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当研究所は「不動産に関する理論的および実証的研究の進歩発展を促進し、 その普及実践化と実務の改善合理化を図ること」を目的として、昭和34年に、 各般の専門家を集めて設立された財団法人です。 【不動産に関する理論的・実証的研究】【不動産の鑑定評価】及び【不動産に 関するコンサルティング】の3部門の調和のとれた有機体たることを目指し、 本所のほか全国52支所が一体となって活動しております。 編集発行人/財団法人 日本不動産研究所 調査企画部長 北川 雅章 ○C 2008 〒105-8485 東京都港区虎ノ門1-3-2 勧銀不二屋ビル TEL03-3503-5330 FAX03-3592-6393 2008年(平成20年)7月8日発行 不動産調査 No361 ISSN 1882-6431 みずほ証券(株)    チーフ不動産アナリスト  

石澤 卓志 氏

「不動産市場と不動産投資市場の動向」

不動産調査

不動産調査

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CONTENTS

「不動産市場と不動産投資市場の動向」

1. 最近の不動産市場

(1)不動産業業況指数

(2)地価の動向と人口動態との関係

2. オフィスビルの市場動向

(1)丸の内、大手町の開発動向

(2)港区の開発動向

(3)表参道・銀座エリアの開発動向

(4)東京以外の開発動向

3 . 分譲マンションの市場動向

4 . J-REITの市場動向

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みずほ証券(株) チーフ不動産アナリスト 

石澤 卓志氏

(いしざわ たかし) 1958年生まれ 慶応義塾大学法学部法律学科卒。 1981年4月日本長期信用銀行(現 新生銀行)に入 行、調査部、開発調査部などを経る。 長銀総合研究所・主任研究員を経て、1998年12月 より第一勧銀総合研究所・上席主任研究員、 2001年 4月よりみずほ証券 現在はみずほ証券チー フ不動産アナリスト。 国土庁、通産省、建設省、自治体、経団連などの委員 や専門委員、国連開発機構技術顧問、上海国際金融学 院客員教授などを歴任。 「東京問題の経済学」(95年2月、東京大学出版会、日 本不動産平成7年度学会著作賞受賞)など、著書・共 著多数。 (1)不動産業業況指数 (財)土地総合研究所が行っている「不動産業業況指 数」は、不動産の事業者に対して、現在の経営の環境と 3カ月後の先行きの状況がどうかという判断を問うたも のです。一種のDIになりますが、他のDIとは少し集計の 仕方が違っております。アンケートに答えられたすべて の方が今の業況がよいと答えられた場合にはプラス 100になり、すべての方が悪いと答えられた場合はマ イナス100になり、「よい」「悪い」が半々で0という集 計の方法をしています。 昨年の前半までは大変に事業環境は好調であったと考 えられる方が多かったようで、ほとんどの業種がおおむ ね2桁のプラスのポイントを獲得していました。昨年の 後半からだいぶ状況が変わってまいりまして、景況感が 急速に悪化をしてまいりました。現在は、今年1月の時 点のデータが最新になりますが、新築の分譲と比較的の 縁の深い住宅・宅地分譲業と中古物件と比較的縁の深い 住宅地の流通業がマイナスとなっており、状況が厳しい と感じている事業者が過半を占めています。 かなり極端に数字が動いておりますのが商業地の流通 業です。過去を見ますと、80ポイントにまで達してい た時期もありますが、足元ではどちらもマイナスになっ ています。いま不動産投資の環境も大きな変わり目にき ており、おそらくそのような変化がこの景況感の悪化に つながっているのではないかと感じられます。 ただ一つ、オフィスビルの賃貸業だけは現況の景況感 はプラスになっておりまして、1月の時点では10.7ポ イントという数字になっています。ところが、今後の経 営の先行きに関してはオフィスビルの方もマイナス1.8 ポイントになっております。今回この1月の調査で初め て先行きの数字が、オフィスビルについてはマイナスに なってしまったのですが、おそらく国内の景気の先行き 等に対して、かなりの不安を感じている方が多いのでは ないかと思います。私はオフィスビルの方は先行きの心 配に対しては杞憂に終わるのではないか、オフィスビル のマーケットは比較的良好な状態がこれから先も続くの はないか、と予想しております。 いま景気の回復の恩恵が企業に厚く家計に薄い、そう いうものがこの不動産の市況の方にも表れているのでは ないかと思います。ですから住宅の取得能力が上がらな い、だから分譲マンションが売れない、家賃の負担力も 上がらない、だから賃貸住宅も不振である。それから家 計の購買力が上がらない。それで郊外型のショッピング センターの売り上げが今ずいぶん落ちています。先だっ てイオンが大規模なリストラを含みます計画を出されま したけれども、このような中にも景気回復の恩恵が企業 と家計とで相当に違うということが反映されているので はないかと感じております。 それではこのような状況は今後どうなるのかというこ とですが、おそらく今後は不動産の用途と同時にエリア ごとの差も相当格差が広がってくるのではないか、私は 今後東京の一人勝ちの状態が相当強く表れるようになっ てくるのではないかと考えております。 (2)地価の動向と人口動態との関係 最近の地価の動向等をみますと、このエリアごとの格 差がずいぶん拡大してきたように思えます。今年の全国 平均の公示地価は2年連続でプラス、しかもその上昇の 幅も拡大をしたということで表面だけ見ますとずいぶん 地価の回復が著しいと見られますが、実態とすればやは り大都市圏の好調が全体の平均を引っ張り上げていると いう傾向が強いのではないかと思います。 そして最近の地価の動向は土地の収益性が比較的ダイ レクトに反映されているような気がしています。土地の 収益性にはいろいろな要素がありますけれども、最終的 にはその土地を利用する人の頭数、すなわち人口で決ま ってくるところが相当に多いのではないかというところ です。ですから、最近の地価の動向はおおむね人口動態 で説明できる状況になっていると思います。 グラフの横軸に人口の変動率を取り、縦軸に公示地価 の変動率のデータを取ると、プロットされた点につき、 右上がりの直線で傾向線を引くことができるという状況 ではないかと思います。人口が増加しているところは地 価も上昇しますけれども、人口が減少しているところは 地価の下落に歯止めがかからないという状況ではないか と感じています。 縦軸を地価の変動率の代わりに地域の経済を表す他の 指標に置き換えましても、だいたい同じような傾向線を 得ることができます。ですから、現在の地価のデータは 単なる不動産のデータにとどまらず、そのエリアの活力、 あるいはその都市の活力を示す総合的な指標になってき たということが指摘できるのではないかと思います。 それから人口でだいたいのところが説明できるという 状況ですから、いま地域振興ということが盛んに言われ ていますけれども、最終的には人口の呼び戻しができな

1. 最近の不動産市場

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ければなかなか地域振興は難しいのではないかというこ とも指摘できるのではないかと考えております。逆に言 いますと、この人口や都市機能が集中しております大都 市圏はこれから先も有利な状況が続くことになります。 過去4年間のオフィスビル供給は旧国鉄跡地の再開発 が23区全体のビル供給の24%ほどを占めておりまし た。旧国鉄跡地の開発といいますのは品川駅の東口の再 開発とそれから汐留です。それに、六本木ヒルズを加え まして過去4年間は港区の供給が23区全体の47%を占 めていました。 旧国鉄跡地の再開発は汐留の一部を残すだけになって いるためこれから先は4%程度になり、供給の中心は既 存ビルの建て替えに移ります。既存ビルの建て替えが最 も多いところが千代田区の丸の内、大手町のエリアとい うことになります。したがいまして、今後4年間に関し ましては千代田区が供給の42%を占めるようになって きます。 オフィスビルの供給が多いということは、マクロ経済 の常識で言うならば市況の悪化要因になります。ところ が不動産の場合、あるいはオフィスビルマーケットの場 合には必ずしもそうは言えない場合があります。潜在需 要が強いところでビル供給がタイムリーに行われます と、潜在需要が受け皿を得まして顕在化します。顕在化 した需要が新しい需要を生み出す基盤になり、供給が需 要を生むという効果が期待できます。 潜在需要が弱いところはむしろ逆です。需要が弱いと ころへ供給がありますと、その供給が重荷になりまして 市況の悪化要因になります。ただし東京の場合はオフィ スビルに対し潜在需要が非常に強い場所ですから、供給 が需要を生むという効果が期待できる。したがいまして 今後千代田区の供給が非常に多いことを考えますと、今 後は不動産マーケット、あるいは不動産の価格のほうで も千代田区の動向が23区全体をリードするといった状 況ではないかと考えられます。 (1)丸の内、大手町の開発動向 図表1は丸の内、大手町の再開発の動向を示した地図 です。地図に書ききれないぐらい再開発があります。 2008年はビル供給の少ない年で、東京23区内では 延床面積3万g以上の大型ビルの供給は4棟しかありま せん。この4棟のうちある程度市況に影響を及ぼすよう なビルの供給は2棟しかありません。このうちの1棟は つい先日オープンした赤坂TBSの再開発、赤坂Bizタワ ーで、テナントを募集した部分は満室ということになっ ております。 もう一つがこの11月に完成が予定されております東 京駅東口に森トラストが建築しておりますトラストタワ ー本館というビルですが、実はこちらは数週間前に出ま した経済紙等にも載っているのですが、現在のテナント の内定率が半分程度と聞いています。これまでは都心の オフィスビルといいますと、竣工のかなり以前にテナン トで満杯になるというのがほとんど常識化していたので すが、ただこのトラストタワー本館につきましては今ち ょっとテナント集めには苦戦しているという状況のよう です。 おそらくは二つの理由あるのだろうと思います。一つ は大家さんが強気の賃料設定をしているということで す。第2番目はサブプライム・ローンの問題です。まず 第1番目のほうですが、公表されております資料により ますとトラストタワー本館は月坪当たりだいたい6万 5000円でテナントを募集していると言われております けれども、実は小割りのテナントさん、例えば1フロア のうちの一部を借りるテナントさんなどは比較的高めの 賃料が設定されているようです。これまでは比較的高い 賃料でオフィスビルを借りる会社となりますと、外資系 の金融機関がその代表例であったのですが、足元はサブ プライム・ローンの影響がありますので、外資系の金融 機関はオフィスコストの増加に対して、今大変にナーバ スになっています。このような強気の賃料設定と、募集 のタイミングの問題もありまして、立地もビルのグレー ドも申し分のない物件ですけれども、若干今テナント集 めには苦戦をされているといった状況だろうと思いま す。ただし、今年11月の竣工まで時間がありますので、 おそらくこの竣工の段階では満室でスタートすることに なるのではないかと考えております。 先ほどビルの供給が多いところほど賃料の面では有利 だと申し上げましたが、丸の内、大手町のエリアは東京 23区の中では最も賃料水準の上昇が著しいところだと 思います。昨年の春に完成しました新丸ビルにつきまし ては、一部に坪あたり6万円を超えるテナントさんが入 っていると伝えられております。それから昨年の後半に 関しては一部7万円前後の成約もだいぶ増えたと聞いて おります。バブル経済の最盛期に日本で一番賃料が高か った大手町ファーストスクエア、お隣の大手町フィナン シャルセンターも坪あたり10万5000円だったと思い ます。それに対して最近はおおむね7万円前後というこ とで、バブル経済の最盛期ほどではありませんからまだ 賃料が上がるという主張をされる方もいらっしゃいま す。 需要は強いのになぜ賃料が上がらないのだというご指 摘をよくいただくわけですが、おそらくこれはバブル経 済期と今とではオフィスビル市場を取り巻く環境がかな り違っているということが影響するのではないかと思い ます。不動産に関するデータベースはこの間だいぶ充実 をしてきました。REIT等の運用の物件も増えてまいり ましたので、このREITが公表しているデータ等を見れ ば大まかな賃料水準を計算することができます。REIT は1物件ごとにビルの収支をすべて公表しておりますの で、このREITが公表しておりますデータを基にします と、大まかなオフィスビルの平均賃料と平均的な利回り は推定することができます。もちろんREITの決算デー タには必ずノイズが含まれておりますので、ここで算定 しているものはあくまでも概算あるいは試算で、どんぴ しゃりの数字が出てくるというわけではありませんが、 それでもある程度は市場の動向に沿った数字を推測、把 握することが可能なのではないかと考えられます。この ような形でテナントの側にも情報が豊富になってまいり ましたから、テナントが以前に比べると賃料交渉の武器 を豊富に持つような状態になった。だからテナントに賃 料交渉力がついていますから簡単にはオフィスビルの賃 料は上がらないであろうと考えています。 それ以外に丸の内、大手町の賃料はあまり上がらない だろうという理由がいくつかあります。丸の内、大手町 の場合ですと、多くのテナントさんは元々このエリアに いらっしゃいます会社さんが引越をする場合がほとんど を占めています。例えば新丸ビルは一部坪あたり6万円 を超えるテナントさんがいると申し上げましたけれど も、例えばJFEグループのような元から丸の内にいらっ しゃる会社もこのビルには入居しています。このような 場合ですと比較的、賃料水準は低く抑えられている場合 が多いようです。例えば来年には丸の内パークビルが完 成します。こちらは新日鐵の本社となりますけれども、 こちらにつきましても坪あたりの賃料はそれほど高くは ないという話を聞いております。 グラントウキョウビルが昨年完成しまして、平均賃料 は5万円台の中頃と聞いておりますけれども、実はテナ ントによりましては坪あたり4万円から6万円とかなり

2. オフィスビルの市場動向

図表1 (出所) 公表資料により、みずほ証券が作成

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件を基にしまして当方では六本木ヒルズの賃料はだいた い3万円台の前半だと考えております。ただし最近はこ のエリアの賃料水準はずいぶんと上がってまいりまし て、この六本木ヒルズ等で空きが出ますと新しく入られ たテナントさんの成約は5万円を超える例が多いそうで す。当方では未確認ですが一部に7万円近い成約もある と聞いておりまして、このような点を考えますと六本木 ヒルズあたりはテナントさんの入居の時期により、ずい ぶんと賃料の水準が違うということが言えそうです。 東京ミッドタウンが昨年の3月にオープンをしており ますが、オフィスビルの賃料が勢いよく上昇した一昨年 の後半から昨年の前半以前にテナントが内定したもので すから、東京ミッドタウンの平均賃料も3万円台にとど まっているわけです。こちらのほうも今後ビルの1階に 空きができた場合には、おそらくかなり高い成約になっ てくるのではないかと思います。REITに入っている物 件で賃料が比較的明らかになっておりますのはアークヒ ルズです。アークヒルズの一部が森ビルがスポンサーと なった森ヒルズリート投資法人に入っているのですが、 森ビルはこのアークヒルズのREITが持っております部 分を固定賃料の3万円で借り上げをしまして、一般テナ ントを募集していらっしゃいます。この一般テナントの 募集の賃料が4万5000円程度ではないかと言われてお ります。若干成約が下がってくる可能性があるのですが、 ただこのアークヒルズの場合ですと今年で築22年にな りますので、22年を経ましても賃料水準がほとんど下 がっていないというわけですから、やはりオフィスビル としてはこのアークヒルズは別格な物件ということが言 えるのではないかと思います。 この赤坂、六本木エリアに関しては現在あります大型 ビルの平均的な賃料は意外と安い。しかしながら新規の 成約は非常に高くなってきているということが言えるの ではないかと思います。 比較的不動産の市況がよろしい中で丸の内、大手町の 状況を申し上げましたけれども、東京23区内でやはり 同様に不動産の価格等が上がっておりますもう一つのグ ループとしまして、表参道や銀座エリアを挙げることが できます。 (3)表参道・銀座エリアの開発動向 図表2は表参道でREITが保有しております物件を表示 していますけれども、ご覧のとおり地図に書ききれない ぐらいたくさんの物件があるということになります。プ ライベートファンドの物件は記載をしておりません。お そらくプライベートファンドが持っております物件を加 えますと、この2.5倍ぐらいにまで物件数が膨らんでく るのではないかと考えられます。この表参道のエリアは 非常に不動産投資が盛んで、過熱している部分が不動産 の価格を押し上げている部分が相当に大きいのではない かと考えております。 丸の内、大手町とこの表参道エリアは土地利用の状況 はまるっきり違っております。大手町は大型のビルしか ありませんが、表参道は大型のビルはほとんどありませ ん。ですから土地の単価は高くても、ビル1棟あたりの 総額の価格はそれほど高くはない。それがこの表参道の 特色だろうと思います。投資の候補となります物件も非 常に多く、「気楽に不動産投資ができるところ」といっ た表現もできるのではないかと思います。そのような不 動産投資の環境が整っていることがこの表参道ではどう しても不動産の投資が過熱をし、それが不動産の価格を 持ち上げる理由の一つになっているのではないかと思い ます。 最近の表参道のエリアは個別の物件の投資利回りを判 断 い た し ま す と 、 ど う も 利 回 り ベ ー ス で 2 . 2 % か ら 2.3%ぐらいまで物件利回りが低下をしている例がある ようです。私どもの方ではやはり不動産投資の対象とな りますと、最低でも3.5%ぐらいの利回りは欲しいなと いうのが正直なところです。あくまでも私どもの見方で すが、おそらく中期的には3.5%の利回りが確保できる ような形でもって不動産の価格が変化してくるのではな いか。場合によっては地価が4割ほど低下する可能性も あるのではないかと見ています。ただし、いきなり不動 産の価格が落ちるわけではありません。おそらく2年か ら3年かけての調整ということになりますけれども、た だ少なくともいま不動産の投資が過熱をしている部分に ついては今後だいぶ違った局面に入っていくのではない かと考えています。利回りが2.2%から2.3%といいま すと、借金をして不動産を購入して採算が成り立つ場所 ではありません。最初の段階からある程度買い手が現れ るという転売を見込んでの投資ということになるかと思 いますが、足元はサブプライム・ローンの影響で不動産 の買い手がだいぶ少なくなってきております。それらの ことを考えますといま利回り水準として相当低いものは 不動産の買い手がいなくなったということがかなりの不 動産の価格では大きな転機になっていくものではないか と考えています。 銀座エリアの土地利用の状況も、丸の内、大手町とは 全く違っております。丸の内、大手町のほうは容積率の 差があります。そして丸の内エリアに元からいらっしゃ る会社の賃料は極端に高くはなっていないということで す。例えばブラックロックさんのような日本初進出の会 社がいきなり日本に出てまいりましてサピアタワーのよ うなビルにポンと入りますとかなり高い賃料になる場合 が多いのですけれども、このエリアにいらっしゃった既 存のテナントが引越をする場合には賃料は比較的安くな るといったことを考えて私どものほうでは丸の内、大手 町のエリアでは賃料水準はだいたい7万3000円ぐらい が上限かなと考えています。 来年はいくつか大型ビルの供給が予定されておりま す。一つは先ほど申し上げた新日鐵が移られる丸の内パ ークビル、もう一つは大手町の合同庁舎の1号館、2号 館の跡地の元国有地を民間に払い下げ、この国有地を種 地にして民間の老朽化したビルを次々と建て替えるとい うプロジェクトである連鎖型都市再開発の第一次開発が 完成します。第一次が完成したあかつきには日本経団連、 JA、それから日経新聞の本社があるところの第二次の 再開発がスタートすることになるだろうと思います。数 カ月前ですが日経さんの本社の真向かいにあります野村 総研のビルがこの第二次の再開発に加わることが公表さ れております。報道等によりますとこの野村総研のビル の開発権を経団連のビルの方に移転しまして、この野村 総研のビルがおそらく第三次以降の連鎖型都市再生の種 地になるということだろうと思います。そのお隣はおお むねNTTグループと郵便局が持っていらっしゃるビルが 中心です。 郵便局はいま晴れて民間企業になりましたので、これ から先は不動産の事業のほうに相当に力を入れるお考え のようです。公的なセクターが民間企業になりますと見 方を変えますと大変な資産持ちの不動産会社が1社でき るという見方もできます。代表例がJR東日本だろうと 思います。NTTと郵便局とがこの第二次につながります と、これはおそらく第三次の連鎖型都市再生になってく るのだろうと思います。 2011年から2012年にかけて丸の内、大手町のエリ アではかなり大型の再開発が集中する可能性がありま す。丸の内1‐4計画というのがありますが、こちらは 東京銀行、東洋信託、住友信託などの昔の本店の建て替 えです。3棟合わせて建て替えをしまして延床が10万 gくらいの再開発になるかと思います。それから東京中 央郵便局の建て替え、こちらは仮に建て替えをいたしま すと延床がざっくり計算して19万gぐらいになるかと 思います。それから先ほど申しました第二次の連鎖型の 都市再開発は現在のところ完成が2012年となっており ましてこれで20万gぐらい。この三つを合わせて少な くとも50万gの延床が供給されることになります。 それから少し時間軸が後ろにずれるかもしれません が、逓信総合博物館等の建て替えで延床30万gほど。 それから昔の富士銀行、今のみずほ銀行の大手町本部ビ ルがありますが、こちらも建て替えが2014年までに計 画をされており、これが完成しますと全体では百万g以 上の供給になろうかと思います。 このように2011年から2012年にかけて丸の内、大 手町のエリアではかなりのボリュームの再開発が予定さ れていることになりますが、特に市況に対して悪影響を 及ぼすことにはならないだろうと考えております。もと もと潜在需要が非常に旺盛な場所になりますから、むし ろこれは中期的にはビルの市況にとりましてはプラスの 影響、市場の活性化を促すような効果の方がより期待で きるのではないかと考えています。 (2)港区の開発動向 今後4年間の供給で、千代田区の次に多いのが港区の 供給になろうかと思います。例えば赤坂・六本木のエリ アでは、昨年東京ミッドタウンが完成をしましたけれど も、相変わらず再開発の計画は多いようです。例えば住 友不動産が一昨年でしょうか、六本木プリンスホテルを 取得しておりますけれども、その隣の日本IBMの本社も 合わせて以前取得をされております。これらを合わせて の再開発をご計画されているということもありまして、 この港区のエリアもかなりの再開発の計画が今後は増え てくる可能性があります。千代田・港の2区がやはりオ フィスビルのマーケットなどでは相変わらずリーダー役 を務めることになるかと思います。逆を言いますとそれ 以外の区はあまりビルの供給がありませんので、賃料が 極端に上がるという状態ではないであろうと考えており ます。六本木ヒルズあるいは東京ミッドタウンの平均賃 料は3万円台だと私どもは見ております。六本木ヒルズ は完成したのが2003年の4月下旬で、不動産業界では 「2003年問題」と呼んでいたオフィスビルの大量供給 がこのときにありビルの市況が非常に悪いときのオープ ンでした。六本木ヒルズは自らの供給で賃料の水準を下 げてしまったようなところがあります。 こちらはおおむね成約賃料は3万円台の後半が多かっ たようですが、10年の定期借家権で入居していらっし ゃいますテナントさんが非常に多く、それに1年間フリ ーレントがついているという例もありました。これらの

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引き上げ等による規制緩和の影響を受けて大型のビルが 建てやすくなってきています。一方の銀座エリアは、建 物の大きさ等を制限する地区計画が一昨年の秋変更にな りました。通称「銀座ルール」と呼んでいるようですが、 建物の高さの上限が56mまで、看板を加えて66mまで という制限になり超高層ビルの建築が禁止される事態に なっております。改正前には松坂屋は200mを超える 超高層ビルの建築を計画し、上部を場合によっては賃貸 スペースにして他に貸し出すことをお考えになっていら っしゃったようです。いま松坂屋さんも高さ56mの再 開発の案に計画を変更しています。また、三越の新館を 建設するという計画も「銀座ル ール」に沿って高さ56mに抑え た計画のようです。 いま百貨店業界は再編が非常 に盛んですが、松坂屋さんが加 わっておりますJフロントの部 分と、それから三越・伊勢丹連 合が相次いでこのような床面積 の増強を公表されましたので、 負けてはならじということで松 屋もいま増床の計画を立ててい るという話を聞いております。 ですから銀座は再開発がかなり 厳しく規制をされていますが、 このような百貨店の再編の絡み もありまして、商業施設関係の 投資がだいぶ増える傾向にあり ます。この点は今後不動産の価 格の面からしますとサポート要 因になっていくのではないかと 考えております。 今年おそらくかなり話題にな ると思われるのが、劇場ビルの 高層化に着手をしております歌 舞伎座です。歌舞伎座は収入の ほとんどはビルテナント料で、 実態は不動産屋という上場企業 ですが、資産価値を向上させる ために今年から建て替えに着手 し、ビルの高層化を考えていら っしゃるのですけれども、この 間歌舞伎座の演目はすべて新橋 演舞場の方に移るという予定だ そうです。この新橋演舞場が区分所有ビルになっており まして下のほうが新橋演舞場の劇場、それから上のほう が日産自動車の本社ビルの新館という建物になっており ます。この日産自動車の部分はREITの運用対象になっ ておりまして、森トラスト系の森トラスト総合リート投 資法人が保有しております。日産は2009年に横浜に本 社を移転される予定です。もともとは2010年の予定だ ったらしいのですが、横浜が2009年に開港150周年 記念を迎えるということで1年前倒しで移転の計画を立 てていらっしゃる。テナントの退出予告が1年前という ことになっているらしいので、おそらく2008年の後半 には日産の退出計画が公表されるだろう。その段階でテ ナントがこのビルからいなくなりますから、REIT側か らするとそれを機会に大規模リニューアルを行うか、あ るいは場合によっては外部への売却も含めて他の処分方 法を検討するかの検討をいま始めているという話を聞い ております。場合によってはそのようなREITの検討の 中に歌舞伎座の建て替え、これによりましてその演目が 新橋演舞場に移ってくるという、これが微妙に影響して くる可能性もあるかと思います。そういった点では今年 の後半はこの銀座のエリア、特に歌舞伎座の周辺が私ど もの立場からすると目が離せない場所ということになろ うかと思います。 新東京タワーの計画が具体化しております墨田区の業 平橋周辺も注目エリアです。東京の不動産マーケットと いいますとこれまではどうしも西高東低という傾向が非 常に強く、いわゆる城東部や城北部のほうは不動産の価 格も低く、また華やかな話題も乏しかったというのが実 態ですけれども、最近ではこの城東、城北の部分につき ましてはいろいろな面でイメージが変わるという状況に なってまいりました。特に城東の方はいろいろな再開発 の計画がめじろ押しのようです。もう2年前になってし まいますが錦糸町のオリナスという再開発が完成しまし たし、それから今は豊洲の再開発が大変に盛んです。こ ちらは不動産投資の対象のエリアとしてずいぶんと注目 をされておりまして、日本ビルファンドをはじめ大手の REIT等がかなり多額な投資をしているという状況です。 それにつながります東雲あたりもいま住宅の開発が盛ん で、ずいぶん価格が上がっているそうで、地区のイメー ジが大幅に向上していると言えそうです。 このように考えてみますと、これから先はおそらくこ れまでの東京の西高東低という状況もだいぶ変わってく るのではないか、場合によりましてはこれまでのベース の価格が低かった部分だけ、伸び率はこの城東の方がむ しろ高いのではないかと考えているわけです。 いずれにしましてもこのような東京都内でもいろいろな 価格の変動が起こってきているのですが、その大きな変 わり目の中では不動産投資のほうでもいろいろなビジネ スチャンスが広がってきていると考えております。 (4)東京以外の開発動向 名古屋は数年前からずいぶんと地価上昇が著しいので すが、ただし私どもの見方から言いますと名古屋はかな りビルの市況が荒れていると感じております。名古屋は 一昨年から大型ビルの供給が大変に盛んになってきてお ります。一昨年の秋にミッドランドスクエアがオープン をいたしましたが、こちらはトヨタさんが本社を移され て満室稼動、そして昨年の1月に名古屋ルーセントタワ ーがオープンしておりますが、こちらは確か8割弱の稼 動でスタートしたと記憶しております。5月の連休明け までには満室になるのではないかというお話も伺ってい たのですが、ただ現在でも空きがかなりあるというのが 実態のようです。名古屋はトヨタ効果があると言われて いるのですけれども、トヨタ頼みというところもあるみ たいで、トヨタさん以外ではそれほど大型のテナントは いないというのも実情です。過去数年間に地価がずいぶ ん上がったということもありまして、それがいろいろな 投資資金を呼び込んだということがあるようです。 昨年から名古屋の中心部では中型ビルの供給が大変に 多くなってきております。特に2008年に関しては延床 面積が5000gから8000gぐらいの中型ビルの開発が 増えてきているという状況です。残念ながらこれらの中 にはかなりテナント集めに苦戦している例もあると聞い ております。地価の上昇の面で注目されたことが逆に投 資資金を呼び込んでしまい、それが若干ビルのだぶつき につながってしまっているというところもあるのではな いかと思います。昨年の段階ではここまでビル供給が増 加するとは予想しておりませんで、今年の市況はかなり 堅調に推移するだろうと予想していたのですが、最近で はビル供給が増え、だいぶ市況が変わってきていると言 えるのではないかと思います。名古屋は2012年から 2013年にかけて、ささしまライブ24プロジェクトと 納屋橋ルネサンスタワーズ、というそれぞれ延床面積が 10万gを超える二つの大型開発が完成する予定です。 ささしまライブ24プロジェクトは愛知万博のときから アクセスが非常に悪いことが問題になったエリアですの で、テナント募集については相当な重荷になってくる可 能性があります。名古屋は平均空室率もだいたい6%ぐ らいで若干悪めの水準で推移しているという状況ですけ れども、この2012年から2013年にかけてビルが供給 過剰になってしまえばおそらくエリアごとに相当差が出 てきて、市況全体からするとやはり悪化の傾向に振れて くる可能性が高いかと予想しております。 今年の地方地価で地価の上昇が著しかったのは仙台に なりますが、仙台の市況も実はかなり難しい状況ではな いかと考えております。仙台は1998年に駅前にアエル ビルが、1999年に花京院スクエアビルがオープンし大 量供給がありました。ところがそれ以降昨年までまった くビル供給がない状態が続いていたのですが、2007年 図表2 (出所) 公表資料により、みずほ証券が作成

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いてはすべて満室だという説明を福岡REITさんのご説 ですが、いただきました。全体のビルのボリュームだけ では市況は判断できないところもあるようです。 札幌の昨年は中型ビルの供給が2棟でしたが、今年は 延床面積1万g以上の供給が2棟予定され、比較的大型 のビルの供給が多くなっています。市場で吸収できない ほどの供給量ではありませんが、昨年に比べますと供給 のボリュームは多くなりますので、昨年に比べれば多少 胃もたれ感は出てくるかと思います。 いずれにしてもエリアごと、あるいは年ごとによりビ ルの市況はまだら模様ですが、仙台、福岡を除きますと 2008年は極端に市況が悪化する例はないと考えており ます。大阪、名古屋につきましては先行きが大変不安で すけれども、おそらく今年いっぱいはそれほど大きな問 題はないだろうと考えています。その中で全体的に東京 の一人勝ち的な構図が明らかになってくるのではないか と予想しています。 住宅の市場はオフィスビル市場とは異なり、かなり不 安要因が出てまいりました。まずマンションの売れ行き が大変に悪くなってまいりました。マンションの初月契 約率は売れ行きを示すデータですが、初月契約率が 70%を超えますとマンション販売が好調だと言われて おりますが、昨年の8月から初月契約率が70%を下回 る状況になり、昨年の12月、今年の1月、2月と60% から50%ほどの水準で推移しています。 つい一昨日、3月の契約率が公表されて65%という 数字だったかと思います。ただこれは供給がかなり絞ら れた中での65%ということ、本来3月はマンションに 対し需要が盛り上がる時期ですから、この時期に70% を下回っていることは相当厳しいのではないかと考えら れます。 現在は多くの方々が通勤の利便性を重視されてマンシ ョンを選ばれていらっしゃいます。だから都心部のマン ションは非常に人気が高いのですが、都心部では開発用 地がなくなってまいりました。売れ筋のマンションの供 給が難しくなったので、それが市況低迷の理由の一つに なっているのだろうと思います。一方、郊外部では値段 が高くなりすぎて売れないというのが実態ではないかと 思います。このように都心部と郊外部では少し事情が違 っているだろうと考えております。 東京の都心部では2003年から2004年にかけてマン ションの供給が増えておりました。これは中央区の勝ど き、港区の芝浦など倉庫跡地の再開発が盛んだったので す。ところがこの倉庫跡地の再開発が2004年でだいた い一段落をしまして、それ以降はマンション供給の中心 が東京駅からおおむね15キロ圏に外延化をしてまいり ました。具体的に申し上げますと武蔵小杉、新浦安にな るかと思います。この武蔵小杉の供給が2005年から 2006年に大変に多かったのですが、2006年で一応大 型供給が一段落をしたようで、2007年以降は同じ川崎 市内の新川崎とそれから川崎の駅前がマンション供給の 激戦地になっています。 今年の公示地価を拝見いたしますとデータの取り方に よるのですが、川崎は横浜よりもむしろ上昇率が高いと いう解釈も成り立つようです。おそらくこれはこのよう なマンション供給が非常に多いことが地価に反映された のではないかと考えておりますが、このように都心部の ど真ん中の物件が少なくなってまいりましたので、それ が市況全体という点からすると停滞感に一部つながって いるところがあるのではないかと思います。ただし数少 ない都心の物件はさらにまた稀少性が上がりまして、価 格は暴騰ししかも大人気という状況です。 昨年供給された中で実質的に価格トップは坪単価が 500万円を超えている広尾ガーデンフォレストではな いかと思います。こちらは広尾の日赤救急センターの跡 地の再開発ですが、50年間の定期借地権付きの物件で す。定期借地権つきの物件といいますと期間が終了した 段階で同じ内容で契約を再度やり直すという場合もあり ますが、50年後に日赤さんが救急センターを拡張する ことをご公表なさっていらっしゃいますから、50年た ったならほぼ確実に返さなければいけない物件になるだ ろう思います。 このように稀少性の高い物件は大人気というところで すが、今年もかなり多くの高額マンションの供給が予定 されておりますが、ただ今年は足元で景気の先行きに対 し懸念が出てまいりまして、富裕層の方々の不動産投資 の意欲が減退しているという話を聞いておりますので、 昨年のような坪単価800万円はさすがに無理ではない かと思います。ただ坪単価400万円から600万円ぐら いであれば特に問題なくさばけるのではないかと思いま す。ですから昨年ほどの勢いはありませんけれども、今 年も都心部に開発用地を確保しているデベロッパーさん は相対的にかなり有利な状況が続くのではないかと考え ています。 都心部の物件はこのように価格がある程度高くても大 の中頃に久々の大型ビルが完成し、2008年以降はかな りの大量供給が予定されております。特に2008年はか なり大型の再開発が続けて完成する予定で、今年の7月 には仙台の駅前のパルコがメインテナントになる仙台マ ークワンと旧警察署の跡地を再開発した東二番丁スクエ アです。旧警察署の跡地を三菱と鹿島が落札した場所で すが、落札価格が当初の予定価格の3.2倍ほどの水準で あったことが話題になった場所です。こちらは報道によ りますと募集賃料は坪あたり2万2000円と公表されて おります。それ以外にも例えば東宝ビルの建て替え等の 大規模再開発が予定されているということで、いくつか のビルにつきましては賃料が坪あたり2万円を超えてい る状況です。仙台ではこれまではアエルが一番値段が高 く、確かこれが2万1500円ぐらいと聞いているのです けれども、それ以降久々の賃料2万円を超えたものがこ の2007年以降出てきたことになりますが、2010年に また大量供給が予定をされています。特に市況に大きな 変化を及ぼしそうなのが、森トラストが東北学院の中 学・高校の跡地で計画しています再開発で、延床面積が 12万5000Gを超えているという仙台ではおそらく過 去にあまり例のなかった大規模再開発ではないかと思い ます。すでに着工されていましてもうテナント募集も一 部始めていると聞いておりますが、これも一部報道では 伝わっていますが、多少場所が不利だということもあり 低めの賃料でテナント募集をされていると聞いておりま す。 これらのことが既存のビルにいくつかの影響を与える ようになっておりまして、例えばREITの物件もこの仙 台にはいくつかありますが、ジャパンエクセレントとい うREITが昨年仙台興和ビルを取得しております。これ は以前までみずほ銀行が入居しておりましたビルですけ れども、こちらは取得をした段階での賃料水準が坪あた り1万5000円∼1万6000円です。前のテナントの契 約賃料を引きずっていることになるのですが、ただしこ の賃料ではなかなかこれから先テナントを募集すること が難しいであろうとREIT側では考えまして、こちらは リニューアル工事を施した後、賃料の水準を思い切って 引き下げる方針です。今1万4000円程度を考えている というお話ですけれども、それでテナントを再募集され るという計画のようです。ただ周辺の市況はさらにまた 賃料が下がる傾向が強くなっておりまして、おそらく1 万4000円でも相当にテナント募集では苦戦するのでは ないかといった予想も立てられているようです。 したがいまして仙台では今年は公示地価がずいぶん上 がってしまい、おそらく一般的なイメージからしますと 不動産市場は活況を呈しているイメージがあるかと思い ますが、実態は必ずしも良いとは言えず、むしろこれか ら先はかなり不安要因が強くなってきているということ が指摘できるのではないかと思います。 大阪では2006年は中小ビルの供給はあったのですが 大型ビルの供給が0でした。これは大変に珍しい状況で 過去10年間では初めてですが、昨年、今年と3棟の供 給がありましたが足元ではまだビル不足という状態で、 2010年から2011年にかけて大量供給が予定されてお ります。 2011年以降ですが、いま空き地になっております大 阪駅の北ヤードの開発が本格化する予定で、数カ月前に 概要が公表されておりますが、かなりのボリュームのオ フィスビルが供給される見通しのようです。梅田に新し くできるビルはおそらくそれほどテナント集めに苦労す ることはないだろうと思いますが、例えば梅田のエリア の中で外縁部にあたるところ、具体的に申しますと堂島、 中ノ島、それから老朽ビルが比較的目立つ西本町のあた りはだいぶテナント集めに苦戦する、あるいは一部空室 がかなり増える物件も出てくるのではないかと予想して おります。 今年の公示地価でもやはり相変わらず福岡の地価上昇 が著しかったことになりますが、福岡も2008年はビル の大量供給が予定されております。福岡の2006年はビ ル供給が0で、昨年は7棟、今年は少なくとも12棟の供 給が予定されております。福岡は自社ビルを賃貸ビルに 転用されるビルオーナーさんが非常に多く、賃貸ビルの 新規供給以上に賃貸床が増えているという傾向が見られ ます。そういうこともありまして空室率はかなり高い水 準で推移しているところです。 福岡のオフィスビルは地元の不動産会社が供給してい るビルと、中央の資本あるいは外資系のファンド等が高 値で買ったビルの二つに分けられる、という説がありま す。この二つは賃料の条件がまるっきり違う。地元の不 動産会社が供給しているビルは賃料も比較的安く、内定 率も非常に高く、実はほとんどのビルがもう100%の 稼働率になる見込みであるようだ。それに対して外資系 のファンド等が少々無理をして買ったビルについては、 賃料の条件は引き下げることができないのでかなり賃料 の設定も高く、それがどうもテナントに敬遠されている ようでかなり空室が目立つ例もあるようだ。だから福岡 は全体として見れば今年はビルの供給が増えるけれど も、この中で地元の不動産会社が供給しているビルにつ

3. 分譲マンションの市場動向

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丈夫ですが、郊外となりますとそうはまいりません。昨 年はマンションの面積は据え置きで、ただし価格だけが 極端に上がってしまったという状況でした。ただ23区 内の物件はそれでも需要が強いから特に問題はないので すが、同じように23区以外もずいぶん価格が上がって しまっております。この価格が上がってしまったという ことがユーザー離れを招いているのだろうと思います。 最近では郊外のマンションには大幅な値引きに踏み切 られる事業者の方も出てきたようです。これは一般紙に も載りまして大変に話題になったお話ですが、この1月 に新日鉄都市開発と東京建物が東京の東村山の物件につ きまして、3LDKと4LDKを中心に22%から26%ほど の値下げを断行し、改定後の価格が坪あたり130万円 になりました。力のあるデベロッパー、体力のある会社 であるならば思い切って値段を下げるということも可能 ですが、マンションの販売会社さんは全体的に財務的に 体力のない会社が多いので、なかなか大幅な値下げに踏 み切ることができないという場合が多いようです。帝国 データバンク等のデータを拝見しますと、この1月から 3月にかけては中堅マンション会社、中堅ゼネコンなど でだいぶ倒産件数が増えているというふうに拝見してお ります。これはおそらくマンションの売れ行きだけでは なく、例えば着工戸数が減ったということも影響してい るのだろうとは思いますけれども、かなりの部分はマン ションの売れ行きの不振によって、値段を下げることが できずに在庫を抱えて倒産してしまったという例が多い のではないかと考えております。 私どもでは今年の9月以降はおそらくある程度体力の ある大手の会社でも在庫の圧縮に本腰を入れなければい けないことになるだろうと思いますから、船橋以遠、大 宮以遠、藤沢以遠、都下の東京圏の郊外部では今年の9 月以降、おそらく20%から30%と大幅な値引きをする マンションが増えてくると考えております。 このようなことが今年の後半からは住宅地の価格、地 価のほうにもある程度まで影響してくるのかなと見てお ります。もちろんすべての物件が値下げするわけではあ りませんし、値ごろ感がある中古物件は値段を維持する と思いますから地価のほうへの影響もだいぶ薄れてくる とは思うのですが、ただし今年の後半はこの不動産の価 格の面では都心部と郊外部で相当差が開いていくような 可能性が高いのではないかと考えています。 不動産の市況はいろいろと不安要因も出てきているの ですが、不動産の市況が悪化してきているというときは 逆に言いますと不動産投資のチャンスでもあります。例 えばREIT等の投資の環境を考えてみますと、これまで は東京の都心部で優良不動産の価格がずいぶん上がって おりましたので、なかなか値段が高くなりすぎて買えな いという状態が続いておりました。それがある程度価格 が落ち着いてまいりますと、おそらく不動産投資の分野 もある程度これから先チャンスが増えてくるのではない かと考えております。今年のこのような不動産の市況は 変わり目にあるということは不動産投資のほうではかな り大きなチャンスではないかと考えております。 図表3のREITの価格の値動きを示す東証REIT指数は、 足元ではだいたい1500ポイント前後で推移をしている 状況です。実は私どもはREITの「下値サポートライン」 をおおむね1800ポイントほどと置いており、現在の 1500ポイントという水準は私どもの解釈からすると大 幅に割安という状況です。価格はずいぶんと低下をして おりますけれどREITの運用成績は好調です。 このREITの価格をご覧いただきますと一昨年の11月 の下旬にだいたい1800ポイント位の水準だったのです が、このときから価格の急騰が始まり、昨年の5月の下 旬まで上昇が続きました。ピーク時にはおおむね2600 ポイントまで上がっています。ところが昨年の6月から 今度は急速な下落に転じて、8月の中旬まで価格の下落 が続きました。8月の中旬の段階でいったん収まったの ですが、今年に入りましてから価格の下落がまた続いて いる状況です。 なぜこれほどまでに大きな価格の下落の変動があった のかですけれども、昨年と今年では少し事情が違うので はないかと考えております。昨年1年間は外国人投資家 の動向に振り回されました。REITの月間売買の差し引 きの金額の動向を見ますと、外国人の方々は一昨年の9 月あたりからREITに関して買い姿勢を大変に強められ て、昨年の2月には過去最大の1400億円の買い越し額 になっております。ところが昨年の6月から売り越しに 転じて、この段階でREITの価格の低下が始まったこと になります。 なぜこのように外国人の方々が大きく投資の判断を変 えられたのかということですが、当方では三つほど理由 があるのではないかと考えております。まず一つ目は勘 違い、二つ目は金利の上昇、三つ目はサブプライム・ロ ーンの影響です。 まず一つ目の勘違い ・ ・ ・ という言葉は変な言い方ですが、 昨年の前半の段階では海外投資家の方々は日本の不動産 は欧米に比べて大幅に割安だという判断でした。欧米の 不動産の価格は過去十数年にわたり上昇傾向が続いてお りますが、東京はこれまではバブル崩壊の影響がありま したので、足元を除きますと不動産の価格はむしろ下が っておりました。足元でようやっとバブルのトンネルを 抜けました。外国人投資家の方々は日本の不動産の価格 が短期的に相当上がるだろう、またオフィスビルの賃料 もおそらく短期的に2倍、3倍になるだろうと考えられ ている方がかなり多かったようですが、そういうことは 日本ではないわけです。海外では不動産は完全な市況商 品である場所もあります。例えば香港などはオフィスビ ルの賃料や不動産の価格変動が非常に荒いと聞いており ます。一方日本の不動産の賃貸事業と言いますと必ずし も合理的でない部分があり、大家と店子の信頼関係によ り賃貸者契約が成り立っているようなところもありま す。ですから市況が良くなりましても大家さんは簡単に は賃料を引き上げようとはしませんし、テナントもどち らかといいますと賃料が安定していることにメリットを 感じていらっしゃる方が多いのです。 最近は少しこの慣行が崩れつつありまして、不動産フ ァンド等がビルオーナーになる例がずいぶんと出てまい りまして、その中では一部不動産ファンド等がテナント に対して大幅な賃料の引き上げを求めるといった例も出 てきております。このような日本の旧来の不動産賃貸借 の慣行も不動産投資が盛んになり、不動産ファンド等が ビルオーナーになるようなことが増えるにしたがって若 干変化が見られていますけれども、全体的には不動産の 市況はそんなに簡単には上がらないというのが実態では ないかと思います。このあたりが勘違いといいますか、 外国人投資家は昨年の春の段階でそのようなご認識にな りまして、それが日本の不動産に対しては期待はずれと いう感覚につながり、REIT等の投資から手を引かれて しまった方が多いということです。 二つ目が金利の上昇です。REITは発行済みの投資口 数の約50%を国内の金融機関が保有し、2年ほど前で あるならば外国人の保有比率はだいたい7%ぐらいであ ったのですが、ここ2年間ぐらいで一挙に30%ほど保 有するようになりました。半分ほどは国内の金融機関が

4. J-REITの市場動向

図表3

(8)

持っておりますから、その国内の金融機関の投資判断が REITの価格につきましてはかなり大きな決定要因にな っています。多くの国内の金融機関はREITの配当利回 りの水準に注目して投資をしております。REITの平均 配当利回りと10年国債の利回りの金利差スプレッドは 2004年の中頃から昨年の秋口までだいたい2%ポイン トほど、200ベーシスポイントほどで比較的安定した 水準でした。 ところが一昨年の11月から先ほどのような外国人の 投資が盛んになりREITの価格が暴騰して、スプレッド が低下してまいりました。昨年の5月上旬の段階でスプ レッドが100ベーシスを下回るような状態になり、以 降もしばらくの間はREITの価格の上昇が続きまして、 昨年の5月下旬の段階でスプレッドがおよそ80ベーシ スまで縮んでいるということがあります。昨年の5月、 6月は長期金利がずいぶん上がっていた時期で、10年 国債の利回りが2%を伺うという状況でした。REITの利 回りが低下する中で長期金利が上昇するということで REITの割高感が一挙に顕在化しました。それがREITの 価格の大幅な低下につながったというわけです。 昨年の7月の下旬以降はサブプライム・ローンの問題 の影響が出てまいりました。先ほど申し上げましたよう に、外国人の投資家の投資比率がフローのベースで言う ならば急激に上がってきておりますし、それから月間の 売買のうち約6割は外国人の投資家の資金によって占め られています。外国人投資家の方々の価格支配力は非常 に強いということになるのですが、サブプライム・ロー ンの問題が影響しまして、この投資資金がかなり引いて しまいましたので、それがREITの価格の下落に拍車を かけるという状態になりました。私どもはサブプライ ム・ローンの問題はREITの価格下落の主因だとは思っ ておりませんが、価格の下落をさらに促進したという影 響では無視できなかったと考えております。 今年1月はまた別な要因が加わってまいりました。国 内の金融機関がREITの約50%を保有していますが、こ の1月から3月は資金を動かしづらい決算期にあたりま す。例年であればこのときに含み益が出た株式を売却し て含み益を確定して、決算の数字の準備をすることにな りますが、今年は少し事情が違ってまいりました。昨年 の6月から8月にかけてREITの価格が大暴落をしたの で、このままでは減損処理の対象になってしまう場合も ありえます。そこでいくつかの金融機関さんは減損処理 の対象になる前にこれを売却して、出血を最小限に食い 止めるといった方針を立てていらっしゃいます。これは 金融機関によりましてだいぶ差があるわけですが極端な 場合には20%から30%価格が落ちた段階で有無を言わ さずに売却をしてしまうという例も中にはあると聞いて おります。REITの価格が昨年暴落をしたことがこの1月 から3月にかけて国内の金融機関がREITの買い増しをす ることができない、むしろ売却をしなければいけないと いう状況に陥った理由になるかと思います。 なにぶんにも国内の市場では国内の投資家の資金量が 全体の7割ぐらいを占めておりますから、その国内の金 融機関などが支配力、イニシアティブを取ることができ ないというのは確かにおかしいのですが、こういった点 ではこの減損に対する過度な対応というものも今後見直 しが必要ではないかという指摘も最近では一部出始めて いるところです。 REITの価格がかなり下がったことによりまして、配 当利回りがずいぶん上がり3月末で平均配当利回りが 5%を超えています。その一方で長期金利が下がってお りますから、長期金利のスプレッドは3月末の状態では 383ベーシスに達しています。利回り商品として見れ ば非常に魅力的な数字になっております。 私どもはこの2月から3月にかけて新年度に向けて投 資の計画を作りたいからということで国内の投資家のと ころにお邪魔をする機会が非常に多かったのですが、今 REITの配当利回りが大変魅力的なので4月の新年度にな ったら積極的に買い増しをしたいというお考えを持って いらっしゃるところが多かったのです。4月以降のJ‐ REITマーケットは相当大きな環境の変化が訪れるので はないかと予想しています。 実際のところ3月31日からREITの価格が回復の傾向 が出てきております。ただ足元ではまだ出来高がそれほ ど膨らんでおりませんので、おそらく国内の金融機関の REIT投資はまだ本格的には再開していないのだろうと 思います。現在の段階では国内の金融機関がおそらく4 月以降は買ってくるだろうとそれを期待している外資系 のファンド等とか、配当利回りがずいぶん高い水準まで 上がりましたので、それに魅力を感じている個人の投資 家とかそういう方々の資金が中心になってきているので はないかと思います。5月の連休明けの頃にはおそらく 国内の金融機関の投資も再開してくる可能性が高いと思 いますし、そこでREITの価格の底値が確認できるよう になれば、これまでは不動産セクターに対して一様にネ ガティブな判断をしておりました外資の方々も、おそら く買いに回れるのではないかと思います。そういった点 では今年はREITの価格はかなり回復傾向が強くなって いくのではないかと考えております。 また今年は投資家層がだいぶ増えてくるのではないか と 考 え て お り ま す 。 4 月 か ら 債 券 の イ ン デ ッ ク ス で NOMURA-BPIという指数に投資法人債が加わることに なっております。これによって年金等のREIT投資がだ いぶ増えてくるのではないかと考えております。昨年不 動産証券化協会が機関投資家さんにアンケートした結果 ですと、今REITに投資をしているところは年金の全体 の2割ほどであるという結果が出ています。なぜ投資し ないのかということですが、REITの収益構造がわから ないというお答えが多いようです。多くの年金の方々は マネジャーさん1人で差配していらっしゃいまして、伝 統的な株式以外にはなかなか商品の内容を検討する余裕 がない。それがREITの理解不足、あるいはREITに対し てなかなか投資がしづらいという原因になっているかと 思います。ところが債券投資を通じてREITの収益構造 に接する機会が増えてまいりますと、REITの収益構造 がいかにシンプルであるかということ、透明度が非常に 高いということ、リスクも限定的であるということが知 られてくれば、もしかしたら今度はエクイティ商品とし てのREITに対する関心を喚起するという形になるので はないかと考えております。 昨年農協法の施行令が改正になり、県信連等のREIT 投資が解禁されております。まだ県信連がシステム開発 に手間取っているという話で投資は本格化していないの ですが、ただここで重要なのは多くの国内の機関投資家 がそれぞれのセクターの投資を考える際に5年間の運用 の実績があるかどうかというのが一つの判断の目安にな るということです。REITは2001年に取引が始まり今 年で7年目ですが、運用の実績はようやっと5年間トラ ックレコードができたところです。この5年間のトラッ クレコードができたことにより、国内の機関投資家が場 合によっては規約を改正してREIT等の投資を本格化す るきっかけになるのではないかと考えています。 一方でREITの供給はかなり細ってきています。昨年 の暮れの段階で資産運用会社の認可を金融庁から取得を しながらまだREITを上場していないという例が全部で 12件ありました。言うなればここがREITの新規上場の 予備軍になるのですが、昨年の後半から上場の延期とか 上場を断念するところが相次いでおります。12件のう ち2件が上場を延期、4件が上場取りやめ、1件が既存 のREITと合体してしまったということで、いま新規上 場がほとんどない状態になっております。おそらく今年 はREITがだいぶ品薄になってくるのではないか、こう いった点もREITの価格のサポート要因になってくるの ではないかと考えております。 このように見てまいりますと不動産市場、REIT等の 不動産投資の環境、足元ではずいぶんと悪いことが目に つくわけですが、実は決して悲観するばかりではないだ ろうと考えております。おそらく東京都心部への一極集 中が今後急速に進み、東京以外ではあまりよい話題が少 なくなってくるかと思いますけれども、逆にそれはまた 不動産投資の方で言うならばいろいろなビジネスチャン スが生まれているということですから、この面ではまた いろいろと評価するべきところも出てくるのではないか と考えています。なにかしらお役に立てれば幸いに思う 次第です。 ※ この講演は、情報の提供のみを目的としたもので、 取引の勧誘を目的としたものではありません。投資の決 定は ご自身の判断と責任でなされますようお願い申し 上げます。内容等は講演資料作成時点のものであり、正 確性、完全性を保証するものではなく、今後予告なく変 更されることがあります。 (本稿は、平成20年4月18日に開催された当研究所の所内研修での講義内容をもとにとりまとめたものです。)

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