Apparent diffusion coefficient of pituitary macroadenoma evaluated with line‑scan
diffusion‑weighted imaging
著者 鈴木 千織
発行年 2010‑03‑25
URL http://hdl.handle.net/10076/11402
学 位 論 文 の 要 旨
所 属 三重大学大学院医学系研究科
生命医科学専攻 病態制御医学講座 氏 名 鈴木 千織
主論文の題名
Apparent diffusion coefficient of pituitary macroadenoma evaluated with line-scan diffusion-weighted imaging
主論文の要旨
【目的】
下垂体腺腫の19例について、ラインスキャン法拡散強調像(LSDWI)におけるみかけの拡散係数
(ADC)を用いて、下垂体腺腫の硬さとの関連を検討した。
【序文】
多くの下垂体腺腫は経蝶形骨洞にて十分に摘出できるが、特に硬い下垂体腺腫は開頭手術の適 応になりうる。下垂体腺腫の硬さを術前に知ることによって、脳神経外科医が術前に手術計画を たてるのに役立つかもしれない。通常臨床で使用されるエコープラナー法拡散強調像 (EPDWI)は、
傍鞍部において磁化率アーチファクトを受けやすく、正確な評価が困難なことが多い。今回我々 は、磁化率アーチファクトに強く良好な画像が得られるLSDWIを用いて下垂体腺腫の硬さとADCと の検討を行った。
【対象】
2002年7月から2006年11月までに、手術により組織学的診断(確定診断)が得られた下垂体腺腫 19例を対象とした。MRの前に未治療であることを条件とした。下垂体腺腫19例の内訳は、男性14 人・女性5人、平均年齢55歳であり、ホルモン非産生性腺腫15例・ホルモン産生性腺腫4例であっ た。
【方法】
下垂体腺腫の患者に対してmaximum b factor 1000 sec/mm2のLSDWIを含むMRIを施行した。
画像データ分析;下垂体腺腫の硬さについては関知していない1人の放射線科医が、全例腫瘍に 関心領域(ROI)を設定してADC値を測定しその平均ADC値を求めた。腫瘍のROIを設定する際、腫瘍 の充実成分を含めるようにし、明らかな出血や嚢胞性成分は排除した。
手術;下垂体腺腫の全例が1人の脳神経外科医により経蝶形洞手術により摘出され、腫瘍の硬さ は手術時にsoft (軟らかい、吸引のみで容易に摘出が可能)・intermediate (中間、容易に吸引で きないが摘出可能)・hard (硬い、吸引では除去できない)の3つのグループに分類された。
下垂体腺腫のADC値と硬さとを比較した。
【結果】
下垂体腺腫のADC値と硬さ;手術によって下垂体腺腫の硬さはsoftが13人、intermediateが6人 と判定された。Hardの症例はなかった。今回の検討では、soft群はintermediate群より僅かにAD C値が高かったものの統計学的有意差はなく、下垂体腺腫の硬さとADC値との関連はみられなかっ た。さらにホルモン産生性とホルモン非産生性腺腫と間のADC値にも有意差がなかった。
(注)2,000字以内にまとめて記入すること。
【考察】
Pierallini Aらは2006年のRadiologyに、EPDWIを用いたADC値による下垂体腺腫の硬さの評価を 報告した。彼らは下垂体腺腫が硬いほどADC値が高くなると結論づけた。今回の研究結果はPiera lliniらの研究結果と一致しなかった。研究結果が不一致の理由としては、ラインスキャン法とエ コープラナー法の異なるDWIテクニックとで傍鞍部においては磁化率アーチファクトにより評価 が変わると考えられること、下垂体腺腫のADCが腫瘍の細胞成分に影響されるのみならず他の組織 学的因子により影響されるかもしれないことが推測されるが、これを明白にするデータはない。
今回の研究結果の制限としては、研究対象となる下垂体腺腫の症例数が少ないこと、下垂体腺 腫の硬さhardの症例がないことがあげられ、今後より多くの症例で検討する必要がある。
【結論】
今回のLSDWIを用いた検討では、下垂体腺腫の硬さとADCとの関連はみられなかった。ただし、
今回は小規模研究であり、soft群とintermediate群との比較に限定される。下垂体腺腫の術前評 価にADC測定が有用であるかを評価するには、さらに多くの症例で検討する必要がある。