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観光都市ヴェネツィアにの「絵になる」広場空間デザインに関する研究―カナレットの描いた絵画にみる都市景観― [ PDF

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Academic year: 2021

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(1)観光都市ヴェネツィアの「絵になる」広場空間デザインに関する研究 ―カナレットの描いた絵画にみる都市景観― 田篭 友一 1. 研究の背景と目的. 街路、多くの広場によって独自の都市構造 を持つ、世界遺.  景観は地図と違って地上に存在する、ある特定の地点. 産にも指定されている都市である。近年では年間1,000万. からの眺めであり 、視点移動によって 視対象の現れ方は. 人を超える観光客が訪れる世界有数 の観光都市であり、. 次々と移り変わっていく。こうした景観の動的な特性を. それ故に引き起こされる都市的問題も多く抱えているの. 踏まえ、視点場と視対象、さらに観察者の視点移動につい. が現状である。ヴェネツィアの広場の多くは島々のコ. て総合的にデザインすることが景観設計では重要となる。. ミュニティを象徴する教会の周辺で自然発生的に形成さ. 私たちは、人により異なる美の評価基軸 を、歴史的評価を. れており、形状・大きさともに様々な広場が存在してい. 得ている風景画に求めて都市景観分析を進めてきた 。18. る。陸上交通が徒歩のみの ヴェネツィアにおいて 広場は. 世紀のヴェネツィア風景画家であるカナレット(1697-. 生活の舞台であり、現在でも高密都市 の光と開放感を担. 1768)の「絵になる」構図については既に幾つかの知見を. う重要な都市空間となっている。. 得ているが 、視対象などの物的環境 と観察者の視点移動. 3. 研究の方法. との関連についてはさらに分析を進める必要がある。.  文献調査及び現地調査によって 絵画と実景の同定、及.  以上により、本研究では(1)歩行者が多く賑わいの場. び広場での利用行動を観察した。本研究では広場に関連. でもある広場空間における「絵になる」構図・視対象・視. した 31 枚の絵画(計 48 箇所の視点場)をサンプルとし、. 点場の特性を明らかにする(2)ヴェネツィアにおける広. 12 の広場を対象として分析を進めている。. 場の空間的特性と利用行動を明らかにする(3)視点場決. 4. 広場類型別 に見た視点場及び視対象の特性. 定・視点移動の要因と広場空間デザイン の関連性を探る、. 4.1 公共(特別)広場の景観. ことを目的としている。これらの検討により、地区計画レ.  サン・マルコ広場、サン・マルコ小広場、レオーニ小広. ベルの景観、とりわけ街路とオープンスペース の景観設. 場を主題とした景観である(図1、図3)。広場内の建築物. 計に対し示唆を得たいと考える。. やモニュメントを主な視対象とし、特にサン・マルコ聖堂. 2. 観光都市ヴェネツィアと広場形成の概略. とカンパニーレが描かれている。超近景(100m以内)に.  対象地であるヴェネツィア は、大小の運河と迷路状の. 広場の様子、その後景に近景(100m∼300m)の建築物を. 図 1 視点場 の分布状況(Pz, Rv ). 図 2 視点場 と各広場の分布状況(Cp). 1). 3- 1.

(2) 表 1 広場類型別のカテゴリ平均値 と視点別絵画数. 1. 表 2 各広場 の隣接空間・アプローチと階段・レベル差. 2. 3. : 1 .公 共(特 別)広 場 の景 観 ( 視 点 場 コ ー ドPz2) 「サン・マルコ広場」 2 .公 共(一 般)広 場 の景 観 ( 視 点 場 コ ー ドCp5) : 「サン・ロッコ広場」 3 .サ ン ・ マ ル コ 湾 沿い の 広 幅 員 街 路 の 景観 ( 視 点 場 コ ー Rv3) ド: 「造幣局とともに望む西に面する船着場」. 図 3 カナレットの絵画例. 見る構図である。画角は概ね一望できる 範囲に留まって. 能な隣接空間(陸上有効アプローチ)と、その接続部線長. いる。視点場は一方に100m以上の見通しが利き、複数視. の平均を求めた。隣接空間から広場は内陸型と運河隣接. 点を持つ場合が多い(表 1)。. 型の 2つに大別される。さらに、陸上有効アプローチが少. 4.2 公共(一般)広場の景観. なく周辺からの独立性 が高い広場や、接続部線長が大き.  カンポと呼ばれる大小様々な広場を主題とした 景観で. く隣接空間との連続性が高い広場が存在した。また、広場. ある(図 2、図 3)。広場内の建築物や離れた場所の鐘楼、. 内には必ず階段やレベル差が設けられている(表2、図5)。. 近接する運河や街路に面する建築物が主な視対象である。. 5.2 広場のデザインエレメント. 広場内の教会と離れた場所にある 鐘楼が描かれることが.  広場を構成するデザインエレメントは主に、設備・装置. 多い。超近景で視対象を捉える構図が多く、中景以上. 的な構成要素(ストリートファニチュア)と店舗に分ける. (300m以上)の視対象は望めない。画角が大きいのが特徴. ことができる。ヴェネツィアの広場で特徴的なデザイン. である。視点場はやや囲繞感があり、背面5m 以内に建築. エレメントは、井戸、リストン(床面に施される白いライ. 壁面を控えた単独視点 がほとんどである(表 1)。. ン状の舗装)、オープンカフェ、仮設店舗である(表 3)。. 4.3 サン・マルコ湾沿いの広幅員街路 の景観. 5.3 広場での利用行動の特性.  モーロ河岸通りとサン・マルコ湾を主題とした 景観で.  対象広場 において利用者の行動観測 を行い、特定時間. ある(図 1、図3)。視点場近傍の建築物やモニュメント. 内の人数、利用行動と行動場所を地図上に記録した。. と、サン・マルコ湾を通してみる 教会等の建築群を主な視. (1)利用者人数の推移. 対象とし、離れた場所にある教会と鐘楼は必ず描かれて.  多くの広場が日中 200 人前後の人数推移 となっている. いる。超近景から近景に河岸通りの様子、近景から中景に. が、サン・マルコ広場は昼をピークに人数が1,000人近く. かけてサン・マルコ湾、さらにその後景の中景から遠景に. に達する(図 4)。昼に人数のピークを迎える広場、時間. かけて建築物を見る構図である。画角は概ね一望できる. 帯に関係なく人数がほぼ一定である広場、昼過ぎから 夕. 範囲に留まっている。視点場は開放感の高い場所で、単独. 方にかけて人数が増加する広場の3つに大別でき、人数推. 視点と複数視点 がほぼ同じ割合で存在する(表 1)。視線. 移は観光スポット などの周辺状況 や観光客に大きく影響. 方向はサン・マルコ湾へ向けられている。. を受けている。. 5. 広場の空間的特性と利用行動. (2)利用行動の分類とエリア分布. 5.1 広場の空間構成.  広場で観測した利用行動は、大きく「移動」と「滞留」.  歩行者に対する各広場の周辺地域・隣接空間からの独. の 2 つであり、「滞留」行動は主に「遊び」、 「会話」、 「休. 立性や連続性をみるために、陸上で広場へアプローチ可. 憩(食事)」、 「家事」が確認できる。次に、「移動」、 「滞 3- 2.

(3) 表 3 広場空間を構成するデザインエレメント   . 図 4 各広場 の利用者人数推移 表 4 利用行動の時間による 分類. 留」行動を利用時間 の長短によって「通過」、 「散歩」、 「停. 6. 視点移動の要因と広場空間のデザイン. 止・準備」、 「交流・休憩」の 4つに分類した(表 4)。 「通. 6.1 空間的特性と視点場決定の関連. 過」は広場に行動目的がなく、動線の一部として利用する.  前章での広場の空間的特性を踏まえ、カナレットの視. 場合、「散歩」は広場内を巡る回遊的な動きを指す。「停. 点場を考察する。全視点場41 点中15 点が広場と街路の結. 止・準備」は現在の行動から次の行動へ移るための一時的. 節点付近、17 点が主に滞留行動の目立つ空間(以下滞留. 空間利用であり、短い休憩等はここに含まれる。「交流・. エリア)、9 点が主に移動行動の目立つ空間(以下移動エ. 休憩」は食事や遊びのように特定の目的を伴った行動で、. リア)に位置している 。そのうち、単独視点絵画の視点場. 座姿勢や歩行以外 の運動行為 が多い。分類に従って広場. と複数視点絵画の主視点場だけを見ると、全26 点中14 視. 内の各エリアの利用行動分布を把握した(図 6)。広場と. 点が結節点付近、10 視点が滞留エリア、2視点が移動エリ. 隣接空間との結節点付近は幅員の影響から人通りが多く、. アである。ゆえにカナレットは、狭い街路等からアプロー. 空間構成の急激な変化に立ち止まって 地図を見たり周囲. チした際に突然現れる開放的かつ劇的な景観、広場内に. を眺めたりする「停止・準備」行動が多い。 「交流・休憩」. 滞留して意図的に主題を眺める選択的な景観の2つを「絵. はカフェやベンチなどのデザインエレメント に誘発され. になる」景観構図として描いている。特に劇的な景観は. るが、子供たちの 遊びのようにデザインエレメント より. 「公共(一般)広場」に多い傾向にある。. も広い空間を必要とする場合もある。 「散歩」行動は面積. 6.2 視点移動の要因. が大きく動線数も多い広場で目立つが、 「通過」行動は面.  結節点付近や滞留エリアで構図の全体構成 を行い、そ. 積が小さく主動線も1方向に強い街路的空間構成の広場で. こから移動エリアへの視点移動を行う場合が多い。また、. 目立っている。また、陸上有効アプローチの割合が低いサ. この場合の視点移動は利用行動の動線と似たような軌跡. ン・ポーロ広場など では住 民の 姿が目 立ち、観光名所や交 通要所 と な る広場 では観 光 客 の姿が 多い。隣接空間と広 場内の 構 成 要 素 に よって、ヴェネツィ アの広 場は 生活の 場で あ る広 場と観 光地的 な広 場がう まく共存・分節され ている。. 図 5 広場の空間構成例(Cp-II). 3- 3. 図 6 広場の利用行動分布例 (Cp-II ).

(4) となっている。滞留エリア間での視点移動距離は15m以下. ネツィアの広場空間はある地点から眺める静的な景観だ. (3視点での合計も20m未満)、一方に移動エリアを含む場. けでなく、利用行動や視線の移動・誘導も含めた動的景観. 合は20mを超える(表5)。また、視点移動が行われるのは 「公共(特別)広場」に多く、大きな広場に特有の動的な. が効果的に強調されつつ描かれている。. 7. 総括. 景観である 。カナレットは空間的特性に合わせた視点移.  本研究では、4 章において(1)空間類型による3つの広. 動によって「絵になる」景観を構成している。. 場景観はいずれも視対象に著名な建築物を2つ以上見られ. 6.3 視点移動による景観効果と空間デザイン. ること、 (2)それぞれ構図と視対象への距離景に特徴があ.  各視点場 の空間データの関係から、視点移動による景. ること、を明らかにした。. 観効果は以下の4つに類型化できる(図7)。滞留エリアか.  5 章では、 (1)各広場では隣接空間とアプローチの関係. ら短い距離の移動によって、横へ広がる奥行空間の視対. から連続性や独立性に差異が生じていること、 (2)デザイ. 象を全体構図に付加する「奥行空間の強調」、主視点場で. ンエレメントとして広場には装置・設備的構成要素と店. 全体構成される画角範囲内のヴィスタ・通景方向へ迫る. 舗が多様に配置されていること、 (3)各広場の利用行動分. 「パースペクティブの強調」、双方が横に位置する視点場. 布から生活の場と観光地がうまく 共存・文節されている. で画面全体を構成する「パノラマの強調」、前方への大き. こと、が明らかになった。. な移動で、通景を閉じる役目を持つ視対象を効果的に追.  6 章では、 (1)広場空間では結節点付近や滞留エリアに. 加・配置する「フォーカスポイントの挿入」である。ヴェ. 視点場が集中し、アプローチ時の劇的な景観と広場内滞 留時の選択的な景観が存在すること 、 (2)絵画内の視点移. 表 5 複数視点の空間データと景観効果. 動が広場の空間構成と利用行動を反映していること、 (3) 「奥行空間の強調」 「パースペクティブの強調」 「パノラマ の強調」 「フォーカスポイントの挿入」をキーワードに、動 的景観が効果的に強調された広場空間 デザインとして描 かれていること、が明らかになった。 参考文献 1)萩島哲:都市風景画を読む―十九世紀ヨーロッパ印象派の都市景観―、九州 大学出版会、2002 2)福田太郎:ヴェネツィアの「絵になる」都市的空間デザインに関す る研究―カナレットが描いた絵画にみる都市景観―、修士論文、2002 3)陣内秀信:ヴェネツィア―都市のコンテクストを読む―、鹿島出版会、1986 4)J.G.Links:Canaletto、Phaidon、1994 5)J.G.Links:Views of Venice by Canaletto、Dover Publications、1971 6)Venise Portrait D’Une Ville -Atlas Aerien-、Gallimard、1990. 「 奥 行 空 間 の パ ノ ラ マの 強 調 」. 「 パ ー ス ペ ク テ ィ ブの 強 調 」. 「パ ノ ラ マの 強 調 」. 「 フ ォ ー カ ス ポ イ ン トの 挿 入 」. 「サ ン・マルコ広場:南東 を 望む 」 Pz3a,Pz3b,Pz3c. 「サ ン・マルコ広場:南を 望 む」 Pz7a,Pz7b,Pz7c. 「時 計 塔 に面 す る サン・マルコ広 場」 Pz10a,Pz10b. 「サ ン・マルコ広 場の 時 計 塔」 Pz1a,Pz1b. 図 7 視点移動による 4 つの景観効果例(対象絵画と視界平面図). 3- 4.

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参照

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