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新井 正一

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Academic year: 2021

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(1)

7 5 福島県内における空気中浮遊塵中の放射性同位元素の解析および内部被ばくの算出

原著

新井 正一

1

・土居 亮介

2

・久志野 彰寛

2

・大沼 雅明

3

A n a l y s i s o f R a d i o i s o t o p e f o u n d i n Fl o a t i n g D u s t i n t h e a i r a n d t h e Ca l c u l a t i o n o f t h e I n t e r n a l Ex p o s u r e i n Fu k u s h i m a

要旨 :  2 0 1 1 年3 月1 5 日に発生した東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所事故によって放射性物質 が放出された.震災後,原発より南に2 0 k m 離れた福島県双葉郡広野町において,震災後1 年目の2 0 1 2 年3 月お よび3 年半後の2 0 1 4 年8 月にダストサンプラーを用いて空気中浮遊塵を収集し,その中に含まれる放射性物質を 同定,量を算出した.その結果,2 0 1 2 年3 月時点では1 3 4 - Cs が9 . 2 6 ×1 0

7

Bq / l ,1 3 7 - Cs が2 . 4 2 ×1 0

7

Bq / l 含まれ ていた.この空気を吸った場合の内部被ばくを算出すると0 . 9 5 μ Sv / 年 となった.2 0 1 4 年8 月時点ではこれら 放射性セシウムは検出限界以下となった.

 被ばくには内部被ばく,外部被ばくの合算で評価されるが,本研究結果および他の先行論文の結果も踏まえ て,福島住民の年間被ばく線量は1 m Sv 以下になることが示唆された.

キーワード :  空気中浮遊塵,放射性セシウム,原子力災害,内部被ばく,東日本大震災

A b s t r a c t :  R a d i o a c t i v e s u b s t a n c e s w e r e r e l e a s e d d u e t o t h e a c c i d e n t o f t h e To k y o El e c t r i c Po w e r Co m p a n y Fu k u s h i m a D a i i c h i N u c l e a r Po w e r St a t i o n . Th i s a c c i d e n t h a s c o m e t o b e k n o w n a s t h e ʻG r e a t Ea s t J a p a n Ea r t h q u a k e ʼ a n d o c c u r r e d i n M a r c h , 2 0 1 1 .

 A f t e r t h i s e a r t h q u a k e d i s a s t e r i n M a r c h , 2 0 1 2 w e c o l l e c t e d d r i f t i n g d u s t p a r t i c l e s i n t h e a i r u s i n g d u s t s a m p l e r s l o c a t e d i n Fu t a b a g u n H i r o n o m a c h i , Fu k u s h i m a w h i c h i s a b o u t 2 0 k m s o u t h o f t h e n u c l e a r p o w e r s t a t i o n . W e c o n d u c t e d t e s t s a r o u n d o n e y e a r a f t e r t h e e a r t h q u a k e d i s a s t e r a n d a g a i n i n A u g u s t , 2 0 1 4 w h i c h w a s a p p r o x i m a t e l y t h r e e a n d h a l f y e a r s a f t e r t h e i n i t i a l e a r t h q u a k e .

 We identified and calculated the various concentration of radioactive substances. As a result, 9.26 X 10.7 Bq/l of 134- Cs were included and 1.39 X 10.6 Bq/l of 137-Cs were also included too. When internal exposure was calculated, in the c a s e o f p e o p l e b r e a t h i n g t h i s a i r w e f o u n d i t w a s 0 . 9 5 u Sv / y e a r . A s o f A u g u s t , 2 0 1 4 r a d i o a c t i v e c e s i u m e s p e c i a l l y a m o n g t h e s e r a d i o a c t i v e s u b s t a n c e s w a s b e l o w t h e d e t e c t i o n l i m i t

 R a d i o a c t i v e e x p o s u r e i s e v a l u a t e d b y a m i x t u r e o f i n t e r n a l a n d e x t e r n a l e x p o s u r e a n d i n c o n s i d e r a t i o n o f t h e r e s u l t s o f t h i s r e s e a r c h a n d p r e c e d e n t r e s e a r c h . . I t h a s b e e n s u g g e s t e d t h a t t h e a n n u a l r a d i a t i o n e x p o s u r e l e v e l t o r e s i d e n t s o f Fu k u s h i m a w a s b e l o w 1 m Sv .

K e y w o r d :  d r i f t i n g d u s t i n t h e a i r , r a d i o a c t i v e c e s i u m , N u c l e a r - p o w e r d i s a s t e r , I n t e r n a l r a d i a t i o n e x p o s u r e , Ea s t J a p a n g r e a t e a r t h q u a k e d i s a s t e r

Sh o i c h i A R A I

1

,R y o s u k e D O I

2

,A k i h i r o K U SH I N O

2

,M a s a a k i O H N U M A

3

1 )純真学園大学 保健医療学部 放射線技術科学科 2 )久留米大学 医学部 放射性同位元素施設

3 )久留米大学 医学部 生物学教室

1 )D e p a r t m e n t o f R a d i o l o g i c a l Sc i e n c e , Fa c u l t y o f H e a l t h Sc i e n c e s , J U N SH I N G A K U EN U N I V ER SI TY 2 )R a d i o i s o t o p e I n s t i t u t e f o r Ba s i c a n d Cl i n i c a l M e d i c i n e

3 )D e p a r t m e n t o f Bi o l o g y , Sc h o o l o f M e d i c i n e , K U R U M E U N I V ER SI TY

純真学園大学雑誌 第5 号 平成 2 8 年3 月

J o u r n a l o f J u n s h i n G a k u e n U n i v e r s i t y , Fa c u l t y o f H e a l t h Sc i e n c e s V o l . 5 , M a r c h 2 0 1 6

平成2 8 年1 月2 4 日

純真学園大学 保健医療学部 放射線技術科学科 教授

福島県内における空気中浮遊塵中の放射性同位元素の解析

および内部被ばくの算出

(2)

7 6 新井 正一・土居 亮介・久志野 彰寛・大沼 雅明

はじめに

 2 0 1 1 年(平成2 3 年)3 月1 1 日(金)に発生した 東北地方太平洋沖地震とそれに伴って発生した津 波よって,東京電力の福島第一原子力発電所で炉 心溶融が発生し,放射性物質が放出された

1 - 4

.  

 震災後,5 年間我々が調査を行っている福島県 双葉郡広野町は,福島第一原子力発電所より南に 約2 0 k m 離れた浜通り地区にあたり,2 0 1 1 年(平 成2 3 年)の事故当時,町全域が緊急時避難準備区 域に指定され,全町民が避難をした地域である.

 この広野町内でダストサンプラーを用いて,空 気中の浮遊塵を収集し,フィルタに吸着した塵を G e 型半導体検出器で測定し,放射性物質の各種 の同定,量を算出した.またその放射性物質を住 民が吸い込み体内に取り込んだ場合,どの程度の 内部被ばくになるのかを算出したので報告する.

方法

 エアサンプラーにて空気中の粒子を集塵し,

フィルタでろ過捕集を行った.集塵の場所は,電 源設備,防雨等を考慮し,広野町役場玄関前にて 地表面より1 0 0 c m で行った.収集は2 0 1 2 年3 月1 6 日1 2 :5 0 〜1 7 :0 0 (2 5 0 分間)および2 0 1 4 年8 月2 8

日1 3 : 0 0 〜1 7 : 1 0 (2 5 0 分間),流量は7 0 0 L / 分で行っ た(図1 ).

 ダストを収集したフィルタをビニール袋に入れ,

後日,G e 型半導体検出器を使用し測定を行い,

放射性核種の同定,およびその量を解析した.(図

2 )

使用機器

エアサンプラー:柴田科学器機工業株式会社  H V C- 5 0 0

ろ材:東京ダイレックス株式会社 M o d e l T6 0 A 2 0 フッ化樹脂処理ガラス線維フィルタ(ファイ バーフィルム)で,捕集効率は0 . 3 μ m の粒子 に対して9 6 . 4 %の捕集効率である.

G e 半導体検出器:GMX-23195

解析装置:ガンマスタジオ SEI K O  EG & G M CA  7 7 0 0

 G e 半導体検出器の校正は,「放射能標準ガンマ 体 積 線 源 」( 日 本 ア イ ソ ト ー プ 協 会 製,

MX033U8PP)を用いて, 2 0 1 1 年1 2 月にエネルギー 校正,効率校正を行っている.

 測定条件は,測定時間8 6 , 4 0 0 秒(リアルタイム),

ピークサーチ方法:平滑化2 次微分法ピークサーチ,

図1 ダストサンプリングの様子(広野町役場前)

2011 年(平 23 年)3 月 11 日( )に した東 方 平 と れに

って した よって、東京 の 子 で 心 し、

放射性物質 放出された

1-4)

、5 年間 を行っている は、 子

より に 20km れた り にあたり、2011 年(平 23 年)の

時、 時 準 に 定され、 をした である。

の でダストサンプラーを用いて、 中の を 集し、フィルタ に した を Ge 型半導体検出器で測定し、 放射性物質の の同定、 を算出した。

た の放射性物質を い 体 に り 、 の の に るの を算出したので る。

方法

エアサンプラーにて 中の粒子を集 し、フィルタでろ 捕集を行った。集 の

は、 源 、 を し、 にて より 100cm で行った。 集

は 2012 年 3 月 16 日 12 : 50 17 : 00 ( 250 分間) よ 2014 年 8 月 28 日 13 : 00 17 : 10 ( 250 分間) 、 は 700L/ 分で行った(図 1 ) 。

図 ダストサンプリン の 子( )

ダストを 集したフィルタを ール に れ、 日、 Ge 型半導体検出器を使用し測定 を行い、放射性 の同定、 よ の を解析した。 (図 2 )

3

図2 Ge 型半導体検出器(GMX-23195)とスペクトロメータ(MCA7700)図2

Ge

型半導体検出器(GMX-23195)とスペクトロメータ(MCA7700)

使用機器

エアサンプラー:柴田科学器機工業株式会社

HVC-500

ろ材:東京ダイレックス株式会社

Model T60A20

フッ化樹脂処理ガラス線維フィルタ(フ ァイバーフィルム)で、捕集効率は

0.3

μ

m

の粒子に対して

96.4

%の捕集効率である。

Ge

半導体検出器:

GMX-23195

解析装置:ガンマスタジオ

SEIKO EG

GMCA7700

Ge

半導体検出器の校正は、「放射能標準ガンマ体積線源」

(

日本アイソトープ協会製、

MX033U8PP)

を用いて、

2011

12

月にエネルギー校正、効率校正を行っている。

測定条件は、測定時間

86,400

秒(リアルタイム)、ピークサーチ方法:平滑化

2

次微分法 ピークサーチ、ピーク中心計算方法:

2

次微係数の

3

点放物近似法を用いた5)

結果

1.

エアサンプラーにより捕集された放射性物質の同定

4

(3)

7 7 福島県内における空気中浮遊塵中の放射性同位元素の解析および内部被ばくの算出

ピーク中心計算方法:2 次微係数の3 点放物近似法 を用いた

5

結果

1 .エアサンプラーにより捕集された放射性物質 の同定

 原発事故1 年後である2 0 1 2 年3 月1 6 日および事故 後,約3 年6 カ月後の2 0 1 4 年8 月2 8 日の結果を示す.

 エネルギースペクトルの結果より,2 0 1 2 年3 月 の 時 点 で は1 3 7 - Cs お よ び1 3 4 - Cs の エ ネ ル ギ ー ピークが確認できたが,2 0 1 4 年8 月ではそのピー クが確認できない.(図3 )

 これらの結果より解析した結果,それぞれ空気 中に含まれる放射性物質量を算出すると,2 0 1 2 年 3 月時点で, 1 3 4 - Cs は9 . 2 6 ×1 0

7

Bq / l , 1 3 7 - Cs は1 . 3 9

図3 エアサンプラーにより捕集された放射性物質のエネルギースペクトル

(4)

×1 0

7

Bq / l ,4 0 - K は2 . 4 2 ×1 0

5

Bq / l であった.

 2 0 1 4 年8 月時点では,1 3 4 - Cs ,1 3 7 - Cs はともに 検出限界以下(3 ×1 0

7

Bq / l ),4 0 - K は2 . 5 0 ×1 0

5

Bq / l であった.(表1 )

2 .体内に取り込まれる放射性物質量

 1 .空気中の浮遊塵の結果より,2 0 1 2 年3 月時点 で体内に取り込まれた放射性物質によって内部被 ばく線量を算出する.

134-Cs:

 1 m

3

=1 , 0 0 0 リットルであるから

    9 . 2 6 ×1 0

7

Bq / l =9 . 2 6 ×1 0

4

Bq / m

3

 文献

6

より,実効線量係数は大人(1 7 歳以上)

は0 . 0 2 0 ,

 文献

7

より,1 時間当たりの呼吸率を1 . 5 0 m

3

/ h とすると

 9 . 2 6 ×1 0

4

Bq / m

3

×1 . 5 m

3

/ h ×1 h ×0 . 0 2 0 μ Sv / Bq

=2 . 7 8 ×1 0

5

μ Sv

つまり1 時間,この空気を吸った場合

 2.78×10

-5

μSv  の内部被ばく線量となる.

137-Cs:

 1 3 4 - Cs と同様の算出方法で1 3 7 - Cs を算出すると,

 1 . 3 9 ×1 0 - 6 Bq / l =1 . 3 9 ×1 0

3

Bq / m

3

1 3 4 - Cs と同様,文献

6

より,実効線量係数は大人

(1 7 歳以上)で0 . 0 3 9  

 文献

7

より,1 時間当たりの呼吸率を1 . 5 0 m

3

/ h とすると

 1 . 3 9 ×1 0

3

Bq / m

3

×1 . 5 0 m

3

/ h ×1 h ×0 . 0 3 9 μ Sv / Bq

=8 . 1 3 ×1 0

5

μ Sv

つまり 1 時間,この空気を吸った場合  8.13×10

-5

μSv  の被ばく線量となる.

1 3 4 - Cs ,1 3 7 - Cs による内部被ばく: 

 1 3 4 - Cs と1 3 7 - Cs の空気中浮遊塵による被ばく 線量(2 0 1 2 年3 月時点)を合算すると,

1 時間当たり

 2 . 7 8 ×1 0

5

μ Sv / h + 8 . 1 3 ×1 0

5

μ Sv / h

=1 . 0 9 ×1 0

4

μ Sv / h 1 年間の被ばく線量は

 1 . 0 9 ×1 0

4

μ Sv / h ×2 4 h ×3 6 5 日 / 年

=0.95μSv/ 年

 となり,2 0 1 2 年3 月(事故後1 年)の時点におけ る放射性浮遊塵による内部被ばくは0 . 9 5 μ Sv / 年 となった.

 同様に,2 0 1 4 年以降は,検出限界(L TD )とな りこれ以下の線量であった.

考察

 人体が放射線にさらされることを被ばくという.

被ばくにも次の二つに分類される.体の外部に放 射線源がありその放射線によって被ばくする外部 被ばくと,経口摂取や吸引によって体内に放射性 物質を取り込み,その放射線によって被ばくをす る内部被ばくである.今回,本研究で扱った空気 中浮遊塵中にあった放射生性物質によっての被ば くは後者である内部被ばくになる.

 ただ,住民の被ばくを考えた場合,当然,内部 被ばくと,外部被ばくの両者を考慮しなければな らない.また内部被ばくも浮遊塵だけでなく,食 物や水なども考慮せねばならない.これらすべて を合算し,一般人の被ばく線量は年間で1 m Sv 以 下に規定されている.

 外部被ばくはガラス線量計など,個人被ばく線 量計を装着しその線量を測定する.内部被ばくは,

今回我々が示したような算出方法とホールボディ

表1 空気中に含まれる放射性物質量

㻝㻟㻠㻙㻯㼟㻌 㻝㻟㻣㻙㻯㼟㻌 㻠㻜㻙㻷㻌

㻞㻜㻝㻞㻛㻜㻟㻛㻝㻢㻌 㻥㻚㻞㻢×㻝㻜

㻙㻣㻌

㻝㻚㻟㻥×㻝㻜

㻙㻢㻌

㻞㻚㻠㻞×㻝㻜

㻙㻡㻌

㻞㻜㻝㻠㻛㻜㻤㻛㻞㻤㻌 㻸㼀㻰㻌 㻸㼀㻰㻌 㻞㻚㻡㻜×㻝㻜

㻙㻡㻌

[Bq/l]

測定時間:86,400[](24時間) 検出限界:3×10-7(Bq)

(5)

7 9 福島県内における空気中浮遊塵中の放射性同位元素の解析および内部被ばくの算出

カウンターによって,体内中の放射性物質量を測 定する方法がある

8

 現在までに報告されている論文を基に,福島の 住民の外部被ばく,内部被ばくについてそれぞれ 考察してみたい.

福島住民の外部線量

 福島住民の外部線量を示す論文として,以下の ものが注目されている.地元福島県内の高校生た ちが中心になってまとめられた研究論文という点 でも注目されている

9

 他県や外国のそれぞれの住民が受ける外部被ば く線量について比較検討されている.論文の内容 は, 1 時間ごとに積算線量を把握できる線量計「D シャトル」を活用し,福島高校を含め県内の6 校 と横浜,神戸両市などの6 校に加え,フランス,ポー ランド,ベラルーシの1 4 校の生徒と教諭に協力を 得て,線量の比較,分析を試みている.参加者は 2 週間,線量計を身に付け,行動記録も提出して いる.解析の結果,外部被ばく線量は福島県もほ かの地域でもほぼ差はなく,年換算で1 m Sv 程度 であることが分かった.福島県内の各校において は,放射性セシウムによる影響は多少あるものの,

土壌に含まれる自然放射線量(いわゆるバックグ ラウンド)が,もともと福島は低い地域であるた め,結果的に他の地域と線量がほとんど変わらな い.

福島住民の内部線量

 原発事故により,大気中に特に大量に放出され た放射性物質は,本研究解析結果からもでている

1 3 4 - Cs ,1 3 7 - Cs ならびに1 3 1 - I である.ただ1 3 1 - I

については,事故後初期の放出による甲状腺被ば くが心配されたが,その線量は「甲状腺がんが増 える可能性がある」とされている数値を下回り,

健康上問題となるものではないことが試算されて

いる

1 0 - 1 2

 また,1 3 1 - I の半減期(放射能が半分に減少す る時間)は8 日で,事故後5 年あまりを経過した現 在は,すでに環境中からは消失している.また甲 状腺がんの発生頻度の現状としては,2 0 1 1 年1 0 月 より福島県立医大が中心となって事故当時福島県 内に住んでいた1 8 歳以下の子供たち3 0 0 , 4 7 9 名の

超音波による甲状腺スクリーニング検査を実施し ており,そのうち穿刺吸引細胞診で悪性またはそ の疑いと診断された者が2 名と報告されている

1 3

. しかし放射線被ばくに起因する可能性は低く,超 音波技術の向上によって発見された可能性が高い と結論付けられている.

 一方,1 3 4 - Cs と1 3 7 - Cs の半減期は,それぞれ

2 . 0 6 5 2 年と3 0 . 1 年である.

 内部被ばくは,食品中に含まれている放射性物 質を摂取するか,あるいは大気中の放射性物質を 吸入することによって起こる.本研究の結果から もわかるように,空気中浮遊塵中の放射性物質は,

現在検出できない程度に減少している.食品から の摂取では,市販されているさまざまな食品は,

引き続き厳しく規制されている.現在,福島県内 で生産されているコメなどを中心としたほとんど すべての農産物の放射性物質量測定が行われてい

1 4 - 1 5

 また,別の検査として,食べる分のほかにもう ひとつ余分に同じ食事を作り,食事中に含まれる 放射線量を測定する「陰膳方式」で測定が行われ ている.この手法で,福島県を含め全国1 0 0 の家 庭の放射性物質量測定を行ったところ,放射性セ シウムは,9 3 の家庭ではまったく検出されず

1 6

, 残 り の7 家 庭 で も,1 3 7 - Cs は 最 大 値2 . 4 Bq / k g ,

1 3 4 - Cs が1 . 3 Bq / k g であった.これらの状況をみ

ても,内部被ばくによる健康への影響は極めて少 ないと考えられる.

 本研究結果ならびに他の先行論文の結果も踏ま えて,福島住民の被ばくは内部被ばく,外部被ば くの合算で評価しても,年間の被ばく線量は

1 m Sv 以下になることが示唆される.

結論

 原発より南に2 0 k m 離れた福島県双葉郡広野町 において,震災後1 年目の2 0 1 2 年3 月および3 年半 後の2 0 1 4 年8 月の空気中浮遊塵を収集し,その中 に含まれる放射性物質は2 0 1 2 年3 月時点では1 3 4 - Cs が9 . 2 6 ×1 0

7

Bq / l ,1 3 7 - Cs が1 . 3 9 ×1 0

6

Bq / l 含 まれていた.

 この空気を吸った場合の内部被ばくを算出する

(6)

と0 . 9 5 μ Sv / 年 ,2 0 1 4 年8 月ではこれら放射性セシ ウムは検出限界以下の値となった.

謝辞

 本研究を実施するにあたり福島県双葉郡広野町 長 遠藤 智 様,広野町役場放射線対策課の職 員の皆さまにはお世話になりました.ここに厚く 御礼申し上げます.

文献

1 .東日本大震災について 被害状況と警察措置 ”(プレスリ リース),警察庁,(2 0 1 6 年 1 月 8 日)2 0 1 6 年 1 月 8 日閲覧   h t t p : / / w w w . n p a . g o . j p / a r c h i v e / k e i b i / b i k i / i n d e x . h t m

2 .経済産業省報道発表

  h t t p : / / w w w . m e t i . g o . j p / p r e s s / i n d e x . h t m l

3 .平成 2 3 年(2 0 1 1 年)東北地方太平洋沖地震の被害状 況及び対応について(第 1 7 報)(PD F).厚生労働省

(2 0 1 1 年 3 月 1 6 日). 2 0 1 5 年 3 月 1 2 日閲覧.

  h t t p : / / w w w . m h l w . g o . j p / s t f / h o u d o u / 2 r 9 8 5 2 0 0 0 0 0 1 5 3 4 4 - i m g / 2 r 9 8 5 2 0 0 0 0 0 1 5 3 5 l . p d f

4 .全国の避難者等の数(所在都道府県別・所在施設別 の数)(PD F).復興庁(2 0 1 5 年 1 2 月 2 5 日).2 0 1 6 年

1 月 8 日閲覧.

  h t t p : / / w w w . r e c o n s t r u c t i o n . g o . j p / t o p i c s / m a i n - c a t 2 / s u b - c a t 2 - 1 / h i n a n s h a s u u . h t m l

5 .新井正一,土居亮介.福島県内のイネの放射性物質 の分布状況と土壌からの移行率.純真学園大学雑誌 3 . 1 1 1 - 1 1 8 .2 0 1 3

6 .日本保健物理学会.専門家が答える暮らしの放射線 Q & A ,朝日出版,東京,p p 7 2 - 7 6 ,2 0 1 3 .

7 .I CR P A g e - d e p e n d e n t D o s e s t o M e m b e r s o f t h e Pu b l i c f r o m I n t a k e o f R a d i o n u c l i d e s : Pa r t 4 I n h a l a t i o n D o s e Coefficients, ICRP Publication 71. Annals of the ICRP 25

(3 - 4 ),1 9 9 5

8 .第 1 0 回コメント「内部被ばくとホールボディカウン ター」

  h t t p : / / w w w . k a n t e i . g o . j p / s a i g a i / s e n m o n k a _ g 1 0 . h t m l

9 .N A d a c h i , V A d a m o v i t c h , Y A d j o v i , e t a l . M e a s u r e m e n t a n d c o m p a r i s o n o f i n d i v i d u a l e x t e r n a l d o s e s o f h i g h - s c h o o l s t u d e n t s l i v i n g i n J a p a n , Fr a n c e , Po l a n d a n d Be l a r u s −t h e ʻD - s h u t t l e ʼ p r o j e c t − J . Rad io l .P r o t . (3 6 ) 4 9 - 6 6 . 2 0 1 6 1 0 .平成 2 4 年度原子力災害影響調査等事業(事故初期の

ヨウ素等短半減期による内部被ばくの線量評価調査)

  h t t p : / / w w w c m s . p r e f . f u k u s h i m a . j p / p c p _ p o r t a l / Po r t a l   Servlet?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_

I D = U 0 0 0 0 0 4 & CO N TEN TS_ I D = 2 4 8 0 9 )

1 1 .H a y a n o R S e t a l “I n t e r n a l r a d i o c e s i u m c o n t a m i n a t i o n o f

a d u l t s a n d c h i l d r e n i n Fu k u s h i m a 7 t o 2 0 m o n t h s a f t e r t h e Fu k u s h i m a N PP a c c i d e n t a s m e a s u r e d b y e x t e n s i v e w h o l e - b o d y - c o u n t e r s u r v e y s ” Pr o c e e d i n g s o f t h e J a p a n A c a d e m y Se r i e s B 8 9 (2 0 1 3 ) 1 5 7 - 1 6 3

  h t t p s : / / w w w . j s t a g e . j s t . g o . j p / a r t i c l e / p j a b / 8 9 / 4 / 8 9 _ PJ A 8 9 0 4   B- 0 1 / _ a r t i c l e

1 2 .福島県住民ホールボディカウンター測定の線量評価 の方針について(福島県保健福祉部,独立行政法人 放射線医学総合研究所,独立行政法人日本原子力研 究開発機構)

  h t t p : / / w w w c m s . p r e f . f u k u s h i m a . j p / p c p _ p o r t a l / Po r t a l Se r v l e t ?   DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004   & CO N TEN TS_ I D = 2 6 1 0 4

1 3 .S. Su z u k i . Ch i l d h o o d a n d A d o l e s c e n t Th y r o i d Ca n c e r i n Fu k u s h i m a a f t e r t h e Fu k u s h i m a D a i i c h i N u c l e a r Po w e r Pl a n t A c c i d e n t : 5 Y e a r s O n . C l inic al O nc o l o g y(2 8 ) 2 6 3 - 2 7 1   2 0 1 6

1 4 .米の全量全袋検査(福島県)

  h t t p : / / w w w c m s . p r e f . f u k u s h i m a . j p / p c p _ p o r t a l / Po r t a l Se r v l e t ?   DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004   & CO N TEN TS_ I D = 3 1 3 3 0

1 5 .ふくしまの恵み安全対策協議会   h t t p s : / / f u k u m e g u . o r g / o k / k o m e /

1 6 .実際の食事に含まれる放射性物質測定調査結果(コー プふくしま)

  h t t p : / / w w w . f u k u s h i m a . c o o p / k a g e z e n / 2 0 1 2 . h t m l

  h t t p : / / w w w . f u k u s h i m a . c o o p / k a g e z e n / 2 0 1 2 _ 0 2 . h t m l .

参照

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