ても効果があるとしたら、その効果は特異的な理
由(筋肉の状態の改善など)によるものか、ある いは非特異的な理由(心理的効用、すなわち不安 の除去、前向きな姿勢、自信、施療者の患者への 関心など)によるものか、さらには両者が関係し ているのか、についても明らかになっていない」
と述べている。
以上のようなことから、身体をほぐし・調整し、
身体的・心理的効果が即実感でき身体に「気づき」
をあたえる本運動プログラムが特異的および非特 異的な事象に、有効であることが示唆された。
今後、日常での社会活動を行う上で、有効であ り、生活の質(QOL)の維持・向上につながる可 能性がうかがわれ、その継続率や成果を追跡して いくことの重要性が示された。
6.今後の課題
今回は、先行研究同様に、本運動プログラムの 前後の状態不安の変化と、運動後の各自の感覚に 焦点をあてて調査したが、今後、運動プログラム の効果を実証する方法として、例えば肩関節や股 関節の柔軟性の改善度の測定や、痛みの尺度を用 いた調査など様々な調査を行う必要がある。また、
あくまで一過性の効果であり、継続して行うこと の効果や、他の運動プログラム実施との比較など は、今後の課題である。
また、対象者が運動に参加する機会を無駄にし ないことや継続率を高めるためにも、有効性が即 実感でき、継続することにより身体的・心理的健 康が維持・増進され、民間スポーツ施設やその他 の施設にて新しい顧客を創造し集客率の拡大に貢 献でき、なおかつ楽しく継続率の高い包括的な健 康運動プログラムの開発がさらに必要であると考 えられる。
今後、本運動プログラムが、スポーツ弱者とい われる健康不安高齢者、ストレス過多の成人、子 育て中の女性、運動嫌いや運動をあきらめている 高齢者・低体力者等の対象者に対しての支援、運 動習慣の啓蒙につながり、ウエルネスライフを送 るための基礎研究になるためにさらなる検討が必 要であろう。
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[要旨]
本研究は、新しいタイプの本運動プログラムにより、状態不安及び身体感覚がどのように変化したか の実施報告である。
結果は、以下のとおりである。
1)状態不安の変動は、運動前は最低23から最高57の範囲にあり、運動後は最低21から最高57までに変 動した。状態不安の平均値は、運動前の39.80から運動後の32.70と変動し、有意な低下を示した。
(p<.001)
2)アンケート調査より、その場で柔軟性や可動性が改善された。また、気分の改善や顔つきや顔色がプ ラス志向に変化し、心理的要因に変化が認められた。
今回の結果より、肩痛、肩こりの改善に心理的要因が関与しており、本運動プログラムを行うことに よって、不安が低減し、身体的・精神的健康に有効であることが示唆された。