PBD 打設機の油圧抵抗を用いた多次元地質分布の推定事例
前田建設工業株式会社 正会員 ○ 久保 大輔 平田 昌史 並川 武
清水建設株式会社 正会員
松永 厚彦 矢野 一郎 中日本高速道路株式会社 正会員
山田 耕一
川井田 実 錦城護謨株式会社 正会員
白神 新一郎
1. はじめに
プラスチックボードドレーン(
PBD
)工法では,PBD
を軟弱地盤内に通常0.5
~1.5m
の間隔で多数打設する.こ のため,施工した各PBD
施工位置の地盤強度を求めることができれば,地盤内の強度分布を連続的かつ多次元的に 評価可能であると考えられる.本報告では,舞鶴若狭自動車道 三方インターチェンジ工事(清水建設㈱・前田建設 工業㈱ 共同企業体)で施工したPBD
工法において,計測した油圧抵抗(オシロデータ)を地盤強度推定式1),2) を 用いてコーン貫入抵抗に変換し,地盤内の強度分布・地質分布を連続的かつ多次元的に評価した事例について紹介 する.2. 対象現場位置と PBD 工法の施工範囲
検討対象とした現場は,図
-1
に示す舞鶴若狭自動車道の築造が行われている福井県三方上中郡若狭町の向笠地区 と呼ばれる地区である.この向笠地区は,粘性土と腐植土から構成される地層が厚く堆積する超軟弱地盤帯であり,施工に先立ち実施された試験盛土3) は,
10m
を越える大規模な沈下が発生している.図-2
は,事前調査結果から想 定した向笠地区の地質想定縦断面図である.対象地盤は圧密対象層(粘性土・腐植土)と排水層(砂層)の複雑な 互層となっており,軟弱な粘性土・腐植土が厚く堆積していることがわかる.今回報告するPBD
工法は,図-2 に 示す向笠地区のほぼ中間位置(延長約160m
,幅約60m
)で,深度25m
付近までの軟弱層を対象とし,1.2
m間隔の 正方配置で施工している.なお,今回施工したPBD
工法の範囲では,事前調査として三成分コーン貫入試験がわず か2
箇所しか実施されておらず,図-2に示した地質想定断面図が複雑な地質分布を忠実に再現できているかの判断は困難 である.
3. 地盤強度と地質分布の評価
従来の
PBD
打設機の施工管理装置は,油圧抵抗のデータが 記録紙にのみ出力されるアナログ式である.そこで,施工管 理装置からケーブルを分岐させ,油圧抵抗を電子データとし てモバイルパソコンで収集し,コーン貫入抵抗の推定・図化 処理を実施した.表-1
は,コーン貫入抵抗を推定する際に使 用したPBD
打設機の仕様および補正係数である.また,図-3
は表-1
の値を用いて油圧抵抗から推定したコーン貫入抵抗と,事前調査で実施された三成分コーン貫入試験結果を比較した 図-1 現場位置図
北陸自動車道
舞鶴若狭自動車道
敦賀 JCT
舞鶴東 IC 小浜西 IC
若狭湾 福井県
京都府 滋賀県
敦賀湾
琵琶湖
現場位置(向笠地区)
キーワード 軟弱地盤,プラスチックボードドレーン,コーン貫入抵抗
連絡先 〒179-8914 東京都練馬区旭町
1-39-16 前田建設工業㈱技術研究所 Tel 03-3977-2453 Fax 03-3977-2251
試験盛土
Sh Apt1
Apt2
Ac1 Ac1
Apt1
Apt6 Apt5 Apt4
Apt3 Apt2
Apt6 Apt5 Apt3
Apt5
As6 As5
As3
Dpt Ac2
As1
Apt7 Ac1
Ac3 Ac4
Ac2
As5 As3
As3 As1
As2
As2
As4 Ac3
As3 Ac2
As6
As2
As5 Dpt
Ac4 Ac3
Apt2 As1
496+00 500+00
499+00
498+00
497+00 501+00 508+00 510+00
509+00
502+00 506+00
505+00
504+00
503+00 507+00
向笠① 向笠②
Ac2u Apt3
Ac2 Ac1
As5 As3 As4
As2 As2
As5
As6 Ac3 Ac4 As5 As5
0 10 20 30 40 50 0 10 20 30 40 50 N 値
N 値
0 10 20 30 40 50 N 値
0 10 20 30 40 50 N 値
0 10 20 30 40 50 N 値
至 舞鶴 至 敦賀
測 点
:砂層・礫層(As,Ds)
:粘性土層(Ac,Dc)
:腐植土層(Apt,Dpt)
鳥浜地区 向笠地区
向笠③ 鳥浜① 鳥浜②
PBD施工範囲
0.0 10.0
-30.0 -10.0
-40.0 -20.0
-50.0 D.L.(m) 高
瀬 川
図-2 向笠地区の地質想定縦断面図と
PBD
施工位置 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)‑767‑
Ⅲ‑384
グラフである.グラフ内の油圧抵抗は,敷砂の層厚分だ け深度を補正している.油圧抵抗から推定したコーン貫 入抵抗は,砂層部分で実際より小さめに評価されている もののコーン貫入試験結果とほぼ一致しており,推定し たコーン貫入抵抗の有効性が確認できる.図
-4
は,PBD
施工時の油圧抵抗(約7000
本分)から推定したコーン 貫入抵抗のデータを用いて,地盤の強度分布を三次元的 に表現した図である.PBD
打設が1.2m
間隔と非常に密 であるため,地盤の強度分布を連続的かつ多次元的に把 握できることがわかる.図-5 は,図-4 に示した任意断 面(A-A’
,B-B’
,C-C’
断面)におけるコーン貫入抵抗分 布図である.地盤強度の高い排水層(砂層)と思われる 層が,軟弱地盤内に傾斜して堆積している様子がわかる.なお,コーン貫入抵抗が大きい表層部分は,敷砂施工に よる影響である.
今回対象とした向笠地区では,圧密対象層(粘性土)
と排水層(砂層)のコーン貫入抵抗には大きな差がある ため(図-3参照),地盤強度から圧密対象層と排水層の 区別が可能である.図
-6
は,図-5
に示した強度分布をqc=1.5MPaを境界として軟らかい層と硬い層の 2
色に塗り分けた図である.図
-6
に示したA-A’
断面は,図-2
に示した縦断面図と同位置の地質想定縦断図である.図-2
と比 較すると事前調査が実施されている付近の砂層分布にはあまり大きな違いは見られないが,事前調査が実施されて いない断面左側(舞鶴側)では深度10~15m
付近にも砂層が分布していること,断面右側(敦賀側)では深度5~
15m
付近の砂層が想定よりも厚く堆積していることから,設計時に想定していた圧密速度や沈下量とは若干異なる ことが予想される.また,B-B’
,C-C’
横断図では砂層の分布位置や層厚が左右対称ではなく,不等沈下や周辺地盤 への影響の片寄り等も懸念される.4. まとめ
本報告では,舞鶴若狭自動車道 三方インターチェンジ工事で施工した
PBD
工法に対して,施工管理で記録する 油圧抵抗(オシロデータ)からコーン貫入抵抗を求め,これを基に改良地盤の強度分布・地質分布を多次元的に評 価した.得られた地質推定図は,PBD施工範囲の強度分布・地質分布を精度良く推定できていると考えられる.な お,得られた地盤強度や地質分布を沈下計算や安定計算,FEM
変形解析4), 5) 等へ利用することで,盛土施工速度や 施工手順の検討,不等沈下や残留沈下の予測等が精度良く実施可能であり,工期短縮や工程管理,PBD
工法の性能 評価等,今後の幅広い活用が期待できる.【参考文献】
1)
平田ら: PBD
打設機の油圧抵抗を用いた地盤強度推定法の検討(その1
)~強度推定式の誘導,
第66
回土木学会全国大会(投稿中), 2011.
2)
白神ら : PBD打設機の油圧抵抗を用いた地盤強度推定法の検討(その2)~強度推定式の適用性,
第66
回土 木学会全国大会(投稿中), 2011. 3)
平田ら:
超軟弱地盤における道路盛土の変形挙動要因とその抑制対策, 土木学会論文集C, Vol. 66, No.2, pp.356-369, 2010. 4)
鈴木ら : 超軟弱地盤における載荷盛土のFEM
解析,第65
回土木学会全国大会, Ⅲ-389,pp.777-778
,2010. 5)
西川ら:
軟弱地盤における載荷盛土を伴う真空圧密工法のFEM
解析~その1,
土木学会第65
回土木学会全国大会, Ⅲ-234, pp.467-468, 2010.
0.5 3.5 4.5
2.5 1.5 (MPa)
A
A’
B’
C’
C
B
25 20 15 10 5 0
0 5 10 15
:コーン貫入試験 :推定値
【PDF-300】
μ = 0.0050 〔1/m2〕 W = 0.0148〔MN〕
α = 1.0 β = 0.06
CPT-02 貫入抵抗 ,qc (MPa)
深度 (m)
25 20 15 10 5 0
0 5 10
:コーン貫入試験 :推定値
【PDF-300】
μ = 0.0050 〔1/m2〕 W = 0.0148〔MN〕
α = 1.0 β = 0.06
CPT-01 貫入抵抗 ,qc (MPa)
深度 (m)
図
-4
コーン貫入抵抗分布図(三次元)図
-3
油圧抵抗とコーン貫入抵抗の比較 表-1PBD
打設機の仕様と補正係数
型番 変換係数 μ
重量 W
0.0148 MN
断面積 As
0.0217 m
2周長 D
0.535 m
α
β
0.06
補正係数PCD-300 0.005
1.0
ケーシングPBD打設機
A-A’ SECTION 0.5
3.5 4.5
2.5 1.5 (MPa)
0 50 100 150
(m) 0
10
(m) 20
30
B-B’ SECTION 0.5
3.5 4.5
2.5 1.5 (MPa)
0
10
(m) 20
30
0 50 (m)
C-C’ SECTION 0.5
3.5 4.5
2.5 1.5 (MPa)
0
10
(m) 20
30
0 50 (m)
A-A’ SECTION : Sand
: Clay
0 50 100 150
(m) 0
10
(m) 20
30
B-B’ SECTION
0
10
(m) 20
30
0 50 (m)
C-C’ SECTION
0
10
(m) 20
30
0 50 (m)
: Sand : Clay
: Sand : Clay
図-5 コーン貫入抵抗分布図(二次元)
図-6 地質推定断面図 土木学会第66回年次学術講演会(平成23年度)