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民法四六七条とザクセン民法 利用統計を見る

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松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 抜 刷 平 成 二 十 九 年 十 二 月 発 行

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一 本 稿 の 目 的 二 ザ ク セ ン 民 法 典 に お け る 債 権 譲 渡 契 約 の 効 力 と そ の 影 響 債 権 の 特 定 承 継 原 則 の 採 用 譲 渡 債 権 の 債 務 者 に 対 す る 行 使 要 件 複 数 譲 受 人 間 の 優 劣 決 定 基 準 三 日 本 民 法 典 の 債 権 譲 渡 制 度 へ の 示 唆 民 法 四 六 七 条 一 項 の 解 釈 論 へ の 示 唆 民 法 四 六 七 条 二 項 の 解 釈 論 へ の 示 唆

稿

民 法 四 六 七 条 と 同 一 の 内 容 を 有 す る 甲 号 議 案 四 七 〇 条 ︵ 旧 民 法 財 産 編 三 四 七 条 一 項 、 三 項 お よ び 四 項 の 修 正 原 案 ︶ は ︵ ︶ ︵ ︶ 、 梅 謙 次 郎 法 典 調 査 会 民 法 起 草 委 員 の 単 独 起 草 の 後︵ 、 三 起 草 委 員 の 合 議 に よ っ て 定 ま り︵ 、 明 治 二 八 一

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︵ 一 八 九 五 ︶ 年 三 月 二 二 日 開 催 の 第 七 二 回 法 典 調 査 会 に 提 出 さ れ た︵ 。 こ れ ま で の 研 究 に よ り 甲 号 議 案 四 七 〇 条 は 、 フ ラ ン ス 民 法 一 六 九 〇 条 の 対 抗 要 件 主 義 を 採 用 し た も の で あ る と さ れ て い る︵ 。 た し か に 梅 起 草 委 員 も 、 法 典 調 査 会 で の 甲 号 議 案 四 七 〇 条 の 審 議 の 冒 頭 、 ﹁ 本 条 ノ 規 定 ハ 財 産 編 第 三 百 四 十 七 条 ノ 第 一 項 ト 精 神 ハ 同 シ テ ア リ マ ス 即 チ 主 義 カ 同 シ テ ア ル ノ テ ス ﹂ と 説 明 し て い る︵ 。 旧 民 法 財 産 編 三 四 七 条 一 項 と フ ラ ン ス 民 法 一 六 九 〇 条 は 、 債 権 譲 渡 契 約 が 締 結 さ れ る こ と に よ り そ の 効 力 た る 債 権 の 移 転 は 譲 渡 契 約 当 事 者 間 で は 生 じ る も の の ︵ の ︶ 、 債 務 者 お よ び 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で は 通 知 ま た は 承 諾 が な け れ ば 生 じ な い と す る 点 で 共 通 し て お り 、 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 が 譲 渡 人 に 無 効 な 弁 済 を し て 、 譲 受 人 に 対 し て さ ら な る 弁 済 を 強 い ら れ る こ と を 防 止 し 、 債 務 者 に 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 能 を 担 わ せ て 債 権 取 引 の 安 全 を 図 る も の で あ る と い え る︵ 。 法 政 大 学 図 書 館 所 蔵 の 梅 謙 次 郎 文 書 の ﹃ 規 程 会 則 類 ﹄ ︵A a/ ︶ の 目 次 に は︵ 、 ﹁ 一 法 典 調 査 会 二 文 部 省 三 帝 国 大 学 四 法 政 大 学 五 雑 ﹂ と あ り ︵ 墨 書 ︶ 、 続 い て ﹁ 法 典 調 査 会 ﹂ と 墨 書 さ れ た 中 表 紙 一 枚 ︵ 和 紙 一 二 行 青 罫 紙 ︶ が あ っ て 、 さ ら に そ の 直 後 に 和 紙 一 〇 行 青 罫 紙 四 枚 か ら な る 表 題 の な い 文 書 が あ る ︵ 頁 番 号 も 付 さ れ て お ら ず 、 丁 付 も さ れ て い な い︵ ︶ 。 そ の 一 枚 目 の 一 行 目 か ら 三 行 目 ま で に は 、 ﹁ 一 法 典 調 査 ノ 方 針 二 起 草 委 員 ノ 任 命 三 委 員 会 議 ノ 情 態 ﹂ と そ れ ぞ れ 墨 書 さ れ て お り 、 続 い て 四 行 目 に は や は り 墨 書 で ﹁ 四 我 民 法 ハ 独 法 系 ニ 属 ス ル ヤ 仏 法 系 ニ 属 ス ル ヤ ﹂ と の 項 目 が あ る 。 五 行 目 か ら は 、 第 一 編 か ら 章 や 節 な ど の 単 位 で こ の 問 い に 対 す る 答 え が 墨 書 さ れ て い る 。 二 枚 目 裏 一 行 目 に は 、 ﹁ 丁 債 権 ノ 譲 渡 仏 ニ 依 ル モ ノ 多 シ ﹂ と だ け 記 載 が あ り 、 二 行 目 は 、 ﹁ 戊 債 権 ノ 消 滅 ﹂ と な っ て い る 。 ﹁ 仏 ニ 依 ル モ ノ 多 シ ﹂ と の 記 述 は 、 現 行 民 法 の 債 権 譲 渡 規 定 が フ ラ ン ス 債 権 譲 渡 制 度 の 影 響 を 多 く 受 け て 起 草 さ れ た こ と を 意 味 す る と 同 時 に 、 三 起 草 委 員 が ド イ ツ 法 の 債 権 譲 渡 制 度 も あ る 程 度 は 参 考 に し て 、 規 定 を 起 草 し た こ と を 示 し て い る と み る こ と も で き る 。 実 際 に 三 起 草 委 員 は 、 明 治 三 一 年 民 法 典 の 起 草 に あ た っ て 、 フ ラ ン ス 民 法 と 並 ん で 、 オ ー ス ト リ ア 民 法 、 ス イ ス 松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 二

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債 務 法 、 ス イ ス の 州 法 ︵ ヴ ォ ー 、 グ ラ ウ ビ ュ ン デ ン 、 チ ュ ー リ ヒ ︶ 、 ド イ ツ 民 法 草 案 、 プ ロ イ セ ン 一 般 ラ ン ト 法 お よ び ザ ク セ ン 民 法 と い っ た ド イ ツ 法 系 の 立 法 も 参 照 し た︵ 。 そ し て 甲 号 議 案 四 七 〇 条 の 起 草 に お い て も 三 起 草 委 員 は 、 フ ラ ン ス 民 法 一 六 九 〇 条 は も ち ろ ん 、 オ ー ス ト リ ア 民 法 ︵ 澳 ︶ ︵ 一 三 九 五 条 、 一 三 九 六 条 ︶ 、 ス イ ス 債 務 法 ︵ 瑞 債 務 法 ︶ ︵ 一 八 四 条 か ら 一 八 八 条 ま で ︶ 、 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 ︵ 独 二 草 ︶ ︵ 三 五 一 条 、 三 五 三 条 、 三 五 四 条 ︶ 、 プ ロ イ セ ン 一 般 ラ ン ト 法 ︵ 普 国 法 ︶ ︵ 第 一 部 第 一 一 章 三 九 九 条 、 同 四 〇 九 条 、 同 四 一 四 条 か ら 同 四 一 六 条 ま で ︶ お よ び ザ ク セ ン 民 法 ︵ 索 ︶ ︵ 九 六 三 条 、 九 七 二 条 か ら 九 七 四 条 ま で ︶ と い っ た ド イ ツ 法 を 参 照 し て い る ︵ ︶ ︵ ︶ 。 梅 起 草 委 員 が ﹁ 特 筆 大 書 ス ヘ キ ハ 新 民 法 ノ 従 来 ノ 我 諸 法 典 及 ヒ 外 国 多 数 ノ 法 典 ノ 如 ク 一 国 ノ 法 典 ヲ 模 範 ト シ テ 起 草 シ タ ル モ ノ ニ 非 サ ル コ ト 是 ナ リ 或 ハ 独 逸 民 法 草 案 ニ 依 レ ル 部 分 ア リ 或 ハ 瑞 西 債 務 法 ニ 倣 ヘ ル 部 分 ア リ 或 ハ 伊 国 民 法 ヲ 模 範 ト セ シ 部 分 ア リ 或 ハ 西 国 民 法 ニ 則 リ タ ル 部 分 ア リ ﹂ と し 、 ﹁ 各 条 ニ 就 テ 細 ニ 之 ヲ 論 評 セ ハ 旧 民 法 ト 我 邦 ノ 慣 習 ト ノ 外 欧 米 諸 国 ノ 法 律 及 ヒ 学 説 中 其 可 ナ ル モ ノ ハ 之 ヲ 取 リ 其 不 可 ナ ル モ ノ ハ 之 ヲ 舎 テ 以 テ 尤 モ 虚 心 ニ 尤 モ 公 平 ニ 各 国 ノ 長 ヲ 取 ラ ン ト 欲 シ タ ル 迹 顕 然 掩 フ ヘ カ ラ サ ル モ ノ ア ル ナ リ ﹂ と 述 べ て い る こ と か ら も︵ 、 三 起 草 委 員 が 甲 号 議 案 四 七 〇 条 の 起 草 に あ た っ て ド イ ツ 法 系 の 立 法 か ら 示 唆 を 得 な か っ た と 結 論 付 け る こ と に は 、 無 理 が あ る で あ ろ う 。 ド イ ツ 法 系 の 立 法 に お け る 債 権 譲 渡 制 度 の 規 定 に つ い て 、 そ の 内 容 と 制 度 趣 旨 を 把 握 す る こ と は 、 現 行 民 法 四 六 七 条 を 正 確 に 理 解 し 、 同 条 の 妥 当 な 解 釈 論 に 資 す る と 考 え ら れ る 。 筆 者 は こ れ ま で 、 甲 号 議 案 四 七 〇 条 起 草 時 に 参 照 さ れ た ド イ ツ 法 の う ち 、 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 お よ び プ ロ イ セ ン 一 般 ラ ン ト 法 の 規 定 を 紹 介 し 、 こ れ ら の 規 定 に よ る 同 条 や 現 行 民 法 四 六 七 条 へ の 影 響 を 考 察 し て き た︵ 。 そ れ ゆ え 本 稿 で は 新 た に 、 ザ ク セ ン 民 法 の 九 六 三 条 お よ び 九 七 二 条 か ら 九 七 四 条 ま で に つ い て 、 そ の 内 容 と 立 法 趣 旨 を 明 ら か に す る 。 そ し て 、 こ れ ら の ザ ク セ ン 民 法 の 規 定 が 甲 号 議 案 の 起 草 に 与 え た 影 響 を 考 察 し 、 甲 号 議 案 四 七 〇 条 と 同 一 の 内 容 で あ る 現 行 民 法 四 六 七 条 の 構 造 を よ り 正 確 に 理 解 す る こ と に し た い 。 梅 起 草 委 員 は 、 一 八 六 民 法 四 六 七 条 と ザ ク セ ン 民 法 三

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三 年 一 月 二 日 に 公 布 さ れ 、 一 八 六 五 年 三 月 一 日 に 施 行 さ れ た ザ ク セ ン 王 国 民 法 典 ︵B ü rg erlich es G esetzb u ch fü r da s K öni gr ei ch S ac hs en ︶ に つ い て︵ 、 条 文 番 号 が 二 六 二 〇 ま で あ り 、 そ の 分 ド イ ツ 法 系 の 民 法 典 の 中 で は 最 も 完 全 で あ っ て 、 重 要 な こ と を も ら す こ と な く 規 定 し て お り 、 ﹁ 帝 国 民 法 草 案 モ 之 ヲ 模 範 ト ス ル 点 尠 カ ラ ス ﹂ と 述 べ て い る︵ 。 し た が っ て 、 三 起 草 委 員 が 参 照 し た ザ ク セ ン 民 法 の 規 定 を 的 確 に 把 握 す る こ と は 、 現 行 民 法 四 六 七 条 の 解 釈 へ の 示 唆 を 得 る こ と に つ な が る と 考 え ら れ る 。

ザ ク セ ン 民 法 草 案 に は 、 予 備 草 案 ︵ 一 八 五 二 年 ︶ と 改 訂 草 案 ︵ 一 八 六 〇 年 ︶ の 二 つ が あ る 。 司 法 大 臣He ld の 単 独 起 草 で あ る 、 オ ー ス ト リ ア 一 般 民 法 典 の 影 響 を 強 く 受 け て い た 予 備 草 案 は︵ 、 多 く の 批 判 も 受 け 、 新 草 案 と し て の 改 訂 草 案 が ま と め ら れ た︵ 。 予 備 草 案 は 、 ﹁ 第 三 編 債 権 法 第 四 章 権 利 及 び 義 務 の 変 更 に つ い て 第 二 節 債 権 者 の 交 代 に よ る 権 利 の 変 更 に つ い て ﹂ に お い て 債 権 譲 渡 の 規 定 を 置 い て い る 。 予 備 草 案 は 、 債 権 譲 渡 の 要 件 効 果 に つ き 、 次 の よ う に 規 定 し て い る 。 ︻ 予 備 草 案 第 九 三 九 条 ︵ 債 権 譲 渡 一 般 に つ い て︵ ︶ ︼ ﹁ 債 権 が あ る 者 か ら 他 の 者 に 譲 渡 さ れ 、 こ の 他 の 者 に よ っ て 譲 渡 が 承 認 さ れ た と き は 、 債 権 者 が 旧 債 権 者 か ら 新 債 権 者 へ と 交 代 す る こ と に よ る 権 利 の 変 更 が 、 生 じ る 。 こ の よ う な 行 為 を 債 権 譲 渡 ︵C essio n ︶ と い い 、 有 償 又 は 無 償 で 行 わ れ る こ と が で き る 。 ﹂ 松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 四

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︻ 予 備 草 案 第 九 四 〇 条︵ ︼ ﹁ ① 債 権 者 が 旧 債 権 者 か ら 新 債 権 者 へ と 交 代 す る こ と に な る 権 利 の 変 更 は 、 法 律 上 の 命 令 、 又 は 債 権 を 譲 渡 す る 者 ︵ 譲 渡 人 ︶ と 債 権 を 譲 り 受 け る 者 ︵ 譲 受 人 ︶ と の 間 の 合 意 に 基 づ く 。 債 務 者 の 同 意 は 、 不 要 で あ る 。 ② 債 権 に 対 す る 強 制 執 行 に つ い て は 、 訴 訟 法 で こ れ を 定 め る 。 ﹂ 右 に 掲 げ た 予 備 草 案 九 三 九 条 お よ び 同 九 四 〇 条 か ら 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 間 が 債 権 譲 渡 契 約 ︵ 無 方 式 の 諾 成 契 約 ︶ を 締 結 す る こ と に よ り 、 譲 渡 債 権 は 、 譲 渡 契 約 当 事 者 間 の み な ら ず 債 務 者 お よ び 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で も 、 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る こ と が 分 か る︵ 。 予 備 草 案 は 、 ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 と 同 様 、 ﹁ 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ﹂ を 採 用 す る も の で あ る と い え る ︵ ド イ ツ 民 法 第 二 草 案 三 四 二 条︵ ︶ 。 予 備 草 案 の 逐 条 理 由 書 は 、 予 備 草 案 が な ぜ こ の ﹁ 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ﹂ を 採 用 す る の か に つ い て 、 特 に 説 明 を し て い な い 。 予 備 草 案 の 後 に 登 場 し た 新 草 案 で あ る 改 訂 草 案 は 、 ﹁ 第 三 編 債 権 法 第 一 章 債 権 総 則 第 四 節 債 権 の 譲 渡 ﹂ に お い て 債 権 譲 渡 に つ い て 規 定 す る 。 改 訂 草 案 は 、 ﹁ 第 一 款 債 権 譲 渡 の 法 的 性 質 ﹂ に お い て 債 権 譲 渡 の 要 件 を 定 め て い る 。 ︻ 改 訂 草 案 第 九 八 〇 条︵ ︼ ﹁ 債 権 は 、 新 債 権 者 に 譲 渡 す る と い う 債 権 者 の 意 思 表 示 を 必 要 と す る こ と の な い 法 律 上 の 義 務 に 基 づ き 、 若 し く は 裁 判 官 が 債 権 譲 渡 を 宣 言 す る こ と に 基 づ き 、 又 は 債 権 譲 渡 を 含 む 法 律 行 為 が 存 在 す る こ と に 基 づ い て 、 債 権 者 の 法 律 上 の 義 務 又 は 自 由 な 意 思 の 結 果 行 わ れ た か ど う か に か か わ ら ず 、 債 権 譲 渡 に よ っ て 旧 債 権 者 か ら 新 債 権 者 へ と 移 転 す る 。 ﹂ 改 訂 草 案 九 八 〇 条 は 、 ザ ク セ ン 民 法 九 五 三 条 と 同 一 の 文 言 で あ る 。 ザ ク セ ン 民 法 九 五 三 条 は 、 現 行 民 法 四 六 六 条 と 同 一 の 内 容 で あ る 甲 号 議 案 四 六 九 条 の 起 草 時 に 三 起 草 委 員 が 参 照 し た 条 文 の 一 つ で あ る︵ 。 そ し て 改 訂 草 民 法 四 六 七 条 と ザ ク セ ン 民 法 五

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案 九 九 〇 条 は 、 次 の よ う に 規 定 し て い る 。 ︻ 改 訂 草 案 第 九 九 〇 条︵ ︼ ﹁ 債 権 譲 渡 は 、 譲 渡 の 目 的 と な る 債 権 が 譲 渡 人 に 帰 属 し て い る こ と を 要 し 、 譲 渡 人 は 、 債 権 を 譲 渡 す る 法 律 上 の 義 務 を 負 っ て い な い と き で あ っ て も 、 自 ら の 財 産 で あ る 債 権 を 自 由 に 処 分 す る こ と が で き 、 か つ 、 債 権 譲 渡 の 原 因 と な る 法 律 行 為 を す る こ と が で き る 。 債 権 譲 渡 に お け る 特 別 な 方 式 は 、 債 権 譲 渡 の 原 因 と な る 法 律 行 為 が こ れ を 要 求 し て い る 限 り に お い て の み 、 守 ら れ な け れ ば な ら な い 。 債 権 譲 渡 を す る た め に 、 債 務 者 の 同 意 は 、 不 要 で あ る 。 ﹂ 改 訂 草 案 九 九 〇 条 は 、 前 段 の ﹁ 債 権 譲 渡 の 原 因 と な る 法 律 行 為 を す る こ と が で き る ﹂ の 部 分 ︵zu de m A bs chl us se de s de r A bt re tung zu G runde lie ge nde n R ec ht sge sc hä fte s be re cht igt is t. ︶ に つ き 、 ザ ク セ ン 民 法 がR ec ht sge sc hä fts と し て い る こ と 以 外 は 、 ザ ク セ ン 民 法 九 六 三 条 と 同 一 の 文 言 と な っ て い る ︵ 下 線 は 筆 者 が 付 し た︵ ︶ 。 改 訂 草 案 九 八 〇 条 と 同 九 九 〇 条 か ら 、 改 訂 草 案 は 、 債 権 譲 渡 契 約 ︵ 準 物 権 行 為 ︶ を 含 む 原 則 無 方 式 の 契 約 ︵ 債 権 [ 原 因 ] 行 為 ︶ を 譲 渡 人 と 譲 受 人 が 締 結 す る こ と に よ り 、 譲 渡 債 権 が 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る と し て い る 。 す な わ ち 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 の 原 則 無 方 式 の 債 権 譲 渡 契 約 に よ っ て 、 譲 渡 債 権 は 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る と し て い る の で あ る 。 改 訂 草 案 九 八 〇 条 か ら は 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 が 無 方 式 の 債 権 譲 渡 契 約 を 締 結 す る こ と に よ っ て 、 譲 渡 債 権 が 譲 渡 契 約 当 事 者 間 で 移 転 す る に す ぎ な い の か 、 そ れ と も 、 債 務 者 お よ び 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で も 移 転 す る の か は 、 必 ず し も 明 ら か で は な い 。 こ の 点 を 明 確 に す る の が 、 最 後 の 款 で あ る ﹁ 第 三 款 債 権 譲 渡 の 効 力 ﹂ に あ る 改 訂 草 案 九 九 五 条 で あ る 。 松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 六

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︻ 改 訂 草 案 第 九 九 五 条︵ ︼ ﹁ 債 権 譲 渡 は 、 譲 渡 人 が 債 権 者 で あ る こ と を や め 、 も は や 債 権 に つ い て の 履 行 を 請 求 で き ず 、 債 権 に つ い て こ れ 以 上 処 分 で き ず 、 債 権 を 二 回 譲 渡 す る こ と は で き な い が 、 第 九 九 九 条 及 び 第 一 〇 〇 〇 条 に お い て 想 定 さ れ て い る と き を 除 き 、 債 権 を 有 効 に 消 滅 さ せ る 根 拠 に つ い て 、 譲 渡 人 又 は 譲 渡 人 に よ る 第 一 の 譲 渡 の 後 に そ の 債 権 を 譲 り 受 け た 者 か ら 排 除 す る 効 力 を 有 す る 。 新 債 権 者 は 、 譲 渡 人 と 交 代 し 、 債 権 を 処 分 し 、 譲 渡 し 、 か つ 、 債 務 者 に 対 し て こ れ を 行 使 す る 権 利 を 有 す る 。 ﹂ 改 訂 草 案 九 九 五 条 は 、 ﹁ 第 九 九 九 条 及 び 第 一 〇 〇 〇 条 に お い て 想 定 さ れ て い る と き を 除 き ﹂ の 部 分 ︵au sg en o m m en d ie in und g ed ach ten F älle ︶ に つ き 、 ザ ク セ ン 民 法 九 六 八 条 が こ れ を ﹁ 第 九 七 二 条 及 び 第 九 七 三 条 の 適 用 が あ る と き を 除 き ﹂ ︵vo rb eh ältlich d er V o rsch riften in und ︶ と し て い る 以 外 は 、 ザ ク セ ン 民 法 九 六 八 条 と 同 一 の 文 言 で あ る︵ 。 右 に 記 し た 箇 所 に つ い て は 後 述 す る と し て 、 改 訂 草 案 九 九 五 条 は 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ り 、 譲 渡 債 権 は 譲 渡 当 事 者 間 の み な ら ず 債 務 者 お よ び 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で も 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る こ と を 明 ら か に し 、 予 備 草 案 と 同 様 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 の 採 用 を 宣 言 し て い る と い え る 。 し か し 、 改 訂 草 案 の 逐 条 理 由 書 は 、 ﹁ 債 権 譲 渡 の 精 神 や 目 的 に 適 合 し た 方 法 で 、 我 々 の 需 要 や 見 解 に 債 権 譲 渡 が 一 致 す る よ う に 努 め て い る の で あ る が 、 債 権 に つ い て 特 定 承 継 が 可 能 で あ る と い う よ う な 考 え 方 を 承 認 し て い な い ﹂ と い う よ う に 、 奇 妙 な 説 明 を し て い る︵ 。 改 訂 草 案 逐 条 理 由 書 に い う ﹁ 債 権 に つ い て 特 定 承 継 が 可 能 で あ る と い う よ う な 考 え 方 ﹂ と は 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 指 す 。 改 訂 草 案 へ の 代 表 的 な 批 判 者 で あ るU nge r は︵ 、 改 訂 草 案 へ の 批 判 的 な 論 評 の 中 で︵ 、 改 訂 草 案 が 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 し て い る と 評 価 し 、 改 訂 草 案 九 九 五 条 が こ の 原 則 を 大 変 詳 細 に 規 定 し て い る と し た 上 で 、 ﹁ 譲 渡 人 は 債 権 者 で あ る こ と を や め 、 譲 受 人 は 今 や 債 権 者 で あ っ て 、 債 権 は 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る の に 、 そ れ に も か か わ 民 法 四 六 七 条 と ザ ク セ ン 民 法 七

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ら ず 改 訂 草 案 は 、 特 定 承 継 は な い と い う の で あ ろ う か 。 ﹂ と 述 べ て 、 改 訂 草 案 逐 条 理 由 書 の 説 明 に 疑 問 を 呈 す る︵ 。U nge r の 指 摘 に 加 え 、 改 訂 草 案 逐 条 理 由 書 も 自 ら 、 改 訂 草 案 九 九 五 条 に つ き ﹁ 譲 渡 人 が 債 権 譲 渡 に よ っ て 債 権 者 で あ る こ と を や め る と い う こ と ﹂ を そ の 内 容 で あ る と し て い る︵ 。 ま た 同 条 は 、 改 訂 草 案 九 九 九 条 ︵ ザ ク セ ン 民 法 九 七 二 条 と 同 一 内 容 の 規 定 ︶ で 規 定 さ れ て い る と き ︵ 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 が 譲 渡 人 に 対 し て 弁 済 し 、 ま た は 、 譲 渡 人 と の 間 で 債 務 免 除 の 合 意 を し た と き ︶ を 例 外 と し て 、 債 務 者 が 譲 渡 人 に し た 弁 済 や 譲 渡 人 と の 間 の 債 務 免 除 契 約 は 原 則 無 効 で あ る と し て い る 。 さ ら に 同 条 は 、 改 訂 草 案 一 〇 〇 〇 条 前 段 ︵ 二 を 参 照 [ ザ ク セ ン 民 法 九 七 三 条 前 段 と 同 一 内 容 の 規 定 ] ︶ の 適 用 が あ る と き ︵ 債 務 者 が 第 一 の 譲 渡 に つ い て 善 意 で 第 二 譲 受 人 に 対 し て し た 弁 済 、 ま た は 、 第 二 譲 受 人 と の 間 で 債 務 免 除 の 合 意 を し た と き ︶ も 例 外 と し て 、 債 務 者 が 第 二 譲 受 人 に 対 し て し た 弁 済 や 第 二 譲 受 人 と の 間 の 債 務 免 除 契 約 は 原 則 無 効 で あ る と す る︵ 。 し た が っ て 、 改 訂 草 案 九 九 五 条 は 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 の 採 用 を 宣 言 す る 規 定 で あ る と 確 認 す る こ と が で き る 。 改 訂 草 案 逐 条 理 由 書 も ま た 、 改 訂 草 案 が 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 す る 理 由 を 明 ら か に し て い な い 。 改 訂 草 案 の 中 心 的 な 起 草 者 の 一 人 で あ るSieb en haar は︵ 、 改 訂 草 案 九 九 五 条 と 同 一 内 容 の ザ ク セ ン 民 法 九 六 八 条 に つ い て 、 ﹁ 譲 渡 人 は 債 権 譲 渡 に よ り 、 譲 渡 債 権 が 譲 渡 人 の 財 産 に 属 さ な い よ う に す る こ と 、 つ ま り 処 分 で き な い よ う に す る ﹂ の で あ り 、 ﹁ 債 権 譲 渡 は 、 譲 渡 人 を 完 全 に 譲 渡 債 権 の 債 権 債 務 関 係 か ら 排 除 す る ﹂ も の で あ る と し て 、 ザ ク セ ン 民 法 の 債 権 譲 渡 制 度 が 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 る も の で あ る こ と を 指 摘 す る︵ 。 ま た 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 と は 異 な る 、 債 権 譲 渡 契 約 の 効 力 の あ り 方 と し て 存 在 す る 対 抗 要 件 主 義 に つ い て は 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 間 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ り ﹁ 債 権 譲 渡 は 完 成 す る ﹂ の で あ り 、 債 権 者 の 交 代 と い う 債 権 譲 渡 の 効 力 が 発 生 す る た め に 、 債 務 者 に 対 す る 譲 渡 の 通 知 は 根 本 的 に 必 要 で は な い と す る︵Sieb en haar は 、 譲 渡 債 権 が 譲 渡 契 約 締 結 の み に よ っ て 譲 渡 契 約 当 事 者 間 の み な ら ず 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 移 転 す る 理 由 を 明 確 に 示 し て は い な い 。 松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 八

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し か し 、 債 務 者 へ の 譲 渡 通 知 が な け れ ば 譲 渡 債 権 は 債 務 者 に 対 す る 関 係 で は 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 し な い と す る 対 抗 要 件 主 義 の 趣 旨 が ﹁ 譲 渡 に つ い て 善 意 の 債 務 者 が 譲 渡 人 に 対 し て 無 効 な 弁 済 を し て 譲 受 人 に さ ら な る 弁 済 を 強 い ら れ る こ と を 防 止 す る こ と ﹂ に 求 め ら れ る こ と を 念 頭 に 、 ザ ク セ ン 民 法 九 七 二 条 を 示 し 、 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 が 譲 渡 人 に 対 し て し た 弁 済 に よ っ て 債 務 者 は 債 務 か ら 解 放 さ れ る と し て い る こ と に 注 意 す べ き で あ る︵ 。 前 述 の よ う に ザ ク セ ン 民 法 九 七 二 条 と 同 一 内 容 の 規 定 が 、 改 訂 草 案 九 九 九 条 で あ る 。 ︻ ザ ク セ ン 民 法 第 九 七 二 条︵ ︼ ﹁ 債 務 者 が 裁 判 所 、 譲 渡 人 及 び 新 債 権 者 の い ず れ か に よ っ て 債 権 譲 渡 に つ い て 通 知 さ れ て い な い と き は 、 債 務 者 は 、 債 権 を 譲 渡 し た 債 権 者 に 対 す る 履 行 、 及 び こ の 者 と し た 契 約 に よ っ て 、 自 ら の 債 務 か ら 解 放 さ れ る 。 ﹂ ︻ 改 訂 草 案 第 九 九 九 条︵ ︼ ﹁ 債 務 者 が 債 権 の 譲 渡 に つ い て 知 ら な い と き は 、 債 務 者 は 、 旧 債 権 者 に 対 す る 履 行 、 及 び こ の 者 と の 契 約 に よ っ て 、 自 ら の 債 務 か ら 解 放 さ れ る 。 債 務 者 が 債 権 譲 渡 に つ い て 裁 判 所 、 旧 債 権 者 又 は 新 債 権 者 に よ っ て 通 知 さ れ て い な い と き は 、 債 務 者 は 、 債 権 譲 渡 に つ い て 知 ら な い も の と 推 定 す る 。 ﹂ つ ま り Sieb en haar は 、 対 抗 要 件 主 義 で は な く 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 し た 場 合 に お い て 、 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い た め 譲 渡 に つ き 善 意 で 債 務 者 が 譲 渡 人 に 対 し て 弁 済 を し た と き で あ っ て も 、 そ の 弁 済 を 例 外 的 に 有 効 と す れ ば 、 債 務 者 は 二 重 弁 済 の 危 険 を 回 避 で き る と し て い る と 説 明 し て い る の で あ る 。 債 務 者 は 、 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い の で あ り 、 譲 渡 に 関 与 し て い な い 者 の 法 的 地 位 が 譲 渡 の 前 後 で 害 さ れ る こ と は 、 許 さ れ ず 、 譲 渡 人 、 譲 受 人 お よ び 債 務 者 の 三 者 間 の 公 平 に 反 す る 。 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 の 法 的 地 位 を 譲 渡 の 前 後 で 変 化 さ せ な い こ と は 、 債 権 譲 渡 の 基 本 理 念 で あ る 。 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 し て も 改 訂 草 案 九 九 九 条 や ザ ク セ ン 民 法 九 七 二 条 の よ う な 規 定 を 設 け る こ と で 、 こ の 基 本 理 念 を 貫 徹 で き る こ と か ら す れ ば 、 こ の 原 則 の 民 法 四 六 七 条 と ザ ク セ ン 民 法 九

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採 用 は 、 少 な く と も 債 務 者 に 対 す る 関 係 で 何 の 問 題 も な い こ と に な る 。 改 訂 草 案 が 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 る 理 由 の 一 つ が こ こ に あ る と い え よ う 。 な お 、 改 訂 草 案 九 九 九 条 と 同 様 に ザ ク セ ン 民 法 九 七 二 条 も 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 基 礎 と し て 善 意 の 債 務 者 に よ る 譲 渡 人 に 対 す る 弁 済 を 特 別 に 有 効 と し て い る と こ ろ 、 こ れ は 、 右 の 原 則 の 例 外 と し て 、 譲 渡 人 に 譲 渡 債 権 の 処 分 権 を 認 め て い る こ と を 意 味 す る と 理 解 さ れ て い る ︵ ﹁ 債 権 を 有 効 に 消 滅 さ せ る 根 拠 に つ い て 、 譲 渡 人 又 は 譲 渡 人 に よ る 第 一 の 譲 渡 の 後 に そ の 債 権 を 譲 り 受 け た 者 か ら 排 除 ﹂ し て い な い と い う こ と に な る ︶ 。 ザ ク セ ン 民 法 の 教 科 書 の 中 に は 、 債 務 者 が 譲 渡 に つ い て 知 る ま で 持 続 す る 譲 渡 人 の 処 分 権 の 説 明 と し て 、 ﹁ 債 権 の 移 転 そ れ 自 体 が 許 容 さ れ て い る こ と と 結 び つ い て い る 危 険 、 す な わ ち 二 重 に 弁 済 を し な け れ ば な ら な い と い う こ と を 除 去 し 、 債 務 者 を 債 務 か ら 解 放 し て 保 護 す る も の で あ る 。 改 訂 委 員 会 の 討 議 記 録 に お い て 、 公! 平! の! 観! 点! に 基 づ き 、 債 務 者 を 債 務 か ら 解 放 す る こ と が 決 定 さ れ た 。 ﹂ と の 記 述 が あ る︵ 。 改 訂 草 案 逐 条 理 由 書 が ﹁ 債 権 譲 渡 の 精 神 や 目 的 に 適 合 し た 方 法 で 、 我 々 の 需 要 や 見 解 に 債 権 譲 渡 が 一 致 す る よ う に 努 め て い る ﹂ と し て い る こ と に 鑑 み 、 ﹃ 債 権 譲 渡 契 約 に 関 与 し な い 債 務 者 の 法 的 地 位 を 譲 渡 の 前 後 で 変 化 さ せ ず 、 譲 渡 に よ る 利 益 を 有 す る 譲 渡 当 事 者 と 債 務 者 と の 間 の 公 平 を 維 持 す る こ と ﹄ こ そ 、 ザ ク セ ン の 債 権 譲 渡 制 度 の ﹃ 精 神 ︵ 基 本 理 念 ︶ ﹄ の 一 つ で あ る と 理 解 す る こ と が で き る よ う に 思 わ れ る 。 こ の こ と は 、 特 に 強 調 し て お き た い 。 改 訂 草 案 九 九 五 条 は 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ り 、 譲 渡 債 権 が 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で も 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る こ と も 明 確 に し て い る 。 し た が っ て 改 訂 草 案 逐 条 理 由 書 が 指 摘 す る よ う に 、 債 権 が 多 重 に 譲 渡 さ れ た と き は 、 第 一 譲 受 人 が 唯 一 の 債 権 者 と な る︵ 。 改 訂 委 員 会 の 報 告 者 ︵ 起 草 者 ︶ ︵R eferen t ︶ も 務 め た sch ma nn も︵ 、 自 身 の コ ン メ ン タ ー ル ︵ 完 全 改 訂 第 二 版 ︶ の 中 で こ の こ と を 確 認 す る︵ 。 他 方 、 対 抗 要 件 主 義 は 、 債 務 者 へ の 譲 渡 の 通 知 が な け れ ば 譲 渡 債 権 は 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で 譲 渡 人 松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 一 〇

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か ら 譲 受 人 へ と 移 転 し て お ら ず 、 こ れ が あ っ て は じ め て こ の 者 と の 関 係 で も 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る と し 、 債 権 の 多 重 譲 渡 に あ っ て は 、 先 に 債 務 者 へ の 譲 渡 の 通 知 を 具 備 し た 譲 受 人 が 唯 一 の 債 権 者 と な る︵ 。 こ れ は 、 債 務 者 に 一 刻 も 早 く 第 一 譲 受 人 に 債 務 者 に 対 す る 譲 渡 の 通 知 を 具 備 さ せ 、 債 務 者 を 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と す る こ と で 、 債 権 取 引 の 安 全 を 図 る も の で あ る 。 債 権 の 特 定 承 継 原 則 で は 、 譲 渡 債 権 が 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で も 移 転 し た こ と に つ き 何 ら の 公 示 も な い こ と か ら 、 債 務 者 以 外 の 第 三 者 は 、 譲 渡 人 と 無 効 な 債 権 譲 渡 契 約 を 締 結 し て し ま い 、 債 権 取 引 の 安 全 が 害 さ れ る 危 険 が あ る 。 改 訂 草 案 逐 条 理 由 書 お よ び 収 集 で き た ザ ク セ ン 民 法 の コ ン メ ン タ ー ル や 教 科 書 は 、 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 債 権 譲 渡 契 約 の 効 力 に つ き 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 す る 根 拠 を 明 ら か に し て い な い 。 ま た 、 対 抗 要 件 主 義 と 対 比 し 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 に 伴 う 債 権 取 引 の 危 険 性 を 考 察 す る と い う こ と も 見 受 け ら れ な い 。 使 ザ ク セ ン 民 法 の 債 権 譲 渡 制 度 は 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 し て い る 。 譲 渡 人 と 譲 受 人 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 の み に よ っ て 、 譲 渡 債 権 は 、 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る 。 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 は 、 譲 渡 自 体 を 知 ら な い た め 、 債 務 者 を 二 つ の か た ち で 巻 き 込 む 可 能 性 が あ る 。 一 つ 目 は 、 ﹁ 無 権 利 者 で あ る 譲 渡 人 に 対 し て 無 効 な 弁 済 を し て し ま い 、 譲 受 人 に 対 し て さ ら な る 弁 済 を 強 い ら れ る ﹂ と い う か た ち で あ る 。 譲 渡 前 は 原 債 権 者 へ の 一 回 の 弁 済 に よ っ て 債 務 か ら 解 放 さ れ た 債 務 者 は 、 譲 渡 後 に は 二 回 の 弁 済 を し な い と 債 務 か ら 解 放 さ れ な く な る 一 方 で 、 譲 受 人 と 譲 渡 人 は 、 譲 渡 に よ る 利 益 を 受 け て お り 、 三 者 間 に 不 公 平 状 態 が 生 じ て い る 。 ﹃ 債 権 譲 渡 契 約 に 関 与 し な い 債 務 者 の 法 的 地 位 を 譲 渡 の 前 後 で 変 化 さ せ ず 、 譲 渡 に よ る 利 益 を 有 す る 譲 渡 当 事 者 と 債 務 者 と の 間 の 公 平 を 維 持 す る こ と ﹄ こ そ 、 債 権 取 引 に 対 す る 民 法 四 六 七 条 と ザ ク セ ン 民 法 一 一

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需 要 に 優 先 す る 、 ザ ク セ ン 債 権 譲 渡 制 度 の ﹃ 精 神 ︵ 基 本 理 念 ︶ ﹄ で あ る 。 そ れ ゆ え 、 譲 渡 後 に 債 務 者 が し た 譲 渡 人 へ の 弁 済 は 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 の 例 外 と し て 有 効 と さ れ る 必 要 が あ り 、 ザ ク セ ン 民 法 草 案 は 、 予 備 草 案 の 段 階 か ら こ の 例 外 規 定 を 置 い て 債 務 者 を 保 護 し て い た 。 ︻ 予 備 草 案 第 九 四 七 条 ︵ 債 務 者 の 支 払︵ ︶ ︼ ﹁ 債 務 者 は 、 債 権 譲 渡 が 譲 渡 人 に よ っ て 通 知 さ れ 、 若 し く は 譲 受 人 に よ っ て 信 頼 に 足 る 方 法 で 通 知 さ れ て い な い 限 り に お い て 、 最 初 の 債 権 者 に 支 払 い 、 又 は こ の 者 と 譲 渡 さ れ た 債 権 に 関 す る 法 律 行 為 を す る こ と が で き る 。 ﹂ 予 備 草 案 九 四 七 条 は 、 譲 渡 人 又 は 譲 受 人 に よ る 譲 渡 の 通 知 ︵ 譲 受 人 が 通 知 の 主 体 で あ る と き は 、 そ の 通 知 が 債 務 者 の ﹁ 信 頼 に 足 る 方 法 で ﹂ 行 わ れ る 必 要 が あ る ︶ が な け れ ば 、 債 務 者 は 譲 渡 債 権 に つ き 履 行 請 求 を し て き た 譲 受 人 に 対 し て こ れ を 拒 絶 し 、 最 初 の 債 権 者 ︵ 譲 渡 人 ︶ に 有 効 な 弁 済 を す る こ と が で き る と し て お り 、 譲 渡 の 通 知 を 譲 受 人 が 自 ら に 帰 属 し て い る 譲 渡 債 権 を 行 使 す る た め の 要 件 と し て い る 規 定 で も あ る 。 こ の 点 は 、 後 述 す る こ と と し て 、 同 条 は 、 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 が 譲 渡 人 に 対 し て し た 弁 済 は 有 効 で あ り 、 債 務 者 は 譲 受 人 に さ ら な る 弁 済 を し な く て も よ い と す る 。 予 備 草 案 逐 条 理 由 書 は 、 ﹁ 債 務 者 が 譲 渡 人 ま た は 譲 受 人 に よ っ て 譲 渡 に つ い て 通 知 さ れ て い な い と き で も 、 債 務 者 は 、 譲 渡 人 に 対 し て 支 払 う こ と が で き る と い う も の で は な い ﹂ と 述 べ 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 か ら 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ り 、 譲 渡 債 権 は 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 し 、 譲 渡 人 は 無 権 利 者 と な っ て い る こ と ︵ 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 は 譲 渡 人 に 支 払 い 、 債 務 を 消 滅 さ せ る こ と は で き な い こ と ︶ を 確 認 す る︵ 。 そ の 上 で 理 由 書 は 、 ﹁ 債 務 者 は 債 権 譲 渡 に 関 与 し て い な い の で 、 債 権 譲 渡 は 、 そ れ が 債 務 者 に 通 知 さ れ る ま で は 、 ま っ た く 債 務 者 に 関 知 さ れ て い な い 。 そ れ ゆ え 債 務 者 は 、 依 然 と し て 譲 渡 人 に 対 し て 有 効 に 支 払 う こ と が で き る 。 債 務 者 は 債 権 譲 渡 を 回 避 す る こ と が で き な い の で 、 債 権 譲 渡 の 通 知 が な さ れ る ま で に 譲 渡 人 に 対 し て 生 じ た あ ら ゆ る こ と に つ い て は 、 債 務 者 は 、 松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 一 二

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こ の 通 知 後 も 譲 受 人 に 対 抗 で き な け れ ば な ら な い の で あ る ﹂ と す る︵ 。 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 は 、 譲 渡 人 に 無 効 な 弁 済 を し て 、 さ ら に 譲 受 人 へ の 弁 済 を 強 い ら れ る 。 譲 渡 前 の 一 回 の 弁 済 で 債 務 か ら 解 放 さ れ る と い う 法 的 地 位 が 譲 渡 に よ っ て 害 さ れ る こ と は 、 譲 渡 に よ っ て 利 益 を 受 け る 譲 渡 人 と 譲 受 人 と の 対 比 か ら み て 不 公 平 で あ る 。 そ れ ゆ え 予 備 草 案 は 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 の 例 外 と し て 、 善 意 の 債 務 者 は 有 効 に 譲 渡 人 に 弁 済 で き る と す る︵ 。 改 訂 草 案 も 、 予 備 草 案 九 四 七 条 の 趣 旨 を 引 き 継 ぎ 、 二 で 掲 げ た 九 九 九 条 を 置 い て い る 。 改 訂 草 案 九 九 九 条 は 、 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 が 譲 渡 人 に 対 し て 弁 済 し た と き は 債 務 か ら 解 放 さ れ る と 述 べ て お り 、 予 備 草 案 九 四 七 条 の ﹁ 譲 渡 人 に 支 払 う こ と が で き る ﹂ の 内 容 を 明 確 に し た も の で あ る 。 改 訂 草 案 逐 条 理 由 書 は 、 改 訂 草 案 九 九 九 条 を 置 く 理 由 に つ い て 特 に 述 べ て は い な い 。 し か し 、 改 訂 草 案 九 九 九 条 と 同 一 内 容 の 規 定 で あ る ザ ク セ ン 民 法 九 七 二 条 ︵ 二 を 参 照 ︶ に 対 し て は 、 改 訂 草 案 の 中 心 的 な 起 草 者 で あ る Sieb en haar が 説 明 を 加 え て い る 。 Sieb en haar は 予 備 草 案 逐 条 理 由 書 と 同 様 、 ﹁ 譲 渡 債 権 の 債 務 者 は 、 譲 渡 人 に 対 し て 支 払 を す る 権 利 も 義 務 も 有 し て い な い ﹂ と し 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 改 訂 草 案 九 九 五 条 ︶ か ら の 帰 結 を 示 す︵ 。 そ し て 、 ﹁ 落 ち 度 の な い 債 務 者 の 利 益 の た め 、 債 務 者 の 危 険 を 考 慮 し て 、 債 務 者 が 裁 判 所 、 譲 渡 人 お よ び 譲 受 人 の い ず れ か ら も 債 権 譲 渡 に つ い て 通 知 を 受 け て い な い と き は 、 譲 渡 人 に 対 す る 履 行 に よ っ て 債 務 者 が 譲 受 人 に 対 す る 関 係 で 債 務 か ら 解 放 さ れ る と い う 例 外 ︵Au sn ah m e ︶ が 九 七 二 条 に お い て 認 め ら れ て い る ﹂ と 説 く︵ 。 ﹁ 落 ち 度 の な い 債 務 者 ﹂ と は 、 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い た め 譲 渡 に よ っ て 譲 渡 債 権 が 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 し た こ と を 債 務 者 が 知 り え な い こ と を 意 味 す る と 考 え ら れ る 。Sieb en haar の 説 明 に よ れ ば 、 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 が 無 権 利 者 で あ る 譲 渡 人 に 対 し て し た 弁 済 を 特 別 に 有 効 と し て 、 債 務 者 か ら 二 重 弁 済 の 危 険 を 除 去 し 、 譲 渡 に よ っ て 利 益 を 受 け る 譲 渡 契 約 当 事 者 と 債 務 者 と の 間 の 公 平 を 維 持 す る 規 定 が 、 改 訂 草 案 九 九 九 条 や ザ ク セ ン 民 法 九 七 二 条 と い う 民 法 四 六 七 条 と ザ ク セ ン 民 法 一 三

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こ と に な り 、 両 条 と 予 備 草 案 九 四 七 条 の 趣 旨 は 同 じ で あ る と い え る 。 ザ ク セ ン 民 法 九 七 二 条 が 適 用 さ れ る と き は 、 譲 受 人 は 、 弁 済 を 受 領 し た 譲 渡 人 に 対 し て 、 不 当 利 得 返 還 請 求 を す る こ と に な ろ う 。 ザ ク セ ン 債 権 譲 渡 制 度 が 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 し て い る 結 果 生 ず る 、 債 務 者 が 巻 き 込 ま れ る か た ち の 二 つ 目 は 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 の み に よ っ て 譲 渡 債 権 が 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る た め 、 譲 渡 に 関 与 せ ず 、 譲 渡 に つ い て 認 識 し え な い 債 務 者 が ﹁ 譲 受 人 と 称 す る 者 ︵ 表 見 譲 受 人 [ 債 務 者 か ら は 真 正 な 譲 受 人 に 見 え る 無 権 利 者 ] ︶ ﹂ に 無 効 な 弁 済 を し て し ま い 、 真 正 な 債 権 者 ︵ 真 正 な 譲 受 人 ま た は 原 債 権 者 ︶ に 対 す る さ ら な る 弁 済 を 強 い ら れ る と い う も の で あ る 。 ザ ク セ ン 民 法 草 案 は 、 債 務 者 が こ う し た か た ち で 巻 き 込 ま れ る の を 防 止 す る 規 定 も 用 意 し て い る 。 前 掲 の 予 備 草 案 九 四 七 条 は 、 譲 渡 人 ま た は 譲 受 人 に よ る 譲 渡 の 通 知 ︵ 譲 受 人 に よ る 譲 渡 の 通 知 は [ 債 務 者 が ] 信 頼 す る に 足 る 方 法 に よ ら な け れ ば な ら な い ︶ が な さ れ て い な い と き は 、 債 務 者 は 譲 受 人 に よ る 譲 渡 債 権 に つ い て の 履 行 請 求 を 拒 絶 で き る と し て い る 。 こ れ に つ い て 予 備 草 案 逐 条 理 由 書 は 、 ﹁ 第 三 者 に よ る 債 権 譲 渡 の 通 知 は 、 そ の 真 正 の 点 で 疑 わ し く 、 債 務 者 が 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に 関 与 す る も の で は な い た め 、 第 三 者 は 、 見 知 ら ぬ 者 と し て 出 現 す る の で あ り 、 単 な る 第 三 者 に よ る 通 知 で は 、 債 務 者 に す ぐ に 危 険 が も た ら さ れ る こ と に な る ﹂ と 述 べ る︵ 。 理 由 書 の ﹁ 第 三 者 ﹂ と は 、 原 債 権 者 お よ び 債 務 者 以 外 の 者 、 す な わ ち 原 債 権 者 と 債 権 譲 渡 契 約 を 締 結 し 、 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 譲 渡 債 権 を 取 得 し た ︵ 譲 渡 債 権 の 移 転 を 受 け た ︶ ﹁ 真 正 な 譲 受 人 ﹂ 、 お よ び 原 債 権 者 と 債 権 譲 渡 契 約 を 締 結 し て い な い に も か か わ ら ず 、 自 ら 譲 受 人 と 称 す る ﹁ 表 見 譲 受 人 ﹂ を 指 す と 考 え ら れ る 。 債 務 者 が 譲 渡 人 か ら 譲 渡 の 通 知 を 受 け て お ら ず 、 譲 渡 人 に 弁 済 し て い な い 場 合 に お い て 、 真 正 な 譲 受 人 が 譲 渡 に つ い て 通 知 し て 譲 渡 債 権 を 債 務 者 に 対 し て 行 使 す る こ と は 、 債 権 譲 渡 制 度 に よ っ て 債 務 者 の 法 的 地 位 ︵ 一 回 の 弁 済 で 債 務 か ら 解 放 さ れ る 地 位 ︶ を 害 す る こ と に は な ら な い 。 し か し 、 譲 渡 の 通 知 を し て 債 務 者 に 履 松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 一 四

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行 請 求 す る 者 が 表 見 譲 受 人 で あ っ た と き は 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 に よ り 、 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な く 譲 渡 を 認 識 し て い な い 債 務 者 は 、 表 見 譲 受 人 を 真 正 な 譲 受 人 と 誤 信 し て そ の 者 に 無 効 な 弁 済 を す る 可 能 性 が あ る 。 債 務 者 は 、 真 正 な 譲 受 人 ま た は 原 債 権 者 に さ ら な る 弁 済 を 強 い ら れ 、 自 ら が 関 与 し な い 債 権 譲 渡 制 度 に よ っ て そ の 法 的 地 位 が 害 さ れ る こ と に な る 。 予 備 草 案 の 逐 条 理 由 書 は 、 こ う し た 債 務 者 の 二 重 弁 済 の 危 険 を 指 摘 し て い る 。 そ こ で 予 備 草 案 は 、 譲 渡 人 の 通 知 ま た は 信 用 で き る 方 法 に よ る 譲 受 人 の 通 知 に よ っ て 、 譲 受 人 が 真 正 な 新 債 権 者 で あ る こ と を 証 明 さ せ 、 債 務 者 が 表 見 譲 受 人 に 無 効 な 弁 済 を し て 、 真 の 債 権 者 に さ ら な る 弁 済 を 強 い ら れ る こ と を 防 止 し よ う と す る 。 そ し て 、 そ の 証 明 が 確 実 に な さ れ る よ う に す る べ く 、 右 の 通 知 を 譲 受 人 の 権 利 行 使 要 件 と す る の で あ る︵ 。 予 備 草 案 逐 条 理 由 書 は 、 譲 受 人 に よ る 通 知 に 求 め ら れ る ﹁ 信 頼 に 足 る 方 法 ﹂ の 内 容 に つ い て は 、 言 及 し て い な い 。 な お 、 譲 渡 人 に よ る 譲 渡 の 通 知 に つ い て は 、 ﹁ 書 面 に よ る 通 知 を 要 求 す る こ と は 、 無 視 さ れ な け れ ば な ら な い 。 通 知 に 方 式 を 要 求 す る こ と は 、 債 権 取 引 を 非 常 に 困 難 に す る と い う 不 利 益 を も た ら す ﹂ と 説 明 さ れ て い る︵ 。 改 訂 草 案 は 、 予 備 草 案 九 四 七 条 を 実 質 的 に 引 き 継 い だ 規 定 を 置 い て い る 。 ︻ 改 訂 草 案 第 一 〇 〇 一 条︵ ︼ ﹁ 債 務 者 は 、 裁 判 所 又 は 債 権 を 譲 渡 し た 債 権 者 自 身 に よ っ て 債 権 譲 渡 に つ い て 通 知 さ れ て い な い と き は 、 新 債 権 者 に 対 し て 、 そ の 新 債 権 者 自 ら に 債 権 が 譲 渡 さ れ た こ と を 証 明 す る よ う に 請 求 す る こ と が で き 、 こ の 証 明 が な さ れ る ま で は 、 新 債 権 者 の 催 告 に よ っ て 履 行 遅 滞 と は な ら ず 、 債 務 の 目 的 物 を 留 保 し 、 又 は 裁 判 所 に 供 託 す る こ と が で き る 。 証 書 に よ っ て 債 権 譲 渡 を 証 明 す る た め に 、 そ の 証 書 に 債 権 譲 渡 の 原 因 と な る 法 律 行 為 の 種 類 を 記 載 す る こ と は 、 不 要 で あ る 。 し か し な が ら 、 債 務 者 は 、 債 権 譲 渡 そ れ 自 体 に 対 す る 抗 弁 を 提 出 す る こ と が で き る 。 ﹂ 民 法 四 六 七 条 と ザ ク セ ン 民 法 一 五

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改 訂 草 案 一 〇 〇 一 条 は 、 裁 判 所 も し く は 譲 渡 人 に よ る 譲 渡 の 通 知 ま た は 譲 受 人 に よ る 譲 渡 の 証 明 が な い と き は 、 譲 受 人 は 譲 渡 債 権 を 債 務 者 に 対 し て 行 使 で き な い と す る 。 改 訂 草 案 逐 条 理 由 書 は 、 譲 受 人 に よ る 譲 渡 の 証 明 に つ き 、 ﹁ 債 務 者 が 一 〇 〇 一 条 に 基 づ い て 請 求 し う る 債 権 譲 渡 の 証 明 は 当 然 、 信 頼 に 足 る も の で な け れ ば な ら な い 。 譲 受 人 に よ る 証 明 が 信 頼 に 足 る と み る こ と が で き る か ど う か は 、 個 々 の 場 合 の 判 断 に 委 ね ら れ る 。 信 頼 に 足 る 証 明 は 、 譲 受 人 が 債 務 者 に 対 し て 債 権 譲 渡 に つ い て 説 明 す る こ と に よ っ て も 行 わ れ う る 。 債 務 者 が 譲 受 人 を 新 債 権 者 と し て 認 識 し た と き は 、 譲 受 人 の 説 明 に よ る 証 明 は 、 な さ れ て い る と 評 価 で き る 。 ﹂ と 述 べ る︵ 。 改 訂 草 案 一 〇 〇 一 条 は 、 予 備 草 案 九 四 七 条 と は 異 な り 、 譲 受 人 に よ る 信 頼 に 足 る 方 法 で の 通 知 を 譲 受 人 の 権 利 行 使 要 件 と は し て い な い よ う に も 思 え る 。 し か し 、 改 訂 草 案 一 〇 〇 一 条 が 定 め る 譲 受 人 の 債 務 者 に 対 す る 譲 渡 の 証 明 は 、 債 権 譲 渡 契 約 書 な ど の 債 権 譲 渡 証 書 を 債 務 者 に 呈 示 し て 、 自 ら に 債 権 が 譲 渡 さ れ た こ と を 説 明 す る こ と に よ っ て 行 わ れ う る 。 こ う し た 説 明 は 、 譲 受 人 が 自 ら へ の 譲 渡 が あ っ た こ と を 債 務 者 に 知 ら せ る こ と と 同 じ で あ り 、 こ の 通 知 は 、 債 務 者 に と っ て 信 頼 に 足 る も の で あ る と い え る 。 し た が っ て 、 改 訂 草 案 一 〇 〇 一 条 の 譲 受 人 に よ る 証 明 と 予 備 草 案 九 四 七 条 の 信 頼 に 足 る 通 知 と は 同 一 で あ り 、 改 訂 草 案 逐 条 理 由 書 が 一 〇 〇 一 条 の 趣 旨 を 述 べ て い な い と し て も そ の 趣 旨 は 、 予 備 草 案 九 四 七 条 と 同 様 、 債 務 者 が 表 見 譲 受 人 に 無 効 な 弁 済 を し て 真 の 債 権 者 に さ ら な る 弁 済 を 強 い ら れ る 危 険 を 防 止 す る た め 、 譲 渡 証 書 の 呈 示 ︵ 信 頼 に 足 る 通 知 ︶ に よ っ て 譲 受 人 が 真 の 新 債 権 者 で あ る こ と を 証 明 さ せ 、 通 知 を 譲 受 人 の 権 利 行 使 要 件 と し て こ の 証 明 が 確 実 に な さ れ る よ う に し た も の で あ る と い え る 。 な お 、 前 掲 の 改 訂 草 案 九 九 九 条 の 新 債 権 者 に よ る 債 務 者 に 対 す る 通 知 は 、 同 一 〇 〇 一 条 を 受 け て 、 譲 受 人 が 自 ら に 債 権 が 譲 渡 さ れ た こ と を 譲 渡 証 書 に よ っ て 債 務 者 に 証 明 す る こ と を い う こ と に な ろ う 。 譲 渡 人 の 通 知 も こ の 譲 受 人 の 証 明 ︵ 信 頼 に 足 る 通 知 ︶ も な け れ ば 、 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 は 、 ︵ 履 行 遅 滞 を 恐 れ て ︶ 無 権 利 者 で あ る 譲 渡 人 に 対 し て 弁 済 し て も 、 例 外 的 に 債 務 か ら 解 放 さ れ る こ と に な る 。 松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 一 六

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ザ ク セ ン 民 法 九 七 四 条 は 、 改 訂 草 案 一 〇 〇 一 条 の 最 初 の 下 線 部 分 ﹁ 債 権 者 自 身 ﹂ を ﹁ 債 権 者 ﹂ に 、 次 の 下 線 部 分 ﹁ 債 権 譲 渡 そ れ 自 体 ﹂ を ﹁ 債 権 譲 渡 ﹂ に 変 え れ ば 、 同 一 〇 〇 一 条 と 同 じ 訳 と な る︵ 。 そ れ ゆ え 、 ザ ク セ ン 民 法 九 七 四 条 の 立 法 趣 旨 は 、 同 一 〇 〇 一 条 の 趣 旨 と 同 じ で あ る と い え る 。 ザ ク セ ン 民 法 九 七 二 条 の 新 債 権 者 の 通 知 は 、 新 債 権 者 が 譲 渡 証 書 に よ っ て 譲 渡 が あ っ た こ と を 証 明 す る こ と 、 す な わ ち 信 頼 に 足 る 通 知 を い う こ と に な る︵ 。 譲 渡 人 が 債 務 者 に 譲 渡 の 通 知 を せ ず 、 か つ 、 譲 受 人 が 譲 渡 証 書 に よ っ て 債 務 者 に 譲 渡 を 証 明 し な い ︵ 債 務 者 に 対 し て 信 頼 に 足 る 譲 渡 の 通 知 を し な い ︶ と き は 、 債 務 者 は 、 譲 渡 人 に 対 す る 弁 済 に よ っ て 債 務 か ら 解 放 さ れ る ︵ ザ ク セ ン 民 法 九 七 二 条 ︶ 。 ザ ク セ ン 債 権 譲 渡 制 度 が 採 用 す る 債 権 の 特 定 承 継 原 則 に よ り 、 譲 受 人 と 債 権 譲 渡 契 約 を 締 結 し た 譲 渡 人 は 、 債 務 者 お よ び 債 務 者 以 外 の 第 三 者 と の 関 係 で も 無 権 利 者 と な る 。 そ れ ゆ え 、 第 一 の 債 権 譲 渡 後 に 譲 渡 人 が 第 二 譲 受 人 と 締 結 し た 債 権 譲 渡 契 約 は 、 無 効 で あ り 、 債 権 の 多 重 譲 渡 に あ っ て は 、 第 一 譲 受 人 の み が 新 債 権 者 と な る 。 予 備 草 案 に は 多 重 譲 渡 の 規 定 は な い が 、 改 訂 草 案 は 、 一 〇 〇 〇 条 で こ れ に つ い て 定 め て い る 。 ︻ 改 訂 草 案 一 〇 〇 〇 条︵ ︼ ﹁ 債 務 者 は 、 債 権 者 が 債 権 を 多 重 に 譲 渡 し 、 か つ 、 債 務 者 が 早 く 行 わ れ た 債 権 譲 渡 を 知 ら な い と き は 、 遅 く 債 権 を 譲 り 受 け た 者 に 対 し て し た 履 行 及 び こ の 者 と し た 契 約 に よ っ て も ま た 、 債 務 か ら 解 放 さ れ る 。 遅 く 債 権 を 譲 り 受 け た が 、 新 債 権 者 で あ る と 正 当 に 信 頼 し て 履 行 請 求 を し 、 弁 済 を 受 領 し た 者 に 対 す る 受 領 物 の 返 還 請 求 権 は 、 早 く 債 権 を 譲 り 受 け た 者 に 帰 属 せ ず 、 譲 渡 人 の み が こ の 者 に 対 し て 義 務 を 負 う 。 ﹂ 債 権 の 多 重 譲 渡 の 場 合 に お い て 、 譲 渡 人 に よ る 譲 渡 の 通 知 を 第 一 譲 受 人 よ り も 早 く 具 備 し 、 ま た は 第 一 譲 受 民 法 四 六 七 条 と ザ ク セ ン 民 法 一 七

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人 よ り も 早 く 譲 渡 証 書 に よ っ て 譲 渡 を 証 明 し た 第 二 譲 受 人 に 対 し て 、 第 一 の 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 が 弁 済 し た と き は 、 そ の 弁 済 は 本 来 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 ︵ 改 訂 草 案 九 九 五 条 ︶ に よ り 無 効 な 弁 済 で あ る 。 第 二 の 債 権 譲 渡 契 約 は 絶 対 的 に 無 効 だ か ら で あ る 。 ザ ク セ ン 債 権 譲 渡 制 度 に お い て は 、 多 重 譲 渡 の 優 劣 決 定 基 準 は 、 ﹁ 譲 渡 人 と の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 の 先 後 ﹂ と い う こ と に な る 。 改 訂 草 案 の 起 草 者 の sch ma nn は 、 ﹁ 債 権 者 が 同 一 の 債 権 を 多 重 に 譲 渡 し た と き に は 、 二 番 目 以 降 の 譲 渡 は 無 効 で あ る ﹂ と 述 べ 、 右 の 優 劣 決 定 基 準 を 確 認 す る ︵ ︶ ︵ ︶ 。 債 務 者 に よ る 右 の 弁 済 が 無 効 で あ る な ら ば 、 債 務 者 は 、 新 債 権 者 た る 第 一 譲 受 人 に さ ら な る 弁 済 を 強 い ら れ 、 譲 渡 前 に は 一 回 の 弁 済 で 債 務 か ら 解 放 さ れ た 地 位 が 譲 渡 に よ っ て 害 さ れ る こ と に な る 。 そ こ で 、 譲 渡 に よ っ て 利 益 を 得 る 第 一 の 譲 渡 契 約 当 事 者 と の 公 平 を 図 る た め 、 債 務 者 に よ る 右 の 弁 済 は 、 特 別 に 有 効 な も の と さ れ る の で あ る︵ 。 し た が っ て 、 こ の 限 り に お い て 、 劣 後 譲 受 人 た る 第 二 譲 受 人 は 無 権 利 者 で あ る に も か か わ ら ず 、 譲 渡 債 権 の 処 分 権 を 有 し て い る の と 実 質 的 に は 同 じ こ と に な る ︵ 改 訂 草 案 九 九 五 条 を 参 照 ︶ 。 唯 一 の 新 債 権 者 で あ る 第 一 譲 受 人 は 、 債 務 者 か ら 弁 済 を 受 領 し た 第 二 譲 受 人 に 対 し て 不 当 利 得 返 還 請 求 を な し う る こ と に な り そ う で あ る 。 し か し 、 改 訂 草 案 一 〇 〇 〇 条 は 、 第 二 譲 受 人 が 債 務 者 か ら の 弁 済 受 領 時 に 自 ら を 新 債 権 者 で あ る と 正 当 に 信 頼 し て い た と き は ︵ ︶ ︵ ︶ 、 新 債 権 者 で あ る 第 一 譲 受 人 は 、 劣 後 譲 受 人 た る 第 二 譲 受 人 に 対 し て 、 不 当 利 得 返 還 請 求 権 を 取 得 し な い と す る 。 こ れ に つ い て sch ma nn は 、 ﹁ 特 定 承 継 理 論 に よ る 厳 し さ か ら 第 二 譲 受 人 を 守 る た め に 定 め ら れ た も の ﹂ と 説 明 す る︵ 。 第 一 譲 受 人 よ り も 早 く 譲 渡 人 に よ る 譲 渡 通 知 を 具 備 し 、 ま た は 第 一 譲 受 人 よ り も 早 く 譲 渡 証 書 に よ っ て 譲 渡 を 証 明 し て 、 第 一 の 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 か ら 弁 済 を 受 領 し た 第 二 譲 受 人 は 、 弁 済 受 領 時 に お い て 第 一 の 譲 渡 に つ き 善 意 で あ っ た と き で も 、 無 権 利 者 で あ る 。 し か し 、 新 債 権 者 で あ る 第 一 譲 受 人 に よ る 劣 後 譲 受 人 で あ る 第 二 譲 受 人 に 対 す る 不 当 利 得 返 還 請 求 権 を 認 め る な ら ば 、 譲 渡 人 へ の 第 二 譲 受 人 に よ る 損 害 賠 償 請 求 権 の 行 使 が 実 際 上 無 意 味 で あ る こ と も あ わ せ て 考 え る と 、 松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 一 八

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債 権 取 引 の 安 全 は 、 害 さ れ る 結 果 と な る 。 そ こ で 改 訂 草 案 は 、 第 二 譲 受 人 の 譲 渡 債 権 帰 属 へ の 信 頼 を 保 護 し て 債 権 取 引 の 安 全 を 図 る た め 、 第 一 譲 受 人 は 第 二 譲 受 人 に 対 す る 不 当 利 得 返 還 請 求 権 を 取 得 し な い と す る の で あ る 。 そ し て 、 改 訂 草 案 一 〇 〇 〇 条 後 段 は 、 譲 渡 人 が 第 一 譲 受 人 に 対 し て 原 因 行 為 か ら 生 ず る 履 行 不 能 責 任 ︵ 損 害 賠 償 責 任 ︶ ︵ 債 権 の 移 転 債 務 の 履 行 不 能 責 任 ︶ を 負 う と す る 。 も ち ろ ん 第 一 譲 受 人 は 、 同 条 前 段 の 適 用 の 結 果 、 譲 渡 債 権 の 消 滅 を 甘 受 せ ざ る を え ず 、 債 務 者 に 対 し て 履 行 請 求 す る こ と は で き な い 。 改 訂 草 案 一 〇 〇 〇 条 後 段 は 、 債 権 の 多 重 譲 渡 の 場 合 に お け る 債 権 取 引 安 全 を 図 ろ う と し た 規 定 で あ る 。 し か し 、 第 一 譲 受 人 に よ る 譲 渡 人 に 対 す る 履 行 不 能 責 任 の 追 及 は 、 実 質 的 に 不 可 能 で あ る 。 第 一 譲 受 人 は 、 譲 渡 人 か ら 一 番 早 く 債 権 を 譲 り 受 け た も の の 、 第 二 譲 受 人 が 第 一 譲 受 人 よ り も 先 に 改 訂 草 案 一 〇 〇 一 条 前 段 の 権 利 行 使 要 件 を 具 備 し 、 第 一 の 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 か ら 同 様 に 善 意 で 弁 済 を 受 領 し た と き は 、 唯 一 の 新 債 権 者 で あ る に も か か わ ら ず 、 譲 渡 債 権 を 失 い 、 第 二 譲 受 人 に 対 す る 不 当 利 得 返 還 請 求 権 も 取 得 し な い 。 そ れ ゆ え 第 一 譲 受 人 は 実 質 的 に 、 譲 渡 債 権 を 取 得 し て い な か っ た 無 権 利 者 に 等 し い こ と に な る 。 第 一 譲 受 人 の 確 定 的 な 譲 渡 債 権 取 得 の 期 待 は 、 完 全 に 害 さ れ る 。Sieb en haar は 、 ﹁ 第 一 譲 受 人 に 対 す る 厳 し さ は 、 第 一 譲 受 人 が 通 知 に よ っ て 自 ら の 権 利 を 確 実 に す る こ と が で き る こ と か ら 、 存 在 し な い 。 ﹂ と 言 う︵Sieb en haar の 言 う ﹁ 通 知 ﹂ は 、 改 訂 草 案 一 〇 〇 一 条 前 段 が 定 め る 譲 渡 人 に よ る 債 務 者 に 対 す る 譲 渡 通 知 、 ま た は 譲 受 人 に よ る 譲 渡 証 書 を 用 い た 譲 渡 の 証 明 を 指 し 、 た し か に 第 一 譲 受 人 が 第 二 譲 受 人 に 先 ん じ て 権 利 行 使 要 件 を 具 備 す れ ば 、 債 務 者 は 、 第 一 の 譲 渡 に つ い て 認 識 し 、 第 一 譲 受 人 に 弁 済 す る ︵ 改 訂 草 案 一 〇 〇 〇 条 前 段 参 照 ︶ 。 そ の 結 果 、 第 一 譲 受 人 の 譲 渡 債 権 取 得 の 期 待 は 、 守 ら れ る こ と に な る 。 し か し 、 譲 渡 債 権 の 弁 済 期 に 第 二 譲 受 人 が 第 一 譲 受 人 よ り も 早 く 権 利 行 使 要 件 を 具 備 し 、 第 一 の 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 か ら 、 や は り 善 意 で 弁 済 を 受 領 し た の が 第 一 譲 受 人 の 権 利 行 使 要 件 具 備 の 直 前 と い う こ と も あ り う る 。 こ の と き は 、 第 一 譲 受 人 の 確 定 的 な 譲 渡 債 権 取 得 の 期 待 は 、 民 法 四 六 七 条 と ザ ク セ ン 民 法 一 九

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害 さ れ る こ と に な ろ う 。 そ し て 何 よ り も 、 第 一 譲 受 人 が 第 二 譲 受 人 よ り も 先 に 権 利 行 使 要 件 を 具 備 し て 債 務 者 か ら 弁 済 を 受 領 す る こ と も あ り 、 第 二 譲 受 人 の 譲 渡 債 権 取 得 の 期 待 が 害 さ れ る こ と も あ ろ う 。 し た が っ て 、 第 二 譲 受 人 の 譲 渡 債 権 取 得 に 対 す る 期 待 を 保 護 し 、 も っ て 債 権 取 引 安 全 を 図 る と い う 改 訂 草 案 一 〇 〇 〇 条 後 段 の 趣 旨 は 、 不 完 全 な も の で あ る と 評 価 し う る 。 改 訂 草 案 一 〇 〇 〇 条 と ザ ク セ ン 民 法 九 七 三 条 の 訳 文 は 、 後 者 に 下 線 部 分 の ﹁ も ま た ︵au ch ︶ ﹂ が な い と い う こ と 以 外 は 、 同 じ で あ る︵ 。 最 後 に 、 ザ ク セ ン 債 権 譲 渡 制 度 は 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で も な ぜ フ ラ ン ス 民 法 の 対 抗 要 件 主 義 を 採 用 し な か っ た の か 、 こ れ ま で 同 制 度 を 概 観 し て き た と こ ろ か ら 理 解 し う る こ と を 若 干 述 べ て お き た い 。 債 権 譲 渡 の 効 果 た る 債 権 の 移 転 は 譲 渡 人 と 譲 受 人 と の 間 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ っ て 譲 渡 人 と 譲 受 人 間 で は 生 じ る が 、 債 務 者 以 外 の 第 三 者 と の 関 係 で は 、 債 務 者 に 対 す る 譲 渡 通 知 、 ま た は 債 務 者 に よ る 譲 渡 の 承 諾 が な け れ ば 生 じ な い と す る 対 抗 要 件 主 義 は 、 通 知 ま た は 承 諾 を 譲 渡 債 権 の 取 得 ︵ 譲 渡 債 権 の 帰 属 ︶ を 対 抗 す る 要 件 と す る こ と で 、 債 務 者 を 譲 渡 債 権 の 帰 属 に 関 す る 公 示 機 関 ︵ イ ン フ ォ メ ー シ ョ ン ・ セ ン タ ー ︶ と し 、 債 権 取 引 の 安 全 を 図 っ た も の で あ る 。 債 務 者 は 、 第 一 の 譲 渡 前 に は 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 し て 譲 渡 債 権 の 帰 属 先 を 回 答 す る 義 務 は な か っ た と こ ろ 、 そ の 譲 渡 後 に は 回 答 義 務 を 負 う こ と に な り 、 譲 渡 の 前 後 で こ れ に 関 与 し て い な い 債 務 者 の 法 的 地 位 は 、 害 さ れ る 。 こ の こ と は 、 譲 渡 に よ っ て 利 益 を 受 け る 第 一 の 譲 渡 当 事 者 と 債 務 者 間 の 公 平 に 反 す る こ と に な る 。 予 備 草 案 の 改 訂 委 員 会 は 前 述 の よ う に 、 譲 渡 当 事 者 と 債 務 者 間 の 公 平 を 重 視 し 、 公 平 の 理 念 は 債 権 取 引 の 需 要 に 優 先 す る 債 権 譲 渡 の 精 神 で あ る と し て い た 。 債 権 譲 渡 ︵ 契 約 ︶ の 当 事 者 で は な い 債 務 者 が 譲 渡 に よ っ て そ の 地 位 を 害 さ れ る こ と 、 す な わ ち 譲 渡 当 事 者 と 債 務 者 間 が 不 公 平 な 状 態 と な る こ と は 、 許 さ れ な い の で あ る 。 し た が っ て 、 ザ ク セ ン 債 権 譲 渡 制 度 は 、 債 権 取 引 の 安 全 と い う 取 引 界 の 需 要 ︵ 要 請 ︶ に 配 慮 を 試 み つ つ も ︵ そ れ は 功 を 奏 す る と は 言 い 難 い が ︶ 、 ﹁ 譲 渡 当 事 者 と 債 務 者 間 の 公 平 を 維 持 す る ﹂ と い う ﹁ 債 権 譲 松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 二 〇

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渡 の 精 神 ﹂ か ら 、 フ ラ ン ス 民 法 の 対 抗 要 件 主 義 を 採 用 す る こ と は で き な か っ た と 考 え ら れ る 。 対 抗 要 件 主 義 を 採 る こ と が で き な い 以 上 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 の 債 権 譲 渡 契 約 の 効 力 は 通 知 ま た は 承 諾 が な け れ ば 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に は 及 ば な い と す る 根 拠 は な い こ と に な る 。 ザ ク セ ン 債 権 譲 渡 制 度 が 債 務 者 以 外 の 第 三 者 に 対 す る 関 係 で も 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 す る の は 、 こ う し た 事 情 に 基 づ く も の と 思 わ れ る 。

ザ ク セ ン 債 権 譲 渡 制 度 は 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 用 し て お り ︵ ザ ク セ ン 民 法 九 六 八 条 ︶ 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ り 譲 渡 債 権 は 、 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る こ と に な る 。 た し か に 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 は 、 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ の 債 権 の 移 転 を 知 り え な い た め 、 た と え ば 譲 渡 債 権 の 弁 済 期 に 無 権 利 者 で あ る 譲 渡 人 に 無 効 な 弁 済 を し て 、 新 債 権 者 で あ る 譲 受 人 に さ ら な る 弁 済 を 強 い ら れ る 危 険 が あ る 。 譲 渡 前 に は 原 債 権 者 に 対 す る 一 回 の 弁 済 に よ っ て 債 務 か ら 解 放 さ れ た 債 務 者 は 、 譲 渡 後 に は 二 回 の 弁 済 に よ ら な け れ ば 解 放 さ れ な い こ と に な り 、 債 務 者 の 法 的 地 位 は 譲 渡 に よ っ て 害 さ れ て い る 。 こ れ は 、 譲 渡 に よ っ て 利 益 を 受 け る 譲 渡 契 約 当 事 者 と 債 務 者 間 の 公 平 に 反 す る 。 ザ ク セ ン 債 権 譲 渡 制 度 は 、 ﹁ 譲 渡 に よ っ て 債 務 者 の 法 的 地 位 が 害 さ れ る こ と を 防 ぎ 、 譲 渡 人 、 譲 受 人 お よ び 債 務 者 間 の 公 平 を 図 る こ と ﹂ を 債 権 取 引 と い う 需 要 に 適 合 し た 債 権 譲 渡 を 支 配 す る ﹁ 債 権 譲 渡 の 精 神 ﹂ に 位 置 づ け 、 債 務 者 が 譲 渡 に つ き 善 意 で 譲 渡 人 に し た 弁 済 を 特 別 に 有 効 と す る ︵ ザ ク セ ン 民 法 九 七 二 条 ︶ 。 ザ ク セ ン 民 法 は 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 を 採 っ て も 、 譲 渡 に つ き 債 務 者 が 譲 渡 人 と 譲 受 人 へ の 二 重 弁 済 の 危 険 を 負 わ な い こ と か ら 、 同 原 則 を 承 認 し て い る と い え る 。 民 法 四 六 七 条 と ザ ク セ ン 民 法 二 一

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と は い え 、 債 権 の 特 定 承 継 原 則 が 採 用 さ れ て い る 以 上 、 譲 渡 に よ っ て 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 譲 渡 債 権 が 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 し た こ と を 債 務 者 が 認 識 で き な い こ と に 変 わ り は な い 。 し た が っ て 、 債 権 譲 渡 に つ い て 善 意 の 債 務 者 は 、 表 見 譲 受 人 を 譲 受 人 と 信 じ て 無 効 な 弁 済 を し て し ま い 、 真 の 譲 受 人 ︵ 新 債 権 者 ︶ ま た は 原 債 権 者 へ の さ ら な る 弁 済 を 強 い ら れ か ね な い 。 債 権 譲 渡 契 約 当 事 者 で は な い 債 務 者 が 譲 渡 に よ っ て 害 さ れ る こ と は 、 ﹁ 譲 渡 に よ っ て 債 務 者 の 法 的 地 位 が 害 さ れ る こ と を 防 ぎ 、 譲 渡 人 、 譲 受 人 お よ び 債 務 者 間 の 公 平 を 図 る こ と ﹂ と い う 債 権 譲 渡 の 基 本 理 念 に 反 す る 。 そ こ で ザ ク セ ン 債 権 譲 渡 制 度 は 、 ザ ク セ ン 民 法 九 七 四 条 を 置 き 、 譲 受 人 が 譲 渡 人 に よ る 譲 渡 の 通 知 を 具 備 す る か 、 ま た は 譲 渡 証 書 に よ り 譲 渡 を 債 務 者 に 証 明 し な け れ ば 、 譲 渡 債 権 を 債 務 者 に 対 し て 行 使 で き な い と す る 。 つ ま り 、 新 債 権 者 と し て の 資 格 ︵ 地 位 ︶ を 譲 受 人 に 確 実 に 証 明 さ せ る こ と に し て 、 債 務 者 が 表 見 譲 受 人 に 対 し て 無 効 な 弁 済 を す る こ と の な い よ う に し て い る 。 こ こ に お い て ザ ク セ ン 民 法 九 七 四 条 は 、 譲 受 人 の 権 利 行 使 要 件 規 定 で あ る と い え る 。 他 方 日 本 の 債 権 譲 渡 制 度 に お い て も 、 譲 渡 人 と 譲 受 人 の 無 方 式 の 債 権 譲 渡 契 約 締 結 に よ り ︵ 四 六 六 条 一 項 本 文 ︶ 、 譲 渡 債 権 は 、 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 譲 渡 人 か ら 譲 受 人 へ と 移 転 す る と 解 さ れ る 。 譲 渡 に つ き 善 意 の 債 務 者 が 譲 渡 人 に 対 し て 弁 済 し た と き で も 、 債 務 者 は 民 法 四 六 八 条 に よ り 、 そ の 弁 済 を 譲 受 人 に 対 抗 で き る︵ 。 そ れ ゆ え 、 債 権 譲 渡 契 約 締 結 の み に よ っ て そ の 効 力 を 債 務 者 に ま で 及 ぼ し て も 、 債 務 者 が 譲 渡 人 と 譲 受 人 へ の 二 重 弁 済 の 危 険 を 負 う こ と は な く 、 債 権 者 に 対 す る 一 回 の 弁 済 で 債 務 か ら 解 放 さ れ る 債 務 者 の 地 位 は 譲 渡 の 前 後 で 変 化 し な い か ら 、 自 ら が 関 与 し な い 譲 渡 に よ っ て 債 務 者 が 害 さ れ る こ と も な い 。 日 本 民 法 の 債 権 譲 渡 制 度 に お い て も 、 ﹁ 債 権 譲 渡 に 関 与 し な い 債 務 者 が 譲 渡 に よ っ て 害 さ れ て は な ら な い ﹂ と い う こ と は 、 制 度 の 基 本 理 念 で あ る と こ ろ ︵ 民 法 四 六 八 条︵ ︶ 、 債 権 譲 渡 契 約 の 効 力 を こ の よ う に 理 解 し て も 、 こ の 基 本 理 念 は 実 現 さ れ る 。 民 法 四 六 七 条 一 項 は 、 債 権 譲 渡 契 約 の 締 結 に よ っ て そ の 効 果 た る 債 権 の 移 転 が 債 務 者 に 対 す る 関 係 で も 生 じ る 松 山 大 学 論 集 第 二 十 九 巻 第 五 号 二 二

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