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新規自動車用ボディコート剤の研究

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Academic year: 2021

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(1)

KONAN UNIVERSITY

新規自動車用ボディコート剤の研究

著者 渡邉 順司

雑誌名 甲南大学理工学部・知能情報学部 私立大学等経常 費補助金特別補助「大学間連携等による共同研究」

成果報告集

平成30年度

ページ 52‑53

発行年 2020‑02‑28

URL http://id.nii.ac.jp/1260/00003464/

(2)

大学間連携等による共同研究報告書 新規自動車用ボディコート剤の研究

1.報告書作成年月日:令和元年10月25日

2.補助対象年度:平成30年度(平成30年4月1日〜平成31年3月31日)

3.共同研究期間:平成30年4月1日〜令和3年3月31日 4.研究の目的:

5.研究組織 (1)研究分担者

研究分担者氏名:渡邉順司 ローマ字氏名:Junji WATANABE 所属研究機関名:甲南大学 部局名:理工学部機能分子化学科 職名:教授

研究者番号(8 桁):60323531

(2)研究協力者

研究協力者氏名:神戸範人,西口里奈

ローマ字氏名:Norito Kambe, Rina Nishiguchi

6.実施経過:(継続中)

甲南学園と大阪府大阪市に本社を有する民間企業は、平成 30 年 4 月から令和 3 年 3 月までの 3 年間 の計画で基材表面の改質を目的としたポリマーの分子設計とその特性評価を目指した探索研究に関す る共同研究契約を締結し、検討することとなった。甲南大学理工学部機能分子化学科において新規ポ リマーの合成と基板への固定化、表面特性解析、新規材料の構造解析を担当し、企業の研究員 2 名が 新規材料の試作とその成分分析、性能評価を担当し、共同研究を推進している。研究 1 年目の平成 30 年度は、「高分子鎖の表面偏析におよぼす温度効果」を中心に検討した。

7.研究成果:

親水-疎水型ブロックポリマーや疎水-疎水型ブロックポリマーから得られる薄膜表面は、外部環 境の水分量を認識して自発的に偏析する。例えば、乾燥環境下においては疎水鎖が表面に偏析し、表 面の水分量の増大に伴い親水鎖の表面偏析が認められる。このような環境応答型の表面偏析は薄膜表 面の自由エネルギーを最小化する自発的な駆動力によって誘導され、繰り返しの応答性も示す。

自動車用のボディコート剤は車の外観を美しい状態で維持することが主目的であるが、同時に定常 的なメンテナンスを容易にする。路面の粉塵や自動車の駆動部から生じるオイルミスト、排気ガスに 含まれる微量成分の吸着を抑制するためには撥水・撥油性の表面が好ましい。しかしながら、このよ うな表面コーティングを施していても徐々に表面に付着が始まり、水では容易に洗い落とせない状態 となる。その理由はボディ表面に撥水処理を施しており、さらに付着物が油性であるため、水を用い て洗浄を試みても水をはじいてしまうために付着物を洗い落とすことができない。界面活性剤を使用 しての洗浄が必要となり、水のみで容易に洗浄できればメンテナンスも容易であり、極端には降雨等 でも洗浄可能となる。

このような課題を解決するアプローチとして、ボディ表面のコート剤の水に対する馴染みやすさを 制御できれば良いものの、そのような水分量に応答する材料に関する報告例は少なく、工業的に意味 のある供給量とコストを考慮した材料設計が求められている。そこで本研究では、親水鎖もしくは疎 水鎖を有するマクロモノマーを用いたポリマーを設計し、薄膜表面の水に対する濡れ性を外部環境の 水分量によって応答する材料を開発した。従来技術では、親水-疎水型のブロックポリマーを合成し て外部環境の水分量に応答した表面の濡れ性制御について検討してきた。しかしながら、材料設計の 多様化に合成条件上の制約があり、比較的高価な試薬を必要とすることから研究レベルでは問題はな いものの実用化に向けた生産を考慮すると限界がある。このため材料設計の多様化と汎用性を兼ね備 えるべく、疎水鎖や親水鎖をモノマー側鎖に有するマクロモノマーを利用したグラフト型のポリマー 設計を考案した。このマクロモノマー法では、一般的なラジカル共重合でポリマーが得られるため、

多種多様なモノマーとの共重合が可能となり、得られる材料の特性範囲が飛躍的に拡大できるととも に生産を見据えた場合のスケールアップにも対応できる。

[ 52 ]

(3)

さらに外部環境の水分量に応答した表面偏析を温度によって規定する機能付与を考案した。水分量 に応答した表面偏析は高分子鎖の分子運動性に基づいており、熱可塑性のポリマー材料の場合、ガラ ス転移温度を考慮して設計すると温度変化により規定できる。例えば、ガラス転移温度を 40 度付近に 有するポリマー薄膜では、常温の水と接触しても分子の運動性が凍結されているために表面偏析は誘 導されず、40 度以上の温水であればガラス転移温度以上となるため分子の運動性が高くなり親水鎖の 表面偏析が誘導されるようになる。

本研究では、ポリエチレングリコール鎖を有するメタクリル酸系のマクロモノマーとポリジメチル シロキサン鎖を有するメタクリル酸系のマクロモノマーを選択するとともに、ガラス転移温度(

T

g)を 調節するための疎水性モノマーからなるグラフト型共重合体を設計し、外部環境の水分量と温度に応 答した表面偏析挙動について検討した。特にガラス転移温度調整用のモノマーには、側鎖をイソブチ ル基およびブチル基、2-エチルヘキシル基を選択し、それぞれの単独重合体であるホモポリマーの場 合、ガラス転移温度は 48 度および 20 度、マイナス 10 度を示すものであった。これらのモノマーを疎 水性マクロモノマーもしくは親水性マクロモノマーとの共重合体を組成比を変化させて種々合成し、

薄膜表面の水に対する濡れ性の温度効果について検討した。その結果、ポリマー中のマクロモノマー 組成が 50 mol%以下の場合において、親水鎖もしくは疎水鎖の表面偏析が認められることが明らかとな った。これはマクロモノマー組成が高い場合、かさ高い側鎖の混み合いに起因してポリマー主鎖が鎖 状に伸びきり、表面偏析と膜内部への潜り込みの運動性が制限されることによると考えられた。一方、

ガラス転移温度を調整するためのモノマー導入により、予想通りの温度応答性が認められたが、ホモ ポリマーにおいて示されるガラス転移温度前後での明確な応答挙動については再現性を含めて再考の 余地があった。これは、ポリマーのガラス転移温度においては、バルクと比較して膜表面の方がまわ りのポリマー鎖の束縛を受けないために低温化することが知られており、このことが影響したためと 考えられた。

以上の結果から、親水鎖もしくは疎水鎖を側鎖に有するマクロモノマーを利用したグラフト型ポリ マーにおいて、薄膜表面に水を接触させることにより膜表面を疎水性から親水性に変化させる可能性 が示され、乾燥時の撥水性と湿潤時の親水性を兼ね備えたボディコート剤としての応用が期待される。

その他の関連研究として、可塑剤の高分子量化による材料中からの移行抑制、両親媒性高分子の会 合による薬物内包型コロイドの創製、高分子鎖間の絡み合いによる接着界面の創製など、本共同研究 を推進する上で参考となる重要な知見が得られた。

8.主な発表論文等

〔雑誌論文〕(計 1 件)

[1] 岩本千紘,小山亜衣,粂井貴行,渡邉順司, PTMC 誘導体を用いた耐水性と洗い流し易さを両立す る粉体の開発と応用,日本化粧品技術者会誌, 52 (3), 197–204 (2018).(doi.org/10.5107/sccj.52.197)

〔学会発表〕(計 5 件)

[1] 渡邉順司,富田千穂,志水 涼: 高分子鎖の表面偏析に与える温度の効果と水に対する濡れ性の 変化.日本ゴム協会 2018 年年次大会,P–27, 2018 年 5 月 30 日, 埼玉会館,埼玉.

[2] 廣田雄紀,渡邉順司: 可塑剤のブリード抑制を指向した極性-非極性型高分子の創製.第 64 回高 分子研究発表会(神戸),Pa–32, 2018 年 7 月 13 日, 兵庫県民会館,兵庫.

[3] 橋本健司,渡邉順司: 会合体内に疎水性物質を担持する薄膜の形成を目的とした生体適合性を有 する両親媒性高分子の創製.第 64 回高分子研究発表会(神戸),Pa–33, 2018 年 7 月 13 日, 兵庫県民 会館,兵庫.

[4] 廣田雄紀,渡邉順司: ポリ塩化ビニルの可塑化のための極性-非極性型高分子の創製.第 28 回日 本 MRS 年次大会,F6–O19–010, 2018 年 12 月 19 日, 西日本総合展示場,福岡.

[5] 渡邉順司,丸山涼子,富田千穂,志水 涼,槌井弘樹: 親水鎖の表面偏析とその絡み合いに基づ く接着技術.第 28 回日本 MRS 年次大会,F6–P18–004, 2018 年 12 月 19 日, 西日本総合展示場,福岡.

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参照

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