芝浦工業大学工学部建築工学科 2014年度卒業論文・卒業設計梗概
研究指導:赤堀忍 教授 青島啓太 特任助教
Ryota KOMATSUDAイキ絶えぬ島へ
−地方創生への建築的思考−
Keywords
地方創生 島 まちづくり
AK11047小松田 遼太
健康増進 地方移住 空き家再生
1.はじめに
現在、日本では政策軸の一つとして地方創生が挙げら れ様々な解決法が求められている。創生への道はその土 地のアイデンティティや暮らし方が受け継がれるように そこでの人々の生活を維持する事ではないだろうか。つ まり、「住み続けられる地方」を考える事が創生への一 歩なのだ。本研究では、「住み続けられる地方」として 地方創生に対する日本全国の先行的なモデルを提案する。
2.研究背景 2.1伯方島
本研究の対象を伯方島とする。伯方島は瀬戸内海に浮 かぶ島々の一つであり、2005年に今治市他と合併した。
元々の産業は「伯方の塩」で有名な塩業と海運・造船業 である。
2006年にしまなみ海道(西瀬戸自動車道)が開 通し広島県尾道市と愛媛県今治市が繋がった。瀬戸内海 とそこに浮かぶ島々が作り出す絶景を眺められる事から サイクリングロードとして世界的に知名度が上がってい る。また、島という特別な自然環境の中で島民は生活を している。しかし、島の人口は他の地方と同じように 年々減少し少子高齢化も進んでいる。創生の手がかりと なり得る要素があるにも関わらず衰退していく現状への 対策を考えるべきではないだろうか。
図1 伯方島と周辺要素の地理的関係
2.2 若者の人口流出島の衰退の大きな原因は、若者の流出によるものであ る。全国の衰退している地方にも共通していることだが、
社会を作っていく若い力が足りていない事は大きな問題 である。伯方島の人口を分析すると20〜24歳の間で島外 へ流出している。これは年齢層から学業や就職のために 流出していると考えられる。
2.3 生活のための島づくり
島の開発はしばしば直島のような観光を目的としたま ちづくりがなされている。しかし、伯方島で必要とされ ている事は一時的な人口の流入ではなく、定着するよう な生活のための島づくりなのである。
3.研究目的
本研究では伯方島での提案により、「住み続けられる 地方」への仕組みを作り出す事が目的である。つまり、
伯方島の文化性や暮らし方を軸に据えながら、建築を用 いて若者流出・少子高齢化などの人口問題を解決し、地 方創生に対する先行的な持続型島づくりを提唱する。
4.敷地
敷地は愛媛県今治市伯方町有津地区とする。平成
20年
3月
31日現在で世帯数
599世帯 人口
1,554人(男
728人 女
826人)である。有津地区ついて実施した現地調査よ り空き家31軒、空き建築物5軒という現状であった(空 き家率は4.9%)。
写真1 有津地区
有津は島の南側であり集落全体が海を見渡せる立地で
ある。また、島の玄関口である叶浦と中心地域である木
浦の間に位置し二つの地域を結ぶ重要な場所であり、生
活環境に適していることから住み続けられる仕組みを考
えるべき地域である。空き家・建築物は適切な処置がさ
れずに廃れたまままちの風景になっている。計画地は主
要道路に面していることでアクセスが良く瀬戸内らしい
海と島々を眺められる敷地である。
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1FL 2FL
OPEN
■持続型島づくりのためのモデルを提案する。創生に繋がる要素を活用した起点と拠りどころを配置し、各々の活動が有機的に繋がり合うように関係性をデザインする。
A. 建築事務所
B. 定住用住宅
C. サイクリングショップ
D. IT系サテライトオフィス
E. 竹工芸工房
F. 整骨院
G. オープンキッチンスペース
H. 保育施設
I. 家具工房
J. デザイナー工房
K. コワーキングスペース
L. 健康増進施設
有津地区全景
scale:1/10000提案関係図
A. 島づくりの先導となる役割を担う
A-B~K 空き家・空き建築物の改修
A-K ワークショップの企画。大型プロッターの 貸し出し
B. 移住者のための住まい
B-A 徒歩圏内での生活圏
C. バイクメッセンジャーとして各地域との関 わりを持つ。また、観光にも対応
D. 映像・グラフィック系オフィス
D-E コラボ製品(間伐材の有効活用)
E. 島の資源を使った工芸品を生産
E-IJ コラボ製品(オーダーメイド品)
E-K 大型木工工具の貸し出し
E-L 作品の展示・販売
F. 高齢者の居場所ともなる
F-L 出張マッサージを行う
G. 移住者・地元民との交流を誘発
G-L Lで形成されたコミュニティを外部へ繋げる
H. 2~5歳児を預かる。近隣の空き地を庭園とし て使用する
H-A~J 働き手の子育て支援
I. 島内でしようする家具を作成
I-K 大型木工工具を貸し出し
I-L 家具の使用及び作品の展示・販売
J. 島民とのコラボ商品の生産場所
J-K レーザーカッターを貸し出し
K. 移住者の発信の拠点
L. 島民の生活の一部となる施設
L-K 移住者と地元民のコミュニティ を形成
空き家改修
■空き家を新しい機能として転用し、まち並みを改善するとともに島民に刺激を与え、活力を生み出し若者を確保できる仕組みを創り出す。
□改修
有津地区には31軒の空き家が ある。本提案ではその中の10 軒を対象にそれぞれの活動が 様々な繋がりを持つように想定 した上でリノベーションを行う。
空き家をその中での活動が周 りから見えるようにリノベーショ ンする。働く事と関係のない住 宅地にクリエイティブな仕事場 などを配置する事で創作意欲 の創出が期待できる。また、ま ち並みとして島民は魅力的な 仕事場とエネルギッシュな働い ている姿を日頃から見る事が できる。それにより、若者が夢や 地元で働くイメージを持つきっ かけとなり、将来的に地元で働 いてくれるという好循環ができ る。
■空き家改修後の島内にできる好循環図
空き家をリノベーション 島民が刺激を受ける
島内で生活するイメージを持つ 島内で働く人が増える
■改修案一例(建築事務所)
scale:1/200
改修前の空き家
1 2
3
4 5
1. 打ち合わせスペース 2. 作業スペース 3. キッチン 4. 休憩室 5. 印刷スペース
A
B
C D
E F
G H
I J
K
L
コワーキングスペース(旧有津小学校)
■旧有津小学校を空き家での活動を支援すると共に移住者の発信の拠点となるコワーキングスペースとして再生させる。
1FL 2FL
健康増進施設
■島民が日課として利用する健康増進施設を計画する。地元民同士のコミュニティの再興と共に地元民と移住者のコミュニティを形成するための建築である。
□新設
周辺の建物・環境を読み解き、人の動きが活発な アクティブスペースと閑静なリラックススペースと して分ける。性格の異なる2つの場所が重なり合う 所を核となるエントランス・交流棟とし、それぞれ の諸室を周辺環境に呼応するように配置する。ボ リュームを敷地に馴染ませるために建物の四周を 敷地・隣接する建物に合わせ、またそれぞれの諸 室への動線を地下に埋めることで周辺環境に合っ たスケールとなる。
□ダイアグラム
□1FL平面図 scale:1/700
人工浜辺
:夏は子供たちが遊ぶ
ガソリンスタンド
:定期的に車の出入りがある
伯彩(直売所)
:日常的に人が立ち寄る
葬祭センタールミエール伯方
:葬儀の際のみ使用される。
瀬戸内海
:海の穏やかさを敷地に介入させる トレーニングジム
:隣接する建物・敷地に合わせたボリューム 吹抜け空間は動線との繋がりをつくる 広場
:ゲートボールなどアクティブ な活動が行われる
交流スペース
:空き家での活動における作品の 展示や販売があり、イベントなども 行われる
屋内休憩スペース
:運動・入浴後の休憩場所 穏やかな海を眺められる
屋外休憩スペース
:ベンチは地下階に自然光を 取り入れる役割も担う
プール
:人口浜辺に呼応している 海のアクティブさを取り入れる
スパ
:日常的にコミュ ニティが形成さ れる。
地下階と地上階 では性格が異な る空間にしてい る。
アクティブ リラックス
1.周辺環境から2つの性格に分ける 2.諸室を周辺と呼応するように配置 3.ボリュームを敷地に馴染ませ、動線を 地下にすることでスケール感を操作する アクティブ リラックス
1FL 2FL
□改修前平面図 scale:1/600
□改修後平面図 scale:1/600
1. ビジネスラウンジ 2. 管理人室・事務室 3. 机貸しオフィス 4. ワークスペース 5. 木工作業スペース 6. 機械工作スペース 7. 資料室 8. シアタールーム 9. セミナールーム 10. ミーティングルーム
□改修
1FLをまちに開いた性格と し、2FLは比較的静かな室 内環境が要求される諸室を 配置する。また、エントラン ス付近はよりオープンなビ ジネスラウンジとし、住宅街 から一番離れた場所は騒 音が出るなどの住宅密集地 では不適切でありながら空 き家での活動に必要な機 材が整備されたファクトリ ースペースとしている。
また、耐震補強としてバラン スよく耐震壁を加えていく。
外断熱とし仕上げ材は伯方 島でよく見られた焼き杉と することでまち並みの改善 や空き家改修との関係が強 調される。
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4
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3 10