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「人生の締めくくりに寄り添うたましいのケア : 生と死に向き合うことの現実」報告 : 第1回スピリチュアルケア研究講演会(2017年度 聖学院大学総合研究所 スピリチュアルケア研究会 主催) 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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55  2017年 7 月21日(金)に、聖学院大学ヴェリタ

ス館教授会室において、聖学院大学総合研究所主 催による2017年度スピリチュアルケア研究講演会 が72名の参加者により開催された。

 当日は、田村綾子教授の司会のもと、救世軍ブー ス記念病院、老人保健施設グレイス、特養恵みの 家 チャプレン長の西村和江氏により、「人生の締 めくくりに寄り添うたましいのケア–生と死に向き 合うことの現実–」の論題のもと講演がなされたの ち、質疑応答が行われた。

 講演では、チャプレンとは何か、西村氏がなぜ チャプレンになったのか、また、チャプレンの目 指すスピリチュアルケアとは何か、チャプレンの 実際の働き、全人的な存在としての人間と魂のケ アとは何か、チャプレンとしての心得等が話された。

 講演のなかで、とても印象的な二つの学びの場 面があった。一つ目は、ケースから学ぶ前に、個 人ワークとして課された次のような言葉に、あな たならどのように答えますかという西村氏の問い である。①「ずっとそばにいて」②「死んだあと

はどこへ行くの」③「あなたも一緒に死んで」④「明 るくなる話をして」。参加者から次のような反応が あった。Aさんは、「あなたも一緒に死んで」と言 われたら、「まだやりたいことがあるから、今はご めんなさい」とやんわりと答える。また、Bさんは、

「死んだあとはどこに行くの」という問いに対して、

「あの世に行くよ。今は一緒にいけないが、必ず私 もあの世にいくよ。」と答えてあげるという意見が 出され、会場の雰囲気が和んだ。西村氏からは、

「ずっとそばにいて」という問いに対して、「今、

一緒にいますね。(寄り添い30分ほど経過した後)

今ここから去るけれど、いつもあなたと一緒にい るからね」と言葉かけをしてその場を離れる。また、

「明るくなる話をして」に対しては、世間話をする ように心がける。好きなものの話をする。メロン が好きな人の場合メロンの話をする。その人の価 値観を受容するようにする。といった答えを挙げ られ、一つ一つの寄り添いの言葉かけが、実践的 でとても参考になるものであった。二つ目は、死 への不安にどう向き合うか、生きる希望をどのよ うに支えるか、信条の相違と葬送儀礼の現実とし て、 3 つの実例が提示されたことである。個人的 な実例であるため、説明は控えるが、実に参考に なる寄り添うことを重視した事例であった。

 質疑応答では、参加者の多様な関心を反映して、

多岐にわたる質問が出された。そのうち四点紹介 する。一つ目は、患者の話を聞くときの注意はあ るかという問いである。答えとして、例えば、「死 にたい」という患者に対して、言葉かけを次のよ うにする。「どうして、死にたいと思っているので すか。楽になりたいのですか。本当に今苦しくて、

ともかく迎えに来てほしいのですね。」と受容し、

そこにとどまって話を聞く姿勢をどう示せるか、

どう寄り添えるかがポイントであるとのことで あった。二つ目は、「私は罪深い者である。そんな 私でも救われるか」という問いに対して、どのよ うに答えたらよいかという問いである。その答え 2017 年度 聖学院大学総合研究所 スピリチュアルケア研究会 主催

第 1 回スピリチュアルケア研究講演会

「人生の締めくくりに寄り添うたましいのケア –生と死に向き合うことの現実–」報告

司会:田村綾子先生(下段右)

発題者:西村和江先生(上段左)

報 告

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として、どう救ってあげたらよいか考える。救い はあるのか考える。そこで次のように言葉かけを する。「あなたは救いを求めているのですね。求め さえすれば救われる。聖書にはそう書かれていま す」と答えながら、チャプレンとして、聴く姿勢 があることを言葉や表現で示すことが大切である。

時には自分の生き様を表すことも必要であるとい うことであった。三つ目は、チャプレンとして、

気をつけていることがあるかという問いである。

患者と家族の両方のケアを大切にしている。時と して、どちらかのケアに偏りがちになるが、両方 のケアが偏らないように心がけている。例えば、

食べたい患者、食べさせたら死んでしまうと考え る家族がいる。患者と家族の間に立ち橋渡しの役 割をする。患者、家族の両方のカウンセリングを 丁寧にする。お互いが納得する答えを導き出す。

患者、家族を大切に思う気持ちに寄り添う。また、

チャプレンとして、職員のケアに心掛ける。いろ いろな委員会や会議に出席し、日ごろから職員と 仲良くなるように心がけている。医師との連携に ついては、医師にもいろいろな人がいる。医師に とって、患者の死は敗北である。ある面特殊であ るが、皆が専門医ではない。それぞれの専門の医 師と緩和ケアについて、綿密に話をしていく。例 えば、「一緒に死んで」という患者の場合、本当に しんどいが、医師は死に至るまでどう支えるか。

緩和するためにどう立ちふるまえばよいかを考え る。共有できるところは共有して、伝えるべきと ころは漏らさず伝えるようにしている。四つ目は、

スピリチュアルケアと魂のケアと 2 種類表現があ るが、違いがあるのかという問いである。今のと ころ用語の統一ができていない。内容としては同 じであるという応答であった。

 最後に、人生の締めくくりに寄り添うこととは、

どのような働きであるかということについて話さ れた。よくも悪くも一人ひとりの生き様がそこに 表され、どんなに避けたいと願ってもいつかは訪 れる死という現実がそこにある。死という現実の

前にケアする側が提供できるものは何一つなく、

ただただ教えられるばかりである。西村氏は自分 自身の死について「わがうめきよ わが賛美の歌 となれ (中略) わが熱よ 汗よ わが息よ 最 後まで 主をほめたたえてあれ」という言葉であ らわし、講演を結んだ。

(文責:吉田 進[よしだ・すすむ]聖学院大学大 学院アメリカ・ヨーロッパ文化学研究科博士後期 課程)

参照

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