歴史から学ぶこと
新入生の皆さん、入学おめでとうございます。未曾有の東日本大震災に遭遇し、ご家族・親類・知音
の人々が罹災されている方もいるのではないかと思います。かくいう私も、東日本の知人の安否を尋
ねて不安な日々を送りましたし、まだ連絡の取れない人もいます。東日本の大学の多くが、四月から新
学期を迎えられないなかにあって、本学は通常通りに学年暦が始まりました。それゆえ、大学で学べる
ことの大切さ、幸せを皆さんには今一度噛みしめてもらいたいと思います。そして、東日本の大学に進
学した友人達の分も、心して学業・課外活動に励んでもらいたいと切望しています。
ところで、大震災の発生以来、連日報道されるテレビや新聞・雑誌などに触れて、腹立たしくなること
はありませんか。素人では理解することが困難な数値を挙げて「安全」を訴える政府、東電、安全・保
安院や「想定外」であることを声高に主張して「天災」にすり替える関係者たちの姿を見るにつけ、何と
無責任な人々たちだと思ったことはありませんか。
私は、このような言説や人々に触れるたびに、この人たちは何一つ歴史から学ばなかったのだと思っ
てしまいます。そして、想像力に欠けた人々なのだと言わざるをえません。
人類が経験した最大のチリ大地震は、M9.5 であったとされており、そのさいに地球の裏側から押し寄
せた津波で三陸海岸域も被害を受けた経験・記憶をもつ人々は、まだ生きています。この事実に鑑み
るならば、「安全」の備えがM10 に対応できるように設計されていたのなら、「想定外」とは言えましょう。
M10 の規模が発生することを想像できない者が、自分の能力を過信していたに過ぎないのですから、
これは「人災」でしょう。
また、日本には古記録や古文書などの歴史史料を博捜して古代から発生した地震災害年表が刊行
されていて、それを見れば、日本列島で、いつ、どこで、どのような地震が起き、どのような被害が生じ
たのかが判明しています。原発設計者は、およそこのような文献を見なかったか、軽んじたとしか思え
ません。
歴史を学ぶことは、ロマンを追求することではありません。人類が経験したさまざまな事象を学び、現
代の諸問題を解決するためのヒントを得ることが第一義です。そのことを心に銘記して、史料館を活用
しながら学生生活を送ってもらうことを願います。
(史料館長 宇佐美英機)