賠償者代位 : 不真正連帯債務における求償との関 係を中心に
その他のタイトル Abtretung der Ersatzanspruche : Von dem Verhaltnis zu dem Regres in der unechten Gesamtschuld
著者 多治川 卓朗
雑誌名 關西大學法學論集
巻 45
号 1
ページ 120‑206
発行年 1995‑04‑30
URL http://hdl.handle.net/10112/00024619
関法
一 問 題 の 所 在 ニ ド イ ツ 法 の 状 況
1
概 観
2賠償者代位
( B
G B
二五 五条
︶ 曰 賠 償 者 代 位 の 趣 旨 口賠償者代位の適用範囲 曰 請 求 権 者 四物の喪失・権利の喪失
o o
代位の目的
因 法 律 効 果 田 法 律 上 の 請 求 権 移 転 (c es si ol e g is )
との関係
3連帯債務における求償との関係
日 通 説 的 理 解
m
ラレンツの見解② ラ イ ニ ッ ケ
/ テ ィ ー ド ゥ ケ の 見 解 口 反 対 説 ー ヴ ェ ル ネ ッ ケ の 見 解 三 日 本 法 の 状 況
1
概 観
2賠償者代位︵民法四二二条︶
曰 賠 償 者 代 位 の 趣 旨 口賠償者代位の適用範囲 曰 請 求 権 者 園物の喪失・権利の喪失 田 代 位 の 目 的 因 法 律 効 果
3不真正連帯債務における求償との関係
四 検 討
1
ドイツ民法からの示唆
多 治 川 卓 朗
ー 不 真 正 連 帯 債 務 に お け る 求 償 と の 関 係 を 中 心 に
1
賠 償 者 代 位
第 四 五 巻 第 一 号
︱ 二
0
( ︱
二
0 )
2学説の対立 曰 通 説 的 理 解 口 反 対 説 ー ヴ ェ ル ネ ッ ケ の 見 解 曰 両 説 の 相 違 四 批 判 と 再 批 判 3問題点の整理と検討 曰 批 判 と 再 批 判 に つ い て の 検 討
の物または権利及びこれに代わるものを法律上当然に取得する 損害賠償請求権への代位求償と賠償者代位の併存関係・行使上の択一関係一応のまとめ物が現存する場合の債務者間の調整その他の問題について賠償者代位の適用範囲
語
債務者は︑損害賠償として債権の目的である物または権利の価格の全部を支払った場合に︑債権者に代わって︑そ
( 1)
︵民法四二二条︶︒これを賠償者代位という︒たとえ
ば︑受寄者が寄託物を盗まれ︑寄託者にその損害を賠償した場合︑受寄者は寄託物の所有権を取得することになる︒
賠償者代位の趣旨は︑次のように説明されている︒債権者が損害賠償を受領したにもかかわらず︑物や権利をその
まま保持し続けるとすれば︑債権者に不当利得を生じる可能性がある︒たとえば︑受寄者による寄託物の喪失の事例
で︑寄託者に損害賠償がなされたのち失われた物が発見されたとすると︑寄託者が目的物の返還を受けたにもかかわ
らず賠償金を保持し続けることは許されない︒ここでは︑債権者は受領した賠償金を不当利得として返還する義務を
負担する︒しかし︑債権者︵利得債務者︶が不当利得返還義務を負担する場合において︑仮に債権者が無資力に陥っ
ていたときには︑債務者︵利得債権者︶
で︑この不当利得返還請求権を保全するために︑直接かつ当然に債務者︵利得債権者︶に物または権利を取得させる
賠 償 者 代 位
問 題 の 所 在
は現実に賠償金の返還を受けえないという不利益を被るおそれがある︒そこ
五
結 ( 廿 伏 ) 田 回 曰 に )
( ︱
ニ ︱
)
三
( ︱
二 二
︶
︵代位権者︶と代位の目的の
2
点に着目して整理してみる︒賠償義務者については︑次のように解されている︒通説は︑賠償義務者が債務不履行に基づく損害賠償義務を負担する場合だけでなく︑不法行為に基づく損害賠償義務を負
(3 )
担する場合にも賠償者代位が類推適用されるとする︒判例は︑使用者が労働基準法上の補償義務を負担する場合にも︑
( 4)
賠償者代位が類推適用されるとする︒代位の目的については︑次のように解されている︒代位の目的の第一は︑所有
権その他の物権である︒この他︑通説は︑所有権に基づく返還請求権が不能となった場合の損害賠償請求権も含まれ
( 5)
ると解する︒更に︑賠償義務者の下で第三者の不法行為により目的物が毀損・滅失した場合にも︑賠償者代位の成立
( 6)
︵7
)
を認める見解が存する︒代位の目的の第二は︑債権である︒立法者は金銭債権を例として挙げ︑売買代金債権への賠
( 8)
︵9
)
償者代位を認めた下級審判例も存する︒更に︑判例は︑不当利得返還請求権への賠償者代位を肯定するほか︑賠償義
務者が使用者として労働基準法上の補償義務を負担する場合に賠償者代位の類推適用を認めた事案では︑死亡事故を
( 1 0 )
原因とする不法行為に基づく損害賠償請求権への代位を肯定する︒学説は︑手形の保管者が紛失した場合を例として
( 1 1 )
︵1 2 )
挙げる︒なお︑保険金請求権への賠償者代位は一般に否定されている︒
賠償者代位の適用を広く認める判例・学説の態度は︑以下の理由に基づくものと分析される︒周知のとおり︑以前
( 1 3 )
︵1 4 )
の通説は不真正連帯債務における求償を否定していた︒そこで︑この求償制度の不備を補完するために︑賠償者代位
( 1 5 )
を求償の根拠として援用すべきとの学説が提唱され︑通説化した︒この立場では︑賠償者代位の本来の射程とは別に︑
極めて広範に︑いわば不真正連帯債務における求償の一般規定として賠償者代位の適用を認めることになる︒このよ ところで︑わが民法における賠償者代位の適用範囲は︑
第四五巻第一号
( 2)必要がある︑とされる︒
関法
一般に極めて広く解されている︒これにつき︑賠償義務者
うな学説の方向性が︑事案の必要性に応じて判例の態度に影響を与えてきたものと考えられる︒
( 1 6 )
他方︑現在の判例・通説は︑不真正連帯債務における求償を肯定する︒この立場では︑不真正連帯債務につき一般
に賠償者代位を援用することは必要ではないし︑むしろ︑賠償者代位と求償の射程がそれぞれ重複することになるた
め︑賠償者代位と求償との関係があらためて問われることになる︒学説が賠償者代位の援用を提唱する際に指摘して
( 1 7 )
いたとおり︑本来︑不真正連帯債務者相互の調整は︑求償やそれに類する制度により処理されるべき問題であった︒
このような観点からすれば︑不真正連帯債務における求償が肯定されるに至った現在では︑賠償者代位の適用を広く
認める判例・通説の立場は修正されうるのではないかと疑われる︒実際︑賠償者代位に対する近時の学説の態度は微
( 1 8 )
妙である︒このような学説の経緯からすれば︑賠償者代位を不真正連帯債務における求償との関係で検討することに
それでは︑賠償者代位と求償とはどのような関係にあるのか︑また︑賠償者代位の適用はどの範囲に制限されるの
か︒この問題を解明するに際して︑以下の理由から︑ドイツ民法での議論がきわめて参考になると思われる︒
第一に︑わが民法における賠償者代位︵民法四二二条︶の母法がドイツ民法
(B GB
二五五条︶であるという点で
( 1 9 )
ある︒すなわち︑賠償者代位という制度は︑ローマ法に沿革を有し︑マクシミリアンのバイエルン法典︑プロイセン
一般ラント法︑オーストリア一般民法典が採用した︒これらを受継したドイツ民法は︑賠償者代位をより一般的な形
で規定し︑その際︑代位の目的として所有権のほか所有権に基づく損害賠償請求権を包含することを解釈上認めてい
る︒わが民法は︑基本的にはドイツ民法の規定を承継しつつ︑更に一般化した形で規定している︒
第二に︑ドイツ民法においても︑賠償者代位の適用範囲は︑連帯債務における求償との関係において議論されてい
賠 償 者 代 位
は︑なお意味があるように思われる︒
~ (
︱ 二
三 ︶
債務者間の調整とが絡み合った複雑な問題であるといえる︒
︵︱
二四
︶ 関法第四五巻第一号
( 2 0 )
るとの点である︒ここでは︑連帯債務がどの範囲で成立するかとの問題と︑賠償者代位が債務者間の調整を目的とす
る制度であるかどうかとの問題とに関連して︑通説的理解と反対説とが主張されている︒この学説の対立は︑賠償者
代位の趣旨または求償との関係をどのように解するかに深く関わるものであるが︑これは債権者の二重満足の阻止と
本稿では︑賠償者代位の適用範囲につき︑不真正連帯債務における求償との関係に着目して︑ドイツ民法における
議論を概観したうえで︑わが民法の解釈論について検討することにする︒
( 1
)
於保
不二
雄﹃
債権
総論
︵新
版︶
﹄︵
有斐
閣・
一九
七二
年︶
一五
六頁
︒
( 2
)
能見善久﹁民法四二二条﹂﹃奥田編・注釈民法皿債権m
﹄︵
有斐
閣・
一九
八七
年︶
七一
七頁
︒
( 3
)
加藤一郎﹃不法行為︵増補版︶﹄︵有斐閣・一九七四年︶二六三頁i澤井裕﹃テキストプック債権総論︵補訂版︶﹄︵有斐
閣・
一九
八五
年︶
五五
頁︒
( 4
)
最判昭和三六年一月二四日民集一五巻一号三五頁︒
( 5
)
我妻
栄﹃
新訂
債権
総論
﹄︵
岩波
書店
・一
九六
四年
︶一
四八
頁以
下︒
( 6 )
能見・前掲注
( 2
)
七一九
頁︒
( 7
)
民法
議事
速記
録一
八巻
︱︱
四丁
︵穂
積発
言︶
︒
( 8
)
東京地判大正二年九月二十五日評論二商二九二頁︵原典が入手できなかったため︑能見・前出注
( 2
)
七二三
頁に
よる
︶︒
(9
)
大判昭和十四年︱二月二三日民集一八巻一六三
0
頁 ︒
( 1 0 )
前掲
注
( 4
)
参照︒
(11)我妻•前掲注(5)一四九頁。(12)於保•前掲注(1)一五七頁以下。
( 1 3 )
不真正連帯債務の定義につき︑﹁数人の債務者が同一内容の給付について各自独立して全部を給付する義務を負い︵全部
給付義務︶︑債務者のうちの一人が弁済をすれば全部の債務者が債務を免れる︵給付の一倍額性︶という点で連帯債務と同
︱二
四
賠 償 者 代 位
︱ 二
五
様であるが︑法定の連帯債務に属しないものである︒そして︑連帯債務との相違点は︑①債務者の一人に生じた事由でも目
的到達事由︵弁済およぴ弁済と同視される代物弁済および供託︶以外他の債務者にその効力を及ぽさないこと︑②債務者間
においては求償関係をその当然の内容としないこと﹂とされる︒不真正連帯債務に関する近時の論文として︑尾崎三芳﹁不
真正連帯債務および異主体の請求権競合という観念は︑どのように評価すべきか﹂椿寿夫編﹃講座・現代契約と現代債権の
展望︵第 2 巻︶債権総論②﹄︵日本評論社・一九九一年︶一九 0
頁 ︒
また︑不真正連帯債務は︑主として︑同一の損害を数人がそれぞれ独自の立場で填補すべき義務を負担する場合に生じる
と理解されている︒具体的には︑他人の家屋を焼いた者の不法行為に基づく賠償義務と火災保険会社の契約上の填補義務︑
受寄物を不注意で盗まれた受寄者の債務不履行に基づく賠償義務と窃取者の不法行為に基づく賠償義務︑法人の賠償義務
︵民法四四条一項︶と理事その他の代表者の賠償義務︵民法七 0 九条︶︑被用者の加害行為についての被用者自身の賠償義
務︵民法七 0 九条︶と使用者または監督者の賠償義務︵民法七一五条︶︑責任無能力者の加害行為についての法定監督義務
者の賠償義務と代監督者の賠償義務︵民法七一四条︶︑被用者の加害行為についての使用者の賠償義務と監督者の賠償義務
︵民法七一五条︶︑動物の加害行為についての占有者の賠償義務と保管者の賠償義務︵民法七一八条︶などが挙げられてい
る︒たとえば︑奥田昌道﹃債権総論
m﹄ ︵ 筑 摩 書 房 ・ 一 九 八 七 年 ︶ 三 七 二 頁 ︒
受寄物を不注意で盗まれた受寄者の債務不履行に基づく賠償義務と︑窃取者の所有権に基づく返還義務とがどのような関
係に立つかについては︑必ずしも明らかではない︒伝統的理解では︑債権者が所有権を喪失していないことが賠償額の算定
に影響を与えないという意味で、両請求権の併存を肯定する(たとえば、能見•前掲注(2)七一七頁)。また、債権者が損害賠償金を受領しながら物の返還を受けることは許されないが︵二重満足の阻止︶︑債権者は損害賠償金の受領により所有
権を喪失することはないという意味で弁済の絶対効は認められない︑とする︒異主体の請求権競合と不真正連帯債務との関
係については︑尾崎・前掲注
( 1 3 )
二 0 七 頁 以 下 が 詳 し い ︒
本稿では︑便宜上︑真正の連帯債務の成立が認められない事例を︑従来の呼称に従って不真正連帯債務と呼んでおくこと
に す
る ︒
( 1 4 )
我妻・前掲注
( 5
) 四
四 四
頁 ︒
( 1 5 )
於保・前掲注
( 1
)
一 五 六 頁 以 下 ︑ 二 四 九 頁 以 下 ︒
( ︱
二 五
︶
(A BG B§ 98 0)
最初に︑ドイツ民法の状況につき概観しておく︒ 1
概 観
( 1 6 )
最判昭和四一年︱一月一八日民集二 0 巻九号一八八六頁五林・石田・高木﹃債権総論︵改訂版︶﹄︵青林書院新社・一九八
二年︶三八五頁
i奥田・前掲注
( 1 3 )
三 七
五 頁
︒
(17)於保•前掲注(1)一五八頁。
( 1 8 )
浜上則雄﹃現代共同不法行為の研究﹄︵信山社・一九九三年︶ニ︱一頁以下︒
( 1 9 )
Wa lt er Se i b , E nt st eh nu ng sg es ch ic ht e u nd Tra gw ei te de s§ 25 5 B GB , F es ts ch ri ft fi i r L ar en z I,
19 73 , S .5 17 ; H or st He in ri ch Ja ko bs n u d W er ne r S ch ub er t, D ie Be ra tu ng e d s B ii rg er li ch en Ge se tz bu ch s, e R ch t d er Sc hu ld ve rh al tn is se I,
19 78 , S .1 18
;
: i 1 ; l l
見•前掲注(2)七一八頁。
( 2 0 )
La re nz , S ch ul dr ec ht AT ., 4 1 Au fl . 1 98 7, S. 55 7
ド イ ツ 法 の 状 況 賠償者代位という制度を沿革的に見ると︑もともとは他人の所有物を喪失した者が賠償責任を負担する事例の事後
処理の問題であった︒すなわち︑ ディゲスタ
(D 42 , 1 , 12 )
では寄託物または貸借目的物の喪失の事例︑
ァンのバイエルン法典
(C od ex Ma xi mi li an eu s B av ar ic us Ci vi li
s v
on
7 5 6 1
,
N ,
I I ,
§5 )
プ ロ イ セ ン 一 般 ラ ン ト 法
(P re u. Be n, ALR
I ,
21
§2 54 )
関 法 第 四 五 巻 第 一 号
では貸借目的物の喪失の事例︑
では貸借目的物の喪失の事例︑
オーストリア一般民法典 では使用貸借の目的物の喪失の事例︑ドイツ民法の前草案
(V or en tw ii rf e§ 19 2) ( 1)
失の事例が挙げられている︒ここで注目されるのは︑ドイツ民法の前草案
(V or en tw ii rf e§ 19 2)
︱ 二
六
では物の占有の喪 では︑賠償者代位
の規定が物権編に置かれていたことである︒その後︑この規定は債権編に移され︑内容の修正を経て︑ドイツ民法二
( ︱
二 六
︶
マクシミリ
︱二 七
( 2)
五五条として成立する︒
( 3)
ドイツ民法における賠償者代位は︑債務法に適合するように内容が一般化され︑他人の所有物の喪失についてだけ
ではなく︑他人の権利の喪失についても賠償者代位が適用されること︑他人の所有物それ自体だけではなく︑その所
有権に基づく損害賠償請求権への代位を解釈上肯定すること︑代位の方法が債務者からの引替給付請求である点に特
( 4)
徴が存する︒ただし︑賠償者代位の適用範囲につき︑その本来の適用事例である物の喪失について見ると︑沿革に忠
実に解されていることが解る︒すなわち︑賠償者代位は︑物の占有を喪失した者が賠償義務を負担する事例について
のみ適用があるのであって︑債務者が物の毀損・滅失について賠償義務を負担する事例については適用がない︒この
場合には︑狭義の共同不法行為の事例と同様に︑債務者と毀損・滅失に加担した第三者との間で連帯債務に関する規
定が適用または類推適用され︑求償または弁済による代位が認められるとされている
(B GB
八四0条類推適用︑同
( 5)
四二六条一項︑同二五四条類推適用︶︒
さて︑ドイツ民法では︑賠償者代位の適用範囲は︑連帯債務における求償との関係において議論されている︒テキ
( 6)
ストの記述を見ても︑賠償者代位の適用範囲の問題は︑連帯債務の部分に詳細に記述されている︒この賠償者代位の
適用範囲の問題は︑連帯債務の成立範囲の問題と関連して複雑な構造をしているが︑次の二つの観点から整理するこ
とが
でき
る︒
第一は︑連帯債務がどの範囲で成立するかとの問題である︒現在︑ドイツ民法の通説的理解では︑賠償者代位の適
(7 )
用範囲は︑連帯債務成立の限界または連帯債務規定類推適用の限界の問題として認識されている︒というのは︑ドイ
ツ民法の解釈論では︑連帯債務規定の適用を広範に認めるために︑逆に︑連帯債務規定が適用されない例外事例とし
賠 償 者 代 位
(︱
二七
︶
第四五巻第一号
︵ ︱
二 八
︶
て何が存するかとの問題が主たる関心事になるからである︒この例外事例として︑保険代位または国家・会社などの 補償義務に基づく代位と︑賠償者代位とが挙げられている︒したがって︑賠償者代位の適用範囲は︑連帯債務成立の 第二は︑賠償者代位が債務者間の調整を目的とする規定であるかどうかとの問題である︒沿革的に見れば︑賠償者代位は︑他人の所有物を喪失した者が賠償責任を負担する事例の事後処理の問題であった︒したがって︑賠償者代位 は︑債務者間の調整を目的とする求償とは別次元の問題であったといえる︒しかし︑この点について︑学説上まさに 争われている︒通説的理解はこれを肯定するので︑賠償者代位を債務者間の調整を目的とする求償と同次元の問題で
( 8)
︵9
)
あると把握する︒他方︑反対説はこれを否定する︒そして︑賠償者代位の適用範囲を沿革に忠実に解して︑賠償者代 位が債務者間の調整を目的とするものではなく︑他人の所有物の割り当ての問題にのみ賠償者代位の適用を認める︒
この理解では︑賠償者代位と求償とは別次元の問題であることになる︒
この第一•第二の問題は、相互に関連している。つまり、通説的理解は、賠償者代位が債務者間の調整を目的とす る規定であると解した上で︑連帯債務における求償の適用と賠償者代位の適用とが同次元の対立する関係にあると把 握する︒そこで︑この両者の区別が問題となるが︑これは内部関係における第三者と債務者との損害の負担割合によ り区別されるという︒すなわち︑賠償者代位は︑内部関係において一方の債務者と他方の債務者とがそれぞれ
1:0 の割合で損害を負担しあう関係での調整であり︑求償は︑内部関係において一方の債務者と他方の債務者とがそれぞ
( 1 0 )
れ幾らかずつの割合で損害を負担しあう関係での調整であるという︒これに対して︑反対説は︑賠償者代位が債務者
間の調整を目的とする規定であるとは解していないので︑賠償者代位の適用範囲を連帯債務成立の限界との関係で把 限界との関係で把握されるべき問題であることになる︒
関法
︱ 二
八
︱二 九
( 1 1 )
握すべき問題とは認識していない︒そして︑賠償者代位は︑物が現存する場合にのみ適用があるという︒
この両説の相違は︑賠償者代位の適用範囲︑債務者それぞれの損害の負担割合︑損害賠償請求権への代位の法律構
成につき︑具体的にあらわれる︒たとえば︑賠償者代位の適用範囲について︑占有喪失の後︑当該物が第三者の下で
毀損・滅失したか他人によって所有権取得されたことにより損害賠償請求権が生じた場合︵たとえばBGB八二三
条︶︑通説的理解ではこの損害賠償請求権への賠償者代位を肯定するのに対して︑反対説では求償または弁済による
以下︑賠償者代位に関して通説的理解をあらかじめ概観し︑その後︑連帯債務における求償との関係につき︑通説
( 1 2 )
︵1 3 )
的理解としてラレンツの学説・ライニッケ/ティードゥケの学説を挙げたうえで︑最後に︑反対説として︑これら通
( 1 4 )
説的理解に対して詳細な反論を提起しているヴェルネッケの見解を見ることにする︒
賠償者代位
(B GB
二五
五条
︶
賠償者代位の趣旨
物の喪失または権利の喪失のために損害賠償を給付しなければならない者は︑BGB二五五条に基づいて︑物の所
有権または権利に基づいて賠償権利者に帰属する第三者に対する請求権の譲渡と引換えにのみ︑賠償を義務づけられ
( l s )
る︒これを賠償者代位という︒たとえば︑貸主Aが借主Bへ書籍を貸したところ︑この書籍がBの過失により窃盗犯
Cに盗取された事例を想定する︒この場合︑AはBに対して損害賠償を請求しうるが︑これに対して︑B
は ︑
A
の請
( 1 6 )
求と引換えにまたは事後的に︑BGB九八五条以下に基づくAのCに対する請求権の譲渡を請求しうる︑とされる︒ 2
(
一)
賠 償 者 代 位
代位が認められるという︒
︵︱
二九
︶
第四五巻第一号
一三
〇
︵ 一
三
0 )
賠償者代位の趣旨は︑以下の二点にあるとされる︒第一は︑債権者が二重に満足を受けることを阻止するとの点で
( 1 7 )
ある︒上述の例で言えば︑貸主Aが書籍の所有権を喪失していないことは︑A
の借
主
Bに対する損害賠償請求におけ
る損害の算定に影響を与えない︒しかしながら︑AはBから損害賠償金を受領しながら︑物の所有権を保持し続ける
( 18 )
ことは許されない︒この場合︑AはBに対して︑書籍の所有権を譲渡する義務を負担しなければならない︑とされる︒
( 1 9 )
第二は︑債務者相互間の調整を行なうとの点である︒上述の事例では︑窃盗犯CがAに対して負担する書籍の返還義
務と
︑
BがAに対して負担する書籍の返還不能に基づく損害賠償義務とが併存している︒しかしながら︑A
の被
った
書籍の喪失という損害は︑本来はCが負担︵書籍の返還または損害賠償︶すべきものである︒この意味で︑B
がそ
の
義務を履行した場合には︑このBの履行はCのための﹁立替え払い﹂と評価できる︒したがって︑BはCに対して調
( 2 0 )
整︵書籍の返還または損害賠償︶を請求できる︑とされる︒
賠償者代位の適用範囲
BGB二五五条は︑第三者が︑損害により近い地位にあることを理由に︑最終的に単独で損害を負担すべきことを
前提とする︒このことは︑連帯債務の成立要件としての﹁同一段階性﹂と矛盾する︒というのは︑同一段階性が存す
( 2 1 )
る場合には︑債務者の内部関係における損害の分配について︑BGB二五四条が類推適用されうるからである︒この
意味で︑通説は︑賠償者代位
(B GB
二五五条︶と連帯債務における求償
(B GB
四二六条︶とを︑二者択一の互い
に排斥しあう求償手段であると位置付けている︒これに対して︑判例は︑加害者と第三者との間に真正の連帯債務関
係が存在する場合︑賠償者代位と求償とが競合することを前提に︑BGB二五五条が適用されるのではなくて︑
B G
( 2 2 )
B四二六条二項が特別規定として優先して適用されるとする︒
に
) 関法
曰 請 求 権 者
更に︑連帯債務の概念に関する争いにかかわらず︑同一の損害に関して責任を負担すべき複数の者は︑BGB
八 ︱ ︱
︱
( 2 3 )
0条︑同八四0条が適用されない場合にもまた︑原則として連帯債務者として責任を負担すると理解されている︒こ
こで
も︑
BGB二五五条の適用範囲は極めて限定される︒BGB二五五条の適用範囲として︑給付の同一性を欠く事
例が挙げられる︒具体的には︑賠償義務者が損害賠償を義務づけられて︑第三者が返還を義務づけられる場合に︑B
( 2 4 )
G
B二五五条は適用されると解されている︒BGB二五五条は︑第三者の返還義務が損害賠償義務または価値賠償義
( 2 5 )
務に転換した場合にもまた適用される︑とされる︒
以上の見解に対しては︑賠償者代位は︑物が現存して第三者が所有権に基づく返還義務を負担する場合にのみ適用
( 2 6 )
されるとの反対説も存する︒
賠償者代位は︑損害賠償義務を負担する全ての者にその行使が認められる︒損害賠償義務が︑契約・不法行為・危
︵ 刀︶
険責任
(G ef ii hr du ng sh af tu ng )
またはその他の法律上の原因など︑どのような根拠に基づいているかは問われない︒
賠償義務者の過責の程度もまた問題ではない︒故意による行為者も︑債権者︵被害者︶に帰属する第三者に対する請
求権の譲渡を請求することができる︒しかし︑窃盗犯が物を第三者に転売した場合に︑その後︑窃盗犯が所有者に対
して損害賠償を給付したとしても︑窃盗犯は所有者に対して︑所有者に帰属する第三者︵窃盗犯からの買主︶に対す
る請求権の譲渡を請求することができない︒というのは︑すでに第三者︵買主︶は窃盗犯︵売主︶に対して対価を支
( 2 8 )
払っているのであるから︑更に物.の返還を請求されるべきではないからである︒
BGB二五五条は求償に関する一般規定ではないが︑明示の求償規定を欠く限りにおいて︑この欠鋏を補充するた
賠 償 者 代 位
三
(
︱ 1
1
二 ︶
三
︵一
三二
︶
関法第四五巻第一号
( 2 9 )
めに引用される︒判例は︑
B G
B
六一六条二項に基づいて雇主が賃金継続支払義務を負担する事案において︑法律上の請求権移転が生じない場合︑
B G
B
二五五条に基づいて︑労働者に第三者に対する損害賠償請求権を雇主に譲渡す( 3 0 )
べき義務を認める︒また︑
S t
r E
G (
G e
s e
t z
i i b e
d i r
e E n
t s c h
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g u n g
f i i r
S t r a
f v e r
f o l g
u n g s
m a . B
n a h m
e n ;
公訴処分に
関する補償に関する法律︶七条に基づいて︑補償権利者に完全に一致する
( 3 1 )
求権が帰属するとする︒
物の喪失・権利の喪失
物の喪失または権利の喪失に関して︑以下のように理解されている︒物の喪失とは︑物が滅失したか所有者が物の
( 3 2 )
占有または所有権を侵奪される場合をいう︒この場合︑物が滅失したか所有権が他人に移転されたかは問われない︒
( 3 3 )
権利の喪失とは︑物権的請求権であれ債権的請求権であれ︑請求権が効力を失うか債権者から侵奪される場合をいう︒
権利が消滅したことは必要ではない︒消滅時効など︑期間満了により抗弁の主張を受ける場合でもよい︒判例は︑小
( 3 4 )
切手の取り立ての放置の事案に関して︑権利の喪失を認める︒物の喪失または権利の喪失は︑単なる価値低下におい
( 3 5 )
ても存する︒それゆえ︑物が毀損された場合や金銭請求権における債務者の支払不能の場合も含まれる︒
代位の目的物
物の所有権に基づいてまたは権利に基づいて被害者に帰属するすべての請求権が︑譲渡の目的となる︒これには︑
すべての引渡請求権
( B G B
八六一条︑同九八五条︑同一
0
七0
条︶
︑ま
たは
︑
B G
B
八二三条一項や同九八九条︑同九九0条に基づく損害賠償請求権が含まれる︒判例はさらに︑利得請求権が物の所有権に基づく限りにおいて︑当
( 3 6 )
該利得請求権︵まず第一に
B G
B
八一六条一項に基づく請求権︶も引渡されるべきことを承認する︒これに対して︑伍) 園
( k o n
g r u e
n t e )
第三者に対する損害賠償請
囮法律上の請求権移転
(c es si ol e g is )
との関係
( 3 8 )
なお︑保険金請求権など物に関する特別な契約に基づいて生じる請求権は引渡されるべきではないとされる︒
第三者に対する請求権は︑法律上当然には賠償義務者へ移転しない︒債権者からの損害賠償請求に対して︑賠償義
( 3 9 )
務者は︑引換えにまたは事後的に︑第三者に対する請求権の譲渡を請求しうる︒賠償義務者は︑債権者の請求に対し
( 4 0 )
て︑留置権
(B GB
二七三条︶を行使しうる︒第三者に対する請求権が被害者に帰属するかどうか︑どのような請求
( 4 1 )
権が帰属するかどうかについて︑証明は必要ではない︒請求権が存在しえて︑特定して指示されることで足りる︒
所有権に基づく返還請求権
(B GB
九八五条︶の譲渡により︑賠償義務者はBGB九二九条︑同九三一条に基づい
( 4 2 )
︵4 3 )
て即時に所有権を取得するのか︑所有権はなお債権者の下に留まるのかにつき︑争いが存する︒前者の見解では︑債
権者が物を後に再受領した場合︑賠償義務者はBGB九八五条に基づいて物の返還を請求しうる︒他方で︑賠償義務
者はすでに給付した損害賠償金の返還を請求する権利を有しない︒すでに給付された損害賠償は有効であって︑賠償
給付は債務を消滅させたのであるから︑BGB八1二条一項二文の要件を充足しない︒BGB二五五条に基づく請求
権を行使することなく賠償義務者が損害賠償を給付していた場合にも︑賠償義務者は物の再発見の後にBGB
二五
五
条︑同九二九条︑同九八五条に基づいて︑物の返還を請求することができるのみである︒物︵または全体の一部︶に
関して特別の利益を有しうる債権者には︑物を再受領しうるための選択権が認められる︒すなわち︑債権者は︑賠償
( 4 4 )
給付の返還と引換えに︑物の返還または所有権返還を請求しうるとされる︒
賠 償 者 代 位
因 法 律 効 果
( 3 7 )
代償は代位の目的とはならないとの反対説も存する︒
`
︵一三三︶3
連帯債務における求償との関係第四五巻第一号
法律上の請求権移転
(v
>G
六七
条︑
SG Bx
‑
︱六
条︑
LFNG
四条
︑
BBG八七条
a )
に関する規定もまた︑
( 4 5 )
BGB二五五条の特別規定として優先して適用される︒
BGB二五五条の事例と法律上の請求権移転
(c es si o l eg i s )
一 三
四
︵ ︱ ‑ ︱
‑ 四 ︶
の事例は︑以下の共通の考慮を基礎としている︒第一
に︑債権者は給付を二重に受領すべきではない︒第二に︑二人の賠償義務者のうち一方が他方の賠償義務者よりも損
害に対してより近くに存するため︑債権者に帰属する他方の賠償義務者に対して向けられている請求権を︑
( 4 6 )
償義務者が享受すべき地位にある︒
BGB二五五条の事例と法律上の請求権移転
(c es si ol e g is )
の事例とは︑法的効果において区別される︒後者では
請求権が直ちに移転するのに対して︑前者では請求権の譲渡行為が必要である︒立法論として︑BGB二五五条の事
( 4 7 )
例においても請求権が法律に基づいて移転することが望まれるとされる︒
前述のとおり︑ドイツ民法の解釈論では︑賠償者代位の適用範囲は連帯債務における求償との関係において議論さ
れている︒判例は︑連帯債務の成立要件として目的共同
(Z we ck ge me i) ls ch af t)
を挙げ︑たとえば︑窃盗犯の損害賠
( 4 8 )
償義務と窃盗犯からの買主の不当利得返還義務とに連帯債務関係を認める︒そして︑連帯債務における求償と賠償者
( 4 9 )
︵5 0 )
代位とは適用範囲が重なりうるが︑その際︑前者が後者の特別規定として優先するという︒これに対して︑通説的理
解は︑連帯債務の成立要件として同一段階性
(G le ic hs tu fi gk ei t)
を挙げ︑賠償者代位が適用される事例は同一段階性
を欠き︑したがって︑連帯債務における求償と賠償者代位とは適用範囲が重ならないという︒そして︑賠償者代位が
関法
一方
の賠
二一条ー四二六条︶の適用は否定されるとする︒
(G le ic hs tu fi gk ei t)
( 5 1 )
求償に代わって債務者間の調整機能を負担するという︒連帯債務の成立要件または成立範囲については︑同一段階性
( 5 2 )
の要件に関連して学説に対立があるが︑ここでは︑連帯債務における求償との関係とに着目して︑
通説的理解と反対説につき︑それぞれ別々に見ていくことにする︒
通説的理解
従来の通説は︑連帯債務の成立要件として︑全部給付義務と給付の一倍額性
(B GB
四ニ
︱条
︶
務の絶対効から別の要件︵義務の同一段階性又妥舌
sh tu fi gk ei t)
を導き出して︑この三つの要件が備わっている範囲
( 5 3 )
に連帯債務の成立を絞って考える方向を採る︒これに対して︑現在の有力説は︑全部給付義務と給付の一倍額性があ
( 5 4 )
れば連帯債務が成立すると解している︒
すなわち︑従来の通説は︑連帯債務の成立範囲を狭く解する︒具体的には︑債権者の同一の給付利益の満足を目的
とする複数の義務が併存する場合であっても︑当初より︑義務者の一人が最終的な唯一の義務者であって︑他の義務
( 5 5 )
者は債権者の回収の危険・損失の危険を負担しているにすぎないと評価されるときには︑連帯債務は成立しないと主
( 5 6 )
張する︵義務の同一段階性ば斎
ic hs tu fi gk ei t)
︒この同一段階性を欠く事例では︑連帯債務に関する規定
(B GB
四
これに対して︑現在の有力説は︑債権者の同一の給付利益の満足を目的とする複数の義務が併存する場合︑特別規
定が存在するとき
(v
>G
六七
条︑
RVo一五四二条
11現行の
SG Bx
‑
︱六
条︑
BGB二五五条︑同二八一条︑同
八四三条四項︶︑または︑当該事例がこれら特別規定に該当すると評価されるときを除いて︑連帯債務に関する規定
( 5 7 )
の適用が認められるとする︒
賠 償 者 代 位
( 一 )
一三
五
のほかに︑連帯債
︵一
三五
︶
第四五巻第一号 この両説の違いは︑同一段階性を欠きつつ︑特別規定が存在しない場合の処理方法に現われる︒ただし︑両説は結 論的にはほとんど差違を生じない︑と指摘される︒同一段階性を欠きつつ︑特別規定が存在しない場合につき︑有力 説では連帯債務に関する規定を適用するが︑通説も︑特別規定の想定する事例と類似の事例に関して︑その特別規定
︵た
とえ
ば
BGB八四0
条一項︶を類推適用することにより連帯債務に関する規定を広く適用することになるからで
( 5 8 )
ある
連帯債務における求償と賠償者代位の関係につき︑通説的理解は︑賠償者代位が債務者相互間の調整を目的とする ︒
規定であると理解する点で一致する︒この理解では︑BGB二五五条とBGB四二六条とは同次元の対立する関係に
ある求償手段であると位置付けられる︒賠償者代位が適用される事例として︑物の喪失の事例に関して︑物が現存す る場合のほか︑占有喪失の後︑当該物が第三者の下で毀損・滅失したか他人によって所有権取得されたことにより損
( 5 9 )
害賠償請求権が生じた場合が挙げられている︒
① ラ レ ン ツ の 見 解
まず︑通説とされるラレンツの見解を見る︒
( 6 0 )
連帯債務の成立要件として︑BGB
四ニ一条に基づいて︑複数の債務者が債権者の同一の給付利益を全部の範囲に
( 6 1 )
おいて満足させることを義務づけられていることのほかに︑義務の同一段階性
(G le ic hs tu fi gk ei t)
が存在することが
( 6 2 )
必要である︒同一段階性とは︑債務者の一人が当初より一次的な義務者ではなくて︑むしろ︑原則として債務者全員 が最終的に幾らかの金額を給付しなければならないのであって
1
例外的に一銭も返済しないこともありうるがー︑
( 6 3 )
それゆえに債務者の一人が債権者へ給付した場合には債務者相互間に調整が認められる︑ということを意味する︒同
関法
ニ ニ
六
︵ 一
三 六
︶
条 ︶
契約に基づいて相互に責任を負担しあう複 ・受領遅滞の絶対効
(B GB
四二四一段階性の要件が存在することを前提に︑免除の絶対効
(B GB
四ニ
︱︱
一条
( 6 4 ︶
)
の規定の適用が肯定される︒複数の義務につき同一段階性を欠く場・連帯債務者の調整義務
(B GB
四二
六条
︶
合は︑不真正連帯債務として取扱われるべきではなくて︑単に︑BGB四ニ︱条以下の規定が適用される連帯債務が
( 6 5 )
問題とはならないと考えるべきである︒
このような同一段階性がどのような場合に存在するかは︑単純な定式化によって回答することができない︒法律行
為を原因とする場合には︑義務内容・義務の意味や目的による︒法律上の義務を原因とする場合には︑
(B GB
八四
( 6 6 )
0条一項などの︶類推適用が広く認められる︒相互に不法行為または危険責任
(G ef ii hr ud ng sh af tu ng )
に基づいて責
任を負担する複数の加害者は︑被害者に対して︑通常は連帯債務者として責任を負担する
この規定は︑併存的不法行為者
(N eb en ti it er )
の事例や︑加害者の一人が被害者に対して不法行為に基づいて責任を
( 6 7 )
負担して︑他の者が契約違反に基づいて責任を負担する事例にも類推適用される︒
これに対して︑当初より1たとえばBGB二五四条の類推により個々の事例を衡量することにより初めて生じる
( 6 8 )
のではないー義務者の一人が最終的な唯一の義務者であると認められる場合には︑同一段階性は欠ける︒同一段階
性を欠く事例として︑賠償者代位
(B GB
二五五条︶の事例と法律上の請求権移転
(c es si l e o g is )
の事例とが挙げら
( 6 9 )
れる︒賠償者代位では││'その者自らが行なった滅失や毀損についてではな<ー所有者に対して返還されなけれ ばならない物の喪失について責任を負担する者または権利の喪失について責任を負担する者は︑物の所有権に基づい
( 7 0 )
てまたは権利に基づいて賠償権利者に帰属する第三者に対する請求権の譲渡と引換えにのみ賠償を義務づけられる︒
同一の損害の事例につき不法行為・危険責任
(G ef ah rd un gs ha ft un g)
賠 償 者 代 位
一 三
七
(B GB
八四
0条
一項
︶︒
︵ 一
三 七
︶
( 2 )
第四五巻第一号
一 三
八
︵ 一
三 八
︶
数の加害者は︑被害者に対して︑通常は連帯債務者として︑すなわち全員が損害全体に関して責任を負担する︒損害 全体への責任は︑複数の債務者の一人に対する被害者の寄与過失(B GB
二五四条︶が︑他の債務者と比べて︑より
強く重大になることを通じて修正される︒複数の加害者が連帯債務者である限りにおいて︑債務者相互の関係におい てそれぞれが最終的に負担すべき損害の負担部分は︑特別規定を度外視すると︑原則として
BGB四二六条にしたが
う
(B GB
二五四条の類推適用と共に︶︒しかしながら︑
人の義務と他の加害者の義務とは等価値とは評価されない︒むしろ︑ここでは法律の評価にしたがって︑加害者の一
( 7 1 )
人は︑他の加害者に比べて︑損害を最終的に負担すべき地位にある︒それゆえ︑義務の同一段階性を欠くために︑連 帯債務関係が成立しない︒損害により近い地位にある者︑すなわち最終的に単独で責任を負担する者の給付が︑損害 により遠い地位にある者を免責するにもかかわらず︑逆に︑損害により遠い地位にある者の給付は︑損害により近い 地位にある者の義務に影響を与えない︒損害により近い地位にある者は︑最終的に責任を負担する者として︑被害者 に対してさらに全てを義務づけられたままである︒しかしながら︑損害により遠い地位にある者が賠償を給付する場 合には︑この者は︑最終的に責任を負担する者に対する被害者の請求権の譲渡を請求することができるのであって︑
( 7 2 )
この手段により︑最終的に責任を負担する者に対して求償権を行使しうる︒この異なった評価は︑結局︑ここでは ー﹁同一段階性﹂を欠くのでー連帯債務が存在せず︑
BGB四二二条以下と同四二六条が適用されえないことの
( 7 3 )
根拠でもある︒
ライニッケ/ティードゥケの見解
以上︑ラレンツの見解に対して︑ライニッケ/ティードゥケは次のように主張する︒
関法
BGB二五五条が問題となる事例においては︑加害者の一