テクトンの建築 湾曲した部材を中心とした建築要素の考察 [ PDF
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(2) 1−4 . 研究の方法. ラブの湾曲はその他にも、ダッドリー動物園のトドの. ここで本研究の方法を示す。本研究では、テクトンの建. プール(the zoo at Dudley - the sea-lion pool,1937). 築の部材に見られる湾曲した要素を中心に取り上げ、平. の床スラブにも見られる。. 面の要素・立面の要素・屋根の要素の順に、各部材ごとに. 図 4 はロンドン動物園にあるペンギンプール(t h e. 考察する 。さらにそれぞれの要素で試みた解釈をテクト. london zoo - the penguin pool,1933)の内観である。. ンの建築全体の中で捉えなおし、それらに共通した傾向. ペンギンの通り道であるスロープが湾曲しながら張り出. をテクトンの建築手法として提示し、ル・コルビジェとの. されている。鉄筋コンクリートでできているこのスロー. 比較を通じて、近代建築におけるテクトンの位置付けを. プは、ペンギンの動線という機能を持っていると同時に、. 探る。また、考察する際の資料は図面や写真を中心とする. その湾曲して張り出された形態は、先に挙げたダッド. が、テクトンのメンバーの言説や雑誌のレポート等につ. リー動物園内のトドのプールや、同動物園内のペンギン. いても参考にして、建物に関わる背景を考慮する。. プールの床スラブを想起させるものであると捉え得る。 これらの床スラブやスロープの大きな特徴となってい. 2 . 考察. る湾曲は、空間を強く規定するものではない。建物内は、. 2−1 . 平面の要素. 空間のヴォリュームとして認識されるものではなく、湾. 平面の構成要素である床とスロープを見てゆくことに. 曲によって、むしろ空間のヴォリュームとして認識され. する。ここでは、床とスロープの湾曲を中心に考察する。. にくいものになっている。また、スラブやスロープの厚み. 図 3 は、ダッドリー動物園のペンギンプール(the zoo. が薄い為に、厚みをもった存在として建物内で主張しな. at Dudley - the penguin pool,1937)の内観である。こ. い.このような湾曲は、その他の部材でも多く見られる.. の床スラブは鉄筋コンクリートでできているが、まるで はさみで切り取られた紙のように波打った形状をしてい. 2−2 . 立面の要素. る。また、この床スラブは壁から8フィートほど張り出さ. 立面の要素のうち、壁を取り上げる。ここでは、壁面に. れており、その下には支えが見られない。このような床ス. 見られる湾曲について考察する 。 先に挙げた図2のファーナムコモンの家では、部屋の出 入口付近に湾曲した壁が見られる。ここでは、部屋と廊下 を繋ぐようなものとして湾曲を捉える事ができるが、こ の壁の湾曲は、ダイニングルームの壁の一部で見られ、室 内外で空間を大きく規定するものとして認識されにくい。 と言うのも、この壁の湾曲は、人が出入口を通れるような 形で壁の一部分が湾曲していて、ダイニングルームの内 部空間を大きく形作るものになっていない。さらに、湾曲 によって壁が緩やかにつながっているので、隣接した部 屋同士の空間のヴォリュームの緊張関係といったものと して捉えにくいものになっている。建物や部屋の出入り. 図 3. ダッドリー動物園のペンギンプール 内観. 口付近の壁では、その他にも多くの建物で湾曲が見られ、 隣接した部屋や場所同士を繋ぐようなものとして捉える 事ができるが、どれも建物の一部で見られ、空間を強く規 定するものとして認識されにくい。 シドナムヒルの家(house at sydenham hill,1935)で は出入り口の他にも、1階ガレージ付近に湾曲が見られる (図 5) 。この壁は図の左右方向に構成された壁 a と、斜め に構成された壁bを繋ぐものであるが、この壁が湾曲して いることによって、壁 a と壁 b を繋いで、連続させている. 図 4. ロンドン動物園のペンギンプール 内観. 28-2.
(3) ように捉えられる。また、壁面を連続させるものとして、. 辺方向にかなり長い建物で、長辺方向にのみ湾曲してい. 壁の湾曲を捉えることができるが、空間のヴォリューム. るため、この屋根に見る湾曲は、建物周辺での位置を示. として捉えにくい。それを示すものとして、ここでコルビ. す、オリエンテーションのようなものとして捉えられる。. ジェのテルニジアン邸(ternisien house,1926)と比較. これらの湾曲は、地面に対し水平方向に湾曲しており、内. する。テルニジアン邸は、箱型のヴォリュームと三角錐型. 部空間を強く規定するものとしては捉えにくく、また、一. のヴォリュームが建物の前面に並び、空間のヴォリュー. 様に壁から独立していることからも、内部空間を強く規. ムを内包するものとしてリズムを作っているのに対し、. 定するものではないと言える。さらに、壁と独立し、張り. シドナムヒルの家は、三角錐型の構造体が箱型の構造体. 出していることによって、これらの屋根は板として認識. のやや後ろに配され、また両者の大きさの関係からも、三. され、建物全体をヴォリュームとして認識されにくい要. 角錐型のものは、空間のヴォリュームを内包するものと. 因となっていると言えるだろう。つまり、これらの建物も. して受け取リ難い。ここでもテクトンの建築は、ヴォ. ヴォリュームとして受け取られにくいといえる。. リュームとして受け取られにくいことが分かる.. 図9は、ダッドリー動物園の入園口(the zoo at Dudley. b. - the entrance,1937)である。地面に対して水平方向に 湾曲した屋根形状を持った先の例と違い、ここでは地面. 1.Living Room 2.Hall 3.Dining Room 4.Maid’s Room 5.Lavatory 6.Entrance 7.Pantry 8.Kitchen 9.11.Maids’Bedroom 10.Bathroom 12.Coal Store 13.Garage. a. に対して垂直方向に湾曲した屋根が見られる。平面プラ ンとの対応から、この屋根に見られる湾曲は、樋としての 機能を示すものであると解釈できるが、この湾曲した屋 根も、壁から独立していて、内部空間を強く規定するもの ではない。 ここで、テクトンのダッドリー動物園のカフェ(the zoo at Dudley - the cafe,1937)と、コルビジェのカル タゴの家(villa carthage,1926)の初期案を比較する。. 図 5. シドナムヒルの家 1階平面図. ダッドリー動物園のカフェの計画では、屋根と下部構造 体とが柱で繋がっているものの、壁から独立している(図 10) 。先に挙げた 2 つの例を含め、屋根に見られるこのよ うな壁との独立は、多くのテクトンの建築で見られる。コ ルビジェの、カルタゴのヴィラの初期案でも、屋根が壁か ら独立している(図 11・12) 。しかしこの屋根は断面図か. 図 6. テルニジアン邸 1 階平面図. ら分かるように、下部の構造体がそのまま立ち上がった 大きさで、建物がひとつの箱型のヴォリュームであるこ とを強く意識させるものである。テクトンの屋根は下部 構造体よりも広がっていて、全体をまとまったヴォ リュームとして捉えることが困難である。しかし、このテ クトンの屋根は、コルビジェのロンシャン教会の屋根に 見るように、下部構造体との緊張関係が生じるほどヴォ リュームを持つものではない。つまり、テクトンの建築で 図 7. テルニジアン邸 展開図. は、ヴォリュームによって何らかを主張するものではな. 2−3.屋根の要素 . いということができる。. ここでは、屋根スラブの湾曲を中心に考察する。 図 8 は、ウィプスナード動物園の休憩所の、屋根伏せ図 である。鉄筋コンクリート造の屋根が地面に対し水平方 向に湾曲していることがわかる。このような屋根の湾曲 は、その他の建物にも見られ、共通して短辺方向に対し長. 図 8. ウィプスナード動物園の休憩所 屋根伏せ図. 28-3.
(4) 3.まとめ テクトンの建築の多くに見られる部材の湾曲は、空間 を強く規定するものではなく、また空間のヴォリューム を内包し、隣接した部屋同士の空間のヴォリュームの緊 張関係といったものとして捉え難いものであった。さら に、テクトンの各建築部材は、コルビジェの建築部材のよ うに厚みを持った存在として捉えることが困難であった.. 図 9. ダッドリー動物園の入園口 外観. テクトンの建築は一見してコルビジェの建築と類似し た形態を持つものであり、テクトンが発足した当時、イギ リスでもコルビジェの活動がすでに知られていたことか ら、何らかの影響を受けたことは間違いないと思われる。 しかし、テクトンの建築は、空間を強く規定するような側 面が見られず、建築部材の厚みや空間のヴォリュームと して解釈し難いという意味で、記号のようなものとして 捉えられるのではないだろうか。そしてこのように、建築. 図 10. ダッドリー動物園のカフェ 外観. 部材の厚みや空間のヴォリュームを必要としない薄さ・ 軽さにテクトンの独自性を見ることができる。 また、テクトンの建築に見る薄さと軽さは、ローマ時 代以来の建築にあった、ヴォリュームとしての空間概念 を否定するようなものであり、現代建築の透明性に繋が る第一歩であったと捉えることができるのではないだろ うか。 図 11. カルタゴの家 外観. 最後に、従来ロンシャン教会は、コルビジェの建築の ひとつの転機として捉えられてきた側面があるが、この ような観点からは、それ以前のコルビジェの建築の同一 線上にあるものとして捉える事ができるであろう。 表 1. テクトン作品特徴分布表 !" %933. %934 %935. 図 12. カルタゴの家 断面図 %936 %937. %938 %939 %949 %950. tecton#$ the london zoo - the new gorilla house (tecton) the house at gidea park -class E (s&t) the london zoo - the penguin pool the giraffe house at whipsnade'(l&t, architects) shelter at whipsnade zoo (l&t) elephant house at whipsnade zoo (l&t) the house at churt (c&t) *+, house at bognor (-&*, architects) the house at sydenham hill, london (h&*, architects) the house at farnham common (h&*,architcts) high point I (l&t.architects) group of houses at haywards heath (l&t.architects) bangalows at whipsnade (l&t.architects) the zoo at dudley - the entrance (tecton,architects) the zoo at dudley - the penguin pool (tecton,architects) the zoo at dudley - the bird house (tecton,architects) the zoo at dudley - the polar bear pit and ravine for lions and tigers (tecton,architects) the zoo at dudley - the sea-lion pool (tecton,architects) the zoo at dudley - elephant house (tecton) the zoo at dudley - café no.1 (tect on) the zoo at dudley - café no.2 (tect on,archit ect s) the zoo at dudley - the restaurant (tecton,architects) high point II (tecton,architects) health center for the borough of finsbury (tecton,architects) flats on the spa green estate (tecton,l&t) flats on the priory green estate (tecton,s,b&l). !. "#$%&' 0 0. 0. &2 0. &3. 0 0 0 0. (). *+,- ./ 0 0. 0 0 0. 0 1 0 2. 0 0 0 0 0. 0 0. 0. 1 0. 0. 0 0. 0 0 0. 0 0. 0. 0 0. 0 0. 0. 0. 3 1 0. 0 0. 0 0 0 0. 0 0 0. 0. 0 0. 床、スロープ、壁、屋根、キャノピーはそれぞれ湾曲した要 素、多孔は屋根・キャノピーに見られる多孔性の円形開口を示 す。壁 1 は湾曲壁、壁 2 は円形プランによる湾曲、壁 3 は螺旋 階段裏の湾曲壁を示す。丸の中の数字は、特徴が見られた箇所 の数を示す。また、本稿で取り上げた作品は色をつけた。. 図 13. ロンシャン教会 外観. 28-4.
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