教育心理学に対する Web 統計
(その光と影) の可能性
香川大学経済学部 堀 啓造 日本教育心理学会第42回総会
2000年9月16日
教育心理学研究は
• 微妙な統計の有意差があるなしで論じる べきではない。
• 効果があるという場合,
• 大きな効果量 (effect size) が必要であろう
• つまり,見たらわかるほどの違いがあっ て初めて意味がある変数(条件)といえ る。
• ただし,交互作用などの複雑な処理に ついては統計学が必要な場合もある。
• さらに,多変量解析は問題(課題)発 見,探索としていい。また,尺度づく りに重要である。
• 臨床などの少数標本しかないとれない 場合の統計処理こそ必要。
Web 統計問題設定の例
• (1)web 上の統計処理の利用
• (2)web 上での統計学相談
• (3)web 上での統計学学習・教育
• (4) 学習または研究レベルの論文を読む
• (5) 統計パッケージの利用法など
WWW ではどのようなことが できるのか,私のホームペー ジのリンク集を例にとって示
す
• WWW で統計を学習しよう
• 統計ソフト・統計学習用データ
WWW で統計を学習しよう
検索系相談等|統計教育リンク|統計学用語 集| case study( 問題集 ) |統計学から分散分
析・重回帰まで|総合的|特定分野 (統計 教育・注意|研究法|歴史|測定|サンプリ ング|分布|検定力|…|グラフ化|本・論 文案内 )|研究|雑誌|ソフト手引き( SP
SS | SAS |…)|
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/ statedu.html
統計ソフト・統計学習用デー タ
|統計関係総合リンク|統計ソフト紹介 関係|統計ソフト会社|共分散構造モデ
ル|統計ソフト おもらい君|統計用 データ| WWW 上での統計処理|人|日
本の統計学関係|日本のメーリングリス ト|
http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/stat.html
日本のサイトでも漏れている ものが多くなっている
そこで,探索的因子分析に絞 り,集めてみた。
この領域は研究としては枯れ てきている。
探索的因子分析リンク集
• ● 用語辞典
• ● Q&A
• ● わかりやすさをねらった説明
• ● 数式を使わないまたはほとんど使わない説明
• ● 数式を使う説明
• ●advanced course
• ● 本
• ● 手順の理解・アプリの説明+ α(SAS SPSS)
• ● 特定統計パッケージの説明または補説のみ( S PSS SAS STATA S-Plus R エクセル統計 2000 )
• ● 因子分析データ集
• ● プログラム・アルゴリズム
• ● 実行プログラム
• ●WWW 上で分析
• ● 先端分析実行
• ● 文献
• ● メーリングリスト・相談系
• ● 因子分析利用研究
• ● 検索
• http://www.ec.kagawa-u.ac.jp/~hori/spss/ factorlin k.html
探索的因子分析そのものの評価
• 探索的因子分析は枯れてきて,新しい 因子分析の本はでなくなってきている。
• だが,検証的因子分析や共分散構造分 析によって,新たな視点を得ている。
• また,シミュレーションによる研究な ど無視できない成果がある。
Web の評価
• WWW にある因子分析はちょっと古い段階のも
のが多い。 ∵紹介や授業用が多い
• 実行プログラムは WWW に最新の考えが反映 されているものがある。
• また,日本のサイトには最新の考え方も紹介さ れている。
• ただし,バランスよく学ぶには問題がある。現 段階ではいくつかの本も学ぶ必要あり。
• 検索エンジンを使いこなせるようになること。
• 英語を読めるかで情報格差
相談のメディアとしての WW W
• メーリングリスト (fpr, medsata, など 領域別, spss-l, sas-l, statalist など統計 パッケージ別 )
• 掲示板 群馬大学青木繁伸先生主催の
「統計学関連なんでもあり」 (http://aoki2.s i.gunma-u.ac.jp/lecture/ mb.html) など
相談系の基本問題
• 質問に対する回答(解答)があるかど うかは保証されません。
• 回答(解答)が正しいかどうかも保証 されません。
(青木先生 の「ご注意」から)
質問者側の問題点 (1)
• 学校の宿題・卒論を訊く(大学授業料 は?)
• 質問者のレベルや分野に関して適切な 情報を与えない。
Ex. 心理学をやってい るとか数学をやっている。高校レベル の数学もできない。統計学をとりあえ ずは学んだ。
質問者側の問題点 (2)
• 質問が大雑把すぎて何を訊きたいのか わからない。 Ex. 仮説がない。因子分 析について知りたい。
• 複数の回答を得たり,ある答えを得た ときに,正しい答えもしくは適切な答 えかどうかわからない。
回答者側の問題
• 答える者が少数になってしまう。
• メーリングリストでも答える者がほとん ど一人という状態が生じることがある。
• 問題をきちんと読まず単語に対して反応 している。
• 何でも答えてしまう。
• 初心者に高度なことを教えてしまう問題。
またはその人のレベルにあわない答え。
• 間違った答えをしてしまう。
教育心理学的可能性
• 質問や回答の仕方の批判的読みとり。
• 質問応答テクニックの学習
• 会話進行パタンの研究
• FAQ(frequently asked questions) 作成の資 料
• 他の質問サイトであるように,回答を販 売したり回答を評価し,回答者そのもの を評価するシステムを作る。
統計学に起因する問題
• 統計学が複雑になっていっていて,単純な質 問に答えることはできなくなっているものが ある。 (次の論争とかさなる部分もある)
• 論争がかなりの頻度で起こる領域がある。反 復測定の分散分析,多重比較。これは前提条 件を満たさないのが当たり前。また混合要因 で被験者数が不揃いの場合はさらに問題。
被験者間要因の水準を 多重比較をする場合
• 例えば familywise というのを絶対視し ていいのか?
• 2群で比較したときと5群を比較した とき
• 農学とか,薬学では反 familywise を主 張している研究者がいます。
• これらは公理系の違いと言えよう。
被験者内要因の
分散分析・多重比較
• 分散分析の前提を満たさない場合が多い
• → 球面性の問題 Q&A
• 混合要因の場合,被験者間要因内におい て被験者数が大きく異なる場合
• → もっと大きな問題
• ボンフェローニの方法で対応のある t 検 定
メーリングリスト Survey か らの統計学への問題提起
• 標本の大きさを決めて回収したときに,回 収率が低いときにその統計的有効性は?回 答者に質問内容と関連したバイアスがか かっていると考えられる場合。郵送調査
• 例えば,回収率30%のデータから母集団 の比率を推計してもいいのか?
• 郵送調査において回収率 30 %と電話調査 回収率 60 %を同等に扱って良いのか?
• 非標本誤差として扱うのでいいのか?
統計パッケージと WWW とのリンク
• SAS , SPSS , S-Plus, Stata などの統計パッ
ケージはメーリングリストやホームページ上 ,
e-mail などいろいろなサポートをしている。
• 今後もこの方面での活用はサポートは強化され るであろう。
• ただ,ホームページはどんどん複雑になってい て,どこにいけば自分の思っているサービスを 受けられるのかわかりにくくなっている。
統計パッケージ
• (1) みんなが使う統計・多変量解析をわかりや
すく ( SPSS, StatView, Statistica, Systat 等 )
• (2) できるだけ多くの統計でしかも最新理論に
基づいて ( SAS)
• (3) 行列言語を中心に,自分で組めるようにす
る ( S, S-Plus, R, MacAnova 等 )
• (4) 特定分野を組み込む (S-Plus, TSP)
• (5)bootstrap や robust など新しい統計理論
• (6) ユーザやスタッフがどんどん開発して追加
していく( S, S-Plus, Stata 等)