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転移性 甲状腺癌の 1例
上野 恭一 清水 博志 瀬川 安雄*
林 守源 **
は じめに
Tc‑ 9 9 mO
。 による甲状腺 シンチグラフィで欠損 を呈す る疾患 は, 甲状腺腫,原発性 甲状腺癌,慢性 甲状腺炎,ade noma t oushype r pl a s i a,c ol l oi dc ys t
な どをは じめ として種々の疾 患が あ げ られ る1) , 2)
。 しか し他の ものは比較 的稀 であるため画像診断 に追 われ る忙 しい臨床現場 では実際のシンチグラム読影 上 これ らの鑑別すべ き疾患 を思い浮かべない ことが 多い。 この ような1例 として,われわれは手術 によ り,転移性 甲状腺癌 と判明 した稀 な1例 を経験 した ので報告 したい。症 例
5 4
歳,女性主訴 :前額部腫癌
既往歴 :昭和
5 8
年5
月,当院で直腸癌( mode r ‑ at e l ydi f f e r e nt i at e da de noc ar c i noma)
のため直腸 離断術施行。現病歴 :直腸癌の術後,外来定期通院中に,昭和
6 0
年1
月下旬 頃 よ り,主訴 に気付 き, 当科 へ 甲状 腺 シンチグラフィを依頼 された。理学的所 見 :甲状 腺左 葉下極 に
3×2c m
の,か な り硬 い,圧痛のない結節 を認 める。 リンパ節転移 はな し。検査所見 :検尿,検血,肝機能,電解質,腎機能 な どのルーチ ン検 査 はすべて異常 な し
。CEA 4. 2 ng/ m
J。画 像 診 断 :頚 部 軟 線Ⅹ一P上,石 灰 化 は な し.
9 0 mTc O
。 甲状腺 シンチグラフィ( Fi g. 1 )
で は,左 葉の大部分 を占めるc ol dno dul e
を認 め,触診上のnod ul e
と一致す る。触診所見 と併 せ て, まず原発 性 甲状 腺癌 を疑 い,生検 が望 ま しい とレポー トし た。超音波断層像( Fi g. 2 )
で は,左葉のr o ugh e c hoge ni cmas s
を認 め,Ⅹ‑ CT ( Fi g. 3 )
では左葉の 腫大のみで, はっきりとしたma s s
は認 め られず。手術所見 :昭和
6 0
年4
月4
日に甲状腺左葉切 除 術 が施行 され,( 1 )
転移性 甲状 腺癌( me t as t at i c a de no c a r c i no mao ft het hyr oi d) ,( 2 )
限局性慢性甲状腺炎の病理診断が得 られたが,頚部 リンパ節 に は転移 は認 め られなかった。
経 過 :昭和
60
年4
月1 8
日に退 院 したが,同1 0
月7日に多発 性 肺 転 移 にて再 入 院。1
1月25
日に は,CT
で脳転移が発見 され,昭和61
年4
月2 6
日 死亡。考 察
転移性 甲状 腺癌 は,剖検 で は
1 88/ 2, 1 80
例( 8. 6
%) に認 め られ,原発性 甲状腺癌 よ り多い と言われ るが,生前 に結節が触知 され るものは, ご く少数で あ り, 甲状腺切除術 の対象 となるのは,転移性 甲状 腺 癌 の約1%に過 ぎない といわ れ る
3)
。 した が っ て,臨床 の場 で転移性 甲状腺癌 を経験 す るこ とは, 稀 であ りDat z 2)の鑑別診 断の本で も稀 な疾患 の方
にいれ られ て い る。本 院 での
1 0
年 間 の経験 で も, 転移性の ものは極 めて稀 で,癌治療成績の向上 に伴 って,む しろ消化器癌 (または乳癌) と原発性 甲状 腺癌 との重複癌 のほうが多 く, この症例では直腸癌 の既往 とい うヒン トがあったにもかかわ らず,鑑別 診 断 に含 め る こ とを怠 って しまった と反省 している。
原発部位 として は
, ( 1)
悪性黒色腫, ( 2)
乳癌,A c as eo fme t as t at i cade noc a r c i no maoft het hyr oi d
De par t me nt so fRadi ol o gy
,* Sur ge r yand
** Pat hol ogy,I s hi kawaPr e f e c t ur alCe nt r alHo s pi t al
石川県立 中央病院放射線科, *一般外科, **病理科〒 92 0‑ 02
金沢市南新保 ヌ1 53
*現小松市民病院 院長核医学画像診断 Ⅵ ) 1 ・2No. 31 9 8 7 .1 2. ‑ 9 9‑
Fi g.2 Ul t r as oundi magi ng・Roughl ye c hoge ni c nodul e wasnot e d i n t hel e f tl o be oft he
t hyr oi d. Fi g.1 Tc‑ 9 9 m pe r t e c hne t at et hyr
oi d i magl ng
( Pi nh
一 1 0 0‑
( 3 )
腎癌,( 4 )
肺癌,( 5 )
大腸癌 ・直腸癌 な どが高 頻度 とされ てい る3) ・ 4)
。 また原発部位 として,腎細 胞癌 は報告が多 く, これ はやや特殊 で ある。即 ち, 同癌の手術後,13‑22
年 も経 ってか ら忘れた頃 に, 甲状腺転移 を生 じた り5), また甲状腺転移か ら逆 に 腎癌が発見 され ることもある6)
。転移性 甲状腺癌の画像診断 についての発表 は少な い が7・8), 甲 状 腺 シ ン チ グ ラ フ ィ は 勿 論,他 の
modal i t yで も,一般 的 に nons pe ci f i cで鑑別診断
は困難 で,最終診 断 は生検 (手術)が必要 とな ろ う。核医学医の立場か らは,上記の甲状腺転移 を来 しやすい癌の既往があれば,転移性 甲状腺癌 を,念 頭 に置いてお く必要が あ る。 しか し,1
例 この よう な症例があったか らといって,次か らは癌の既往が あるか らす ぐに転移性 甲状腺癌 と即断す るの も危険 であ り,あ くまで も鑑別診断の1つ と考 えてお くの が妥当であろう。文 献