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夏季関東地方における局地的強雨の経路特性

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把握していれば,事前に局地的強雨に備えられることが でき,減災に繋がると考えられる。 降水の経年変化についてはこれまで様々な研究が行わ れている。佐藤・高橋 (2000) は,8月の降水の経年変 化について調べた結果,1990年代に入ってから,東京で 50mm/hを超える降水頻度が増加し,その多くは前線の 接近または通過によって,大気が不安定になっている日 の午後に発生することを明らかにした。津口・加藤 (2014) は,集中豪雨事例を客観的に抽出し,その特 Ⅰ.はじめに 近年,関東地方では夏季の夕方に局地的強雨が多発 し,それによる河川の氾濫,土砂災害,交通への影響な どの災害が社会問題となっている。こうした災害を防ぐ ために,局地的強雨について理解し,その知見をもとに 予測を行う必要がある。すなわち,ある地域で発生する 局地的強雨がどの方向からくる可能性が高いのか,ま た,その地域は,局地的強雨が通りやすい地域なのかを

戸祭 早紀

・加藤 央之

**

In this study, we statistically examine the characteristics of local heavy rains for different transit paths over the Kanto region during summer. In our analysis, using surface weather data, we identified the transit paths of local heavy rainfall events, examined the characteristics of these events, and investigated the relationship between local heavy rainfall events and surface temperature patterns. Local heavy rainfall events can be “movement-type,” i.e., moving peak precipitation point in its location, or stationary-type, i.e., stationary peak precipitation point, and these two types occur frequently in the North Kanto area. Differences were observed between the movement and stationary types of rainfall events, and it was found that the movement-type events had a wide range of rainfall intensity and that their maximum precipitation occurred earlier than those of stationary-type events. In the movement-type, the maximum precipitation in the relatively eastern part of Kanto frequently tended to appear earlier than that in the western part of Kanto. In addition, the maximum precipitation of the type events frequently occurred in the middle of a period of strong rainfall. The stationary-type events were found primarily in the mountainous areas of the North Kanto region. We show that both ENE-path events i.e., path moving to ENE, and ESE-path events i.e., path moving to ESE, represent the majority of the movement-type. In addition, it was found that E-group paths (eastward transit paths) had smaller maximum precipitations and occurred later than S-group paths (southward transit paths) and W-group paths (westward transit paths). The maximum precipitation in the E-group paths tended to have relatively more frequent in the south than the other group paths. The peak precipitation in S-group paths occurred in higher altitude than those of other group paths. Therefore, the precipita-tion characteristics were found to be different for different transit paths. The surface temperature pattern, during local heavy rainfall has a tendency to have high temperatures near the eastern parts of the Saitama Prefecture during daytime; therefore, there may be a relationship between the local heavy rainfall and surface temperatures during daytime.

Keywords: Local heavy rain, Kanto, Statistical analysis

夏季関東地方における局地的強雨の経路特性

Characteristics of Local Heavy Rainfall for Different Transit Paths over the Kanto Region during Summer

Saki TOMATSURI

and Hisashi KATO

** (Accepted November 11, 2016)

Graduate School of Integrated Basic Sciences, Nihon University: 3-25-40,

Sakurajosui, Setagaya-ku, Tokyo, 156-8550, Japan

** Department of Earth & Environmental Sciences, College of Humanities

and Sciences, Nihon University: 3-25-40, Sakurajosui, Setagaya-ku, Tokyo, 156-8550, Japan

日本大学大学院総合基礎科学研究科:

〒156-8550 東京都世田谷区桜上水3-25-40

** 日本大学文理学部地球科学科:

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性・特徴を把握するために統計解析を行った。その結 果,集中豪雨は関東・東海・近畿・四国・九州地方の太 平洋側で多く,7月∼9月に全体の75%以上の事例が発 生したことを明らかにした。また,総観規模擾乱別に豪 雨の特徴を示した。Fujibe et al. (2009) は,長期間にお ける東京の短時間降水頻度を調べた結果,年々増加傾向 で,暖候期の正午∼夕方にかけて都心で短時間降水が多 発していることを示した。 関東地方における夏季降水については,藤部ほか (2003) が,夏季高温日の降水分布をクラスター分析に よって6 つに分類し,グループ毎に午後の降水分布と14 時の地上風分布の関係について明らかにした。中西,菅 谷 (2004) は,雲列の分布を 3 つにパターン分類し,グ ループ毎に雲列と局地気象および午後の降水の関係につ いて解明した。藤部ほか (2002),中西・原 (2003),牛 山ほか (2011) は,南関東で強い降水が起こる日は相模 湾,東京湾,鹿島灘からの海風によって収束域が形成さ れることが多いことを明らかにした。また,日下ほか (2010) は,GPS可降水量から局地豪雨の事例解析を行 い,山岳から移動してきた降水系に伴う発散風と海風の 局地的収束域が都心に位置していたことを確認すると同 時に,可降水量の増加域と降水域が一致すること,降水 の数時間前に増加することを示した。木村ほか (1997) は,大気下層における水蒸気輸送と,それによる可降水 量の日変化を調べた。その結果,夕方∼夜にかけて局地 循環により山岳域において水蒸気が最も増大しているこ とを示し,局地循環による水蒸気輸送と山岳地域の可降 水量の日変化との間に密接な関係があることを明らかに した。佐々木・木村 (2001) は,関東平野および周囲の 山岳域における可降水量の日変動を調べた結果,太平洋 側や日本海側からの谷風や海風との収束が関東北部や西 部の山岳域に見られることを明らかにした。また,関東 平野の沿岸部における可降水量の日変動の振幅は小さ かったことを明らかにした。齋藤・木村 (1998) は,夏 の対流性降水の日変化について解析を行い,山岳域で午 後に降水頻度が高まる時刻が平地よりも早いことを示し た。さらに,沿岸・海上で午前中に降水のピークを持 ち,陸上で午後に持つことをレーダーのデータで明らか にした。山下(2007)は,事例解析によって,積乱雲の 発達の要因を明らかにし,スーパーセルの特徴を解明し た。 強雨の予測についての研究も行われている。中北 (2010) は,ゲリラ豪雨を様々なレーダーを用いて観測 した。その結果,立体観測レーダーによって,積乱雲の 発生直後に降水粒子が形成し始める段階状況 (ゲリラ豪 雨の卵)を確認した。今後,ピンポイントでのより正確 な降雨量を観測するとともに,この卵を早期に探知する ことで豪雨の予測につながることを指摘した。 このように先行研究では,関東地方における夏季の局 地的強雨について,多くの事例解析や経年変化の検討な どがなされているが,経路に着目して気象場を統計的に 解析した例は少ない。本研究では,局地的強雨の経路に 着目して,夏季の関東地方で起こる局地的強雨の経路を 抽出し,経路毎に降水の特徴を統計的に調べることを目 的とする。 Ⅱ.解析手法 Ⅱ−1.使用データ 解析には,関東地方の気象官署13地点及び AMeDAS 99地点 (図 1) における,2009∼2014年の 7∼9月の10 分間毎の降水量データ,及び時別気温データを使用し た。また,降水観測地点網をより細かくするため,国土 交通省の時別河川降水量 (118地点) のデータも使用し た。対象期間については,地上気象観測地点の変更が複 数地点であったため,データの多く得られる2009年か らとした。また,低気圧や前線などによる降水を含めた 10mm/h以上を超える強い降水のあった日は,図 2 に示 すように平均的に6∼8月に多いが,また 6 年間のうち 4 年間は,6月より 9月に頻度が高かった。津口・加藤 (2014) の研究でも 7∼9月に集中豪雨事例数が多いと示 されているため,本研究では7∼9月を対象とした。 図1   解析に用いた気象官署およびAMeDASの降水量観測 地点(■),国土交通省の河川降水量観測地点(○)

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ある日と限定した。さらに,全降水観測地点の半分以下 の地点内で降水量が相対的に多いとしたのは,狭い範囲 で強雨となる「局地的」強雨を解析対象としたためであ る。 Ⅱ−3−2.局地的強雨の中心位置の抽出方法 局地的強雨日の中で,時刻別に降水量が最も多い地点 を局地的強雨の中心として考える。その抽出方法は,以 下のように行う。 ① 10分値の降水量を用いてその時刻から60分連続し た積算値 (以下,10分毎の 1 時間値) を各10分毎に 求め,この値が10mm/h以上の降水量をもつ地点 を全て抽出する。 ② ①で抽出した地点の降水量を周囲の地点の降水量と 比較し,最大値をもつ地点を局地的強雨の中心地点 として抽出する。この場合,空間的に離れていれば (接していなければ) 複数の局地的強雨の中心が存 在してもよい。 本研究では,強雨の中心の移動や降水の推移をわかりや すくするために,10分値そのものではなく,10分毎の 連続1時間値で10mm/h以上と設定した。また,「周囲 の地点」の距離を15km以内と設定し,同時刻に存在す る降水量のピーク地点が15km以上離れていた場合,複 数の中心が存在すると考える。 Ⅱ−3−3.局地的強雨の経路の抽出と定義 Ⅱ−3−2で抽出した強雨の中心地点を時間の連続性, 地点の距離,降水の推移を考慮して結び,移動経路を求 める。この概念図を図4 に示す。降水観測地点を 2 地点 以上かつ1 時間以上連続して移動した経路が存在したと き,これを「移動型」,1 時間以上地点間の移動のな かった経路を「停滞型」とする。なお,数時間1 地点で 停滞してから移動した場合や2 地点以上移動した後 1 地 点で数時間停滞した場合は,移動型として考える。 Ⅱ−2.解析手法 はじめに,気象官署及びAMeDASの10分間毎の降水 量データを用いて,局地的強雨の経路抽出を行い,局地 的強雨の降水特性について調べた。次に,時別気温デー タを用いて13∼23時の地上気温で時間毎に主成分分析 を行い,地上気温をパターン分類し,温度変化と局地的 強雨日との関係を調べた。 主成分分析とは,気象学では気象要素の分布パターン の抽出に用いられる手法である。すなわち,複雑な気象 の変動パターンはいくつかの単純なパターンの線形の重 ね合わせで近似でき,それらの単純なパターンをこの手 法で抽出することができる。また,それぞれのパターン において,個々のパターンがどのくらい卓越しているか を数値で示すことができる。 Ⅱ−3.局地的強雨日ならびに局地的強雨の経路の抽出 Ⅱ−3−1.局地的強雨日の定義 まず,解析対象の降水データから,以下の3 つの条件 を全て満たす日を局地的強雨日として抽出する。ただ し,前線などによる降水は除いた。ここでは,1 時間毎 の降水量データを用いた。 ① 全ての地点で午前 6 時から午後12時の間の降水は 合計3 時間未満である。 ② 14時から24時の間に10mm/h以上の降水がいずれ かの地点での時別降水量で3 時間以上続く。 ③ 降水が観測された地点が全観測地点の半分以下であ る。 気象庁の時間雨量の分類では,やや強い雨を10mm/h 以 上20mm/h未満の降水としているが,本研究では 10mm/h以上の降水を「強雨」と分類した。図 3 は,7 ∼9月の時刻別,強度別の強雨の発生日数を示す。この 図から,10mm/hを超える降水の発生する時間が14時 以降に多く見られるため,14時から24時の間に降水の 図2   2009−2014年における月別,降水強度別にみた強雨 日の平均出現日数 (縦軸に日数,横軸に月を示す) 図3   2009−2014年 7−9月の時刻別,降水強度別にみた平均 出現日数 (縦軸に日数,横軸に時刻を示す。)

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68事例あった。また,Ⅱ−3−4の定義から経路毎の頻度 は,図5 のとおりであり,ENE経路とESE経路が各17 例で最も多い。また,これらの移動型と停滞型の経路を 1 つにまとめたものを図 6 に,移動型を経路別にまとめ たものを図7 に示す。図 6 によれば,千葉県や神奈川県 で局地的強雨が少なく,北関東,特に山岳部で密集して いるのがわかる。図8 は,地域別に夏の強雨日数を示 す。地域毎の地点数に多少ばらつきはあるが,この図か ら10∼20mm/hの日数は各地域で差がほぼないことが わかる。20mm/h以上の日数を見ると,北関東で相対的 に多いことがわかる。津口・加藤 (2014) の研究でも全 国的に山岳の斜面地域で強雨の事例数が多いことが示さ れている。 Ⅱ−3−4.局地的強雨の経路方向の定義 移動型中の連続する経路の始点から終点を結んだ方向 を局地的強雨の経路方向とする。今回は,局地的強雨の 経路方向を16方位で考え,NNE方向に移動した経路を 「NNE経路」と呼ぶことにし,他の経路も同様に呼ぶ。 例えば,図4 の赤矢印はSE方向に移動しているため 「SE経路」となる。 Ⅲ.結果と考察 Ⅲ−1.局地的強雨の経路 Ⅱ−3−1で定義したように,低気圧や前線などの擾乱 による降水日を除いた局地的強雨日は6 年間 (552日) で73日あった。そのうち,移動型が140事例,停滞型が 図4  局地的強雨の経路抽出の概念図 図5  移動型の局地的強雨の経路毎の頻度分布 図6  局地的強雨の経路図 (↑:移動型,●:停滞型を示す) 図7   局地的強雨の移動型の経路図(↑:移動経路を示す)

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40∼50mm/hで も あ る 程 度 の 頻 度 が 見 ら れ,10∼ 50mm/hの範囲に約57%が存在する。すなわち,相対 的に停滞型より弱い,あるいは強い降水事例も含まれて いることがわかった。言い換えれば,移動型は,停滞型 より降水強度の幅が相対的に広いと考えられる。図11 は,横軸に最大降水量の出現時刻,縦軸に経度をとった 散布図である。図11から局地的強雨は,関東地方の東 側の地域で早い時刻に最大降水量を生じる傾向が見られ た。このことを確認するため,経度の地点数に対する割 合 (単位は%とする) を求め,発生時刻と経度の表にま とめた (表 2)。この表から,移動型では,東経 139.5∼ 以上のように,局地的強雨は降水域が移動した移動型 と1カ所に留まった停滞型があり,いずれも北関東で多 く発生することが明らかである。 Ⅲ−2.移動型と停滞型 局地的強雨の移動型と停滞型の降水の特徴を調べるた めに,本節では,様々な頻度分布や散布図により考察す る。以下では,「最大降水量」を1 経路中での最大降水 量とし,それを観測した地点の経度,緯度,標高を「経 度」,「緯度」,「標高」と示す。表1aは経度毎の観測地 点数を,表1bは緯度毎の観測地点数を,表1cは標高毎 の観測地点数を示す。1 経路中での10mm/h以上の降水 の継続時間を「継続時間」とし,継続時間と最大降水量 までの時間の比を「相対ピーク時間」とする。 まず,最大降水量の出現時刻に着目してみる。図9 は,最大降水量の出現時刻の頻度分布を示す。図9 から 移動型は,最大降水量の出現時刻が15 : 00∼21 : 00,停 滞型は,18 : 00∼21 : 00で頻度が高く,停滞型の方が相 対的にやや遅い時刻に最大降水量を生じていることがわ かる。図10は,最大降水量の雨量強度別の頻度分布を 示す。図10から最大降水量は,停滞型,移動型共に20 ∼40mm/hで頻度が高いが,停滞型では,約71%がこ の範囲に集中するのに対し,移動型は,10∼20mm/h, 図8  2009−2014年 7−9月における降水強度別    平均出現日数頻度図 表1  各地点数 (a.経度の地点数,b.緯度の地点数,c.標高の地点数) a) b) c) 経度 地点数 緯度 地点数 標高 地点数 138.5−139.0 36 35.0−35.5 20 0−250 150 139.0−139.5 66 35.5−36.0 58 250−500 30 139.5−140.0 64 36.0−36.5 79 500−750 17 140.0−140.5 52 36.5−37.0 70 750−1000 13 140.5−141.0 12 37.0−37.5 3 1000− 20 図9  局地的強雨の最大降水量の出現時刻の頻度分布図 図10 局地的強雨の最大降水量の頻度分布図 図11  局地的強雨の最大降水量の地点の経度とその出現時刻 の関係(横軸に時刻,縦軸に観測地の経度を示す)

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点が関東地方の東側にある事例は,相対的に最大降水量 の出現時刻が早い傾向があることがわかった。また,最 大降水量では,移動型の方が停滞型より降水強度の幅が 相対的に広いこと,最大降水量の出現時刻では,停滞型 の方が移動型より相対的にやや遅いことがわかった。停 滞型は,継続時間の中間に最大降水量を生じることが多 い傾向があった。 停滞型が継続時間のほぼ中間に最大降水量を生じるこ とが多い (図13) ということは,降水現象が移動せず, 他からのエネルギーが供給されないため,雲がさらなる 発達をせずに一雨という形になるのではないかと考え る。最大降水量の出現時刻では,移動型が停滞型と比べ て相対的に早いことがわかったが,移動型と停滞型の要 因を考えると,15 : 00∼18 : 00の気象場と18 : 00∼21 : 00 の気象場が異なるためにこのような結果になったのでは ないかと考える。局地的強雨は,関東地方の東側でなぜ 最大降水量の出現時刻が早い傾向があるのかについて 140.5度の15 : 00∼18 : 00と東経138.5∼140.0度の18 : 00 ∼21 : 00の割合が相対的に大きいことがわかる。停滞型 では,移動型のように明瞭な特徴は見られなかった。 次に,継続時間について着目してみる。図12は横軸 に継続時間,縦軸に緯度をとった散布図である。図12 から局地的強雨は,継続時間が長い事例が北緯36.5∼ 37.0度に多く見られたが,事例数が少ないため,検証が 必要であると考える。他の図からは,継続時間との関係 があまり見られなかった。 最後に相対ピーク時間と最大降水量の関係を調べた。 図13は,相対ピーク時間の頻度分布を示す。図 13から 局地的強雨,特に停滞型は,相対ピーク時間が0.33∼ 0.66の間で頻度が高い。この間の割合を調べたところ, 停滞型の約65%分布していることがわかった。つまり, 停滞型は,継続時間の中間に最大降水量を生じる事例が 多いことがわかった。 以上のことをまとめると,移動型は,最大降水量の地 表2  局地的強雨の最大降水量の観測地点の経度とその観測時刻の事例数割合 移動型 9 : 00−12 : 00 12 : 00−15 : 00 15 : 00−18 : 00 18 : 00−21 : 00 21 : 00−24 : 00 138.5−139.0 8.3 16.7 139.0−139.5 7.6 13.6 19.7 9.1 139.5−140.0 1.6 14.1 14.1 7.8 140.0−140.5 1.9 1.9 19.2 11.5 3.8 140.5−141.0 16.7 16.7 16.7 停滞型 9 : 00−12 : 00 12 : 00−15 : 00 15 : 00−18 : 00 18 : 00−21 : 00 21 : 00−24 : 00 138.5−139.0 2.8 8.3 27.8 8.3 139.0−139.5 3.0 6.1 6.1 139.5−140.0 1.6 7.8 17.2 4.7 140.0−140.5 5.8 1.9 1.9 1.9 140.5−141.0 8.3 8.3 8.3 図12 局地的強雨の継続時間と最大降水量の緯度の関係 (横軸に継続時間,縦軸に緯度を示す) 図13 局地的強雨の相対ピーク時間の頻度分布図

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度分布を示す。特にS系経路は,250∼500mの標高の相 対頻度が高かった。図18は,最大降水量の出現時刻の 頻度分布を示す。特にE系経路は,最大降水量の出現時 刻がS系経路に比べて遅く出現することが明らかになっ た。 図19は, 継 続 時 間 の 頻 度 分 布 を 示 す。E系 経 路 は,継続時間が60∼120分の事例が約50%占めていて, 相対的に多い特徴を持つことが明らかである。図20は, 移動距離の頻度分布を示す。図20からE系経路は,他 は,今の段階では考察する要素が少ないため,今後の課 題とする。 Ⅲ−3.移動型の経路 本節では,局地的強雨の移動型の16方位の経路を以 下の4種類に分けてⅢ -2と同様の方法で降水の特徴を調 べた。 E系…NE経路,ENE経路,E経路,ESE経路 S系…SE経路,SSE経路,S経路,SSW経路 W系…SW経路,WSW経路,W経路,WNW経路 N系…NW経路,NNW経路,N経路,NNE経路 まず,4 種の経路図を比較した時,特徴的だったの が,W系経路図を示す図14である。図14で,W系経路 は,茨城県北部から栃木県の南東部に進む経路が多いこ とがわかった。 次に,Ⅲ−2と同様の方法で移動型の経路毎に降水の 特徴を調べた。図15は,経路毎の最大降水量の頻度分 布 を 示 す。 図15からE系経路は,最大降水量が10∼ 40mm/hで相対的に弱い降水強度が多いが,S系経路 は,最大降水量が30∼40mm/hにピークを持つ。W系 経路とN系経路は事例数が少ないため,傾向が明瞭で はなかった。図16は,最大降水量の観測地点の緯度の 頻度分布を示す。図16からE系経路は,北緯36.0∼36.5 度で最も頻度が高いが,他の経路は北緯36.5∼37.0度で 高かった。図17は,最大降水量の観測地点の標高の頻 図14 W系経路図(↑:移動経路を示す) 図15 移動型の経路毎の最大降水量の頻度分布 図16 移動型の経路毎に見た最大降水量の出現する 観測地点の緯度の頻度分布 図17 移動型の経路毎の最大降水量の観測地点の標高の 頻度分布

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継続時間が相対的に短いことがわかった。 以上,経路毎の降水の特徴を表3 にまとめて示す。E 系経路は,最大降水量が弱い降水強度が多く,他の経路 よりやや南で生じ,その出現時刻が遅いことがわかっ た。また,継続時間では,60∼120分で移動型の中で最 の経路とは違い,移動距離が20∼40kmの相対頻度が高 いことがわかる。図21は,継続時間と最大降水量の関 係を示す。特にW系経路は,右肩あがりの分布が顕著 であり,継続時間が長いほど最大降水量が多いことが明 らかになった。また,N系経路は,他の経路と比べて, 図18 移動型の経路毎の最大降水量の発生時刻の頻度分布 図19 移動型の経路毎の継続時間の頻度分布 図20 移動型の経路毎の移動距離の頻度分布 図21 移動型の経路毎の継続時間と最大降水量の関係 (横軸に継続時間,縦軸に最大降水量を示す) 表3 移動型の経路毎の降水の特徴を示す

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対的にやや標高の高いところで頻度が多くなったのでは ないかと考える。 経路によって降水の特徴が異なることがわかった。 Ⅲ−4.地上気温のパターン分類 地上気温の温度変化や地上気温と局地的強雨の関係を 調べるために,2009∼2014年 7∼9月の13∼23時それぞ れの時間帯別に地上気温の主成分分析を行い,パターン 分類を行った。主成分分析では,気温の観測値をそのま ま用いると全域的な同時変動が大半を占めてしまうが, ここでは地域の相対的な差を調べたいため,各データに ついては全域の地域平均からの偏差に直して計算を行っ た。その結果,時刻によって寄与率は多少前後するもの の,第1 主成分が約25%,第 2 主成分が約15%,第 3 主 成分が約11%であり,第 1 主成分は沿岸−内陸変動, 第2 主成分は東西変動,第 3 主成分は都市−郊外変動で あった。図22,図23は15時,21時の主成分分析結果の 因子負荷量図であり,図24,図25は対応するZスコア も頻度が高く,移動距離では,20∼40kmで最も頻度が 高かった。S系経路は,最大降水量が30∼40mm/hに頻 度のピークを持ち,250∼500mでの相対頻度が高いこと がわかった。W系経路は,茨城県北部から栃木県南東 部に進む経路が多く,他の経路と違って継続時間が長い ほど最大降水量が多いことがわかった。N系経路は,他 の経路より継続時間が相対的に短かった。 E系経路の最大降水量が他の経路より相対的にやや南 で頻度が多いことは,E系経路は北緯 36.0∼36.5度付近 に経路が多いと考えられる。北緯36.0∼36.5度は,西側 に関東山地があり,東側に平野が広がっている緯度帯で ある (図 1)。E系経路は,西側の山岳地域で雲がわき, 東側のほとんどが平野部のため,地形との少ない摩擦で 東に流されるのではないかと考える。 S系経路は,北から南に向かっていく経路であり,関 東地方の北側には,山岳地域が広がっている。S系経路 は,関東地方の北側の山岳地域から南の平野部に向かっ て進むために,S系経路の最大降水量が他の経路より相

a)

b)

c)

d)

℃ 図22 15時の地上気温の主成分分析結果 a.第 1 主成分の因子負荷量図,b.第 2 主成分の因子負荷量図, c.第 3 主成分の因子負荷量図,d.6 年間平均気温。括弧内は寄与率を示す。

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a)

b)

c)

d)

a)

b)

図24 15時のZスコア散布図 (a.横軸:第 1 主成分 縦軸:第 2 主成分,b.横軸:第 1 主成分 縦軸:第 3 主成分,◆は局地的強雨日を示す) 図23 図22と同じ。ただし,21時の主成分分析結果

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に近い (図25)。このように,日中の局地的強雨日は日 中のZ1,Z2,Z3が共に負の値に偏っていることから, 日中の気温の分布が局地的強雨日と関係があると考えら れる。今後の課題として,日中の気温場から局地的強雨 の特徴を調べる必要があると考える。 Ⅳ.まとめと今後の課題 関東地方における2009∼2014年 7∼9月の気象庁の気 象官署とAMeDASの10分間毎の降水量データ及び国土 交通省の河川降水量データを用いて,局地的強雨の経路 を抽出し,局地的強雨の降水の特徴を調べた。 局地的強雨の降水特性を調べたところ,局地的強雨は 降水域が移動した「移動型」と1 カ所に留まった「停滞 型」があり,共に北関東で多く発生した。移動型を16 方位毎に経路を分けてみると,ENE方向に進むENE経 路とESE方向に進むESE経路が多かった。 まず,移動型と停滞型の降水の特徴の相違点として, 最大降水量では,移動型の方が停滞型より降水強度の幅 が相対的に広いこと,最大降水量の出現時刻では,停滞 型の方が移動型より相対的に遅いことがわかった。移動 型は,最大降水量の地点が相対的に東側の事例がその出 現時刻が早い傾向があった。停滞型は,継続時間の中間 に最大降水量を出現することが多い傾向があった。 移動型の経路毎の特徴として,E系経路は,最大降水 量が弱い降水強度が多く,他の経路よりやや南で生じ, その出現時刻が遅いことがわかった。また,継続時間で は,60∼120分で移動型の中で最も頻度が高く,移動距 の散布図である。Z1,Z2,Z3はそれぞれ第 1 主成分, 第2 主成分,第 3 主成分の卓越指数である。図24から, 局地的強雨日は,地上気温の主成分軸上で,15時には Z1,Z2,Z3の値が負に偏っている。これは,埼玉県東 部で気温が高いパターンに対応する。図26には,一例 としてZ1,Z2,Z3が負の値を示す日の実際の地上気温 分布を示す。しかし,局地的強雨日の日没以降,Z1, Z2,Z3共に 0 を中心に正負どちらにも分布し,値は 0

a)

b)

図25 図24に同じ。ただし,21時の結果。 図26 2010年 8月16日15時の地上気温分布

(12)

らなる解析が必要であることが分かった。また,高度場 や水蒸気量などの解析も合わせて必要であると考える。 また,局地的強雨の抽出結果をレーダーエコーのデータ と合わせて行うことも解析することにより,より正確な 解析が行えると考えられる。 謝辞 本研究を進めるにあたり,日本大学文理学部研究員の永野 良紀氏をはじめ多くの方からご指摘や助言を頂きました。研 究に関わった皆様に,心から感謝致します。 離では,20∼40kmで最も頻度が高かった。S系経路は, 最大降水量が30∼40mm/hに頻度のピークを持ち,250 ∼500mでの相対頻度が高いことがわかった。以上のこ とから経路毎に降水の特徴が異なることが分かった。 局地的強雨日は地上気温のパターン分類の結果と比較 した結果,埼玉県東部の地域で日中の気温が高い傾向が 示され,日中の地上気温が局地的強雨に関わると考えら れた。 今回の解析では,局地的強雨の降水特性や地上気温場 についての解析は行ったが,地上風系場などについてさ 藤部文昭,坂上公平,中鉢幸悦,山下浩史(2002):東京23 区における夏季高温日午後の短時間強雨に先立つ地上風 系の特徴.天気,49,395-405. 藤部文昭,瀬古 弘,小司禎教(2003):関東平野における 夏季高温日午後の降水分布と地上風系との関係.天気, 50,777-786.

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参照

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