学位論文要旨

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学位論文要旨

タ イ ト ル: 東洋医学における 人体のペト リ ネッ ト モ デルの構築に関する 研究  氏名: 甘  泉 

東洋医学と は古代中国から 始ま り , 日本や韓国を 中心に世界の国々に伝わ っ て 発展し て き た医学で ある . 東洋医学における 人体は, 主に五臓六腑, 経 脈, 経穴, 気・ 血・ 津液から 構成さ れて いる . 五臓六腑と は東洋医学におい て ,人体の内臓全体を 指すと き に用いら れる 表現で あり , 具体的に五臓は肝・

心・ 脾・ 肺・ 腎を 指し , 六腑は胆・ 小腸・ 胃・ 大腸・ 膀胱・ 三焦を 指す. 経脈 と は身体を 縦に流れる 脈で あり , 気と 血の通路の役割を 果たすも ので ある . 気・ 血・ 津液は生き る ために必要な も ので あり , いわゆる 代謝物質で ある . ま た, 経穴は基本的に経脈に位置付けら れて おり , 人体の表面に存在し て い る .    

鍼灸治療は, 東洋医学の治療法の 1 つで あり , 鍼ま たは灸で 経穴を 刺激す る こ と によ っ て , その刺激が経脈に伝わり , 体内の気・ 血・ 津液が改善さ れ,

その結果, 五臓六腑の機能が活性化さ れる . 鍼灸治療は, 副作用が少な く , 病気の予防や難病の治療な ど にも 有効で ある こ と から , WHO に認めら れ, 今 や世界中に広ま っ て いる . し かし な がら , 鍼灸治療は未だ 経験的・ 臨床的に 行われる こ と が多く , 治療の仕組みや過程が科学的に解明さ れて いな い部分 が多い. そのため, 現代の西洋医学や科学技術的な 観点も 取入れた 客観的・

統一的な ア プ ロ ーチ が求めら れて いる .  

国内外において , 東洋医学に関する 人体のモ デル化や解析等の研究は, 五 臓六腑ある いは経脈の一方のみを 取り 上げて 行われて おり ,五臓六腑,経脈,

経穴, 気・ 血・ 津液のすべて を 含んだ人体モ デルの研究がな さ れて いな い.

ま た, 鍼灸治療のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン やシ ミ ュ レ ーシ ョ ン によ る 検証と いっ た 研究も 行われて いな い.  

一方, ペト リ ネッ ト はシ ス テ ムの静的構造の表現と 動的挙動の解析・ シ ミ ュ レ ーシ ョ ン が可能な モ デリ ン グツ ールで あり , 生命シ ス テ ムのモ デル化や 解析において も 数多く 応用さ れ効果を 上げて いる .ペト リ ネッ ト を 用いれば,

東洋医学の五臓六腑, 経脈, 経穴, 気・ 血・ 津液を 含んだ 人体のモ デル化と 鍼灸治療のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン が可能にな る .  

そこ で , 本論文で は, シ ス テ ムの構造と 動作の両方を 表現・ 解析・ シ ミ ュ レ ーシ ョ ン する こ と がで き る ペト リ ネッ ト を 用いて , 五臓六腑のモ デルを ベ ース に, 経脈, 経穴およ び気・ 血・ 津液を 加え て いく よ う に東洋医学の人体 モ デルを 構築する 手法を 提案し た. ま た, 構築さ れた人体モ デルを 用いた鍼 灸治療のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン 結果, およ び, 臨床結果と の比較によ る モ デルの 妥当性検証の結果を 示し た.  

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具体的に, ま ず, 先行研究を 踏ま え た上で , 五臓六腑間の相互関係に基づ いた五臓六腑のモ デルを 構築し た. 次に, 経脈と 経穴のモ デルを 構築し , そ れを 五臓六腑のモ デルに加え た. さ ら に, 臓腑の働き によ る 気・ 血・ 津液の 生成や流れを 分析し , その分析結果に基づいた気・ 血・ 津液のモ デルを 構築 し た上で , 東洋医学の全体の人体モ デルを 完成さ せた.    

モ デルの妥当性を 検証する ために, 提案し たモ デルを 用いて , 以下の 3 つ の観点に基づき , 鍼灸治療のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン を 行っ た.    

1 つ目は, 臨床で 有効と 検証さ れた計 17 の症例に基づいて 行っ た鍼灸治療 のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン 結果と 文献に記載さ れた臨床結果と 一致し て いる かど う か.  

2 つ目は, 文献に記載さ れた 経穴を 除いて ラ ン ダムに選ばれた経穴を 刺激 し た鍼灸治療のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン 結果と 文献に記載さ れた 臨床結果と 一致し て いる かど う か.  

3 つ目は, 他の臓腑と の関係が判明さ れて いな い三焦を 除いた人体モ デル を 用いて , 臨床で 有効と 検証さ れた症例に基づいて 行っ た 鍼灸治療のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン 結果と 文献に記載さ れた臨床結果と 一致し て いる かど う か.  

最後に, シ ミ ュ レ ーシ ョ ン の結果から , 以下のこ と が明ら かにな っ た.  

( 1)   文献に示さ れて いる 経穴を 用いた鍼灸治療のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン 結果か ら ,五臓六腑はやがて 健康状態に回復さ れたと の結論を 得た.その結果よ り , シ ミ ュ レ ーシ ョ ン 結果と 文献記載の臨床結果と 一致し て いる こ と が確認で き た.  

( 2)   文献記載の経穴を 除き , ラ ン ダムに選んだ経穴を 用いた鍼灸治療のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン 結果から , 五臓六腑が健康状態に回復で き な いこ と が分かっ た. そ の結果よ り , 文献記載以外の経穴で は, 臨床結果と 一致する こ と にな ら な いこ と が確認で き た.  

( 3)   三焦を 除いた人体モ デルを 用いて 行っ た鍼灸治療のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン 結果から , 五臓六腑は健康状態に回復で き な いこ と が分かっ た.  

その結果よ り , 三焦を 除いた モ デルで は文献記載の臨床結果と 一致する こ と にな ら な いこ と が確認で き た.( 1) と 合わせて いえ ば, 三焦に関する モ デ ルの構築法は妥当で ある こ と がいえ る .  

以上の( 1) 〜( 3) よ り , 本論文で 提案し た東洋医学の人体モ デルは, 臨床結 果と 一致する シ ミ ュ レ ーシ ョ ン 結果が得ら れる こ と で , そ の構築法が妥当で あり , 構築さ れたモ デルが有用で ある .  

本論文で 提案し た 人体モ デルはペト リ ネッ ト を 用いる こ と で , 東洋医学に おける 人体内部の相互関係を 視覚的に表現で き る . ま た, 鍼灸治療のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン が可能と な り , そ のシ ミ ュ レ ーシ ョ ン によ っ て , 治療現場で 観測 で き な い臓腑状態の変化過程を 示すこ と がで き る .  

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本論文は, 東洋医学の諸説を 基に, 情報科学・ 情報技術に基づいて , 経験 的・ 臨床的に行われ, かつ定性的な 説明し かで き て いな い東洋医学の鍼灸治 療の仕組みの解明に対する 新し いア プ ロ ーチ を 提供する も ので ある . その成 果は, 人体の仕組みの解明にも , 新たな 鍼灸治療法の発見にも つな がる も の で ある .  

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