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アルゼンチン:Vaca Muertaシェール、石油生産回復もガス生産は停滞

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– 1 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 更新日:2021 年 3 月 15 日 調査部:舩木弥和子

アルゼンチン:Vaca Muerta シェール、石油生産回復もガス生産は停滞

(出所:Platts Oilgram News、BNamericas、LatAmOil 他)

アルゼンチンでは、新型コロナウイルス感染拡大抑制のためのロックダウンによる石油需要の減退 で、貯蔵設備が満杯となってしまった。そのため、石油会社各社は Vaca Muerta シェールを含むアル ゼンチンでの生産を削減せざるを得なくなり、探鉱・開発も停滞した。 政府は 2020 年 5 月に、石油生産量を維持、回復させるために、国内で生産される原油の取引価格 をバレル当たり 45 ドルに固定し、さらに、Brent 原油の価格がバレル当たり 45 ドルを下回っている期 間は、原油輸出税を免除するとした。ロックダウンが延長され、石油需要の回復には時間がかかって いるものの、原油輸出が増加し、これが後押しする形で、アルゼンチン、そして、Vaca Muerta シェー ルの石油生産量は緩やかに回復に向かっている。

政府は 11 月に、「Gas Scheme 2020-2024(Gas Plan 4)」を導入、2021 年から 2024 年に生産される 天然ガス 70MMm3/d について補助金を出すことにより、ガスについても生産回復を図ろうとした。しか し、2021 年 1 月時点では、Vaca Muerta シェールで生産されるシェールガスを含むアルゼンチンの天 然ガス生産の状況は好転していない。政府は、ガス生産増加の遅れは、Gas Plan 4 の実施時期が遅 れたことによるものと考えており、生産量減少傾向が徐々に逆転することを期待するとしている。 アルゼンチンでは、非在来型を含む石油・天然ガス資源開発の経済条件を改善しようとする動きや Vaca Muerta シェールからガスを輸送するパイプラインの輸送能力を増強しようとする動きが出てきて いる。経済状況が悪く、制度の変更が頻繁に行われるアルゼンチンで、炭化水素資源の開発を進める 動きがどこまで実現し、石油のように天然ガスについても開発、生産に回復が見られるのか、今後の動 向を注視したい。 1.新型コロナウイルス感染拡大前の Vaca Muerta シェール開発状況 EIA は 2013 年 6 月に発表した「世界のシェールガス資源量評価」で、アルゼンチンのシェールガスの 技術的回収可能量は 802Tcf、シェールオイルの技術的回収可能量は 265 億 bbl で、それぞれ世界第 2 位、第 4 位にあたるとした。中でも、同国中西部の Neuquén Basin はその技術的回収可能量が 583Tcf と アルゼンチンのシェールガス資源量の過半を占めていることが明らかにされた。Neuquén Basin には、 Vaca Muerta(深度 914~3,048m)と Los Molles(同 1,981~4,998m)の 2 つのシェール層があるが、開発 が進んでいるのは深度の浅い Vaca Muerta シェールだ。Vaca Muerta シェールは La Pampa 州、Mendoza

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– 2 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 州、Neuquén 州にまたがり、総面積は 30,000km²で、その地質状況は TOC(有機物含有率)、層厚、地層 圧力のいずれをとっても米国のシェール層と比較して遜色ないものであるという。

2010 年末からは、YPF を中心に Vaca Muerta シェールの開発が行われるようになった。しかし、資機 材の確保が難しいこと、高い生産コスト、頻発するストライキ、突然の政策変更などにより、Vaca Muerta シ ェールの開発の進展ペースは遅々としたもので、2016 年末のシェールオイル生産量は 3 万 b/d 弱、シ ェールガス生産量は 6MMm3/d 程度であった。 そこで、アルゼンチン連邦政府は 2017 年 1 月に石油会社、Neuquén 州政府、労働組合と、Neuquén Basin で生産され国内市場に供給される非在来型ガスの井戸元価格を国際市場価格より高く設定するこ と、インフラを整備すること、投資額を増やすことなどに合意した。また、コスト削減も進みつつあることな どから、石油会社が Vaca Muerta シェールへ積極的に投資を行うようになり、開発が進むようになった。 その結果、Vaca Muerta シェールの生産量は急激に増加し、2018 年 6 月には、シェールオイル生産量 は 4.8 万 b/d、シェールガス生産量は 20MMm3/d となった。 図 1 堆積盆地別シェール技術的回収可能量

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– 3 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 これを受け、政府は 2018 年に発表した政策方針「アルゼンチンのエネルギーの過去・現在・未来 (Pasado, presente y futuro de la energía en Argentina)」の中で、Vaca Muerta シェールの開発を進めるこ とで、2023 年までにアルゼンチンの石油生産量を 100 万 b/d、天然ガス生産量を 238MMm3/d に倍増さ せ、石油 50 万 b/d、天然ガス 100MMm3/d を輸出するとした。 一方、このように生産量が急激に増加したことで、天然ガスについては、パイプラインの輸送能力が不 足するようになった。また、アルゼンチンは季節による寒暖差が大きく、冬には暖房用にガス需要が増加 するが、夏はそれほどガスを必要としない。そのため、冬に国内ガス生産量を増やしてもそれだけでは 需要を満たせず、また夏には国内ガス需要が減少して一部のシェール井の生産を停止して供給を絞ら ざるを得ないという事態も発生するようになった。 そこで、アルゼンチンは主にガスの国内での不需要期に、既存のパイプラインを利用して、チリやブラ ジルへのガス輸出を再開した。さらに、YPF は 2018 年 11 月に Exmar Energy と FLNG(浮体式液化天然 ガス生産設備)を 10 年間傭船する契約を締結し、2019 年より Bahía Blanca 港に係留した液化能力は 50 万トン/年の「Tango FLNG」より LNG 輸出を開始した。また、YPF はより規模の大きい液化プラントを陸上 に建設することも検討したが、アルゼンチンの経済状況が悪化したため、ガスをチリまで運び、チリに建 設する液化プラントで液化、LNG 輸出を行うことも検討されるようになった。

図 2 Tango FLNG

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– 4 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 さらに、2018 年末からは、財政状況を悪化させた政府が非在来型ガスに対する補助金の制度を変更 し、ガス開発計画承認時に生産可能と申請した数量についてのみが補助金支給の対象とされることとな り、また、新規のガス開発プロジェクトは補助金の対象とされないこととなった。さらに、国庫収入の不足 から補助金の支払いの滞りも生じるようになった。 追い打ちをかけるように、2019年4月17日には、新経済パッケージが発表され、インフレ抑制のため、 2019 年末まで電気料金や公共交通料金と共に天然ガスの価格が凍結されることとなった。 このような状況から、石油会社はシェールガスよりもシェールオイルの開発を優先する方ようになった。 しかし、石油についても、2019 年 8 月から原油及びガソリン、ディーゼルの価格が凍結されたことで、リ グを休止させる企業が現れ、稼働リグ数が減少、生産の伸びが鈍化するようになった。NCS Multistage によると、Vaca Muerta シェールでの水圧破砕は、2019 年 9 月、10 月に停滞したものの、当初、90 日間 の予定とされたガス価格凍結が 9 月には解除されたことで、11 月、12 月には回復し、2019 年全体として はフラッキングステージ数が 6,425(2018 年比 33%増)と記録的な水準となった。内訳は、YPF が 3,034、Tecpetrol が 752、Pan American Energy が 499、Total が 499、Shell が 433 であった。一方、稼働 リグ数は回復することなく、これを機に徐々に減少することとなった。そして、2019 年末の Vaca Muerta シェールの生産量は石油が 10 万 b/d、ガスが 35MMm3/d となった。

図 3 アルゼンチンの稼働リグ数推移

Baker Huges website を基に作成

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– 5 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 2019 年末から 2020 年初にかけて、Vaca Muerta シェールで開発中の石油会社各社は、2020 年は投 資の大部分を石油プロジェクトに向けると発表した。

YPF は Chevron、Petronas、Schlumberger などとパートナーを組んで主に石油を生産している Loma Campana、La Amarga Chica、Bandurria Sur 鉱区を中心に 2020 年に約 20 億ドルを投じるとした。一方、 Bajada de Anelo(オペレーターShell)や San Roque、Aguada de la Arena、La Calera(同Pluspetrol)、Aguada Pichana Oeste(同 Pan American Energy)などの鉱区で行われているガスプロジェクトは休止する計画で あるとした。YPF は 2000 年 3 月に入ると、Vaca Muerta シェールの新たなクラスターへの投資は延期し、 最も開発の進む 3 鉱区(Loma Campana、La Amarga Chica、Bandurria Sur)に投資を集中させることで、資 本支出を削減しながらも石油生産量を 2020 年に 2%増加させる計画であるとした。資本支出は 2019 年 の 35 億ドルから 20%削減し 28 億ドルとし、探鉱やパイロットプロジェクトを減らすとした。また、ガスの探 鉱・開発は Austral Basin ではわずかに行うが、Neuquén Basin では行わず、ガス生産量は 2019 年の 39.7MMm3/d から 8%減らすとした。さらに、資本支出を削減することで短期の生産には影響が出るが、 長期的には影響がないとしている。そして、2020 年にシェール生産を急増させる計画だったが、経済状 況によってはこれを 2021 年に先送りする計画であることを明らかにした。

Total は 2019 年に 4 億ドルを投じ Aguada Pichana Este 鉱区の開発第 1 フェーズを実施、36 坑を掘 削し、このうち 20 坑を仕上げたが、2020 年も投資額を維持し、生産も維持するとした。

Shell は 2020 年中に Vaca Muerta シェールの生産量を 7,000b/d から 12,000b/d に 70%引き上げ、2 つ目の原油処理プラント(処理能力 30,000b/d)の操業を開始する計画であるとした。また、Shell は 2020 年には 2019 年に投じた 53 億ドル以上を投じる計画はないとした。

ExxonMobil は、Vaca Muerta シェールへの 2020 年の投資額を 2019 年と同水準に維持するものの、 Bajo del Choique–La Invernada 鉱区、Los Toldos Sur 鉱区の生産量を 2019 年 11 月の 1,300b/d から 2020 年 1 月末までに 5,000b/d に増加させることを計画しているとした。そして、この生産増は、2024 年末まで に 20 億ドルを投じ 90 坑を掘削、Vaca Muerta シェールの生産量を 5.5 万 b/d に引き上げる計画の一環 であるとした。

Wintershall Dea と ConocoPhillips は、2020 年に Aguada Federal 鉱区で 5 坑を掘削、2021 年に同鉱区 で 5 坑を掘削、Bandurria Norte 鉱区で 8 坑を掘削する計画を明らかにした。

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– 6 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 て活動、石油ガス生産量を 2019 年末の 30,000boe/d から 2020 年末に 36,000~38,000boe/d に 20%以 上増やす計画であるとした。通年の生産量は 2019 年の 29,100boe/d から 2020 年は 32,000~ 33,000boe/d に増加する見通しであるとした。Vista は 2019 年も 2018 年の 24,500boe/d から 19%(原油 24%、ガス 13%)生産を増やしている。そして、Vaca Muerta シェールで活動中の他企業と同様に Vista は石油にシフトした。同社 CEO の Galuccio 氏によると、2019 年 8 月の同社の生産量は 33,000boe/d だ ったが、原油価格が 2018 年第 4 四半期のバレル当たり 65.50 ドルから 8 月には 40~42 ドルに下落した ため、掘削を中止した。価格凍結が解除され 11 月に原油価格がバレル当たり 51 ドル、12 月には 53 ド ル、2020 年 1 月には 55 ドルまで上昇したため、同社はリグ 2 基で掘削を再開したとしている。そして、 2020 年は資本支出 2.6 億ドルを計画しているが、作業ペースは原油価格次第とした。

IOC により Vaca Muerta シェールの鉱区権益を取得する動きも見られた。Equinor と Shell は 2020 年 1 月 31 日に、Schlumberger より Bandurria Sur 鉱区の権益 49%を 3 億 5,500 万ドルで買収した。 Equinor と Shell は YPF からも Bandurria Sur 鉱区の権益 11%を買い取ることで暫定合意した。こちら については、価格は明らかにされなかった。Shell と Equinor は同鉱区の権益 30%ずつを、YPF は 40%を保有することになる。Bandurria Sur 鉱区は Loma Campana、La Amarga Chica と併せて YPF の 非在来型のコアエリアである。パイロット生産段階にあり、1 万 b/d を生産している。

Equinor はまた、YPF と開発中の Bajo del Toro 鉱区で 6 坑を掘削する計画で、開発ライセンスの期間 を 35 年に延長するよう求めていることを明らかにした。

そして、この時期に、Baker Hughes の南米副社長 Mariano Gargiulo 氏は、十分な投資が行われれば Vaca Muerta シェールの生産量は今後 5 年間で 5 倍に増加するとの見通しを、また、S&P Global Platts Analytics は、アルゼンチンの石油生産量は Vaca Muerta シェールと沖合の開発により 2040 年に 130 万 b/d に増加する可能性があるの見方を発表している。さらに、Platts Analytics によると、Vaca Muerta シェ ールの生産コスト(掘削、仕上げ、税、10%のリターンを含む)は 2014 年のバレル当たり 75 ドルから 2018 年には 56 ドルに下落したという。 2.新型コロナウイルス感染拡大後の Vaca Muerta シェール開発状況 しかし Vaca Muerta での積極的な開発計画は、新型コロナウイルスにより大打撃を受け、縮小を余儀 なくされる。 アルゼンチン連邦政府は、新型コロナウイルス感染拡大抑制のため 2020 年 3 月 20 日にロックダウン

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– 7 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 (都市封鎖)を開始した。政府は、ロックダウンの期間中も石油・ガス生産量、精製処理量を維持するよう 石油セクターに求めた。しかし、ロックダウンにより翌 4 月のガソリン販売量は対前年同月比 67%、ディ ーゼル販売量は 29.3%減少するなど、アルゼンチン国内の石油需要は 3 月までの 50 万 b/d から 4 月 以降は 20~25 万 b/d に半減した。生産がスローダウンしなかったため、貯蔵設備が販売できない原油 で満杯となってしまい、やむを得ず、上流側では掘削坑井数を減らし、生産を削減せざるを得なくなる石 油会社各社が現れるようになった。例えば、Pan American Energy が Coiron Amargo Sur Este 鉱区での掘 削を継続、あるいは Winteshall Dea が 2020~2021 年に Bandurria Norte 及び Aguada Federal 鉱区で 20 坑を掘削すると発表するなど、開発を継続する企業もあるが、一方、Vaca Muerta での主要なシェール開 発事業者である YPF は、パートナーの Chevron から生産削減について同意を得て、Loma Campana 鉱 区の生産をほぼ半減させた。さらに、YPF は 5 月に入ると、2020 年の資本支出を 28 億ドルとする計画を 撤回し、投資や操業費を精査した上で、最低限の支出のみを行うこととしたと発表した。YPF の貯蔵量は 原油が 720 万 bbl(貯蔵能力の 90%)、石油製品が 1,400 万 bbl(同 75%)となっており、すべての坑井掘 削、仕上げを延期、中止し、Loma Campana 鉱区や在来型の Puesto Hernández、Chihuido Although の生 産井を閉鎖、生産量を 10~12%削減するとした。Vista Oil & Gas なども石油生産量を削減させることとし た。 4 月にはアルゼンチンの稼働リグ数、フラッキングステージ数がともに 0 となった。そして、石油生産量 は 460,900b/d で前年同月の 507,700b/d から 9.2%、前月の 518,700b/d から 11.1%減少、天然ガス生 産量も 116.7MMm3/d と、前年同月の 131.6MMm3/d から 11.3%、前月の 126.6MMm3/d から 7.8%減 少した。 政府は、5 月 18 日、原油の国際価格下落に対応し、石油生産量を維持、回復させ、雇用を守るため に、政令第 488/2020 号を発令し、国内で生産される原油の取引価格をバレル当たり 45 ドルに固定する こととした。原油価格を固定とする対象期間は発令日の 2020 年 5 月 18 日から 12 月 31 日までとされた。 また、この期間中に Brent 原油の国際市場価格が 10 日間連続で 1 バレル 45 ドルを上回った場合には、 当該政令の規定は無効とされること、そして、価格については 4 半期毎に生産開発省エネルギー部局が 見直すとした。 このような固定価格の導入に併せて、石油開発会社に対しては、この政令の対象期間中は 2019 年と 同等の活動と生産を維持すること、そして 2019 年 12 月 31 日時点の雇用数の維持が義務付けられた。 また、州当局に提示した投資計画を履行しない場合や、雇用の管理を行わない場合には、必要に応じ

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– 8 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 て罰則規定(法令第 1277/12 号付属書 12 項及び同付属書 29 項)が適用され、従わない場合には罰金 が科されるようになった。さらに、精製業者は必要な原油を国内市場で国内の生産事業者から調達する ことを義務付けられた。Brent 原油の価格がバレル当たり 45 ドルを下回っている期間は、原油輸出税を 免除されたが、Brent 原油の価格が 45 ドルを上回った場合には、原油輸出税 8%が課されることとなっ た。 この原油価格固定制度については、貯蔵設備が満杯な状況では生産を増やすことはできないため、 利用できるのは需要が回復してからになるとの指摘や、最長でも 2020 年末までしか継続されないことを 問題視する向きもあった。また IHS Markit によると、Vaca Muerta シェールの石油資産の約 76%の損益 分岐点がバレル当たり 40 ドル以上となっており、Vaca Muerta シェールの開発が完全に停止することは ないものの、アルゼンチンが非在来型の石油・ガスを大量に輸出し、世界的なプレーヤーになるという 政府の目標を達成することは、これまで以上に難しくなっているとの見方もなされた。 しかし、アルゼンチンの稼働リグ数は 5 月に 2 基、6 月に 6 基と次第に増加、2020 年 12 月には 29 基、 2021 年 1 月に 34 基、2 月には 38 基と 2020 年 3 月と同水準まで回復してきた。フラッキングステージ数 も、7 月と 12 月に減少が見られたが、それ以外の月は増加を続け、2021 年 2 月には過去最高を記録し た 2019 年 2 月の 712 に次ぐ 685 まで増加した。内訳は ExxonMobil が 196、Vista Oil & Gas が 178、YPF が 122、Pan American Energy が 73、Pluspetrol が 71 などとなっている。

図 4 アルゼンチンのフラッキングステージ数推移 各種資料を基に作成 0 100 200 300 400 500 600 700 800

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– 9 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 アルゼンチンの石油生産量については、5 月は 445,614b/d と過去 20 年間で最低になったものの、油 価の回復に伴って開発活動が徐々に再開されたことを受けて、その後は緩やかに回復に向かっている。 新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウンに入った 2020 年 3 月の 518,670b/d には及ばないもの の、2021 年 1 月の石油生産量は 486,929b/d となった。Neuquén 州の石油生産量も 2020 年 3 月の 169,673b/d から 4 月に 13 万 b/d に減少、その後、6 月に 159,631b/d に回復、2021 年 1 月には 172,865b/d となった。Vaca Muerta シェールの石油生産量も、2020 年 3 月に 12 万 b/d を超え過去最高 を記録した後、4 月から 5 月にかけては 10 万 b/d を下回っていたが、その後回復し、12 月には 3 月を 上回る過去最高の 124,000b/d に達した。 図 5 Vaca Muerta シェールの石油生産量推移 各種資料を基に作成 開発が活発化し、石油生産量が増加したのは、政令第 488/2020 号により、原油価格がバレル当たり 45 ドルに固定されたことだけによる訳ではないようだ。アルゼンチンのロックダウンは 14 回にわたり延長 され、11 月 8 日まで継続された。行動制限を緩和される地域が指定されるなどロックダウンの内容は次

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– 10 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 第に緩和されていったものの、石油需要の回復には時間がかかり、いまだに回復しきっていない。2021 年 1 月のディーゼル販売量は対前年同月比 7.7%減、ガソリン販売量は同 9.4%減、ジェット燃料販売量 は 67.4%減となっている。したがって、貯蔵設備は満杯の状態が続いており、生産回復、増加への影響 は大きくはないようだ。 一方で、Brent 原油の価格がバレル当たり 45 ドルを下回っている期間について原油輸出税が免除さ れたことから、原油輸出が増加、これが石油生産回復、増加を後押しすることになった。例えば 2020 年 5 月の原油輸出量は前年同月の 46,306b/d から 132,934b/d に増加した。輸出量の多くを南部 Patagonia の San Jorge Gulf Basin で生産される重質の Escalante 原油(API 比重 24.1 度)が占めているが、Vaca Muerta シェールで生産される軽質の Medanito 原油(同 35.1 度)も輸出量を増やしている。Medanito 原 油は 2019 年には 1,340b/d しか輸出されておらず、知名度の低さから、輸出価格は当初、Brent 原油の 価格よりもバレル当たり 10 ドル程度低かった。しかし、市場でも徐々に Medanito 原油が知られるようにな るにつれ、同原油に対する引き合いが増加、そのため価格が上昇し、8 月には Brent 原油マイナス 4.5 ド ル、9 月はマイナス 3 ドルとなった。Shell は Medanito 原油の価格は Brent 原油と同水準かそれ以上にな る可能性があるとしている。Brent 原油の価格が 10 日以上バレル当たり 45 ドルを超えて取引されたこと から、この制度は 8 月に終了したが、その後も原油輸出量に波はあるものの、原油輸出は続いている。 2021 年 1 月のアルゼンチンの原油輸出量は 65,542b/d で、そのうち 33,581b/d が Escalante 原油、 24,399b/d が Medanito 原油となっている。ちなみに、Medanito 原油の主な輸出先はブラジルや米国とな っている。

Rystad Energy は、現在の活動レベルが継続すれば、2021 年末までに Vaca Muerta シェールの石油 生産量は 145,000~150,000b/d に増加する可能性があるとしている。 一方、Vaca Muerta シェールで生産されるシェールガスを含むアルゼンチンの天然ガス生産の状況は 好転していない。アルゼンチンの天然ガス生産量は 2019 年 8 月に近年のピークである 144.4MMm3/d を記録したが、2020 年 5 月に過去 20 年間で最低の 124MMm3/d まで落ち込んだ。9 月には 130.6MMm3/d まで回復したが、その後再び減少、2021 年 1 月には 115MMm3/d となった。国内需要の 低迷が続き、ガス価格が低迷したことが原因とされる。電力会社による Vaca Muerta シェールで生産され るガスの買取価格が 1~3 ドル/MMBtu となり、Vaca Muerta シェールガスのブレークイーブン価格 3.50 ドル/MMBtu を下回った。特に、2020 年第 4 四半期については季節的な需要減も加わり、生産が停止さ れたままとなった坑井もあった。Vaca Muerta シェールガス生産量がパイプラインによる輸送能力を上回

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– 11 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 っていることも生産量を増加させることができない物理的な理由とされる。 なお、新型コロナウイルス感染拡大により LNG 価格も下落したことから、Tango FLNG は継続して操業 を行うことが不可能となった。2020 年 10 月、YPF は Exmar Energy と、2018 年 11 月に締結された Bahía Blanca 港で Tango FLNG を使用し天然ガスを液化、LNG を輸出する契約を解除することとし、1 億 5,000 万ドルを支払うことで合意した。

このような天然ガスの生産量低迷を打開して、パイプラインガスや LNG の輸入を減らし、最終的には 輸出を増やすことを目的に、政府は 2020 年 8 月に「Gas Scheme 2020-2024(Gas Plan 4)」を発表、さら に、11 月には Alberto Fernández 大統領が Gas Plan 4 を実現するため政令 892/2020 に署名した。これ によると、2021 年から 2024 年の間に生産される天然ガス 70MMm3/d については、入札を実施し、ガス 販売業者や卸売電力市場の管理者である Cammesa(火力発電所向け)他に供給する。入札額と最大 3.70 ドル/MMBtu との差額を、政府が企業に支払って補填することとした。これにより天然ガス生産企業 は 4 年間(沖合ガスプロジェクトの場合は 8 年間)にわたって、ガスを 3.70 ドル/MMBtu で販売できる目 途がつき、ガスの生産、販売時の価格リスクを大きく減ずることとなる。また、これにより投資計画も立てや すくなる。政府は、この政策のために約 50 億ドルを補助金として拠出することとなっており、政府による 補助金の支払いが滞らないようにするための保証も含まれるという。また、これにより暖房用に需要が増 加する冬期には販売されるガスの量が追加されるようなインセンティブが働く。この制度を通じて、流通 業者や電力会社も、今後 4 年間に必要と考えられるガスをあらかじめ確保でき、ガス不足の懸念を緩和 する方向に向かう可能性がある。なお、この計画の一環として、天然ガス生産企業は 2020 年以降の生産 量を維持または増加させるために必要な投資を行うこととされている。また、外国資本にとっては有難い ニュースであろうが、今までは事前許可申請が義務付けられるなど制限されていた為替市場へのアクセ スと外国人株主への配当金支払いも認められることとなった。また、アルゼンチン国内の地域間の過当 な競争を防ぐために、各地域に生産割当を設定しており、Neuquén は 47.2MMm3/d、Austral(沖合を含 む)は 20MMm3/d、Noreste は 2.8MMm3/d となっている。

また 2020 年 12 月には、Gas Plan 4 に基づくガスの入札が実施され、Pan American Energy、Petrobras、 Metro Holdings、Shell、Alianza Petrolera、Pampa Energía、Capex、Wintershall DEA、Vista Oil & Gas、 ExxonMobil、Corporación Financiera Internacional、Compañía General de Combustibles、YPF、Total、 Tecpetrol、Pluspetrol などの企業がオファーを提示、天然ガス 67.4MMm3/d の供給について契約が締 結されることとなった。政府は、提示された価格(2.40~3.66 ドル/MMBtu)と最高で 3.70 ドル/MMBtu の

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– 12 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 差額を補助金として支払う。12 月 15 日には本件に関する 23 件の契約を締結、1 月から供給が開始され ることとなった。5~9 月の冬期の追加分については、Total、YPF、Tecpetrol の 3 社から 3.60MMm3/d の 提案を受けただけで、冬場に必要な量を確保できなかったので、2021 年 3 月に追加で入札が行われ、 Pampa Energia と Tecpetrol が 4.5MMm3/d を供給することになった。

YPF や Pan American Energy は、Gas Plan 4 を受けて天然ガス生産量を増加させるため掘削を強化す る計画であるとした。しかし、先述した通り、アルゼンチンの 1 月のガス生産量は 115MMm3/d まで減少 した。これについて政府は、Gas Plan 4 の実施時期が遅れたことによるもので、この生産量減少傾向が 徐々に逆転することを期待するとしている。 Gas Plan 4 が実施されているにもかかわらず、2021 年 1 月の天然ガス生産量が少なかったことから、 政府は 2 月に国営電力会社 IEASA に対し、6 月 1 日から 8 月 31 日までの冬期に増加するガス需要に 対応するために、浮体式貯蔵再ガス化装置(FSRU)をリースするための入札を実施するよう指示した。 3.主要企業の Vaca Muerta シェール開発などの状況 (1)YPF ~2021 年は上流部門への投資額を 90%以上増加させることを目指すが、資金確保に課題~ YPF はアルゼンチン政府が株式の 51%を保有する一貫操業の石油会社で、アルゼンチンの石油生 産量の半分弱、天然ガス生産量の 30%弱を生産する他、国内に製油所 3 か所(精製能力は合計で 32 万 b/d)、サービスステーション 1,620 か所を保有し、ディーゼル及びガソリン販売に関しては市場シェア の 55%を占める企業となっている。 YPF は 2020 年初に、2020 年の石油・ガス生産量を 2019 年比 2%増加させることを計画していた。し かし、新型コロナウイルス感染拡大の影響で Vaca Muerta シェールの主要鉱区である Loma Campana 鉱 区で生産井 193 坑のうち 41 坑を閉鎖するなど、一部の生産井の操業を停止した。その結果、同社の 2020 年 1~4 月の石油生産量は前年同期の 236,476b/d から 1.2%減少し 233,728b/d に、ガス生産量 は 38.3MMm3/d から 4.1%減少し 36.7MMm3/d となった。

5 月に YPF の最高経営責任者(CEO)に就任した Sergio Affronti 氏は、石油・ガス事業に集中し、効率 を向上させ、コストを削減、生産量と輸出量を増加させると語った。そして、YPF は 5 月 13 日に、上流事 業を在来型部門と非在来型部門に分割し、生産と輸出の拡大に焦点を当てたよりスリムで迅速な事業運 営を目指すことを明らかにした。在来型に関しては、二次、三次回収技術を活用し、生産減少を逆転さ せ、非在来型に関しては、Vaca Muerta シェールを開発することで、生産量を増加させるとの方針を示し

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– 13 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 た。

6 月には、YPF は停止していた生産を順次再開、8 月には Vaca Muerta シェールの生産は完全に回 復したと発表した。9 月になると、4 月以来停止していた水圧破砕を再開した。そして、Vaca Muerta シェ ールでの石油・天然ガス生産回復に向けて、今後 6 ヶ月間に 45 基のリグを再配備すると発表した。YPF は、原油輸出を 2020 年の散発的な状況から 2023 年または 2024 年までに 10 万~15 万 b/d に増加さ せるため、生産量を 50 万 b/d で安定させたいと考えている。10 月には、そのためには、並行して Vaca Muerta シェールの 5~6 鉱区を開発し、年間 400 坑を掘削することが必要となり、掘削へ多額な投資を 行い、プロパントと労働力を確保、コストを削減しなければならないとした。また、Vaca Muerta シェール のガスのポテンシャルは大きいが、石油は開発や国際市場へのアクセスが容易であるのに対し、ガスは インフラ建設などに巨額の投資が必要となり、さらに、損益分岐点を現在の 3.5 ドル/MMBtu から引き下 げることが必要となると語り、シェールオイルを中心に開発を進める姿勢を示した。そして、YPF はコスト を新型コロナウイルス感染拡大前より 30%引き下げようと試みていることも明らかにした。 2021 年に入ると YPF は、2020 年に 10%の落ち込みを記録した石油・ガス生産量を回復させるための 投資を中心に、2021 年には投資額を 73%増加させる計画であるとした。特に、上流部門に関しては投 資額を 2020 年比で 90%以上増加させることを目指しており、これにより石油・ガス生産を安定させ、成熟 した在来型油田の生産自然減退にもかかわらず、同社の生産を成長軌道に戻すことが可能になるとした。 YPF は、この計画を実現するためには資金を確保することが必要であるとし、2 月に、62 億ドル相当の債 券を満期の遅い債券に交換することを債権者に提案、多くの債権者からスワップについて承認を得てい るとされる。なお、YPF の 2019 年の上・下流への投資額は 33 億ドル、2020 年 1~9 月は 9 億 3,400 万ド ルであった。YPF はまた、同社の原油生産量に占める Vaca Muerta シェールの割合を、2020 年 11 月の 20%から 2021 年には 25%に、さらに 2022 年または 2023 年には 45%または 50%に引き上げたいとし ている。

(2)Shell ~Vaca Muerta シェールの開発は継続も、一部遅延~

Shell はアルゼンチンでは、YPF、Neuquén 州営石油会社 Gas y Petróleo del Neuquén(GyP)、Equinor、 Total と共同で Vaca Muerta シェールの 7 つの非在来型鉱区の開発を進めている。Shell は、Vaca Muerta シェールの Coiron Amargo Sur Oeste、Cruz de Lorena、Sierras Blancas 鉱区で現在約 1.3 万 b/d を生産 している。Bandurria Sur 鉱区では、2050 年までに最大 63 億ドル(YPF25 億ドル、Shell と Equinor がそれ

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– 14 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 ぞれ 19 億ドルを拠出)の投資を行い、10 年間で 557 坑の坑井を掘削、58,000boe/d の生産を達成する ことを計画している。この期間中、特に 2023 年までに 10 億~20 億ドルを投じて、80~200 坑井を掘削 し、6 万 boe/d を生産する予定で、さらに、7,500 万ドルを投じて、処理能力 50,200boe/d の原油処理プ ラントを建設することも計画している。

Shell は 2020 年 8 月、同社は Vaca Muerta シェールの開発について長期的な戦略を持っており、原油 価格が一時的に危機的な状態に陥ったからといって、プロジェクトを放棄することはないとの方針を示し た。そして、Shellは、長期的に見れば、Vaca Muerta シェールは国際的に競争力を持つと考えているが、 新たな投資を再開できるようになるまでには 1 年から 2 年かかると見ているとした。同社は 2022 年に Vaca Muerta シェールで 40,000b/d を生産することを目標に、2018 年に策定した投資計画を進めている ものの、原油処理プラントの建設やリグのリースなど、さらなる拡張計画については再考しており、いくつ かの開発は遅延する可能性があるとした。Shell はまた、すでに生産中の原油については、試験的に輸 出を行っており、10 月中旬までに Medanito 原油 2 カーゴを輸出したことも明らかにした。

(3)Pan American Energy ~Vaca Muerta のシェールガス開発には輸出プロジェクトへの投資が必要~ BP と Bridas が株式を保有するアルゼンチンの石油会社、Pan American Energy の CEO、Marcos Bulgheroni 氏は、同社は過去 10 年間、Vaca Muerta シェールに多額の投資を行ってきており、その投資 は実を結びつつあるが、Vaca Muerta シェールで生産されるガスの市場を確保できない限り、これを収益 化することは困難であると主張している。そのためには、近隣諸国へのパイプライン輸送やアジア市場 への LNG 輸出など、輸出志向のプロジェクトへの投資が検討されるべきであり、この輸出志向のプロジ ェクトへの投資と支援政策により Vaca Muerta シェールの非在来型ガス資源の開発が促進されることにな ると述べた。

その一方で、Pan American Energy は、Vaca Muerta シェールの Aguada Canepa 鉱区の権益 90%を取 得、1 億 2,000 万ドルを投じ 5 年間をかけて非在来型開発パイロットプロジェクトを実施、水平坑井を 10 坑掘削し、石油生産を増強する計画である。また、パートナーである Gas y Petroleo del Neuquén と協力 して、同鉱区での原油生産を処理するための設備を建設する。

(4)Vista Oil & Gas ~国内の石油需要の減少に輸出で対応、シェールオイル生産増を目指す~ YPF の元 CEO である Miguel Galuccio 氏が CEO 兼会長を務めるメキシコ企業 Vista Oil & Gas は、新

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– 15 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。

型コロナウイルス感染拡大の初期には操業を停止したが、5 月に Bajada del Palo Oeste 鉱区の 4 坑の生 産を再開、6 月の生産量は 13,900b/d に回復した。アルゼンチン国内の石油需要が落ち込んだことから、 2020 年第 2 四半期には生産した原油の 70%を競争力のある価格で輸出した。そして、油価下落に対応 するためにサービス会社との契約を再交渉し、前年同期比で 43%の操業コスト引き下げに成功した。リ フティングコストも 30%減の 8.6 ドル/boe とした。 10 月には、Vaca Muerta シェールの開発に 2 億 2,000 万ドルを投じ、生産井 16 坑を繋ぎこんで、生産 井数を 36 とし、これにより生産量を 2020 年第 4 四半期の 30,600boe/d(うち石油 23,100b/d、ガス 1.12MMm3/d)から 2021 年末には 4 万 boe/d に引き上げる計画であることを明らかにした。同社は、石 油生産増を目指し、ガスは随伴ガスのみを生産するという。

12 月には、2022 年までに Vaca Muerta シェールの Bajada del Palo Oeste 鉱区で 130 の水平坑井を掘 削し、65,000boe/d を生産する計画を発表、同鉱区への投資額 15 億ドルに加え、従来型の生産を維持 するための 2 億ドルを確保するため、最大 4,500 万ドルの社債を発行した。

Vista Oil & Gas は 1 月 5 日に、Bajada del Palo Oeste 鉱区内のこれまで掘削を行っていなかったエリ アで水平坑井 2 坑を掘削、Vaca Muerta シェールで予想を上回る生産性を確認、同鉱区での掘削を強 化する可能性があると発表した。同鉱区ではこれまでに 400 坑を掘削したが、さらに 150 坑を掘削する 可能性があるという。 終わりに Vaca Muerta シェールでの開発が活発になり、シェールオイル生産量が増加したことで、「死んだ牝牛 (Vaca Muerta はスペイン語で死んだ牝牛を意味する)が蘇った」との報道が多く見られた。 しかし、天然ガスについてはまだ生産量減少に歯止めがかかっていない。先述した通り、政府は、こ の生産減少の傾向が徐々に逆転することを期待するとしている。 天然ガス生産量が回復しない原因には他に、Vaca Muerta シェールからガスを輸送するパイプライン の輸送能力が不足していることが挙げられる。これについては、パイプライン建設の動きが出てきた。 Transportadora de Gas del Norte(TGN)と Transportadora de Gas del Sur(TGS)は、Vaca Muerta シェー ルからのパイプライン輸送能力を増加させるために、約 4 億ドルを投資することを計画している。両社は、 詳細についてガス規制当局である Enargas との協議を進めている。TGS は、2.2 億ドルを投じ San Martín パイプラインの拡張と、Buenos Aires 州の Mercedes と Cardales の間に新たなパイプラインを建設するこ

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– 16 – Global Disclaimer(免責事項) 本資料は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(以下「機構」)調査部が信頼できると判断した各種資料に基づいて作成されていますが、機構は本資料に含ま れるデータおよび情報の正確性又は完全性を保証するものではありません。また、本資料は読者への一般的な情報提供を目的としたものであり、何らかの 投資等に関する特定のアドバイスの提供を目的としたものではありません。したがって、機構は本資料に依拠して行われた投資等の結果については一切責 任を負いません。なお、本資料の図表類等を引用等する場合には、機構資料からの引用である旨を明示してくださいますようお願い申し上げます。 とを計画している。一方、TGN は 1.7 億ドルを投じ主要な中央西部パイプラインの容量を 2 段階にわけ 増強する計画だ。また、Daniel Scioli 駐ブラジル大使が、Vaca Muerta シェールとブラジル南部 Porto Alegre 間にガスパイプラインを建設することをブラジルに提案したとの報道もあった。

さらに、Alberto Ángel Fernández 大統領は 2021 年 3 月 1 日、Vaca Muerta シェールを含む同国の石 油・天然ガス資源の開発条件を改善するための法案を 2021 年中に議会に提出する予定であることを明 らかにした。法案には、掘削から精製、販売に至るまでの炭化水素部門全体へのインセンティブが含ま れているという。法案の内容について具体的な説明はなかったが、その目的は、エネルギー自給率を回 復し、石油・ガスの純輸出国になることだとした。Fernández 大統領は 2020 年 3 月にも炭化水素法を改定 するための法案を発表、6 月にこれを議会に提出したが、新型コロナウイルス感染拡大により頓挫してし まっていた。 経済状況が悪く、制度の変更が頻繁に行われるアルゼンチンで、Gas Plan 4 が継続され、パイプライ ンが建設され、探鉱・開発を進める法制度が整備され、石油のように天然ガスについても開発、生産に 回復が見られるのだろうか、今後の動向を注視したい。 以 上

図 2  Tango FLNG
図 3  アルゼンチンの稼働リグ数推移
図 4  アルゼンチンのフラッキングステージ数推移  各種資料を基に作成 0100200300400500600700800

参照

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