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日本電子News Vol.38 , 2006

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(1)

実用多核 NMR − CHF 測定−

朝倉 克夫

日本電子(株)分析機器本部 応用研究グループ

はじめに

核磁気共鳴の発見から現在にいたるまで、 様々な技術革新や応用測定が開発されてきた が、今なお溶液 NMR における観測の対象は、 主として1H と13C である。これは溶液 NMR による構造解析の対象となる有機化合物が、 ほとんどの場合1H と13C で構成されているか らに他ならない。生体分子などを対象とする 測定では、15N や31P を利用することも少なく ないが、1H や13C の利用頻度におよぶところ ではない。しかし当然のことながら、NMR の分析対象となるのは1H と13C のみで構成さ れる都合のよい化合物ばかりではなく、その 多くは多種多様の元素を含んでいる。それら の元素の NMR もまた、多くの情報を提供し てくれることは周知である。これまでにも多 くの研究者が実に様々な核種の多核 NMR を 測定し、その化学シフトやスピン結合定数な どの情報を活用しているが、さらに多くのデ ータが蓄積されれば、多核 NMR がよりいっ そう有用になることは疑いない。そのために も、装置の性能向上やデータ処理法、測定法 の充実といった、多核 NMR を利用しやすい 環境の構築が望まれる。 さて、一口に多核 NMR といっても、対象と なる核種に応じていくつかに分けられる。ま ず、比較的利用頻度の高いスピン量子数 1/2 の核種があげられる。特によく利用されるの は、先にあげた31P や15N、29Si などである。 一般にこれらの核種は線幅が細く、観測しや すいのであるが、その反面、緩和時間が長い ために測定に長時間を要する場合もある。次 にスピン量子数が 1/2 より大きい核種であり、 いわゆる四極子核と呼ばれる核種がある。こ れらの核種は四極子モーメントを持つため四 極子緩和を伴い、信号が広幅化するなどの難 点がある。最近ではこのうち固体状態の半整 数スピン核に関して、MQMAS (Multiple Quantum Magic Angle Spinning) による高分 解能化が達成され、応用範囲がさらに広がっ ている。また、この分類とは別に共鳴周波数 の違いによる分類も考えられる。一般的な NMR 装置においては、1H および19F を扱う チャンネルを、その共鳴周波数が高いことか ら HF (High Frequency) チャンネルとして扱 い、1H や19F を高周波核と呼ぶ。その他の、 共鳴周波数が31P 以下の核種を扱うチャンネ ルを LF (Low Frequency) チャンネルと呼ぶ。 ただし31P から15N までの核は、さらに低い共 鳴周波数の核種を低周波核と呼ぶ都合上か ら、あまり低周波核とは呼んでいない。15N よりも共鳴周波数の低い核に関しては、専用 プローブを必要とし、31P から15N までの核種 とは区別して、低周波核として取扱っている。

装置構成

CFH3 核プローブを用いることにより、13C、 19F、1H の 3 核種に対して同時に RF を出力し、 様々な測定を行うことを称して便宜的に CFH Fig. 1 CFH 測定用装置構成。 50C5FH/FG2 プローブ 追加 HF 用 パワーアンプ 追加 FSY Temp コネクタ FG コネクタ HF2 コネクタ HF1 コネクタ LF1 コネクタ Lock コネクタ HF2(19F) Tuning LF1(13C) Matching LF1(13C) Tuning HF2 チャンネル用 BEF HF1 チャンネル用 BEF HF1(1H) Tuning 測定と呼ぶ。CFH 測定を行うためには、やや 特殊な装置構成が必要である。ECA シリーズ において標準の 2 チャンネル仕様と異なる構 成は、フィールドグラジエント付きの CFH3 核測定用プローブ C5FH/FG2、さらに 3 つの 核種の共鳴周波数を生成するための +1 基の

FSY (Frequency SYnthesizer)、19F チャンネ

ルの RF を増幅するための +1 基の HF 用パワ

ーアンプ、19F 用プリアンプと1H、19F の

Isolation 用のバンド除去フィルタ(BEF:Band

(2)

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0.8 0.9 1.0 6 kHz kHz kHz 40␮s FT Fig. 2 40µs の矩形パルスによる 励起帯域 (simulation)。 Fig. 3 CF3CHFCF2OCH2CH3の19F{1H}-NMR スペクトル。 65 kHz ppm CF3 - -CHF--CF2 -Fig. 4 CF3CHFCF2OCH2CH3の13C{1H}-NMR スペクトル ppm。 CF3 - -CHF--CF2- CF3 --CF2 -ppm Fig. 5 CF3CHFCF2OCH2CH3の13C{1H,19F(−150ppm)}-NMR スペクトル ppm。 65 kHz ppm 14 kHz 14 kHz Fig. 6 CF3CHFCF2OCH2CH3の19F{1H}-NMR スペクトル ppm。 は共鳴周波数が近いため、それぞれの RF が 漏れて干渉するのを防ぐために必要となる (Fig. 1)。 19

F-NMR

19F は共鳴周波数が高く、天然存在比も 100% であることから、非常に感度のよい核種であ り、1H の 83%、13C の実に 4760 倍の感度を有 する。またスピン量子数が 1/2 であるため、 線幅も細く、信号の検出は極めて容易である。 しかしながら、19F-NMR にとって最大かつ重 大な障害は、その化学シフト範囲が広いこと にある。化学シフトが大きいことは、シグナ ルの分離を良くするため、スペクトルを解析 する上では有効である。ところが、信号があ まりに広い範囲に分散している場合、RF パ ルスによる励起が不十分となり、定量精度を 著 し く 低 下 さ せ る 。 こ れ は 現 代 の 高 磁 場 NMR において特に顕著で、例えば 600MHz の NMR では、1H がおおよそ 10ppm であるか ら、6kHz 程度の周波数範囲であるのに対し、 1000ppm 以上ある19F の化学シフト範囲は、 600kHz 以上におよぶ。矩形パルスによる励起 プロファイルは、そのパルスをフーリエ変換 した結果と等価になる。従って、パルス幅を t とした時、± 1/t の広がりを持ち、約 95%の 励 起 帯 域 は 1 / 4 t と な る 。 こ の こ と か ら 、 6kHz 程度の帯域を励起するのに必要な矩形 パルスは 40µs(Fig. 2)であるが、600kHz の 帯域を励起するのに必要な矩形パルスは 0.4µs となり、現在の NMR 分光計やプローブの性 能では19F の全化学シフト範囲を充分に励起 することは事実上不可能である。実サンプル においては、1000ppm もの化学シフト範囲に 信号が散らばっていることはほとんどない が、100 ∼ 200ppm 程度のシフト範囲におよ ぶことはよくある。たとえ 200ppm であって も、その励起には 2µs の矩形パルスが必要で あり、標準的なプローブにおける 5 ∼ 10µs の 90 °パルスでは、不十分であるといわざるを 得ない。また、スピン結合定数は2J FFで 150 ∼ 300Hz、3J FF や4JFF でも 0 ∼ 100Hz と構造 に応じて非常に多岐にわたる[1]。多結合を 介すれば結合定数が小さくなるばかりではな いため、解析の上では注意が必要となる。 Fig. 3 に CF3CHFCF2OCH2CH3

(1,1,2,3,3,3-hexafuluoropropyl ethyl ether)の19F{1H}-NMR

スペクルを示す。4 種類の19F 信号が現れてい

(3)

ppm ppm CF3- -CF2- -CHF--CF2- CF3 -            





Fig. 7 CF3CHFCF2OCH2CH3の13C{1H,19F(−80ppm)}-NMR スペクトル ppm。 Fig. 8 19F 2チャンネル照射シーケンス。 Fig. 9 19F 2チャンネル照射パルスプロ グラム設定画面。 Fig. 10 CF3CHFCF2OCH2CH3 の13C{1H,19F(−80ppm,−212ppm)}-NMR を逆ゲート付きデカッ プリング法により定量測定した結果。それぞれの信号は13C、1個分であり、理想的 に完全デカップリングされて線幅が等しくなれば、全ての信号強度が同一になる。 tri チャンネルが- 80ppm、 qua チャンネルが- 212ppm に設定されている。 ト範囲は 135ppm におよんでいる。この場合 には、500MHz の装置で測定しているので、 最高磁場の信号と最低磁場の信号のシフト差 は約 65kHz となっている。

含フッ素化合物の

1

H や

13

C-NMR

19

F デカップリング

含フッ素化合物の1H-NMR や13C-NMR を測定 する際問題となるのが、スピン量子数 1/2 で ある19F 核とのカップリングである。1H にお いては2J HFや3JHFが∼ 50Hz あり、13C では 1J CFが 200 ∼ 300Hz、2JCFが 20 ∼ 30Hz、3 ∼ 5 JCF も∼ 10Hz 程度ある[1]。特に13C-NMR を測 定する場合には、13C と19F とのカップリング により13C の信号が複雑に分裂するため、信 号強度が分散し、大幅に S/N を低下させる。 たとえば CF3- 基の場合、13C の信号は 4 重線 に分裂し、信号強度は最大でも 40%に低下す る。さらに隣接基が -CF2- であれば、それぞ れが 3 重線に分裂するため、信号強度は最大 で 20% に低下する。多くの含フッ素化合物で はさらに複雑に分裂するので、ただでさえ感 度の良くない13C-NMR が、事実上観測できな くなる。また、直接結合の1J CF が 200 ∼ 300Hz 程度もあるため、CF3- の信号で化学シ フトを中心に 600 ∼ 1000Hz の範囲に広がる。 これは 400MHz の場合 6 ∼ 10ppm に相当し、 化学シフトが近接する信号どうしが重なるた めに、解析を非常に困難にする。Fig. 4 に CF3CHFCF2OCH2CH3の13C{1H}-NMR スペク トルを示す。 CH3基および CH2基は1H とのカップリング がデカップルされたシングレットの信号とし て観測されているが、低磁場側の CF3基、 CF2基、CHF 基では、19F とのカップリング により、複雑に信号が分裂している。CF3基 では、直接結合する19F との1J CF が 281Hz、 隣接する CFH 基との2J CFが 25Hz、さらに隣 の CF2基との3JCFが 1.4Hz と 3.6Hz の dd で、 32 本に分裂している。CF2基では、直接結合 した環境の異なる2つの19F との1J CFが約 265Hz で、CHF 基との2J CFが 23Hz、さらに CF3基との3JCFが 2.17Hz で分裂している。 CHF 基では、1J CFが 200Hz で、両隣の炭素 に結合した19F との2J CFが概ね 35Hz なってい る。ただでさえ感度の悪い13C の信号が、CF 3 基の場合、最も強度のある信号ですら、シン グレットの 1/20 程度の信号強度になってしま う。このため含フッ素化合物の13C-NMR を測 定する際には、1H と同時に19F のデカップリ ングを行う必要がある。この場合にも前項で 示した化学シフトの広さが極めて問題にな る。 Fig. 5 は 19F も デ カ ッ プ リ ン グ し た CF3CHFCF2OCH2CH3の13C{1H,19F}-NMR スペ クトルであるが、Fig. 4 と差がなく、19F と 13C のカップリングにより、13C の信号が激し く分裂してしまっている。このとき19F のデ カップリングには、1H と同様の WALTZ-16

(Wideband, Alternating-phase, Low-power Techniquefor Zero-residual spliting) [2、3] を

用い、デカップリングパルス幅を 32µs (ハー ドパルスの 1/16 の出力)、オフセットを19F の 化学シフトの中心(− 150ppm, Fig. 6 の①)と している。 デカップリングにおいても、有効帯域は 90 度パルス幅を t とした時の 1/4t になる。高磁 場における13C のデカップリングなどでは、 コイルに入力できる電力に対して、有効帯域 が充分に確保できないため、帯域を拡げるた め の コ ン ポ ジ ッ ト パ ル ス デ カ ッ プ リ ン グ (CPD) が種々開発されている。CPD における デカップリングの有効帯域は、コンポジット パルス列によって異なるが、有効帯域の CW (ContinuasWave: 連続掃引)に対する拡張比 を Figure of merit( Ξ ) と呼びます。 デ カ ッ プ リ ン グ 帯 域 を 考 え て み る と 、 WALTZ-16 のΞ (Figure of merit) は 1.8 なの で、Ξ× 1/4t は 1 1.8 × = 14062[Hz] 4 ×(32 × 10− 6s で、有効帯域は 14kHz しかない。このサンプ ルでは低磁場の信号と高磁場の信号が 65kHz も離れているため、それぞれの信号までデカ ップリングが届かないのである。そこで、同 じ条件でデカップリングのオフセットを低磁 場の信号の付近(− 80ppm, Fig. 6 の②)に合 わせると、Fig. 7 のような結果になる。 この場合、低磁場の19F はデカップリングさ

(4)

MPF

7

MPF

8

MPF

9

MPF

10 kHz kHz kHz kHz 23[kHz] 27[kHz] 30[kHz] 34[kHz] 160 [kHz] kHz Fig. 11 MPFn シリーズのデカップリングプロファイル。 150[kHz] kHz Fig. 12 WURST20 (1ms, 200kHz) の反転プロファイル。 Fig. 13 WURST20 (1ms, 200kHz) デカップリングのデカップリングプロファイル。 れたものの、高磁場の19F (− 212ppm) とのカ ップリングにより、CHF 基、CF3基、CF2基 の13C 信号がそれぞれ 2 重線になるため、本 来 5 種ある13C の信号が、8 本になってしまっ て い る 。 こ の よ う に 、 含 フ ッ 素 化 合 物 の 13C{1H,19F}-NMR を観測するためには、超広帯 域のデカップリングが必要である。もちろん デカップリングのパルス幅を短くすれば、あ る程度は広帯域化が実現できるが、そのよう な高出力のデカップリングは、ラジオ波の吸 収によるサンプルの発熱を誘起するため、不 用意に使用するとサンプルに深刻なダメージ を与える恐れがある。

Multi Site Decoupling

マルチシーケンサ方式を採用する ECA シリ ーズでは、一つのチャンネルに対して複数の RF 源をアサインすることが可能である。そ こで、異なった照射オフセットの RF 源から 同時にデカップリング照射を行うことによ り、効率よく全領域のデカップリングを実現 することができる。また、それぞれの帯域を 限定できるために出力を抑えることができ、 発熱の問題を簡単に回避できる(Fig. 8、9)。 CF3CHFCF2OCH2CH3では、19F の信号が− 80ppm 付近と−210ppm 付近の 2 カ所にそれ ぞれ集まっているので、それらの領域をそれ ぞれ独立してデカップルすることにより、19F と の カ ッ プ リ ン グ が 完 全 に 消 去 さ れ た 13C{1H,19F} スペクトルを得ることができる (Fig. 10)。多くの含フッ素化合物に見られる ような、それぞれがある程度離れたいくつか の領域に信号が集中するサンプルに大変有効 である。ただし、それぞれのデカップリング が互いに干渉するような条件では、デカップ リングの効率をかなり悪化させるので、オフ セットが近いなどの理由で干渉が起きた場合 には、それぞれのコンポジットパルスデカッ プリング列を変更したり、デカップリング出 力を下げるなどの検討が必要になる。 この手法は19F の信号が広い化学シフト範囲 にまんべんなくあるようなケースには適用で きない。このような場合には、後述の超広帯 域デカップリングが有効になる。

Adiabatic Pulse Decoupling

弊社で開発された、周波数スイッチングによ る広帯域デカップリング法である MPFn シリ ーズ[4、5]は、13C のデカップリングなどに 広く用いられている。MPFnシリーズのΞ (Figure of merit)は、MPF7が 9.2、MPF8が 10.6、MPF9が 12.0、MPF10で 13.4 となる。デ カップリングパルス幅を 100µs とすると、有 効デカップリング帯域はそれぞれ 23kHz、 26.5kHz、30kHz、33.5kHz となる。実測によ るデカップリングプロファイルは Fig. 11 の ようになる。これらでもかなりの広帯域化を 実現できるが、それでも19F のデカップリン グには不足する。近年、超広帯域のデカップ リング法として、CHIRP や WURST(Wideband, Uniform Rate, and SmoothTruncation)[6-10] といった Adiabatic Inversion パルスによるデ

(5)

ppm 0 0 0 0 0 0 0 0 kHz 3.6 kHz カップリングが用いられている。これらの Adiabatic Inversion パルスは、パルスに位相 変調をかけることにより、極めて広い帯域の 磁化を反転させることができる。

CHIRP や WURST では、パルス位相 (Phase) を次式に従って変調させている。 1 φ(t)=φ0+ kt2 2 ここで、k は帯域(Hz)/パルス幅(s)で定義さ れる変調速度を表し、t はパルスを形成する 各時間を表す。 CHIRP や WURST では掃引する帯域を位相変 調のパラメータとして持っているので、目的 とする測定条件に合わせてパルスを作成し直 す必要がある。ECA シリーズでは、成形パル スを定義式から自動生成するため、引数とし て与えるだけで必要な Adiabatic Pulse が作成 できる。また、WURST では掃引する帯域の 両端の応答を鈍くすることにより、プロファ イルのエッジを滑らかにしている。このため に、出力強度にも変調をかけ、ソーセージ(ド イツ語で wurst)型のパルス波形としている。 出力強度(Amplitude) は次式による。 ω1(t)=ω1(max)

1 −sin(βt) n

このとき、−π/2 < β t < + π/2 であり、次 数 n は勾配の激しさを表している。上のグラ フは 20 次の変調で、次数が小さいほど両端が 鈍感になる。Fig. 12 にパルス幅 1ms、帯域 200kHz とした WURST20 パルスの磁化の反 転プロファイルを示す。1ms の矩形波による 励起帯域が 250Hz であるから、Adiabatic パ ルスがいかに広い帯域を反転できるかがわか る。このような超広帯域 Inversion パルスを 用いて、極めて広い帯域のデカップリングを 行うことができる。WURST によるデカップ リングでは、WURST パルスを Tycko と Pines の方法による 5 step の位相サイクルを、 さらに MLEV4[11-15]コンポジットパルスサ イクル RRRR (R=SP0 SP150 SP60 SP150 SP0) としており、一組のデカップリング列はパル ス 20 個分の長さになる。デカップリングは FID の取り込み時間中に照射する。取り込み 時間は掃引幅とデータポイント数に依存する ので、コンポジットパルスデカップリングの サイクルを有効に働かせるためには、あまり 長いパルス幅でのデカップリングは好ましく ない。また、Adiabatic パルスでは位相変調を 利用しているため、より広い帯域のパルスを 作成するためには非常に速い速度で RF 位相 を掃引しなければならず、ハードウェア的な 制限による限界がある。

Fig. 14 CF3CHFCF2OCH2CH3の13C{1H, 19F (−150ppm)}-NMR スペクトル。WALTZ16 で

は全くデカップリングされていなかった(Fig. 5)が、WURST では全ての19F-13C カ ップリングがデカップリングされている。 H 1 : n oi l li M r e p st r a p : X 0. 5 40. 3.0 2.0 10.

Y : parts per Million : 13C

130.0 120.0 110.0 100.0 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0 H 1 : n o il l i M r e p s t r a p : X 0. 5 4.0 3.0 20. 1.0

Y : parts per Million : 13C

130.0 120.0 110.0 100.0 90.0 80.0 70.0 60.0 50.0 40.0 30.0 20.0 10.0 0 Fig. 15 左: CF3CHFCF2OCH2CH3の1H-13C HMQC(19F デカップリング無し) 右:19F デカップリングを組み合わせた1H-13C HMQC。

Fig. 16 1ms の E-BURP1 パルスによる磁化の励起特性 (simulation)。 4 kHz

0 0 0 0 0 0 0 0

kHz Fig. 17 1ms の RE-BURP パルスによる磁化の反転特性 (simulation)。

Fig. 13 に デ カ ッ プ リ ン グ パ ル ス 幅 1ms ( WURST パ ル ス 一 個 分 の 長 さ )、 帯 域 200kHz とした時のでカップリングプロファイ ルを示す。概ね 150kHz がデカップリングさ れているので、この場合のΞは約 600 になる。 このように Adiabatic デカップリングは、非 常に広い帯域をデカップルできる。Fig. 14 は WURST デカップリングを CF3CHFCF2OCH2CH3 の13C{19F,1H}-NMR に適用した例である。若干 のデカップリングサイドバンド生じてるが、 全ての19F とのカップリングをほぼ消去する ことができている。 CF3CHFCF2OCH2CH3の様に19F の信号がい くつかのグループを作っている場合には、前 述のマルチサイトデカップリングの方が、サ ンプルの発熱防止や、測定の容易さの面で優 れているが、19F の信号が広範囲にまんべん なく存在している場合には、WURST デカッ プリングを使用する必要がある。

多次元測定

C5FH/FG2 プローブは、フィールドグラジエ 2D=IA  ! $ '   # &  " % ! !! !$ Amplitude    ! " # $ % & ' 

(6)

CPD

19

F

13

C

Gz

t

1

1/2J

1/2J

E-BURP1 RE-BURP F/2 F/2 acquire

X : parts per Million : 19F

Y : parts per Million : 13C

120.0

110.0

100.0

90.0

X : parts per Million : 19F

Y : parts per Million : 13C

120.0 110.0 100.0 90.0 Fig. 18 mrs-HMQC のパルスダイアグラム。 Fig. 19 CF3CHFCF2OCH2CH3の mrs-HMQC 2次元スペクトル。 Fig. 20 CF3CHFCF2OCH2CH3の HMQC 2次元スペクトル。 ントコイルが備わったことにより、その応用 範囲を広げた。特に多次元 NMR 測定が短時 間で速やかに測定できる。これにより、13C と1H の相関を測定する際に19F のデカップリ ングを組み合わせてスペクトルを解析しやす くすることができ(Fig. 15)、また、19F と1H の相関なども検出することができる。矩形パ ルスを使用したパルスシーケンスでは、通常 の19F のパルス幅による励起範囲から、検出 可能な19F の化学シフト範囲がある程度 (50 ∼ 100ppm 程度) 限定されるが、ECA シリー ズでは CFH 測定用のシーケンス群を標準で 搭載している。 19F が絡んだ 2 次元測定は、1H や13C のみの 2 次元測定とは大きく異なる難点がある。前述 の通り、とにかく問題になるのが、極めて広 い化学シフトである。2 次元の場合、処理可 能なデータサイズの制限から、データポイン ト数を少なめに測定するのが一般的である。 ところが、観測範囲の広い19F では、データ ポイントが少ないと取り込み時間が短かすぎ て信号を検出できなくなる。また、マルチパ ルス実験である 2 次元 NMR では、それぞれ のパルスが全ての磁化を期待通りに操作でき ないと、最終的な信号強度が著しく低下する ために、相関信号を検出できない。そこで、 それぞれの磁化を個々に励起するための測定 法や、前項で登場した超広帯域の反転パルス などが利用されたパルスシーケンスが提案さ れている。 ここでは、HMQC (Heteronuclear Multiple Quantum Coherence) 測定の観測核側パルス を選択励起パルスである BURP (Band-selec-tive, Uniform Response, Pure-phase)[16]パル

スのうち、励起用の E-BURP1 パルス(Fig. 16) とリフォーカス用の RE-BURP パルス(Fig. 17) で置き換えた、mrs-HMQC (multiple region selective HMQC :パルスダイヤグラム Fig. 18)[17]の測定結果を Fig. 19 に示す。19F の RF のオフセットを− 80ppm とした矩形パル スで測定した通常の HMQC では、− 210ppm の19F 信号に対する相関信号は検出されてな い(Fig. 20)が、mrs-HMQC では E-BURP1 や RE-BURP パルスを shifted laminar パルス[17] として用い、信号のある複数の領域を選択的 に励起およびリフォーカスするため、全ての 相関信号が観測されている。

参考文献

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Fig. 15 左: CF 3 CHFCF 2 OCH 2 CH 3 の 1 H- 13 C HMQC( 19 F デカップリング無し) 右: 19 F デカップリングを組み合わせた 1 H- 13 C HMQC。
Fig. 18 mrs-HMQC のパルスダイアグラム。 Fig. 19 CF 3 CHFCF 2 OCH 2 CH 3 の mrs-HMQC 2次元スペクトル。 Fig

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