中国内モンゴル自治区のフルンボイル草原における観光行動が植 生に及ぼす影響
Effects of Tourism Activities on Vegetation in Hulunbuir Grassland, Inner Mongolia, China
曹楽
*・斯日古楞
*・伊ヶ崎健大
*・ 角野貴信
**・ 小﨑隆
*Le Cao Siriguleng Kenta Ikazaki Atsunobu Kadono Takashi Kosaki
I. はじめに
背景
中国の国土のうち393 万km² (国土の 41.7%)は 天然草原 1が占め,この面積はオーストラリアに ついで世界第2位である.草原は気候により,温 帯草原,高寒草地,熱帯亜熱帯草地に大別される (陳ら,2003)が,うち,温帯草原と高寒草地は主 に東北3省の西部,内モンゴル自治区の全域,甘
1中国には天然草原と人工草地があり,人工草地は面積 が小さく,天然草原の4.68%にすぎない
粛省の北西部,新疆ウイグル自治区の山地と青海 省チベット高原に分布している.
現在利用可能な草原面積は 331 万km²と推定さ れているが,その約 90%で草原退化(劣化)が進行 している(中国国家環境保護総局,2007).草原退 化とは植生バイオマス量や植被率の減少,種組成 の変化,土壌硬度の増加や土壌有機物の減少,塩 類化することを意味し,草原生態系の非生物的要 素に影響するだけでなく, 生物的要素である生産 者,消費者,分解者や,草原生態系の機能と構造 にも影響するため,結果として草原生態系全体の 劣化を招く(陳ら,2003).この草原退化は干ばつ,
摘 要
内モンゴル自治区では近年草原を利用した観光が盛んになっており,その観光行動が草原の退化を促進 している可能性がある.しかし,既往の研究では草原退化の原因として過放牧,気候変動,過開墾を検 討しているものの,観光行動が草原退化に与える影響については未だ明らかになっていない.そこで本 研究では,内モンゴル自治区で一大観光地となっているフルンボイル草原の利用圧が異なる2 つの観光 地(以下 A,B と記す;利用圧は A>B)において,観光行動が植生に与える影響を評価した.いずれの観 光地でも,乗馬,バギー体験,散策などの観光活動の有無により利用区と非利用区を設け,各区で現存 する植物の種構成,草丈,植被率,株数を測定するとともに,地上部バイオマス量を草丈および株数よ り推定した.その結果,いずれの観光地でも植被率,地上部バイオマス量,優占種の草丈については利 用区で非利用区に比べ有意に低下した(p<0.01).植生については,両観光地の非利用区で Carex duriuscula C.A.Mey.(ノヤマスゲ・カヤツリグサ科:草原退化の指標植生)とともに Leymus chinensis
(Trin.)Tzvel.(シバムギモドキ・イネ科:優良牧草)が優占したのに対し,利用区では草原退化の指標植
物である C. duriuscula のみが優占していた.また,利用圧の高い A 観光地の利用区では,Plantago
asiaticaL. (オオバコ・オオバコ科),Lepidium apetalumWilld.(ヒメグンバイナズナ・アブラナ科),
Taraxacum asiaticum Dahlst. (タンポポ・キク科)などの荒れ地や路傍に生育する草種も見られた.以 上のことから,観光地を問わず,観光行動が草原植生の劣化を引き起こすことが示された.よって,今 後草原退化の対策を考える上では,観光活動を行う際にも考慮する必要があると考えられる.
*首都大学東京大学院都市環境科学研究科観光科学専攻
〒192-0397東京都八王子市南大沢1-1 (9号館) e-mail [email protected]
**鳥取環境大学人間形成教育センター
〒689-1111 鳥取市若葉台北1-1-1
風食,水食,塩害,地下水の変化などの自然的要 因と過放牧・過耕作や過剰利用(過度の開墾や採草,
無秩序な薬草や薪の採取)などの人為的要因が複 雑に絡み合って引き起こされている.草原地帯は 乾燥や半乾燥気候下にあるため元々干ばつの影響 を受けやすいが,現在過放牧,乱開発,過耕作な どの人為的な要因が加わり,年間約200万km²の速 度で退化が進行しているとされる(李,1997).草 原地域では牧畜を主要な生活物資の獲得源とし,
一旦草原の生態環境が劣化すると,牧草の生産量 と品質が低下し,牧畜業としての利用価値は大き く損なわれる.また,草原退化は牧畜産業の持続 的な利用に悪影響を与えるだけでなく,砂嵐の多 発を招き,周辺の都市住民の生活環境にも悪影響 を与えている(李,1997;中国農業年鑑,2001; 陳 ら,2003).この問題に対して,中国政府は 2000 年から退耕還林・還草 2事業を,2003年から退牧 還草 3事業を実施し,天然草原における植被の回 復と生態系機能の改善を図っている.しかし,現 在までのところ一部の草原の環境改善が見られる ものの,根本的な解決には至っていない(中国農業 年鑑,2008).
内モンゴル自治区の草原は北部温帯草原を主体 として,中国の天然草原面積の約1/4を占め,豊 かな自然が息づく地域としてよく知られている.
天然草原面積は78.8万km²で,同自治区の面積の 68.8%を占め,現在退化していない草原面積は 63.59万km²である(中国国家環境保護総局,2007).
自治区内には合計2,351種の植物(高木,灌木,草 本)が見られるが,中でも有用牧草の種類が 900 種類を超え,自治区の植物種の40%を占めている.
その内,特に重要な良質牧草は200以上である(馬,
2004).内モンゴル自治区の草原は,降水量によっ て,草甸草原(草丈60~80cm,植被率70~80%),典 型草原(草丈40~60cm,植被率50~60%),荒漠化草 原(草丈20~30cm,植被率30~40%)に大別される(伊 藤ら,2006).フルンボイル, シリンゴル東部な どの地域には大面積の草甸草原が分布している.
生産量が高く,草質も良好であるため,古くから 草甸草原は重要な天然採草地および放牧地として 利用され,牧畜業発展の基地であった.
内モンゴル自治区における草原の退化は概ね 1970年頃から顕在化した(姚ら,2002).その原因 については過放牧,過開墾,気候変動などが挙げ
2農耕をやめ森林、草原に戻す措置
3放牧をやめ草原に戻す措置
られているが(李,1997;張ら,2002;陳ら,2003;
李ら,2003;趙,2007),既往の研究(汪ら,1998;
烏ら,2004;王ら,2007)では草原退化の主要因が 過放牧であるとされることから,専ら過放牧によ る影響が研究とされてきた.
一方,内モンゴル自治区は大興安嶺の原生林,
草原の景観,黄河の景観,湖と温泉,響沙湾,ジ ンギスカンの陵墓,万里の長城,満州里国境貿易 など豊かな観光資源に恵まれており,2000年から 観光客数と観光総収入は増加傾向にある(図1).
図1 2000-2009年の内モンゴル自治区の観光客数と観 光総収入(中国国家観光総局(2010)の統計デー タにより作成)
その中で,観光客に最も注目されているのは草 質が優良なフルンボイル草原である.大興安嶺の 西側に位置するフルンボイル草原の面積は 8.33 万km²で,アジア中部草原の一部であり,世界四大 草原(フルンボイル草原,シリンゴル草原,パンパ 草原,ナラティ草原)の一つでもある.草甸草原の ため,120 種以上の牧草が存在し,牧草の王国と も言われている(尹,2008).1999年,フルンボイ ル市は中国国務院の国家生態モデル区4に選ばれ,
また2003年に「フルンボイル市観光発展総計画書」
が発表されたことで,2003 年の観光客人数は 201.3万人,観光総収入は203.97億円に達した(杜,
2009).それ以来,観光客数と観光総収入は順調に 増えつつある(図1).さらに,2005年「中国国家 地理」によって中国一美しい草原として選出され た結果,大勢の観光客が当地に押し寄せ,フルン
4経済,社会,自然の持続的な発展を維持するため,生態 環境を配慮しながら,経済開発を行い,人間と自然の調和 を構築することを目指している地域のこと.2012年1月現 在,528区ある
0 100 200 300 400 500 600 700
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 観光総収入
観光客数
観光客数(万人) 観光総収入(億元)
(年)
ボイルの経済は大きく発展した(杜,2009).2008 年,フルンボイル全地域内には国家A級観光地5が 35ヶ所存在するが,そのうち 5ヶ所は AAAA級観 光地である(杜,2009).また,旅行会社が116社,
スターレートにより格付けされたホテルが 35 あ る.2009年には,観光客数が756万人,観光総収 入は118.32億元(1435.74億円)に達した(図2).
0 200 400 600 800
フホホト市 パオトウ市 フルンボイル市 赤峰市 通遼市 ヒンガン盟 シリンゴル盟 ウランチャブ市 オルドス市 バヤンノール市 アラシャ盟 烏海市
(億元・万人)
観光総収入 観光客数
図2 2009年の内モンゴル自治区各盟市の観光客数と
観光総収入(中国国家観光総局(2010)の統計データ による作成)
上記のようなフルンボイル草原であるが,ここ 数十年生態環境は劣化の一途をたどっている.趙 (2007)によると,1965年には利用可能な草原面積 に占める退化した草原面積の割合は 12%~14%
であったが,1985年には21%,1997年には30%
を超え,2004年には49%に達した.この間,1974 年以来草地の植被率は15%~25%減少し,草本の 草丈は平均10~18cm低下し,草地の一次生産量も
30%~50%低下し,雑草類(非牧草)の割合は10%
~45%増加した(趙,2007).この草原退化の原因 としては,気候変動,過開墾,過放牧などが挙げ られているが,近年増加している観光客の観光行 動(主に乗馬,散策,バギー体験など)が草原退化 に及ぼす影響も無視できない.しかし,未だ観光 行動が草原退化に与える影響については明らかで はない.そこで本研究では,観光利用が盛んな中 国内モンゴル自治区のフルンボイル草原において,
観光行動が草原退化に及ぼす影響を明らかにする
5中国では,「観光景勝地における質量等級の分類および 評定」と「観光景勝地における質量等級を評定する管理 方法」の国家標準に従って,交通,観光,安全,衛生,
郵便・電信サービス,ショッピング,経営・管理,資源 と観光の保護,観光資源の吸引力,市場の吸引力などの 面から,観光地のレベルを上位からAAAAA,AAAA,AAA,
AA,A級の5級に分けている
ことを目的とした.
Ⅱ. 研究方法
観光に関わる利用圧の違いが植生に与える影響 を評価するため,下記2つの観光地を選定し,2011 年7月22日~8月11日に調査を実施した.
2.1 調査地の概況
フルンボイル草原の中心部にある陳バルグ旗 (東経118°22′30″~120°10′45″,北緯48°
43′18″~50°10′35″,平均標高600~800m)の 西側に位置し,類似した植生,地形,土壌環境下 にありながら利用圧が異なる2つの観光地(以下A および B 観光地と記す)を調査地とした(図 3,図 4).調査地の詳細な気象データは得られなかった が,中国気象局(2011)によると,陳バルグ旗は中 温 帯 半 乾 燥 大 陸 性 気 候 に 属 し , 年 平 均 気 温 が 2.5℃,年平均降水量が323.3mmで,降水は主に5 月~8月に集中する.日照時間は長く2700時間~
3400時間に及ぶ.緯度が高いため,日照は夏季に 集中する.最も寒い1月の平均気温は-27.9℃,
最も暑い7月の平均気温は19.6℃と気温の格差が 大きい.年平均風速は3.5~4.0 m s−1で,春季の 平均風速は 5.1 m s−1である.また,植生群落の 優占種はLeymus chinensis(Trin.) Tzvel.(シバ ムギモドキ・イネ科)および Stipa baicalensis Roshev. (和名なし・イネ科)であり,土壌は暗色 栗色土が卓越する(王ら,2007).
図 3 調査地域の地図(http://www.hua2.com により修 正)
風食,水食,塩害,地下水の変化などの自然的要 因と過放牧・過耕作や過剰利用(過度の開墾や採草,
無秩序な薬草や薪の採取)などの人為的要因が複 雑に絡み合って引き起こされている.草原地帯は 乾燥や半乾燥気候下にあるため元々干ばつの影響 を受けやすいが,現在過放牧,乱開発,過耕作な どの人為的な要因が加わり,年間約200万km²の速 度で退化が進行しているとされる(李,1997).草 原地域では牧畜を主要な生活物資の獲得源とし,
一旦草原の生態環境が劣化すると,牧草の生産量 と品質が低下し,牧畜業としての利用価値は大き く損なわれる.また,草原退化は牧畜産業の持続 的な利用に悪影響を与えるだけでなく,砂嵐の多 発を招き,周辺の都市住民の生活環境にも悪影響 を与えている(李,1997;中国農業年鑑,2001; 陳 ら,2003).この問題に対して,中国政府は 2000 年から退耕還林・還草 2事業を,2003年から退牧 還草 3事業を実施し,天然草原における植被の回 復と生態系機能の改善を図っている.しかし,現 在までのところ一部の草原の環境改善が見られる ものの,根本的な解決には至っていない(中国農業 年鑑,2008).
内モンゴル自治区の草原は北部温帯草原を主体 として,中国の天然草原面積の約1/4を占め,豊 かな自然が息づく地域としてよく知られている.
天然草原面積は78.8万km²で,同自治区の面積の 68.8%を占め,現在退化していない草原面積は 63.59万km²である(中国国家環境保護総局,2007).
自治区内には合計2,351種の植物(高木,灌木,草 本)が見られるが,中でも有用牧草の種類が 900 種類を超え,自治区の植物種の40%を占めている.
その内,特に重要な良質牧草は200以上である(馬,
2004).内モンゴル自治区の草原は,降水量によっ て,草甸草原(草丈60~80cm,植被率70~80%),典 型草原(草丈40~60cm,植被率50~60%),荒漠化草 原(草丈20~30cm,植被率30~40%)に大別される(伊 藤ら,2006).フルンボイル, シリンゴル東部な どの地域には大面積の草甸草原が分布している.
生産量が高く,草質も良好であるため,古くから 草甸草原は重要な天然採草地および放牧地として 利用され,牧畜業発展の基地であった.
内モンゴル自治区における草原の退化は概ね 1970年頃から顕在化した(姚ら,2002).その原因 については過放牧,過開墾,気候変動などが挙げ
2農耕をやめ森林、草原に戻す措置
3放牧をやめ草原に戻す措置
られているが(李,1997;張ら,2002;陳ら,2003;
李ら,2003;趙,2007),既往の研究(汪ら,1998;
烏ら,2004;王ら,2007)では草原退化の主要因が 過放牧であるとされることから,専ら過放牧によ る影響が研究とされてきた.
一方,内モンゴル自治区は大興安嶺の原生林,
草原の景観,黄河の景観,湖と温泉,響沙湾,ジ ンギスカンの陵墓,万里の長城,満州里国境貿易 など豊かな観光資源に恵まれており,2000年から 観光客数と観光総収入は増加傾向にある(図1).
図1 2000-2009年の内モンゴル自治区の観光客数と観 光総収入(中国国家観光総局(2010)の統計デー タにより作成)
その中で,観光客に最も注目されているのは草 質が優良なフルンボイル草原である.大興安嶺の 西側に位置するフルンボイル草原の面積は 8.33 万km²で,アジア中部草原の一部であり,世界四大 草原(フルンボイル草原,シリンゴル草原,パンパ 草原,ナラティ草原)の一つでもある.草甸草原の ため,120 種以上の牧草が存在し,牧草の王国と も言われている(尹,2008).1999年,フルンボイ ル市は中国国務院の国家生態モデル区4に選ばれ,
また2003年に「フルンボイル市観光発展総計画書」
が発表されたことで,2003 年の観光客人数は 201.3万人,観光総収入は203.97億円に達した(杜,
2009).それ以来,観光客数と観光総収入は順調に 増えつつある(図1).さらに,2005年「中国国家 地理」によって中国一美しい草原として選出され た結果,大勢の観光客が当地に押し寄せ,フルン
4経済,社会,自然の持続的な発展を維持するため,生態 環境を配慮しながら,経済開発を行い,人間と自然の調和 を構築することを目指している地域のこと.2012年1月現 在,528区ある
0 100 200 300 400 500 600 700
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 4500
2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 観光総収入
観光客数
観光客数(万人) 観光総収入(億元)
(年)
図4 A観光地とB観光地の地図(現地調査データにより 作成)
A観光地は面積が20 km²(陸地8 km²,湖12 km²) の創設20年目を迎える比較的古い観光地であり,
観光客サービスセンターである大ゲルを中心とす るコンクリート造のゲル群やオボ(石を円錐形ま たは円筒形に高く積み上げたもので,モンゴル族 の崇拝物または祭壇であると同時に,道標や境界 標の役目も果たす)が配置されるほか,乗馬施設や バギーなどの娯楽施設も完備されている.2003年 に内モンゴル東部で唯一の全国農牧業観光モデル 区6に選定され,さらに2007年に国家観光総局よ り国家AAAA級観光地に認定された.現在では年間 約15万人の観光客がA観光地を訪れる.
一方,B 観光地は創設4 年目の新しい観光地で あり,それ以前は放牧地としてL. chinensisの出 穗期以後,8 月中旬に年一度採草されていた.B 観光地の面積は5km²で,ゲルの配置はA観光地と 同様であるが,A 観光地より小規模で,かつまだ 新しい観光地のため,訪れる観光客は少ない(著 者らによる概算では, 観光客数は年間約1万人).
6ほかの地域に比べ農牧業だけでなく,観光業も盛んで いる地域を指す
両観光地は国道を挟んで向かい合っている.いず れの観光地も夏季の6月下旬から8月下旬までを 営業期としている.
2.2 植生調査
観光利用の有無により利用区および非利用区を 設け(非利用区は観光地の中にあるものの,観光 利用がされていない場所のこと),各処理区におい て50cm×50cmのコドラートを5連で設置した.な お,コドラートはA観光地の利用区ではオボ,大 ゲル,馬繋場,バギー乗り場,水辺に,またB 観 光地の利用区ではオボ,大ゲル,馬繋場,カガリ 台,入り口に設置した.植生調査はコドラート内 の全ての草本地上部を刈り取るのが基本 (烏ら,
2004)ではあるが,観光地の景観を破壊する恐れが あったため,本研究では 草を刈り取らず,各コド ラートの中に出現した種の組成,草丈,植被率,
株数を測定した.植被率については地面に対する 植物の投影面積を目視により推定した.地上部バ イオマス量については,2010年の予備調査の結果 を基に次式で推定した:
ここで,Biはi種の2011年の地上部バイオマス量 の推定値(g),Bi1は予備調査の結果から算出した i 種の単位株数単位草丈あたりの地上部バイオマ ス量(g 株−1 cm−1),Hiは2011年のi 種の平均草 丈(cm),Siは2011年のi種の株数(株)である.
また, 群落の多様性指数をShannon-Wienerの H’(Shannonら,1949)を用いて算出した. H’は 次式で表わされる.
ここで,Sは種数,piは pi種の確率である.優占 種についてはOhsawa(1984)の方法を決定した.優 占種判定法とは,各プロットの実際の相対優占度 の配分状態を優占種数のモデルにおける配分状態 と比較し,その偏差が最小になるような優占種数 を採用して優占型を命名する方法である(大沢ら
1971).これは次式で最小の分散σ2示した種数の
理論値を求め,相対優占度の上位から,その種数 分だけの種を優占種とするものである.
ここで,xiは上位からi番目の構成種の相対優占 度(ここでは全構成種の植被率の積算値を100と したときの各種の植被率の相対値),xは群落の種 数によって決まる理論値(1種ならば100,2 種な らば50,3種ならば33.3とする),Nsは総種数で ある.
2.3 統計解析
それぞれの観光地における利用区と非利用区の 間で植被率,種数,多様性指数,及び優占種判定 法(Ohsawa,1984)で算出した優占種の草丈と株数 の平均値の差を比較した(使用した統計ソフトは R2.12.2(RDevelopment Core Team 2009)である).
具 体 的 に は , ま ず 各 区 の 試 料 群 の 正 規 性 を Kolmogorov-Smirnov検定により調べ,正規性が認 められなかった場合にはMann-WhitneyのU検定で,
正規性が認められた場合にはさらに等分散性を F 検 定 に よ り 調 べ た . 等 分 散 で あ る 場 合 に は Studentのt検定,そうでない場合には Welchの t検定にて群間の差を検定した.有意水準はp<
0.05とした.
Ⅲ. 結果と考察
3.1 植被率および地上部バイオマス量 植被率については,いずれの観光地でも利用区 と非利用区の間に有意差が認められた(図 5).長 年にわたり観光利用されてきたA観光地の利用区 では,植被率の平均値は約 20%(非利用区の三分 の一以下)で,観光客がよく集まるオボ,馬繋場 では,それぞれ15%,20%であった.B観光地の利 用区でもしばしば裸地が見られたが,利用圧が低 いため,観光客がよく集まる場所では植生が疎ら に生えていた.
地上部バイオマス量についても,いずれの観光 地でも利用区と非利用区の間に有意差が認められ
た(図6).利用圧の高いA 観光地の利用区の地上
部バイオマス量は非常に低く,非利用区の五分の 一以下であった.以上のことから,観光活動に伴
う草原退化を表現する際には,観光地によらず,
植被率や地上部バイオマス量が草原退化の指標と して用いることを示された.
0 10 20 30 40 50 60 70 80
利用区 非利用区 利用区 非利用区
植被率(%)
A観光地 B観光地
df=7t=-10.21 p<0.001
df=8t=-5.25 p<0.001
図5 2011年8月時点のA観光地とB観光地にお ける植被率(誤差棒は標準誤差を示す)
0 10 20 30 40 50 60 70 80
利用区 非利用区 利用区 非利用区 地上部バイオマス量(Mg ha–1)
A観光地 B観光地
df=7t=-7.09 p<0.001
df=8t=-3.61 p<0.01
図6 2011年8月時点のA観光地とB観光地における 地上部バイオマス量(誤差棒は標準誤差を示す)
3.2 種組成,種数および多様性指数
各観光地で見られた草本の科名を表1に示した.
すべての処理区でカヤツリグサ科(C. duriuscula) が見られ,イネ科やキク科,マメ科の草本もほと んどの処理区で見られた.
次に各観光地で見られた主要な草種を表 2 に 示 し た . 全 て の 処 理 区 で C. duriuscula,L.
chinensis,S. baicalensisが見られた.また,A 観光地の利用区以外の処理区では,耐乾性植物で あるCleistogenes squarrosa (Trin.) Keng. (和 名なし)も見られた.一方,利用圧の高いA観光地 の利用区では,耐踏性植物のPlantago asiaticaL.
(オ オ バ コ ・ オ オ バ コ 科),Lepidium apetalum Willd.(ヒ メ グ ン バ イ ナ ズ ナ ・ ア ブ ラ ナ 科), Taraxacum asiaticum Dahlst. (タンポポ・キク科) が見られた.これらの草種は荒れ地や路傍に生育 する草種としてよく知られている.観光客や彼ら 図4 A観光地とB観光地の地図(現地調査データにより
作成)
A観光地は面積が20 km²(陸地8 km²,湖12 km²) の創設20年目を迎える比較的古い観光地であり,
観光客サービスセンターである大ゲルを中心とす るコンクリート造のゲル群やオボ(石を円錐形ま たは円筒形に高く積み上げたもので,モンゴル族 の崇拝物または祭壇であると同時に,道標や境界 標の役目も果たす)が配置されるほか,乗馬施設や バギーなどの娯楽施設も完備されている.2003年 に内モンゴル東部で唯一の全国農牧業観光モデル 区6に選定され,さらに2007年に国家観光総局よ り国家AAAA級観光地に認定された.現在では年間 約15万人の観光客がA観光地を訪れる.
一方,B 観光地は創設4 年目の新しい観光地で あり,それ以前は放牧地としてL. chinensisの出 穗期以後,8 月中旬に年一度採草されていた.B 観光地の面積は5km²で,ゲルの配置はA観光地と 同様であるが,A 観光地より小規模で,かつまだ 新しい観光地のため,訪れる観光客は少ない(著 者らによる概算では, 観光客数は年間約1万人).
6ほかの地域に比べ農牧業だけでなく,観光業も盛んで いる地域を指す
両観光地は国道を挟んで向かい合っている.いず れの観光地も夏季の6月下旬から8月下旬までを 営業期としている.
2.2 植生調査
観光利用の有無により利用区および非利用区を 設け(非利用区は観光地の中にあるものの,観光 利用がされていない場所のこと),各処理区におい て50cm×50cmのコドラートを5連で設置した.な お,コドラートはA観光地の利用区ではオボ,大 ゲル,馬繋場,バギー乗り場,水辺に,またB 観 光地の利用区ではオボ,大ゲル,馬繋場,カガリ 台,入り口に設置した.植生調査はコドラート内 の全ての草本地上部を刈り取るのが基本 (烏ら,
2004)ではあるが,観光地の景観を破壊する恐れが あったため,本研究では 草を刈り取らず,各コド ラートの中に出現した種の組成,草丈,植被率,
株数を測定した.植被率については地面に対する 植物の投影面積を目視により推定した.地上部バ イオマス量については,2010年の予備調査の結果 を基に次式で推定した:
ここで,Biはi種の2011年の地上部バイオマス量 の推定値(g),Bi1は予備調査の結果から算出した i 種の単位株数単位草丈あたりの地上部バイオマ ス量(g 株−1 cm−1),Hiは2011年のi 種の平均草 丈(cm),Siは2011年のi種の株数(株)である.
また, 群落の多様性指数をShannon-Wienerの H’(Shannonら,1949)を用いて算出した. H’は 次式で表わされる.
ここで,Sは種数,piは pi種の確率である.優占 種についてはOhsawa(1984)の方法を決定した.優 占種判定法とは,各プロットの実際の相対優占度 の配分状態を優占種数のモデルにおける配分状態 と比較し,その偏差が最小になるような優占種数 を採用して優占型を命名する方法である(大沢ら
1971).これは次式で最小の分散σ2示した種数の
が利用する車によって,当地に持ち込まれた可能 性が高いと考えられる.
李(1995)によれば,過放牧による草原退化の 指標植物は,Artemisia frigida Willd.(冷蒿),
Potentilla acaulisL.(和名なし),C. duriuscula であるが,利用圧が高いA観光地の利用区では,
C. duriusculaとともに,普段道路の両脇に現れ,
踏みつけに強い P. asiatica,P. aviculare,L.
apetalum,T. asiaticumの侵入が見られた.この ことは,観光活動が引き起こす種組成の変化は過 放牧のそれとは異なっていることを示す.観光利 用の増加に伴って,観光地の中に外来種が侵入し,
植生群落は元来の多年生イネ科牧草を中心とする 構成から,多年生イネ科以外の牧草と耐踏性の強 い草種置き換えられていると思われる.
各観光地の種数および多様性指数のt検定の結 果を図7,8に示した.種数については,いずれの 観光地でも利用区と非利用区の間に有意差は見ら れなかった.また,多様性指数については,いず れの観光地でも利用区で非利用区に比べて低い傾 向があったが,B観光地でのみ有意差が見られた.
植生の劣化に伴う多様性の変化は,種数のそれよ りも大きかった.これは,いずれの観光地の利用 区でもほぼC. duriusculaのみが優占し,非常に 高い相対優占度(コドラートで最大 97%)を示し たためである.
表1 各観光地で見られた植物科名
表2 各観光地で見られた主な草種
0 2 4 6 8 10 12
利用区 非利用区 利用区 非利用区
種数(種)
A観光地 B観光地
n.s.
n.s.
図7 2011年8月時点のA観光地とB観光地における 種数(誤差棒は標準誤差を示す)
0 0.4 0.8 1.2 1.6 2 2.4
利用区 非利用区 利用区 非利用区
多様性指数H'
A観光地 B観光地
n.s. df=8
t=-2.65 p<0.05
図8 2011年8月時点のA観光地とB観光地における 多様性指数H'(誤差棒は標準誤差を示す)
3.3 優占種とその草丈および株数
A観光地及びB観光地の潜在的な植生群落はL.
chinensis-S. baicalensis群落(いずれも優良牧 草)とされるが(烏仁其其格,私信),優占種判定 法によって,A観光地と B観光地の非利用区では C. duriuscula(ノヤマスゲ:退化の指標植生)-L.
chinensis群落が優占し,A観光地とB観光地の利 用 区 で は ほ ぼ 退 化 の 指 標 植 物 で あ る C.
duriuscula のみが優占することが明らかになっ
た(表 3).元々の優占種であった L. chinensis およびS. baicalensisは多年生イネ科植物であり,
アルカリ土壌の乾燥草原やレキ質の斜面にも生育 できる草種である(植物通,2011).この2種は栄 養価と家畜の嗜好性が高く,放牧圧の低い場所で 優占する(植物通,2011).一方C. duriusculaは 多年生カヤツリグサ科の塩生植物で,優良牧草で はあるものの,道脇,砂地や乾燥している場所を 好む.また,土壌が塩類化している場合には相対 的に株数が増加し,さらに塩類化が進行した場合 には群落の第1位優占種になるとされ,草原退化 利用区 非利用区 利用区 非利用区
カヤツリグサ イネ イネ イネ
キク カヤツリグサ カヤツリグサ アカザ
イネ ユリ ユリ カヤツリグサ
オオバコ キク キク セリ
アブラナ セリ キキョウ アヤメ
タデ アカザ セリ キク
ユリ バラ タデ アブラナ
マメ キンポウゲ ユリ
キキョウ キク
マメ マメ
アブラナ
A観光地 B観光地
A観光地 B観光地 Carex duriuscula Carex duriuscula Leymus chinensis Leymus chinensis Stipa baicalensis Stipa baicalensis Plantago asiatica Cleistogenes squarrosa Taraxacum asiaticum
Lepidium apetalum
Carex duriuscula Carex duriuscula Leymus chinensis Leymus chinensis Stipa baicalensis Stipa baicalensis Cleistogenes squarrosa Cleistogenes squarrosa 非利用区
利用区
の指標植物として知られている(李,1995).草原 退化の進行に伴う種組成の変化については,草原 間での原植生フロラの違いが反映されるものの,
優占種は多年生イネ科中心→イネ科以外の多年草
→一年草中心と移っていく共通性が見られる(伊
藤ほか,2006).よって,両観光地の利用区では植
生の劣化が進行しており,同時に土壌の塩類化も 進んでいると考えられる.
い ず れ の 観 光 地 で も , 優 占 種 で あ る L.
chinensis,S. baicalensis,C. duriusculaの草 丈は,利用区で非利用区に比べ有意差に低かった
(図9,図10,図11).L. chinensisについては,
A観光地では利用区の平均草丈が非利用区の10%
であった(写真1は利用区で平均草丈が 2.9cm,
写真 2 は非利用区で平均草丈が 32.3cm).一方 B 観光地では,利用区の平均草丈は非利用区の36%
であった.また,S. baicalensis についても,A 観光地で利用区の平均草丈が非利用区の 10%で あったのに対して,B観光地では32%であった.
さらに, C. duriusculaでも同様の傾向が見られ,
A観光地では利用区の平均草丈が非利用区の20%
であったのに対して,B 観光地では利用区の平均 草丈が非利用区の56%であった.以上のことから,
どの優占種においても利用圧が高いほど草丈が低 下していた.なお,C. duriuscula の草丈は L.
chinensisやS. baicalensisの半分程度であった が,これはL. chinensisやS. baicalensisは良 好 な 生 態 環 境 で 優 占 し て い た の に 対 し て ,C.
duriusculaは道脇,砂地や乾燥地などの過酷な生
態環境で優占したためだと考えられる.
L. chinensisおよびS. baicalensis の株数に ついては,両観光地の利用区と非利用区の間に有 意差は見られなかったが,退化の指標植物である C. duriuscula の株数については,両観光地の利 用区で非利用区より有意に多かった(図12,図13,
図 14).C. duriuscula の株数は利用圧の高い A 観光地の利用区が最も多いと予測されたが,実際 にはB 観光地の利用区が最も多かった.B 観光地 では観光地化に伴い周囲に柵が設けられたことで 放牧圧が減少し,また今のところ観光に関わる利 用圧も低いため,現在植生が回復の途上にあると 考えられる.従って,C. duriuscula の株数が B 観光地の利用区で最も多かったのは,そこが放牧 地であった際に,植生の劣化に伴い現在のA観光 地の利用区以上にC. duriusculaが侵入したため だと考えられる.退化の指標植物は,一度その場
所に侵入すると,簡単には減少しないと考えられ る.
表3 各観光地における反復ごとの優占種
0 5 10 15 20 25 30 35
利用区 非利用区 利用区 非利用区
草丈(cm)
A観光地
L.chinensis
B観光地
df=144 w=4p<0.001
df=127 t=-21.72 p<0.001
図9 2011年8月時点のA観光地とB観光地における L. chinensisの草丈(誤差棒は標準誤差を示す)
0 5 10 15 20 25 30 35 40 45
利用区 非利用区 利用区 非利用区
草丈(cm)
A観光地
S.baicalensis
B観光地
df=76 t=-18.20 p<0.001
df=87 t=-14.86 p<0.001
反復 利用区 非利用区 利用区 非利用区
1 Carex duriuscula
Carex duriuscula Leymus chinensis
Carex duriuscula Leymus chinensis
Carex duriuscula
Carex duriuscula
Carex duriuscula Leymus chinensis
Carex duriuscula
Carex duriuscula Cleistogenes
squarrosa
3 Carex duriuscula
Leymus chinensis Carex duriuscula
Carex duriuscula
Carex duriuscula Leymus chinensis
4 Carex duriuscula
Carex duriuscula Leymus chinensis
Carex duriuscula
Carex duriuscula Leymus chinensis
5 Carex duriuscula
Carex duriuscula
Carex duriuscula
Carex duriuscula Leymus chinensis
A観光地 B観光地
2 が利用する車によって,当地に持ち込まれた可能
性が高いと考えられる.
李(1995)によれば,過放牧による草原退化の 指標植物は,Artemisia frigida Willd.(冷蒿),
Potentilla acaulisL.(和名なし),C. duriuscula であるが,利用圧が高いA観光地の利用区では,
C. duriusculaとともに,普段道路の両脇に現れ,
踏みつけに強い P. asiatica,P. aviculare,L.
apetalum,T. asiaticumの侵入が見られた.この ことは,観光活動が引き起こす種組成の変化は過 放牧のそれとは異なっていることを示す.観光利 用の増加に伴って,観光地の中に外来種が侵入し,
植生群落は元来の多年生イネ科牧草を中心とする 構成から,多年生イネ科以外の牧草と耐踏性の強 い草種置き換えられていると思われる.
各観光地の種数および多様性指数のt検定の結 果を図7,8に示した.種数については,いずれの 観光地でも利用区と非利用区の間に有意差は見ら れなかった.また,多様性指数については,いず れの観光地でも利用区で非利用区に比べて低い傾 向があったが,B観光地でのみ有意差が見られた.
植生の劣化に伴う多様性の変化は,種数のそれよ りも大きかった.これは,いずれの観光地の利用 区でもほぼC. duriusculaのみが優占し,非常に 高い相対優占度(コドラートで最大 97%)を示し たためである.
表1 各観光地で見られた植物科名
表2 各観光地で見られた主な草種
0 2 4 6 8 10 12
利用区 非利用区 利用区 非利用区
種数(種)
A観光地 B観光地
n.s.
n.s.
図7 2011年8月時点のA観光地とB観光地における 種数(誤差棒は標準誤差を示す)
0 0.4 0.8 1.2 1.6 2 2.4
利用区 非利用区 利用区 非利用区
多様性指数H'
A観光地 B観光地
n.s. df=8
t=-2.65 p<0.05
図8 2011年8月時点のA観光地とB観光地における 多様性指数H'(誤差棒は標準誤差を示す)
3.3 優占種とその草丈および株数
A観光地及びB観光地の潜在的な植生群落はL.
chinensis-S. baicalensis群落(いずれも優良牧 草)とされるが(烏仁其其格,私信),優占種判定 法によって,A観光地と B観光地の非利用区では C. duriuscula(ノヤマスゲ:退化の指標植生)-L.
chinensis群落が優占し,A観光地とB観光地の利 用 区 で は ほ ぼ 退 化 の 指 標 植 物 で あ る C.
duriuscula のみが優占することが明らかになっ
た(表 3).元々の優占種であった L. chinensis およびS. baicalensisは多年生イネ科植物であり,
アルカリ土壌の乾燥草原やレキ質の斜面にも生育 できる草種である(植物通,2011).この2種は栄 養価と家畜の嗜好性が高く,放牧圧の低い場所で 優占する(植物通,2011).一方C. duriusculaは 多年生カヤツリグサ科の塩生植物で,優良牧草で はあるものの,道脇,砂地や乾燥している場所を 好む.また,土壌が塩類化している場合には相対 的に株数が増加し,さらに塩類化が進行した場合 には群落の第1位優占種になるとされ,草原退化 利用区 非利用区 利用区 非利用区
カヤツリグサ イネ イネ イネ
キク カヤツリグサ カヤツリグサ アカザ
イネ ユリ ユリ カヤツリグサ
オオバコ キク キク セリ
アブラナ セリ キキョウ アヤメ
タデ アカザ セリ キク
ユリ バラ タデ アブラナ
マメ キンポウゲ ユリ
キキョウ キク
マメ マメ
アブラナ
A観光地 B観光地
A観光地 B観光地 Carex duriuscula Carex duriuscula Leymus chinensis Leymus chinensis Stipa baicalensis Stipa baicalensis Plantago asiatica Cleistogenes squarrosa Taraxacum asiaticum
Lepidium apetalum
Carex duriuscula Carex duriuscula Leymus chinensis Leymus chinensis Stipa baicalensis Stipa baicalensis Cleistogenes squarrosa Cleistogenes squarrosa 非利用区
利用区
図10 2011年8月時点のA観光地とB観光地における S. baicalensis の草丈(誤差棒は標準誤差を示 す)
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
利用区 非利用区 利用区 非利用区
草丈(cm)
A観光地
C.duriuscula
B観光地
df=205 w=555.5 p<0.001
df=243 t=-17.18 p<0.001
図11 2011年8月時点のA観光地とB観光地における C. duriusculaの草丈(誤差棒は標準誤差を示す)
写真 1 A 観光地・利用区内の馬繋場における L.
chinensisの様子(2011年8月撮影)
写真 2 A 観光地・非利用区の L. chinensis の様子
(2011
年8月撮影)
0 20 40 60 80 100
利用区 非利用区 利用区 非利用区
株数(株)
A観光地
L.chinensis
B観光地
n.s.
n.s.
図12 2011年8月時点のA観光地とB観光地における L. chinensisの株数(誤差棒は標準誤差を示す)
0 5 10 15 20
利用区 非利用区 利用区 非利用区
株数(株)
A観光地
S.baicalensis
B観光地
n.s. n.s.
図13 2011年8月時点のA観光地とB観光地における S. baicalensis の株数(誤差棒は標準誤差を示 す)
0 100 200 300 400 500 600 700
利用区 非利用区 利用区 非利用区
株数(株)
A観光地
C.duriuscula
B観光地
df=7w=25 p<0.05
df=8t=3.42 p<0.01
図14 2011年8月時点のA観光地とB観光地における C. duriusculaの株数(誤差棒は標準誤差を示す)
Ⅳ. 結論
本研究では,いずれの観光地でも利用区で非利 用区に比べて植生の草丈,植被率,地上部バイオ マス量が有意に低いことが示された.また,最も 観光行動の影響を強く受けたのは植生の草丈であ った.種数および多様性指数については,場所に よっては有意差が見られなかった.以上のことか ら,観光に関わる利用圧の大小にかかわらず,観 光利用が草原退化を引き起こしていることが示さ れた.よって,今後草原退化の対策を考える上で は,観光活動についても考慮する必要があると考 えられる.また,観光利用による草原退化を評価 する際には,種数や多様性指数よりも草丈,植被 率,地上部バイオマス量,種組成が有効な指標に なることがわかった.この成果は,今後観光行動 による草原退化を評価する際に重要な情報を提供 するものである.
謝辞
本研究は科学研究費補助金(21405039,研究代表:小﨑 隆)の一部として行ったものである.本研究の実施に際 して貴重なアドバイスを下さった沼田真也准教授,矢部 直人助教授及び現地で植生調査を協力して頂いた烏仁 其其格教授と学生方々にこの場をお借りして感謝の意 を表します.
参考文献
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李永宏 1995. 内蒙古典型草原地帯の退化草原の回復状
態. 生物多様性3:125-130. (中国語) 図10 2011年8月時点のA観光地とB観光地における
S. baicalensis の草丈(誤差棒は標準誤差を示 す)
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
利用区 非利用区 利用区 非利用区
草丈(cm)
A観光地
C.duriuscula
B観光地
df=205 w=555.5 p<0.001
df=243 t=-17.18 p<0.001
図11 2011年8月時点のA観光地とB観光地における C. duriusculaの草丈(誤差棒は標準誤差を示す)
写真 1 A 観光地・利用区内の馬繋場における L.
chinensisの様子(2011年8月撮影)
写真 2 A 観光地・非利用区の L. chinensis の様子
(2011
年8月撮影)
0 20 40 60 80 100
利用区 非利用区 利用区 非利用区
株数(株)
A観光地
L.chinensis
B観光地
n.s.
n.s.
図12 2011年8月時点のA観光地とB観光地における L. chinensisの株数(誤差棒は標準誤差を示す)
0 5 10 15 20
利用区 非利用区 利用区 非利用区
株数(株)
A観光地
S.baicalensis
B観光地
n.s. n.s.
図13 2011年8月時点のA観光地とB観光地における S. baicalensis の株数(誤差棒は標準誤差を示 す)
0 100 200 300 400 500 600 700
利用区 非利用区 利用区 非利用区
株数(株)
A観光地
C.duriuscula
B観光地
df=7w=25 p<0.05
df=8t=3.42 p<0.01
図14 2011年8月時点のA観光地とB観光地における C. duriusculaの株数(誤差棒は標準誤差を示す)